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復刻版・もぎたて桃子のキャンパスライフ

2021:2015/08/26(水) 15:06:35
ベッドの上に座って、その子(桃子似)と向き合った。
「それじゃセンパイ…、脱ぎなよ…」
乾いた声でその子(桃子似)が言った。

「脱ぐけど…、もぉ(仮名)は…、電気消さなくても大丈夫なのか?」
「た、たぶん、もう見慣れてきたから大丈夫…、だと思う」
五クりと唾を飲み込みながら、その子(桃子似)が言った。

「それじゃ…、脱ぐぞ」
ジーンズを脱ぎ、パンツを脱ぐと…、
我ながら恥ずかしいくらいビンビンにそそり立った一物が露になった。
『さっき道重さん(仮名)に寸止めされたからかな?』と、オレは思った。

「うわぁ…、うわぁ…」
真っ赤な顔をしながら、その子(桃子似)がため息をついたので、
「どうする? やっぱり電気消すか?」とオレが聞くと、
「いや…、大丈夫…。頑張ってみる…」と、その子(桃子似)が気丈に答えた。

2031:2015/08/26(水) 15:09:27

「それじゃ…」と言いながら、その子(桃子似)がスカートの中に手をやって、
自分のストッキングを脱ごうとしたので、
「いや! それは脱がないで!」と、オレは慌てて制した。

「えっ…!? 脱がないでって…、ストッキング履いたままで…、するってこと?」
「そうだよ」
「えーっ! そんなの汚いじゃん…。ストッキングって汚れてるよ。
それにちょっと…、蒸れてるし…」
そういいながら、その子(桃子似)はますます顔を赤くした。

『桃子(仮名)の蒸れ蒸れストッキング…』
そう考えただけで、オレの一物はピクンと反応した。
それを見て、「うわっ! ピクピク動いてる…!」と、
その子(桃子似)は上気した顔で叫んだ。

「いいから頼む! そのままで頼む!」
オレが重ねて懇願すると、
「センパイって…、変態…?」と、その子(桃子似)が呆れ顔で言った。

204名無し募集中。。。:2015/08/26(水) 15:09:52
きてたーーーー
高まってきた

2051:2015/08/26(水) 15:14:23

「それじゃ…、いくよ…」
そういいながら、白いストッキングに包まれたその子(桃子似)の二つの足が、
オレの一物の方にゆっくりと伸びてきた。

ざらっとしたストッキングの感触が、オレの先端に触れた瞬間、
オレは「ひいっ!」と、情けない声を上げてしまった。

「何それー(笑)? そんなに感じるの?」
呆れたように、その子(桃子似)が聞いてきた。

「いいから、続けて!」
オレが頼むと、その子(桃子似)は両足でオレの一物を包み込んで、
ゆっくりと前後にしごきはじめてきた。

ストッキングのザラザラとした感触と、妙に生暖かく湿った感触…。
それにミニスカートの間からチラチラと覗く、桃子(仮名)のピンク色のパンツ…。
パンツのまん中には、ストッキングの白い線と、生理用品の羽まで見えて…。

2061:2015/08/26(水) 15:14:53
あっという間にイキそうなほど、オレは高まってきた。
「もぉ(仮名)…、自分でTシャツめくってオッパイ見せてくれ…」
「えーっ! 自分でなんて…、恥ずかしい…」
「頼む!頼むって! この通り!」

その子(桃子似)の白い指が、おずおずとTシャツをめくりあげて、
パンツとおそろいのピンクのプラが露になった。
ブラに手をかけたところで、その子の手の動きがとまった。

「どうしたの?」
「やっぱり恥ずかしいよ…」
「頼むって…」
「えーっ…?」

2071:2015/08/26(水) 15:15:32
感心なことに、問答の間もその子(桃子似)の足は小刻みに動き続けて、
オレを刺激し続けていた。オレの興奮は頂点に近づいていた。

「もうガマンできん」
オレは腰を浮かしぎみに、無理矢理手を伸ばすと、
その子(桃子似)のブラを強引にむしりとった。

「あっ… イヤっ!」
顔を思い切り伸ばして、その子(桃子似)の大きくなっていた乳首にむしゃぶりついた時、
その子(桃子似)の足がひときわ強く、オレの一物をギューッと挟んで締め付けてきた。

「あっ…イクッ!」
その瞬間、オレの愛の弾丸がまたしても暴発し、
ビュッ、ビュッと、白い劣情がその子(桃子似)の胸や顔を直撃した。

「うわぁ…。うわぁ…」
その子(桃子似)が呆けたようにうめき続けた。

2081:2015/08/26(水) 15:18:05
それからしばらくして…。
電気を消した部屋で、オレはその子(桃子似)に腕枕しながら、
2人でベッドの上に寝転んでいた。

「あのね…、センパイ…」
寝物語にその子(桃子似)が話しだした。

「ん?」
「真野ちゃん(仮名)に…、告られたんだって…?」
「何で知ってるの?」
オレは少し慌てた。

「真野ちゃん(仮名)が、今日自分でもぉ(仮名)に自分で話してきたの…」
「えっ?」
「『嗣永さん(仮名)の彼氏だと知らずに告っちゃった。ごめんなさい』って」
「そ…、そうか…」
「センパイ…、『オレが好きなのは桃(仮名)だけだ』って、答えたんだって?」
「ん? あ…、まあな…」
『真野ちゃん(仮名)…、話盛ってるな…』とオレは思った。

2091:2015/08/26(水) 15:18:26
「真野ちゃん(仮名)って、いい子だよね…」と、その子(桃子似)が言った。
「…そうだな」
「もし、もぉ(仮名)と付き合ってなかったら、センパイの彼女に勧めたいくらい」
「こらこら(笑)。バカなこと言うんじゃない…」

「ねえ…、センパイ…」
「何?」
「もぉ(仮名)…、ホントはちょっとヤキモチ焼いてたんだ…」
「えっ?」
「センパイと真野ちゃん(仮名)…、仲よさそうだったから…」
「…」
「でも安心したよ。センパイ信じててよかった…」
そう言うと、その子(桃子似)はオレの胸に抱きついてきた。

そのまま沈黙が流れた。
しばらくして、「桃子(仮名)…」と、オレは話しかけたけど、
返ってきたのはスヤスヤと安らかな寝息だけだった。

210名無し募集中。。。:2015/08/26(水) 15:23:12
真野ちゃんや道重さんのエロ展開に興奮したり心配したりしたがいい感じに収まったようでよかったw

211名無し募集中。。。:2015/08/26(水) 15:35:12
桃子に白スト足コキで自分からシャツをめくらせようとするなんてこのセンパイはよくわかっている男だ
正しく有能だな

212名無し募集中。。。:2015/08/26(水) 17:09:27
おっ

213名無し募集中。。。:2015/08/26(水) 17:45:24
このまま腋コキ尻ズリ素股と果てない男のロマンを存分に叶えていってほしい

214名無し募集中。。。:2015/08/26(水) 21:15:01
足コキだけで乳首反応させてるとかエロ素質あるな桃子似

2151:2015/08/27(木) 03:26:39
翌朝目覚めると、すでに部屋の中にその子(桃子似)の姿はなかった。
のろのろとベッドから這い出すと、テーブルの上に置手紙があるのに気づいた。

『センパイおはよ! もぉ(仮名)は1限から授業だから学校行くね。
センパイは今日授業ないんだよね? ゆっくり寝ててください。
夕方の部会にはくるんでしょ? 飲み会もあるみたいだけど、
1次会でブッチしちゃって、久しぶりに、
一緒にカクテルでも飲みに行きたいな。桃(仮名)』

そうか…。今日は部会だったな…。
眠い頭で考えながら、オレはベッドに戻ってもう一眠りすることにした。

2161:2015/08/27(木) 03:30:50
夕方近くになって、オレはのろのろと身支度を整えて学校に向かった。

まっすぐ部室に行くと、既に室内に入りきらないくらいの部員が集まっていた。
『すげー出席率(笑)。真野ちゃん(仮名)効果、続いてるなぁ』と、
オレは心の中で苦笑した。

部室の真ん中辺に、桃子(仮名)と真野ちゃん(仮名)が並んで座っていて、
何か楽しそうにキャッキャと話しているのを見て、オレは正直ホッとした。
この2人はどうやら、昨日の一件で却って仲が深まったようだった。

真野ちゃん(仮名)はオレに気づくと、「あっ センパイこんにちは」と、
屈託のない笑顔で挨拶してくれたので、オレはますます安心した。

実は、もし真野ちゃん(仮名)が気まずくなって、
サークル辞めるとか言い出したらどうしよう…、と、
オレは少し心配をしていたのだ。

2171:2015/08/27(木) 03:31:42
安心しながらフッと横を向くと、道重さん(仮名)の視線を感じた。
「あっ…、道重さん(仮名)…、どうもこんちわ…」
とオレが言うと、道重さん(仮名)は顔を赤らめながら、
「や…、やあ…。○○クン(オレ)…」と、とってつけたような返事をしてきた。

『昨日のことを思い出してるのかな…』と、オレは思った。
というより…、オレの脳裏にも、唐突に昨日の光景が、つまり、
例のDVDのパッケージと同じポーズをとらせた時の、
道重さん(仮名)の姿がフィードバックされてきて、
オレは途端に一物が激しく勃起してくるのを感じた。

『こんなところで…、まずすぎる…。落ち着け落ち着け…』
オレが心の中で自分に言い聞かせていると、
「センパイ、何もじもじしてるの?」と、
その子(桃子似)が不思議そうにオレを見つめてきた。

2181:2015/08/27(木) 03:36:03
部会といっても、これまでは今後の行事の日程などを簡単に打ち合わせてから、
すぐに飲みに出かけていたのに、
今回は「部員の撮った写真の批評会」が準備されていて、オレは驚いた。

2年生や3年生たちが、風景や花などをデジカメで撮った写真をプリントして、
みんなに回覧して感想を言い合ったり…。

というとすごく真剣な感じがするけど、
『普段はこんなことしたことないくせに、要するにお前ら、
真野ちゃん(仮名)に写真の腕をアピールしたいんだろ』と、思うと
オレはおかしくなってきて、笑いをこらえるのに必死だった。

そんなオレを、『何がおかしいの?』といいたげな顔で、
桃子(仮名)がたしなめるように、時折ちらちらと睨んできた。

2191:2015/08/27(木) 03:36:20
マノフレ(仮称)たちの発表が一段落すると、
「私が撮った写真も見てください!」と、
真野ちゃん(仮名)が鞄から何枚かの写真を取り出して言った。
この間、オレと一緒に現像した、例の学校内の風景なんかを撮った写真だった。

いきなり手焼きのモノクロ写真が出てきたせいか、
部員たちから「おおっ」と言う感じのどよめきが上がった。

「へえ…、真野ちゃん(仮名)結構うまいじゃーん」と、桃子(仮名)が言うと、
真野ちゃん(仮名)は『えっへん』と言う感じに、胸を張った。

「ところでこの写真、自分一人で現像したの?」と、
マノフレ(仮称)の一人が聞くと、真野ちゃん(仮名)はニコニコしながら、
「まさか! 私にそんなのまだムリですよ…。
○○センパイ(オレ)に手取り足取り教えてもらいました!」と、
屈託ない様子で答えた。

次の瞬間、マノフレ(仮称)たちの、刺すような憎悪の視線がオレに集まってきた。
『アンタは桃子(仮名)一人で十分だろ…』と、
そいつらの顔に書いてるように見えて、オレの肩身はますます狭くなった。

