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('A`)巣作りドックンのようです
1
:
◆xfSBMT78.A
:2016/03/29(火) 18:33:12 ID:.5wg0tsI0
空は暗くよどみ、大気に満ちた瘴気は重く体にまとわりつく。
毒に汚染された大地は草さえも生えず、荒れてひび割れている。
そんな大地から湧く水が清いはずもなく、川や池は常にどろりとした黒い水を湛えていた。
――毒の大地。と、人々はその地を呼ぶ。
三方を荒れた海に、残る一方を魔物たちが住む大山脈に阻まれた北の半島。
ありとあらゆる生き物が死に絶え、――それでも魔力だけは豊かな大地に、彼はいた。
('A`)
鈍い灰色のウロコに、どっしりとした体。背には翼と、長い尾。
短い腕には鋭い爪と、小ぶりだが形の整った角。
竜――ドラゴンと呼ばれる種族。その成人を迎えたばかりの、若いオスだった。
('A`)「……」
目の前には、古い時代の名残である巨大な建築物。その残骸を見て、彼は決意した。
81
:
◆xfSBMT78.A
:2016/03/29(火) 21:11:24 ID:.5wg0tsI0
.
82
:
◆xfSBMT78.A
:2016/03/29(火) 21:13:06 ID:.5wg0tsI0
人間という種族がいる。
ヒト族でも最弱でありながら、最も栄えた種族。
獣人のように、獣のような力や強い繁殖力を持つわけではなく。
エルフのように、強大な魔力と長い寿命を持つわけではなく。
ドワーフのように、屈強な体と手先の器用さを持つわけではなく。
武器を得、数を頼りにした時初めてその力を発揮するのが人間という種族である。
単独では塵にも等しい弱さの種族。
しかし、その弱い種族にも変わった特色が一つある。
人間は、他の何よりも他の種族に染まりやすい。
人間はその染まりやすさ故に、まったく異なる種族とでも子をなせる。
混血は他の種族でもない話ではないが、人間はその繁殖率がずばぬけて高い。
同じヒト族だけではなく、魔物との間に子をなしたという話さえもある。
人間が染まりやすいというのは、それだけに限ったことではない。
血を吸われ吸血種になったとか、恨みのあげく鬼へと変じたという話はいくらでも転がっている。
魔物であるゴーストや生ける屍は、元は人間であることが多いという。
83
:
◆xfSBMT78.A
:2016/03/29(火) 21:14:54 ID:.5wg0tsI0
('A`)「……お前、死にたいのか?」
そして、人間という種族は最強と名高い竜にも馴染み、染まることがある。
.
84
:
◆xfSBMT78.A
:2016/03/29(火) 21:16:55 ID:.5wg0tsI0
竜と人間の間に子が産まれたという話は多い。
だからこそ、群れを持たない竜は若い娘を攫う。
また、竜の血は人間の寿命を伸ばし力を高める。
その効果は、竜の力が強いほど。そして、新鮮であるほど強まるという。
だからこそ、竜の血や心臓は価値が高く、竜殺したちに真っ先に狙われる。
かつていた、とある英雄は。
――竜の生き血を浴び、不死身になったのだという。
竜の力に染まった、竜モドキ。
目の前の人間が、そのような存在でないと誰が言い切れるだろうか。
.
85
:
◆xfSBMT78.A
:2016/03/29(火) 21:19:01 ID:.5wg0tsI0
( ・∀・)「何それ。命乞いのつもり?」
剣を構えた姿勢のまま、男は止まっていた。
表面の皮は少し切られたが、致命傷にはまだ遠い。
しかし、そんなギリギリな状況も、今の竜には届かなかった。
――どうせもう助からない。
ならば、辿り着いた答えがあっているか確かめてから、彼は死にたかった。
('A`)「はじめは俺の血のせいかとも思った。でも、違った」
( ・∀・)「傷が治るまでの時間稼ぎなら、やめて欲しいんだけど」
('A`)「強いんだ。お前は最初から人間にしては強すぎたんだ。まるで魔物や竜と戦ってるみたいに」
男の問いには答えず、竜は己の手を見つめた。
まだ、そこにはえぐり出されたままの男の心臓が握られている。
体と辛うじて繋がった心臓は、どくり、どくりと動き続けている。
('A`)「それでわかった」
( ・∀・)「何を?」
86
:
◆xfSBMT78.A
:2016/03/29(火) 21:21:06 ID:.5wg0tsI0
('A`)「――お前、死ねないんだろう? だから、死にたいんだ」
(#・∀・)「な」
その瞬間、男の表情が変わった。
(#・∀・)「わかったみたいな口を! 死にたい?」
笑みを浮かべていた口元は歪み、その瞳はギラギラとした光を放つ。
あの異様な咆哮とも違う、血を吐くような表情で男は叫ぶ。
(# ∀ )「そんなの当たり前だろ!! どこの世界に心臓えぐり出されて、生きてる馬鹿がいるんだ!
