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('A`)便利屋ドクオの野暮用です
1
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:08:48 ID:BKUgdd360
('A`)「ったくよ……」
楽器や銃、スピーカーに囲まれた狭苦しい部屋。
奥に行けば寝室もあるが、俺は主にこの部屋で過ごしていた。
何故なら、ここは俺の店だからだ。
('A`)「開店日だってのに、客は一人も来やしねぇ……」
仕方なのない事だ。
この街“ソウサク”は、決して平和なわけじゃあない。
だが何か厄介事があっても、俺のような便利屋に仕事を頼むくらいなら、近くのバーで酒を飲んで面倒ごとを忘れようと考える頭の悪い連中ばかりだ。
俺には都合の悪い街だと言える。
友人にも、“よくこんな所で便利屋なんか開くね”、と呆れられるくらいだ。
まあ、暇なのは嫌いじゃないんだがな。
('A`)「しっかし……金がねぇのは辛いとこだ」スッ
机に置かれたピザを一切れ、口に運ぶ。
先程近くの店から買ってきたばかりで、熱を持ったチーズがドロリと溶けて黒い机に強いコントラストを残した。
('A`)「……うめぇな」
ずっとこの調子で客が来なければ、いずれはピザを食う金すら尽きる。
それだけは避けたい。
2
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:09:38 ID:BKUgdd360
('A`)「まあ何日かすりゃ来るだろ……」
箱からタバコを一本取り出し、それを咥える。
煙を深く吸い込んで、それをゆっくりと吐き出した。
タバコの先から立ち昇る紫煙が、ゆらゆらと揺れていた。
茶色い大きな扉が初めて自分以外の手で開かれたのは、その時だった。
( ^ω^)「ドクオ、開店おめでとうだお」
('A`)「……なんだよブーンか」
扉を開けて顔を出したのは、仕事仲間のブーンだった。
友人と言うよりは、腐れ縁に近いだろうか。
( ^ω^)「わざわざ顔を出してやったのにそれはないお」
('A`)「うっせーな、客がこねーんだよ」
( ^ω^)「だから言ったお、こんな所で便利屋なんて……」
('A`)「あーわかってるよ。だが店を借りるにはこの街じゃねーと金が足りなかったんだよ」
半年ほど前の事だ。
大手企業の社長を殺してくれとの依頼を受け、報酬で得た金をブーンと分け合った。
その額は100万レス。借金を返して手元に残ったのは、そのわずか三分の一程度だ。
なんとか店を借りて、数ヶ月やっていける程度の額ではあった。
3
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:10:25 ID:BKUgdd360
( ^ω^)「ギターやらドラムやら買いすぎなんだお」
('A`)「はあ? 俺が持ってるのは全部安物だぞ」
( ^ω^)「そうなのかお? てっきり拘ってるのかと」
('A`)「んなもん弾けて音が出りゃいいんだよ。コイツと一緒さ」コトッ
引き出しに入れてあった二丁の黒い銃を取り出して、机の上に置く。
アウターバレルがスライドから剥き出しになったこの銃が、お気に入りだった。
( ^ω^)「その銃好きなくせに何言ってんだお」
('A`)「…………確かに」
( ^ω^)「そのうちグリップやスライドも改造しそうだお」
('A`)「お前と一緒にすんなっての」
ブーンの持っている銃には、原型がわからないほどの改造が施されている。
バレルは長いものに交換してあり、グリップにはブーンの大きな手に合うように厚めの木製グリップパネルが取り付けられている。
どうも知り合いに腕の良いガンスミスがいるのだとか。
4
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:11:15 ID:BKUgdd360
('A`)「……で? 用件はねぇのか?」
( ^ω^)「ないお」
('A`)「……だろうな」
( ^ω^)「ちょっとシャワー借りるお」
('A`)「それが目的かよ。奥にあるから勝手にしろ」
( ^ω^)「ごめんだお」
ブーンは部屋の奥、ちょうど自分が座っている椅子の真後ろにある扉に入っていった。
しばらくして、シャワーの音が聞こえてきた。
('A`)「ったく……」
ため息をついてつまみ上げたピザを口に放り込むと、再び入り口の扉が開かれた。
――今度は誰だ。
(-@∀@)「あの……私、創作教団のアサピーという者なのですが……」
('A`)「チッ、宗教勧誘かよ……」
創作教団。どうも新しく出来たらしい宗教団体で、最近やたらと耳にするようになった名前だ。
この辺りに住む人間のうちほとんどは、宗教を信仰していない。
そんな街にどうして、宗教団体を立ち上げたのだろうか。
俺にはわからないが、さして興味も無かった。
5
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:12:14 ID:BKUgdd360
(-@∀@)「本日は特別に新しい教徒様のための礼拝を行っておりまして、ぜひともうちの教会に足を運びいただけ――」
('A`)「――帰れ」
(;-@∀@)「ッ……」
(-@∀@)「あ……もしお越しになるのがご面倒であれば、今こちらで当教団の説明をさせていただきますが」
('A`)「……あのな」
椅子から立ち上がり、フォックスと名乗った彼の元へと近寄る。
――愛銃を、強く握りしめて。
(-@∀@)「あ、こちらパンフレットになります」
('A`)「興味ねぇっつってんだよ」
(-@∀@)「……いや説明を聞いてからご判断いただければ――」
(;-@∀@)そ「――ッ!?」
親指でセーフティを外し、ハンマーを起こした銃の先を男の額に当てて、一つため息をついた。
6
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:13:10 ID:BKUgdd360
('A`)「……そんなに説教がしてぇんなら、コイツでてめぇの額にもう一つ口を作ってやろうか?」
(;-@∀@)「ヒッ……あ……」
('A`)「とっと帰れ」
(;-@∀@)「しし、失礼しました……!」
扉が強く開かれる音だけを残して、男はよろけながら去っていった。
ご丁寧に、パンフレットを一冊落として。
('A`)「…………」
('A`)「客は来ねぇのかよ……」
気づけば、夕日が長い影を作っている。
そろそろ日が暮れる頃だ。
('A`)「もうちょっとだけ待つか……」
再び机に戻り、残りのピザを食べ終えた。
また腹が減ったら、晩飯を買いに行こう。そんな事を思った。
.