2201:2015/08/27(木) 03:41:41
部会の後、みんなでぞろぞろと駅前の居酒屋まで歩いて移動した。
オレはみんなの後ろについて歩いていた。

集団の中心には、真野ちゃん(仮名)、桃子(仮名)、道重さん(仮名)が、
3人並んで楽しそうに話しながら歩いていて、その周りを男達が取り囲んでいて、
話しかけたそうにしていた。

『そういえば、今日の3人は似たような髪型だな』と、オレはその時初めて気がついた。
桃子(仮名)が2つ結びなのはいつも通りだけど、
道重さん(仮名)の久しぶりに見る2つ結びも新鮮だった。
それ以上に、真野ちゃん(仮名)の初めて見る2つ結びは可愛らしかった。

『しかしこの3人、桃子(仮名)だけは身長低いけど、この髪型だと後ろから見ると、
意外に雰囲気は似てるんだな…。うっかりしてると間違えそうだわ…』と、
オレは思った。
 
『飲み会の席で酔った弾みで、桃子(仮名)をほかの子と間違えて呼んだりしたら、
きっと修羅場だな…』と、一瞬バカなことを想像したけど、
『さすがにそこまで酔ったりはしないだろ』とオレは考えて、思わずクスリと笑った。

2211:2015/08/27(木) 03:44:16
3人の美女?たちを中心に、飲み会は結構盛り上がっていた。
オレは『君子危うきに近寄らず』とばかり、座敷の隅の方で、
枯れた先輩たちと写真談義に興じていた。

飲み会も半ばを過ぎ…、
トイレに行こうと座敷を出ると、ばったりと桃子(仮名)に合った。
桃子(仮名)は「センパイ…」と、小声でオレを階段の前まで手招きし、
「ねえ…、2次会とか言ってるけどどうする? 2人で抜けちゃおうよ…」と、
甘い声を出してきた。

「そうだな…」
オレは考えた。

「2人そろって抜けるとまた何かと言われるから…、オレは1次会終わる直前に、
『用事がある』って、帰ることにするよ。例のバーで待ってるから、
1次会終わったら、もぉ(仮名)もおいで」

オレがそういうと、その子(桃子似)は「わかった!」と返事をしてから、
一瞬キョロキョロと辺りを見回し、周囲に誰もいないことを確認してから、
オレの頬っぺたに短く、チュッとキスをしてきた。

2221:2015/08/27(木) 03:52:33
サークルのみんなと別れて、オレは1人でガード沿いのバーに向かった。
ドアを開けると、薄暗いバーのカウンターには客は誰もおらず、
カウンターの中で暇そうにグラスを磨いていた爺さんのマスターが、
「やあ、○○ちゃん(オレ)、しばらく」と顔を上げた。

店の奥から婆さんのママさんも出てきて、「今日は1人?」と、
おしぼりを手渡しながら聞いてきたので、
「いや…、後で桃子(仮名)が来ると思う」と答えると、
「桃子ちゃん(仮名)? あらー久しぶりねー」と笑った。

「そんなに来てなかったっけ?」とオレが聞くと、
「そうよ。春になってから一度も2人で来てないじゃないのよ。
ひょっとして、別れちゃったんじゃないかと、私たち心配してたんだから」
と、ママさんは言った。

「もう飲むかい?」とマスターが聞いてきた。
「そうだね…。桃子(仮名)が来るにはもう少しかかるから…。
先にビールでも飲んでようかな…」と、オレが答えると、
ママさんが冷蔵ケースからキリンラガーの中瓶を出してきて、オレの前で栓を抜き、
キリンのマークの入った小さなコップに注いだ。
マスターはザルに盛った蚕豆を小鉢に取り分けて、オレの前に差し出してきた。

1次会でも結構ビールは飲んだつもりだったけど、
まだ温かさの残る蚕豆を剥いて食べながら、コップのラガーをひと息に煽ると、
蚕豆の甘みとホップの苦味が混ざり合って、これは絶妙な旨さだった。

2231:2015/08/27(木) 03:58:08
蚕豆を摘まみながら中瓶を1本飲み終わっても、
その子(桃子似)は店に現れなかった。
オレはしばらく待ったけれども、やっぱり我慢できなくなって、
ラガーの中瓶をもう1本頼んだ。

2本目は時間をかけてゆっくり飲んだけれど、
やはりその子(桃子似)は現れなかった。

「遅えな…。あいつ何やってるんだろ…」
オレがそうつぶやくと、ママさんが「もう1本飲む?」と、
冷蔵ケースの取っ手に手をかけながら聞いてきたので、
「いや…。そんなにビールばっかり飲めないよ」と苦笑すると、
マスターが「じゃ、水割りでも作るかい?」と聞いてきた。

「そうだね…」
マスターはニッカのG&Gを戸棚から取り出すと、手馴れた手つきで水割りを拵えた。
そんなに高いウイスキーでもないのに、マスターの作る水割りはいつも旨かった。
何故かと聞くと、「ステアの仕方が違う」と、マスターは笑いながら答えたけれど、
オレには違いが分からなかった。

2241:2015/08/27(木) 04:00:17
2杯目の水割りが空になった時、カランカランと鈴が鳴ってドアが開いた。

「遅いぞ桃…」と、言いかけたオレの視界に入ってきたのは…、
誰あろう、真野ちゃん(仮名)だった。

「えっ? 真野ちゃん(仮名)…? えっ?…」
オレが混乱してると、はにかんだ表情の真野ちゃん(仮名)の後ろから、
「よっ! お待たせー!」と言いながら、
桃子(仮名)がドタバタと店の中に入ってきた。

「えっ? 何? どうなってんの?」と、オレが驚いて聞くと、
「ごめんなさい…。私やっぱり邪魔だったんじゃ?…」と、
真野ちゃん(仮名)が済まなそうな顔で言った。

すかさず桃子(仮名)が、「全然邪魔じゃないよ。ね?センパイ?」と、
オレを上目遣いに見ながら聞いてきた。

「もちろん大歓迎だけど…、一体どうなってんの?」
オレは桃子(仮名)と真野ちゃん(仮名)を等分に見ながら聞いた。

2251:2015/08/27(木) 04:03:45
カウンターに並んで腰かけながら、
「いやぁ、それがね…」と、桃子(仮名)は呆れたように話し出した。

1次会が終わって、道重さん(仮名)たち先輩は、皆さっさと帰ったそうな。

真野ちゃん(仮名)も帰ろうとしたところ、
「もう1軒飲みに行こう」という連中と、「それよりカラオケに行こう」という連中と、
「帰るんなら方向が一緒だから送っていく」と言い出した連中が、
真野ちゃん(仮名)を引っ張り合って、すごく険悪なムードになってしまった…、
のだと、桃子(仮名)は説明した。

「それでね…、真野ちゃん(仮名)困ってたから、
『今日は真野ちゃん(仮名)は、もぉ(仮名)の家に泊まることになってるの!』って、
とっさに言ったんだけど…、男の子たちもなかなか引き下がらないから、
『それじゃ最後にみんなでお茶だけ飲んで解散しようよ』って妥協案を出して、
今まで喫茶店でお茶飲んでたの」

桃子(仮名)がそう言うと、
「ごめんなさい…。せっかくお2人でデートなのに…、私のせいでご迷惑かけて…」と、
真野ちゃん(仮名)がオレを見上げて言った。

226名無し募集中。。。:2015/08/27(木) 07:50:00
一時は修羅場になるかと思ったが仲良くなるってすごいな

2271:2015/08/27(木) 14:58:01
「そっかー。そりゃ大変だったな…。全然迷惑なんてことないから。
まあ、取り敢えず何か飲みなよ」と、オレがいうと、
真野ちゃん(仮名)は「ハイ!」と元気よく返事をしてから、メニューを眺めて、
「私こういうとこ初めて来たから…、何飲んでいいのかわかりません…」と、
困ったように首を傾げた。

「なんか甘いのとか辛いのとか、テキトーに言えばマスターが作ってくれるよ」と、
オレは言ったけど、真野ちゃん(仮名)は「はい…」と答えたまま、
メニューを読むのに熱中しはじめ、「聞いた事ないお酒ばかり…」とつぶやいた。

「そうだ!『アプリコットフィズ』がいいよ真野ちゃん(仮名)!
もぉ(仮名)も最初にここで飲んだのそれだったし、さっぱりしてて飲みやすいよ!
もお(仮名)はそれにする」と、桃子(仮名)がニコニコしながら言った。

『おいおい…、そりゃオレたちふたりの思い出の酒じゃなかったのかよ…』と、
オレは内心苦笑したけど、真野ちゃん(仮名)は「じゃあ、私もそれにします!」と、
元気よく答えた。

(※注 この以前のシリーズの時に、桃子が競馬で、「アプリコットフィズ」という、
名前の馬で大勝ちする、という話があったのです)

2281:2015/08/27(木) 15:06:12
桃子(仮名)と真野ちゃん(仮名)はアプリコットフィズ、
オレは相変わらずウイスキーの水割りで、3人で乾杯した。

真野ちゃん(仮名)は一口飲んで、
「おいしい!この間センパイにご馳走になった日本酒もおいしかったけど、
こっちのほうがおいしいです!」と、満面の笑みを見せて言った。

「そうでしょ、そうでしょ!」と、桃子(仮名)も嬉しそうに言ったけど、
店のマスターとママさんはもっとうれしそうだった。

孫と爺さんくらいに年の離れたマスターは、
「いやあ…、お嬢ちゃん…、本当にお人形みたいにかわいいわね…」と、
しきりに言って、真野ちゃん(仮名)を照れさせていた。

ママさんは「さっきの話ちょっと聞こえてたけど…、こんなに可愛いんだもん…、
そりゃモテるわよね。若いうちなんだから、好きな男の子みつけて、
楽しんだ方が絶対いいわよ」と、ニコニコしながら真野ちゃん(仮名)に言った。

真野ちゃん(仮名)は一瞬、悪戯っぽい目でオレを見てから、
「好きな人いたんで勇気出して告白したんですけど…、振られちゃったんですぅ」と、
ちょっと芝居じみた口調で言った。

ママさんが「えーっ?!」と驚いた口調で言うと、
すかさずマスターが「バカな男だな、そいつ」と、相槌を打った。
酒を噴き出しそうになった桃子(仮名)が、「…ゴホンゴホン」と咳払いをした。

「何かその人…、彼女がいたみたいで…」と、真野ちゃん(仮名)が言うと
「どうせろくでもない女でしょ」とママさんが言い、マスターは、
「そうだな。あなたみたいな可愛いお嬢さんを振るなんて、そんなマヌケな男の顔が見たい」と、
憤慨したように言った。

「目の前にいるけど」とオレ。
「『ろくでもない女』もいるし…」と桃子(仮名)。

2291:2015/08/27(木) 15:08:18
次の一杯はマスターがご馳走してくれるというので、
オレは遠慮なくブレンドオブニッカのオンザロックを、
桃子(仮名)はピーチフィズを注文した。

真野ちゃん(仮名)は迷っていたけど、味の好みを伝えると、
マスターがモスコミュールをつくってくれた。

まあ、とにかく…、昨日あんなことがあったばかりなのに…、
真野ちゃんが結構楽しそうだったので、オレはホッとした。

そう思っていると、桃子(仮名)がトイレに立った隙に、真野ちゃん(仮名)は、
「でも私、昨日ひと晩泣き明かしたんですよ」と、
ちょっと頬っぺたを膨らませながら、オレとマスターとママさんを等分に見て言った。

