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SSスレ「マーサー王物語-ベリーズと拳士たち」第二部②
263
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/07/06(火) 02:40:21
今日は本編を一旦休んでOMAKE更新をします。
新世代の合同演習プログラムの後日談を書きます。
研修生ユニットの新メンバーがガッツリ出てきますので、
ハロドリのネタバレを見たくない方はご注意を。
OMAKE更新「ユニットのこれから」
カネミツの脱退を受け入れたユニット達は、今後の活動に関して頭を抱えていた。
今の自分たちに必要なのは勢力を拡大すること。
当初の想定ではプログラムで優勝して、大々的に名を売り、加入希望者を多く募るはずだったのだが、
惜しくもあと一歩のところでそれは叶わなかった。
クボタ「私がワカナちゃんにやられていなければイシグリさんをサポート出来たのに……う〜ん悔しい!」
イシグリ「シオンヌに深手を負わせた時点でクボタは十分仕事をしてたよ。」
マドカ「でも私たちこれからどうなるんですかね。4人だと活動の幅も狭まりますし……」
イシグリ「地道に成果を上げていくしかないんじゃないかな。いつの日かきっと同志も増えていくはずだよ!」
キララ「ふふっ」
イシグリ「キララさん?」
キララ「その日は案外近いかもしれないわよ?」
イシグリ・クボタ・マドカ「「「?」」」
キララはホテルの扉を開いて4名の客を招き入れた。
いや、その4人はもう客ではない。この日から新たな同志になるのだ。
キララ「この子たちが私たちのユニットに入りたいんだって!」
イシグリ・クボタ・マドカ「「「!!!」」」
キララ「4人とも合同演習プログラムにチームではなく個人で参加していたらしいの。」
クボタ「あ!本当だ!個人2位と個人3位の人がいる!」
マドカ「あわわわ、ひょっとして私より強いんじゃ……」
合同演習プログラムには個人での参加も認められていた。言わばアマチュア参加のようなものだ。
そして成績優秀者には賞が与えられている。
2位と3位であればかなりの実力者と言えるだろう。他の2名も実力は未知数だが期待大だ。
イシグリ「とても心強いね。賞とかは関係なく、志を共にしてくれる事が本当に嬉しい。これからもよろしくね。」
イシグリが握手のために右手を差し出したその時、3位の戦士が妙な行動をとった。
急に懐に入り込んだかと思えば、手に持ったナイフをイシグリの首に当てたのだ。
あまりにも大胆すぎる行動を目撃して、他の3名とクボタ、マドカは驚愕した。
イシグリ「何を?……」
3位「私の目標を教えてあげますよ。それはTOPになることです。」
イシグリ「TOP?ユニットのTOPってこと?」
3位「いいえ、モーニング、アンジュ、果実の国を含めた近隣諸国の頂点に立つことです。
そのためにはまずこの中で最強にならないといけませんよね。
イシグリさん、私はあなたを必ず追い越します。絶対に。」
イシグリ「近隣諸国の頂点、か……本当に心強いね。」
不穏な空気にクボタとマドカは泣きそうになるが、キララは相変わらず平然としていた。
キララ「いつ何時でもイシグリを暗殺する許可をその子に与えたから後はよろしくね。」
イシグリ「キララさん、またそういうことを勝手に決めて……」
キララ「それがユニット加入の条件って言い張るんだからしょうがないでしょ。」
イシグリ「分かりましたよ。これから当分は退屈しなさそうですね。」
おしまい
264
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/07/07(水) 02:11:51
マイミは絶体絶命だった。
義足が壊れているうえに腕もほとんど使い物にならなくなっている。
仰向けに倒れてしまっているが、これまでの消耗が大きすぎるために起き上がるのも困難だ。
こんな状況でチナミは燃え盛る殺気が込められた砲弾を6発も飛ばしている。
まともに喰らえば今度こそお終いだろう。
だが、こんな状況でどうやって防げば良いというのか?
「マイミ!これで決着だよ!もう連合軍を助けにはいけないねっ!!!」
(連合軍を……助けに?……)
チナミの叫びでマイミは思い出した。
モーニング帝国剣士、番長、KASTら連合軍から戦車を引き離すために、自分はチナミを引き受けたのだ。
そして、チナミを倒した後はベリーズと戦う後輩たちを助けるために駆けつけるつもりでもあった。
(そうか……私は気づかぬうちに余力を残そうとしていたんだな……)
なんて愚かだ、とマイミは己を呪った。
後輩を助ける名目で己の力量をセーブしていたなんて、全力が聞いて呆れる。
「チナミ!!!」
「……なに?」
「私は!もう!連合軍を助けないと決めたぞっ!!!!」
その瞬間、これまでに無い規模の瞬間最高風速の暴風雨が到来した。
台風の目はマイミ自身。全身全霊の嵐のオーラを全開にしたのである。
"突然の稲光 土砂降りな気分が押し寄せ もう歯止めきかない空模様"
集中豪雨のイメージは燃え盛る砲弾を一瞬にして鎮火し、それどころか、強風で吹き飛ばしてしまう。
「なに!?ヤケクソ!?ここで全部出し尽くして死ぬ気なの!?連合軍の子たちを見捨ててさっ!」
「い〜やっ!それは違うぞチナミ!」
「何がよっ!」
「彼女らは強くなった。私が駆けつけなくてもきっとベリーズを倒してくれるはずさ!」
「なっ……」
「だから、私はここで本当の全力を出し切る。そしてチナミ!お前を倒してみせるんだっ!!!ここでサヨナラだ!!」
マイミはジェット気流のような暴風雨を追い風にして自らの身体を飛ばしていった。
終着点はチナミだ。台風のオーラを最大限に利用してチナミをぶん殴ろうとしている。
サヨナラ ただその言葉
かき消すほどに降り続けて
背中押してくれるようなファイナルスコール
キュートな花散ったとしても
強く育ったその枝には
必ずまた綺麗な花
咲き乱れるから
咲き乱れるから
「ここまで、ここまで来たんだ……絶対に負けてやんないっ!!!」
チナミは小型大砲を組みあわせて合体大砲「大爆発(オードン)」を作りあげた。
マイミの豪雨に負けないほどの灼熱の太陽を背負って、砲弾をぶっ放す。
「マイミ!私は!」
「チナミ!私は!」
「「絶対に負けない!!!!」」
マイミのナックルダスターとチナミの砲弾が勢いよく衝突した。
当然のように大爆発が起こるが、最後の力を絞りだしたマイミの嵐は爆風をも吹き飛ばす。
そしてチナミの元へと到達し、渾身の右ストレートを繰り出すのだった。
「うおおおおおおおおおおおおおお!」
「あああああああああああああああ!」
2人の叫び声が止むと同時に、あれだけ強かった台風と太陽が一瞬で消え失せた。
両者とも力を全て使い果たした結果、殺気を放つことが出来なくなったのだ。
決着だ。勝負の結果は引き分け。
2人はお互いに重なるように倒れこんでしまう。
そして、武道館には綺麗な虹がかけられていた。
265
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/07/07(水) 02:14:06
これでマイミvsチナミは終わりです。
次はマイマイvsリシャコを書いていきます。
おさらいしたい方は以下を見てください。
https://masastory.web.fc2.com/s05.html
266
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/07/07(水) 02:14:58
と、言いながら
多分明日はJuice関連のOMAKE更新でもするんじゃないかな〜って思ってます。
267
:
名無し募集中。。。
:2021/07/07(水) 08:18:30
目頭が熱くなった
268
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/07/08(木) 00:20:11
>>267
感想ありがとうございます。
最後は勢いで書ききった感じなので、そう言っていただけると嬉しいです。
昨日言った通り今日はOMAKE更新です。
新世代の合同演習プログラムが始まるちょっと前の話を書きます。
例によって新メンバーが登場してくるので、
ハロステのネタバレを見たくない方はご注意を。
OMAKE更新「プログラム参加者ってどんな人やろかぁ?」
合同演習プログラムが始まる数十分前、
ここではとあるリポーターが参加者にインタビューをしていた。
リポーター「それでは意気込みをどうぞ!」
参加者「おしり拭きをたくさん持ってきたから頑張れます!」
リポーター「お、おしり拭き!?」
彼女のインタビューは面白おかしく、戦闘前の緊張をほぐしてくれると評判だった。
そんなリポーターに対して1人の少女が声を掛ける。
「ふ〜ん、こういうのやってんだ。じゃあ優勝候補の私にもインタビューしてよ。」
「ぎゃー!リ、リ、リアイ様!?」
リポーターは驚愕した。
果実の国では神様のような存在の銃士が話しかけてきたのだから挙動不審にもなる。
「ん?その驚きっぷり……ひょっとして果実の国の出身?」
「は、はいぃ!そうなんです!あ、さっきのおしり拭きの子も同郷で……」
この子は自分のファンなんだなと思ったリアイは、愛想よく振る舞ってやろうとしたが、、
すぐにその考えを取りやめた。
「なんやその手のタコは……アンタ、実は戦士やろ?」
「えっ、あ、はい、流石銃士様。なんでもお見通しですね……」
「何しとんねん。」
「え?」
「エントリーもしやんで何しとんねん。アホか。」
「ヒッ!?」
怖い顔で睨みつけてくるリアイにリポーターは完全にビビってしまった。
「わ、私なんかが参加しても活躍できませんって!すぐボコボコにされて終わります!」
「分からんやろ。」
「前に国から打診された時も怖すぎて断ったんです!」
(国から打診?……その時点で有望やないの?……)
「そしたらあのトモ様にお声をかけていただいて、エントリーしなくても良いからリポーターをしろと言ってくださって……」
「トモさん?ふ〜ん」
何かにピンときたリアイはリポーターの手首を引っ張って、当日エントリー受付へと無理矢理つれていった。
リポーターは必死で抵抗するが、銃士の力には敵わない。
「ちょ!ちょっと待ってくださいよっ!本当にダメですって!恥かきたくないんですってばっ!」
「知るか。ええからさっさとエントリーせぇや。」
「あっ!ひょっとしてリアイ様が一緒のチームになってくれるんですか!?銃士様に護っていただけるなら……」
「アホ!個人参加に決まっとるやろ!私の相方はたった一人や!」
「ひぇ〜!ですよねぇ〜!」
個人1位〜3位には入れなかったものの、
果実の国出身のリポーターが賞を取ることになったのはまた別のお話。
おしまい
269
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/07/08(木) 00:38:26
研修生ユニットとJuiceだけだとおさまりが悪いのでもう1個OMAKE更新を書きます。
書けるギリギリの範囲を書いてますので、抽象的で分かりにくいのはご勘弁ください。
OMAKE更新「個人1位」
1位「プログラムで良い成績だったのは嬉しいけど……なんだろう、最近、とても変な感じ。」
1位「力が漲りすぎて、自分が自分じゃないみたい……」
????「あなたが1位の子ね。きみの登場を待ってたよ。」
1位「え?だ、誰ですか?……」
????「そういう目で見るのやめてもらえませんか?……私もあなたと同じ、マーサー王国出身の兵士なんだから。」
1位(こんな人いたっけ?……)
????「今、救ってあげるからね。」
1位「え、ええ!?」
270
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/07/09(金) 02:34:49
リシャコの負傷は小さくなかった。
無抵抗なところをサヤシの必殺技「斬り注意」で何発も斬られたのだから当然だ。
だが、そのサヤシももう気を失っている。
残りはさっきから震え続けているマイマイのみ。
押しきれない相手ではない。
「ふぅ……まさかここで終わりなんて言わないよね?
このサヤシって子のためにも、私たちは最後まで戦い続けるべきだと思うんだけど。」
「……」
「マイマイ?聞いてる?」
「終わりにしよう。」
「は?本気で言ってるの?サヤシの犠牲をバカにしてるの?……だったらちょっと本気で許せないんだけど。」
「ううん、私の勝利で、終わりにしよう。」
「!」
マイマイが放つ雰囲気が変わったのをリシャコは感じ取った。
そして次の瞬間、マイマイが床に斧を思いっきり叩きつける。
マイマイの斧は破壊力抜群。砕けた床が弾け飛んでリシャコの顔面へと突き進んでいく。
(まずい!このままだと私は……)
不本意ながらもリシャコのオートカウンターである「暴暴暴暴暴(あばばばば)」が発動してしまった。
このカウンターはどんな攻撃に対しても自動で行われ、0.1秒意識を失う代わりに鋭い槍撃を繰り出していく。
そう、対象が人間ではなくただの瓦礫であろうとも反撃をしてしまうのだ。
0.1秒後の世界で目覚めたリシャコは、槍に瓦礫が突き刺さっているのを確認した。
そしてその代わりにマイマイの姿が視界から消え去っていることにも気づいていく。
(今の一瞬で姿を隠したか!……だったら、後ろだ!)
リシャコはノールックで後方に槍を突き付けた。
そしてそこには案の定マイマイが存在していたようで、斧で槍を防ぐ音がすぐに聞こえてきた。
「なに!?急にやる気だしたっていうの!?さっきまで怯えてたくせにっ!」
今の僅かな攻防だけでもマイマイが別人のようになったことがよく分かる。
いや、これが本来のマイマイの戦い方なのだ。
キュートの誰よりも肝が据わっていて、怖いもの知らずの働きを見せてくれている。
どちらかと言えばさっきまで冷や汗ダラダラでビクビクしていた方がおかしかったのである。
サヤシは先ほど、マイマイはリシャコが恐ろしくて怖がっているのではないかと予測していたのだが、
このタイマンの状況で平然と振る舞えているのだから、予想はハズレと言っていいだろう。
では何故マイマイは急変したのか?リシャコはそれが分からず混乱してしまう。
(さっきまでと今とで何が違うと言うの!?
シミハムがいないこと?それともナカサキがいないこと?後輩がいないこと?
私がサヤシに傷つけられて大怪我を負ったこと?
そう言えばさっきシミハムが砂埃を起こした時も、一瞬だけマイマイは強かったっけ……
いったい、何がマイマイを変えたの?……)
271
:
名無し募集中。。。
:2021/07/10(土) 11:31:33
>>264
マイミのファイナルスコールで鳥肌たった…龍神のオーラ付きで脳内再生w
>>269
悔しいなぁハロステ観たのにどの子のネタなのか分からないorz
マーサー王読み始めた時もベリキューネタ分からないのが悔しくて動画やラジオを手当たり次第あさった時の気持ちを思い出すw
272
:
名無し募集中。。。
:2021/07/10(土) 17:18:42
放送担当の人の武器が決まったようだな
273
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/07/11(日) 01:18:31
>>271
直接的な答えは求めて無さそうなのでヒントだけ……
合同演習プログラムの個人参加は実力診断テストをイメージして書いてます。
今年の実力診断テストの2位と3位は中山・北原でしたね。
????と伏字にしている人は第三部で登場予定です。
第二部までで未登場のグループってことですね。
>>272
鮪包丁……と言いたいところですが、既に武器は決まっていますw
第三部の割と早い段階で登場すると思うので、ご期待ください。
まずは第二部をしっかりと終わらせます。
274
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/07/11(日) 02:21:22
武道館の天井上では、走るナカサキとサユキをシミハムが全力で追いかけていた。
このペースなら全然追い付ける。すぐにでも仕留められるはずだ。
だが、そんなシミハムにも心配事が一点あった。
それはリシャコを1人残したことだった。
「……」
リシャコの実力を疑っているのではない。非常に心強い仲間であると一目も二目も置いている。
シミハムはむしろ、マイマイの様子がおかしいことを懸念していたのだ。
本日はじめに出くわした時点で本調子では無いようだったし、
サヤシと本格的な共闘を始めた時には最大限に不安そうな顔をしていた。
リシャコやサヤシは「リシャコが怖い」からマイマイが怯えたのではないかと思ったが、
シミハムはそうではないと考えていた。
推測が正しければ、サヤシさえ生かし続ければリシャコは優位に振る舞えたのだが……
「マイマイが強さを取り戻したのは……サヤシが倒れたから?……」
リシャコは目の前のマイマイに対してボソッと言い放った。
点と点が繋がったのでそう言ってみただけなのだが、
マイマイが図星をつかれたような顔をしたのでリシャコは余計に混乱する。
「う……」
「えっ?んっ?……それってつまり……」
マイマイはシミハムにもリシャコにも恐怖していなかった。
では誰に恐怖していたのか?
答えはサヤシだ。
いや、正確に言えばサヤシだけでなく、アユミンにサユキにカリンに……
「後輩が怖かったってこと?……えっ?」
「……そう、だよ」
本人も認めている通り、マイマイは後輩たちのプレッシャーに押されて本来の力を発揮出来ずにいたのだ。
リシャコからしてみれば非常に理解し難いことではあるが、マイマイにとってはこれが大問題。
キュートだけ、あるいはベリーズとキュートだけで戦っている時は最年少らしく大胆に振る舞っていたが、
帝国剣士、番長、KASTら後輩も加わるとなると、マイマイの立場は一気に女性中間管理職と化してしまう。
未来ある若手に見られると思うと緊張で手脚が震えるし、喉もカラカラになる。頭だって全然働かない。
このツアーの序盤でマイマイが仮病で休んでいたのも、情けない姿を見せたくないからに他なかった。
「今は後輩が誰もいないよっ!だから全力を出せるってこと!」
「いや、誇らしく言われても……」
思い返してみれば砂埃が舞い上がった時に一瞬だけマイマイが強くなったのも、
視界が著しく悪くなることによって「後輩に見られなかった」からだ。
リシャコは色々と合点がいったが、相変わらずマイマイの性質が理解出来ずに苦しんでいる。
「う〜ん、そういうことなの?……シミハムがこの子らをさっさと倒さなかったのもマイマイを弱らせるため?……」
「リシャコはまどろっこしいと思うかもしれないけど、シミハムはそういう考えだったんだろうね。
どう?サヤシを先に倒して私を強くしたこと、後悔してる?」
「……そんなワケないでしょ。」
リシャコは三叉槍を強く握った。
マイマイが元のマイマイに戻ろうが、負けるつもりは毛頭無いのだ。
275
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/07/12(月) 02:04:35
リシャコはマイマイ目掛けて勢いよく槍を突き出した。
カウンター頼りだと逆に利用されてしまう恐れがあるため、
積極的に攻めることでペースを掴んでやろうとしているのだ。
(元に戻ったところでマイマイより私が強い!押し切ってやる!)
これはリシャコの驕りではない。
過去の訓練実績から見ても、リシャコはマイマイに勝ち越していたのだ。
まともにやり合えばリシャコが勝つ確率の方が圧倒的に高いのである。
「まともにやり合うことが出来れば……ね。」
「!」
腕を伸ばし切るといったところで、リシャコは腹から出血をしてしまった。
サヤシから受けた切り傷から血液が多量に噴き出たのだ。
今のリシャコはサヤシの必殺技「斬り注意」をまともに受けたおかげで、
2,3箇所ほどは深くまで傷づけられている。
痛み自体は耐えられるものの、出血によるパフォーマンスの低下はどうしても避けられない。
(私の槍が……こんなにも遅い!)
もちろん、重傷な割には鋭い槍撃を繰り出している方ではあるのだが、
これが食卓の騎士同士の戦いとなると、多少の遅延が大きく影響していた。
結果としてリシャコの一撃は、マイマイの斧によって簡単に防がれてしまう。
「そんなヘナチョコじゃ私を貫くことは出来ないよ。」
「くっ……」
マイマイと対等に戦うにはリシャコは傷つきすぎていた。
サヤシによる捨て身の攻撃を受けたことで、取返しのつかない事態に陥ってしまったのだ。
ガチンコ勝負では分が悪いと判断したリシャコは数歩退き、戦い方を変えることを決意する。
「あっ!逃げるの!?」
「逃げないよ……これから私は、エレガントに戦うんだから。」
「!」
「『暴暴暴暴暴(あばばばば)、"派生・イブ"』!」
276
:
名無し募集中。。。
:2021/07/13(火) 14:45:51
イブ様きた!
277
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/07/15(木) 06:30:39
すいません!仕事が忙しくて更新止まってます!
土日の復帰を目指しますね。
278
:
名無し募集中。。。
:2021/07/16(金) 21:39:14
お待ちしています
279
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/07/19(月) 00:40:48
遅くなりました。今日は書きます。
280
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/07/19(月) 02:30:08
リシャコはカウンター時に一瞬だけ意識を飛ばす。
マイマイはその特性を利用して一方的に攻めてやろうと思っていたが、そうもいかなくなってしまった。
「あの状態は……」
長年の訓練によってリシャコは気を失う時間を限りなく短くすることに成功したが、
この『暴暴暴暴暴(あばばばば)、"派生・イブ"』はその逆。
かつてのように、相手を殲滅するまで暴走し続けるのである。
だが、暴走とは言っても怒り狂ったように暴れまくるのではない。
イブとなったリシャコはエレガントに舞う。
マイマイの肺のある位置をその眼で見抜き、必要最小限の動きで槍で貫こうとしてくるのだ。
機械のように効率的な動きには一切の無駄が無く、非常に美しい。
(本当に正確だから狙いは分かりやすいけど……)
エレガントなリシャコの槍撃をマイマイは斧で受け止めた。
機械的な動きということは行動予測がし易いということ。
なので、槍の軌道に斧を入れてやれば簡単に防げる。
ただ、それはリシャコの突きが弱かった場合の話だ。
今のリシャコは暴走体ゆえに相手をただただ打ちのめすことしか行わない。
つまりは、サヤシに斬られた怪我を全く気にせずに攻撃を行うことが出来るのだ。
通常、負傷した人間は知らず知らずのうちに怪我をかばうものだが、"イブ"はそんなことはしない。
全身全霊でマイマイを突くのみ。
(一撃が重い!ガードしきれる!?)