7
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:14:28 ID:BKUgdd360
――夜――
( ^ω^)「案外ギターって楽しいもんだお!」
ブーンがアンプに繋いだギターを煩く鳴らしながら、そう言った。
下手なものを聞いてるのは、こんなにも苦痛だったとは。
('A`)「やめろやめろ、近所迷惑だろうが」
( ^ω^)「近所なんて気にする柄かお」
('A`)「俺がうるせーと思ってんだよ」
( ^ω^)「ちぇっ」
そう言われてブーンは、アンプの電源を落とし、ギターを置いてソファーに寝転がる。
言われてすぐに辞めたところを見ると、本当はそれほど楽しさを見出だせなかったのだろう。
('A`)「いい加減帰れよ」
( ^ω^)「ドクオが店仕舞いするまで居座るお」
('A`)「今日はもう閉店だ」
( ^ω^)「あーここは一体何屋さんだったんだおー」
('A`)「客がこねーからって馬鹿にすんじゃねーよ」
近くのバーでテイクアウトしてきたフィッシュアンドチップスを食べながら、俺は漫画を読んでいた。
ブーンもやる事がなくて暇になったのか、俺が読んでいる漫画を一巻から読み始めていた。
.
8
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:15:25 ID:BKUgdd360
それから三十分も経った頃、入り口の扉がノックされる音が、この静かな部屋に響いた。
('A`)「……開いてるぜ」
そう言うと、扉を叩いた人物はゆっくりと姿を表した。
ζ(゚ー゚;ζ
現れたのは意外にも、女性だった。
年齢は二十歳前後、自分と変わらないくらいだろうか。
('A`)「何の用だ? レストランなら50m先にあるが」
ζ(゚ー゚;ζ「……困ってるの……」
('A`)「……ほう」
彼女の表情を見る限り、どうやら仕事の話のようだ。
俺は手に持っていた漫画を放り投げて、彼女の顔をじっと見つめた。
ζ(゚ー゚;ζ「変な男につけられてるの。数日前からなんだけど、今日もついてきてて……」
('A`)「……なるほど。んで偶然本日開店の便利屋の看板を見つけて、扉をノックしたってわけか」
ζ(゚ー゚;ζ「う、うん……」
('A`)「……で?」
ζ(゚ー゚;ζ「……え?」
9
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:16:33 ID:BKUgdd360
('A`)「え? じゃねーよ。看板見たんだろ?」
ζ(゚ー゚*ζ「うん……」
('A`)「ここは店だ。依頼人は報酬を払わなきゃあならない。まあもちろん、後払いで結構だが」
(;^ω^)「そんな態度じゃ客も来ないお」
口を挟む男を無視し、俺は話を続けた。
('A`)「もっとも、金を払わずにトンズラしちまったら……わかるな?」
ζ(゚ー゚;ζ「……いくらくらい……?」
('A`)「……ほら見ろよブーン。ちゃんと話がわかってるじゃねーか」
( ^ω^)「…………」
('A`)「……払えるだけで構わんさ」
ζ(゚ー゚;ζ「……えっ?」
( ^ω^)「やっぱりだお」
('A`)「なんなんだよ、いちいち口を挟みやがって」
( ^ω^)「おっおっ、そのちょっとした優しさがドクオらしいと思ったんだお。それなら最初から優しくすればいいのに」
('A`)「うっせーな」
10
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:17:36 ID:BKUgdd360
ζ(゚ー゚;ζ「……いくら払えるかわかんないけど……報酬は出すから……」
('A`)「じゃ、交渉成立だな。ブーン、銃は持ってるな?」
(;^ω^)「おっ!? なんでブーンに聞くんだお!?」
ブーンはそう言いながらも、腰のホルスターを触り銃があるかどうかを確認していた。
('A`)「暇なんだろ、付き合えよ」
( ^ω^)「……しょうがないお。今日だけだお」
('A`)「ああ。……えっと、名前はなんていうんだったか?」
ζ(゚ー゚*ζ「あっ、まだ教えてなかったね。私はデレだよ」
('A`)「OK、デレ。俺はドクオ、こいつはブーンだ。あんた運がいいぜ。その辺のチンピラよりゃぁよっぽど腕の立つ二人組だ」
ζ(゚ー゚*ζ「ほんと? じゃあお願いしたいところだけど……大丈夫なの?」
('A`)「……ハッ、そんなもん“朝飯前”だよ」
ζ(゚ー゚*ζ「……ちょっと頼もしいね……」
11
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:18:10 ID:BKUgdd360
('A`)「だろ? ……さて……どうやるかだが……」
俺はゆっくりと椅子から立ち上がり、机の上に置かれたままのピザの箱を袋に詰め直して、それをデレに手渡した。
('A`)「今日はうちの開店日でな。まだここが何をやっているかはあんま知られてないだろう。って事で、こいつを持って家に帰れ」
ζ(゚ー゚*ζ「……それでいいの?」
('A`)「ああ。あんたをつけてる奴を見つけたら、とっちめてやるからよ」
ζ(゚ー゚*ζ「……うん、わかった。信用するからね?」
('A`)「安心しろ」
ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ、よろしくね」
ピザの空箱が入った袋を整えながら、デレは扉を開けて静かに店から出ていった。
.
12
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:19:14 ID:BKUgdd360
俺とブーンは裏口から出て、デレを尾行している人物を探していた。
難しい事じゃない。この時間に街を彷徨く奴はそういない。
街灯の少ない暗闇だが、足音や月明かりを頼りに、すぐに犯人を見つけることができた。
( ´ー`)「…………」
('A`)(なんだ、相手は一人か……)
デレの数十メートル後ろを、ゆっくりと歩く男。
体格こそ普通だが、何故だが妙に気になる服装をしていた。
('A`)(あの服、どっかで見た気がするんだよな……)
しかし、暗闇かつ遠距離からではしっかりと視認する事ができない。
――まあどうせ、すぐにわかる事だ。
俺とブーンは足音を立てないよう、ゆっくりと男に近寄った。
('A`)「ブーン、お前は遠回りしてデレを保護してこい。
タイミングを見計らえよ」
( ^ω^)「わかったお」
そう言うとブーンは、路地に入って駆け足でデレの元へと向かっていった。
('A`)(……今日は涼しいな)
このくらいの気温なら、寝苦しいこともないだろう。
早く仕事を済ませて、ベッドに横になりたいものだ。
.