そんな真野ちゃん(仮名)の表情を見ると、
『真野ちゃん(仮名)可愛いな…。もし桃子(仮名)と付き合ってなかったら、
むしろオレの方から絶対口説いてるのにな…』とオレは心の中で思った。

2301:2015/08/27(木) 15:12:22
それからしばらく、サークルの話や、
桃子(仮名)と真野ちゃん(仮名)たちのクラスの話とかで、場は盛り上がった。

酒を飲み干したところで、真野ちゃん(仮名)が時計を見て、
「私、そろそろ帰らないと…」と言い出したので、ママさんに会計をしてもらった。

マスターとママさんは、よほど真野ちゃん(仮名)が気に入ったらしく、
「必ずまた遊びにくるんだよ」と、しきりに真野ちゃん(仮名)に話しかけていた。

店を出て、3人でガード沿いを駅に向かって歩いていると、
真野ちゃん(仮名)の足並みが、フラフラよろよろともつれ出した。

「真野ちゃん(仮名)? 大丈夫?」とオレが言うと、真野ちゃん(仮名)は、
「たぶん大丈夫とは思うんですけど…、ちょっと酔ったかも…」と、つぶやいた。

「真野ちゃん(仮名)、家遠いし心配だな…。
そうだ! 今日は桃子(仮名)のアパートに泊めてもらったらどうだ?」
と、オレが言うと、桃子(仮名)も、
「うん! それがいいよ。おいでおいで!」と、真野ちゃん(仮名)の腕を握った。

「えー…、そんな…、迷惑じゃ…。それに○○センパイ(オレ)と、
2人で過ごすはずだったんじゃ…」と、真野ちゃん(仮名)が言い出したので、
「いや、今日はオレは自分の部屋に帰るから」とオレが答えると、桃子(仮名)も、
「うん。そうそう。私たち昨日も一昨日も一緒だったから全然平気」と、笑った。

真野ちゃん(仮名)は「何ですかあっ…! ノロケじゃないですかーっ?」と、
少し頬っぺたを膨らませて怒ったしぐさを見せたけど、
「でも、本当に泊まっていってもいいんですか?」と、桃子(仮名)に問いかけた。

2311:2015/08/27(木) 15:15:17
それから、真野ちゃん(仮名)が自分の家に電話したり、
その電話に桃子(仮名)が電話に出て、親御さんに挨拶して事情を説明したりして、
真野ちゃん(仮名)の初めての外泊が決まった。

オレたち3人は地下鉄に乗って、桃子(仮名)やオレのアパートのある中野へと向かった。

中野駅の北口の前で、「じゃあセンパイ、ここで…」と、桃子(仮名)が言いかけたけど、
酔っ払いの女の子2人を放って帰るのもしのびなく、
「まあちょっと遠回りだけど、桃(仮名)のアパートの前まで送っていくわ…」と、オレは言った。

サンモールとブロードウェーの中を抜けて、桃子(仮名)のアパートを目指した。

桃子(仮名)は途中のコンビニで、
「今日は2人でパジャマパーティーってことで、何かおやつとか飲み物とか買おうよ」と、
ニコニコと真野ちゃん(仮名)に話しかけた。

コンビニでの買い物が終わり、桃子(仮名)のアパートまであと少しのところまで来た時、
突然雨が一粒、二粒と落ちてきたと思ったら、いきなり雷がゴロゴロと鳴り出し、
強い雨が音を立てて降り始めた。

「いやあっ! 何これーっ?」
「とにかく走ろう」

オレたち3人は急いで桃子(仮名)のアパートまでダッシュした。

2321:2015/08/27(木) 15:18:27
「いやーん、びしょ濡れ…」
部屋のカギを開けながら、桃子(仮名)が言った。
「センパイも取り敢えず…、上がってよ…」

部屋に入ると、桃子(仮名)はタンスの中からごそごそとタオルを取り出して、
真野ちゃん(仮名)とオレに手渡した。

自分も雨に濡れた髪を拭きながら、桃子(仮名)は、
「真野ちゃん(仮名)、桃(仮名)の部屋着でよかったら貸してあげるから、
着替えちゃって濡れた洋服乾かせば?」と言って、
旅行の時とかに俺も何度か見たことのあるピンク色の柔らかそうな素材のショートパンツと、
白いTシャツを手渡した。

真野ちゃん(仮名)は「スミマセン、そんなことまで…。じゃあ着替えてきます」と、
素直に従って、バスルームに入った。

桃子(仮名)は、「もぉ(仮名)も着替えるから、センパイ向こうむいててね」
と言って、薄いブルーのパジャマに着替え始めた。

さて、オレはどうしようか…、と思っていると、
「そうだ! センパイに借りてたままのTシャツあったよ」と、
桃子(仮名)がタンスの中からオレのTシャツを取り出してきた。

濡れたポロシャツを脱いで、そのTシャツを着ようと頭から被ると、
石けんなのか柔軟材なのか、女の子の服のいい匂いがして、オレは少し興奮した。

2331:2015/08/27(木) 15:20:10
その時、バスルームのドアが開いて、着替え終わった真野ちゃん(仮名)が、
頬をほんのり赤らめながら出てきた。

薄手のTシャツから刺繍の模様まで透けて見える、白いブラジャー。
ショートパンツからとびだした、むっちりとした太もも。

オレは思わず、真野ちゃん(仮名)に視線が釘付けになりながら、
五クりと唾を飲み込んだ。

「ヤダ…、あんまり見ないでくださいよぉ…」と、
真野ちゃん(仮名)が顔を真っ赤にしてつぶやくのと、
「ちょっとセンパイ! そんなにやらしい目で真野ちゃん(仮名)見るなら帰ってよ!」
と、叫ぶのがほとんど同時だった。

234名無し募集中。。。:2015/08/27(木) 15:52:01
振った後なのになんか和やか(?)な雰囲気でよかったな
ヤキモチかわいいし

235名無し募集中。。。:2015/08/27(木) 19:04:47
本スレ?の舞台は路面電車の走る町だけどこっちは都内なのね
中野で地下鉄って大江戸線かな?学校は江古田だと親近感あるなー

236名無し募集中。。。:2015/08/27(木) 19:10:28
東西線じゃね?

2371:2015/08/28(金) 01:57:16
雨がやむ気配は全然なかった。
小降りになったら帰るつもりだったけど、オレはもうこの際、
どっしりと腰を落ち着けることにした。

さっきコンビニで買いものをした袋の中から、桃子(仮名)は缶チューハイを、
真野ちゃん(仮名)はシードルの小瓶を取り出して、
「じゃあ、あらためてカンパイだね」とか言い出したので、
「おい、オレにも何か飲むものない?」と、聞いたけど、
「だってセンパイ帰ると思ってたから、買ってなかったんだもん」と、
桃子(仮名)はまだ少しご機嫌ナナメという感じの口調で言った。

「何でもいいから何かないか?」と、重ねて聞くと、
桃子(仮名)は渋々という感じで立ち上がり、冷蔵庫の奥を探ると、
前に伊勢神宮に行ったときに買ってきた御料酒・白鷹の瓶を出してきた。
瓶の中には3分の1くらい中身が残っていた。

オレがお猪口を持つと、「ハイどうぞ」と、
真野ちゃん(仮名)が優しくお酌をしてくれた。
思わず、「あっ…、どうも」とニヤニヤしてしまったら、
「また鼻の下伸ばして!」と、桃子(仮名)が呆れたように言った。


(※注 以前のシリーズで、伊勢神宮に旅行に行く、という話があったのです)

2381:2015/08/28(金) 02:02:59
オレたちは、あらためて3人で乾杯して、飲み直し始めた。

けれど、やっぱり女の子同士のマシンガンのようなトークに入っていくのは大変で、
オレはひとりしみじみと、手酌酒をするような格好になってきた。
そのうち、クラクラと結構強烈な酔いが回ってきた。

無理もない。

考えてみれば、今日は夕方から1次会はビールと焼酎、
バーに移ってからも、またビールを飲んだ後、
延々とウイスキーの水割りやオンザロックを飲み続けていたのだ。
そして、雨の中ダッシュしたうえ、今度は灘の生一本…。
そりゃ、酔うというものだ。

思わずウトウトとしかけると、
「センパイ? 眠いの? 酔ってるの?」と、桃子(仮名)が聞いてきた。

「うん…。少し酔ったかな」とオレが答えると、
「もぉ(仮名)たちより先に潰れちゃうなんて、男のくせに情けなーい」と、
桃子(仮名)が小馬鹿にするような口調で言ってきた。

「いや…、だって飲んでる物も量も違うだろ…」とオレが言うと、
桃子(仮名)は、「もー、しょうがないんだから。そんなところで寝ないで…。
今マット敷いてあげるから、こっちで寝て」と、不意に優しい声で言ってから、
普段自分が寝ている布団のマットレスを押入れから出してきて、部屋の隅に敷き、
オレをそこに導いた。

2391:2015/08/28(金) 02:05:41
マットレスの上に横になると、オレはすぐにうとうととした眠りに落ちはじめた。

時折キャッキャッと響く、女の子たちの笑い声と窓の外の強い雨音。

それからしばらく記憶が飛び、次に気がついたのは、
2人がごそごそと片付けものを始めたり、オレの寝ているマットレスの横に、
敷布団を敷いたりしている気配だった。

「センパイ、3人で雑魚寝するんだから、もうちょっとそっちに寄って」と、
桃子(仮名)がオレの体を押したような感覚がおぼろげに残った後、
オレの記憶は再び飛んだ。


それからどのくらい経ったのか…。
「ジャーッ」と、トイレの水が流れる音に目を覚ますと、
真っ暗な部屋の中に女の子が戻ってきて、オレの横の布団にもぞもぞと入ると、
くるりと背中をオレの方に向けて、寝ようとしたところだった。

『桃子(仮名)か…』
と、オレは再び目を閉じながら思ったけど、寝ぼけた頭の中で、
無性に桃子(仮名)の体に触れたい気持ちが高まってくるのが、抑えられなくなってきた。

昨日も一昨日も、抱き合いながら寝たというのに…。
今日は同じ部屋に真野ちゃん(仮名)がいるというスリルからなのか…。

奥からは真野ちゃん(仮名)のものらしい、スースーという規則正しい寝息。
窓の外からは、少し弱くなった雨音がしとしとと続いていた。

2401:2015/08/28(金) 02:08:17
つづく

241名無し募集中。。。:2015/08/28(金) 02:18:18
センパイそれ真野ちゃんだよ!!!

242名無し募集中。。。:2015/08/28(金) 03:29:31
やはり真野ちゃんなのか…?
桃子であることを願ってるがここはまた修羅場か

243名無し募集中。。。:2015/08/28(金) 03:51:35
ネタバレ禁止で

244名無し募集中。。。:2015/08/28(金) 03:57:41
志村後ろー!