毒も、炎も、剣も、串刺しの罠も――魔物に喰われたって、ダメだった! お前でもだ!!」
('A`)「……悪かったな」
(# ・∀)つ「でも、お前の心臓があればどうにかなる。
竜の心臓は無限の力と魔力を生むんだろ? だったら、僕のこの呪いも解けるはずだ!」
87
:
◆xfSBMT78.A
:2016/03/29(火) 21:22:57 ID:.5wg0tsI0
彼の手は未だ剣を掲げている。しかし、その手は細かく震えていた。
あとほんの少し、それだけで男の望みは叶うのに。
それでも、彼はその剣を完全には振り下ろさなかった。
(#・∀・)「そうすれば僕は、」
::( ∀ )。::「……当たり前に、死ねる」
男の目からギラギラとした炎が消える。代わりに頬に、光る雫が落ちる。
その姿を見つめながら、竜は口を開いた。
言わなければならないような気がしていた。
('A`)「それは無理だ」
彼が掴んだ敗北の原因を、
そして、目の前の人間にとっては致命的な事実を知らせるために。
88
:
◆xfSBMT78.A
:2016/03/29(火) 21:23:32 ID:.5wg0tsI0
('A`)「だって、お前の心臓は竜なんだから」
.
89
:
◆xfSBMT78.A
:2016/03/29(火) 21:25:02 ID:.5wg0tsI0
灰竜は男の姿を見つめた。
腕を失った腕からぽたりぽたりと垂れる血は、鉄の匂いをしている。
そして、灰竜は手の中の心臓を見つめる。
どくり、どくりと脈打つ心臓は、むせ返るような甘い匂いを放つ。
竜の頭をくらませる、強烈な甘い香りは――群れの女王のものだ。
それは、人間の少女の甘い匂いとは根本的に違うものだ。
それに気づいた時。
彼は自分が負けた理由をはっきりと理解した。
( ・∀・)::;)
――相手は、人間の身を借りた女王竜の心臓だ。
竜のオスは、メスには決して勝てない。
それは竜の本能に刻まれた、絶対のルールだ。
90
:
◆xfSBMT78.A
:2016/03/29(火) 21:27:11 ID:.5wg0tsI0
('A`)「どこで取り替えられたか知らねーが、お前の心臓は竜のものだ。
そいつが怪我を無理やり直して、お前を死なないようにしてる」
::(# ∀ )::「そんな馬鹿な話があるか!」
灰竜は、男の心臓から手を外した。
彼の体から手を引きぬき、心臓を体に戻す。
これで竜は完全に男に勝つ手段を失った。しかし、男はそれには気づかない。
つきつけられた剣を持つ手が大きく震える。
灰色の竜の顔を見る男の目が激しく動き、その動揺を伝えている。
('A`)「信じよう信じまいが勝手だがな。
その心臓はダメだ。俺の心臓程度じゃ、潰すことも壊すこともできない」
::( ∀ )::「……」
91
:
◆xfSBMT78.A
:2016/03/29(火) 21:29:15 ID:.5wg0tsI0
('A`)「それに、俺は弱いが他の血が混ざらない純血種の竜だ。
生き血を浴びれば、人間なら不死身……とまではいかなくても、それに近い芸当ならできる」
(; ・∀・)「……っ」
その言葉を聞いた途端、男は大きく後ろへと引いた。
そのままよろよろと、後退していく。
灰竜は致命傷を負っていない。反撃を受ければひとたまりもないはずなのに、男の動きは止まらない。
それとも、竜の反撃程度では自分は死なないとすでに悟ってしまっているのか。
('A`)「お前、俺と戦ってから怪我の治りが早くなったんじゃないのか?