13
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:20:31 ID:BKUgdd360
('A`)(……そろそろか)
(;´ー`)「…………?」
数メートル手前まで近寄ると、男が不審な気配を感じ取ったのか、表情をこわばらせながらこちらに振り向いた。
('A`)「よう、今日はいい夜だな」
(;´ー`)「はっ……えっ……!?」
('A`)「酒で熱った身体にゃ、涼しい夜風が丁度いいねぇ。あんたどうせ、そこのバーで飲んでたんだろ?」
(;´ー`)「あ、ああ、よくわかったな。あそこのバーテンダーは最高のカクテルを作るからな」
('A`)「ああ。あそこは最高だ」
気づかれないように何気なく遠くを見ると、ブーンがデレに声をかけているのが確認できた。
頃合いだ。
('A`)「しっかし……おかしいな」
(;´ー`)「……何がだ?」
('A`)「今日は、あのバーテンダーは休みだったはずだが……」
(;´ー`)「……ッ!!」
14
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:21:20 ID:BKUgdd360
('A`)「あんたは一体なんの話をしてたんだ?」
(;´ー`)「……てめぇこそ何なんだ……?」
('A`)「俺はあそこで便利屋を営んでいる者だ」
( ー )「…………そうか。そういう事か……」
チャキン、と鋭い音が僅かに聞こえた。
男の右手は、背中へ回されていた。
( ´ー`)「ならとっとと死ねや!!」
男はそう叫ぶのと同時に、短いナイフを俺の腹目掛けて一直線に付き出してきた。
('A`)「甘いな」
火花が散ったように見えた。恐らく気のせいだろうが、そう思ってしまうほどの甲高い音が響いていた。
男のナイフは、俺の拳銃のグリップエンドに当たって動きを止めていた。
正確には、俺がそうしたのだ。
.
15
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:22:26 ID:BKUgdd360
('A`)「叫んだらタイミング取りやすくなっちまうだろ? 最初の一発で仕留めたいんなら、次からはやめておく事だ」
(;´ー`)「――ッ!!」
('∀`)「もっとも……次はねぇけどな……」
男が手元に引いたナイフを、もう一丁の愛銃で撃ち抜く。
小さな刃に亀裂が入り、粉々になっていくのが見えた。
(;´ー`)「なっ……!?」
('A`)「悪いけど、俺の射撃は正確なんだ」
距離、射角、跳弾。あらゆる要素を一瞬で計算し、目標を確実に撃ち抜く。それが俺の特技だった。
もっとも、この距離ではあまり意味を成さないが。
('A`)「さて、お前はなんであの女をつけてたんだ?」
(;´ー`)「……女なんて……しらねーよ……」
('A`)「そうか」
(;´ー`)「――ッ!」
男の顎に、銃口を突き当てる。
そしてゆっくりと、撃鉄を起こした。
.
16
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:23:41 ID:BKUgdd360
('A`)「もう一度聞く。なんであの女をつけてた」
(;´ー`)「…………」
(; ー )「……しらねーよ」
('A`)「……そうか」
引き金に、グッと力を込めた。
('A`)「何も言えねーんなら、この口はいらねーな」
大きな音を立てて、愛銃が火を放つ。
上空に飛び散った血液が月明かりを反射させて、キラキラと煌めいていた。
( ー )
('A`)「……役に立たねぇ男だ……」
銃に付着した血液を振り払って、ホルスターに戻す。
返り血はできるだけ浴びないように心がけているが、銃を突き付けている場合だけはどうしようもなかった。
( ^ω^)「ドクオー」
遠くの方から俺の名前を呼びながら、ブーンとデレが走ってきていた。
銃声を聞いて、終わったとわかったのだろう。
( ^ω^)「終わったかお」
('A`)「ああ。この通りな」
ポケットからタバコを取り出しながら、血溜まりを作る男の死体に銃口を向けてそう言った。
17
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:25:44 ID:BKUgdd360
ζ(゚ー゚;ζ「なっ……えっ……!?」
('A`)y‐「どうした?」
ζ(゚ー゚;ζ「こ、殺してなんて言ってないのに……!! そんな……!!」
('A`)「喚くなよ。この街に住んでりゃ、死体ぐらい見たことあるだろうが」
ζ(゚ー゚;ζ「そ、そうだけど……でも……」
('A`)y‐「でも?」
ζ(゚ー゚;ζ「なんで殺しちゃったの!? 捕まえるとか脅すとか、方法はあったでしょ!?」
('A`)「……はぁ……」
タバコの先に溜まった灰を捨て、もう一度咥える。
フィルターに付着していた唾液が冷えていて、少しだけ不快な気分になった。
('A`)「あのな……。捕まえるとか脅すとか……ガキの遊びじゃねーんだよ。それにナイフを出されてんだ。殺す以外ねーだろ」
('A`)「オマケにこいつは何も喋らないときた。だから生かしておく必要がなかった。Do you understand?」
ζ(゚ー゚;ζ「…………そんな……」
18
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:26:56 ID:BKUgdd360
( ^ω^)「……仕方ないお。ブーン達は、そういう人間だから……」
ζ(-、- ζ「…………そう……」
デレは拳を握りしめて、俯いた。
確かに、彼女には悪いことをしたと思う。しかし俺には、そういうやり方しかできないのだ。
('A`)「……それよりもよ、こいつに見覚えはねーのか?」
ζ(゚ー゚;ζ「……まったく知らない人だよ……」
( ^ω^)「……お? この服どこかで……」
ζ(゚ー゚;ζ「……あっ!」
('A`)「……?」
ζ(゚ー゚;ζ「この服……創作教団の人たちが着てたのと同じだ……」
('A`)「……! ……ほぉ……」
言われてみれば確かに、夕方店にやってきた男の着ていたものと同じだ。
既視感の謎は解けた。
19
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:27:54 ID:BKUgdd360
( ^ω^)「なんで創作教団なんだお……?」
('A`)「こいつはなーんか臭うぜ……」
( ^ω^)「……だお……」