245名無し募集中。。。:2015/08/28(金) 09:23:30
王道で真野ちゃんか変化球でももちか
どっちだろう

246名無し募集中。。。:2015/08/28(金) 13:33:17
ネタバレっていうか俺も先は知らないけど流れ的にたぶん真野ちゃんだろw

2471:2015/08/29(土) 02:31:02
暗闇の中、オレは目をつぶり、ゆっくりとその子の方に手を伸ばした。

肩にオレの手が触れた瞬間、その子はびっくりしたのか、
大げさにビクンと体を震わせたきり、固まってしまった。

オレはゆっくりと肩から二の腕…、そして胸の方へと、体を撫で回すように、
手のひらを滑らせていった。

「うっ…」、とか、「くっ…」とかいうような、声を上げるのをガマンしているような、
嗚咽がその子からもれた。

オレの手のひらがその子のオッパイをTシャツの上から包み込んだ。

『あれ…? 桃子(仮名)の胸…、こんなに大きかったかな?』と、
一瞬オレは思った。

その子はいつもよりも切迫したような、何か必死な感じでオレの手から逃れようと、
抵抗してもがいていたけれど、隣でスースーと寝息を立てている友達を気にしてか、
全く声は上げなかった。

『ももち(仮名)…、真野ちゃん(仮名)に気づかれると思って焦ってるのかな』
その子のいつもとは違う恥ずかしげな反応に、オレの気持ちはますます興奮してきた。

その子の手かしきりにオレの手をはねのけようと試みるのにも構わず、
オレはゆっくりねっとりと、その子のオッパイを揉み続けた。

248名無し募集中。。。:2015/08/29(土) 04:38:43
おっぱいおっぱい

249名無し募集中。。。:2015/08/29(土) 10:48:28
真野ちゃんかわいい
お嫁さんにしたい

2501:2015/08/29(土) 23:20:14
無言のまま、身をよじって必死にオレの手から逃がれようとするその子に、
『桃子(仮名)がこんなに抵抗するのは初めてだな…』と、
オレは寝ぼけた頭で思った。

去年初めてペッティングした時だって、
桃子(仮名)は恥ずかしがりこそしたものの、オレの手を嫌がったりすることはなく、
むしろ積極的に身を委ねてきたのだった。
それが今の抵抗の仕方ときたらどうだろう。

『やっぱり、すぐ横に真野ちゃん(仮名)が横にいるからだろうな…』と、オレは思ったけど、
その子が必死に抵抗すればするほど、オレの征服欲は燃え上がる一方だった。

オレは半ば無理矢理に、その子のTシャツの中に手を入れて、
ジタバタと無言でもがくその子の手をかいくぐり、ブラジャーのカップの隙間から、
強引に指を侵入させた。

「くっ…」と、その子が唇を噛むような声が漏れた。
ブラの中は汗でしっとりと湿っていて…、
いつもの桃子(仮名)より、ずっと乳首が大きく硬く膨らんでいる気がした。

その乳首を乱暴に摘まんだり引っ張ったりして、思うさまもてあそんでから、
不意にオッパイ全体をギュッと手のひらで包み込むと、
「ドクン…ドクン…」という、その子の心臓の鼓動が、
オレの手のひらにもはっきりと伝わってきた。

2511:2015/08/29(土) 23:23:07
飽きるまでさんざんオッパイを弄んでから、
オレはその子の下半身に手を伸ばしていった。

滑らかな太ももを乱暴にまさぐると、それでもなお、
その子は必死にオレの手をはねのけようともがいていた。

オレは構わずショートパンツの裾から、一気にパンツの中にまで指を入れた。

湿った密林を掻き分け、硬く尖ったところにオレの中指が触れた瞬間、
その子は「う…、うぐっ…」と、押し殺したような鳴き声を漏らして、
観念したように抵抗するのをやめた。

その子は片手で自分の口を抑え、
もう片手でギュッとシーツを堅く握り締めているようだった。

オレはその子の尖ったところをしばらく擦り続けてから、
グショグショに湿った蜜壷の中に、ゆっくりと中指を沈めていった。

「い…、痛い!」
その子が小さな悲鳴を漏らした。
オレは慌てて指の動きを止めて、辺りの気配をうかがってから、
「ゴメン…、ももち(仮名)…」と、小声で囁いた。

その瞬間、その子は弾かれたように身を硬くして、
「も…、ももち(仮名)?」と掠れた声でつぶやいて、振り向いた。

目の前にいたのは桃子(仮名)ではなく…、
両目からボロボロと涙をこぼした真野ちゃん(仮名)だった。

部屋の中には桃子(仮名)の規則正しい寝息がスースーと響いていた。

2521:2015/08/29(土) 23:27:39
「えっ!? ま…、真野ちゃん…!?」
思わずオレは驚いて声を上げてから、慌てて息を止めて、桃子(仮名)の様子を伺った。
幸い桃子(仮名)は安らかな寝息を立て続けていた。

しかし…。

いくら酔って寝ぼけていたとはいえ…。
いくら真野ちゃん(仮名)が見慣れた桃子の(仮名)の服を着ていたとはいえ…。

だいたい、桃子(仮名)がパジャマに着替えるのを、オレは目の前で見ていたではないか…。
真野ちゃん(仮名)のTシャツに触れた時点で、なぜ気づかなかったのか…。

それにしても…。
友達の家に泊まって、友達の寝ている横で…、
友達の彼氏にいいようにカラダを弄ばれて…。

涙を流しながら、声を上げるのをガマンしていた真野ちゃん(仮名)…。

「ご…、ゴメン真野ちゃん(仮名)。オレ…、寝ぼけてて、
てっきり桃子(仮名)だとばっかり…、あっ!?」

オレが小声で囁き始めると、真野ちゃん(仮名)がいきなり、
オレの胸に抱きついてきた。

この時オレの中指は、まだ真野ちゃん(仮名)の小さな蜜壺の中にあった。

2531:2015/08/29(土) 23:29:22
オレの胸に飛び込んできた真野ちゃん(仮名)は、
涙で腫れた顔をゆっくりとオレの顔に近づけてきた。

「真野ちゃん(仮名)…!?」

真野ちゃん(仮名)の柔らかい唇がオレの唇に触れた。

絡まりあう舌と舌…。
オレの胸に密着した、真野ちゃん(仮名)の弾力あるカラダ…。

瞬間、オレの中で何かが弾けとんだ。
「恵里菜(仮名)…」
真野ちゃん(仮名)のパンツの中にあった右手を、
オレは再びゆっくりと動かし始めた。

2541:2015/08/29(土) 23:37:04
オレは真野ちゃん(仮名)のグチョグチョに溢れる泉を指で掬って、
固くとがったところに擦りつけた。

クチュッ…、クチュッ…、クチュッ…、クチュッ…、

桃子(仮名)の部屋に、真野ちゃん(仮名)の発するいやらしい音が響いた。

「う…、うくぅっ…! うくぅっ!」
真野ちゃん(仮名)が必死に両手で口を塞いだまま、
真っ赤になった顔をオレの肩に押しつけてきた。
オレのTシャツの袖に、真野ちゃん(仮名)の垂らしたヨダレがじっとりと滲んできた。

桃子(仮名)の立てる「スー…、スー…」という規則正しい寝息。
オレの中指が動く「クチュッ…、クチュッ」という卑猥な音。
真野ちゃん(仮名)が必死にこらえる、「うくぅっ…! うくぅっ!」というヨガリ声。
いつしか雨音は聞こえなくなっていた。

憑かれたようにオレがそこを擦り続けていると、 
オレの背中に回した真野ちゃん(仮名)の指に力がこもり、
爪がオレの背中にギューッと食い込んできた。

「恵里菜(仮名)…!」
オレは一層指の動きを早めながら、真野ちゃん(仮名)の耳に舌を差し入れた。

「ひぃっ!」
その瞬間、短く叫び声を上げた真野ちゃん(仮名)が、
エビのように体を反らして、数回ガクガクと体を痙攣させた。

「真野ちゃん(仮名)…」
しばらく焦点の定まらない目でオレをぼんやりと見ていた真野ちゃん(仮名)は、
不意にオレに背を向けると、頭までタオルケットを被りこんだ。

肩を震わして泣いている様子の真野ちゃん(仮名)。

オレはすっかりふやけた自分の中指の匂いをかいだ。

255名無し募集中。。。:2015/08/30(日) 00:01:00
このセンパイだめ人間やなwww

256名無し募集中。。。:2015/08/30(日) 01:32:15
もはや別れ話になっても文句言えない事案w

257名無し募集中。。。:2015/08/30(日) 04:15:33
ドキドキベイビー

258名無し募集中。。。:2015/08/30(日) 05:27:18
匂いを嗅ぎやがったなこいつw

259名無し募集中。。。:2015/08/30(日) 18:43:52
バッキバキになっちゃった息子さんをどうすんのさ?
桃子さん(仮)に気づかれずにさいごまで行っちゃうの?気になるよー

260名無し募集中。。。:2015/08/30(日) 19:27:13
ももちの処女を奪う前に真野ちゃんの処女を奪うセンパイ

2611:2015/08/30(日) 21:05:28
それから…。

いいようのない罪悪感と、異様な興奮の間で揺れ動きながら、
オレは夜明けまでの数時間を布団の中でまんじりともせずに過ごした。

時が経つのが、言いようもないほど長く感じた。
それはたぶん真野ちゃん(仮名)も同じだったのだろう。

8時になって、桃子(仮名)の目覚まし時計が鳴りだした時、
オレは心の底からホッとした。

「ふわぁ…、もう朝?」と、桃子(仮名)が起き出して、大きく欠伸をした。

真野ちゃん(仮名)も起き上がり、
「私…、1限から授業あるから…、学校行かなくちゃ…」と言った。

真野ちゃん(仮名)はオレを見ると、途端に顔まで赤く染めながら、
「お…、おはようございます…」と、視線を逸らして言った。

「あ…、おはよ…」と答えたオレの顔もきっと、
真野ちゃん(仮名)と同じくらい赤くなっていたのだと思う。

真野ちゃん(仮名)は「じゃあ2人はゆっくり寝ててね、私帰るから」と言って、
身支度をはじめようとした。
すると桃子(仮名)が、
「駅まで道わかんないでしょ? もぉ(仮名)が送ってくよ」と、いい出だした。

オレは慌てて、「い…、いや、オレが送っていくから、もぉ(仮名)は寝てろ」と言った。
何はともあれ、真野ちゃん(仮名)と2人っきりになって、早く謝らなければ…、と、
そればかりを考えていたのだ。

「いいって。もぉ(仮名)も行く」と桃子(仮名)。
「いや、ホントにオレが…。それよりもぉ(仮名)は、メシでも作っててくれないか?
オレここに戻ってくるから」と、オレが重ねて言うと、
桃子(仮名)は素直に、「そう? 分かったよ」と微笑んだので、オレはホッとした。

その間に、トイレで着替えをしていた真野ちゃん(仮名)が戻ってきて、
「借りた服は、あとで洗濯してきて返します」と小さな声で桃子(仮名)に言った。

「いいよそんなの。気にしないでいいからそのまま置いてって」と桃子(仮名)。
「いやホントに洗濯してきます」と、真っ赤な顔の真野ちゃん(仮名)。
「いいっていいって。女の子同士なんだし」と桃子(仮名)。

「本当に洗濯してきます!!」と、
最後は真野ちゃん(仮名)が真っ赤な顔をしながら強い勢いで言って、
桃子(仮名)は気押されたように、「そ…、そう?」と返事をした。

オレはそんな問答を聞こえないフリをしてずっと下を向いていた。
思わず背中に冷たい汗が流れた。

2621:2015/08/30(日) 21:17:37
真野ちゃん(仮名)と2人で、桃子(仮名)の部屋を出た。
2人並んで無言のまま通りに出て、交差点の角を曲がった途端、オレはその場に土下座した。

