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('A`)便利屋ドクオの野暮用です
1
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:08:48 ID:BKUgdd360
('A`)「ったくよ……」
楽器や銃、スピーカーに囲まれた狭苦しい部屋。
奥に行けば寝室もあるが、俺は主にこの部屋で過ごしていた。
何故なら、ここは俺の店だからだ。
('A`)「開店日だってのに、客は一人も来やしねぇ……」
仕方なのない事だ。
この街“ソウサク”は、決して平和なわけじゃあない。
だが何か厄介事があっても、俺のような便利屋に仕事を頼むくらいなら、近くのバーで酒を飲んで面倒ごとを忘れようと考える頭の悪い連中ばかりだ。
俺には都合の悪い街だと言える。
友人にも、“よくこんな所で便利屋なんか開くね”、と呆れられるくらいだ。
まあ、暇なのは嫌いじゃないんだがな。
('A`)「しっかし……金がねぇのは辛いとこだ」スッ
机に置かれたピザを一切れ、口に運ぶ。
先程近くの店から買ってきたばかりで、熱を持ったチーズがドロリと溶けて黒い机に強いコントラストを残した。
('A`)「……うめぇな」
ずっとこの調子で客が来なければ、いずれはピザを食う金すら尽きる。
それだけは避けたい。
59
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/31(木) 05:41:23 ID:Cj5bthWI0
('A`)「……わりぃな」
ジャケットを強く捲くる。
その勢いで、突き刺さっていた血の塊はコロコロと音を立てて地面に散らばった。
('∀`)「……このジャケットはな――――」
「背中までマガジンで埋め尽くされてるんだよ」
(;-@∀@)「――ッ!!!」
.
60
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/31(木) 05:42:51 ID:Cj5bthWI0
('∀`)「後方には注意しねぇとなぁ。玉突き事故だけは勘弁だぜ、イカレ眼鏡」
(;-@∀@)「ガッ……!!」
ホルスターから取り出した銃で、アサピーの両手の甲を撃ち抜く。
普通ならば、この手で反撃しようとは思わないだろう。
(;-@∀@)「……ぐッ…………」
('A`)「悪くねぇダンスナンバーだったぜ。ただちょっと、テンポが悪かったな」
再度拳銃をホルスターにしまって、アサピーの目の前に立つ。
('A`)「さて、ここのお偉いさんはどこで退屈してるんだ?」
(;-@∀@)「…………」
('A`)「言えよ」
へたり込んだアサピーの膝を撃ち抜く。
速撃ちと言うよりは、さながら居合のような動作で。
(;-@∀@)「アガッ……!!」
('A`)「これ以上五体不満足になりたくなきゃ、そのニヤけた口を取っとと割るべきだな」
61
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/31(木) 05:43:27 ID:Cj5bthWI0
靴底で薬莢を転がしながら、アサピーの顔をじっと睨みつける。
ただそれだけで、彼は竦み上がっていた。とても演技には見えない。
(;-@∀@)「くッ…………。……そこの扉を出た先にある建物に……」
('A`)「そうか」
場所がわかれば、この男に用はない。
ちらりと後ろを振り返って、デレにこっちへ来るよう合図した。
(;-@∀@)「ま、待ってください!! あなたは一体……何をしにここへ……!」
('A`)「…………ハッ、余計なことは聞くもんじゃねーよ……」
(;-@∀@)「なっ!!」
素早くホルスターから拳銃を取り出して、アサピーの額を撃ち抜く。
血溜まりの向こうに綺麗な放射状を描いた血痕を残して、その頭はゆっくりと垂れていった。
('A`)「……ちょっとした、野暮用さ」
.
62
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/31(木) 05:44:40 ID:Cj5bthWI0
集会堂の奥にあった扉を出て、正面にある建物。
ちょうど集会堂と同じくらいの大きさだ。
俺達はその建物の中に入って、長い廊下を歩いていた。
ζ(゚ー゚*ζ「……そのジャケット、重くないの?」
('A`)「ああ、もう慣れちまったよ」
ζ(゚ー゚;ζ「慣れるんだ……」
愛用のホルスターを作ったデザイナーに、これまた特注で作らせた黒い革製のジャケット。
裏地がびっしり埋まるほどにまで、マガジンを入れておくことが出来る。
二丁の拳銃で大量の弾を消費してしまう俺にとっては、便利な代物だ。
この季節になると随分暑苦しく感じるが、仕事なので仕方がない。
('A`)「……さて……」
ようやくたどり着いた、長い廊下の突き当たりにある一つの扉。
ここに来るまでに幾つかの扉があったが、全てもぬけの殻だったのだ。
耳を澄ますと、中から僅かに物音が聞こえる。
('A`)「デレ、俺の後ろに隠れてろよ」
ζ(゚ー゚;ζ「う、うん」ササッ
63
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/31(木) 05:45:37 ID:Cj5bthWI0
ホルスターから取り出した拳銃を両手に構えて、深呼吸をする。
そして勢い良く、扉を蹴破った。
('A`)「…………」
しかし、中に人はいなかった。
どうやらこの部屋は物置のようだ。
しかしただの物置にしては広いこの部屋に、俺は違和感を感じた。
('A`)「音がしたってことは、この部屋のどこかにまだ扉があるってことか?」
中に足を踏み入れて、置かれた棚の後ろや机の下を覗いてみる。
しかし、それらしいものは見当たらない。
おまけに窓の外には塀しかなかった。
('A`)「……デレ、騙されたみてーだ」
大きな棚を元の位置に戻しながら、そう言った。
しかし、返事はない。
('A`)「……デレ?」
振り返るが、そこに彼女の姿はない。
.
64
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/31(木) 05:46:25 ID:Cj5bthWI0
(;'A`)「チッ!!」
――まずい。
つい、意識を別の所へ置いてしまっていた。
何かあってからじゃ遅い。
そう思うよりも早く急いで廊下に出たが――――
――――そこにあったのは、体格のいい男の姿だった。
(´・_ゝ・`)「…………何を焦っている」
('A`)「…………」
司祭服を身に纏い、間抜けな帽子を被った男。
その左手には、大きな剣が握られていた。
.
65
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/31(木) 05:50:02 ID:Cj5bthWI0
('A`)「……デレはどこだ」
(´・_ゝ・`)「デレ? ……ああ、君と一緒にいた女のことか」
(´・_ゝ・`)「……彼女は…………さぁどこだろうな」
('A`)「…………」
(´・_ゝ・`)「どうやら、君がうちの人間を殺した犯人で間違いないようだな」
そう言いながら男は、左手に握っていた剣を両手に構えて、姿勢を低くした。
('A`)「ああ。あの間抜け面とイカレ眼鏡なら、俺がこの手で天国に導いてやったよ」
両手の拳銃を握り直して、男の顔に向ける。
男はじりじりと間合いを詰めながら、こちらの様子を窺っているようだ。
(´・_ゝ・`)「俺は神父のデミタスだ。覚えておけ」
('∀`)「“覚えておけ”って事は、つまり俺を殺す自信がねぇって事か?」
(´・_ゝ・`)「ぬかせッ!!」
石の床だというのに、デミタスと名乗った男の足は踏み出しただけで大きな音を鳴らした。
その音の大きさに比例して、迫りくる速さも並大抵のものではなかった。
.