ζ(゚ー゚;ζ「ね、ねぇ。この人殺しちゃったら、また私創作教団の人に狙われちゃうんじゃ……」
('A`)「かもな」
ζ(゚ー゚;ζ「……ッ」
ζ(゚ー゚;ζ「そんな……今度は殺されちゃうよ……!」
('A`)y‐「……かもなぁ」
二本目のタバコに火をつけて、煙を吸い込む。
タバコの先から揺れ動きながら昇る紫煙を、ただ見つめていた。
( ^ω^)「……ドクオの店に泊まればいいお」
('A`)y,.、ポロッ 「……は?」
ζ(゚ー゚*ζ「……! いいの……!?」
('A`)「いやいや何言ってんだ。俺一人で定員オーバーだ」
( ^ω^)「あの広さなら一人くらい余裕だお」
('A`)「うさぎ小屋かなんかと勘違いしてんのか?」
20
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:28:38 ID:BKUgdd360
ζ(゚、゚;ζ「お願い……! 一人はこわいの……!」
('A`)「…………」
ζ(゚、゚;ζ「報酬なら払うから……!」
(*^ω^)「ヒュ〜♪」
(*'A`)「…………」
ζ(゚、゚ ζ「そういうのは無いけど」
('A`)「…………」
( ^ω^)「こう見えてもドクオ、童貞なんだお」
(A` )「っせーな……うっせーな……」
ζ(゚ー゚*ζ「そうなんだ、なんか意外……」
(;'A`)「やめろやこんな話!!」
ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ、泊めてくれる?」
21
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:29:15 ID:BKUgdd360
('A`)「……チッ……わーったよ。ただし、寝るのはソファーだ」
ζ(゚ー゚*ζ「……うん!! ありがとう!!」
( ^ω^)「よかったお」
('A`)「……はぁ……」
ため息をつきながら、落としたタバコを拾い直した。
ただでさえ金がなくて、タバコ一本ですら勿体無いのだ。
金になるのなら、引き受けるしかない。
( ^ω^)「じゃあブーンは、ちょっと創作教団について調べてみるお」
('A`)「そいつは助かるぜ。よろしく頼んだ」
俺よりもブーンの方が、いろいろとコネクションを持っている。そういう意味ではとても頼りになるやつだ。
明日には何かしらの情報を持ってきてくれるだろう。
軽くブーンに手を振って、俺とデレは店へと戻った。
.
22
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:30:16 ID:BKUgdd360
('A`)「……さて、シャワーも浴びたし、寝るとするか」
ζ(゚ー゚*ζ「そうだね」
('A`)「……ベッド使うか?」
ζ(゚ー゚*ζ「いやいいよ、悪いし……」
('A`)「これでも俺は紳士なんだよ」
ζ(゚ー゚*ζ「……ブーンの前では適当に扱ってたくせにー」
('A`)「それはそれ、これはこれだ」
部屋の電気を消しても、月明かりでソファーの位置はわかった。
俺は靴を脱いでソファーに寝転がり、近くのテーブルに銃を置いた。
ζ(゚ー゚*ζ「……ありがとね」
('A`)「ああ」
23
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:30:50 ID:BKUgdd360
眠気は無い。ただ目を閉じている。
しばらくしてベッドの軋む音が聞こえた。
時計の秒針が進む音だけが、この暗闇を支配している。
('A`)「……お前さ」
ζ(゚ー゚*ζ「ん?」
('A`)「この街には似合わねーように見えるんだが」
ζ(゚ー゚*ζ「……そうかな」
('A`)「ああ。いかにも、いいとこのお嬢さんって感じだ」
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
しばらくの間、彼女は何も言わない。
寝返りをうつ布擦れの音が聞こえた時、ようやっと口を開いた。
ζ(゚ー゚*ζ「お父さんは、殺されちゃったから」
('A`)「……殺された?」
ζ(゚ー゚*ζ「うん。まあ有名人だったから、いろいろと恨みも買ってたんだと思う」
('A`)「……ふーん」
24
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:31:53 ID:BKUgdd360
ζ(゚ー゚*ζ「そこから紆余曲折あって……この街に越して来たの。半ば逃げるようにして」
('A`)「なるほどね。じゃあやっぱりこの街の人間じゃあないわけか」
ζ(゚ー゚*ζ「……そうなるね」
彼女の父親がどういう人物だったのか。また、そこから何があったのかは聞かない。
ただ、彼女がどういう人生を送ってきたのかが少しでもわかればそれで良かった。
信頼に値するかどうかの判断がつく。
そして彼女は嘘を付いているようには思えなかった。
この街でつく嘘にしては、ちょいと臭すぎる。
信頼してもよさそうだ。
('A`)「ところで、お前のバッグからはみ出してた服、あそこのレストランの制服だろ? ウェイトレスでもやってんのか?」
ζ(゚ー゚*ζ「……よくわかったね。そうよ、あそこで働いてるの」
('A`)「ふーん……。食いに行ったことはねぇが、近いうちにお邪魔するか」
ζ(゚ー゚*ζ「外観はちょっとあれだけど、結構良いお店なんだ。ナポリタンが絶品だからぜひ来るといいよ」
('A`)「そいつはいいな。んじゃ、明日の昼飯はそこにすっか」
ζ(゚ー゚*ζ「……うん、そうだね!」
.
25
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:32:46 ID:BKUgdd360
とりあえず今日はここまで。
それほど長くないのでお付き合いお願いします。
26
:
名無しさん
:2016/03/28(月) 00:18:13 ID:z2QwqOVs0
乙
すきな雰囲気だ
27
:
名無しさん
:2016/03/28(月) 01:06:26 ID:r6FKQVj.0
乙
ロックだな
28
:
名無しさん
:2016/03/28(月) 01:10:52 ID:BKZZ.E4s0
ベッタベタこそ至高の俺にはたまんない、乙
29
:
名無しさん
:2016/03/28(月) 21:25:23 ID:f82yguPA0
この雰囲気いいね
しかも続き物と来た
続きに期待!