槍を防がれたリシャコは、更なる突きを2発3発4発と繰り出していく。
狙いはマイマイの斧。
攻撃を防ぐ遮断物とみなし、斧が壊れるまで槍をぶつけようとしているのだ。
連撃とは言え一撃一撃が重く鋭いため、マイマイは防戦一方になってしまう。
そして5発目を貰うことには斧にヒビが入ることとなる。
(まずい!このまま受け続けたら本当に斧が壊されちゃう!)
281
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/07/21(水) 02:25:21
マイマイが"面"で防いでいるのに対して、リシャコは"点"で攻撃を仕掛けている。
槍の方が力を一点集中できるため両者がぶつかれば斧が先に砕けてしまうだろう。
また、ベリーズとキュートが扱う特別性の武器は製作者であるチナミにしか整備を行うことが出来ない。
マイマイの斧は長らく研がれていないというのに、
リシャコの槍はメンテナンスがしっかりと行き届いている。
こうも条件が違えば斧が破壊されるのはもはや時間の問題だった。
(ここで武器を壊されるワケにはいかない……だったら!)
マイマイは斧を床に投げ捨てた。
投げやりな態度に見えるかもしれないがそうではない。
リシャコを倒すには斧による斬撃が必要不可欠。
勝利のピースを失わないために、一時的に斧を捨てたにすぎないのだ。
それに武器を手放すのは決して悪いことだけではない。
重量感たっぷりの斧が無いおかげで、今のマイマイは通常より素早く動くことが出来る。
当然リシャコは肺を目掛けて槍の一閃をお見舞いするだろうが、
マイマイは持ち前の瞬発力で回避してみせた。
彼女もキュートの一員。厳しいキューティーサーキットをこなすだけの運動神経は当然持ち合わせているのだ。
武器が無いからと言って黙って貫かれるようではキュートは勤まらない。
(でもすぐに追撃が来る。のんびりしてられない!)
マイマイはすぐさま、その場から移動した。
一撃でももらえばアウトな槍撃を回避し続けるためには走って逃げるのが最適だと判断したのだ。
しかしリシャコも当然追ってくる。
こう見えてリシャコはベリーズの中では高い走力を誇るため、考えなしに逃げるだけではすぐに追い付かれてしまうだろう。
(うん。普通に走れば追い付かれる。だから工夫しなきゃ。)
マイマイにはアテがあった。
それを利用することを想像するとまたも心に冷や汗をかいてしまいそうだが、今の自分はやれる。
暴走状態のリシャコに致命傷を与える"君の戦法"を今にも見せてくるはずだ。
282
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/07/22(木) 10:37:00
マイマイは武道館の外を目掛けて走り出した。
当然リシャコも追ってくるがそれも織り込み済み。
あるポイントに誘導することが狙いなのだ。
(この床のこと、リシャコは知らないでしょっ!)
門の前のあたりでマイマイはピョンと小さくJAUPをした。
一瞬とは言え跳躍することは余計な動作であるため、ただ走るだけに比べるとロスがある。
それに対してリシャコは一直線に全速力で走っている。
となれば距離を一気に詰められて、リシャコの槍がマイマイに届くはずだった。
ところが、ここでリシャコは派手に転倒してしまう。
ツルッツルに磨かれた床を思いっきり踏んだ結果、すっ転んだのだ。
「えっ!?なに!?」
急激なショックを受けたリシャコはイブ状態を強制的に解除されて、我に返る。
とは言え床にぶっ倒れている状態で起きたのだから混乱は必至だ。
状況を掴むのに苦労をしている。
そして、マイマイはリシャコが落ち着くのを待ってはくれない。
(うん。アユミンちゃんが均してくれた床は想像以上に滑りやすかった。
だとしたら私はリシャコにもっと追い打ちをかけられる!)
後輩を恐れているマイマイだが、後輩が嫌いなワケでは決してなかった。
もっと心に余裕が持てたのであればしっかりと共同戦線をはりたいとも思っている。
だからこそマイマイは、アユミンが残した置き土産であるツルツルの床を利用したのだ。
アユミンは必殺技「キャンディ・クラッシュ」を発動するために武道館の門の前の床を極限まで滑りやすくしていた。
今、リシャコはその床にいる。
ならばちょっと押してやればリシャコは摩擦ゼロの世界を滑り続けてくれるだろう。
「リシャコ、あなたはさっきアユミンちゃんを下に突き落としたよね!
同じ思いを味合わせてあげる!!」
「!!」
マイマイはリシャコの顔面を思いっきり蹴飛ばした。
滑る床で踏んばりのきかないリシャコはそのまま武道館の敷地外へと吹っ飛ばされてしまう。
武道館の門は2階にある。即ち、リシャコはわけもわからぬまま1階へと突き落とされたのだ。
「マイマイ!よくも!!あああああ!」
「これで終わりなら楽なんだけど……」
アユミンはリシャコに突き落とされて気を失ったが、リシャコはそうはいかないだろう。
すぐに上がってくるはず。
マイマイは与えられた僅か猶予でそれに備えなくてはならない。
283
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/07/23(金) 03:22:43
"リシャコはすぐに上がってくる"、それが既に勘違いだった。
ドォンと言った衝撃音と共にマイマイの足場が崩壊していく。
「これはっ!」
もちろんリシャコの仕業。
武道館そのものに槍を強く突き刺すことで、マイマイの立つ床を下から破壊したのである。
サヤシの必殺技で大怪我を負わされたうえに、2階から地面に突き落とされたというのに、
これだけの力がまだ残っているのは驚きだ。
そしてリシャコは落下してきたマイマイの頭を鷲掴みにし、地面へと強く叩きつける。
「ううっ!!」
「なに痛がってるの。これくらいでやられるマイマイじゃないでしょ。
私たちは選ばれし食卓の騎士なんだからっ!!」
リシャコは己がベリーズであることを人一倍誇りに思っていた。
そして、キュートを含めた"食卓の騎士"が他の戦士より圧倒的に優れていると強く信じている。
自分たちの代わりは今後、二度と現れない。それがリシャコの考えだ。
「……やっぱり、私は今回の作戦は反対だよ。」
「リシャコ?……」
「ベリーズとキュートがいつまでも戦士として戦えば全部解決でしょ!
ほら見てみなよ!帝国剣士のアユミンって子は2階から落ちるだけで気を失っちゃってる。
でも、私とマイマイはそんなヤワじゃないんだよ。今こうして話していることが証明になっているよね?」
「リシャコも知ってるでしょ!私たちには時間が……」
「うん、分かってる、私たちはもう"大人なのよ”。でもまだ全然余裕はあるでしょ。
確かにシミハム団長やモモコ、マイミのタイムリミットは近いのかもしれない。
それでも私やアイリ、オカール、そしてまだ20歳にもなってないマイマイはまだまだ先の話じゃない!」
「……」
「いや、タイムリミットが来たとしても今の若い子たちには負ける気がしない。
私に深手を負わせたサヤシみたいに、見どころがある子がいるのは認めるけど、それでも私たちには敵わない。
近隣諸国の全ての軍を解体したとしても、私たち食卓の騎士だけが活動し続ければ、この世は安泰だよ。」
とんでもないことを口走っているが、リシャコの目は真剣そのものだった。
「作戦に反対してるんだったら……リシャコはどうして、今、戦っているの?……」
「簡単だよ。ベリーズとキュートだけで十分だということを思い知らせるため。」
「!」
「マイマイ、そろそろ決着をつけようよ。
私は若い子たちを全滅させないといけないんだ。」
284
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/07/24(土) 10:57:09
地に転がるマイマイ目掛けてリシャコは槍を落としていった。
このまま肺を貫かれれば深海にいるかのような苦しみを味わうことになる。
いや、この状況だから肺ではなくどこをやられたとしても致命傷だろう。
それだけは避けたいマイマイは必死で転がり、回避した。
(斧は2階だ……取りにいく余裕、ある?)
槍の切っ先があたっただけで地面が炸裂したことからも、リシャコが仕留めにかかっているのは明らかだ。
クマイチャンのように地割れを起こすとまではいかないが、地を砕いて吹き飛ばしている。
このようなことを平気で行えるのもリシャコが若手より数段高い実力を持つからだろう。
「上手く避けたね。でもそれもいつまで続くかな!」
リシャコの言う通り、武器を持たぬマイマイは圧倒的不利な状況にあった。
斧が無ければリシャコの槍を受けることは出来ない。
一撃でも喰らえば大怪我は必至なので神経をすり減らしてでも避け続けるしかないのだ。
「これで閉幕だよ!マイマイ!」
リシャコは深海の如きオーラを己の三叉槍にブチ込んだ。
マイマイからは大海原が一気に迫ってくるように見えることだろう。
気を抜けばその瞬間、深い深い海に沈められて溺れてしまう。
こんな窮地では並の戦士はビビってしまい萎縮するに違いない。
だが、今回はそうはならなかった。
後輩に見られた時のプレッシャーに比べれば、知った顔のリシャコの殺気なんて少しも息苦しくなんかない。
「閉幕?……ううん、終わりなんかじゃないよ。」
マイマイは素手で地面をブン殴った。
単純な腕力だけで言えば彼女はキュートで2番目に位置している。
そんなマイマイが殴ったのだから、リシャコが先ほど行なった以上に地面は炸裂した。
辺りの石は四方八方に吹き飛び、更に煙幕のような砂埃が巻き起こった。
(何も見えない……さてはマイマイ、この隙に武器を取りに行くつもり!?)
リシャコの発想は至極当然のものだ。
誰もが不利な状況をイーブンまで持っていきたいと思うだろう。
しかしマイマイはそうはしなかった。
リシャコが2階へと続く階段に意識を向けているところに、渾身の右ストレートパンチをぶち込んだのだ。
頬をやられたリシャコはその場で転倒してしまう。
「!?」
「その眼で見えてなければカウンターも発動しないんだったね。安全に攻撃させてもらったよ。」
「マイマイ……!」
「それにリシャコ、さっきも言ったけど閉幕なんて言わないでよね。」
「……なに?」
「これからは若い子たちの時代が始まるの。閉幕じゃない。幕が開けるんだよ。
野暮は言いっこなし。水差さないで。」
Curtain Rises.
これから新たな舞台が始まることをマイマイは確信している。
285
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/07/25(日) 16:31:50
マイマイの発言にリシャコは激怒した。
だが怒りに任せて大暴れするなんてことはしない。
「意見が割れちゃったか……だったら叩きのめすまで!!」
ここで口論をしてもしょうがないことをリシャコとマイマイは理解していた。
我を通すには力が必要。
己が正しいことを証明するためには勝てば良いだけの話だ。
(一瞬で決めてみせる!)
リシャコは起き上がると同時にマイマイへと突っ込んでいった。
その手には当然のように槍が握られている。素早くマイマイを刺そうとしているのだ。
かなりの速攻だ。これでは地面を殴って砂埃を巻き起こす暇はない。
(だったら避ければいい!)
マイマイは迫りくる槍をギリギリまで引きつけてから、右方向に転がった。
斧が無いため槍を受け止められないが、その分だけ身軽に動くことが出来る。
一旦回避をしてその後からリシャコに反撃をしようと思っていたのだが……
「逃がさないよ。」
「!」
リシャコはマイマイが転んだ方向に槍を向けていた。
まるで相手がこう動くことを全て分かっていたのかのような攻撃だ。
流石のマイマイもこれ以上は避けきることが出来ず、リシャコの槍撃を胸で受けてしまう。
「ま、まさか……その眼で見抜いて?……」
「そうだよ。」
リシャコの眼は、相手を溺れさせるための一点を知覚する眼だ。
つまりは肺を傷つけるポイントが手に取るように分かるのである。
マイマイが右に転んで避けようとしたことも、リシャコの眼はしっかりと捉えていた。
故にリシャコは槍の軌道を曲げて、新たな回避先に突き刺すことが出来るたのだ。
(く、苦しい!!)
マイマイの肺に少量の血液が入り込む。
これによりマイマイは深海に沈められたかのような苦しみを味わうこととなる。
これまでリシャコはマイマイとサヤシに何度も痛めつけられてきたが、
溺れさせさえすればイーブンだ。
それどころか状況は大きくリシャコに傾く。
「苦しいでしょ?血を吐かないとずっと苦しいままだよ……その前に仕留めるけどね。」
286
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/07/27(火) 02:15:01
深海の底にいるような思いのマイマイは、今にも意識が薄れてしまいそうだった。
だがここで幕引きにするワケにはいかない。
そう考えたマイマイはリシャコが槍を引くより先に、槍の柄を両手でガッチリと掴んだ。
「何を!?」
「私は武器を持ってないんだからさ……素手で戦い合おうよ……」
マイマイは槍を無理矢理奪い取って地面へと突き刺した。その様はまるで地からポールが生えているかのようだ。
愛用する三叉槍を手放すなんて、リシャコもサヤシに斬られて相当疲弊しているに違いない。
「よくも私の槍を……!」
怒ったリシャコは溺れて苦しむマイマイを殴り飛ばそうとした。
それに対してマイマイは元々槍だったポールに飛びつくことで回避する。
そしてポールにしがみついたまま脚をピンと伸ばし、リシャコの顔面に蹴りを入れる。
「!」
宙に浮いたような姿勢で蹴りだしてきたので、リシャコは驚き、モロに受けてしまった。
弱ったマイマイからの攻撃なので威力はそれほどでもなかったが、体勢を崩してその場で尻もちをついてしまう。
「奇妙な動き……でもそんな攻撃、全然効かないよ。引きずり落としてあげる!」
手を伸ばして相手の身体を掴もうとするリシャコだったが、ここからがマイマイのポールダンスの見せどころ。
脳に酸素が殆どいっていない状態であるにもかかわらず、更にポールの上へと上昇していく。
リシャコに決定打を与えるためには重力の力を借りる必要があることに気づいているのだ。
木に成ったリンゴが落ちるかのように、マイマイもリシャコの元へと落ちていく。
「DEATH刻印……"派生・アダム"……!」
今のマイマイには武器は握られていない。
だが、戦士としては裸同然の彼女も手刀を繰り出すことは出来る。
落下により得た勢いでマイマイはリシャコの額に手刀を思いっきり叩きつける。
「!!!」
その瞬間、リシャコの額からは多量の血液が吹き出した。
それだけじゃない、サヤシの斬り注意を受けた傷口からも大袈裟に出血している。
マイマイの必殺技だけがこうしたのではない。今までの蓄積により、リシャコはもう限界を迎えていたのだ。
「決まったね……思った通り、カウンターも……発動しない……」
リシャコの超反応カウンター「暴暴暴暴暴(あばばばば)」は槍を持っている時にしか使えない。
その武器が地面に突き刺さるポールと化した今、マイマイが攻めようとも発動できないのである。
「カウンター?……そんなのは要らないっ!……」
リシャコは右腕を思いっきり突きあげて、マイマイの胸に叩きつけた。
オートのカウンターこそ発動しないが、自分の意思での反撃は好きに行うことが出来る。
肺に穴をあけた箇所をブン殴ることで、ただでさえ苦しむマイマイの意識を完全に断ち切ることに成功する。
「!!!……」
「勝った……いや……こんなの、勝ちとは言えない……か」
マイマイが寝転ぶとほぼ同時にリシャコは吐血した。
意識を保つために必要な血液が圧倒的に足りていない。
"人魚姫(マーメイド)"リシャコは、皮肉にも深海の底でブラックアウトするかの如く意識を飛ばしてしまう。
リシャコとマイマイはこうして両者とも倒れてしまった。勝敗の結果はドロー。引き分けだ。
これでは2人の意見は割れたまま。
どちらが正しいかは、未来を担う後輩たちがその身をもって証明してくれるだろう。
287
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/07/27(火) 02:24:36
これでマイマイVSリシャコはお終いです。
次からはシミハムとの戦いを書いていきます。
今現在、生き残っているメンバーをおさらいしますね。
■武道館西口
ハルナン
ノナカ
マリア
■武道館西南口
トモ
■武道館南口
タケ
リカコ
■武道館の天井
シミハム
ナカサキ
サユキ
288
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/07/28(水) 01:53:57
「これが……武道館……」
トモ・フェアリークォーツは武道館の厳かな雰囲気に気圧されていた。
1万を超える席が高くまでびっしりと設置されている。
今はもちろん無人だが、満席の状態でセンターステージに立てたなら、いったいどんな気分になるのだろうか。
想像するだけで気分が高揚するし、震えてもくる。
「いや、そんな事を考えている暇はない。速くマーサー王とサユ様を見つけないと……
ミヤビ以外のベリーズが襲ってくる可能性だってあるんだ……」
トモは辺りを見渡した。
武道館の内部はかなりの広さだが、無観客なので向こうの方まで視認することが出来る。
そして、自分以外の誰かが入り込んでいることに気づいた。
「あれは……!」
南口付近に番長のタケとリカコ、
そして西口付近に帝国剣士のハルナンと、その後輩らしき2人が立っている。
同じタイミングで彼女らも互いの存在に気づいたらしく、一同は武道館の中心へと駆けて行った。
「あれ?(><)タケさんタケさん、KASTのトモさんは分かるけど、他の人は誰ですか???」
「帝国剣士のハルナンとノナカ、マリアだよ。ほら、私やムロタン、マホみたいな援軍って言えば分かりやすいかな。」
「なるほど〜!(^〇^)」
合流した連合軍の生き残り達は互いの近況を報告し合った。
モモコ、ミヤビ、クマイチャンを撃破したこと、
そしてチナミはマイミが抑えているから武道館までには入ってこないであろうことを共有する。
「なるほどね。じゃあマリア、私たちがこれから戦う可能性のあるベリーズは誰なのか言ってみて。」
「ハルナンさん分かりました!残りはシミハムとリシャコです!」
「その通りよ。お次はノナカに聞こうかしら。今、私たちが心配すべきことは何?」
「um...サユ様とマーサー王様の安否ですか?」
「それは確かにそう。でも、他にもあるでしょ?」
「はい……East exit、東口の人と合流できていないことだと思います。」
「そうね。」
ナカサキ、マイマイ、サヤシ、アユミン、サユキ、カリン、その誰もがこの場にはいなかった。
元々は西口、西南口、南口の面々が時間を稼いでいる隙に、東口メンバーが王を救うと言う作戦だったが、
未だに誰も武道館に入っていないというのはおかしな話である。
苦戦していればまだ良い方。
残るベリーズのシミハムとリシャコに全滅させられていたら自体は最悪だ。
「だったらさ、皆で助けにいこうぜ!」
「同感。これだけのメンバーが揃えば絶対に負けないよ。」
タケ・ガキダナーとトモ・フェアリークォーツが勇敢さを見せつける。
どちらも強敵であるベリーズを倒した実績から、自信が満ち溢れているのだ。
頼れるアイリとオカールはもう戦線離脱してしまったが、自分たちだけでもやれると強く信じている。
「そうですね。そうしましょう。サユ様とマーサー王も心配だけど、戦力は分散させずに集中した方が良いですしね。」
289
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/07/29(木) 01:45:18
一同が東口に向かおうとしたその時、武道館の天井から音が聞こえてきた。
かなり高い位置ではあるが確かに感じる。しかもその物音はどんどん移動しているのだ。
「なにこの音?……この大きさ、ネズミなんかじゃ無いよね……」
トモも、他のメンバーも気づいていた。何者かが武道館の上を駆けていることを。
そしてその予想は大当たりだ。
今現在、武道館の天井ではナカサキがサユキを背負ってダッシュをしていた。
そしてそれをシミハムも追いかけている。
「ナカサキ様!攻撃が来ます!」
「!」
シミハムは三節棍の存在を"無"にしてナカサキに叩きつけた。
目には見えないその攻撃を知覚できるのはサユキの耳だけ。
聞こえた時点でサユキは伝達したが、当のナカサキには避けられるだけの体力は残っていなかった。
走力を得るために無理な確変をしすぎたおかげで酷く疲弊していたのである。
シミハムの棍をまともに受けたナカサキは血反吐を吐いて転倒してしまう。
背負われていたサユキも落とされて、武道館の緑青色の天井に身体を強く叩きつけられる。
「うっ!」「ああっ!」
サユキの耳で突き止めたマーサー王とサユの居場所に武道館の上から辿り着くという作戦だったが、
頼みの綱であるナカサキがこうなってしまえば、もうどうすることも出来やしない。
シミハムの攻撃もサユキなら避けることが出来るが、
体力にも限界があるのでいつまで避け続けられるかは分からない。
もはや絶体絶命だ。
「サユキちゃん……私がシミハムを止めるから、ここは逃げて……」
「ナカサキ様……」
とは言えボロボロの状態であり、その上シミハムの攻撃が見えないナカサキでは何秒持つかも分からない。
この調子ではシミハムはすぐにナカサキを倒し、お次はサユキを仕留めにくるだろう。
非常に困り果てたその時、サユキ・サルベの耳が新たな音を捉えはじめる。
(えっ?……武道館の中に人が?……しかも、この声は……)
この状況を打破する希望は武道館の中にあった。
サユキとナカサキは天井をブチ破ってでも彼女らと合流しなくてはならない。
だが、現在の2人の破壊力ではいくら頑張ってもそれは叶わない。
シミハムに邪魔されてブン殴られるのがオチだろう。
(だったら!)