「真野ちゃん(仮名)スマン! これ、この通り! オレ…、さっきは酔って寝ぼけてて…、
てっきり桃子(仮名)だとばっかり思い込んで…」

真野ちゃん(仮名)は真っ赤な顔をしたまま、呆然とオレを見下ろしていた。

やがて…、
真野ちゃん(仮名)が、声も上げずにポロポロと涙をこぼし始めた。

道行く女子高生たちがひそひそ話をしながら、
オレたちの横を足早に通り過ぎて行った。

それを見た真野ちゃん(仮名)は、ハッとしたように涙を拭うと、
「ちょ…! センパイ! 恥ずかしいから…、もうやめてください…!」と言った。

「いや…。ホントにスマン…。悪かった」と、なおもオレが地面に這い蹲っていると、
「わかりました。わかりましたから! あれは事故だったってことで…、私も忘れますから、
もう立ってくださいよ…」と、消え入りそうな声で言って、オレの腕を引っ張って起こした。

再び歩き出すと、また涙をこぼし始める真野ちゃん(仮名)。

「いや、ホント悪かった。オレにできることがあったら何でもお詫びするから、
言ってくれ」と、オレは言った。

しばらくして、ようやく泣きやんだ真野ちゃん(仮名)は、
「センパイ、明日忙しいですか?」と、オレに視線を合わさずに聞いてきた。

「え…、明日? ヒマだけど何で?」
「ちょっと付き合ってください」
「え? 付き合うって…?!」
「私…、自分のカメラが欲しくなったんで、買いに行こうと思ってるんです。
選ぶの手伝ってくれませんか?」

オレはようやくホッとしたような気持ちになりながら、
「あ…、ああ。そんなことならお安い御用」と、返事をした。

2631:2015/08/30(日) 21:20:17
中野ブロードウェーの入り口まできたところで、
「これ真っ直ぐいけば駅ですよね? もうわかりますから」と、
真野ちゃん(仮名)が言ったので、オレたちは明日の約束をして、そこで別れた。

桃子(仮名)のアパートに戻ると、部屋には甘い香りが漂っていた。
「何作ったの?」とオレが聞くと、桃子(仮名)はエプロンを外しながら、
「フレンチトースト焼いてみたところ…」と、はにかんだ顔で言った。

エプロンの下はパジャマ姿のままだった桃子(仮名)を見たら、
オレは急にムラムラとした気分になってきた。

考えてみたら…、
昨日からずっと、オレは桃子(仮名)を抱きたい気持ちでいっぱいだったのだ。
だからこそ、間違って真野ちゃん(仮名)を攻めてしまうような事故もおきたのだ。

しかもオレは昨日からイクこともできず、悶々とした気分をひきずったまま…。
さらに寝不足も加わってか、一物はここ数日でも最大限度に怒張しきっていた。

「ももち(仮名)…」
敷かれたままの布団に桃子(仮名)を押し倒すと、
「ちょっ!…、ええっ!? 何? 何?」と、
桃子(仮名)がびっくりしたような呆れたような声を上げた。

「ももち(仮名)…、オレのももち(仮名)…」
「ちょっ…、せっかく焼いたフレンチトーストが冷めちゃう…」

2641:2015/08/30(日) 21:22:44
オレはその子(桃子似)の首筋に強く吸い付きながら言った。
「ももち(仮名)…、いっぱいキスマークつけてやるからな」
「いっ! いやあっ!」
首を振って逃れようとするその子(桃子似)と、執拗に首筋を吸い続けるオレ。

「ダメ…! ダメ! ダメだってばぁ…! クラスの子たちにバレバレになっちゃう…!」
「構わないよ。見せつけてやれ」
「そんなの…、恥ずかしすぎる…」
「ももち(仮名)はオレの女だろ。オレの女にオレの印つけて何が悪い」

言葉責めに興奮したのか、その子(桃子似)はオレのキスに合わせて、
「あっ! あん…、あん…」と、甘い吐息を漏らしはじめた。

オレはもう我慢ができなくなって、自分のジーンズのベルトをはずして、
もどかしく脱ぎ捨てると、その子(桃子似)のパジャマのズボンを乱暴にずり下ろした。

「ちょっ…、ちょっと待って!」
「待てない!」

2651:2015/08/30(日) 21:30:23
「ちょっ! センパイ…! まだ今日もダメなんだってば…」
顔を真っ赤にしながらつぶやくその子(桃子似)に、
オレは「分かってる…」とだけ返事をして、自分のパンツを脱ぎ捨てると、
激しく屹立した一物を、その子(桃子似)のパンツの上から宛てがった。

布一枚隔てて密着したオレと桃子(仮名)…。
ふっくらとしたその子(桃子似)のその部分の感触に、
オレはさらに一層痛いくらい自分が膨らむのを自覚しつつ、腰を動かして、
その子(桃子似)に擦りつけはじめた。

「あ…、アアン…、アン…」
白い首を伸ばして吐息を漏らす桃子(仮名)。

その甘い声の響きに、あっという間にオレは高まりつつあった。
『これじゃホントに三こすり半だ…』
そう思った時、その子(桃子似)が、
「ね…、ねえセンパイ…、今日は…、パジャマ汚しちゃいやあっ」
と途切れ途切れに言った。

「そんなこといったって…」
オレは泣きそうな声で言ったけど、確かにここ数日、
オレは恥ずかしながら暴発のしっぱなしで、桃子(仮名)の服や髪を汚し続けていたのだ。

2661:2015/08/30(日) 21:31:14

「ね、お口の…、お口の中に出していいから…」
哀れむようにオレを見るその子(桃子似)の表情に、
オレはカッと一瞬頭の中が真っ白になった。

その子(桃子似)は布団の上に半身を起こすと、少し震えるようにオレに近づき、
オレの腰に手を回した。

ぬるん…、とした生暖かい感覚とともに、オレはその子(桃子似)の口に包まれた。

「アッー!」
思わず漏れるオレの情けない声。
ゆっくりとリズミカルに前後に動くその子(桃子似)の口…。

「ももち(仮名)…、ああっ! ももち(仮名)!」
情けないほどあっという間に上り詰めたオレは、
ドピュッ! ドピュッ!という感じに、
その子(桃子似)の喉の奥深くにオレ自身を解き放った。

「ん…、うぐっ…!」
その子(桃子似)のむせて苦しそうな声に、オレはハッと我にかえり、
ティッシュを何枚も掴むと、その子(桃子似)の口に宛てがった。
「ももち(仮名)! スマン! 出して! 出していいよ!」

その子(桃子似)は半べそをかいたような目で、
二、三秒、上目遣いにオレを見上げた後、思い切ったようにゴクンとひと息にそれを呑み込んだ。

2671:2015/08/30(日) 21:33:16
ゴクン…と、飲み込んだかに見えたその子(桃子似)だったけれど…。

次の瞬間、「ゴホッ…ゴホッ…」と苦しそうにむせ始めたので、
オレは慌てて、「ももち(仮名)…出して! 全部出して!」と、
その子(桃子似)の口に、再びティッシュの束を宛てがった。

どろり…と、その子(桃子似)の唇から白い粘液があふれ出た。

しばらくその子(桃子似)は焦点の定まらない目でオレを見ていたけれど、
ハッと我にかえったように、
「ゴメンね…。ゴメンねセンパイ…! 吐き出したりして…」と泣き声で言って、
ポロリと一粒涙をこぼした。

「ももち(仮名)が謝る必要なんか何もないよ。オレの方こそ…」
「ううん! もぉ(仮名)が…、もぉ(仮名)が…」

オレはたまらなくなって、その子(桃子似)の頭をギュッと胸に引き寄せた。

『ももち(仮名)…! オレのかわいいももち(仮名)…! 
もう絶対浮気なんかしないからな』と、その時は固く心に誓ったオレだった。

268名無し募集中。。。:2015/08/30(日) 23:16:52
処女の口に出しちゃうとかホンマ神展開やで…

269名無し募集中。。。:2015/08/30(日) 23:30:13
ももちが愛おしくてたまらない

270名無し募集中。。。:2015/08/30(日) 23:49:10
こんな彼女欲しかったわ

271名無し募集中。。。:2015/08/31(月) 00:59:13
いきなりゴックンはハードル高いよなやっぱw

272名無し募集中。。。:2015/08/31(月) 20:24:03
かわいい

273名無し募集中。。。:2015/08/31(月) 23:04:40
ももちんちん

2741:2015/09/01(火) 03:28:26
さて、そんなことがあった次の日。
オレは部室で真野ちゃん(仮名)と待ち合わせをしていた。

もちろんそれはデートのためではなく、
真野ちゃん(仮名)がカメラを買うのに付き合うためだった。

オレはちゃんと桃子(仮名)にも、誤解されないように、
事前に事情を話して了解をとっておいた。

「じゃあセンパイ、真野ちゃん(仮名)のためにいいカメラを探してあげてね」
と、桃子(仮名)は笑顔で答えてくれたけど…。

元をただせば、オレが真野ちゃん(仮名)を桃子(仮名)と間違えて、
エッチなことをしてしまったから、そのお詫びなんだよ…、などとは、
口が裂けてもいえることではなかった。

部室で待っていると、1限の授業が終わった真野ちゃん(仮名)が、
息を切らして入ってきた。

「おはようございます! それじゃ行きましょう!」と、真野ちゃん(仮名)は、
昨日のことをすっかり水に流してくれたような笑顔で微笑みかけてきたので、
オレは心底ホッとした。

2751:2015/09/01(火) 03:31:55
学校を出たオレと真野ちゃん(仮名)は、駅に向かって歩き出した。
オレは少し疑問に思っていたことを聞いてみた。

「ところで真野ちゃん(仮名)、お祖父ちゃんから借りたカメラあっただろ?
それなのに、何でわざわざ別のカメラ買うことにしたの?」

真野ちゃん(仮名)は少し照れ笑いを浮かべて答えた。
「あー、あのカメラ…、私にはちょっと大きすぎて重いし…、それに…」
「それに?」
「あんまりかわいくないんだもん」
「へ?」

天下の銘機・ニコンFをつかまえて、こともあろうに「かわいくないからイヤ」とは…。
『写真好きのお祖父ちゃんが聞いたら泣くなこりゃ…』と、オレは思った。

「それで…、どんなカメラが欲しいの?
やっぱりお祖父ちゃんがニコンのカメラ持ってるなら、レンズを借りたりできるから、
ニコンのカメラがいいとオレは思うけどね…」
「ハイ…」

「ニコンのフィルムカメラを買うなら、実は古いマニュアルフォーカスのヤツより、
比較的新しいAF機を買ったほうが、ずっと安いし性能もいい」
「そうなんですか?」
「部室にあるF90とか…、F100とか」
オレはその部室のカメラでこの間、道重さん(仮名)の痴態を撮ったことを思い出して、
急に恥ずかしくなってきた。

「部室のカメラですか…」 真野ちゃん(仮名)の表情が少し曇った。
「イヤなの?」
「私はちゃんと、自分の手でフィルムを巻き上げるようなカメラが欲しいんです」
「ほお」
「本を読んだら、初めて写真を学ぶには『FM2』っていうカメラがいいって書いてました」

2761:2015/09/01(火) 03:36:20
「FM2ね…」
オレは少し考えた。

「確かに、写真学校の生徒なんかには、FM2が勧められることが多いね」
「本にもそう書いてました」
「電池なしでも動くベーシックな機種だからね。でもオレはあんまり賛成しないな」
「どうしてですか?」
「FM2の露出計ってのは、+○-っていう表示の仕方で、
シンプルで壊れにくいけれど、初めて写真をやる人には、露出のズレが直感的にわかりにくい」
「はあ…」
「露出計は追針式のメーターの方が絶対にわかりやすいと思うんだ」