66
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/31(木) 05:51:29 ID:Cj5bthWI0
デミタスの最初の一撃は、突き。
接近戦に慣れていない俺にとっては躱すのが最も楽な攻撃だが、銃弾と違って剣は大きい。
横っ腹すれすれのところで回避した。
(´・_ゝ・`)「ふんッ!!」
デミタスは突かれた剣を引きながら、横に薙ぎ払うように剣を振るう。
俺はトリガーガードの付け根で剣を受け、もう一方の銃でデミタスへ連射した。
デミタスは剣を軸に身体を捻らせて、俺の腹の方へと潜り込んでくる。
(´・_ゝ・`)「ハァッ!!」
剣を右手で持ち、離した左手の拳を俺の腹へ突き出してきた。
俺は空いている方の拳銃のグリップエンドでその拳を弾いて、再び連射した。
(´・_ゝ・`)「くッ……!!」
流石にこの距離で躱すのは困難だと察したのか、デミタスは剣を引いて間合いを空けた。
('∀`)「……なかなかやるじゃん。あのイカレ眼鏡よりは楽しませてくれそうだ」
(´・_ゝ・`)「……ふっ……アサピーと一緒にされては困る……」
(´・_ゝ・`)「“帰天”もまともにできない、あの男とはな」
.
67
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/31(木) 05:52:32 ID:Cj5bthWI0
帰天。
それが何を意味しているのかはわからないが、デミタスはアサピーとは違う能力を持っているという事だろうか。
(´・_ゝ・`)「……すぐに終わらせてやろう」
デミタスはそう言うと、剣の切っ先を床に向け、じっと構えた。
そして自らの手をその刃の付け根に当てて、血を垂らした。
(´・_ゝ・`)「……“帰天・血滅剣”!」
刃に垂れた血が樋に染み渡った時。
その刃がぼんやりと赤く光りだした時。
デミタスはそう言った。
(´・_ゝ・`)「ハァァッ!!」
再び床を踏み込んで間合いを詰めてくる。
今度は突きではなく、払いのようだ。
('∀`)「ハハハッ、ここはオカルト展示場か!?」
あの剣が、あの儀式のような動作がどういう効果をもたらすのかわからないうちは、簡単に攻撃を受け止める訳にはいかない。
デミタスの腕の動きを見て、一撃目は身を引いて躱した。
.
68
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/31(木) 05:53:46 ID:Cj5bthWI0
('∀`)「どうしたどうした!!」
(´・_ゝ・`)「フンッ!!」
二撃目も、左からの払い。
俺は両手の銃からマガジンを取り出して、後ろの物置に飛び込んだ。
空中に浮いたマガジンが、デミタスの剣に触れる。
剣で簡単に切れるようなものじゃあない。
だというのに、そのマガジンはいとも容易く真っ二つになってしまった。
('∀`)「……なるほど、銃で受け止めるわけにゃいかねーってことか」
(´・_ゝ・`)「俺としては、受け止めてくれた方がありがたいがな」
('∀`)「ご期待には添えねぇよ!!」
新しいマガジンを装填して、デミタスに向かって両手の引き金を何度も引く。
放たれた幾つもの銃弾は、デミタスの振るった剣によって弾かれていく。
('∀`)「休んでる余裕はねーぞ!!」
歩きながら何度も続けて銃弾を放つ。
一歩、一歩とデミタスは下がりながら、その銃弾を見事に弾いていく。
69
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/31(木) 05:54:54 ID:Cj5bthWI0
やがて再び廊下に出た頃、俺は両手のマガジンリリースボタンを押して、デミタスに向かって弾の入ったマガジンを放り投げた。
(;´・_ゝ・`)「ッ!?」
不意の動作に、デミタスの反応が一瞬だけ遅れる。
俺はその隙を逃さなかった。
('∀`)「ハハハハハッ!!!」
強く床を蹴って、デミタスに急接近する。
同時に先ほど放り投げたマガジンを空中で装填して、残っていた弾をデミタスの腹部へ撃ち込んだ。
(;´・_ゝ・`)「ぐッ……!!」
即座にデミタスを蹴って、間合いを取る。
確実に撃ち抜いた。大量の血が、溢れ出していた。
しかし、左手で腹部を抑えながら、それでもデミタスは剣を握ることをやめなかった。
(;´・_ゝ・`)「……こ……この程度……」
(;´・_ゝ・`)「……帰天を成し遂げた俺には無意味……ッ!!」
そう叫ぶと同時に、デミタスの腹部から溢れ出ていた血の流れが止まった。
.
70
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/31(木) 05:56:28 ID:Cj5bthWI0
('A`)「……なんだ、つまんねぇの」
(;´・_ゝ・`)「……はは……ナメてもらっては困るな……!」
再び、両手で剣を構えるデミタス。
先ほどの出血や痛みのせいか、その切っ先は微かに揺れていた。
('∀`)「そんじゃまぁ、楽にしてやるよ!!」
(´・_ゝ・`)「ハァァァァッ!!」
剣を向け、急接近してくるデミタス。
俺は両手の銃から二発の銃弾を放つだけで、その場から動くことはしなかった。
一発の銃弾はデミタスの剣によって、簡単に弾かれた。
(´・_ゝ・`)「そんなもの当たらんさ!!」
振るった剣を戻し、今度は突きの体制へ。
そのまま勢いを落とすこと無く、突進を続けてきた。
('∀`)「――よく見ろよ」
(;´・_ゝ・`)「――――ッ!!」
.
71
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/31(木) 05:57:49 ID:Cj5bthWI0
石の床に向かって放たれていた、もう一発の銃弾。
それは見事に跳弾し、接近してきたデミタスのちょうど膝の部分へ命中したのだった。
(;´・_ゝ・`)「ガハ……ッ!!」
斜めになって、無様に床に倒れこむデミタス。
その右手から剣が離れ、ちょうど俺の足元へと滑ってくる。
それを靴底で受け止めながら、右手の拳銃の銃口をデミタスの額に向けた。
('A`)「なかなかの剣術だったぜ。まあもっとも、剣同士でも俺には勝てなかっただろうけどな」
(;´・_ゝ・`)「……クソ……ッ」
('A`)「デレはどこだ」
(;´・_ゝ・`)「…………」
('A`)「お前がここで一番偉いってわけじゃあないんだろ? そのお偉いさんにはどこに行けば会えるんだ」
(;´・_ゝ・`)「……言わんさ。もっとも、言ったところで、お前は俺を殺すだろう」
('A`)「よくわかってるじゃねぇか」
ハンマーを起こして、デミタスの額に照準を合わせる。
72
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/31(木) 05:59:42 ID:Cj5bthWI0
('A`)「わからなきゃ、探せばいいだけだ」
引き金を引くと、デミタスの額に大きな穴が空いて、後方に脳と血を撒き散らした。
同時に、その頭から外れた帽子。
――そして顕になった、髪の毛の無い頭頂部。
彡⌒ミ
(´ _ゝ `)
('∀`)「……なるほど。その似合わねぇ帽子は、ハゲ隠しだったって事か」
薬莢だらけの床を、ゆっくりと歩く。
帽子を拾い上げ、それを男の頭に被せ直して、俺はこの建物を後にした。
.
73
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/31(木) 06:01:25 ID:Cj5bthWI0
本日はこの辺りで。
次の投下で終わりますので、またよろしくお願いします。
74
:
名無しさん
:2016/03/31(木) 06:16:49 ID:liifTOj20
ひとまず乙
まってるよ
75
:
名無しさん
:2016/03/31(木) 10:48:41 ID:EjhS61/s0
優しいな
76
:
名無しさん
:2016/03/31(木) 12:13:12 ID:JoTIRpJY0
おう
待ってるぜ
デレの無事を祈る
77
:
名無しさん
:2016/03/31(木) 12:16:43 ID:ArlBxvAE0
デミ隠しのことハゲ隠しって言うのやめろよ!
乙です
78
:
名無しさん
:2016/03/31(木) 12:54:16 ID:DWfG6Njg0
おいハゲを暴く必要はなかったろ!!!
おつ!