サユキは下方向に向かって大声で叫んだ。
頼れる仲間に声が届くことを願って、喉が千切れんばかりの声量でこの言葉を叫ぶ。
「こ こ だ よ ト モ !」
290
:
名無し募集中。。。
:2021/07/29(木) 08:30:57
良い使い方!
291
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/07/31(土) 02:01:22
>>290
コメント有難う御座います。
このシーンはかなり前から決めていたので嬉しいですね。
292
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/07/31(土) 02:59:26
(上から声が!?)
微かではあるがトモの耳には確かに聞こえた。
天井から聞こえてくるのは盟友サユキの叫び声だ。
となればやることは1つしかない。
矢を天高くまで飛ばして天井をブチ破るのみ。
「そこにいるんだねっ!サユキっ!!」
トモはミヤビを倒した時のように数本の矢を上空目掛けて飛ばしていった。
ただし今回の矢は放物線を描かない。一直線に天井へと突き刺さる。
「トモ!?」「いったい何を……」
周りのメンバーはトモが何をしているのか分からなかった。
天井を破壊したいという意図は理解できるが、ボウの矢程度では壊せるはずがないのだ。
正気を疑う者も出始めるが、1人だけはトモを完全に信じ切っていた。
それは上にいるサユキ・サルベだ。
覚醒した耳で矢の音を聞き取り、天井に突き刺さったタイミングで鉄製のヌンチャクを叩きつけた。
上方向と下方向の両方から衝撃を与えた結果、天井に穴を開けることに成功する。
「やった!」
その穴は想定より大きく、サユキだけでなくナカサキとシミハムまでも落下することとなった。
これで下の仲間たちと合流できる。
それは良かったのだが、これだけの高さから落ちればまず無事では済まない。
空中戦が得意なサユキではあるが骨の一本や二本は犠牲にしないと着地できないだろう。
「被害を最小限に抑えるには……」
「サユキちゃん、そんなことは考えなくていいよ」
「ナカサキ様!?」
次の瞬間、ナカサキはサユキを抱きかかえた。
そして自分の背中を下に向けて床へと落下したのである。
確変により背を硬化したため命は失わずに済んだが、損傷が大きすぎるためもう動けない。
「ナカサキ様!どうして!」
「良かった……サユキちゃんは無事だったんだね。」
「私は助かっても、ナカサキ様が……」
「ううん、どっちみち私はもう限界だったよ。それより、ほら、前を見て」
サユキの視線の先にはシミハムが立っていた。
落下する直前で床を三節棍で叩くことで、落下時の衝撃を和らげたのだろう。
とは言え武道館の天井から落ちたことには変わりない。骨にヒビでも入ったのかフラついている。
「サユキ……これはいったいどういう……」
トモの声を聞いて、サユキはいつまでも泣き言を言ってはならないと理解した。
その場で立ち上がり、状況を把握していない仲間たちに情報を与えていく。
「カリンとアユミン……そしてナカサキ様は戦線離脱したわ。
マイマイ様とサヤシがリシャコと交戦中だけど、ギリギリの戦いだと思う。こちらへの援軍は期待できない。
私たちのやるべき事はただ一つ。ここにいる皆で目の前のシミハムを倒す。それだけだよ。」
293
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/08/01(日) 02:49:30
これが最終局面。そう思うと一同に緊張が走った。
相対するはベリーズの総大将シミハム。
対してこちらはキュートを欠いた新世代の戦士のみ。
ハルナン、ノナカ、マリア、タケ、リカコ、トモ、サユキの7名で倒さなくてはならない。
ベリーズを1人倒すことの苦労を知っているだけに、ハルナンとタケ、リカコ、トモの4名は特に覚悟を決めている。
そんな中、マリアは違った感想を抱いていた。
(えっ、みんなどうして怖がってるんだろう。目の前のシミハムって人、モモコに比べると全然……)
モモコは周囲を凍てつかせる冷気のような殺気を発していたが、シミハムはそうではない。
他のベリーズと違って天変地異のようなオーラを出していないのだ。
それどころか武器すらも持っていない。これでは「自由に攻撃してください」と言わんばかりだ。
(だったらマリアがいってやる!)
マリアは剣を握ってシミハムへと斬りかかった。
敵は小柄。攻撃がまともに当たれば大きく損傷させることが出来るだろう。
だがその時、マリアに対して番長のリカコが横から飛び蹴りを繰り出してきた。
「何やってるの!危ないっ!!(`〇´;)」
「えっ!?」
蹴りを喰らったマリアは数メートル吹っ飛ばされる。
いったい何事かと憤激したマリアだったが、
今まで自分がいた位置の床が轟音と共に破裂したのを見て驚愕する。
「え?……え?……」
耳の良いサユキ以外はその現象の正体に気づくことは出来なかった。
だが、シミハムが何らかの攻撃をしたことは理解出来る。
「ひょっとして、蹴られてなかったらマリアは今頃……」
泣きそうになるマリアの頭をリカコがポンポンと叩く。
自分も今すぐにでも泣きそうな顔をしているが、同世代の仲間を勇気づけようとしているのだ。
「蹴ってごめんね。でも相手はベリーズなの。迂闊に攻めちゃだめだよ。(;;)」
「うん、うん、ごめんちゃいマリア……」
"シミハムは無のオーラを操る"
その情報を忘れて突っ込んだマリアを怒鳴りつけようとしたハルナンだったが、反省が見えたので取り止めた。
代わりにサユキから新情報を聞き出そうとする。
「あの攻撃は?……」
「シミハムが消せるのは人間だけじゃない。自分の武器の存在だって消せるんだ。
どんな武器かは私にも思い出せないんだけど、硬くて伸びる武器が、姿も見せずに襲い掛かってくると理解して。」
294
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/08/02(月) 01:23:20
武器の存在を消せるなんてにわかには信じられないが、
これまでもミヤビやクマイチャンを消したと聞いていたので、なんとか理解はできていた。
ではそんな魔法使いのような敵をどう倒せば良いのか。
ここでタケとトモが同時にハルナンの方に視線を向けていった。
「二人とも?……」
「何ボーッとしてるんだよ。指示ちょうだいよ指示。」「私たちの総大将はアンタでしょ?」
「!」
タケとトモの二人が自分を信頼するのを見て、ハルナンは驚いた。
過去にモーニング帝国での選挙戦を行った際には、
タケの属する番長は早々に裏切ってフク・アパトゥーマについていたし、
トモの属するKASTはハルナンの側に残った結果、耐え難い屈辱を味わっていた。
そんな過去があったのだから、両者がハルナンに指示を仰ぐ日が来るなんて思いもしていなかった。
「分かりました。今度は間違えません。シミハムを倒すための道筋を照らしてみせます!」
随分勝手なことを言うものだな、とシミハムは思った。
サユキの報告のおかげで手の内が晒されてしまったのは確かに痛い。
だが、だからなんだと言うのだ。
自分の攻撃を知覚出来るのはサユキのみ。それは揺るがぬ事実である。
意識の外から攻撃を仕掛けて1人1人倒していけばそれでお終い。
そう考えたシミハムは三節棍による攻撃を"総大将"ハルナンに仕掛けていく。
「マリア!シミハムにナイフを投げて!!」
「は、はい!」
シミハムが攻撃のモーションをとりだしたところでハルナンはマリアに指示を出した。
その指示はキッカ仕込みのナイフ投げ。
つまりは異なる球種で飛んでいくナイフを9本同時に投げろという指示だ。
シミハムの棍はこれくらいのナイフは簡単に弾き飛ばすことは出来るが、
ハルナンはそんなことも全部分かった上で指示していた。
(ナイフがこっちに弾かれたということは、シミハムの攻撃は私狙いねっ!)
ハルナンは右側に倒れこむことで棍を避けた。
これはただの回避ではない。
サユキのような異常聴覚を持たずとも、視覚情報を駆使すればシミハムの攻撃を避けられることを証明してみせたのだ。
「みんな!何でも良いから宙に舞わして!攻撃の方向を突き止めるためにっ!!」
295
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/08/03(火) 03:00:42
まさかの方法で対処したハルナンにシミハムは驚かされた。
とは言え、自分の攻撃手段が完全に破られたとは思っていない。
マリアが投げたナイフで棍の方向を見破るのは良い案だが、同じ方法を取り続けることは難しいだろう。
連合軍の飛び道具と言えばマリアのナイフの他に、タケの鉄球やトモの矢が思いつくが、
数には限りがあるため、いつまでも飛ばし続けるワケにはいかない。
必ず隙が生じるのでそれを待てば良いだけなのだ。
そう思ってたところで、タケが後輩リカコに指示を出し始める。
「なるほどね……そういうことならリカコの出番だな!武道館中をシャボン玉で埋めちまいな!」
「はい!(<_<)」
リカコはすぅーっと息を吸い込んだかと思えば、右手に持ったストローに向けて一気に空気を吐き出した。
そして溢れんばかりの細かなシャボン玉を創り出していったのだ。
「!」
見渡す限りがシャボン玉。
もしもこの状況でシミハムが三節棍を用いた攻撃をしようものならば、
シャボン玉の割れっぷりで攻撃の方向を気づかれてしまうだろう。
しかも自分一人しか知覚できないサユキと違って、リカコのシャボンは連合軍全員にシミハムの攻撃を教えてくれる。
「……」
この状況で最も厄介な相手はリカコであるとシミハムは認識した。
ならば先手必勝。シャボン玉が埋まりきる前にリカコをぶっ叩けば良い。
そう思い、一直線に棍の先をリカコに飛ばしたのだが、
それを妨害するために両手剣を握ったマリアが突っ込んできた。
「その投球はコースが丸見えだよ!ホームランっ!!」
マリアは野球ボールを打つかのように、三節棍をかっ飛ばしてみせた。
自分を護ってくれたマリアに対してリカコが感謝の言葉を伝える。
「あああ、ありがとう!(;o;)」
「えへへ、さっきのお返しだよ。」
そして、マリアの行動のおかげでハルナンは次の策を思いつくことが出来た。
シミハムはマリアに武器を飛ばされたので、しばらくは防御が困難になるはず。
「みんな!一斉射撃を喰らわせましょう!」
ハルナンの号令と共にタケとトモはそれぞれの武器をシミハムに飛ばしていった。
鉄球による剛速球と、無数の矢。どちらも避けるのは一苦労だ。
普段ならこれくらいの攻撃は弾き飛ばせるのだが、マリアに飛ばされた棍の先を引き寄せている時間はない。
しかし忘れてはならない。
シミハムはチームダンス部の誰にも負けないほど身のこなしが優れているのだ。
タケとトモの攻撃くらい無傷でかわしてみせる。
296
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/08/04(水) 02:21:31
シミハムの身軽さはベリーズ随一。
持ち前のフットワークでタケの鉄球もトモの矢も回避した。
これくらいは朝飯前だと言わんばかりだ。
ところが、シミハムの気が若干緩んだところに新たな武器が飛んでくる。
それは新人剣士ノナカ・チェルシー・マキコマレルによる忍刀だった。
「yah!」
ノナカの忍方にはヒモが括りつけられている。
そのヒモを掴み、刀身を飛ばすことによって、飛ぶ刃を実現しているのだ。
新人剣士のデータは乏しかったため、シミハムは一瞬だけ面食らってしまう。
だがそこはベリーズの団長。ギリギリながらも咄嗟にしゃがむことで回避する。
多少焦ったがこれで飛び道具による一斉射撃は終わりだ。
ホッと一息つきたい気分だが、相手はそうはさせてくれなかった。
「相当キツそうな体勢ですねっ!」
なんと連合軍の総大将ハルナンが正面から斬りかかってきたのだ。
彼女がリスクを承知で真っ向勝負で挑んでくるのは想定外。
安全圏ではなく超至近距離からフランベルジュを振り下ろしたのが意外で、シミハムは一瞬フリーズしてしまった。
そして同時に気づいた。タケ、トモ、ノナカの攻撃は、このハルナンの一撃のためのものだったのだ。
連続の遠距離攻撃で余裕を奪い、確実に斬撃を当てるつもりで仲間に一斉射撃を指示したのだろうとシミハムは予測する。
ならば期待に応えてやる必要はない。
シミハムはしゃがんだ状態から跳びあがることでハルナンの振り下ろしを回避した。
武道館の天井から落下した時のダメージが残存しているため足腰がかなりキツいが、相手の作戦にハマるよりマシだ。
そう思っていたのだが……
「あ〜あ、空中に逃げたらもう避けられないのに」
ハルナンがボソッと呟いた次の瞬間、シミハムは背と両方の太ももに激痛が走るのを感じた。
この攻撃はハルナンによるものではない。
サユキ・サルベが背後から飛び掛かってきていたのだ。
「喰らえ!私の必殺"三重奏(トリプレット)"!」
飛び蹴りで背中を蹴り飛ばすと同時に、両手に持った鉄製ヌンチャクでシミハムの太ももに叩きつける。
この三連同時攻撃は、昨日マイミにも喰らわせたことのある技だ。
完全に意表をつかれた攻撃に、シミハムは数メートル吹っ飛ばされてしまう。
「!」
喰らったものはしょうがない。対応に追われて余裕がほとんど無かったのでサユキの必殺技は受けるしかなかった。
だがここで不思議なのは、「一斉射撃」という指示なのにサユキが近接攻撃を仕掛けてきたことだ。
サユキが命令と異なる動きをしたにもかかわらず、チームワークを崩さずに見事に連携したことが不可解でならない。
そしてそれは連合軍の他のメンバーも同じ疑問を抱いていたようだった。
タケらの頭の上に大きなクエスチョンマークが浮かんでいるのに気づいたようで、ハルナンは仕方なく種明かしをする。
「簡単な話ですよ。私は小声で指示を出しているだけです。」
「そうそう、私にしか聞こえないくらい小さな声でね。」
サユキの異常聴覚はボソボソ声も正確にキャッチする。
そのため、ハルナンはシミハムに知られることなく、安全にサユキと意思疎通をはかることが出来るのだ。
297
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/08/05(木) 02:30:34
シミハムは深く深呼吸をした。
そして次にやるべき事を冷静に考える。
厄介なサユキかリカコを倒すべきか?それとも総対象ハルナンを仕留めるべきか?
いや、違う。
そういうスケールの小さい考えをしているから連合軍に目に物を食わされたのだ。
せっかく武道館に立っているのだから、スケール大きく行こうじゃないか。
「ハルナンさん!シミハムがescape...逃げます!」
急に走り出したのだから確かに逃げ出したように見えるかもしれない。
だが答えはNOだ。
これは大きく飛翔するための助走。
シミハムは走力を跳躍力へと変換し、高く跳びあがる。
「何を!?」
シミハムが二階席に着地した意図を一同は掴めなかった。
二階とは言えかなり高い位置にあり、シミハムからは連合軍の動きをよく見渡すことが出来る。
そして、これだけ離れているのだから三節棍を好きなだけ振り回すことが可能になった。
グイングインと強く振り回すことによって突風が巻き起こり、
リカコのシャボン玉を一つ残らず吹き飛ばしてしまう。
「ああっ!(*〇*)」
連合軍らはこれではシミハムの攻撃を感知できないと慌てたが、
気づけば、いつの間にか、シミハムの持つ三節棍がハッキリとその目に見えていた。
シミハムは二階席に跳びあがったタイミングで己の武器を消すのを止めたのだろう。
そう、もはや棍の存在を消す必要も無くなったのだ。
嫌な予感を感じたタケがハルナンに問いかける。
「ねぇ、さっきからブン回し続けてるんだけど、アレ何が狙いなの?……」
「おそらくは遠心力を利用して力を貯めこんでるんでしょうね……
でも、リーチはせいぜい2,3メートルのはずです。距離さえとり続ければ安全ですよね。」
ここで怖いのはシミハムが己自身を消して、一方的に接近してくることだ。
シミハムの存在を忘れたら、もちろんガードを行うことも出来なくなる。
蓄積したパワーをノーガードで受けたらひとたまりもないだろう。
「なるほどね……じゃあみんな、絶対にシミハムから目を離さないようにしよう。
そうすれば奴は自分の存在を消せなくなる。」
「サユキ!」
サユキは耳が覚醒する前もシミハムを見失わずにいた。
シミハムが己を消せるのは、誰にも見られていなかったり、触られていなかったりする時のみ。
常時見張り続ければ忘れずにいられるのだ。
「サユキ名案じゃん!よし!それでいこう!」
「トモ!」
「で……誰から目を離さないんだっけ?……」
「え?……えっと……誰だっけ?……」
298
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/08/06(金) 01:25:41
シミハムが行ったことは1つだけ。
その場でしゃがみこみ、観客席の後ろ側に隠れたのだ。
これにより連合軍らの視線を切ることが出来る。
それは即ち、己の存在を消す条件が満たされたということ。
絶対に見逃さないと意気込んだサユキでさえも記憶から無くしてしまう。
「えっと……そうだ!王たちを助けないといけないんだった!みんなついてきて!」
すっかりシミハムのことを忘れた一同は、マーサー王とサユの救助を優先することにした。
サユキの耳は2人の位置を正確に捉えている。
観客席の方から妙な雑音が聞こえはするが、そんな事よりも王たちを助けなくてはならない。
みんなを先導して2人の居場所へと駆けていく。
「武道館は広いのに、本当にどこにいるか分かるの?サユキ」
「まぁ任せてよ。今ならどんな音でも聞こえる自信があるんだから。」
そう。今の彼女なら万物の音を聞くことが出来る。
二階席を沿って段々と接近してくる音も当然聞こえていて、
その音はもはや無視できないくらいに大きくなっていた。
(なんなの?何かをブンブン回しているようなこの音は……)
耐えられなくなったサユキはついに音の方向に視線をやった。
だが、もう何もかもが遅かった。
シミハムは既に、攻撃を仕掛けるために二階席から飛び掛かってきていたのだ。
「あっ!?シミハム!」
敵を視認して全てを思い出したサユキだったが、
リラックスしきった状態から臨戦態勢に移るための時間的余裕は無かった。
サユキがヌンチャクを構えるよりもシミハムが棍を振り下ろす方がずっと速い。
遠心力によるパワーが十分に蓄積された棍による打撃を、サユキはノーガードで受けてしまう。
「うわああああああああああああ!」
凶撃を叩きつけられたサユキは血を吐いて倒れてしまった。
リシャコとの戦いで溺れさせられたのもあって、体力が限界を迎えていたのだ。
攻撃に気づいた連合軍が一斉に驚くが、もう取返しはつかない。
シミハムの行動を唯一知覚可能なサユキが戦線離脱したのだから、ここからは非常に厳しい戦いになるだろう。
299
:
名無し募集中。。。
:2021/08/07(土) 08:48:18
認識阻害は強すぎる
300
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/08/09(月) 02:01:48
>>299
そうですよね。どう倒せば良いのか考えるのに苦労しましたw
前に話したかどうか覚えていませんが、当初はリシャコをラスボスにするつもりでした。
よくよく考えたらやっぱりシミハムの方が強いなとなって、今に至ります。
301
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/08/09(月) 03:06:05
シミハムは武道館全体を利用したヒット&アウェイ戦法を取ろうとしていた。
二階には溢れるほど数の客席が設置してある。
身体の小さいシミハムはそこに紛れ込めばいくらでも相手の視線を切れるというワケだ。
目の上のタンコブであるサユキを撃破したことだし、
シミハムはまたも客席に紛れ込もうと二階席にジャンプする。
「STOP! 逃がしませんよ!」
ここで行動を起こしたのは新人剣士のノナカだった。
紐付きの忍刀を勢いよく投げて、シミハムの三節棍に巻き付けたのである。
このままシミハムを見失えばまた存在を忘れてしまう。
ならば逃がさなければ良い。シミハムと唯一繋がるこの紐をノナカは決して放さない。
「……」
シミハムにとって、対処すること自体は簡単だった。
紐は身体には括りつけられていないので、棍を手放せばすぐに自由になれる。
しかしそれでは攻撃力が大幅にダウンしてしまい、連合軍を有利にしてしまう。
そんなのはダメだ。
それよりも、武器を失わず、さらに相手に損失まで与える良い手段がある。
「AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!?」
シミハムはいつもやっているように三節棍をぐるぐると高速で回していった。
ノナカと棍は紐で繋がっているため、ノナカは強い力で引っ張られてしまう。
そう、シミハムはノナカごと棍を回転させたのである。
「ノナカ!今すぐ紐を放して!」
このまま壁か床に叩きつけられるのがオチだと気づいたハルナンはすぐにノナカに指示をだしたが、
ノナカは紐から手を離さなかった。
シミハムを逃がすくらいなら自分が犠牲になった方がずっとマシだと思っているのだ。
「ノナカ……!」
「おいおいハルナン、聞き分けの悪い後輩をもったな!……だったらこっちを止めてやるっ!」
タケはシミハムに殴りかかった。
同じベリーズとは言えクマイチャンほどの耐久力は無いはず。そうじゃなきゃ困る。
思いっきりブン殴れば行動停止させられると考えての行動だ。
しかし相手がそう来ることもシミハムはよく分かっている。
棍を巧みに操り、突進するタケにノナカの身体を叩きつけた。
「うわっ!」
「opps!!」
衝突時の衝撃で紐が千切れてしまったのか、タケとノナカは数十メートル先まで仲良く吹っ飛ばされてしまう。
かなりの勢いでぶつかったものだから、二人を心配したリカコとマリアが同時に叫んだ。
「タケさん!(;〇;)」「ノナカちゃん!」
「おいおいリカコ、あんまり大声出すなよ……大丈夫大丈夫、これくらいじゃくたばらねーよ。
ただ、この子はもう限界かもな……」
親戚譲りの生命力か、タケ・ガキダナーは頭から血を流しながらも立ち上がった。
だが、タケの言う通りノナカはショックが強すぎるあまり完全に気を失っていた。
先のリサ・ロードリソースとの戦いにて受けたダメージがここで効いてきたのだろう。
302
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/08/10(火) 01:20:49
「マリア!リカコちゃん!絶対に逃がさないで!」
タケとノナカを吹っ飛ばしたシミハムは今度こそ姿を消そうとしたが、
ハルナンの指示で突撃してきたマリアとリカコに阻まれた。
マリアは両手剣の大振りで、リカコは強烈な蹴りでシミハムに攻撃を仕掛ける。
しかし敵はベリーズ。その程度の攻撃を避けるなんて朝飯前だ。
サユキの必殺技のせいで身体が軋むが、新人2人の強打を回避するくらい容易い。
体勢を低くすると同時に足払いでマリアとリカコを転ばせて、
そのうえ更に2人の顔面に掌底を叩きつける。
「「!!」」
新人とは言え帝国剣士・番長に選ばれた者なので、この程度で気を失ったりはしないが、
激痛のあまり、しばらくは動けなくなってしまう。
そんな時に入れ替わりで剣を打ちつけてきたのがハルナンだ。
先ほどもそうだが、今回ばかりは彼女も接近戦を選ばざるを得ない。
シミハムの首に斬りつけようと、フランベルジュを振るっていく。
(いや、ダメだ!)