30
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/29(火) 05:56:50 ID:xJ4vuolo0
レスありがとうございます!
一作だけじゃ物足りないな…と思ってこっちも書いたんですが、書いて正解でした。
分割で申し訳ないですが、投下します。
31
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/29(火) 05:57:33 ID:xJ4vuolo0
――翌日・午後――
( ^ω^)「お待たせたお」
入り口の扉が開く音と同時に、ブーンが姿を表した。
ビニール袋を手に提げて。
('A`)「よう」
( ^ω^)「あ、これ差し入れだお」
ブーンが放り投げてきたのは、コーラの缶。
俺が好きな安物銘柄のものだ。
('A`)「おっ、気が利くな」
( ^ω^)「デレもコーラでよかったかお?」
ζ(゚ー゚*ζ「あ、うん。私は何でも。ありがとね」
( ^ω^)「いいんだお」
栓を開けると小気味のいい音が鳴り、穴から少しだけ泡が立つ。
そして俺は一気に飲み干した。
強烈な炭酸が口、喉、胃を刺激する感覚が、たまらなく好きだった。
32
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/29(火) 05:58:14 ID:xJ4vuolo0
( ^ω^)「それ一気飲みできるのほんと頭おかしいお」
('A`)「喉が渇いてたんだよ」
(;^ω^)「そういう問題じゃ……」
('A`)「それより、どうだった? なんかいい情報は入ったか?」
( ^ω^)「おっ、そうだったお」
ブーンが机に置いた一枚の紙。それには、創作教団の教会への地図や、活動内容などが大まかに記されていた。
( ^ω^)「創作教団は、三ヶ月前急にこの街に教会を立てた変な奴らだお。やってる事は普通の教会と何ら変わりは無いみたいだお」
( ^ω^)「ただこの街だとあんまり教徒は得られないみたいだお」
('A`)y‐「ま、当然だわな」
( ^ω^)「そこまではいたって普通の話。ここからが面白いんだお」
ブーンはその大きな身体をソファーに預けてから、話を続けた。
( ^ω^)「――女性を、誘拐しているらしいお」
.
33
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/29(火) 05:59:26 ID:xJ4vuolo0
('A`)「……ッ……」
ζ(゚ー゚;ζ「誘拐……?」
( ^ω^)「ある人が見たらしいんだお。夜中に街を歩いていたら、教団の服を着た男が、女を押さえつけてる所を……」
( ^ω^)「それを見た人はびっくりしちゃって、何もできずに逃げちゃったらしいお。でもこんな話を誰に言ったらいいのか困ってたみたいだったお」
('A`)y‐「……ほー……」
ζ(゚ー゚;ζ「じゃ、じゃあ私も……そのうち誘拐されてたかもしれないのね……」
('A`)「その話が本当なら、そういう事だな。もっとも、誘拐されたあとに何をされるのかはわからんが」
ζ(゚ー゚;ζ「…………」
('A`)「ところでお前、この話をどこで?」
( ^ω^)「おっおっ、昼間のバーは暇な連中が多いんだお」
('A`)y‐「ふーん……」
34
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/29(火) 06:00:23 ID:xJ4vuolo0
仮にも聖職者である教団の人間が女性を誘拐していたなんて話を、誰が信じるだろうか。
教団の事が気に入らない酔っぱらいの世迷い言としか思われないだろう。
だが、昨日の出来事と合わせてみれば、信憑性は高い。
('A`)「……ま、よくわかったぜ」
タバコを灰皿に押し付けて、机の中から二丁の愛銃を取り出した。
('A`)「それだけわかりゃあ、教会に乗り込むだけだ」
片方の銃のマガジンリリースボタンを押して、マガジンを取り出す。
('A`)「……あれ?」
――いや、マガジンが出てこない。
('A`)「出てこねぇぞ?」
(;^ω^)「おっ、昨日からマガジン入れっぱなしかお」
('A`)「いやすぐシャワー浴びたかったし……ってかマジで出てこねぇんだけど……」
( ^ω^)「ちょっと見せてくれお」
ブーンに銃を渡すと、マガジンを取り出すためにいろいろと試行錯誤しながらも、最終的にグリップエンドを見てこう言った。
(;^ω^)「……いいガンスミスを紹介するお」
.
35
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/29(火) 06:01:40 ID:xJ4vuolo0
――一時間後――
( ^ω^)「ブーンだおー。ちょっといいかおー」
「あ、ブーン? ちょっと待ってねー」
俺達は、店から車で数分の所にある、小さな店に来ていた。
ブーンがよく話していた、“いいガンスミス”の店だ。
隅っこにある大きな机には、工具や部品が散乱していた。
ξ゚⊿゚)ξ「お待たせー。って、今日は一人じゃないのね」
店の奥から現れたのは、エプロンを纏った金髪の女性だった。
――彼女が、“いいガンスミス”?