いつも首が取れたら、そんなに早く治るのか?」
::(; ・∀・)::「やめろ」
灰竜もまた目の前の男に攻撃しなかった。
人間の姿をしっかりと見つめたまま、はっきりと口にする。
92
:
◆xfSBMT78.A
:2016/03/29(火) 21:31:09 ID:.5wg0tsI0
('A`)「ただでさえ竜に近いお前が、これ以上混ざりものない竜の血を浴びたらどうなると思う?」
::( 。 ∀ )::「やめて、たのむから……」
('A`)「人間は染まりやすいからな。
今は心臓だけだが、仕舞いには外側まで竜になるぞ」
そして、灰竜は言い切った。
・ ・ ・ ・ ・
(-A-)「……お前もわかってるんだろ。人間として死にたいなら、やめとけ」
( つ∀ )「何だよそれ」
それ以上の言葉はなかった。
長い沈黙の末に、剣が手から滑り落ちる。
それからパシャリと音がして、男の膝が水面に崩れ落ちた。
静かな大空洞に、嗚咽だけが響いた。
――それがこの戦いの終わりだった
93
:
◆xfSBMT78.A
:2016/03/29(火) 21:31:44 ID:.5wg0tsI0
.
94
:
◆xfSBMT78.A
:2016/03/29(火) 21:33:06 ID:.5wg0tsI0
_ _ _ _ _ _ _ _ _ __________________________
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄
毒の大地に作られた地下50階層の、大迷宮。
落とし穴、罠、宝物庫――思いつく限りの仕掛けを詰め込んで、彼が作り上げた自分だけの巣。
そこで食って寝て、できればかわいい人間の嫁ができれば幸せだ。
灰色のウロコを持つ若い竜は、そう思っていた。
(ν・ω・)ν( ∵)(・↓・)( б∀б)(ΘωΘ)`ハリ*^ω^ハ⌒*(・∀・)*⌒⌒*(・ω・)*⌒⌒゜(・ω・)゜⌒
( `v´)リハ*゚ー゚リ(∴゚ з゚ )(メ.■ー■)( ∴)@*゚ヮ゚))(`∠´))ルミ゚ ー゚ノ(( ○⊿○)(■∈■)゙゙( ゚━゚)リコ-〇ー〇)リ
(`c_,´ )( ・∈・ )(-回ε回-)( ̄ー ̄)/ ・∀・ヽ( ∵)(`o´)ノパ-ナル(`ェ´)(´ρ;゙#)从タ ゚ ヮ゚ノソ彡从 ゚ ヮ゚ノミ|iiタ ゚ ヮ゚ノソ
|ハ`∀´ノ8 ( ∴)ノ ・∀・ノj(^ヮ^*il|ノ ノ `∀´ハ∈(・ω・)∋( ‘3‘)( ∴)(φд゚)|・/ "ヮ")ミ▼ー▼彡ミ■Å■ノ州-凹_凹)
6L `∀´)("・」・")( ∵)( ∵)( ∵)//°H°)(゚、゚ハ゜⌒(〇`ω´〇)W,,゚Д゚W| @Θ@)ijd ´A`)(同し同 )(ε3ε)リノ、゚テモリ
∑<<∈゚∀゚)( ∴)( ∵)( ∵)(┘゚∀゚)┘( ゚ω゚ )ミ ・3・ミ (°∀」「∀°)( ∴)( ∵)6 `ェ´)(・ ∀ ・)从 ゚ー゚V( ∴)( ∴)( ∴)
(;゚A゚)「なんじゃこりゃぁぁぁーー!!!」
――だが、その理想は無残にも砕け散っていた。
95
:
◆xfSBMT78.A
:2016/03/29(火) 21:35:09 ID:.5wg0tsI0
魔物の山、山、山。
懐かしいあの大山脈――黒の領域ほどでもないが、それでも凶暴な魔物たちの群れ。
普段は縄張りや集落を作って集まっているモノたちが勢揃いしていた。
……彼が丹精込めて作り上げた、彼以外は誰もいないはずの巣の中に。
(; A )「なんだよこれなんだよこれなんだよこれ……」
その悪夢のような光景に、灰竜は悲鳴を上げた。
竜モドキの人間が襲ってくるより遥かにタチが悪い。
それはもしかしたら、彼が巣立ってから一番の驚きであったかもしれない。
⊆( ・∀・)「そりゃあ、見たとおりだからな」
灰竜の横から声が上がる。
調子を確かめるように左の腕を回しながら答えたのは、あの人間。
さっきまで殺し合いが嘘のように、胸に開いた穴はふさがり。ちぎれた腕も綺麗につながっていた。
96
:
◆xfSBMT78.A
:2016/03/29(火) 21:37:05 ID:.5wg0tsI0
(;゚A゚)「なんだよこの地獄絵図っ!