シミハムの攻撃が当たるギリギリのところで上半身を後方へ引いた。
ハルナンの斬撃は空振りに終わり、隙だらけになったところでシミハムに腹を思いっきり蹴られてしまう。
綺麗に鳩尾に入ったためハルナンは苦悶の表情でうずくまる。
「ううっ!……」
これでシミハムの行動を邪魔する者はいなくなった。
サユキとノナカは戦線離脱しているし、ハルナンとマリアとリカコは簡単にあしらわれてしまった。
タケが猛ダッシュで向かっているが、シミハムが2階に姿を消すほうが速いだろう。
そう思ったその時、残る連合軍のトモ・ローズクォーツがハルナンに声をかけた。
「らしくないね総大将さん。化け物に真正面からぶつかるなんてさ」
「!?」
「こういう時こそ大胆な作戦を思いつくのがアンタなんじゃなかったの?こういう風にさ!」
そう言うとトモは二階席を指さした。
なんとその一角にはボウの矢が何本も突き刺さっていたのだ。
連合軍がシミハムと応対している隙に幾多もの矢を放っていたのだろう。
しかしその行動が意味するところをハルナンもシミハムも理解することが出来なかった。
そこでトモはこちらに走ってくるタケにお願いをする。
「ねぇねぇちょっとちょっと、あそこに刺さった私の矢に鉄球をブン投げてくれない?」
「はっ?……よく分かんないけど、分かったぜ!」
タケはダッシュの勢いのまま全力投球で鉄球を投げつけた。
剛速球が矢羽に当たったかと思えば、そのパワーが矢尻の突き刺さった床内部に伝播し、
周囲の座席ごと木っ端みじんに吹き飛ばしてしまう。
更地のようになった一角を見て、シミハムもハルナンもタケも驚愕する。
「いったい何を!?」「あわわわ、壊しちゃったの鉄球のせい!?」
周りが慌てている中、トモだけは落ち着きながら他のエリアにも矢を放ち続けた。
「いっそのことさぁ、武道館をぶっ壊しちゃえばいいんじゃない?
そしたらもう逃げ場なんて無くなるでしょ。」
303
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/08/13(金) 02:42:36
トモの過激な発言に一同は驚きを隠せなかった。
武道館と言えば誰もが立つことを夢見る神聖な場所。
あらゆる者が憧れる武道館を破壊するだなんて想像をしたこともない。
(あの目は……本気だ……)
覚悟の決まったトモの面構えを見て、冗談やハッタリではないことをハルナンは理解した。
そもそもKAST達は特に武道館に対する憧れが強い戦士たちだ。
そのリーダー格のトモが半端な気持ちでこんなことを言うはずがないのは明白である。
「姿さえ見えればこっちのモノだよ。ベリーズだって倒してみせる。
だって、私の矢はミヤビを貫いたんだから!」
「!」
表情こそ変わらないが、トモの発言はシミハムの胸を大きく揺さぶった。
なるべく考えないようにしていたが、トモがここにいるということは、即ちミヤビを打ち破ったということ。
至極当たり前の事実がシミハムから冷静さを奪い取る。
そして更に追い打ちをかけるようにタケとハルナンも続いていく。
「こっちもクマイチャンを倒したんだ!なぁリカコ!」
「私だってモモコを倒しました。そこのマリアが証人です!」
お前たちだけの力じゃないだろうと、シミハムは言えるものなら言ってやりたかった。
どんな戦いが繰り広げられたのかは分からないが、
倒れたキュートや他の仲間と共に戦ってやっと掴んだ勝利であるに違いない。
だと言うのに、ベリーズを容易く撃破したかのように言い放つのはもはや侮辱だ。
もう容赦ならない。
まずは今のペースを作りあげたトモ・フェアリークォーツから打ちのめしてやろうとシミハムは考えた。
その時、トモは全員に聞こえるように大声を出す。
「さぁさぁ!武道館をぶっ壊してソイツの逃げ道を無くしてやろうよ!
こんな風にさっ!!」
トモは上空目掛けて一本の矢をぶっ放した。
突然のことだったのでシミハムも、他の連合軍の皆もその矢を目で追ってしまう。
これがトモの狙い。
武道館の天井にはサユキの思いに応えるために先ほど放った矢が何本も突き刺さったままであり、
その刺さった矢に今しがた撃った矢が衝突し、火花が散って眩い光を放った。
そう、トモはミヤビを倒した時のように正午(noon)の太陽を作りあげたのだ。
その様を直視した戦士たちの目が一瞬眩んでしまう。
「なんちゃって。今のは嘘。」
「!?」
次の瞬間、トモは一時的に目の見えぬシミハムを担いで武道館の中央へと駆けだした。
シミハムはベリーズ最軽量。持ち上げて走るくらいは容易い。
意図がまるで分からないがシミハムは必死で抵抗した。
超至近距離ゆえに棍で叩くことは出来ぬため、トモの背中を拳で何度も叩きつける。
小柄だろうがシミハムはベリーズだ。その一撃一撃が骨を砕き、トモに血反吐を吐かせた。
だがそれでもトモは止まらない。目的の場所までは死んでも走り切ると決めているのである。
そして武道館中央に到着するや否や、ラグビーのトライをするかのように床にシミハムを叩きつける。
「!」
ドォンと言った大袈裟な音が鳴ったが、パワー型ではないトモの威力はたかが知れていた。
センターステージまで来させられたので二階席からはかなり遠くなってしまったが、
目の前にいるトモを叩きのめすには己の存在を消すまでも無いとシミハムは考えた。
すぐに倒してやろうと棍を構えたところで、血だらけのトモが声を出す。
「あ〜言い忘れてた。」
「?」
「必殺技、"noonと運(ぬんとうん)"……これでよし、っと」
「!」
トモが放った矢は火花を散らせるだけではない。
衝撃を与えて、天井に突きささっていた矢を丸ごと下に落とすことが真の目的だったのだ。
今にも落ちそうになっていた大量の矢は、シミハムをトライしたタイミングで一斉に落下していった。
落下位置は武道館の中央部。
シミハムとトモに向かって、雨のように降り注がれていく。
304
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/08/14(土) 04:11:09
ただ落ちてくるだけの矢には殺気は込められていない。
故にシミハムは事前に感知することが出来ず、空から降る矢を無防備にも浴びてしまった。
シミハムの身体は小さいため大量には受けずに済んだが、確実にダメージは蓄積している。
ミヤビほどの達人がトモにやられたという事実を受け入れらずにいたシミハムだったが、
なるほどこの攻撃法ならば出し抜けるな、と謎が解けた気分になっていた。
これ以上好きにさせるものかと、身体に鞭打って起き上がろうとしたところで、
シミハムは反撃すべき相手を見て驚いてしまった。
「……!」
なんと、トモはシミハム以上の数の矢を受けて気を失っていたのだ。
天井から降る矢の行先はトモにもコントロール出来ない。
完全に運であるため、多量の矢をその身に受けて倒れてしまったのである。
その様を見て、シミハムはマヌケだとは決して思わなかった。
むしろこのような結果さえも覚悟してなお、シミハムを道連れにしようとしたトモに畏怖を感じる。
「やばいぞハルナン!トモを助けないと!」
タケは急いでセンターに向かおうとするが、ハルナンがそれを制する。
「いいえ!ここは武道館の破壊を優先すべきです!」
「はっ!?正気か?」
「トモが死ぬ気でシミハムの動きを止めたんですよ……その期待に応えないでどうするんですか!」
「!……そうだな!わかった!」
気づけば武道館の客席のあちらこちらにトモの矢が突き刺さっていた。
東西南北、既にトモは武道館を破壊するための仕込みを済ませていたのだ。
後はタケが剛速球を何度も何度もブチこめば良いだけ。
「マリア!あなたも手伝いなさい!マリアのパワーなら力になれるはずよ!」
「はい!!」
マリアは両手剣「翔」を力強く握って、ハンマーを振るうかのように刺さった矢に叩きつけた。
その破壊力は矢尻の刺さった床の内部に伝わり、一帯をあっという間に粉砕させていく。
自分にも劣らないマリアのパワーを見たタケはひどく感心する。
「やるなぁ!これならこの辺の座席はさっさと吹っ飛ばせそうだ!
ただ、逆方向の席は遠すぎてすぐには壊せないかもな……」
「番長のタケさん!マリアにその鉄球を投げてください!」
「え?」
「マリアはバッターなんです!」
「そうか!」
野球を好む2人だからこそ、すぐに通じ合った。
タケはマリア目掛けて容赦なく剛速球を放り込んでいく。
並の戦士ならばビビるだろうが、マリアはホームラン王だ。
美しく、且つ、力強いスイングでタケのボールを反対側のスタンドへと打ち返す。
力と力がぶつかり合った結果、ホームランボールの持つパワーは何十倍にも膨れ上がった。
大砲と化した鉄球は刺さった矢に衝突し、半径20メートルを一瞬にして更地にする。
「すげえええええ!特大ホームランじゃん!」
「えへへ。褒められちゃいマリア。もっともっと投げてください!」
「でも予備の鉄球はもう無いんだけど、どーすりゃいいの?」
「あっ」
305
:
名無し募集中。。。
:2021/08/14(土) 14:54:16
ウォーズマン理論w
306
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/08/15(日) 00:55:19
いつもの3倍の回転も加えておきますねw
307
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/08/15(日) 02:55:44
タケとマリアの活躍を見たリカコは、自分もすぐに手伝わねばと強く感じた。
ところが総大将ハルナンの指示はそれとは異なるものだった。
「武道館の破壊はあの2人に任せましょう。リカコちゃんは私についてきて。」
「は、はい!何をするんですか(?_?) 」
「シミハムを直接叩くのよ。」
「(*o*)!?」
トモを助けるより破壊活動が優先とは言ったが、それは強力な攻撃手段を持つタケとマリアに限った話だ。
シミハムは満身創痍ながらも必ず立ち上がって2人を阻止するはず。
それを更に阻止してやるのがハルナンとリカコの役目なのである。
ハルナンのフランベルジュとリカコの水鉄砲では武道館は壊せないが、
シミハムの行動を邪魔することなら出来るのだ。
「リカコちゃん!シミハムの周囲に石鹸水をぶちまけちゃって!」
走って武道館のセンターに辿り着いたハルナンはすぐにリカコに指示を出した。
床を石鹸で滑りやすくすればシミハムは素早く動くことが出来なくなる。
セコいように思えるかもしれないが、タケとマリアが武道館を壊す時間を少しでも稼げれば御の字なのだ。
だが、シミハムだって指をくわえて見ているはずがない。
身体に突き刺さった矢を抜き取り、激痛に耐えながらリカコに飛び掛かった。
石鹸でぬかるむ床は確かに走りにくいが、
鍛え抜かれた身体バランスのおかげで、シミハムは一度も転倒せずにリカコの位置まで辿り着くことが出来た。
後はリカコの細身に三節棍による一撃をブチ込んでノックアウトさせてやれば良い。
「私は!簡単にはやられないから!(;〇;)」
「!?」
リカコは咄嗟に身体を捻ってシミハムの棍を回避した。
字面だけ見れば簡単なように思えるが、避けられること自体がシミハムには衝撃的だった。
武道館から落下したり、サユキやトモの必殺を受けたりした影響によって攻撃のキレが鈍ったのは否めないが、
それでもちょっとやそっと反射神経が優れた程度では避けられない鋭さの打撃を放ったはず。
それをリカコは、ダンスを踊るかのように軽やかに交わしたのである。
「……」
リカコという戦士の認識を改めねばならない、とシミハムは感じた。
前にクマイチャンも同様の勘違いをしていたが、石鹸を扱う特殊戦士ゆえに身体能力は並以下と思っていた。
実際は身体能力が非常に高く、身のこなしも美しい。
幼さゆえにまだ線が細いが、手脚は十分に長い。これから筋力がしっかりとつけば屈強な戦士になり得るだろう。
更に、リカコにダンス技術を大真面目に叩きこめばどれほど恐ろしい存在になるのだろうか。
想像もつかない。が、是非とも想像をしてみたい。
だが、その時は今ではない。
シミハムは放った棍をすぐに引き寄せてリカコにぶつけていった。
先ほどの回避で神経をすり減らしたリカコに2回目を避ける余裕はなく、後頭部への強打を受けて失神する。
「あっ……」
既に多量の石鹸水を撒かれてしまったが、リカコが倒れた今、これ以上滑りやすくされることはない。
後は目の前に立ちはだかったハルナンを秒殺するだけだ。
(はぁ……一騎打ちか……トモが言ったように、こういうのは私らしくないんだけどなぁ……)
308
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/08/18(水) 00:45:51
すいません、次の更新は木曜の夜(金曜AMごろ)になりそうです。
309
:
名無し募集中。。。
:2021/08/18(水) 01:03:28
どうぞどうぞ
310
:
名無し募集中。。。
:2021/08/19(木) 23:34:45
>>287
ベリキュー最年少対決は引き分けかぁマイマイだけはキュートでこの戦いの意味に気付いていた…いや、仕掛け人の一人だったのかな?
てか舞ちゃん結婚したんだよなぁ、あと梅さんも…なかなか感慨深いw
311
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/08/20(金) 03:03:59
ハルナンはシミハムがどれだけ傷ついているのかを把握していた。
天井からの落下、サユキの必殺技「トリプレット」、トモの必殺技「noonと運(ぬんとうん)」。
これらをまともに受けたのだから、ベリーズと言えどもシミハムの身体はもうボロボロのはずだ。
(ここで決定打でも与えられたらカッコつくんだけど……)
生憎、ハルナンには高火力の技は備わっていなかった。
この状況をひっくり返すような超パワーがあれば、そもそも今みたいな生き方はしていない。
(無いものねだりをしてもしょうがないよね。トドメはあの2人に任せよう。
そして、私は私に出来ることをしなくちゃ。)
武道館を絶賛破壊中のタケとマリアの攻撃力ならシミハムを倒しきることが出来るに違いない。
ならばハルナンの役割は「つなぎ」だ。
シミハムはこれまでの戦いで確実に疲弊している。
もしもここでシミハムを逃がしてしまえば、休まれて体力を回復されてしまう。
更に自分の存在を消すことが出来るので、残るタケとマリアを一方的に攻撃し、撃破することだろう。
それだけはあってはならない。
逃がさず、この武道館のセンターに縛り付けること。
それがハルナンの使命だ。
(私にはそれが出来る!)
意気込むハルナンだが、相対するシミハムは秒殺する気マンマンだ。
三節棍を伸ばしても絶妙に届かない位置取りをされているため、シミハムは前進する。
辺りにはリカコの石鹸水がバラまかれているが、その上での移動も少しずつ慣れてきた。
数歩ダッシュしてハルナンの脳天を叩けばそれで終いだ。
「あっ、注意した方が良いですよ。今の床はちょっとだけ滑りやすいので」
「!?」
気づけばシミハムは転倒し、頭から地面に衝突していた。
ダンス技術に関してはマスター級のシミハムの足さばきであればシャボンの上でも滑らずに動けるはず。
なのに何故転んだのか。不思議に思ったがその謎はすぐに解けた。
顔面が床に近づくことで、ハルナンの手首から流れる血液がシャボン液の上に乗っていることに気づけたのだ。
液体が変われば踏み込む時の力の入れ方も変わる。故にシミハムのボディバランスをもってしても転んでしまったのである。
「私のフランベルジュで手首を斬ったんですよ。どれほどの切れ味なのか……すぐに教えてあげますね。」
ハルナンはわざと転んですぐ下にいるシミハムに覆いかぶさった。
そして自分を斬った時のように、愛刀フランベルジュ「ウェーブヘアー」でシミハムの手首を裂いたのだ。
この攻撃自体のダメージは大した事ないが、手首からは大袈裟に出血している。
はやく止血しないと失血死は必至。
だが、波打つ刃のフランベルジュは肉を引き裂くため、応急処置も困難だ。
「……!」
「結構効いてるみたいですね……じゃあ……これを私の必殺技にしちゃいましょうか……」
ハルナンは新人剣士がキッカに修行をつけてもらった日のことを思い出した。
あの時はマリアがしつこくキッカに喰らいついて、休む暇を与えず、最終的に新人剣士が勝利していた。
今のハルナンとシミハムはそれと同じだ。
手首からの出血というタイムリミットを強制的に課すことで、休む暇を与えない。
絶対に体力を回復させてやらないという強い意思がこの技には込められている。
「必殺技の名前は、"いやせません"なんてどうですかね……」
「……」
「どうせ私はここでくたばるので……もう1つだけ喋らせてください。」
「?」
「自分の存在を無にするオーラは凄いけど……流れ落ちた血液までは消せるんですかね?……流石に消せないんじゃないかなぁ……」
「!!」
312
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/08/20(金) 03:07:02
>>310
残りのメンバーはタケ、マリア、シミハムのみになったので
誰が仕掛け人だったのか、目的はなんだったのか、種明かしをする日も近いと思います。
ベリキュー世代の次はスマイレージあたりが結婚していくかもしれませんねw
313
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/08/21(土) 02:46:25
流れ落ちた血液は単なる物体であり、それはもう"シミハム"とは呼べない。
そのため自分自身を消そうとした場合、血液は消えずに残ってしまう。
「血液が残ったら、自分を消しても居場所はバレちゃいますよねぇ」
「……!」
シミハムはハルナンの腹部をブン殴り、意識を奪うことで黙らせた。
自身の能力の欠点を指摘されて頭に血が登ったのか、らしくない振る舞いだ。
とは言え全く消せないワケではなかった。
「自分」と「血液」の両方を消そうと念じれば、結果的にどちらも消すことが出来る。
ただ、それだと消耗が大きすぎるのだ。
連戦続きで苦しんでいる今、そんなことはしていられない。
「……」
本音を言えばゆっくり休んで体勢を立て直したいところだ。
だがそうは出来ない理由が2点ある。
1つは手首の出血。このまま血が流れ続ければ、遠くない未来にシミハムは倒れてしまう。
もう1つはタケとマリアによる武道館の破壊活動。隠れ場所が順調に潰されて行っている。
このような状況であれば速攻で2人を倒すしかない。
「おっ、リカコとハルナンがやられたみたいだ。」
「はい……!」
武道館センターステージの動きにタケとマリアは気づいた。
かなりの数の座席を壊してきたが、まだ完全には更地にし切れていない。
ここで隠れられたら厄介だったが、予想に反しシミハムは一直線にこちらに向かってきていた。
意図は掴めないが真っ向勝負を挑むのであれば好都合。
「よし……マリア、さっき決めた通りに動いてくれ。」
「タケさん!分かりました!」
314
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/08/23(月) 03:16:56
シミハムが迫ってくるというのに、タケとマリアは二手に分かれる道を選んでいた。
マリアが向かった先は逆側のスタンドだ。
二階席をグルリと周り、先ほどホームランボールを打ち込んだ地点に辿りつこうとしているのである。
2対1という好条件を捨ててでもこうすべきだとタケは判断したのだ。
「よっしゃこい!タイマンでぶっ倒してやる!」
このままタケと戦うか、それともマリアを追うか、シミハムは一瞬迷った。
だが迷う時間がもったいないとすぐに気づく。
ハルナンのせいで己には血液のタイムリミットが設けられてしまっている。
ならばすぐにタケを倒して、その後にマリアを追うのが最適解だ。
シミハムは自分ではなく三節棍の存在を無にして、タケに叩きつけた。
今はもうサユキもリカコもいない。タケはノーガードで脳天に受けてしまう。
「ぐっ……!」
激痛。しかし耐えられないほどでは無かった。
シミハムも大きく疲弊しているため棍に上手く力を込められていない。
故に打撃が一撃必殺級の威力では無くなってきているのだ。
(どうやって攻撃したのか全っ然分からない!けど!これくらいなら押し切れる!)
タケは右手に持つ鉄球を力強く握りだした。
それを見たシミハムは投球を始める気だと判断し、回避の準備を始めようとしたが、
対するタケの行動はピッチングではなく、ボールを持ったままでの飛び掛かりだった。
「!」
鉄球を鈍器のように振り下ろすのはなかなかの脅威。
今のボロボロの状態のシミハムであれば、当たるだけでかなりの痛手だろう。
だが、剛速球と比べたらそのスピードはかなり落ちる。
そのためシミハムは楽にかわして、お返しにタケの腹に蹴りまで入れることが出来た。
「うっ!」
しかし何故タケは鉄球を投げなかったのか?