79
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 06:48:57 ID:CCACwx0U0
('A`)「…………さてと」
これまでの騒ぎを聞いてか、敷地内にいた多くの人々はすでに消えていた。
この敷地内で一番目立つ建物、礼拝堂。
俺は真っ先にそこへと歩みを進めていた。
('A`)「案内なんか聞かずに、初めからここに来りゃ良かったぜ」
大きな扉をゆっくりと引くと、中から漏れ出す異様な空気を感じる取ることができた。
そして俺が見たものは――。
(;'A`)「デレ!!」
――十字架に磔にされている、デレの姿だった。
.
80
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 06:49:29 ID:CCACwx0U0
ζ(゚ー゚;ζ「ど、ドクオ! 助けて……!!」
幸い、意識はある。見たところ怪我も無いようだ。
('A`)「今降ろしてやるからな!」
『――無駄だよ』
('A`)「……!?」
――カツ、カツ、カツ。
一歩一歩、音を堂内に響かせながら、暗闇から姿を現した、一人の男。
爪'ー`)「私の能力で磔にしているからね。簡単には外せないさ」
(;'A`)「――ッ……お前は……フォックス……!!」
半年前、ある大手企業の社長を殺す依頼を成し遂げ、100万レスもの金を手にした。
俺が店を持つ為の元手になった金だ。
この男フォックスは、その依頼主であった。
爪'ー`)「ッ……。おやおや、まさか侵入者が君だったとは……」
爪'ー`)「驚いたよ、“Killer-D”」
.
81
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 06:50:38 ID:CCACwx0U0
“Killer-D”とは、俺が店を持つ前に呼ばれていた名前だ。
ブーンと合わせて、“Killer-B.D.”なんて呼ばれていた事もあった。
('A`)「……今は便利屋“All Trades”のドクオだ」
爪'ー`)「便利屋、ねぇ……。あの君が、今じゃ水道管工事をしてるのか……笑えるね」
('A`)「ハッ……生憎これが初仕事さ」
爪'ー`)「……半年ほど前か……君に仕事を依頼したのは」
('A`)「お前、あの社長を殺して自分の会社をでかくするんじゃなかったのか?」
爪'ー`)「ああ、その通りさ。カデレス社は邪魔だったからな。君のお陰でうちの売上は大きく上がったよ」
ζ(゚ー゚;ζ「……か……カデレス……?」
デレが青白い顔を引きつらせて、そう言った。
大事なものを何か、失ったかのように。
爪'ー`)「そう、カデレス。彼らは事業を広げすぎたんだ。当然、あの社長を殺したがってたのは私だけじゃなかったはずだ」
82
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 06:51:26 ID:CCACwx0U0
('A`)「俺が聞きてぇのはそんな話じゃねぇんだよ。そんなお前がなんでこんな宗教団体なんて――――」
ζ(゚ー゚;ζ「――待ってよ!!」
('A`)「ッ……?」
ζ(゚ー゚;ζ「カデレスの……カデレスの社長を……殺したの……?」
('A`)「ああ。こいつの依頼でな」
ζ( ー ;ζ「……そんな……嘘…………」
('A`)「お、おい」
ζ( ー ζ「…………私の……」
「……私のお父さんは……カデレスの社長だったんだよ……」
(;'A`)「――ッ!」
.
83
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 06:52:03 ID:CCACwx0U0
デレの顔は、まるで日の射さない路地裏のように暗く翳り、表情の判別はできない。
――冗談じゃない。
どうしてそんな偶然が。
どうして、よりによってこんな時に。
爪'ー`)「……おやおや……よもやこんな偶然があるなんてね……! Killer-Dの死を彩る最高のスパイスじゃあないか!」
(;'A`)「……チッ……」
.
84
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 06:52:37 ID:CCACwx0U0
――何を感情的になっているんだ、俺は。
頭に“元”が付くとはいえ、俺はKiller-Dと呼ばれ怖れられた人間だ。
フォックスの言う通りさ。最高のスパイスじゃないか。
( ∀ )「…………ククッ……ハハハハハハッ!!!」
.
85
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 06:53:17 ID:CCACwx0U0
ただ、死ぬのは俺じゃない。
('∀`)「殺してやるよフォックス!!」
爪'ー`)「……そう来なくてはね……!!」
ホルスターから取り出した二丁の愛銃。
俺はこの結び目だらけの感情を乗せて、いくつもの銃弾を放った。
.
86
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 06:53:55 ID:CCACwx0U0
爪'ー`)「ハァッ!!」
真っ直ぐにフォックスへと向かう銃弾を防ぐようにして、どこからとも無く血の盾が現れた。
アサピーが出していた物と同じだ。
それならば、一点に銃弾を打ち込み続けていればいずれは砕ける。
――だが、そう甘くは無かった。
.
87
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 06:54:46 ID:CCACwx0U0
('A`)「……堅ぇな」
爪'ー`)「……そう簡単に壊せるようなものじゃないさ」
('A`)「あのイカレ眼鏡よりゃマシってことか」
爪'ー`)「……アサピーの事か……」
フォックスは口角を軽く吊り上げながら、フッと鼻で笑った。
爪'ー`)「彼はダメだな。通常の帰天すら中途半端にしか出来なかった男だ」
('A`)「まーた帰天かよ。そろそろそいつの正体を教えてほしいね」
爪'ー`)「君が知る必要はない。ただ見ていればいいさ」
爪'ー`)「私がこれから行う“帰天”をね……!」
そう言いながらフォックスが両手を広げると、まるで天井から引っ張り上げているかのように、その身体が宙に浮かんだ。
(;'∀`)「……空まで飛ぶわけ……?」
爪'ー`)「これは儀式のうちさ……」
爪 ー )「この大地に住みし我らの神よ……生娘の生き血を吸い……我に降臨されたし……!!」
爪'ー`)「“帰天”!!!」
.