なんで俺の巣にこんな魔物がいるんだよ!」
( ・∀・)「お前がどっかから連れてきたんじゃないの?」
(#゚A゚)「ここは俺の巣だぞ。なんで天敵なんか放り込むんだよ!!
あああぁぁぁぁ、俺の力作がぁぁぁぁぁ」
(; ・∀・)「うぇー?」
人間が首をかしげ、何かを思いついたように頷く。
そこにはどこか晴れやかな表情が浮かんでいた。
( ・∀・)「じゃあ、勝手に住み着いたんじゃない?
ここ他に比べると毒も薄いから、地上に住めないような奴らでも生きれそうだし」
97
:
◆xfSBMT78.A
:2016/03/29(火) 21:39:07 ID:.5wg0tsI0
・
・
・
彼が敵であったはずの人間と歩いているのには理由がある。
あの戦いのあと、男は灰竜を殺すことを諦めた。
殺しても意味はないどころか、かえって害になると理解したのだろう。
( つ∀ )「結局のところ、僕に呪いをかけた竜を探しだすしかないってことか……」
目元を拭ってそう言った彼の表情は、ひどく疲れていた。
しかし、次の瞬間にはもう感情の見えない笑顔を浮かべている。
そこにはもう敵意はなかった。
98
:
◆xfSBMT78.A
:2016/03/29(火) 21:41:13 ID:.5wg0tsI0
('A`)(人間ってやつは、よくわからねーな)
( ・∀・)「……となると、ここにいる意味も無いか。
まさか毒の大地まで来て、死に損なうとは思わなかったよ」
男は立ち上がると、転がっていた腕を拾う。
そのままちぎれた腕を切断面につけると、瞬きをする間もなく繋がった。
……竜の心臓を持っているといっても、それはなかなか信じられない光景だった。
( ・∀・)「そういえばここって他に出口ある?
上はトラップだらけだし、魔物もしつこいしさ」
(;'A`)「え?」
その言葉にあわてて上層に来てみれば、彼の巣は魔物の巣窟と化していたのである。
そう。彼がもうやることはないと最下層に引きこもっている間に、彼の楽園はとっくの昔に崩れ去っていたのだ。
99
:
◆xfSBMT78.A
:2016/03/29(火) 21:43:07 ID:.5wg0tsI0
・
・
・
(;A;)「何だよこれぇ。俺の巣が、俺の巣……」
目の前に見える光景に彼は絶望した。
竜や魔物どころか、人間にさえ敗北する彼にとってこの状況はとてもではないが信じられなかった。
このままでは巣に引きこもるどころか、魔物たちに巣を乗っ取られかねない。
(;A;)「ちくしょー。侵入者が来ないように絶対に改良してやる」
(; ・∀・)「改良してやるって……。
これまで魔物がいるって、本当に気づいてなかったの?」
(;A;)「あたりめーだろ。人間のお嫁さんと二人で楽しく暮らすつもりだったのに……」
(; ・∀・)「何それ?! 嫁さんぶっ殺す気?