その答えにシミハムはすぐに気づくことが出来た。
タケは常に複数個の鉄球ストックしているが、これまでの連戦でそれらを使い切ってしまったのだ。
手元に残るはたった一球のみ。
だから簡単には投げられなかったのである。
となれば、その一球までも取り上げてしまえばタケを完全に無力化できるとシミハムは考えた。
315
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/08/24(火) 02:27:17
シミハムは一定の距離を保って戦うことを意識した。
タケの打撃は届かず、且つ、シミハムの棍は届く位置をキープすることにより、一方的に攻め込んでいる。
タケは懐に入り込もうと何度もタックルをしたが、その度にシミハムに阻まれてしまった。
今、この場はシミハムが完全に制している。
タケが鉄球を投げない限りはリーチの差を埋めることは出来ないだろう。
(くっそ〜、でも、今この球を投げるワケには……)
残るは一球。簡単には放り投げられない。
シミハムは投球を最大限に警戒しているため、投げられれば即座に避けるつもりだ。
そうなればタケの球数はゼロ。武器を失うためすぐにKOだろう。
だからと言って投げなければ、タケはいつまでもシミハムにいたぶられるだけだ。
左肩、右脛、腹、いたるところに強烈な打撃が叩きこまれていく。
いくらシミハムが弱っているとは言え、そして、いくらタケが強靭な肉体を持つとは言え、
これだけやられれば本当にまいってしまう。
「あーもう!分かったよ!投げてやるよっ!!」
タケがいきなり癇癪を起こしたのでシミハムは驚いたが、すぐにニヤリとした。
ここで上手く回避すればタケを完全に無力化できるのだから笑いもするだろう。
だがタケはちょっとやそっとでは避けられない球を放るつもりのようだ。
「必殺技を見せてやるっ!!!」
タケは地面を強く蹴りあげ、シミハムの頭上へと跳びあがった。
この必殺技は空から鉄球を全力投球する技。
クマイチャンほどの巨人の頭上はとれないが、シミハムなら高さの確保は十分だ。
剛速球に重力の加速度が加わることで、球速は人知を超える。
超高スピードで放たれた鉄球は空気の層を無理矢理ブチ破り、バリバリといった雷鳴にも似た音を轟かせる。
「必殺技"バリバリ"を喰らえ!!」
球種自体はシンプルなストレート。ただし速度と重量はレギュレーション違反だ。
まともに受ければベリーズであろうと無事では済まないだろう。
実際、この必殺技をクマイチャンに放てたものならもっと楽に撃破できたに違いない。
だが、この場にいるのはベリーズの団長シミハムなのだ。
しかもこれまでタケの投球には最大限の警戒をしてきている。
だからこそタケが投球フォームを見せた段階で回避行動をとれていたのである。
「うわっ!避けられたっ!!」
鉄球はシミハムに避けられ、激しい勢いで武道館の床に衝突していった。
その際にガレキが吹っ飛んだが、シミハムは棍を振ることによる風圧でそれさえもガードする。
そしてそのまま三節棍を鉄球にぶつけて、遥か遠くへと飛ばしてしまう。
「お、おい!最後の鉄球なのに〜〜〜〜っ!」
残念無念。
タケは必殺技が不発に終わったどころか、武器さえも失うことになったのだ。
316
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/08/25(水) 04:01:36
無抵抗のタケを打ちのめしてやろうとした、その時。
シミハムは後方から刺すような殺気が発せられるのを感じた。
その出所は遥か後方。逆側スタンド。
なんとマリアが鉄球を右手で掴み、投げようとしていたのだ。
「!」
その鉄球は先ほどマリアがカッ飛ばしたホームランボールだ。
タケとマリアが二手に分かれた理由はただ一つ。
この鉄球の回収に他ならない。
「タケさんの鉄球で!シミハム!あなたを刺します!」
"刺す"とは野球用語で、ボールをランナーに当ててアウトにするということ。
もっとも、そんな用語が分からなくてもやりたいことは十分に伝わっていた。
要するに、マリアは鉄球を投げてシミハムに当ててやろうとしているのだ。
だが、それを実現可能かどうかは怪しいとシミハムは考える。
マリアの現在地は逆側のスタンド。
両手剣を軽々振るう剛腕から、球を届かせる肩があるのは信じてもいいだろう。
ここで問題視しているのは「コントロール」だ。
マリアはつい最近までイップスのようなスランプに陥っていたと聞いている。
武道館内での戦いっぷりを見る限り、ナイフを綺麗に投げていたので、ある程度は克服したのだろうが
これだけ距離が離れている中で、ピンポイントにシミハムに当てることが出来るだろうか?
そもそもシミハムだって動くのだ。
動く的に見事に当てるなんて不可能ではないか?
そういった疑いの目を全て吹っ飛ばすかのような勢いで、マリアは剛速球をブン投げる。
「もう!!!あんな悔しい思いはしたくないっっっ!!!」
マリアはモモコがサユをさらった日のことを思い出していた。
あの時マリアがナイフを真っすぐ飛ばしていれば阻止できたいたかもしれなかったが、
不覚にも大きく反れたためにサユを奪われてしまった。
もうあんな思いはごめゴメンだ。
だからマリアはキッカとの苦しい特訓に耐えてきた。
マイ・セロリサラサ・オゼキングとの戦いで、実戦でも制球が乱れないことを確かめた。
そう。今はもう始球式なんかではないのだ。
9回裏満塁のギリギリの場面。
全ての思いを込めたマリアのボールは、キャッチャーがどんなに遠かろうと、
まっすぐ、まっすぐに突き走っていく。
「!」
この差し迫った状況でまったく乱れない投球をするマリアに、シミハムは正直驚かされた。
若いのにこれほどの胆力を見せつけてくれるなんて、感心までもしてしまう。
だが、所詮はまっすぐ飛ぶだけだ。
シミハムがちょっと横にズレるだけで鉄球は当たらない。
マリアの全身全霊は虚しくも無駄に終わるのだ。
317
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/08/26(木) 03:02:00
「いいや!良い球だぜ!」
シミハムが鉄球を避けた先にはタケ・ガキダナーが待ち受けていた。
マリアが投球するのは分かっていたかのようにそこに構えて、そして捕球する。
「!!」
ここでシミハムは全てを理解した。
マリアはシミハムを撃ちぬくために投げたのではない。
鉄球を失ったタケに新たな鉄球を与えるために、パスをしていたのだ。
超ロングレンジのキャッチボール。それを2人は難なくやり遂げたというワケだ。
「よぉっし!これでもう一発投げれるぜっ!!」
ボールを捕るや否やタケは跳びあがった。
次にタケが取る行動は言うまでもない。必殺技「バリバリ」だ。
先ほどはシミハムに避けられてしまったが、今は状況が違う。
不測の事態の連続で焦っているし、タケの投球への警戒も切らしていた。
僅かでも戸惑いを覚える者に回避されるほど、タケの球はノロくはない。
「これで終わりだ!!"バリバリ"!!!」
シミハムの頭上をとったタケは、腕が千切れるほどの勢いで剛速球を繰り出した。
バリバリといった轟音と共に鉄球は下へ下へと突き進んでいく。
この調子ならすぐにシミハムに衝突し、KOすることが出来るだろう。
しかし、不意を打たれたとは言えベリーズ戦士団の団長だ。
身に危険が迫れば、勝手に身体が動く。
「なっ!?」
シミハムは三節棍を振り、上から落ちる鉄球を叩き飛ばしてやろうとしていた。
奇しくもその姿は剛速球に挑むバッターに似ている。
狙いはピッチャー返し。
強大なエネルギーを持った鉄球を打ち抜いて、全部タケに跳ね返そうとしているのだ。
もしもそうなってしまえば、今度こそタケはお終いだ。
「タケさんの鉄球は負けません!だって!その球にはマリアの思いも詰まっているんだから!
進め〜!ファイターズ!ひと〜すじに〜!!」
連合軍というファイターズ(闘士達)に向けてマリアは応援歌を叫んだ。
そう、タケが放った球にはみんなの思いがギッシリと込められているのだ。
そんな投球が簡単に打たれるほど軽いワケが無い。
「そうだ!これでゲームセットなんだよっっっっ!!!!」
鉄球はシミハムの棍に衝突しても決して負けなかった。
木製バットを折るかのように、三節棍を真っ二つに折ってやったのだ。
そしてそのままシミハムの胴体へと突き刺さっていく。
「!!!!」
瞬間、シミハムは口から多量の血を吐いた。
タケの必殺技「バリバリ」をまともに受けたのだから、内臓が破裂したに違いない。
そんなシミハムが投球の勢いに打ち勝つことが出来るはずもなく、
ドォンといった大音量を響かせながら背中を床で強打してしまう。
その様子を見たタケとマリアは勝利を確信した。
「やった……やった!勝った!シミハムに勝ったんだ!!」
「タケさん!凄い!凄いです!本当に本当に本当に凄いです!!!」
2人は両手を挙げて歓喜した。
ベリーズという化け物の親玉を自分たちの手で倒したのだから、それはもう嬉しいだろう。
しかし、喜ぶには少しだけ早かったようだ。
キャプテンはこの程度では屈さない。
「え?……ま、マジかよ……」
「どうして!?あんなに強い必殺技を受けたのに、どうして立ってられるの!?」
シミハムは今回の戦いにて、
サユキ・サルベの必殺技「トリプレット」を受けた。
トモ・フェアリークォーツの必殺技「noonと運(ぬんとうん)」を受けた。
ハルナン・シスター・ドラムホールドの必殺技「いやせません」を受けた。
タケ・ガキダナーの必殺技「バリバリ」を受けた。
どれも強力な技だが、
ベリーズの戦士団長、シミハムを倒すには足りなかったようだ。
「……」
「ほ、本当の化け物かよ!いったいどうすれば倒せるって言うんだよっ!」
318
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/08/27(金) 02:28:37
連合軍の猛攻を受け続けたシミハムはもはや満身創痍だ。
少しでも気を抜けば意識が飛んでしまいそうになる。
だが、ここで倒れるワケにはいかない。
使命を完全に果たすには、負けを認めて楽になってはならないのだ。
戦うだけの力がまだ残っている限り、強大な壁として立ちはだかる必要がある。
「……負け……られ……ない……」
シミハムは潰れた声帯を無理矢理にでも震わせて、血を吐きながらも、思いを声に乗せて発した。
蚊の鳴くようなか細い声ではあるが、それだけでタケはかなりのプレッシャーを感じていた。
ある種、クマイチャンと対峙した時以上の重圧だ。
シミハムはもう全身ボロボロだと言うのに、
手に持つ武器だって普段の半分以下の長さの棒きれだと言うのに、
勝利のイメージが全く浮かばなくなってしまう。
(ちくしょう……どうすりゃいいってんだよ……)
これからどんな攻撃を仕掛けようと立ち上がるであろうシミハムを前に、タケは諦めかけていた。
そんな中、残る最後の仲間であるマリア・ハムス・アルトイネの大声が聞こえてくる。
「タケさーーーーん!!すぐに!今すぐに!鉄球を探して渡しますね!
きっとどこかに転がっています!マリア必死で見つけます!!」
「お、おい!マリア!お前まだ勝つ気でいるのか?……」
「当たり前です!じゃないと、サユ様を助けられないんですからっ!!!」
タケはハンマーで殴られたかのような衝撃を受けた。
新人中の新人がまだやる気だと言うのに、自分はいったい何をしているのだろうか。
己は何者か
アンジュ王国の番長、タケ・ガキダナーだ。
番長は常に攻めて攻めて攻めるのみ。前進しか許されない!
「そうだなマリア!最後まで挑み続けなきゃな!!」
タケの手には鉄球は無い。
だが、それがどうしたと言うのだ。
武器が無ければ、己の拳で殴り飛ばせばいいじゃないか。
「シミハム!今度こそ決着をつけようぜ!」
319
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/08/27(金) 02:33:58
タケが大きい一歩を踏み出した時、異変が起こった。
なんと武道館中がガタガタと震えだしたのだ。
タケの足踏みがそうさせたのではない。
武道館ももう、戦士たちのように限界が近かったのである。
例えば、武道館の外では天変地異のようなオーラが常時、迸っていた。
例えば、二階へと続く階段や、中に入るための扉を幾度も破壊されていた。
例えば、天井にポッカリと穴をあけられていた。
例えば、トモ、タケ、マリアの3人によって二階席の殆どを更地にさせられていた。
例えば、タケの必殺技「バリバリ」によって二度も武道館内部に強い衝撃を与えられていた。
武道館は雄大ではあるが、これだけの攻撃を受ければ流石にもたなかったのだ。
基礎こそしっかりしているため完全崩壊とはいかなかったが、
武道館の最大のシンボルとも言える物体を支えられなくなり、天井の穴から転げ落ちてしまう。
「な、なんだありゃ!でっかい金色のタマネギ!?」
「!?」
タケが指さしたもの、それは武道館の屋根上にあったはずの擬宝珠だった。
通称タマネギと呼ばれている巨大な物体が武道館のセンターステージに落ちてきているのだ。
これにはシミハムも、タケも、マリアも目を丸くした。
直径5メートルもあるタマネギが落ちてきたのだから、驚かないワケがないだろう。
誰もが恐れて動きを止めてしまうはずだ。
ところが、タケだけは違った感情を抱いていた。
そしてすぐそこまで迫ってきているタマネギに向かって、自らジャンプし、嬉々として近づいていったのである。
「あった!武器!武器だよ!これ!!」
タケの行動はシミハムの理解を遥かに超えていた。
自分からぶつかりにいくだなんて自殺行為。
ところがタケは両手を伸ばして、黄金のタマネギに両の掌で触れていったのだ。
そう、タケはこのタマネギを鉄球の代わりにしようとしているのである。
「うおおおおおおおお!!!!これで最後だ!!!!3球目の!!!!"バリバリ"!!!!!!!」
無論、タケの両腕には激痛が走る。もしかすると明日からはまともに動かせなくなるかもしれない。
だがそんなことは関係ない。
"明日のことよりも今日が大事"。
勝利の女神が目の前を通るのであれば、それを掴むためになんだってしてみせる。
「おりゃああああああああああああああ!!タマネギ!!!落ちろぉおおおおお!!!!」
武道館のシンボル、それも巨大な物体を人間一人の力で動かそうだなんておこがましいにも程がある。
実際、今回タケが触れたことによる影響はほぼゼロだったと言っていいだろう。
しかし、この行動によってシミハムはその場に縛り付けられてしまっていた。
そう、タケ・ガキダナーの行動に見惚れてしまったのだ。
(凄い……それが、君の出した答えなんだね……)
ベリーズは強い。
特にベリーズの戦士団長、キャプテンは若手の必殺技なんかには決して屈さない。
だが、相手が武道館そのものであればどうだろうか。
連合軍の根性と、武道館の力強さ。
それが組み合わさったのであれば、敵がどんな傑物であろうと打ち勝つことが出来る。
(これには、流石に、勝てないな……)
三度目の正直。
タケの必殺技「バリバリ」は敵の総大将シミハムを押し潰す。
320
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/08/27(金) 02:36:03
長くなったので2レス(
>>318
>>319
)に分割しました。
これで決着です。
第二部はもうちょっとだけ続くのでもう少しお付き合いください。
321
:
名無し募集中。。。
:2021/08/27(金) 17:36:25
たかが石ころひとつ!
シミハムが押し出してやる!
322
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/08/28(土) 01:28:17
>>321
調べてみたらガンダムのセリフなんですね。
ガンダムは未履修でした……
323
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/08/28(土) 02:56:24
シミハムに勝利したものの、タケにはもう喜ぶ気力も残っていなかった。
必殺技を放つために高く跳躍していたが、受け身も取れずに落下して気を失ってしまう。
ベリーズの脅威は去ったのでこのまま眠りにつくのも悪くないかもしれない。
だが、武道館の崩壊はまだ続いているのだ。
天井の瓦礫が今まさにタケのところへと落ちていく。
「タケさん!!!起きてください!!!!」
このままではタケの命が危ないと感じたマリアは必死で走った。
しかし距離が遠すぎるために到底間に合うようには思えない。
このまま瓦礫に潰されてしまうのかといったその時、何者かが現れた。
「みんなよく頑張ったね、後は任せて。」
「サ、サ、サユ様!?」
タケのピンチに登場したのはモーニング帝国の前帝王のサユだった。
手に持ったレイピアで高速の突き技を繰り出し、振ってきた瓦礫を一つ残らず吹き飛ばしてしまう。
タケが無事で済んだのは良かったが、マリアはいよいよパニックになった。
ベリーズに捕まっていたはずのサユが自由に動けていることの理由が分からないのだから無理もない。
「え?え?え?……」
混乱しているマリアに更に追い打ちをかけるかのように、もう一人の人物が登場する。
それはマーサー王だった。こちらも囚われの身……のはず。
下敷きになっているシミハムを救うために巨大な黄金のタマネギを片手で持ち上げて、
どこか遠くに投げ捨てた。
「ふぅ、これで一安心だとゆいたい。」
「相変わらず、化け物みたいなパワー……」
「ふふふ、中に化け物を飼っているのだから仕方あるまい。」
常人離れした力を見せつけたマーサー王を前にして、マリアはいよいよ言葉を失ってしまった。
あらゆることが起きすぎて、脳がオーバーヒートしている。
サユはそんなマリアの背後に回り込み、首筋に鋭いチョップを当てて強制的に気を失わせた。
「ごめんね。ちょっと休んでて。」
「あっ、サユ様っ………………」
マリアが失神したタイミングで大勢の人間が武道館の内部に入り込んできた。
彼らはマーサー王国所属の医療班だ。
武道館を舞台に激しい戦いを繰り広げた戦士たちを、次々と外に運んでいく。
「さーて、みんなが起きたらちゃんと説明しないとですね。」
「そうだな。さて、若い戦士たちは我々を許してくれるかどうか……」
「怒られちゃうかも」
「ううむ、気が重いな……」
324
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/08/29(日) 04:04:23
シミハムを撃破してから5,6時間は経ったころ、
気を失っていたタケ・ガキダナーが目を覚ました。
「あれ……ここはどこだ?……」
見覚えの無い大型テントの中にいたのだからタケは寝起き早々驚いた。
よく見れば周りには連合軍の仲間も横たわっている。
他にも医者と思わしき人物が何人もいることから、戦士たちを治療しているのだと分かる。
自分の身体にも包帯が巻かれているので、寝ているうちに診られたのだろう。
「タケちゃん!起きたのね!」
「カリン!」
声をかけてきたのはKASTのカリンだ。
寝起きに耳元で大声を出されたのでタケは頭が痛くなったが、
ベリーズとの死闘の後なので叱る体力は残されていなかった。
カリンもカリンで久々の再開なので勢いあまって抱き着きたいところではあるのだが、
必殺技を多用した反動で全身が痙攣し、身動きがとれなくなっている。
カリンだけが特別ではない。この場で治療を受けているほとんどの戦士が重傷なのだ。
若手だけではない。キュートのナカサキ、アイリ、オカール、マイマイも辛そうな顔をしている。
特にモーニング帝国剣士のサヤシとカノン、番長のメイは負傷の度合いがひどく、
別のテントで集中的に治療を受けているとのことだ。
今回の戦いはそれだけ厳しいものだったということだろう。
ただし、1名だけはほぼ全快で走り回っていた。
「聞いたぞ〜!シミハムを倒して王とサユを助けたんだってな!」
「げっ、マイちゃん……じゃなかった、マイミ様……」
数時間前まで戦車と死闘を繰り広げていたはずなのだが、
マイミは持ち前の生命力で元気を取り戻していた。
今の体調でマイミの相手をするのはしんどいなとタケは感じる。
「ん?……あれ?……確かにシミハムは皆で倒しましたけど、マーサー王とサユ様は助けてなんか……」
「何を言ってるんだ。だったらどうして2人がそこにいると言うんだ。」
「えっ!?」
タケだけでなく、ほぼ全ての戦士たちが驚いた。
自分たちが療養しているテントに、今回の目的であるマーサー王とサユが2人とも入ってきたのだから無理もないだろう。
更に、モーニング帝国の現帝王のフク・アパトゥーマと、果実の国の王ユカニャ・アザート・コマテンテまで入ってきている。
「なんだなんだ?……いったい何が起きてるんだ?……」
325
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/08/31(火) 03:23:36
マーサー王、サユ、フク王、ユカニャ王。そうそうたる顔ぶれが揃ったものだ。
しばらく気まずい時間が流れたが、サユが口火を切りだした。
これからの話は謝罪から始まるため、ただ一人、王ではないサユから話すのが適切だと考えたのだろう。
「ごめんなさい。私とマーサー王がベリーズにさらわれたというのは嘘だったの。」
「「「!?」」」
突然の告白に一同は驚愕した。
若手たちはもちろん、キュート戦士団団長のマイミまで信じられないといった顔をしている。
それもそうだろう。今回のツアーの最大の目的が崩れたのだから驚くなという方が無理な話だ。
しかし何故そのような嘘をついたのだろうか?目的がまったくもって分からない。
「ベリーズと……いや、ベリーズ様たちと戦わせて、私たちを強くするためですか?」
騒然とする中、冷静に返事をしたのはオダ・プロジドリだった。
ミヤビに斬られて痛む胸を抑えながら、サユの目をじっと見ている。
「そうよ。オダ、よく分かったわね。」
「はい。過去にサユ様が使われた手口だったので。」
「う……」
サユとオダのやり取りにより、今回の騒動は大規模な「強化トレーニング」だということが判明した。
ベリーズという強大な存在を敵に回すことによる効果はこの場にいる誰もが理解しており、
モーニング帝国剣士、番長、KASTらは二段階も三段階も強くなっている。
しかし、命をかけてまで行うべきトレーニングであったかは疑問だ。
頭に包帯を巻いたカナナン・サイタチープが訴える。
「確かにみんな強くなりました。ベリーズ様たちと死ぬ気でやりあった結果ですね。
でも、その結果、同期のメイは今も生死を彷徨っています。
理由を聞かせてください。こんな無茶をしてまでするべきことだったんですか?」
カナナンの発言にエリポン・ノーリーダーが続いた。腹の傷口が開くのもお構いなしに大声で叫ぶ。
「サヤシとカノンちゃんも本気で死ぬかもしれん!万が一があったらエリは同期を2人も失うっちゃん!