88
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 06:55:52 ID:CCACwx0U0
地鳴りのような轟音が堂内に響き渡り、フォックスの身体は直視できないほどの光を発した。
それも数秒ほどで収まり、俺は再びフォックスに目を向けた。
爪'ー`)
そこにあるのは、先程と何も変わらない一人の男の姿だった。
ただひとつ、この堂内で変化したのは――。
(;'A`)「デレ!!!」
先程まではその虚ろな瞳で遠くを見つめていたはずのデレが、今では目を閉じぐったりと項垂れている。
“生娘の生き血”。それがデレの血の事を指しているのであれば、命が危ない。
爪'ー`)「安心するといい。まだ死んではいないさ」
フォックスの言う通り、確かにまだ死んではいない。
微かながら、呼吸によって肩が揺れているのがわかる。
爪'ー`)「だが、戦いが長引けば長引くほど、彼女の命は危なくなる。私は彼女の血を使って戦わせてもらうからな」
爪'ー`)「彼女の身を案ずるなら、とっとと死ぬべきだ」
('A`)「……てめぇ……」
89
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 06:56:27 ID:CCACwx0U0
爪'ー`)「しかし全く呆れるよ。あの非常な殺し屋だった君が、小娘一人の命を心配するとはな」
('A`)「…………」
('A`)「……違うな」
爪'ー`)「……?」
一歩、前に踏み出す。
堂内に均等に並べられた長椅子の中の、一番手前にあるものに足を載せて、銃口をフォックスに向ける。
('A`)「あいつは俺の“依頼主”だ。報酬を受け取るためには、あいつには生きててもらわねーとならねぇんだよ」
爪'ー`)「……なるほど。まあそれでもいいでしょう」
爪'ー`)「どっちにしても、君は死ぬのだからね!!」
フォックスが叫ぶのと同時に、彼の背後からいくつもの血の塊が飛来してくる。
速度は拳銃の銃弾と同等か、それ以上だろうか。
すぐに俺は足を載せていた長椅子を蹴って跳躍する。
フォックスが放った血の塊は、俺に直撃すること無く後ろの扉へと突き刺さっていく。
('∀`)「ほらよ!!」
地上数メートルの高さから、銃弾の雨を降らす。
当然ながら、フォックスはそれを盾で受け止めていた。
90
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 06:57:16 ID:CCACwx0U0
爪'ー`)「飛び道具相手に跳躍するのは頷けないな!! 着地点が丸わかりだ!!」
やがてフォックスは銃弾を受け止めながら、俺が着地するであろう場所に向かって血の塊をいくつも放った。
('∀`)「無駄だぜ狐野郎ッ!!!」
飛来するいくつもの血の塊に向かって、二丁の愛銃から銃弾を放つ。
銃弾は一発の無駄もなく血の塊一つ一つにぶつかって、それを弾いた。
('∀`)「……悪いな、俺にはそんな盾なんて必要ねぇんだ」
爪'ー`)「それは面白い……」
爪'ー`)「ならばこれはどうかな……!!」
フォックスの背後に浮き上がる、複数の血の塊。
それだけじゃない。扉に突き刺さった血や、俺が弾いて散らばった血でさえ、空中に浮き上がっていた。
爪'ー`)「アサピーには、この数は不可能だったはずだ」
彼が振り上げた右手を勢い良く振り下ろすと同時に、浮いていた血の塊は一斉に俺へと向かってきた。
('∀`)「ハッハァ!!!」
91
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 06:58:37 ID:CCACwx0U0
背後からの攻撃を身を捻るようにして躱しながら、辺りに連射する。
とてもこの程度の連射で防ぎきれる数ではない。ただし、お陰で数は減った。
俺は両手の愛銃からマガジンを放り出して、身を屈めた。
爪'ー`)「…………フッ」
ガシャン、と放り投げたマガジンが落ちる音がする。
いくつもの血の塊や薬莢が、地面に転がる音が耳に届く。
爪'ー`)「流石に躱し切れなかったようだねぇ……」
( ∀ )「……ククク……」
爪;'ー`)「ッ……?」
俺は屈んで身を包んでいたジャケットを外して、ゆっくりと立ち上がった。
爪;'ー`)「なっ…………」
92
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 06:59:17 ID:CCACwx0U0
('∀`)「このジャケットで防がせてもらったのは二回目だな……。全く……意外とやるな、オカルト集団よォ……」
重たいジャケットを地面に放り投げると、石で出来たこの床ですら微かに揺れた。
たまには鎖から放たれるのも、悪くはない。
爪'ー`)「……まさか無傷とはね……。面白い、面白いよ」
('∀`)「お遊びはここまでだぜ」
石の床を蹴って、フォックスへ急接近する。
重たいジャケットを着ていないだけで、身体が羽根のように軽く感じた。
('∀`)「ほらよッ!!」
愛銃を振りかぶり、グリップエンドをフォックスの頭へと振り下ろす。
爪;'ー`)「く……ッ!!」
どこからか現れた血の盾が、それを防ぐ。
だがその一撃だけで、血の盾には亀裂が走っていた。
('∀`)「ハァッ!!」
爪;'ー`)「――ガハッ……!!」
フォックスを蹴り飛ばすようにして、後ろへ跳躍する。
俺が離れると、フォックスの身体全体を守るように盾が広がった。
93
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:00:40 ID:CCACwx0U0
('∀`)「んなもん無駄だろ!!」
射撃の精密さよりも連射速度を重視して、盾に無数の銃弾を放つ。
それだけでその盾は、容易く砕け散った。
再び床を蹴って、フォックスへと急接近する。
爪;'ー`)「まだだッ!!」
駆けながら放った銃弾がフォックスの額に直撃するよりも速く、赤い何かがそれを防いだ。
爪;'ー`)「……よもやこれを出すことになるとは……君は接近戦にも長けているようだな……」
フォックスが手に持っているのは、赤い長剣。
血を固めて作り出した物のようだ。
('A`)「…………」
奴は血を使いすぎている。
このままでは本当に、デレの命が危ない。
依頼主がなんだ。
そんなものは関係ない。
――俺はただ、俺が殺す以外で目の前で人が死ぬのを見たくないだけなんだ。
94
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:01:54 ID:CCACwx0U0
('∀`)「……終わらせようぜ」
爪'ー`)「……いいだろう」
じりじりと、詰め寄る間合い。
元より俺は近接戦闘向きの武器を持っていない。
だが、この愛銃で戦えないわけではない。
爪'ー`)「……ハァッ!!」
強く床を蹴って、その長剣を振りかざしながら接近してくるフォックス。
俺は後方のジャケットに銃弾を放つ。
ジャケットの中に収まっているマガジンに銃弾が直撃し、弧を描きながらこちらへと向かってくる。
それを空中でリロードし、狙いをフォックスへと戻した。
('∀`)「ハッハァ!!!」
真っ直ぐに振り下ろされた刃をグリップエンドで弾きながら、フォックスの顔に向かって片手で連射する。
フォックスはそれを血の盾で防ぎ、振り下ろした長剣を素早く斜めに振り上げた。
('∀`)「掠りもしねぇぜ!!」
ジャケットを着ていない俺に、避けられないものはない。
どんなに速かろうと、どんなに不意をつかれようと、俺は最小限の動きで躱した。
95
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:02:41 ID:CCACwx0U0
爪;'ー`)「クソッ!!」
フォックスは再び長剣を構え、横へ大きく振るう。
同時に、いくつもの血の塊が俺へ向かって飛来してくるのがわかった。
その血の塊を全て拳銃の側面で弾き、躱した長剣の刃をもう一つの拳銃のグリップエンドで上から叩いた。
キィン、と鋭い音が鳴り響き、弾かれた長剣の切っ先が石の床に突き刺さる。
爪;'ー`)「く……ッ!!」
('∀`)「ゲームオーバーだ」
長剣を抜くことも出きず、隙だらけになったフォックスの額に、銃口を突き付けた。
('A`)「ちょいと話をしようや」
爪;'ー`)「…………」
フォックスは長剣からゆっくりと手を離し、そのまま抵抗の意思は見せなかった。
.
96
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:03:18 ID:CCACwx0U0
('A`)「なんでこんな事をしてるんだ? わけのわからねぇ能力やら帰天やら……ビジネスには見えねぇが」
爪;'ー`)「……初めはビジネスのつもりだったさ。宗教は金になるからね」
('A`)「この街には宗教を信仰してるような連中はいねぇ。だからこそって思ったのかもしれねぇが、俺にはそうは思えねぇな」
爪;'ー`)「……私も、この街でやっていけるか不安だったさ。しかし、調べてみると面白い話が出てきてね……」
爪;'ー`)「この街には神が住んでいるのさ……」
真剣な表情で、フォックスはそう語った。
嘘や狂言を吐いているようには思えない、そんな表情で。
('A`)「……そいつは知らなかったな。こんなネオンとアルコールとタバコの煙しかねぇような街を好む神様じゃあ、祈りを捧げる価値も無さそうだが」
爪;'ー`)「馬鹿にしてはならないよ。事実、私たちは力を手に入れた」
97
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:04:12 ID:CCACwx0U0
('A`)「ハッ。女の血を使ってか? まぁある意味ではこの街の神様らしい、って感じだな。趣味が悪すぎる」
爪;'ー`)「“帰天”のためには仕方ないんだよ……!」
('A`)「ビジネスやってたあんたの方が好みだったぜ」
爪;'ー`)「…………」
('A`)「ミイラ取りがミイラになるってのは、まさにこの事だな。まぁせいぜい神に祈りを捧げて死ぬといいさ」
拳銃のハンマーを起こして、引き金に力を込める。
('A`)「天に帰れよ」
大きな音を立てて、拳銃は火を吹く。
フォックスの後頭部から鮮血が飛び散り、薬莢が地面に転がって小気味よい音を立てた頃、フォックスの身体も地面に崩れ落ちていた。
('A`)「……アーメンハレルヤピーナッツバターだ……」
.