こんな毒と瘴気まみれの場所なんて、人間無理だよ。即効で死ぬよ!?」
(;'A`)「何だと……」
それでさえショックなのに、隣にいる人間は灰竜にとって更に衝撃的な事実を伝えてくる。
男は魔物たちからは見えない位置に隠れながら、飄々と話す。
100
:
◆xfSBMT78.A
:2016/03/29(火) 21:44:58 ID:.5wg0tsI0
(;゚A゚)「いや、お前ここに居るじゃん。それに人間だって頑張れば、平気だろ」
(; -∀・)「相当、しっかり対策しなきゃ難しいと思うんだけどな。
僕だって、本当は死のうと思ってここに来ただけだし……」
(ii'A`)「人間ってそんなに弱いのかよ……」
( ・∀・)「僕だって最下層に行くまでにも6回くらい死んでるし、そんなもんだって。
正直、こうしてる今だって毒でフラフラだし。……死にきれてないけど」
男はカラカラと笑うが、竜にはそれどころではない。
魔物から見つからないように、声を潜めながらひたすら彼に問いかけ続ける。
(ii'A`)「連れてきたらどうにかならない? 慣れたりしない?」
( ・∀・)「無理――っていうか、そもそもお前らって肉食だろ。
人間の嫁さんなんかもらって大丈夫なの? 腹減ったりしない?」
(;'A`)「お嫁さんは食わないよ!」
( ・∀・)「ホントのところは?」
('A`)「……いや、食べないよ!?」
101
:
◆xfSBMT78.A
:2016/03/29(火) 21:46:58 ID:.5wg0tsI0
( ・∀・)「ほんとに? 人間食ったり、攫ってきたりしない? 嫌われるよ」
攫ったり、という部分に竜はギクリと息を呑む。
この人間に蜂合わせる直前に、人間を攫ってこようと確かに彼は思っていた。
それがもし成功していたら愛しい嫁は……と、思うとそれだけで恐ろしかった。
(;'A`)「え゙!? さ、攫わない。ほら、俺こう見えて魔力とか鉱物とか大好きだし?!
ここいるだけで魔力食いたい放題だから肉なんて、草みたいなもんだし!?」
( ・∀・)「……草」
( ・∀・)「草と結婚しようとするって……」
その瞬間、彼の理性は切れた。
魔物がいることも忘れ、翼をばたつかせながら叫ぶ。
(#'A`)「忘れろー忘れろーお前ーっ!!!」
(; ・∀・)「あ、馬鹿。声が大きいって」
102
:
◆xfSBMT78.A
:2016/03/29(火) 21:48:55 ID:.5wg0tsI0
その瞬間、魔物たちが一斉に彼らを見た。
あるものは鳴き声をあげ、またあるものは攻撃の態勢を取る。
( ∵)!
( ∵)( ∴)( ∵)( ∴)!!
⌒*(・∀・)*⌒⌒*(・ω・)*⌒⌒゜(・ω・)゜⌒⌒*(・∀・)*⌒⌒*(・ω・)*⌒⌒゜(・ω・)゜⌒
(;゚A゚)「ひぃぃぃぃぃぃ!!!」
あわてて竜は飛びかかってくる魔物に、炎を吐き、爪を振るう。
小さな魔物はなんとか倒せるが、大きい魔物はそうはいかない。
こちらが狩られないように逃げ回りながら攻撃を当て、迫り来る魔物をひたすら倒し続ける。
(#'A`)「くっそぉぉぉぉっ!
お前ら全部追い払って、人間も住める完璧な巣を作ってやるぅぅぅっ!!!」
103
:
◆xfSBMT78.A
:2016/03/29(火) 21:51:05 ID:.5wg0tsI0
飛びかかってくるものは食いちぎり、それでも倒せない奴には尾でなぎ払う。
数は圧倒的に不利。
しかし、彼は動きを止めようとしない。
(#゚A゚)「俺の巣から出てけぇぇぇぇっ!!!