ねぇフク!こんな酷い状況になるまで黙って見とったん!?」
「……」
フク・アパトゥーマが言葉に困った時、テントの入口が勢いよく開かれた。
登場したのはベリーズ戦士団の面々だ。
シミハム、モモコ、チナミ、ミヤビ、クマイチャン、リシャコ。全員が重傷だと言うのに一切の治療を受けないまま立っていた。
恐怖の存在だったはずのベリーズが現れたので連合軍らは戸惑ったが、
そんな雰囲気も全く気にせずチナミが叫んでいく。
「君たちの仲間は絶対に死なせないよ!!最も信頼できる名医がつきっきりで見てるの!
嘘をついた私たちの言うことなんて信じられないかもしれないけど、本当、本当なんだ。
あの子に任せれば絶対に大丈夫。
もしものことがあれば、私たちベリーズが責任を取る。全員の首を差し出す覚悟だよ。」
涙を流しながら嘆願するチナミに、エリポンとカナナンは圧倒されてしまった。
そんな2人の肩をマイミがポンと叩く。
「長い付き合いだから分かるがあの目は本気だ。
名医の腕が確かなのも知っているし、どうか信じてもらえないだろうか?
ベリーズが首をかけるというのならば、そこに私の首を足したっていい。」
「「……」」
326
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/08/31(火) 03:24:08
エリポンとカナナンはコクリと頷いた。
2人も誰かを責めたいわけではないのだ。仲間が助かるのであればそれで良い。
その様子を見てホッとしたマイミは自分の心持ちを話しだす。
「いや、しかし驚いたな。ベリーズが裏切ってなどいなかったとは全く気付いていなかった。
流石の演技力だ。我々キュート全員騙されてしまったよ。」
「「「「……」」」」
「ん?ナカサキ、アイリ、オカール、マイマイ、その顔はなんだ?」
「いや、その、なんつーかさ……アンタ以外知ってたんだよ。」
「は?」
「オカールの言う通り。知らないのは団長だけだったってこと。」
「え???」
マイミがパニックになったところでマーサー王が前に出た。
騒動の責任の大部分はマーサー王国にある。
ここでしっかりと説明責任を果たさなければ、筋が通らないというものだ。
「今回の件について順を追って説明をさせてほしい。
まずは、あえてこのような表現を使うが、"共犯者"が誰なのかを明確にしたい。
マーサー王国からは私マーサーと、ベリーズ全員、そしてマイミ以外のキュート4人だ。
モーニング帝国は……フク王、説明をお願いできるか?」
「はい。モーニング帝国ではサユ様と私フク、そしてハルナンが全てを知っていました。」
「「「「「えっ!?」」」」
周囲の視線がハルナンへと注がれる。
ハルナンと言えば今回の戦いでモモコやシミハムと死闘を繰り広げたはず。
だというのに、共犯者だったなんて理解ができない。
みなが疑問を持った状態のまま、ユカニャが言葉を続けていった。
「果実の国の共犯者は私一人だけです。KASTの子たちは何も知りません。
アンジュ王国は、アヤチョ王とマロさんが該当しますよね。」
アヤチョ王とマロ、そう聞いてタケが反応した。
「あ〜確かにマロはそういうの知ってそうだもんな〜……
そう言えば他の国は王様が来てるのになんでアヤチョ王は来てないんだろ?」
「あ、特に理由はないようですよ。多分面倒だったんじゃないですかね。」
「あんにゃろ……」
327
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/09/01(水) 02:21:22
「what's!? ハルナンさんは全部知ってたんですか!?」
「そうよ。ノナカ。」
「umm...いったい何故ですか?……」
「アンジュ王国も今回の作戦に引き入れるためよ。
アヤチョ王と交渉するなら王より私の方がスムーズだからね。」
「ナカサキ!アイリ!オカール!マイマイ!どうして私に黙ってたんだ!」
「どうしても何も……団長は顔に出ちゃうじゃないですか……」
「団長は人を騙せる人間じゃないでしょ。だから逆に騙されてもらうことにしたの。」
「アイリ……マイマイ……確かにそうだが……仲間外れは哀しいんだぞ……」
説明により以下の人物が共犯者であることが明かされた。
・マーサー王国:マーサー王、ベリーズ全員、ナカサキ、アイリ、オカール、マイマイ
・モーニング帝国:サユ、フク王、ハルナン
・アンジュ王国:アヤチョ王、マロ
・果実の国:ユカニャ王
ここでKASTのトモは一つの疑問を抱く。
数本の矢に貫かれた後なので、寝たままの姿勢で質問を投げかけた。
「人数足りなくないですか?あのカントリーとかいう子たちもソッチの仲間のはずじゃ?」
リサ、マナカ、チサキ、マイの4名のことをトモは指している。
問いかけに答えたのは彼女らの面倒を見ているモモコだ。
全身ボロボロだというのに涼しい顔をして言葉を返していく。
「言うならばあの子たちも騙された側なのよ。
ベリーズとキュートがズブズブだってことは、私の判断で教えなかったの。
あの子たちの正体はマーサー王国所属の新人戦士。ただし、未公表のね。
素質と将来性はピカイチの逸材よ。あなた達と本気で戦わせることで強くなってほしかったってワケ。」
「はぁ……なるほど」
トモが納得したところで、同郷のユカニャ王が喋りだした。
「さて、話を次の段階に進めましょうか。
共犯者の名前があがりましたが……その中でも首謀者は私、ユカニャ・アザート・コマテンテなんです。」
「「「「!?」」」」
ユカニャがそんなことを言うものだから一同はまたも驚いた。
特にKASTの4名が受けた衝撃は尋常ではなかった。
「皆さんご存知の通り、数年前と比べると現代の世は平和です。
マーサー王国も、モーニング帝国も、アンジュ王国も、そして果実の国だって、
今現在の戦力があれば十分に国を護れることでしょう。」
ユカニャの言う通り、国の存亡が脅かされるような危機はしばらく起きていなかった。
これら4か国が親しいため、攻め入るような巨悪など登場しようが無いのである。
「ですが、事態は大きく変わりました。"ファクトリー"が現れたのです。」
「ファクトリー?」
"ファクトリー"。ここにいる大多数の者には耳馴染みの無い言葉だった。
「知りませんよね。だから私が教えてあげます。
ファクトリーは"ばい菌"です。放っておけば国そのものを潰しかねない悪の権化なんですよ。
誇張なんかではありません。ヤツらは厄介で忌々しいことに、それを成すだけの力を持っています。
1匹残らず滅菌消毒してこの世から消し去ってやらない限りは、私たちに明日は無いと思ってください。」
328
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/09/02(木) 02:37:56
ユカニャが何のことを言っているのか、連合軍は全く理解できていなかった。
その言いっぷりが真実であるならば、ファクトリーは怪物か何かなのだろうか。
「ピンと来ていないようだから、実際に会わせた方が良さそうだね。」
ミヤビはそう言うと、8人の少女たちをテントの中に招き入れた。
おそらく彼女らが"ファクトリー"なのだろうが、どう見ても普通の人間だ。
ユカニャが言うような"ばい菌"、"悪の権化"のイメージは全くない。
そんな中、連合軍の中に驚く者が現れだした。
「アヤノ!?……タグに、レナコまで!」
「ラーメン大好きなタイサさん……!?」
真っ先に反応したのはオダとトモだ。
よく知っている人物がファクトリーの中にいたので衝撃を受けている。
そして、マリアにも見覚えのある人物がいたようだった。
「ロッカーと、お友達の女の子!」
マリアは打倒キッカの練習に付き合ってくれた2人を覚えていた。
感動の再開なのでハグでもしたいところだが、
当の2人は暗く、浮かない表情をしている。
そしてそれは"ロッカー"と"ガール"のみでなく、8人全員の表情が曇っていた。
そんな8人の前にユカニャが立ち、連合軍にこう告げる。
「百聞は一見にしかず。ファクトリーは戦闘によってその醜い姿を現します。
見ててください。私が自ら戦うことで醜悪な化け物を引き出してあげますよ!!」
ユカニャが妖しい桃色のジュースを飲もうとしたその時、オダ・プロジドリが大きな声を出した。
「待ってください!」
「……なに?」
「理由はよく分かりませんが、戦うというのなら私にやらせてください。」
「えっ?」
「この私にアヤノと戦わせてくださいっ!!」
先ほどのミヤビ戦で身体はボロボロだと言うのに、オダは剣を握って立ち上がった。
本来であれば有無を言わさずドクターストップをかけるところではあるが、
オダの真剣な眼差しを前にして、ユカニャはノーとは言えなかった。
「オダ……今のオダが私と戦ったら死ぬよ。」
「馬鹿を言わないで。私が誰だか分かっているの?」
「……モーニング帝国剣士」
「そう。私はモーニング帝国剣士。じゃあアヤノは何者なの?」
「私は……」
「ううん、答えなくていい。戦えばその先に答えが見えてくるんでしょ?
やり合おうよ、真剣勝負。さぁ、早く武器を持って。」
アヤノと呼ばれた少女は怖くてしょうがなかった。
オダにやられることが怖いのではない。オダを傷つけてしまうことが怖いのだ。
だが、同時にハートが燃え上がっている感覚も覚えている。
戦士として戦えるなんていつ以来のことだろうか。
「私に、いや、私たちに武器は無いよ!」
「えっ!?」
「強いて言うなら……"拳(こぶし)"、それが私たちの武器!」
「!!!」
アヤノは瞬時にオダとの距離を詰め、高速のパンチを繰り出した。
329
:
名無し募集中。。。
:2021/09/02(木) 15:51:48
スタートから早6年…
ようやく話の本題に入るか
330
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/09/04(土) 03:19:36
戦闘開始の合図もなしにアヤノが先制攻撃を仕掛けてきたが、
オダは咄嗟にブロードソードの面でパンチを防いでいた。
これはオダが自分からけしかけた勝負だ。不意打ちで一発KOという恥を晒す気はさらさらない。
(それにしてもなんて鋭いパンチ……ボクシングのような格闘技を修得しているの?)
アヤノの戦闘スタイルは、かつてチームを組んでいた時とは大きく変わっていた。
だがボクシングが得意と分かれば対策を練ることが出来る。
立ち技の打撃に注意すれば優位に立てるはずだ。
……そう思った矢先にアヤノが姿勢をグッと低くして飛び掛かってきた。
「足元がガラ空きだよっ!!」
「!」
アヤノはオダの下半身にタックルして転ばせて、己の長い脚をオダの脚に器用に絡めてきた。
これはボクシングに無いはずの足関節技だ。
無慈悲に極めにかかってくるアヤノの攻めに対して、オダは苦悶の表情を浮かべていた。
「う……うぐぐ……」
今のオダに出来る行動は、剣でアヤノを斬ることのみ。
自由に出来る両腕を思いっきり振って、アヤノに斬撃を当てていった。
苦し紛れの攻撃なので刃はパンチで簡単に防がれてしまうが、
剣と拳がぶつかり合った瞬間だけ、足の絞めが若干だけ緩みだした。
その隙にオダはアヤノのホールドから抜け出していく。
「んっ……!」
「あっ、逃がしたか……」
「ハァッ……ハァッ……ボクシングなのに……関節技?」
「ボクシング?違うよ、私が得意とするのは"コマンドサンボ"。」
軍隊式格闘術コマンドサンボ。
それがアヤノが得意とするスタイルの名称だ。
打撃技のみでなく、関節技や投げ技を駆使することで、相手の肉体を破壊する格闘技である。
8人の少女たちはそれぞれ異なる格闘技を極めている。
武器を持たず、拳(こぶし)のみで戦うために日夜鍛えているのだ。
「コマンドサンボ?……どんな格闘技か知らないけど、私の剣技に勝てるって言うの!?」
オダは一瞬のうちに斬撃を4連続で繰り出した。
先ほどミヤビにやられたばかりなので、己の身体に負担をかける高速剣技はさぞかし辛いことだろう。
だが、目の前のアヤノに勝つためには鞭打ってでも攻め続けるしか無いのだ。
しかしその4連撃までもアヤノのパンチのラッシュで防がれてしまう。
「遊びで格闘技をかじってるワケじゃないんだよ……
武器を持った相手にも対抗できるからこそ、軍隊式格闘術なんだ!」
331
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/09/04(土) 03:20:14
ここでオダは力のこもった一撃を繰り出したが、
それさえもアヤノの拳(こぶし)で弾かれてしまった。
思えばアヤノの手脚は数年前と比べて非常に長くなっている。
つまりはリーチが段違いなのだ。
全ての攻撃が有効打になる前にアヤノの拳で封じられてしまう。
「もう終わらせよう。ミヤビ様と戦って傷ついたオダは私の敵じゃないよ。」
アヤノは長い脚で蹴りを入れて、オダをまたも転ばせた。
ベリーズとの死闘で全力を使い果たしたオダには、もう踏んばる力も残されていないのだろう。
そうやって無様に転んだオダの両ももを、アヤノは自らの右ひざ、左ひざで力強く踏んづける。
「1点!そして2点!」
「!?」
アヤノが謎の点数を数えるのを見てレナコとタグが騒ぎ出した。
「たいへん!あのままだとまずいよ!」
「アヤノ、必殺技でオダを仕留めるつもりだね……ほら、すぐに3点目だよ。」
アヤノはお次は右手でオダの左肩を抑えつけた。
右もも、左もも、左肩に体重をかけられているため、オダは殆ど身動きが取れなくなっていた。
ここでオダはやっと、アヤノの数えている数だけの箇所を封じられていることに気づく。
(両脚と、左腕がまったく動かない……)
「3点!そして次は……!」
次の一手でアヤノの必殺技が完成する。
この必殺技が決まると同時にオダは一切の抵抗が出来なくなるのだ。
アヤノが歓喜したその時、オダの右手から斬撃が飛んでくる。
その一撃は片手だというのに、これまでのどの太刀筋よりも鋭いものだった。
アヤノはその刃に反応し切れず、平坦な胸でモロに受けてしまう。
「えっ?……」
「ふぅ、やっと決まったようね……私の必殺技。」
周囲が驚く中、オダの必殺技を身をもって受けたことのあるミヤビは冷静な目で見ていた。
「みんな気づいてた?彼女の斬撃は一撃ごとにキレを増していたんだよ。
最高潮に乗った最後の一撃は、ベリーズやキュートでも防ぐことは出来ないかもしれない……」
オダ・プロジドリがアヤノに放った斬撃は計7回。
ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シと音階が上がるかのようにオダは自身のギアを上げてきていた。
序盤の攻撃を防がれたとしても、更に強くなりゆく攻撃が通らないとは限らない。
ノればノるほど強くなる必殺技「さくらのしらべ」でオダはアヤノに逆転してみせたのだ。
後輩の見事な勝利にアユミンが大喜びする。
「やったああああああ!ねぇハル!マーチャン!見てた!?オダが勝ったよ!」
「アユミンうっせぇなぁ……こっちは怪我人だってのに……」
「ねぇ、あのアヤノって人なんだか変だよ。なんか、真っ黒のよく分からないオーラが出てるみたい」
「「え?」」
332
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/09/04(土) 03:21:29
>>329
開始からもう6年も経つんですねw
長期休養から復帰できたので、なんとかペースを上げたいところですね。
333
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/09/05(日) 04:29:39
オダ・プロジドリは違和感を覚えていた。
目の前のアヤノは確かに強い。一手遅ければオダの方が負けていた可能性もある。
だがいくら強いとは言っても帝国剣士や番長、KASTらと同レベルだ。
(ベリーズ様やキュート様が大騒ぎする程とは思えないのよね……)
オダがそう感じていたその時、アヤノの身体に異変が起きた。
禍々しいオーラが威圧するかのように発せられたかと思えば、
細身なはずのアヤノの筋肉量が一気に膨れ上がったのだ。
更に、信じられないことにオダが斬った傷口がみるみる塞がっていっている。
筋力増強くらいならナカサキにも行うことが出来るが、
傷まで塞ぐなんて、人間の範疇を超えているとしか言いようが無い。
「え?……」
「あ゛あ゛!ああああああああ!」
アヤノは苦しみ、もがきながらオダのブロードソードに左手を伸ばした。
そして刃を鷲掴みにし、一瞬にしてへし折ってしまう。
「!?」
一切の血を流すことなくに刀身を握りつぶすなんて考えられない。
何が起きたのか分からないが、目の前のアヤノはさっきまでのアヤノとは別人だ。
いや、別人どころか他の生命体に置き換わったと言っても良いだろう。
達人のベリーズとはまた違った、得体の知れない強さにオダは心から恐怖した。
アヤノが泣き叫びながらオダの顔面をぶん殴ろうとした時点で、死を覚悟する。
「そこまでだ!」
瞬間、ミヤビとクマイチャン、そしてシミハムがアヤノを蹴り飛ばした。
ベリーズ3人からなる蹴りの衝撃には耐えられなかったのか、アヤノは血を吐いて失神してしまう。
九死に一生を得たオダは気が抜けて、しばらく立ち上がれなくなる。
「アヤノ?……いったいこれはどういう……」
オダだけでなく、この場のほぼ全員がアヤノに起きた異変を理解できずにいた。
その疑問にユカニャが答えていく。
「皆さん見ましたか?今のがファクトリーなんですよ。
ファクトリー(工房)はその名の通り、少女の身体を作り変えてしまうのです。」
「作り変える?……アヤノが自分の身体を作り変えたんですか?……」
「アヤノちゃんが?いいえ、アヤノちゃんは普通の女の子。そんな力はありません。」
「え?……」
「皆さん、抹消すべき敵を見誤らないでください。
諸悪の根源はアヤノちゃん達の体内に潜んだ未知の病原菌、"ファクトリー"です。
8人の少女を苦しめる"ばい菌"こそがこの世から消し去るべき対象なんですよ!」
そう言うとユカニャは倒れたアヤノの元に駆け寄った。
そして、涙を流しながらグッタリとしているアヤノを優しく抱きしめる。
「アヤノちゃん、助けられなくてごめんね……絶対に、絶対にファクトリーを滅菌してみせるからね。」
334
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/09/07(火) 02:14:12
アヤノの肉体の変化を目撃し、ユカニャの説明を聞いた一同は唖然としていた。
人体そのものを作り変える病原菌があるだなんて信じられないが、
実際にその目で見たのだから受け止めるしかなかった。
「ベリーズ様とユカニャ様には感謝の言葉も見つかりません。」
8人の少女のうちの1人が前に出て話し始めた。
彼女のコードネームは「ドグラ」。本名をアヤパンと言う。
「この呪われた身体は、意思とは関係なく暴走してしまいます。
なので、私たちに居場所など有るはずもなく、自然と人里離れたところで暮らすようになりました。
そんな私たちを保護してくださったのがベリーズ様なんです。」
ファクトリーを患った8人は引き寄せられるように集まったらしいが、
爆弾を抱えている者同士が上手くいくはずもなく、日に日に疲弊していったという。
ベリーズは彼女らを救うために医学の権威であるユカニャに声をかけたのである。
「残念ながら"ファクトリー"を駆除する方法はまだ見つかっていません。
そこで、何かヒントを得られないかとマーサー王とサユさんをお呼びしたのです。
彼女たちに近い境遇なので、何かお話を聞かせてもらえればと……」
ユカニャが"近い境遇"という言葉を使ったが、番長やKASTらには何の事なのか分からなかった。
「帝国剣士の子はほとんど知ってるんだけど、私サユの中にはもう1人の私(マリコ)がいるの。
いつ暴走するか分からないって意味じゃその子たちと同じ。
まぁ、病気とは違うからあまりお役には立てないかもね〜……」
「私の身体はもう暴走しないから、なおさら参考にならないかもしれないとゆいたい。
だが、当時の余波で超人的なパワーは未だに残っている。
力を制御するコツなら教えられるかもしれないな。」
ここまで聞いて、連合軍は2点を理解した。
1つは「ファクトリーが暴走すると食卓の騎士クラスでないと止められないこと」
もう1つは「ファクトリーはすぐに治るような病気では無いということ」だ。
それを踏まえてユカニャは今一度お願いをする。
「皆さんを騙すような真似をして、本当に申し訳無いと思っています。
でも、暴走した彼女たちを止めるには、各国の戦士がベリーズ様、キュート様のように強くなる以外に道が無いんです!