( ^ω^)「おっおっ、久しぶりだおツン。今日見てもらいたいのはブーンじゃないんだお」
('A`)「ああ、俺の銃なんだが」
銃を手渡すと、ツンと呼ばれた彼女は直ぐにその状態を確認し始めた。
正直、俺は銃に関する知識を殆ど持っていないため、彼女が何を見ているのかあまりわからなかった。
36
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/29(火) 06:02:14 ID:xJ4vuolo0
ξ゚⊿゚)ξ「……ちょっとこれ、あまりにも酷すぎるんじゃない?」
('A`)「……ああ、昨日グリップエンドでナイフを受けちまったから、それのせいかもしれねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「それだけじゃないわよ。バレルは歪んでるし、イジェクターは殆どダメになってるじゃない。よくこれで使えてたわね」
('A`)「イジェクター……?」
ξ゚⊿゚)ξ「排莢するための装置よ」
('A`)「なるほど」
ξ゚⊿゚)ξ「……一体どうやったらこんな状態になるのかしら……。久々よ、こんな酷い銃を持ち込まれたのは」
('A`)「そんなに言わなくてもいいだろ」
ξ゚⊿゚)ξ「だって事実だもの。しっかしよく見ると古い銃ね……。この銃に思い入れとかないわけ?」
('A`)「……ねーわけじゃねぇけど……」
昔を思い出す。
この銃は俺が子供の頃に、恩人から貰ったものだ。
思い入れがないわけではない。
37
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/29(火) 06:02:58 ID:xJ4vuolo0
ξ゚⊿゚)ξ「ならもうちょっと大切に扱いなさいよね。他に銃は?」
('A`)「ああ、もう一丁あるが……」
ξ゚⊿゚)ξ「そっちも治すわよ」
('A`)「よくわからんが頼んだ」
ξ゚⊿゚)ξ「すぐ終わらせるから、待ってて」
カチャカチャと音を立てて、ツンは俺の銃をバラしていく。
今までにも、知り合いにメンテナンスをしてもらった事はある。
見慣れた光景だが、やはり俺の頭で理解するには知識が足りないようだった。
ξ゚⊿゚)ξ「どっちが右用?」
('A`)「え? ああ、アウターバレルが銀色の方。バレルが黒色の方は左」
ξ゚⊿゚)ξ「了解。ちょっと時間かかるかも」
('A`)「ああ……見てていいか?」
ξ゚⊿゚)ξ「いいわよ別に」
( ^ω^)「ブーンたちは漫画でも読んでるお」
ζ(゚ー゚*ζ「そうだね」
.
38
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/29(火) 06:04:37 ID:xJ4vuolo0
それから数十分。
俺は彼女の作業をじっくりと眺めていた。
どこをどうすれば何が外れるのか。こうやって見てみると、俺はやはり殆ど知らなかった。
彼女の動きには無駄がないように思える。そのためか、工程を覚えるのは簡単だった。
ξ゚⊿゚)ξ「終わりよ」
('A`)「サンキュー。グリップパネルは交換したのか」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ、欠けてたしね。片手で別々に持つことを考えて削ってあるから、前よりは持ちやすいはずよ」
('A`)「どれ」
二つの愛銃を握りしめる。
確かに、前よりもずっと握りやすく、手に馴染むように感じた。
ξ゚⊿゚)ξ「あと、左の銃は薬莢も左に出るように変えといたから。薬莢が手に当たって火傷したこととかない?」
(;'A`)「…………恥ずかしいが、ある」
ξ゚⊿゚)ξ「そうよね。前よりはマシなはずよ。見た目もね」
排莢は実際に撃ってみないとわからないが、右手の銃からは右側へ、左手の銃からは左側へ薬莢が飛び出るのは、想像すると確かに格好がいい。
これなら、もっと早く改造してもらうんだった。
39
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/29(火) 06:05:22 ID:xJ4vuolo0
('A`)「助かるぜ。確かにブーンの言うとおり、腕はいいみたいだな。んで、いくらだ?」
ξ゚⊿゚)ξ「パーツ代だけでいいわよ。初回だし、何よりブーンの知り合いだもの」
('A`)「助かるぜ……金が無いもんでな」
ξ゚⊿゚)ξ「いいのよ。その代わり、定期的にメンテナンスに出してあげること。できればうちをご贔屓にね」
('A`)「ああ、そうさせてもらうぜ」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ。……せっかくだから、ブーンのも見せて」
( ^ω^)「おっ、いいのかお」
ブーンが腰のホルスターから取り出した大きな拳銃をツンに手渡すと、ツンはそれを簡単にチェックし始めたら。
ξ゚⊿゚)ξ「……やっぱりさすがブーンね。メンテナンスもしっかりしてるし、無駄な傷もないし」
40
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/29(火) 06:06:28 ID:xJ4vuolo0
('A`)「……使ってねーだけじゃねぇの」
( ^ω^)「失礼な。ちゃんと使ってるお」
ξ゚⊿゚)ξ「ブーンの言う通りよ。ライフリングも前よりは摩耗しているし…………あ、マガジンキャッチはそろそろ変えたほうがいいかしら……だいぶ弱ってるわね」
(;^ω^)「ごめんだお、それは多分忙しい時にブーンが乱暴にリロードするからだお」
ξ゚⊿゚)ξ「いいのよそれくらい。どうする? リロードが面倒ならいっそダブルカラムに変えてみる?」
( ^ω^)「うーん、とりあえず今日はいいお。今度にすれば、またツンにも会えるし」
ξ*゚⊿゚)ξ「なっ……何言ってんの……! メンテナンスが目的じゃないなら来なくていいし……!」
(*^ω^)「おっおっ」
(#'A`)「…………用が住んだなら早くしろよ」
( ^ω^)「おっ、ごめんだお」
ξ゚⊿゚)ξ「代金は1万レスでいいわよ」
41
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/29(火) 06:07:22 ID:xJ4vuolo0
尻のポケットに入っていた薄っぺらい財布からなけなしの札を取り出し、それを工具だらけの机の上に置いた。
('A`)「はいよ」
ξ゚⊿゚)ξ「ありがとー」
( ^ω^)「じゃ、ブーンたちは帰るお」
ξ゚⊿゚)ξ「もしかして、今から仕事?」
ツンはチラッとデレに視線を移して、そう言った。
('A`)「ああ。ちょいと野暮用でな」
ξ゚⊿゚)ξ「そ。まあ頑張ってね」
ξ゚⊿゚)ξ「……あっ!」
('A`)「あん?」
ξ゚⊿゚)ξ「これ……」スッ
ツンに渡されたのは、俺の銃から外したグリップパネル。
ところどころひび割れていて、色褪せている。
('A`)「いや別にこれはもらってもな……」
ξ゚⊿゚)ξ「裏見てみなさいよ」
42
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/29(火) 06:09:14 ID:xJ4vuolo0
('A`)「裏?」
言われたとおり、グリップパネルを裏返してみる。
するとそこには、やや違和感のある四角い出っ張りがあり、ペンで文字が書かれていた。
( ^ω^)「……“親愛なるペニサスへ”……?」
('A`)「…………」
この字は恐らく、この銃をくれた人が書いたものだ。
しかし分からない。
ペニサスとは、誰のことだろうか。
( ^ω^)「……誰だお?」
('A`)「……わかんねぇ」
( ^ω^)「でも、知り合いからもらったんじゃないかお? 誰にもらったんだお?」
('A`)「……関係ないだろ」
( ^ω^)「…………」
('A`)「ツン、ありがとな。また来るわ」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ。気をつけてね」
.