ここは俺ががんばって作った巣なんだぞ!!!」
ここは彼が自らの力ではじめて作り上げた巣である。
そして、竜の心臓を持つ人間と戦ってまで守ろうとした巣だ。
それをこんな不法侵入者たちに渡す訳にはいかないのだ。
――ここには、彼の全てと。いつか来る大切な嫁との未来がある。
( ・∀・)「がんばって作った……」
一人、高みの見物を決めていた人間が小さく首をひねる。
それから、少しだけ考えこむ姿を見せた。
やがて、魔物の攻撃を避け、灰竜へと近づいた。
104
:
◆xfSBMT78.A
:2016/03/29(火) 21:53:27 ID:.5wg0tsI0
( ・∀・)「……せっかくだし、僕も加勢しようかな」
(*'A`)「え? ほんと」
( ・∀・)つ「不法侵入分の代金くらいは払っておこうかなって。
……あと、心臓のことを教えてくれた礼も兼ねて」
男の手から剣が抜かれる。
まばゆい光を放つ刀身が、竜ではなく魔物たちへと向けられる。
( ・∀・)「あ、そうだ。僕、モララーって言うんだ。
モララー・モラル。まだ辛うじて人間の、冒険者ってやつだよ」
何百もの魔物へ向けて立ち向かう彼は笑顔を浮かべている。
それを、不思議なものでも見るような目で眺めながら。竜は攻撃を続ける。
( ・∀・)「お前の名前は?」
('A`)「一番下のとか、灰色のとかなら呼ばれたことがあるが……」
その言葉に今度は灰竜が首をかしげた。
竜は名前を持たない。名前をつけるのは、いつだってヒトだ。
105
:
◆xfSBMT78.A
:2016/03/29(火) 21:56:31 ID:.5wg0tsI0
(; ・∀・)「竜って、名前ないの? そうだな……だったら」
人間―― モララーが舞うように剣を振るう。
剣を避けて彼のいない方に回ろうとする魔物を、竜の炎が焼いていく。
竜へと食らいつこうとする魔物は、モララーの剣によって命を散らしていく。
( ・∀・)「……ドクオ。毒の大地の王で、ドクオってのはどうだい?」
('A`)「ドクオ? 俺が、ドクオ?」
(*・∀・)「そう。お前は今日からドクオな」
ドクオが魔物を蹴散らし、モララーがとどめを刺す。
魔物は少しも減らないが、そこに不思議と絶望はなかった。
(*'A`)「そうか、ドクオか」
口の中で、何度もドクオと呼んでみる。
その言葉が自分のものだと思うと、どことなくくすぐったかった。
('∀`)「俺はドクオだ!」
ドクオが大蜘蛛の巣を焼き払うと、飛び出してきた巨体をモララーの剣が受け止める。
そこに噛み付けば、あっさりと敵は倒れる。
目の前の魔物を二人がかりで倒していく。
協力しあうその動きは――まるで、群れのようにも見えた。
106
:
◆xfSBMT78.A
:2016/03/29(火) 21:57:29 ID:.5wg0tsI0
_ _ _ _ _ _ _ _ _ __________________________
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄
竜という種族がいる。
頑丈な体と長い寿命を持ち、知性に優れ、神に最も近いともいわれる種族。
彼らには、様々な特徴を持つ者たちが居る
天空を飛ぶもの、水を治め天候を操るもの、
毒を制するもの、炎を吐くもの……
( ・∀・)「そっち行ったよ、ドクオ」
('∀`)「任せろ、モララー」
……そして、
(#'A`)「このドクオ様の巣に、何してくれるんじゃぁぁぁぁ!!!!」
107
:
◆xfSBMT78.A
:2016/03/29(火) 21:58:03 ID:.5wg0tsI0
群れを作り、巣を守るものである。
.
108
:
◆xfSBMT78.A
:2016/03/29(火) 21:58:41 ID:.5wg0tsI0
('A`)巣作りドックンのようです 完
.
109
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 22:01:10 ID:g9Ix9tcg0
乙乙
なんか続きほしくなる感じだな
110
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 22:01:56 ID:.5wg0tsI0
ここまで。ブン動会参加作品です
ノ(_r , ,
(rヘノにニ=-- ㌻7 __,,
` ̄ ノ笊_) )ノ爪\
`^^^h n'^^^^´
r__“jノ”
` ̄´
111
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 22:02:29 ID:vApBjhjs0
いいドックンだったよ乙
112
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 22:05:51 ID:dfO9xZmw0
乙
世界観がわかりやすくて良かった
113
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 22:16:43 ID:NrbfQMYo0
乙
巣作りドラゴンは関係ないのか
114
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 22:17:09 ID:Dd7cvaoo0
おつ
115
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 22:39:21 ID:zdaPJl6Q0
乙
続きあったら膨らみそうだなー
116
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 00:55:48 ID:qARLHvH.0
乙
続くとしたらモララーに呪いをかけたやつ探しに、って感じか?読みてぇなぁ
117
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 01:38:05 ID:z.IUiC0A0
乙
土台がしっかりしてるから続きも行けそうなレベルだわ
118
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 19:11:43 ID:f5zHs9Ts0
続きも読みたいけど、祭りにそれは無粋ってものか
119
:
名無しさん
:2016/04/01(金) 14:58:18 ID:RjE1QC.o0
乙
シリーズ化するなら是非読んでみたいなあ
竜の生態がめっちゃ好き
オスには他所の群れに新しい父竜として入れてもらう・新しく群れを作るっていう巣立ち後の選択肢があるけど、メスは新しい群れ一択なのかな?