真野ちゃん(仮名)は少し考えるような顔をして、オレを見上げた。
「じゃあどの機種がいいんですか?」
「ニコンだったら、FM2の後継機種のFM3Aが当てはまるけど…、
この機種は比較的新しいからまだ高い。真野ちゃん(仮名)の予算は?」
「レンズもつけて2万円…、くらいです」
「ああ、それじゃ全然ムリだ」
「だったらどうすれば」
真野ちゃん(仮名)はちょっと怒ったように、頬っぺたを膨らませた。

「FM2の姉妹機種のFE2ってのがいいと思うけど、
これはあまり中古市場に数が出てこなくて、程度がいいのは2万じゃ買えるかどうか…。
あとはもっと旧型のFEなら楽勝だけど…、機能も劣るし、できれば勧めたくないな」
「じゃあ私は何を買えばいいんですか?」
「だから、掘り出し物の売ってそうな店に探しにいくのさ」

2771:2015/09/01(火) 03:38:59
(注)フィルムカメラの値段は、書いた当時よりも今は暴落してます。念のため。

2781:2015/09/01(火) 03:40:49
駅まで来て、山手線のホームに向かおうとすると、
「えっ? 地下鉄じゃないんですか? 中野に行くんでしょ?」と、
真野ちゃん(仮名)が聞いてきた。

「中野にも有名な中古カメラ屋さんはあるけど、そこに行くのは後にして、
もっと安く売ってるかもしれない店に先に行こう。もっとも、その店は、
掘り出し物もあるかわり、どうしようもないカスも置いてるから油断ならないんだけど…」
「はあ…」

オレたちは山手線の内回り電車に乗って、五反田までやってきた。
駅を降りて、ラブホテル街の方に真野ちゃん(仮名)をつれて歩いていくと、
「センパイ…、こんなところに本当にカメラ屋さんなんかあるんですか?」と、
真野ちゃん(仮名)が少し警戒したような顔つきで聞いてきた。

「ホントだって! ホラすぐそこ!」
オレの指差した先に、「さくらカラー」と書かれた古ぼけた看板に、
「保田写真機商会」との変色した文字が踊る小さな店があった。

2791:2015/09/01(火) 03:48:08
店の前まで来て、ドアを開ける前にオレは思わず深呼吸をした。
真野ちゃん(仮名)が不思議そうに、「どうしたんですか?」と聞いてきたので、
「気合い負けしないようにしないとな…」と、オレが答えると、
真野ちゃん(仮名)は尚更不思議そうな顔をした。

店のドアの横には小さく、「現金化即日 応相談」と、暗号のような張り紙がしてあり、
それを見た真野ちゃん(仮名)が、「これ…、どういう意味ですか?」と、
小首を傾げてオレに聞いてきた。

オレは返答に困りながら、
「まあ…、真野ちゃん(仮名)にはきっと一生縁のない話だよ」と答えると、
真野ちゃん(仮名)はバカにされたと思ったのか、一瞬ムッとしたような顔でオレを睨んだ。

オレはわざと知らん振りをしながら店のドアを開けた。
ギギ…、ときしむ音がしてドアが開いた。

細長いウナギの寝床のような店の奥のカウンターに、女主人が陣取っていて、
何やら大声で電話のやりとりをしていた。

「アンタねえ…、そんな眠たい話されたって、
ウチはただ『買い取ってくれ』って頼まれたから買い取っただけで、
いわば『善意の第三者』ってヤツだよ。そんなのアンタの会社が、
会員の管理をできてなかっただけの話でしょ? 何なら出るとこ出たっていいんだよ」

電話に向かって小気味よく啖呵を切っていた女主人は、オレたちに気づくと、
「あら、いけない」と言って、電話を一方的に切ってから、

「随分久しぶりじゃないの」と、ニヤニヤしながらオレを見上げてきた。

2801:2015/09/01(火) 03:50:47
正直言って…。
オレはこの人の押しの強さが苦手だった。

時折、美人に見えることもあるし、ブサイクにも見える顔立ち…。
年のころは30前後か…。

初めてオレがこの店にきたのは、2年前の新入生のころ。
当時4年生だった吉澤先輩(仮名)に連れてこられたのが最初だった。

何でもこの人、(吉澤さんは圭ちゃんと呼んでいた)は、
吉澤さんの高校時代の先輩筋にあたる人らしく…。

お父さんはレンズ磨きの職人として、かなり名の通った人で、
子供のころからそのお父さんにしごかれて、門前の小僧よろしく、
カメラの分解を当たり前のようにこなしていたのだという。

高校を出て勤めた大手カメラメーカーでは、会社の代表として、
技能オリンピックで金メダルを取ったほどの技術の持ち主。

お父さんがリタイアした後は、カメラメーカーを退職して、
この店を継いで切り盛りしている…、

というのが、吉澤さん(仮名)から聞いたこの人の情報だったけど。

今はもっぱら怪しげな金融流れ商品の売買が主な仕事で、
その合間の手慰みに、拾ってきたようなカメラを直して趣味で売っている…、
というようにオレには見えた。

2811:2015/09/01(火) 03:54:36
女主人は無遠慮にオレと真野ちゃん(仮名)をじろじろ眺めてから、
「アンタの彼女にしてはなかなかかわいいじゃないの」
と、ニヤニヤ笑った。

「いや…、そんなんじゃなくて…、うちのサークルの新人なんですよ…。
自分のカメラが欲しいっていうからつれてきたんです」
と、オレが慌てて答えると、

「ふーん…」
と、女主人は興味なさそうな返事をしてから、
「で、どんなカメラが欲しいの?ミラーレスかい?それともフルサイズかい?」
と、新品一眼デジカメが並んだ棚を顎でしゃくった。

真野ちゃん(仮名)はその棚を見ながら、
「価格はASK…。保証書なしならさらに激安…」と、
書いてあった商品カードを声に出して読んでから、
「新品なのに、何で保証書がないんですか…?」と、言ってはいけない疑問を口に出した。

「いちいちうるさい子だね…。アンタにゃ関係のない話だよ」
と、女主人がにべもなく答えて、真野ちゃん(仮名)はシュンとしてしまった。

2821:2015/09/01(火) 03:58:20
「いや…、この子が探してるのは中古のフィルムカメラなんです」
と、慌ててオレが答えると、女主人は「あっ、そう…」と、
尚更興味のなさそうな表情を浮かべてから、

「中古の銀塩はこっちの棚だから、勝手に見ていいよ」といって、
棚の鍵をオレに放ってよこした。

ニコンのコーナーを探すと…、
比較的きれいなFM2のブラックボディには1万6000円、
シルバーボディのFE2には1万7000円のプライスタグがついていた。
まあ…、相場より少し安い程度の値段だ。

『これに5000円の50ミリ1.4をつけて、2万1〜2000円か…。
値切れば予算の20000円には納めてくれるだろう…』と、オレは思ったけど、
それだけじゃあまり面白くないような気がしてきた。

真野ちゃん(仮名)が小首を傾げながら 「?」と、問いかけるように、
オレの眼を覗き込んできた。

「あの…」
オレが女主人に話しかけると、
女主人は、「ちょっとこれ終わるまで待って!」と言ったまま、何か手元を動かして、
ジャンク品のカメラでも分解している途中のようだった。

2831:2015/09/01(火) 04:00:38
それから数分…。
女主人がカメラの分解を続けるのを、オレはじりじりとしながら待った。
ようやくキリのいいところまで済んだのか、
「で? 欲しいカメラは見つかったの?」と、
女主人はオレと真野ちゃん(仮名)を等分に見ながらいった。

オレが「FM2か…、できればFE2が欲しいんですけど」と答えると、
「FM2もFE2もそこにあったじゃない」
と、女主人が顎をしゃくった。

「実は予算が…」と、オレが言い出すと、
「いくらなら出せるの? 少しくらいなら勉強してあげるわよ、ウフフ」
と、女主人が笑った。

「…一万円」
「…は?」
「一万円です」
「…ちょっとよく聞こえなかったんだけど、今なんて言った?」

女主人の表情が見る見る険しくなった。

2841:2015/09/01(火) 04:03:49
真野ちゃん(仮名)が慌てて何か言おうとするのを制して、
「予算は…、レンズも込みで、ただの1万円です」とオレは重ねていった。

「アンタねぇ…」
呆れたといわんばかりの口調で、女主人が言い始めた。
「カメラには相場ってもんがあることくらい分かるでしょ、
そんなに安いカメラが欲しかったら、イチかバチかで、ヤ○オクに出てるカメラでも、
落札すればいいじゃないの? 運がよければ当たりを引くかもよ」

オレは『気合負けするな』と、心に念じながら言い返した。
「イチかバチかで良ければカメラ屋なんかいらないし、
相場どおりのカメラが欲しけりゃ量販店に行きますよ。
オレはこの店にしかないようなカメラが欲しいんですよ」

真野ちゃん(仮名)はオロオロしながらオレたち2人を眺めていた。

「『この店にしかない』? アンタ…、言うじゃないのよ。ちょっと待ってなさい」

そういうと女主人は店の奥に引っ込んで、なにやら棚の中をがさごそと探っているようだった。

『圭ちゃん(仮名)に何か頼みごとするには、挑発するのが一番』との、
吉澤先輩(仮名)から聞いた言葉だけが頼りだった。

2851:2015/09/01(火) 04:08:39
「お待たせ…」

そういって女主人がカウンターの上に置いたのは…、
まるで新品と見まがうほどのピカピカのブラックボディーのFE2に、
レンズはAFニッコールの35-70ミリF2.8S…。
20年ほど前の「名玉」といっていい、確か当時10万円近くはした高級レンズだった。
FE2のボディには、少々使用感はあるものの、ご丁寧にモータードライブMD-12まで装着されていた。

「こ…、これは?」
訝るオレに、「まあ…、手にとって見てごらんよ」と女主人は言って、ニヤリと笑った。

オレはカメラを手にとってレンズを外したり裏蓋を開けたり、
シャッタースピードを変えてシャッターを切ったりと、いろいろ試してみた。
そのうちに、このカメラは見かけはきれいだけど、いろいろとおかしなとこがあるのに気がついてきた。

「確かFE2のシャッター羽根は、ハニカム構造のチタン製だと思ってたけど…、
このカメラはプレーンなアルミ羽根だ。それに露出計連動レバーも、どういう訳か可倒式だ…」

オレのつぶやきを女主人はニヤニヤしながら聞いていた。

「ひょっとしてこのカメラ…、何か2個1とか3個1とかして改造したようなものですか?」
オレがそう尋ねると、

「あら…、アンタひょっとして私の昔のあだ名知ってるの?」
と、女主人が不気味に笑った。

2861:2015/09/01(火) 04:12:04
そういえば、前に吉澤先輩(仮名)から聞いたことがあったのを思い出した。

『ニコイチの圭ちゃん』

この人が某カメラメーカーのプロサービス部門に勤めていた頃、
本来はメーカーとして「修理不能」と断るべき状態のカメラでも、
勝手に修理を引き受けてはワンオフの部品を手作りして直してしまったり…、
わがままなプロの要望に応じて、規定にない改造をホイホイと引き受けて施したり…、
時にはそのためにカメラを2個1して組み上げたり…、
好き放題やっていた結果、ついたあだ名がこれだったのだと…。

実はこの話には続きがある。

そんなことを勝手にしてたのが会社にバレて、この人は謹慎処分を受けたのだけど、
それを聞いた大御所のプロカメラマンが、
「ニ○ンで一番の現場技術者を処分するとは何事か」と、会社の偉い人に直接ねじ込んだのという。