43
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/29(火) 06:10:17 ID:xJ4vuolo0
店を出ると、既に日は傾き始めていた。
赤くなった地面を歩いて、俺達は教会へと向かっていた。
('A`)「どうする、お前らは帰るか?」
店の近くまで来た頃に、俺は足を止めてそう言った。
デレを連れて行くのは危険だし、ブーンは俺の仕事には関係がない。そう思ったからだ。
ζ(゚ー゚*ζ「……私は……一人でいるのも怖いよ……」
('A`)「まあそう言うと思ったわ」
( ^ω^)「ブーンは面倒だから帰るお」
('A`)「まあそう言うと思ったわ」
予想通りだ。
仕方ないが、デレは連れて行こう。どうせ大した相手ではないのだ。
仕事柄、誰かを護衛する事には慣れている。
( ^ω^)「それじゃ、二人は頑張ってくれお」
ζ(゚ー゚*ζ「ブーン、気をつけて帰ってね」
('A`)「人のこと心配できる余裕はあるのな」
ζ(゚ー゚*ζ「ブーンはもともと関係ないし……」
('A`)「まぁな。そんじゃ行くか」
44
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/29(火) 06:11:42 ID:xJ4vuolo0
ブーンと別れてから数百メートル歩いた先。
バーや民家だらけのこの辺りには似つかわしくない建物がそびえ立っていた。
('A`)「こんな物が出来てたなんてな……」
ζ(゚ー゚*ζ「ほんとにね……近くで見るのは初めてかも」
いざ踏み出して門に入ろうという時に、その足を制止させるように門の影から二人の男に声をかけられた。
Ω「はじめまして、新しい教徒様のための案内をご希望ですか?」
('A`)「ん? ああ、そんなとこだ。昨日パンフレットをもらったんでな」
Ω「でしたら……その……、お腰につけてらっしゃる物を外していただかないと……」
('A`)「は? これか?」
腰というよりは尻に近い部分にある特注のホルスター。
その中に収まっている二つの鉄の塊のことを指しているのだろう。
Ω「……ええ、お手数ですが……」
45
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/29(火) 06:12:42 ID:xJ4vuolo0
('A`)「やだね。この教会は人を選ぶのか? それじゃあ“気軽”に懺悔もできねぇな」
Ω「ですが……危険物ですので……」
('A`)「危険だってわかってんなら、それ以上何も言うんじゃねぇよ」スッ
グッと男に歩み寄り、腰から取り出した拳銃の銃口を男の腹へつきつける。
Ω「ヒッ……!」
('A`)「ここでケツの穴増やされて死ぬか、何も気が付かなかったか、だ。お前はどっちがお好みだ?」
Ω「……どっ……どうぞお通りください……」
('A`)「懸命だな」
ζ(゚ー゚;ζ「ご、強引だね……」
('A`)「構ってられるかっての」スタスタ
.
46
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/29(火) 06:13:28 ID:xJ4vuolo0
Ω「……死ぬかと思った……」
Ω「おい、アサピーさんを呼んで来い。俺は彼らを特別集会堂に案内する」ボソッ
Ω「あ、ああ。わかった」ダダッ
Ω「お二人様」タッタッ
('A`)「あ?」
Ω「集会堂にご案内します」
('A`)「…………まあいいや、頼んだ」
.
47
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/29(火) 06:14:49 ID:xJ4vuolo0
一人の男に連れられて到着した、一つの建物。
門の正面にあった大きな建物とは少し離れていて、大きさも随分と小さかった。
Ω「こちらになります、中でお待ちください」
('A`)「オーケイ」
男はそう言うとすぐに立ち去ってしまった。
それでも構わない。あんな男に興味はないのだ。
俺は大きな取っ手を掴んで扉を開け、建物の中へと足を踏み入れた。
('A`)「……おいおい、誰もいねーじゃねぇか」
ζ(゚ー゚;ζ「なんか薄暗くて気味が悪いよ……」
あの男の言っていたとおり、確かに集会堂のようだ。
均等に並べられた蝋燭が唯一の灯りで、何故だが窓は一つもなかった。
――ここは、妙な感じがする。
よくわからないが、俺の勘がそう言っている。
.
48
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/29(火) 06:15:22 ID:xJ4vuolo0
『すみません、お待たせしました』
しばらくして、奥の方から男の声が響いてきた。
その男はコツコツと足音を鳴らして、俺達の前に姿を表した。
(-@∀@)「本日はどうされました……?」
現れたのは、昨日の夕方俺の店へやってきた男だった。
名前はアサピーといっただろうか。
なぜかワイングラスを左手に持ちながら、こちらをじっと見ていた。
('A`)「……お前、あの時の……」
(-@∀@)「……おおこれはこれは! 当教団に興味を持っていただけましたか……!」
('A`)「ああ。落としてったパンフレットなら全部読んだぜ」
(-@∀@)「落としてしまってましたか……大変失礼いたしました……」
(-@∀@)「そしてそこのお嬢様は…………はぁなるほどなるほど」
('A`)「…………」
49
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/29(火) 06:15:56 ID:xJ4vuolo0
何を納得したのかは、検討がつく。
デレを尾行させていた人間が殺されたのだ。
そしてその女が、便利屋である俺を連れて来ている。
どんな馬鹿であっても、この俺がただ礼拝をしに来ただけとは思わないだろう。
(-@∀@)「……ところで、あなたの腰に何やら悪魔が取り付いておられますね」
('A`)「……はぁ?」
(-@∀@)「私は、祓魔師でしてね。今その悪魔を取り祓いましょう」
('A`)「……ハッ。遠慮しておくぜ」
('∀`)「こいつは、俺にとっちゃあ天使みてぇなもんなんだよ」
.