98
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:05:00 ID:CCACwx0U0
二丁の愛銃をホルスターに仕舞っていると、何やら赤い霧状の物が浮かんでいるのが目に入った。
その霧はやがて磔になったデレの元へと集まり、姿を消した。
フォックスに使われた血が、デレの身体へと戻ったのだろうか。
同時に、十字架からデレの身体が真っ直ぐに地面に落下した。
(;'A`)「おっと!」
瞬時に駆け寄って、床にぶつかる前にデレの身体を両手で抱える。
ジャケットを脱いでいて良かった。
着ていたら、間に合わなかったかもしれない。
('A`)「……おい、デレ。起きろ」
ζ(-、-*ζ「……ん…………?」
('A`)「自分で立ってくれ」
ζ(-、-;ζ「……ん……」
ゆっくりとデレを立たせると、ふらふらと揺れながら、閉じていた目を擦って無理やりに開いた。
ζ(゚ー゚;ζ「……あれ……ドクオ……?」
('A`)「終わったんだよ」
99
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:06:30 ID:CCACwx0U0
ζ(゚ー゚;ζ「…………」
('A`)「……なんだよ……」
デレは一歩下がり、俺を見つめている。
怯えている様子はない。
ただ、見つめている。
ζ(゚ー゚;ζ「……どうして……私のお父さんを……」
('A`)「…………仕事だったからだ」
ζ(゚ー゚;ζ「…………なんで……」
('A`)「……言ってるだろ、仕事だったからだ」
ζ( 、 ;ζ「……違うよ……」
「――――なんで、あなたなの…………」
.
100
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:09:21 ID:CCACwx0U0
('A`)「…………」
ζ(゚、゚;ζ「……こんなの酷いよ……」
('A`)「俺だって知らなかったんだよ。それに、悪かったって思ってるさ……」
ζ(゚ー゚;ζ「……私じゃなかったら思わなかったんでしょ!?」
('A`)「――ッ……」
確かにその通りだ。
今までは、悪いなんて思ったことも無かった。
むしろ店を持つための金になってくれてありがたいとまで思っていた。
ζ( ー ;ζ「……どうしたらいいのか……わかんないよ……」
('A`)「……父親の事、好きだったのか?」
ζ( ー ;ζ「……当たり前でしょ……」
('A`)「会社の金に手を付け、社員の給料をピンハネし、お陰で自殺した社員までいる。そんな父親でも、か? 報道されただろ」
ζ( ー ;ζ「…………」
デレは何も言わず、黙っていた。
呼吸の音だけを鳴らして。
しかし暫くすると口を開いて、ゆっくりと返事をした。
.
101
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:10:36 ID:CCACwx0U0
ζ( ー ;ζ「……それでも……だよ……」
('A`)「…………」
案の定、だ。
彼女は案の定、そう返事した。
父親どころか、生まれつき家族が一人もいなかった俺には理解できない話だ。
('A`)「……報酬はいらねぇよ。とっとと帰れ」
ζ(゚ー゚;ζ「……え?」
('A`)「お前の父親が死んだのも、お前がこんな街の寂れたレストランでウェイトレスやるはめになったのも、俺のせいだ」
('A`)「報酬なんていらねぇよ。消えてくれ」
ジャケットを拾い上げて、長椅子に腰を降ろす。
ポケットに仕舞ってあったタバコを取り出して、オイルライターで火をつけた。
吸い込んだ煙を吐き出す。
たったそれだけの動作を繰り返すだけで、俺の心は深く満たされた気がした。
野暮用を、終えた。
タバコがフィルターの先まで短くなった頃には、堂内にデレの姿はもう無かった。
.
102
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:11:47 ID:CCACwx0U0
('A`)「…………帰るか」
吸い殻を靴底で踏みつけて、立ち上がる。
礼拝堂から出た頃には、夕日が地面を赤く染め上げていた。
('A`)「……腹減ったな……」
ジャケットから財布を取り出して、中身を確認する。
――しまった。ツンの店で1万レスも払ってしまって、残金が少ない。
('A`)「……チッ。一度店に帰っ――」
「ちょっと待って」
('A`)「……?」
.
103
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:12:39 ID:CCACwx0U0
不意に後ろからジャケットを掴まれる。
仕事を終えて気が抜けていて、誰かに接近されていた事に気が付かなかった。
振り返るとそこには――。
ζ(゚ー゚*ζ「……報酬、まだ払ってないから」
先程とはまるで違う表情の、デレがいた。
('A`)「……いらねぇって言ったろ」
ζ(゚ー゚*ζ「それじゃ私の気が済まないもん。お金なら持ってきたから」
('A`)「チッ…………。じゃあ……」
「……晩飯奢ってくれ」
.
104
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:13:28 ID:CCACwx0U0
ζ(゚ー゚*ζ「……えっ? 晩飯?」
('A`)「晩飯だ」
ζ(゚ー゚*ζ「そんなのでいいの?」
('A`)「ああ。契約するときに言ったろ? “朝飯前だ”ってな」
ζ(゚ー゚*ζ「……プッ……」
('A`)「……おい、笑う所じゃねぇよ。ここは“かっこいい、惚れちゃう”って所だろうが」
ζ(゚ー゚*ζ「……童貞、拗らせちゃったのね」
(;'A`)「どっ……童貞とかやめろよ……チッ……ほんとやめろよ……やめろ……」
ζ(゚ー゚*ζ「……いいよ、行こ? 私が働いてるお店、ピザも美味しいから」
('A`)「…………ああ。腹一杯奢ってもらうぜ」
夕日はやがて沈み、月明かりが夜道を照らす。
開店したバーのネオンが点滅し、眩しく目に染みる。
彼女と歩くこの吸い殻まみれの小汚い道も、案外悪くないものだと思えた。
.
105
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:14:55 ID:CCACwx0U0
.
106
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:15:28 ID:CCACwx0U0
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「悪くねぇダンスナンバーだったぜ。ただちょっと、テンポが悪かったな」
('A`)
r/|/Rっy=
' j_H,j
し; J
“便利屋ドクオ” a.k.a. “Killer-D”
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
107
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:17:35 ID:CCACwx0U0
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「……仕方ないお。ブーン達は、そういう人間だから……」
__
_/:::::::|_
( ^ω^)
/ b|≡| |
|_|_:^_| j
(__)_)
“ブーン” a.k.a. “Killer-B”
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
108
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:18:51 ID:CCACwx0U0
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「……私は……一人でいるのも怖いよ……」
ζ(゚ー゚*ζ
jV,l.j
/mw\
"し^J''
“依頼人 デレ”
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
109
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:19:48 ID:CCACwx0U0
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「久々よ、こんな酷い銃を持ち込まれたのは」
ξ゚⊿゚)ξ
jh =l|oi
|z ;z|
し^J
“ガンスミス ツン”
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
110
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:22:06 ID:CCACwx0U0
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「……女なんて……しらねーよ……」
∧ ∧
( ´ー`)
/,,v__v|っA
|_-,,-,,|
し^ヽJ
“役立たず シラネーヨ”
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
111
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:24:08 ID:CCACwx0U0
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「一度使ったものを再利用するのは当然ですよね……!!」
∧_∧
(-@∀@)
y/,, ,,|r
|_-,,-,,|
し;^ヽJ
“祓魔師 アサピー”
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
112
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:25:23 ID:CCACwx0U0
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「……すぐに終わらせてやろう」
_
/:::::::ヽ /|
(´・_ゝ・`) //
jh: :ljh//
jh :njoJ
し^ヽJ
“司祭 デミタス”
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
113
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:26:31 ID:CCACwx0U0
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「この街には神が住んでいるのさ……」
爪'ー`) ;j
n/::::::|d t||r
^/:_:_:| ||
と^tゝ |;
“教皇 フォックス”
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
114
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:27:10 ID:CCACwx0U0
.