「ニコイチ」というのがどちらの意味だったとしても…、
目の前にあるFE2は、この天才マッドエンジニアが手慰みに組み上げた、
ある意味至高の一台なのだろう…。

そう考えると、オレは思わず背中がゾクゾクとしてきた。
『確かにこの店にしかない一台だなこりゃ…』

2871:2015/09/01(火) 04:18:41
「お察しの通り、このFE2は2個1…、いや3個1したものよ」
ニヤニヤ笑いながら女主人が話し始めた。

「車に踏まれたFM3Aと、海没したFE2と、ジャンクのFEが材料。
原価は…、500円ってとこかしらね。もちろん、手間賃を入れたら10万じゃきかないけれど…。
とはいえ、こんなのただの遊びだから、売り物にはできないわ。私が自分で使おうと思ってたのさ。
だけど、カメラとしての精度はその辺のプロ用カメラなんかよりは断然上。
なんてったって、このあたしが組み上げたんだから」

そう話す女主人を、オレは呆気にとられて見つめてから、もう一つの疑問を尋ねた。
「レンズはどうしたんですか?」

「アンタ、このレンズのことは知ってる?」

「は…、はい…。昔はプロも愛用した名玉だったとか…」
「そう…。いいレンズなんだけど…、このレンズには重大な欠点があったのさ。
使ってるうちに、中玉が白く曇ってくるのよ」

「聞いたことあるような…」
「分解清掃したくらいじゃ落ちないのよ。だからメーカーでも、
仕方なく中のレンズユニットを丸ごと交換して対応してたんだけど…、もうその在庫もない…」
「つまり…、直せないレンズと?」

「普通はね…。アンタ、うちの父さんのことは知ってる?」
「吉澤さん(仮名)に聞きました。レンズ磨きの名人だったとか…、あっ!」

「あたしもその腕を受け継ぎたいと思ってね…。父さんの指導で、
研磨してみたのがこれ。初めてやったけど、父さんが『うまくできてる』って言ってたから、
きっと精度は出てるんだと思う」

オレはもう一度、そのカメラにレンズを取り付けて、
ドアの外に向けてピントを合わせてみた。
ファインダー越しにみただけでもハッキリわかる、線のシャープさに一瞬ホレボレとした。

「このカメラとレンズを…、合わせて一万円で売ってくれるんですか?」
「そうさねえ…」

2881:2015/09/01(火) 04:21:19
「真野ちゃん(仮名)! 買え! これは絶対に買いだ!」
とオレは叫んでから、『この人の気が変わらないうちに早く』と、心の中で付け足した。
「真野ちゃん(仮名)! 真野ちゃん(仮名)!… あれっ…?」

慌てて叫ぶと…、オレの横にいたはずの真野ちゃん(仮名)は、
いつの間にか背後の中古カメラの棚の前に立っていて、しきりに中を覗き込んでいた。

オレが思わず舌打ちをしながら、真野ちゃん(仮名)を呼ぼうとしたのと同時に、
「センパイ…、このカメラなんですけど…」と、
真野ちゃん(仮名)が棚の中のカメラを指差して聞いてきた。
「このカメラ…、コロコロしててすごくかわいいの」

オレはもう一度舌打ちをして真野ちゃん(仮名)に、
「いや、今こっちのカメラの話してるのに…、それどころじゃないでしょ…」
と、言いかけたけど、
真野ちゃん(仮名)は、「ねえ、ホントにかわいいの。見てください」と、
オレの腕を強引に引っ張った。

仕方なくケースの中を見ると…。
真野ちゃん(仮名)が指差した先には、「EXA 1C」と書かれた、
見るからにプラスチッキーで、妙に腰高のおどけたスタイルのカメラが置かれていた。

2891:2015/09/01(火) 04:23:08
こんなカメラは見るのも初めてだった。
「EXA…? 『エクサ』って読むのかな? 昔のソ連とか東ドイツっぽい感じ…。
『エクサ』ってからには、『エキザクタ』と関係あるのかな…?」

オレがそうつぶやくと、背後から、「ご名答」と言いながら、
女主人が棚のカギを開けてそのカメラを取り出し、真野ちゃん(仮名)に手渡した。

「手っ取り早く言えば、エキザクタの末裔だわ」と女主人が答えた。

真野ちゃん(仮名)はひとしきりカメラを弄り回した後、
「センパイ! これ! 私、このカメラほしいです!」と、眼を輝かせながら言った。

2901:2015/09/01(火) 04:28:38
オレは無言で真野ちゃん(仮名)からそのカメラを奪い取って、調べてみた。

上から覗く左右逆像のウエストレベルファインダー。
ボディ前面の使いにくそうなレリーズボタン。
最速175分の1秒などという、ふざけた低速度のミラーシャッター。

プライスタグをちらりと見ると、「1万8000円」と書いているのが見えた。
「やめろ、真野ちゃん(仮名)…。ニコンに比べりゃ、こんなものはクズだ…」
オレがそういうと、真野ちゃん(仮名)はプーッと頬っぺたを膨らませた。

「まあ…、こういうカメラにはこういうカメラの味があるけどね」
女主人がそういうと、真野ちゃん(仮名)は目を輝かせて、「ですよね!」と言って、
オレを睨んだ。

「保田さん(仮名)まで…、煽るのやめてくださいよ。
だいたいこのカメラについてるレンズも…、何すかこれ…?
『ドミプラン』なんて、聞いたこともねえし」

オレがそういうと、女主人は、
「あら、ドミプランだって、アンタがいうほど悪いレンズじゃないけど、
そんなに言うなら、こっちのテッサーに替えてやってもいいよ」

と言いながら、隣の棚から「ツアイス・イエナDDR」と銘のある、
テッサー50ミリf2.8を取り出してきた。

「何ですか『テッサー』って」と、目を輝かせて聞く真野ちゃん(仮名)に、
「世界の標準レンズのお手本になった、ドイツの歴史的名レンズ…」と、オレは力なく答えた。

「このテッサーなら、さっきのニッコールにだって、シャープさでヒケはとらないよ。
もっとも…、そりゃ順光だけの話で、昔のレンズだから逆光は乱反射して勝負にならないけど」
と女主人は笑った。

真野ちゃん(仮名)は、「これ欲しい!欲しい!欲しい!」と、
駄々っ子のようにオレの腕を引っ張ってきた。

「そんなこと言ったって…、どう考えてもニコンの方が…」と、なおもオレが言うと、
「じゃあニコンはセンパイが買えばいいじゃないですか。私はこっちを買います!」
と、真野ちゃん(仮名)が意を決したように言った。

2911:2015/09/01(火) 04:30:35
真野ちゃん(仮名)に「センパイが買えば」といわれて、
オレは思わず、「うっ…」と言葉に詰まってしまった。

しかし…。
よくよく考えてみれば、これは確かに悪くない買い物…。

キヤノン派のオレにとっても、マニュアルフォーカスのニコン一眼レフは、
興味がないといえば嘘になる存在だ。

今なら名レンズとモータードライブまでついて、1万円で手に入るというのだ。
悪い話では全然ない。

財布の中を覗くと、免許証の裏に、非常用の一万円札を小さく折りたたんで、
入れてあったのを思い出した。

「買った!」
オレはそう言って、一万円札を開きながら、カウンターの上に叩きつけた。

「ちょっと待ちなさいよ」
と女主人は冷ややかに言った。

「へ?」と、オレは出鼻をくじかれたように叫んだ。

2921:2015/09/01(火) 04:33:07
「さっきの一万円ってのは、新人の女の子がカメラ欲しいっていうから、特別に提示した価格なのよ。
アンタに一万円で売るかどうかは、もう少し考えさせてもらうわ」
と、女主人は冷ややかに言った。

オレは黙ってしまった。

「それからアンタ…」と、次に女主人は、真野ちゃん(仮名)を見ながら言った。
「は…はい」と、答える真野ちゃん(仮名)に、
「アンタにはこのエクサ売ってもいいけど…、もし使いこなせなくてもて余したら、
カメラがかわいそうなんだわ」と、あくまで冷ややかな女主人。

「そんなことありません!頑張って使います!」と、真野ちゃん(仮名)。
「フフン」とせせら笑う女主人。

沈黙が流れた。

2931:2015/09/01(火) 04:35:31
オレと真野ちゃん(仮名)が黙り込んでいると、
「よし!決めた!」と、女主人が唐突に叫んだ。

「あんたたち2人とも、あたしが唸るような写真を1カ月以内に、
そのニコンとエクサで撮ってきなさい。あたしが満足したらその時に、
2人ともそれぞれ1万円で売ってあげるわ。ただし、ロクな写真が撮れなかったら、
カメラを返してもらうから…。今日のところは、それぞれカメラ持って帰りなさい」

真野ちゃん(仮名)は目を輝かせて、「ハイ! ありがとうございます!」と叫んだ。

「『ありがとう』って、まだ売ると決めたわけじゃないわよ」
との女主人の声に見送られながら、オレたち2人はその店を後にした。

2941:2015/09/01(火) 04:38:44
まったく…。
おかしなことになったもんだ。

駅に向かって歩いていると、真野ちゃん(仮名)が不安げに、
「でも、あの人を納得させられるような写真なんか…、あたしに撮れるかしら…」
と、少し不安そうにオレを見上げてきた。

「そうさなあ…」
オレは少し考えてから答えた。

「あの人はプロの作品とかもいっぱい見てるから、目は相当肥えてると思うけど、
別にオレたちにプロのような技術を求めている訳じゃないと思うんだ…。
何ていうか、被写体への愛情とか、自分の思いみたいなものを表現できれば、
それでいいんじゃないかと思うんだけど…」

オレがそう言うと、真野ちゃん(仮名)は「そうですね…」と言って、
少し考え込むような仕草をみせた。

オレは歩きながら、道路脇の古い商店なんかにピントを合わせて、
FE2改のシャッターを空切りしてみた。

シャコンシャコン…、と金属質の残響を立てながら、モータードライブが作動した。

しかしこのカメラ、よくよく触ってみると、
普通のFE2より動作がかなり軽快な感じがした。
モータードライブの巻上げも通常より明らかに速い。さらにミラーの戻りも速いのか、
ファインダーの像消失が短く、視覚的なキレの良さがはっきりと感じられた。
あちこちに特別なチューンが施してあるのは明白だった。

オレはすっかりこのカメラが気に入ってしまった。

横を見ると、真野ちゃん(仮名)もオレと同じ気持ちなのか、
歩きながらしきりにエクサのファインダーを覗き込んで、空シャッターを切ったりしていた。

2951:2015/09/01(火) 04:40:57
「ねえセンパイ…」
真野ちゃん(仮名)がオレを上目遣いに見ながら言ってきた。

「ん?」
「何か私、今すごく写真撮りたい気分です」
「ああ…、オレも」

思わずオレと真野ちゃん(仮名)は、一瞬見つめ合って照れ笑いをした。
「真野ちゃん(仮名)、午後からはヒマなの? 何か撮りにでかけようか?」
「私も今、それ言おうと思っていたところです!」

「何を撮りに行こうか?」と、オレが問いかけると、
真野ちゃん(仮名)は「そうですね…」と言ったきり、考え込んだ。

「難しく考えなくても、自分の心の原点みたいな風景を撮りに行くのがいいと思うんだ。
オレならさしずめ、寺とか神社とかなんだけど…」と、オレがいいかけると、
「あっ! そうだ!」と真野ちゃん(仮名)が叫んだ。

「子供の頃、ちょっとだけ住んでいた団地があるんです。変わった形の塔があって…。
今まですっかり忘れていたけど、いま急にそこに行ってみたくなりました」
熱っぽい口調で真野ちゃん(仮名)が言った。