ファクトリーの特効薬が見つかるまで……どうか彼女たちを抑えてあげてください……」
ベリーズを敵に回すという無茶苦茶なツアーではあったが、一同はその真意をやっと知ることが出来た。
ファクトリーを患う8人の少女たちを放置すれば一般市民にまでも襲い掛かるかもしれない。
それを阻止するために、死ぬ気で強くなる必要があったのだ。
意図をほぼ掴みかけたところで、アンジュ王国の新人番長ムロタンが喋りだした。
「あれ?ベリーズ様やキュート様だけで十分抑えられるんですよね?
なんで私たちまで強くなる必要があるんですか?いや、強くなるのは全然いいんですけど」
ムロタンの発言で周囲は静まり返ってしまった。
特にユカニャは信じられないといった顔をしている。
タケが慌ててムロタンの頭をポカリと殴った。
「バカ!何バカなこと言ってるんだよ!このバカ!」
「ちょ、ちょっとタケさんバカって言い過ぎですよ!だってそうじゃないですか〜!」
「ムロタン……お前、本気で知らないのか?」
「へ?何をですか?」
「……"25歳定年説"をだよ。」
335
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/09/08(水) 02:36:15
この世界では、異常に強い少女の存在が十数年前から確認されてきていた。
見た目は可憐だと言うのに、彼女らは大の大人の何倍も強かった。
厳しい訓練を受ければ受けるだけ肉体は強靭になるし、
実戦での閃きや勘の良さだって通常の兵士とは比べ物にはならない。
まるで挨拶をするかのように簡単に敵を薙ぎ倒すことから、
そのような特別強い少女らのことをハロメン(意:挨拶をする者たち)と呼ぶ者も増えているらしい。
強国は例外なくハロメンを国防の最前線に置いていた。
それがマーサー王国の食卓の騎士(ベリーズ戦士団とキュート戦士団)や、
モーニング帝国の帝国剣士、アンジュ王国の番長、果実の国のKASTなのだ。
しかし全ての少女が必ずハロメンになれるワケではない。
特別な才能を見出された者が、地獄のような鍛錬に耐え抜くことでようやく成れるのである。
近年では才能を持った少女を効率的に集めるために研修生制度を取り入れている国も多いとのことだ。
ハロメンになれれば一生安泰のように思うかもしれないが、彼女らには唯一の弱点があった。
それが"25歳定年説"だ。
まだ正式に確立されたというワケではないのだが、彼女らは25歳前後で力を失う傾向にある。
それより高い年齢でも十分強いケースも存在するため、そのセオリーが絶対とは言えない。
しかし、データが集まれば集まるほど25歳という数字の信憑性がより高くなっていっているのだ。
25歳を超えれば殆どのハロメンは普通の女性になる。
あれだけ鍛えた圧倒的な筋力量も、剣の腕前も、並の女性程度になってしまうのである。
そしてその"25歳定年説"は、化け物のように強いベリーズやキュートにも容赦なく襲い掛かるに違いない。
年齢の高いシミハムやマイミから弱体化していくことが予測される。
あるいは個人差が思わぬ方向に働き、年少のリシャコやマイマイから影響を受けるかもしれない。
どちらにせよ、ベリーズもキュートももう良い大人だ。
近い将来には今ほどの戦闘力を維持することが出来なくなるだろう。
「そっか……じゃあ、ファクトリーを治す薬がいつまでも出来なかったら……」
ムロタンはやっと気づいた。
ベリーズとキュートの強さは永遠ではない。
そして、ファクトリーを患った少女たちは10代半ば。まだまだ若いのだ。
今現在はファクトリーを抑えることが出来たとしても、いつかは逆転する。
帝国剣士、番長、KASTがこのまま強くならなかった場合、
ファクトリーを止める者がこの世に存在しなくなるため、世界が滅ぼされる可能性も考えられる。
「もちろん、そんな事は許されません。
私ユカニャは医師としてあの子たちを治す方法を早急に見つけ出してみせます。
ただ、それが叶わなかった時のためにも若い皆さんには強くなってほしいんです。
ムロタンちゃん、分かりましたか?」
「はい……分かりました……」
336
:
名無し募集中。。。
:2021/09/08(水) 12:25:17
その時点で軽めのファクトリーな気もするが…w
337
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/09/09(木) 03:08:23
ユカニャによる説明がひとしきり終わったところで、各陣営らによる話し合いの場が設けられた。
"ファクトリーを抑えるために強くなる"ということの意味は全員が理解できたのだが、
組織としてどう振る舞うのかを改めて考える必要があると判断したのだ。
「テントの外に出ていますね。私たちがいたら話し合いも、し難いでしょうし……」
コードネーム:ドグラはそう言って、倒れたアヤノを含む少女たちを外に連れて行った。
自分たちを憐れむ目に晒され続けるのが嫌だったという理由もあるが、
それ以前に、自分たちも今後の振る舞いを話さなければならないと考えたのだ。
「さて……みんな、どう思った?」
「どうって?アヤパン」
曖昧過ぎる質問にコードネーム:リュックが返した。
それに対して、コードネーム:マジメが叱るように怒鳴りつける。
「また本名で呼んでる!コードネームで呼び合うって決めたでしょ!」
「はぁ……ぶっちゃけさ、それって意味あるの?」
「えっ」
「私たちのためにシミハム様が名づけてくださったのは有難いけどさ、もう私たちがファクトリーだってバレてんじゃん。
だったらもう本名で呼び合おうよ。今更化け物になったところでもう驚かれないでしょ」
少女たちの中にいるファクトリーは肉体を全て自分のモノにしてやろうと虎視眈々と狙っている。
そんな体内のTEKIを騙すために、本名とは異なるコードネームで呼び合うことで惑わしていたのだ。
ウィルスに意識や感情があるかどうかは定かではないが、
異なる名前を使う肉体は、本来自分が奪うべき肉体ではないと誤認したかのように大人しくなったという。
「化け物になったらみんな困るでしょ!」
「そんな時はさっきのアヤノみたいにぶっ倒せばいいじゃん。てか、今までもそうしてきたし。」
2人がヒートアップしてきたところでコードネーム:ドグラが割って入ってきた。
彼女は少女たちのリーダー格。方向性を示すのも仕事のうちだ。
「私ももうコードネームは使わなくて良いと思う。」
「え!?」「ほら〜」
「勘違いしないで。この身をファクトリーに奪われていいから言ってるんじゃないの。
私はもう、暴走なんてゴメンだからね……
むしろ身体を奪われないよう、気を強く持つために、積極的に本名を使っていこうよ。
タイムリミットが来る前に行けるところまで行ってみよう。
勢い付けた今の僕らならやれるはずさ!」
そういう事なら、と少女たちは頷いた。
直前まで睨みつけていたコードネーム:ロッカーも一転笑顔になる。
「よーし!それじゃあ今から皆でコードネームを捨てようぜ!こういう時は年齢順な!」
拳を前に突き出して宣言するコードネーム:ロッカーに、皆も続いていく。
「俺はもうロッカーじゃない!これからはフジーだ!」
「私はもうドグラじゃない!これからはアヤパンだ!」
「私はもうマジメじゃない!これからはノムだ!」
「わたしはもうクールじゃない!これからはレナコだ!」
「私はもうリュックじゃない!これからはタグだ!」
「私はもうウララじゃない!これからはサクラッコだ!」
「私はもうガールじゃない!これからはレイだ!」
そしてもう1名、倒れていたはずの少女が目を覚まし、拳を天高くあげていった。
「私はもう……タイサじゃない……これからは、アヤノだ!」
338
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/09/09(木) 03:13:16
>>336
「突然発症して桁違いに強くなる」という意味では確かにハロメンもファクトリーと似た症状ですねw
作中で名言することは無さそう(=私が深く考えなさそう)ですが、
暴走という副作用が無いだけで、ハロメンになるのも何らかの影響を受けているのかもしれません。
339
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/09/10(金) 03:25:01
それから小一時間がたった頃、
話し合いが終わった戦士たちはそれぞれの国に帰る準備を始めていた。
この場にいる者たちの方針はおおむね固まったのだが、
国としてどう動くかは、やはり国内で議論せねばならないということだろう。
特にアンジュ王国に関してはアヤチョ王もマロも国に残っているので、番長だけでは決められなかった。
「ねぇ、アヤノ」
「オダ!」
オダ・プロジドリが話しかけてきたのでアヤノは緊張してしまった。
一歩間違えばオダを殺すところだったので、どう話せばよいのか分からなくなる。
「あの……オダ、さっきはごめん……」
「いいのよ、私から志願したことだし。それに……」
「それに?」
「アヤノの今を知ることが出来たのが嬉しい。ううん、アヤノだけじゃない。タグも。レナコも。」
「オダ……」
「モーニング帝国としての結論はまだ出てないけど、少なくとも王と帝国剣士はファクトリーのみんなを護るつもりだよ。
いや、ファクトリーじゃないか、ファクトリーを患ったみんな……うーん、ちょっと言いにくいわね。」
「拳士。」
「えっ?」
「私たちのことは拳士(こぶし)って呼んで!これもベリーズ様につけてもらったの!」
「うん。分かった!拳士のみんなを護れるように、働きかけてみるからね!」
「ありがとう!」
その光景を少し離れたところで、アヤパンとレイが見ていた。
いつもと違って無邪気にはしゃぐアヤノを見て、なんだか新鮮な気持ちになってくる。
「ふふ、アヤノもあんな風に笑う時があるんですね。」
「そうね……私たちには生意気な態度ばかりなのに。」
「いつか私たちの中のファクトリーを消すことが出来たら、みんなで笑い合えるのかな……」
「レイちゃん。」
「ん?」
「さっきは流されちゃったけどさ、レイちゃんはどう思った?」
「どう……って?」
「ユカニャ様のお話を聞いたでしょ?本当にファクトリーの治療を出来ると思う?」
「えっ……どういうことですか?……」
「ユカニャ様ほどの権威が四苦八苦しても未だに方法が見つからないんだよ。治療法なんてはなから存在しないんじゃないかな。」
「は!?」
340
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/09/10(金) 03:26:46
希望に満ち溢れた展開だというのに、突き落とすようなことを言うアヤパンの真意がレイには掴めなかった。
「いや、正確には1つだけ治療法が存在するか。ユカニャ様もベリーズ様も優しいから、あの方々の口からは絶対に出ないと思うけどね。」
「え?え?……それはいったい?……」
「死ぬことだよ。」
「!?」
「私たち拳士(こぶし)が死んだら、肉体も朽ち果てる。そうすればファクトリーは肉体を奪えない。
暴走して罪の無い人たちに迷惑をかけるくらいなら、拳士みんなで、ね。」
レイは混乱しきってしまう。頭がクラクラするし、大汗だって流れてくる。
付き合いが長いため、目の前のアヤパンが冗談ではなく本気で言っていることが理解できる。それだけに辛いのだ。
「アヤパン!あなただって希望を抱いているはずです!その証拠にまだ死のうとしてないじゃないですか!!
それは、治療法の可能性を信じているからでしょ?……」
「ううん、違うよ。私はまだ生きなきゃならないんだ。」
「生きなきゃ?……」
「ねぇレイちゃん。私たちが元々いたナイスガールは今どうなっていると思う?」
「どうって……アヤパンと私の2人が突然失踪したから、困っているんでじゃないですか?」
「違うよ。2人じゃなく、3人なんだよ。」
「!?」
「風のうわさで聞いたけど、ナイスガールの組織は3人の失踪者を出して壊滅寸前なんだってさ。」
「壊滅!?そんなはずがありません!強くて、頼もしい、彼女がいれば構成員が多少抜けたところで……あっ!……」
「もう1人の失踪者の正体に気づいたようだね。じゃあどうして突然いなくなったと思う?
これはもう勘なんだけど、理由は私たちと同じなんじゃないかな……」
「そんな……そんなことが……」
「だから、まだ生きなきゃならないの。全部解決するまでは、ね。」
341
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/09/11(土) 03:47:08
2,3日が経ち、王や戦士、医師たちが帰国した中で、
ベリーズとキュートの面々だけが武道館に残っていた。
戦闘の影響で崩壊しかけた武道館の壁を撫でながら、チナミが話す。
「それにしても派手にやったもんだねぇ……修繕チームを手配しないとなぁ……
ねぇ団長、若い子たちの破壊活動を上手いこと止められなかったの?」
シミハムはブンブンと首を横に振った。
あの時は必死だったので、武道館を護る余裕はまるで無かったのだ。
それはベリーズもキュートもよく分かっている。
まだ発展上ではあるが、帝国剣士も番長もKASTもベリーズを苦しめるほど成長したのは明確だ。
そんな中、マイミが元気なく肩を落としていた。
「彼女たちが強くなったのは喜ばしいし、ファクトリーの事情もよく分かったのだが、
やっぱり……私に内緒だったのは寂しかったな……」
あまりにも落ち込みすぎたため、普段は暴風雨のようなオーラが梅雨時のようにジメジメしている。
ナカサキ、アイリ、オカール、マイマイが「またか……」と言った表情をしていることから、
ここ数日はこの調子だと言うのが伺える。
「おいおい団長。隠し事が苦手なことは自分でも分かってるんだろ?」
「いやオカール、私は演技は得意な方だと思ってるんだが……」
「見世物の演技とは違うっての。アンタは嘘ついたままベリーズと本気で殴り合えたか?」
「それは……」
怒りの込められた握り拳は出せなかったかもしれない、とマイミは感じた。
感情に左右される自分を恥じてまた落ち込みそうになったが、
そんなマイミとの直接勝負を経験したチナミがそうはさせなかった。
「私さ、マイミと本気でやれて嬉しかったんだよ。」
「チナミ……!」
「私だけじゃない、ベリーズもキュートも、久々に真剣勝負が出来て嬉しかったはずだよ!そうだよね?」
チナミの問いかけに全員が頷いた。
食卓の騎士はあまりにも強くなりすぎたために、満足に戦える相手がいなくなって久しかった。
訓練では味わうことのできない実戦での殴り合いが楽しくないと言えば嘘になる。
これまで静かにしていたリシャコも割って入ってきた。
「キュートとやり合えるの結構楽しみにしてたし、実際楽しかったよ。ただ……」
「ただ?」
「若い子と戦うのも、思ってたよりは楽しめた、かな。」
正直言って、ここにいる大半が若手の成長については半信半疑だった。
ベリーズとキュートでバチバチやり合って、それで終いになる可能性も十分あり得ると踏んでいた。
だが、結果は大きく違ったのだ。
最後まで死ぬ気で、殺す気で斬り合った結果、満足できる程に連合軍は強くなったのである。
楽しそうに話すみんなを見て目の輝きを取り戻しマイミに対し、モモコがデコピンをコツンと当てる。
「ぶっちゃけるとね、若手がもっともっと強くなる仕掛けを考えているワケよ。
もちろん、私やシミハム、マイミが定年になる前に……ね。
あの子たちと1対1で戦える日を思うと、ワクワクしてこない?」
「そんな未来が待っているのか……なるほど、ならばもう落ち込んでなんかいられないな!」
食卓の騎士が未来に希望を見出したところで、この物語は完結する。
そして、新たな物語が始まる。
第二部:berryz-side 完
342
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/09/11(土) 03:48:57
かな〜〜〜〜〜〜り長くなりましたが、やっと第二部終了です。
しばらくはOMAKE更新を続けて、準備が出来たら第三部をはじめますね。
343
:
名無し募集中。。。
:2021/09/11(土) 15:37:47
乙です
長かったね…
344
:
名無し募集中。。。
:2021/09/12(日) 10:18:38
お疲れ様でした!
OMAKE更新も三部も楽しみにしてます
345
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/09/13(月) 01:45:51
キャラ名+武器名+必殺技の元ネタを書いていきます。
第一部で出したものも再掲しますね。第二部初登場のものには★印をつけます。
まずはモーニングから
346
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/09/13(月) 01:48:11
■モーニング帝国剣士
フク・アパトゥーマ :団地妻
装飾剣「サイリウム」 :そのままサイリウム
装飾剣「キングブレード」 :複数色切り替え可能なサイリウム+王の剣
必殺技「Killer N」 :( ̄ー+ ̄*)キラーン
エリポン・ノーリーダー :空気読めない+リーダーではない+仮面ノリダー
打刀「一瞬」 :前作のガキの武器から。新垣里沙の写真集のタイトル
★必殺技「遅々不意不意(ちちぷいぷい)」:ちちんぷいぷい魔法にかーかれ
サヤシ・カレサス :植物を枯れさす
居合刀「赤鯉」 :広島カープのイメージ
★必殺技「斬り注意」:舞台トライアングルのキリ中尉
カノン・トイ・レマーネ :トイレのモノマネ
出刃包丁「血抜」 :食事のイメージ
★必殺技「泡沫」:泡沫サタデーナイト!
ハルナン・シスター・ドラムホールド :いもうと+太鼓持ちアイドル
フランベルジュ「ウェーブヘアー」 :ファッションのイメージ
★必殺技「いやせません」:ヤンタンのコーナー「いやせません」
アユミン・トルベント・トランワライ :れいなの好きな弁当を先にとったエピソード+すべりキャラ
大太刀「振分髪政宗」 :伊達政宗の愛刀+振分親方
★必殺技「キャンディ・クラッシュ」:石田がよく遊んだアプリ「キャンディークラッシュ」
マーチャン・エコーチーム :ヤッホータイ
木刀「カツオブシ」 :前作のレイニャの武器から。れいなの猫イメージ
★必殺技「蹂躙(じゅうりん)」:宮本佳林とのユニット「ジュリン」
ハル・チェ・ドゥー :ハルーチェ+どぅー
竹刀「タケゴロシ」 :タケちゃんとの因縁(やっちまったな等)
必殺技「再殺歌劇」 :ステーシーズ 少女再殺歌劇
★必殺技「再殺歌劇"派生・純潔歌劇"」:LILIUM-リリウム 少女純潔歌劇-
オダ・プロジドリ :自撮りのプロ
ブロードソード「レフ」 :レフ板
★必殺技「さくらのしらべ」:歌中心のファンクラブイベント「さくらのしらべ」
ハーチン・キャストマスター :素人時代にツイキャスのキャス主
スケート靴「アクセル」 :トリプルアクセル
必殺技なし
ノナカ・チェルシー・マキコマレル :チェル+巻き込まれる
忍刀「勝抜(かちぬき/かつぬき)」 :好物のカツ丼を我慢
必殺技なし
マリア・ハムス・アルトイネ :ハー娘。+明日も嬉しいこと&楽しいこと、いっぱいあるといいね
投げナイフ「有」 :元日ハム投手のダルビッシュ有
両手剣「翔」 :日ハム打者の中田翔。有と翔でユウショウ=優勝
必殺技なし
アカネチン・クールトーン :クルトンが好き
印刀「若木」 :あかねちんがブログに載せた習字
必殺技なし
347
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/09/14(火) 02:57:24
■アンジュ王国の番長
アヤチョ・スティーヌ・シューティンカラー:捨て犬+シューティングスター+唐揚げを投げたエピソード
七支刀「神の宿る剣」:博物館に飾ってそうな武器
必殺技「聖戦歌劇」:我らジャンヌ 少女聖戦歌劇
マロ・テスク:そのままマロテスク
小型銃「ベビーカノン」:前作のカノンの武器から。
必殺技「爆弾ツブログ」:前作のカノンの必殺技から。いちごのツブログ。
カナナン・サイタチープ:埼玉は安いイメージと発言したエピソード
ソロバン「ゴダン」:中西香菜がそろばん5段
必殺技なし
タケ・ガキダナー:親戚マイミのキャラ名+子供っぽい
鉄球「ブイナイン」:巨人が黄金時代にV9達成
★必殺技「バリバリ」:バリバリ財布
リナプー・コワオールド:ブログで昭和時代の人の名前に「子」が多いと発言
愛犬「ププ」:勝田里奈の愛犬
愛犬「クラン」:勝田里奈の愛犬
★必殺技「Back Warner(後ろの警告者)」:ばくわら
メイ・オールウェイズ・コーダー:スマイレージはいつもこうだ
ガラスの仮面「キタジマヤヤ」:ガラスの仮面に登場する北島マヤ+しゅごキャラミュージカルで芽実が演じた結木やや
★必殺技「1人ミュージカル」:田村が楽屋で1人ミュージカルをやったエピソード
★ムロタン・クロコ・コロコ:ワニ(→クロコダイル)好き+むろたんコロコロ
★透明盾「クリアファイル」:パントマイム+公式グッズのイメージ
必殺技なし
★マホ・タタン:
★スナイパーライフル「天体望遠鏡」:家に天体望遠鏡があるエピソード
★必殺技「eye-2(アイツ)」:相川がよく描くイラストのあいつ
★リカコ・シッツレイ:初写真集のインタビューで先輩に「お先に失礼します」と発言
★固形石鹸「ダイスキダー」:ブログで固形石鹸を大好きだーと書いたエピソード
必殺技なし
あ!カナナンの必殺技出してない!