115
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:28:00 ID:CCACwx0U0
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
Thanks for reading!
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
116
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:28:35 ID:CCACwx0U0
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
('A`)便利屋ドクオの野暮用です
fin.
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
117
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:31:08 ID:CCACwx0U0
以上です。ありがとうございました。
エンドロールを作ってたら思ったよりも時間がかかってしまいました。
本当は三部作くらいにしたかった…間に合わなかった…。
118
:
名無しさん
:2016/04/03(日) 08:04:54 ID:vgapgkRw0
乙
ドックンかっこよかった
119
:
名無しさん
:2016/04/03(日) 08:31:51 ID:i/I.1kQ20
おつ!
バトル描写引き込まれたよ
ファンになっちまうぜ!
120
:
名無しさん
:2016/04/03(日) 13:59:17 ID:xqwNtxzE0
乙
これは好き
121
:
◆mQ0JrMCe2Y
:2016/04/04(月) 01:17:50 ID:J1bwFtJc0
【連絡事項】
主催より業務連絡です。
只今をもって、こちらの作品の投下を締め切ります。
このレス以降に続きを書いた場合
◆投票開始前の場合:遅刻作品扱い(全票が半分)
◆投票期間中の場合:失格(全票が0点)
となるのでご注意ください。
(投票期間後に続きを投下するのは、問題ありません)
詳細は、こちら
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1456585367/404-405
122
:
名無しさん
:2016/04/06(水) 23:17:10 ID:KC9pHpOU0
乙
ド直球やな
123
:
名無しさん
:2016/04/07(木) 04:35:44 ID:nQ.RLKZk0
異能に対して物理攻撃だけで渡り合ってくのすき
面白かったゆ
124
:
名無しさん
:2016/04/07(木) 18:05:50 ID:fFNm7rFE0
乙
続きが読みたくなるわ
125
:
名無しさん
:2016/04/18(月) 10:26:37 ID:Z3am7JDY0
続きてか連載してくれたりしない?
126
:
◆3hXbKaGZvg
:2016/04/18(月) 17:49:14 ID:Bz3wk9sc0
「こいつをやるよ」
男が俺に差し出したのは、拳銃。
黒いスライドから剥き出しになった銀色のバレルが、月明かりを反射させていた。
「銃は持っておくと便利だ。見せびらかすだけでお前の身を守る盾になり……」
「……相手を殺す武器になる」
「…………」
「構うことはねぇよ。俺はもう一丁持ってるからな」
「…………なんで……」
「?」
「なんで俺みたいな知らない奴に、こんなものを渡すんだ……?」
「……ハッ。何を言い出すかと思ったら、そんなことか」
彼は笑って、空を見上げながら言った。
「昔の俺に、よく似てるからだよ」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
127
:
◆3hXbKaGZvg
:2016/04/18(月) 17:49:48 ID:Bz3wk9sc0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
('A`)便利屋ドクオの野暮用です ――少年編――
近日?公開予定
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
という感じでよろしくお願いします!
128
:
名無しさん
:2016/04/18(月) 18:21:12 ID:ixLjVelA0
* + 巛 ヽ
〒 ! + 。 + 。 * 。
+ 。 | |
* + / / イヤッッホォォォオオォオウ!
∧_∧ / /
(´∀` / / + 。 + 。 * 。
,- f
/ ュヘ | * + 。 + 。 +
〈_} ) |
/ ! + 。 + + *
./ ,ヘ |
ガタン ||| j / | | |||
――――――――――――
129
:
名無しさん
:2016/04/18(月) 19:52:45 ID:SGjpafTU0
やったー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
130
:
名無しさん
:2016/04/18(月) 20:06:10 ID:shat8Gxs0
マジかよ!
ダメ元で言ったら続きキタ━!
待ってるからな!
131
:
名無しさん
:2016/04/23(土) 00:57:22 ID:MtbYCK6A0
作者賞6位おめでとう
132
:
◆3hXbKaGZvg
:2016/04/23(土) 02:21:02 ID:e2ehi1/w0
投票本当にありがとうございます…!
7割程度書き終わったので、近いうちに…。
途中まで投下するか悩みます。
133
:
◆3hXbKaGZvg
:2016/05/02(月) 15:42:48 ID:/bf6AHok0
完成しました、ので投下できるとこまでやります。
あと最近おしゃれな酉を入手したので変えます。
134
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:43:23 ID:/bf6AHok0
.
135
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:43:57 ID:/bf6AHok0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
('A`)便利屋ドクオの野暮用です
――少年編――
◆PizzaMan.c presents
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
136
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:44:33 ID:/bf6AHok0
.
137
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:45:06 ID:/bf6AHok0
「ハァ……ハァ……ッ!!」
(;'A)
ノ/-/o
j._/| ダッダッ
;.、ノイ、)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
俺はなんて、馬鹿なことを。
「ハァ…………うぐ……ッ!!」
、 ,
;.、vr⌒ち(;'A)っ ドサッ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
.
138
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:45:49 ID:/bf6AHok0
でもまだ、死ぬわけにはいかないんだ。
『待てやクソガキィ!!』
「……クソッ!!」
(;'A)
/,-|、 スクッ
j._/U
.,」^、〉 .,
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
.
139
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:46:36 ID:/bf6AHok0
話は、前日に遡る。
J( 'ー`)し「ドクオ……こんな遅くまでどこへ行っていたの??」
皺だらけの顔で鋭く俺を睨みつける女は不機嫌そうにため息をついて、シミの目立つ椅子に深く腰を降ろし、そう言った。
彼女は、俺が暮らしているこの児童保護施設の先生だ。
('A`)「……ちょっと……買い物に行ってました」
J( 'ー`)し「買い物? こんな時間に何が欲しかったの?」
('A`)「……喉が渇いたんで……コーラを」
大嘘だ。
実際に行っていたのは、繁華街。
この施設から逃げ出す金を集めるために、ギャングから預かったドラッグを売り捌いていたのだ。
J( 'ー`)し「あのねぇ…………。それが本当かどうかは置いといて、もしもあなたが警察に補導でもされたら、注意されるのは私なのよ!?」
('A`)「…………」
140
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:47:09 ID:/bf6AHok0
いつもそうだ。
この人は、いつも自分の事しか考えていない。
J( 'ー`)し「お金が必要なんだから、問題は起こさないで欲しいわ。警察に目をつけられでもしたらどうしてくれるのよ」
この児童保護施設は、児童保護施設とは名ばかりに、保護した少女を金で売りさばいていた。
養子縁組という、これまた名ばかりの方法を使って。
手に入れた大金は、この女の意味もない化粧やエステに消費されているのだろう。
つい吐き出しそうになった嫌味を、石を飲み込むように喉奥へと押し込んで、俯いた。
J( 'ー`)し「男は売れもしないから困ったもんだよ。さらに余計な面倒ごとまで引っ張り込んで……全く」
('A`)「…………」
J( 'ー`)し「もういいわ。部屋に戻りなさい」
('A`)「……はい」
ゆっくりと、薄暗い部屋を後にする。
後ろからブツブツと彼女が何かを言っているのが聞こえたが、俺は耳を傾ける事もせずに歩き続けた。
電気のついていない廊下を通って、俺は自分の寝床へと戻った。
141
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:48:06 ID:/bf6AHok0
('A`)「チッ……クソババァが……」ドサッ
空き部屋から持ち出してきた敷布団を重ねているおかげで、このベッドだけは居心地が良かった。
枕元のランプをつけ、ショルダーバッグから取り出したメモ用紙を眺める。
('A`)「…………6万レスか……」
ここ一ヶ月の間で、俺が売り捌いたドラッグの金額が30万レス。その内の2割の6万レスが、俺の手元に入ってくる。
ギャングに今月の売上金を渡すのは、明日。
つまり、今俺の手元には30万レスもの大金があるという事だ。
('A`)「…………」
俺はもう14歳だ。年齢を偽れば、ボロアパートを借りる事も不可能ではない。
30万レスもあれば、ここから逃げ出しても一ヶ月はやっていける。
142
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:48:39 ID:/bf6AHok0
('A`)「…………、何考えてんだか。見つかって殺されるのがオチだ」
どうせ逃げ出すなら、もうちょっと早く逃げ出した方が良かったんだ。
俺が明日金を持ってこなかったら、ギャング達はすぐに俺を捜し出して、この脳天に大きな穴を空けるだろう。
('A`)「……ま、コツコツ貯めるっきゃねぇな……」
ドラッグの密売は、まだ始めたばかりだ。
数ヶ月も続けていれば、逃げ出すに十分な金額は貯まるだろう。
俺は頭の中で何度も金額の計算をしながら、その日は眠りについた。
.