あと人間メスとドラゴンオスがありなら、人間オスとドラゴンメスもありなのかなあとか。ありならモララーの呪いはそういう話なのかなあとか。
120
:
◆xfSBMT78.A
:2016/04/03(日) 00:14:06 ID:Wz4nePcw0
乙ありがとう
レスするつもりはなかったけど、少しだけ
>>113
まぎらわしいタイトルですまない。そっちは未プレイなんだ
>>119
ドラゴンメスはオスより強いぶん選択肢の幅が広い
人間オスとドラゴンメスもあり
モララーについてはご想像におまかせします
121
:
◆mQ0JrMCe2Y
:2016/04/04(月) 01:28:05 ID:bUjo1vjE0
【連絡事項】
主催より業務連絡です。
只今をもって、こちらの作品の投下を締め切ります。
このレス以降に続きを書いた場合
◆投票開始前の場合:遅刻作品扱い(全票が半分)
◆投票期間中の場合:失格(全票が0点)
となるのでご注意ください。
(投票期間後に続きを投下するのは、問題ありません)
詳細は、こちら
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1456585367/404-405
122
:
名無しさん
:2016/04/10(日) 01:42:59 ID:XSn6uJ560
おもしろかったゆ
123
:
名無しさん
:2016/04/25(月) 01:18:48 ID:y/0RixKU0
面白かった
続き読みたくなる感じやな
124
:
名無しさん
:2016/04/25(月) 17:52:31 ID:QN5wL64c0
続きマダー?
125
:
名無しさん
:2016/04/25(月) 20:21:38 ID:U3SXGBos0
改めて読んだけど、面白かった!
最初の物語の入りが凄く丁寧だったので、一気に読めちゃうね。
するするっと読める地の文で設定を違和感なく書いてくれるので、こちらもするするっと話の中に入れた。
いやほんと、丁寧だなぁ、この話は。
ドクオの無知さというか、ドラゴンという存在っていうのも丁寧に書かれてる。
特に城を石の山と表現するのは良かったし可愛かった。そうだよね、城なんて知らないもんね。
そしてバトル描写も濃い、凄い。モララーの血みどろのバトルは熱い。良い。すごく良い。
鬼気迫るモララーと必死のドクオの対峙、熱い。
心臓えぐられても迫るモララー、熱い。
ドクオが握ってるモララーの心臓、熱い。
そしてそこで出てくるオスメスの設定もおお!ってなった。ここで持ってくるのかと、ただの設定じゃなかったなと。
巣作りするのにどうしてこんなにトラップ好きなんだよwwwとか、モララーの心臓の真相とか、
嫁さんはどうするのかとか、流石兄弟も追い出されてからどうなるんだろうなぁ、とか。
色々考えてしまうので、続きが欲しいなぁ。
面白かったです!
126
:
◆xfSBMT78.A
:2016/04/30(土) 22:26:50 ID:gXAI7caM0
祭りが終了して落ち着いてきたので、少しだけ出没
投票や、熱い感想やイラストなど本当にありがとうございました。結果を見た時は心臓が止まるかと思いました
続きについての要望を頂いたのも、嬉しかったです
約束はできませんが、いつか機会があれば書きたいと思っています
127
:
名無しさん
:2016/05/01(日) 17:08:35 ID:JV872/pQ0
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
待ち続けるぞ
128
:
名無しさん
:2016/10/23(日) 21:28:35 ID:mLXTTQyw0
続き書いてくれよー
129
:
名無しさん
:2018/02/27(火) 10:44:54 ID:8Ov5uO2U0
帰ってきてもいいのよ…?
130
:
名無しさん
:2024/08/21(水) 00:14:54 ID:q0VJAC9o0
乙乙
最後まで冒険物なのかと思ったらバトル描写が格好良かったりでずっと楽しかった!
好みの子攫うとか、違う種族の無邪気な発想って超怖いんだなと思ったけど、良い相棒が見つかって良かったねドクオ!
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