50
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/29(火) 06:16:32 ID:xJ4vuolo0
俺はホルスターから二丁の拳銃を取り出して、その銃口をアサピーに向けて構える。
(-@∀@)「……そうですか。でしたら、力づくでも取り祓わせてもらいましょう……ッ!」
('A`)「デレ、下がってろ」
ζ(゚ー゚;ζ「う、うん」
俺がそう言うとデレは後ろの長椅子の影に隠れ、じっと身を潜めた。
アサピーという男は、ワイングラスを持ったまま両手を広げて、壇上の中央に立った。
.
51
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/29(火) 06:17:48 ID:xJ4vuolo0
本日はここまで。
また近いうちに、投下します。
52
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 07:48:56 ID:4EYv62n.0
気になるところで……!
乙!!楽しみだ!!
53
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/31(木) 05:35:44 ID:Cj5bthWI0
(-@∀@)「ハァッ!!」
アサピーがそう叫びながら、グラスを持っていない方の手を前方へ振りかざした。
同時に、どこからか飛来してくるいくつかの赤い小さな物体。
それが何なのか、どうやって飛来してくるのかは分からなかったが、速度は銃弾と大差ない。
('∀`)「んなもんあたんねぇよ!!」
身体を捻らせて弾を避ける。
飛んできたのは6発。そのうち5発は後ろのドアへ当たった。
残りの1発は、左手の銃のスライドで弾いたのだった。
('∀`)「……全く一体どんな手品を――――」
――そう言いかけた時、気がついた。
かすかに漂う、その臭いに。
.
54
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/31(木) 05:36:54 ID:Cj5bthWI0
('A`)「……血の臭い……?」
('A`)「おいデレ!! 怪我はねぇか!?」
ζ(゚ー゚;ζ「えっ? 私は大丈夫だよ?」
振り返って確認せずとも、そう返事をしている以上、彼女は無事だ。
('A`)「……だとしたら……」
足元に転がったはずの赤い物体を探す。
だが、それを見つけることはできない。
――ただ一つ存在したのは、小さな血痕だった。
('A`)「…………血、ねぇ……。面白いもんを武器にしてるな、あんた」
赤い物体の正体は、血。
飛来して来た時は固形化していたようだが、今は元の液体になっていた。
(-@∀@)「ふふふ……この力に驚きましたか……」
('∀`)「わりぃが、俺はオカルトは信じねーんだよ。信じてるのはこいつだけさ!」
両手の拳銃の引き金を、交互に引く。
それだけで、あっという間にマガジンは空になってしまう。
55
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/31(木) 05:37:37 ID:Cj5bthWI0
(-@∀@)「ハッ!」
アサピーは、俺の動作と同時に右手を振り上げる。
するとワイングラスから飛び出た血が、一枚の盾となって俺の放った銃弾を防いだ。
('∀`)「面白え……面白えぜお前!!
」
ジャケットを勢い良く捲ると、内ポケットからマガジンが飛び出して空中に浮かんだ。
同時に両手の拳銃から空のマガジンを取り出して、空中で弧を描くようにして新しいマガジンを挿入する。
('∀`)「ハッハァ!!」
飛来してくる血を躱しながら、左手の銃を連射する。
盾の中心部、ただ一点をめがけて。
('∀`)「いつまでそいつに隠れてるつもりだよ!!」
(-@∀@)「ふふ……」
なかなか思ったようにはいかない。
想像していたよりも、あの血の盾は頑丈なようだ。
しかし、俺は構わず撃ち続けた。
――そして、血の盾に小さな亀裂が入ったのが見えた。
.
56
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/31(木) 05:38:34 ID:Cj5bthWI0
(;-@∀@)「――ッ!!」
更に銃弾を撃ち込む。両手で、何度もリロードをして。
やがて亀裂は端まで広がり、その盾は大きな音を立てて砕け散った。
('∀`)「神からのお届け物だぜ!!」
盾が砕けてから、アサピーが次の盾を展開するまでの一瞬。
俺はその一瞬を逃さなかった。
両手からそれぞれ別の方向に射出された銃弾は、血の入ったワイングラスと、それを持った男の腹に直撃した。
(;-@∀@)「ウ……グ…………ッ!!」ドッ
('A`)「あーあ。もうちょっと楽しませてくれると思ったんだけどな」
アサピーは膝をついて、腹を押さえている。
ワイングラスから零れ出た血と、彼の腹から流れ出る血が混ざり合い、地面に大きな血溜まりを作っていく。
(;-@∀@)「……これでは……血が……」
('A`)「血ならそこに幾らでもあるだろ? かかってこいよ」
57
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/31(木) 05:39:40 ID:Cj5bthWI0
(;-@∀@)「……私の血が混ざっては……純粋な血液じゃあない……。それではダメなのです……ッ!!」
('A`)「…………じゃあ本当に終わりってことかよ」
両手の拳銃をクルクルと回しながら、腰のホルスターへしまう。
地面に散らばったマガジンや薬莢を蹴り飛ばしながら、俺はアサピーの元へと歩み寄った。
('A`)「……ったく。準備運動にもならなかったぜ」
(;-@∀@)「…………」
('A`)「何見てんだよ」
(;-@∀@)「……ハァッ!!」
('A`)「――ッ!!」
うずくまっていたアサピーは、俺の隙を見て両手を振りかざした。
――――まずい。油断していた。
そう思った時には、もうすでに遅かった。
純粋な血液なら、俺の後方に大量に転がっているではないか――。
.
58
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/31(木) 05:40:27 ID:Cj5bthWI0
(-@∀@)「死ねェッ!!」
いくつもの血の塊が、俺の背中をめがけて飛来してくるのがわかった。
風を切る音が、少しずつ近づいてくる。
俺はただ、何もせずにその場に立ち尽くしていた。
(;'A`)「――ッ……!!」
やがて、俺の背中に突き刺さるいくつもの血の塊。
その無慈悲な攻撃に、俺は抗う事もできなかった。
(-@∀@)「……ハハハハハッ……!! 一度使ったものを再利用するのは当然ですよね……!!」
('A`)「…………ん?」
(-@∀@)「…………えっ?」
.
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