143
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:49:34 ID:/bf6AHok0
(うA`)「……ふぁぁ……ねむ……」
カーテンの隙間から漏れ出す日差しの眩しさに、俺は目覚し時計を使わずとも目を覚ました。
ホールへやってくると、すでに何人かがテーブルで食事を取っていた。
俺もトレーを抱え、カウンターに置かれている器を次々と並べていく。
器に入っているのは、どれも質素な食品ばかり。
わがままを言えば、俺は朝昼晩全てピザでもいいというのに。
だが、何も食えないよりはマシだ。
自分にそう言い聞かせるしかない。
ミセ*゚ー゚)リ「おはようドクオー!」ドンッ
(;'A`)そ「おっと!」カチャッ
トレーを抱えてぼーっと立っていると、不意に後ろから押された。
トレーの上でゆらゆらと揺れる食器を上手いことなだめて、俺は振り返った。
144
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:50:17 ID:/bf6AHok0
(;'A`)「……ミセリ……あのな……」
ミセ*゚ー゚)リ「あ、ごめんごめん! ぼーっとしてたからそんなにいっぱい持ってるとは思わなくて!」
彼女の名前は、ミセリ。
年齢は俺の一歳下で、13歳だ。
彼女もまた、俺と同じくこの施設に保護された一人だ。
どうやら、両親から虐待を受けていたらしく、そのまま厄介払いのようにここに捨てられたとか。
ミセ*゚ー゚)リ「今日はやけに早起きだね。どしたの?」
('A`)「早起きってレベルか?」
ミセ*゚ー゚)リ「いつもより1時間も早いよ。ドクオがそんなに早起きするのは珍しいって」
('A`)「……腹が減ったんだよ」
ミセ*゚ー゚)リ「……なにそれ。笑えるー」カチャカチャ
彼女は笑顔のままトレーの上にいくつもの食器を並べていた。
俺はその間に空いてる席へと腰を下ろした。
ミセ*゚ー゚)リ「せっかくだから一緒に食べよ?」スッ
('A`)「……そうだな」
ミセ*゚ー゚)リ「もー。朝から浮かない顔してどうしたの? こっちにまでうつっちゃうよ」
('A`)「この顔は元からだっての」
145
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:51:18 ID:/bf6AHok0
パサパサのパンを口に放り込み、咀嚼する。それを色の薄いスープで胃の奥に流し込んだ。
お世辞にも美味しいとは言えない。
もしも俺が本当に浮かない顔をしているのだとしたら、それはきっとこの朝食が原因だろう。
ミセ*゚ー゚)リ「ごはん美味しいなぁ」モグモグ
俺の感想とは真逆に、ミセリはそう言う。
彼女と食事を共にする機会はあまり無いが、どんな食事でも美味しそうに食べていたのは印象深い。
ミセ*゚ー゚)リ「今日は土曜日だねぇ」
('A`)「……ああ、そうだな」
ミセ*゚ー゚)リ「何か予定はあるの?」
('A`)「いや、特にねーけど」
ミセ*゚ー゚)リ「じゃあさ、ちょっと街に出かけない? 私見たいお店があるんだ」
('A`)「……店って……。買う金あんのか?」
ミセ*゚ー゚)リ「無いよ?」
('A`)「…………」
146
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:52:00 ID:/bf6AHok0
それもそのはずだ。
当然ながら、ここの子供たちにお小遣いが与えられるような事はない。
むしろ子供たちに裏庭で育てた野菜やら果物やらをを持たせて、それを売りに行かせるくらいだ。
もちろん報酬などない。
('A`)「金ねーのに行ったってしょうがないだろ?」
ミセ*゚ー゚)リ「いいの、見たいだけだから。散々お店を冷やかして冷やかして…………それでね、いつかそれを堂々と買ってやるの!」
(;'A`)「なんだそりゃ」
ミセ*゚ー゚)リ「って事で、行こ? 決定ね!」
(;'A`)「……はぁ。わかったよ」
.
147
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:52:50 ID:/bf6AHok0
_________| |. |.:ll.:.::.:ミ;;;;;;ミ |___________
\.! !i!|l.:.::./:::/─────┐. |// i! .| | | |__
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄从 !.i.ll:.:/.:;/jesty's Shoes | . |/ | |i ! | ||=||=
. ミ.:.:::.ミ |..i!lll:::::/──────┘ .| | l |!. | ||=||=
-、_,-、_,-、_,-、_,-、_,-、_,-、_,!ヽ.:.彡|i.:iiii|.:::|___ / ̄ ̄ヽ. ! | l i!. | ||=||=
二二二二二二二二二| | \ヽ.:i!|:::::! \\| |口i口i口| | | | li, | ||=||=
二二二二二二二二二| | l !i.::ii;;l;::! \| ||C|osed|| |ヽ、_,--、_,--、_,--、,! !l_,||=
二二二二二二二二二| | |_,|i.::|||!|::!___| |口i口i口| | ̄l ̄ ̄l ̄ ̄l ̄ ̄l ̄ ̄l ̄l ||=
二二二二二二二二二| | |i.::iii!i;::| |口i口i口| | ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄l ̄ ̄l ||=
二二二二二二二二二|_l_. !i::iii.i.:.:| ___|_i_i_|_| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
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(.:.:::..(.:.::  ̄ ̄ ´ ゝ___ソ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ´ゝ___,ソ ̄ ̄ \
.
148
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:53:24 ID:/bf6AHok0
数時間後、俺たちは街まで来ていた。
街と言っても、それほど栄えているわけではない。
ただ俺たちが住んでいる辺りよりは、小洒落た店が多く並んでいた。
「おい走るなよ」 「次はあのお店ね!」
( 'A) ミセ*゚ー゚)リ
|":-っ ノ|h-.|o
j_-| /wv| タタタッ
,、しJ ;、, て^ヽJ.;
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
街の散策を始めてから、すでに1時間が経過しただろうか。
俺は十分すぎるほど見物したと思ったが、この様子だと彼女はまだ足りないらしい。
まあ、たまにはこういう日も悪くないのだが。
ミセ*゚ー゚)リ「ふわぁ〜〜! 見てこれ!」
('A`)「どれだ?」
ミセ*゚ー゚)リ「これこれ! このペンダント!」
(;'A`)「たっかそうだな……って、1万!?」
(;'A`)「ペンダント一つにそんな大金を払う奴がいるのかよ……」
ミセ*゚ー゚)リ「かわいいなぁ〜。私だったら買うね! 絶対!」
('A`)「……まあ、デザインは悪くねーな」
ミセ*゚ー゚)リ「すみませーん! これ付けてみてもいいですかー!?」
(;'A`)「おいおい」
149
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:54:25 ID:/bf6AHok0
俺たちがどんなにみすぼらしい服装をしていても、どんなに貧乏そうに見えても、店員は頷くしかない。
それを見てミセリは大喜びだ。すぐに自分の首へそのペンダントをかけた。
ミセ*゚ー゚)リ「どう? どう?」
('A`)「……おお、似合ってるな」
ミセリの首につるされた、天使を象った銀色のペンダント。
服装だけがいまいちだが、彼女の髪型や髪色にはとても似合って見えた。
素直に、感心してしまった。
ミセ*゚ー゚)リ「えへへ、ほんと?」
('A`)「ああ。こりゃ買うべきだ」
ミセ*゚ー゚)リ「でもお金がないからお預けー」スッ
(;'A`)「ほんっと冷やかしだな」
150
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:55:08 ID:/bf6AHok0
ミセリはペンダントをゆっくりと外すと、また元の場所へと戻した。
1万レス。
俺が肌身離さず持っている現金の、わずか30分の1の金額だ。
当然ながらそんな事を知るはずもない彼女は、少しだけ残念そうな顔でペンダントを見つめていた。
ミセ*゚ー゚)リ「……ささっ、次行こ!」タタッ
(;'A`)「だから走るなっての……」
カランカラン、とドアのチャイムを鳴らして、彼女はすぐに店内から去っていく。
窓ガラスから見えていた彼女の横顔も、すぐに見えなくなった。
('A`)「…………」
俺は馬鹿だ。
ああ、間違いなく大馬鹿だ。
.