第三部に出します……
348
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/09/14(火) 03:01:34
書き漏れがありました。
★マホ・タタン:ハロコンでひな壇のみんなが立っているのに一人だけ立たなかったエピソード
349
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/09/15(水) 01:30:57
■果実の国のK(Y)AST
ユカニャ・アザート・コマテンテ:あざとい+困り顔+石川県の方言「〜てんて」
武器未登場
必殺技なし
トモ・フェアリークォーツ:フェアリーズのファン+ローズクォーツ
ボウ「デコピン」:佳林にデコピンをよくする
★必殺技「noonと運(ぬんとうん)」:金澤の飼い猫ぬんとぅん
サユキ・サルベ:さるべぇ
ヌンチャク「シュガースポット」:バナナの甘い箇所
★必殺技「トリプレット」:岡井・工藤・高木の所属するSATOYAMAユニット
カリン・ダンソラブ・シャーミン:男装好き+wonderful worldの時の髪型が社民党党首っぽい
★釵「美顔針」:美容のため顔に針を刺したエピソード
★必殺技「早送りスタート」:ヘアアレンジ動画で自ら早送りスタートと宣言。
アーリー・ザマシラン:ハーモニーホール座間での公演に遅刻
トンファー「トジファー」:植村の育ててたトマトの名前
★必殺技「Full Squeeze!」:Juice=Juiceのライブタイトル
■カントリーガールズ
★リサ・ロードリソース:SATOYAMAイベで道資源を道重と聞き間違える
★両生類「カエルまんじゅう」:山木がお土産に買ってきたカエルまんじゅう
必殺技なし
★マナカ・ビッグハッピー:大福
★鳥類「PEACEFUL」:稲場が過去に所属していたアイドルユニット「PEACEFUL」
必殺技なし
★チサキ・ココロコ・レッドミミー:
★魚類「※名称未定」:
必殺技なし
★マイ・セロリサラサ・オゼキング:セロリが嫌い+シチューさらさらだね+ひなフェスのソロ名オゼキング
★哺乳類「マイ」:自分自身+本名の舞
必殺技なし
チサキの武器の名前つけてないですね!
こちらも第三部に持ち越しです……
350
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/09/16(木) 03:24:29
■食卓の騎士
シミハム
武器は三節棍
オーラ「無」:他のメンバーの個性が強すぎて相対的に影が薄いイメージ
必殺技「きよみず」:名前の清水を訓読み
必殺技「きよみず"派生・鶴の構え"」:よろセン!で清水が見せた焼肉のテクニック
モモコ
武器は暗器
オーラ「冷気」:血の通ってないアイドルサイボーグのイメージ
必殺技「ツグナガ拳法」:ツグナガ憲法
必殺技「ツグナガ拳法"派生・謝の構え"」:許してにゃん
必殺技「ツグナガ拳法"派生・貫の構え"」:ピンキードリル
必殺技「ツグナガ拳法"派生・閃の構え"」:こゆビーム
チナミ
武器は小型大砲と諸々の発明品
オーラ「太陽」:明るいキャラのイメージ+日焼け
必殺技「大爆発(オードン)」:おうどんをおーどんと言ってしまう。
必殺技「大爆発(オードン)"派生・ピストンベリーズ"」:イナズマイレブンに登場するBerryz工房とT-Pistonzをモデルにしたチーム
必殺技「大爆発(オードン)"派生・metamorphose"」:徳永の写真集
必殺技「大爆発(オードン)"派生・戦国自衛隊"」:劇団ゲキハロの舞台
必殺技「大爆発(オードン)"派生・Bomb Bomb Jump"」:Berryz工房の楽曲
ミヤビ
武器は脇差と仕込み刀
オーラ「斬撃」:尖った顎のイメージ+普段は見られない裏側を見せるGreen Room
必殺技「猟奇的殺人鋸」:キラーそー
必殺技「猟奇的殺人鋸"派生・愕運(がくうん)"」:アロハロで値下げ交渉時に夏焼が「マネー がく〜ん」と発言
必殺技「猟奇的殺人鋸"派生・美異夢(びいむ)"」:みやビーム
必殺技「猟奇的殺人鋸"派生・堕祖(だそ)"」:夏焼が描いた謎の4コマ漫画の擬音「だそ」
必殺技「猟奇的殺人鋸"派生・二並(にへい)"」:PINK CRES.の二瓶有加
必殺技「猟奇的殺人鋸"派生・光(ひかる)"」:PINK CRES.の小林ひかる
クマイチャン
武器は長刀
オーラ「重力」:高い所から下へと押さえつけるイメージ
必殺技「ロングライトニングポール」:電柱
必殺技「ロングライトニングポール"派生・シューティングスター"」:流星ボーイ
必殺技「ロングライトニングポール"派生・枝(ブランチ)"」:王様のブランチ
リシャコ
武器は三叉槍
オーラ「海」:前作の敵を溺れさせる特技から発想+レディマーメイド
必殺技「暴暴暴暴暴(あばばばば)」:菅谷が動揺した時の表現
必殺技「暴暴暴暴暴(あばばばば)"派生・イブ"」:極上!!めちゃモテ委員長の登場人物の衣舞様+マイマイのアダムと対比
マイミ
武器はナックルダスター
オーラ「嵐」:雨女のイメージ
必殺技「ビューティフルダンス」:舞美を英語に直訳
必殺技「ビューティフルダンス"派生・夢幻クライマックス"」:℃-uteの楽曲
ナカサキ
武器は曲刀
オーラ「怪獣」:ブースカ
必殺技「確変」:当時、中島が急に可愛くなったことを確変と表現
必殺技「確変"派生・海岸清掃"」:ユニットの海岸清掃男子
必殺技「確変"派生・ガーディアン"」:ユニットのガーディアンズ4
必殺技「確変"派生・JUMP"」:℃-uteの楽曲のJUMP
必殺技「確変"派生・Steady go!"」:℃-uteの楽曲のいざ、進め! Steady go!
必殺技「確変"派生・秩父鉄道"」:秩父観光農業Oh!園アンバサダー
必殺技「確変"派生・The Power"」:℃-uteの楽曲のThe Power
アイリ
武器は棍棒
オーラ「雷」:前作の敵を痺れさせる特技から発想+亨(とおる)と雷の神トールが似てる
必殺技「トゥー・カップ・ベクトル」:通学ベクトル+ゴルフのイメージ
必殺技「トゥー・カップ・ベクトル"派生・エース"」:℃-uteのエース+ホールインワンの別名エース
オカール
武器はジャマダハル
オーラ「獣」:犬を飼っている+本人も犬っぽい+全方位にかみつくイメージ
必殺技「リップスティック」:岡井家で飼っている犬の名前
必殺技「リップスティック"派生・パイン"」:岡井家で飼っている犬の名前
必殺技「リップスティック"派生・ぱんつ"」:岡井家で飼っている犬の名前
必殺技「リップスティック"派生・ぶら"」:岡井家で飼っている犬の名前
マイマイ
武器は斧
オーラ「巨大な目」:サングラスのイメージ
必殺技「DEATH刻印」:ディスコクイーン
必殺技「DEATH刻印"派生・JAUP"」:JUMPをJAUPと書き間違える。
必殺技「DEATH刻印"派生・アダム"」:アダムとイブのジレンマ+リシャコのイブと対比
351
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/09/17(金) 01:23:52
■拳士
※本名は第三部で出します。ここではコードネームの由来のみ。
ロッカー(フジー):ジップロッカー
ドグラ(アヤパン):ドグラ・マグラを読破
マジメ(ノム):さわやか五郎によく「真面目か」と突っ込まれる
クール(レナコ):クールビューティーを目指している
タイサ(アヤノ):はまちゃん大佐
リュック(タグ):ハロステ四字熟語講座に大きいリュックを背負って登場
ウララ(サクラッコ):舞台サバイバーの役名ウララ+ブログの裏ウララの楽屋裏情報
ガール(レイ):おはガール
他にもマーサー王、サユ、レイニャ、オカマリ、ウオズミ、マリン、キッカ等も登場しましたが、
フルネームは出ていないので説明を割愛します。
352
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/09/18(土) 22:27:31
恒例(?)の撃破数ランキングを書きます。
武道館での戦いに絞りますね。
トドメをさしたら1勝です。引き分けは両者1勝扱いです。
展開の都合上、ベリーズがかなり多くなってますね。
シミハム 8勝(ナカサキ、ハルナン、アユミン、ノナカ、リカコ、トモ、サユキ、カリン)
モモコ 5勝(アイリ、エリポン、カノン、マーチャン、アーリー)
クマイチャン 5勝(カナナン、リナプー、メイ、ムロタン、マホ)
ミヤビ 3勝(オカール、ハル、オダ)
リシャコ 2勝(マイマイ、サヤシ)
タケ 2勝(シミハム、クマイチャン)
チナミ 1勝(マイミ)
マイミ 1勝(チナミ)
マイマイ 1勝(リシャコ)
ハルナン 1勝(モモコ)
ハーチン 1勝(チサキ)
ノナカ 1勝(リサ)
マリア 1勝(マイ)
アカネチン 1勝(マナカ)
トモ 1勝(ミヤビ)
マナカ 1勝(アカネチン)
チサキ 1勝(ハーチン)
その他0勝
ナカサキ、アイリ、オカール、エリポン、サヤシ、カノン、アユミン、マーチャン、ハル、オダ
カナナン、リナプー、メイ、ムロタン、マホ、リカコ、サユキ、カリン、アーリー、リサ、マイ
353
:
名無し募集中。。。
:2021/09/21(火) 22:50:57
>>334
25歳永遠説はどうなるんだろ?
354
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/09/27(月) 03:21:24
25歳永遠説、そのワードは第三部に登場するかもしれませんね。
その第三部ですが、10/2(土)に新しいスレを立てて開始しようと思います。
9/27(月)〜10/1(金)の5日間はOMAKE更新をここで書きますね。
355
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/09/27(月) 03:22:06
OMAKE更新「ファーストリング -ノムの場合-」
ノムは数年前からマーサー王国の研修生として日々訓練に励んでいた。
あまり好戦的な性格では無いのでボーッとしていたり、得意な料理を仲間に振る舞ったりする時間の方が多かったが、
いつかベリーズやキュートのようになれたら良いな、と漠然と感じていたのだ。
しかし、いくら剣を振り続けても一向に強くなる気がしない。
そこでノムは、仲の良かった同期と2人で道場に通うことにした。
筋骨隆々な格闘家に揉まれることで肉体的にも精神的にも強化しようと考えたのである。
「ねぇノム、本当にこの道場に入るの?……」
「うん!ここで変わらないと、私たち一生弱いままだよ!」
その道場での訓練は非常に厳しかった。
体重の軽いノムは格闘家の蹴りを受けて簡単に吹っ飛んでしまい、
あまりに怖くて初日に泣いてしまった。
それでも同期と協力することで、苦しい日々をなんとか乗り越えることが出来ていた。
1日の終わりにノムが包丁を握り、同期と同じ釜の飯を食べれば、どんな疲れも全て吹っ飛んだのだ。
「ノムのご飯、本当に美味しいよね〜」
「ありがとう!明日も腕によりをかけるね!」
だが、そんなノムの身体に異変が起こった。
いつものように夕ご飯を作ろうとしたその時、手で握った包丁が腐るようにボロボロと崩れていったのだ。
おかしな点はそれだけじゃない。
いつもは温厚なノムの闘争心が尋常じゃない程に膨れあがり、誰でも良いから血祭りにしてやりたいと思うようになったのである。
(え!?どういうこと!?……このままだと、私、殺しちゃう……!」
誰よりも信頼する同期をその手にかけることだけは、なんとしても避けたかった。
だからノムは傷つけてしまう前に逃げるように遠くへと出ていったのだ。
護身用の剣を持っていこうとするが、その剣も握った瞬間に朽ち果ててしまう。
何もかもワケが分からず、大粒の涙を流しながら、ノムは走り続けていった。
356
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/09/28(火) 01:57:47
OMAKE更新「ファーストリング -フジーの場合-」
フジーは元々はアンジュ王国の出身だった。
番長になろうとオーディションを受けたものの、
カナナン、タケ、リナプー、メイには適わず、断念した過去があった。
「良い線行ってたと思うんだけどなー……
しょうがない、心機一転、マーサー王国に引っ越すか!」
フジーはすぐに切り替えて、マーサー王国の研修生に転籍することにした。
数ある国の中でこの国を選んだ理由、それは憧れの人がいたからに他ならなかった。
キュート戦士団の団長マイミは強いだけでなく非常に美しい。フジーのようなファンがかなり多かったという。
「あぁ、お近づきになりたい……」
好いてはいるが話しかける勇気は無かったので、
マイミの使用済みの弁当の容器をジップロックに入れて持ち帰ったりする等の行為を繰り返したところ、
正体不明の危険人物がいると認識されてしまったらしい。
それほどにマイミに憧れているフジーは、戦闘スタイルをも真似しようと務めていた。
お揃いのナックルダスターを両手にハメて、パンチ主体の格闘術を修得しようと躍起になったのだ。
数日が経ち、スタイルがある程度サマになったところでアンジュ王国の番長が活躍するニュースを知ることになる。
悔しい思いも無くはなかったが、不思議と嫉妬はしなかった。
むしろ同期になるかもしれなかった番長たちを超えたいと、奮起するようになったのである。
「いつか番長よりも強くなって!そして、マイミ様に認められるようになるんだ!」
だが、その闘争心がアダになった。
隙を見せた身体に菌が入り込み、殺意を無尽蔵に膨らませていったのである。
「な……なんだ?……この変な感じは……!?」
装着していたナックルダスターが一瞬にして粉々に砕け散った。
どうやらフジーの中に入り込んだTEKIは、あらゆる武具を嫌うらしい。
正々堂々、"拳"で戦うことしか良しとしない。
この瞬間、マイミと同じ武器で戦うというフジーの夢は叶わぬものとなったのだ。
「うわああああああああああああああ!!」
情緒不安定となり、憧れの人さえも殴り飛ばしかねない状態になったフジーは、もうここにはいられなかった。
足が千切れんばかりの勢いで城から走り去っていく。
357
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/09/29(水) 02:41:13
OMAKE更新「ファーストリング -アヤパンとレイの場合-」
ロビンという名の戦士は、過去にナイスガールという組織を作りあげていた。
その組織は強力な兵士の育成を目的としており、
各国の研修生とは異なる"トレイニー"という制度で将来有望な少女たちを鍛えていたという。
中でも優秀な成績を収めていた者が合計3名おり、そのうちの2名がアヤパンとレイだった。
マーサー王国出身のアヤパンともう1人が早々にナイスガールに加入していたのに対して、
果実の国出身のレイは少し年が離れていたため、戦士を目指して門戸を叩いた時期もやや遅かった。
だが、3人で切磋琢磨していった結果、最終的には肩を並べるようになったのだ。
「レイちゃん強くなったね〜来年には追い抜かれちゃいそう。」
「ア、アヤパン!そんなことはないですよ……2人はいつまでも私の目標なんですから。」
「ふふっ、アヤパンだけレイちゃんに抜かされる図を想像したら笑えてきちゃった。」
「ちょっと!」
3人は来る日も来る日も訓練に明け暮れていた。
当のロビンは全く気にしていなかったようだが、
過去に憧れの恩人ロビンを傷つけた食卓の騎士や帝国剣士より強くなりたいと本気で思っていたのだ。
そして、ある日、
突然正気を失ったアヤパンとレイは殺し合うように殴り合っていた。
もちろん本人たちの意思では無い。ファクトリーに感染することで身体をまるごと奪われたのだ。
(やめて!私はレイちゃんを殺したくない!)
(こんな形でアヤパンに勝ちたくない!)
必死の思いで己を取り戻したアヤパンとレイだったが、
このままナイスガールに残り続ければ、やがて他のみんなを殺めてしまうと気づくのに時間はかからなかった。
ノムやフジーと同じように、いつまでもいたかった場所を捨てて旅立つことを決めたのだ。
「ねぇ、レイちゃん、その足につけているのは何?……」
レイの足首には囚人がつけるような鉄球が鎖で結びつけられている。
これは"足枷"。己の動きを制限するためのものだ。
「私……アヤパンとはちゃんとした形で戦いたいんです……
化け物に身体を奪われた時にアヤパンを殺してしまわないように、枷を掛けました……」
「そっか……レイちゃんがそうしたいなら、すれば良いよ。」
358
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/09/30(木) 02:14:30
OMAKE更新「ファーストリング -レナコとアヤノとタグの場合-」
数年前の合同演習プログラムでは、オダ、レナコ、アヤノ、タグの4人はチームを組んで参加していた。
ド新人で組んだチームであることを考えればなかなか善戦した方だったが、
フク、タケ、カリンを有するチームや、
ハル、リナプー、サユキの属するチームには流石に歯が立たなかった。
プログラムの結果は「惨敗」ではあったが、彼女たちは諦めずに前を向いていた。
「みんな聞いて」
「オダ?」
「私、もっと強くなってモーニング帝国剣士になってみせる。」
フク・アパトゥーマもまだ未加入の時代。
プラチナ剣士が現役のタイミングで「帝国剣士になる」と言い張るなんて無謀に聞こえるかもしれないが、
レナコも、アヤノも、タグも、オダならやれると信じている。
「モーニング帝国生まれのオダが帝国剣士なら、マーサー王国の私たち3人は食卓の騎士様に加入しないとね!」
「えっ!?アヤノ、ほんきでいってるの?」
「ベリーズ様やキュート様の凄さはアヤノが一番分かってるんでしょ。そんなこと言って大丈夫なの?」
「レナコもタグもうるさい!なるったらなるの!!」
1人と3人に別れてからも、彼女たちは文通でのやり取りを続けていた。
どんな経験を積み、どれだけ憧れの存在に近づいたのかを伝え合ったのだ。
だが、レナコ、アヤノ、タグからの手紙がある日を境にパタリと止まることになる。
例によってファクトリーに感染し、食卓の騎士のような戦士になる夢を果たせなくなったのである。
剣をも握れなくなった3人は、己の肉体をコントロールしきれず不本意にも殴り合っていた。
このまま死に向かっていくことだけは避けたいと考えたアヤノが、正気が少しでも残っているうちに提案をする。
「食卓の騎士様にお願いしようよ!」
「「!?」」
「モモコ様たちなら、私たちを救ってくれるはずだから!」
ファクトリーによって造り変えられて強靭になった自分たちの肉体は、場合によっては憧れの存在をも殺めてしまうかもしれない。
それでもアヤノは信じていた。
ベリーズも、キュートも、戦士として不完全な自分たちには絶対に負けないことを。
359
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/10/01(金) 02:58:12
OMAKE更新「ファーストリング -サクラッコの場合-」
これまでの皆は闘争心を見せつけたタイミングでファクトリーに感染したのに対して、
サクラッコは兵士でもなんでも無い町娘であるのにも係わらず、患うこととなった。
ファクトリーは闘志を燃やす戦士を宿主にしがちではあるが、
恵まれた肉体を奪えるのであれば何でも良いのかもしれない。
「ううっ……もう許して……」
サクラッコのハートは弱り切っていた。
正体不明のTEKIに蝕まれて今にも息絶えそうになっている。
ギブギブギブ
アップアップです。
良い子にするからもう許して
心を滅多切ってくる
見えないでっかい敵 敵
「こんな思いをしている人が、私以外にもいるっていうの?……」
ファクトリーの感染者は、自分と同じ症状の者が近くにいることを感じ取れていた。
この不思議な感覚に頼ることで後の拳士(こぶし)達は引き寄せられたのだ。
サクラッコが最初に出会ったのは、毎夜のように泣き続けて目を赤く腫らしたノムだった。
お互いにファクトリーに肉体を奪われかけて、たいへん危険な状態ではあったが、
見るからに辛そうな見た目をしているノムを見て、サクラッコは放っておけなかった。
力強くハグをして、安心感を与えていく。
「!?」
「私も、君と一緒だよ。1人なんかじゃない。」
「うっ、うっ、私っ、おかしくなって、料理したいのに包丁も握れなくなっちゃって」
「うん。分かるよ。分かる。見つけていこうよ。包丁を使わなくても料理をする方法を。」
互いに分かち合うことでサクラッコとノムは共に行動するようになった。
そしてフジー、アヤパン、レイ、レナコ、アヤノ、タグとも出会い、
人里離れたところで8人での共同生活を始めたのだ。
はじめのうちは同じ境遇の仲間なので上手く助け合うことが出来たのだが、
ファクトリーによる暴走の頻度が増えることで疲弊し、肉体的にも精神的にも限界が近くなっていた。
ギブギブギブ
おっつかっつな
みんなで仲良く襲われてる。
命を食いつぶしてくる
誰でも良いから助けてよ
8人全員が同時に暴走するという最悪な日。
丁度その日にベリーズ戦士団のシミハム、モモコ、ミヤビの3人が訪れた。
アヤノが根気強く送り続けた手紙を読み、異変に気づいて駆けつけてきたのである。
そして、ベリーズに出会うことで彼女ら8人の運命は大きく変わることになる。
終わり
360
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/10/01(金) 03:09:25
OMAKE更新はこれで終了です。
そして、明日は新スレを立てて第三部を開始しますね。
しばらく放置していた過去ログ置き場も更新しました。
https://masastory.web.fc2.com/
第二部は全てまとめています。(簡単な誤字訂正済み)
サブタイトルもちょっとしたこだわりで変えました。
改めて第二部を全話読み直したので
個人的に書いてて好きだった話をピックアップしますね。
1位:タケ&メイ vs ムロタン&マホ
(「02:乙女の逆襲」に収録)
→騙し合いの真剣バトルを書けたんじゃないかと思ってます。
2位:ハーチン vs チサキ
(「12:レディマーメイド」に収録)
→やる気無さげな二人が後半に死ぬ気でやり合うシーンが好きです。
3位:トモ vs タイサ(アヤノ)
(「05:ラーメン大好き」に収録)
→ラーメン二郎バトル。超ノリノリで書いてました。
361
:
名無し募集中。。。
:2021/10/01(金) 08:27:14
まとめ乙です
362
:
◆V9ncA8v9YI
:2021/10/02(土) 02:01:39
新スレは夕方ごろになりそうです
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