151
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:56:01 ID:/bf6AHok0
|i l::| |VNヾ` ´/ |::; l:}l:::::::::::/ } :::::::::::::;
. ゝ ',! |:::::::| ', r ,:/ j' |::::::::/) } !::::::::::: ,'
. ヽVト、| ヽ / !::: / _/ j:::::::::: ,'
{ l ;::::/Y´ /:::::::::: ,′
. ヽ ', ___,. -ニ=- _ ,'/ __,/:::::::::::::::/ー- _
. ', {ゝ-’:::::::;: ---ゝ ,:7::::::::::::;:>≦ }
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’, ,.::=¬ ,. -=ニ二 _,. {
’, / ,. -= l
. ’, / |
’, / _,. --|
’, / ,. =≦≧=- _ j
「…………すいません」
ただ、馬鹿になるのも悪くない気分だ。
.、
| '.
'. '. _ ,.、
:,.;^' ^ ".
r'| ',
'h' j
“';, ,;
| ';
「これ、ください」
.
152
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:56:36 ID:/bf6AHok0
ミセ*゚ー゚)リ「ふぅー、楽しかったね!」
('A`)「ああ」
街から施設への帰り道。
もう少し歩けば、施設に到着するだろう。
ミセ*゚ー゚)リ「また行きたいな〜」
バッグの中に隠した、銀色のペンダント。
俺はそれをミセリにいつ渡そうか、ひたすら悩んでいた。
(;'A`)「…………」
駄目だ。
いざ渡すと思うと、なぜだか緊張してしまう。
別に俺は、ミセリに特別な感情を抱いているわけでもないのに。
(;'A`)「…………」
153
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:57:23 ID:/bf6AHok0
何故だろうか。
とても恥ずかしい。
やっぱりやめておくべきだったのではないか。
(;'A`)「…………」
ミセ*゚ー゚)リ「どうかした?」
(;'A`)そ「へっ!? い、いやいや!!」
ミセ*゚ー゚)リ「ついたよ?」
(;'A`)「えっ? あ、ああ…………」
気づけば、自分たちは施設の玄関前まで来ていた。
ミセ*゚ー゚)リ「ただいまー」ガチャッ
('A`)「…………」スタスタ
仕方がない。
何も今日でなくとも、渡す機会ならいくらでもある。
勇気が湧いてきた頃に、ちゃんとした形で渡そう。
そう心に誓った。
154
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:58:14 ID:/bf6AHok0
J( 'ー`)し「あら、やっと帰ってきたの?」
玄関の扉を開けてすぐの場所に、先生が立っていた。
彼女は、いつもはあまり見せない笑顔を浮かべて、こちらに歩み寄ってくる。
ミセ*゚ー゚)リ「ただいま、先生」
J( 'ー`)し「ミセリ、今日は大事な話があるの。ちょっと来てくれる?」
ミセ*゚ー゚)リ「へ? うん、わかりました」
('A`)「……?」
大事な話?
出かけていた事と何か関係があるのだろうか。
ミセ*゚ー゚)リ「付き合ってくれてありがとね、ドクオ! またお昼ご飯の時に!」
('A`)「あ、ああ……」
まあ、後で聞けばいい話だ。
俺はペンダントを渡す練習でもしていよう。
そんな事を考えながら、俺は軋む床を歩きながらゆっくりと部屋へ戻った。
.
155
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:58:54 ID:/bf6AHok0
――それから長い時間が過ぎても、その日のうちに、再び彼女と会うことはなかった。
昼食時、俺は食事が終わってもホールで待っていたが、一向に現れず。
夕食時、彼女の分の食事まで用意して待っていても、現れず。
('A`)「…………」
やがて他の子供たち全員が食事を終えてから数時間が経った頃、俺はようやく諦めて、トレーを元の場所へと戻したのだった。
('A`)「あいつが飯も食わないなんてな……」
余程、深刻な話だったのだろうか。
先生の表情からは、そうは思えなかったのだが。
('A`)「……まあいいや」
仕方なしに、扉を開けて廊下へ出る。
相変わらず暗い廊下だ。
金に困っていないのなら、もう少し設備を整えてほしいものだ。そう思った。
156
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:59:34 ID:/bf6AHok0
不意に、横の扉が開く音がする。
この部屋は、先生の寝室だ。
中から出てきたのは、案の定気味の悪い笑顔を浮かべた女だった。
J( 'ー`)し「……あら」
目が合う。
俺は視線を逸らさずに彼女の瞳をまっすぐ見つめて、こう聞いた。
('A`)「……ミセリはどうしたんですか」
ミセリ、という名前を聞いて、彼女は顔をそらして口角を引きつらせていた。
J( 'ー`)し「……ああ、あの子なら引き取られたわよ」
(;'A`)「――ッ!?」
彼女の言葉を聞いて、思わず足がすくみそうになった。
引き取られた。
それはつまり、大金で売り飛ばされたという事だ。
157
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:00:19 ID:/bf6AHok0
(;'A`)「なっ……」
J( 'ー`)し「今日ね、いい方が来てくれたのよ。ミセリくらいの歳の娘なら、男手一人でも世話ができるって……」
(;'A`)「…………」
世話ができる?
冗談じゃない。
世話をさせられるのはミセリの方だ。
だからあえてその年齢の子供を選んだんだ。
この女もそれをわかっている。
わかっていて、それでも大金に換える。
もう何回――、あと何回この女はそれを繰り返すのだろうか。
(;'A`)「……じゃあ、もう連れてかれたんですか……」
J( 'ー`)し「ええ。今頃あの方のお家で、温かいお風呂にでも浸かってゆっくりしているでしょうね」
(;'A`)「ッ…………」
この女は、救いようがない屑だ。
ただ、俺は腹を立てるよりも、悲しみに心をまるごと押し潰されてしまった。
158
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:01:03 ID:/bf6AHok0
( A )「…………」
J( 'ー`)し「……おやすみなさい、ドクオ」
俺が口を閉ざしていると、彼女はそう言ってホールの方へと歩みを進めた。
やがて扉が閉まる音が、この薄暗い廊下に響き渡った。
('A`)「…………」
どうする事もできない。
何を言ったって、あの女はミセリの居所を教えるはずもない。
手紙だって出させてくれるはずがない。
――もっとも、ミセリが手紙を受け取れるような状況に置かれるかどうかもわからない。
('A`)「…………」
今までも、この施設から引き取られていった子供たちとは、二度と会うことがなかった。
もう、忘れるしかないのか。
悔しさを圧し殺して、ゆっくりと歩きだした。
.
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