「場所は分かるの?」
「大体なら…」
「よし、とりあえず行ってみよう」

2961:2015/09/01(火) 04:44:46
山手線で新宿まで戻ったオレたちは、京王線の電車に乗り換えて、
調布の駅までやってきた。

真野ちゃん(仮名)の微かな記憶によると、
ここからバスに乗り換えて団地に行ったのだという。
「団地の名前とかは分からないんですけど…、結構大きな団地だったと思います…」

もともと田舎者のオレは、この辺りの地理には疎かった。
詰所に居た駅員に、「この駅から出てるバスの沿線に、変わった塔のある団地はありませんか」
と聞くと、中年の駅員は「塔? 多摩川住宅の給水塔のことかな?」と、独り言を言って、
別の駅員に確かめた後、「南口からバスが出てるから、それに乗ってください」と、
やさしく答えてくれた。

バスに揺られてしばらく行くと、突然真野ちゃん(仮名)が大声を出した。
「あっ、あれです! あの塔です!」
給水塔なのか…、確かに変わった形の塔が、あちこちに立っている団地だった。

2971:2015/09/01(火) 04:48:23
バスを降りると、真野ちゃん(仮名)が早足で団地のほうに駆けて行き、
オレも慌ててその後を追った。

「私が住んでた建物…、どの辺だろう?」と、真野ちゃん(仮名)が首を傾げた。

オレは黙って辺りを見回した。

昭和の気配が濃厚な、背の低い団地の群れ。
レトロな感じの給水塔と、最近の団地にはない遊具などのゆったりとしたスペースが、
妙にフォトジェニックな感じがした。

真野ちゃん(仮名)はそんな遊具や給水塔や、建物の入り口の前に佇んでは、
何かを思い出すように、エクサのファインダーを覗き込んでシャッターを切っていた。
そんな真野ちゃん(仮名)が妙に大人っぽく見えて、
オレは思わず自分のFE2改のフレームに真野ちゃん(仮名)をおさめて、
モータードライブを連写した。

結局真野ちゃん(仮名)の住んでいた建物は分からなかったけど、
真野ちゃん(仮名)は満足そうな微笑みを浮かべていた。

オレたちは無言のまま、多摩川の堤防まで歩いていった。
オレの前を歩く真野ちゃん(仮名)が、何か歌を口ずさんでいるのか…。
優しい歌声が風に乗って聞こえてきた。

「♪止まらないこの気持ち、受け止めて…」

<イメージ動画>
https://www.youtube.com/watch?v=NYzZz4CwfZQ&ob=av3e

2981:2015/09/01(火) 04:56:10
一応、これで完。

本当はこの後にすぐ第二部が始まって、
このカメラにある謎が持ち上がり、その謎を探る旅が始まる、
っていうストーリーで途中まで書いていたんだけど、
その矢先に「みんなエスパーだよ」が始まって、
どうにも心が折れて、中断してしまったままなのです。

299名無し募集中。。。:2015/09/01(火) 05:06:43
「My Days for You」キター
美少女と古い機械の組み合わせって好きです
美勇伝の「なんにも言わずに I LOVE YOU」MV とか傑作だと思う

3001:2015/09/01(火) 06:01:31
いま古いテキスト見直していたら、第二部は一応完結してて、
第三部の途中で終わってた。

続きを上げられるか検討してみる。

301名無し募集中。。。:2015/09/01(火) 07:16:45
乙です
第二部も楽しみにしてます

302名無し募集中。。。:2015/09/01(火) 12:24:45
え続きあんの
それはもう上げるしかないでしょう

303名無し募集中。。。:2015/09/01(火) 17:47:01
桃子似と結ばれる時を楽しみに待っていた数年前の気持ちを思い出してきた

304名無し募集中。。。:2015/09/01(火) 20:11:42
>>277
親切w

あー、吉澤センバイっていたよなー
五クり

3051:2015/09/02(水) 03:25:06
以前もそうだったけど
狼でスレ続けると結局ああいう雰囲気になってくるんだよな
そろそろ狼は引き払ってこっちで続けようかと真剣に考えちゃう

3061:2015/09/02(水) 03:28:11
復刻版の方は2部を読み返してみたら結構な分量があったけど
話が全部3部への前フリだから3部以降を書くことを前提にしないと載せる意味がないような気もする

問題は3部の途切れたところから先を再び書く気力があるかどうか
もうちょっと考えさせてください
新たに書くとすれば本作と並行はちょっときつい

307名無し募集中。。。:2015/09/03(木) 09:24:52
気長にまっとるでー

308名無し募集中。。。:2015/09/03(木) 18:25:28
「カメラにある謎」ってのがそそるね
ビブリオ古書堂みたいな感じで古物をめぐる冒険譚って好きだな

309名無し募集中。。。:2015/09/04(金) 05:12:17
おぱょ

310名無し募集中。。。:2015/09/04(金) 20:11:36
こんばっきゅん

3111:2015/09/04(金) 23:07:19
そう言ってもらえるとうれしいやね
とりあえず今手元にあるところまでは載せることにしようかな
今日はムリだけど近日中に

312名無し募集中。。。:2015/09/05(土) 06:04:05
そいつは楽しみですよ
ぼちぼちと頼みます 保全は任せろw

313名無し募集中。。。:2015/09/05(土) 17:35:04
ほ!

3141:2015/09/06(日) 02:49:28
ありがとうございます。
まあ、でも、新狼は保全とかしなくても大丈夫じゃないかと思います。

3151:2015/09/06(日) 02:57:22
そんな真野ちゃん(仮名)との不思議なデート?があってから、一週間が過ぎた。

オレと桃子(仮名)との間は…、桃子(仮名)のバイトが再び忙しくなってしまい、
すれ違うことが、また多くなってきてしまっていた。

「おい、新しいバイト、入ったんじゃなかったのかよ」と、オレは憤慨したけれど、
「いやー、新しい子は高校生だから…、
試験時期とか、あんまりバイトに入れないみたいでね…」と、
その子(桃子似)は言い訳したけれど…、オレはもう、
その子(桃子似)を抱きたくて抱きたくて、たまらなくなってきていた。

ところで…

話は全然変わるけれど、うちのサークルには年に一度、
現役とOBが一緒に酒を飲む、「OB総会」という名の懇親会があるのだが…、
今年はOB会長の寺田さんの意向で、例年より早く実施することになっていた。

学生側の幹事は、本来二年生がやるべきなのだけど、昨年に引き続き、
どういう訳か、またオレが押し付けられてしまった。

(注・過去スレにそういう話が出てきていたのです)

寺田さんたちOBとの、「打ち合わせ」と称する事前の飲み会は、
正直億劫だったけど、まあ、タダで飲み食いができると思えば、悪くもなかった。

というのも、OB総会は多人数となるため、
毎年ホテルの宴会場を借りてやってるけれど、事前の「打ち合わせ」の時は、
下見という名目で、ホテル側がタダでメシを食わせてくれたりするからだ。

まあ、そんな役得でもなければ正直やっていられない仕事だ。

3161:2015/09/06(日) 02:59:20

「打ち合わせ」には、OB側から寺田さん(仮名)とまことさん(仮名)が出席する予定で、
現役側からも、オレのほかに誰かもう1人、という話だった。

しかし…。
寺田さん(仮名)たちが敬遠されているのか、それともオレの人望がないのか、
サークルのみんなに声をかけても、参加したいという人は現れなかった。

オレは桃子(仮名)にも声をかけたのだが…。
「いやー、その日はバイトもあるし…、仮にバイトをずらせたとしてもさ…、
私たち2人でタダでご馳走になったりしたら、ちょっと公私混同っぽいんじゃないかな…」と、
ごもっともな指摘をされて、オレは仕方なく諦めたのだった。

どうも現役側はオレ1人での参加となりそうで、気が重くなってきた。

3171:2015/09/06(日) 03:03:34

「打ち合わせ」の当日の夕方近く、
待ち合わせ場所の部室にいくと、桃子(仮名)が1人で椅子に座っていて、
これからバイトにでも行くという感じで支度をしていた。

「あっ、センパイどうしたの? 珍しくスーツなんか着て…。
あっ、そうか。今日はホテルで、寺田さん(仮名)たちと会食の日かぁ」と、
その子(桃子似)はオレを見かけると、ニコニコと話しかけてきた。

その子(桃子似)と会うのは数日ぶりだった。
オレは会った瞬間、その子(桃子似)を抱きたい気持ちが高ぶってきて、
無言でその子(桃子似)を抱き寄せた。

「あっ、ちょっと…!」
慌てたように逃げようとするその子(桃子似)を、
オレは、「もぉ(仮名)…、会いたかったよ…」と、力を入れて抱きしめた。

「ちょっ…、ダメ…! 今はダメ…!」と、その子(桃子似)が押し殺したような声で、
囁いて逃げようとしたので、オレはますます興奮しながら、
「何がダメなんだよ…。いいから…、ちょっと髪の匂い嗅がせろ…」とか言いながら、
その子(桃子似)の頭に顔を埋めた。

「ダメ…。今…、中に、人が…」そう言って逃げようとするその子(桃子似)に、
「中? 中って何だよ?」と聞き返した時、ガタンと音がして、暗室の中から人が出てきた。

呆れたような顔をした道重さん(仮名)と、顔を赤くした真野ちゃん(仮名)だった。

3181:2015/09/06(日) 03:09:36
「あっ、道重さん(仮名)…」
オレが慌ててその子(桃子似)から離れると、
道重さん(仮名)はしばらく無言でオレたちをみつめてから、
「呆れた…」と、冷ややかな声で言った。

「あんたたち、お盛んなのは結構だけど、少し場所とか考えてからイチャイチャしなさいよ」

「は…、はあ」とオレが答えると、その子(桃子似)が慌てたように、
「ごめんなさい! ごめんなさい!」と、道重さん(仮名)に謝り始めた。
真野ちゃん(仮名)は、顔を真っ赤にしたまま無言だった。

「ところで道重さん(仮名)…、何で暗室なんかにいたんですか?」
と、オレが聞くと、道重さん(仮名)は、
真野ちゃん(仮名)がさゆみ(仮名)の写真撮ってくれたから、
現像するのを一緒に見てたのよ。悪い?」と、ご機嫌斜めのままで答えてきた。

「そうですか…」と言って、オレは真野ちゃん(仮名)を見た。

あのカメラを手に入れた日から、真野ちゃん(仮名)はほとんどいつも欠かさず、
カメラを持ち歩いては、いろんなものを撮りまくっているようだった。

「ちょっと見せてください」と言って、オレは道重さん(仮名)の手から、
印画紙の束を奪い取るようにして、写真を見た。

教室の前の廊下で、斜光線を浴びながら微笑む道重さん(仮名)の姿が、
柔らかいトーンで写されていて、
『真野ちゃん(仮名)、腕を上げたな…』と、オレが思っていると、
横から覗き込んできた桃子(仮名)が、「わあ…、かわいい」と、声を上げた。

その声に機嫌を直した道重さんが、「やっぱりモデルがいいからかしらね。
真野ちゃん(仮名)もうまくなったわよね」と、微笑んだ。

真野ちゃん(仮名)が、「は…、はい」と、困ったように愛想笑いを浮かべた。

3191:2015/09/06(日) 03:13:08
俺は、保田さんとの約束を思い出した。

かくいうオレも、あれからいつも例のFE2改を持ち歩いて、
いろんなものを撮っていたけれど、未だ決定的な自信作は撮れないままでいたのだった。

真野ちゃん(仮名)の方も、既に例の団地で結構いい写真を撮っていたようだったけれど、
満足のいくまでいろんなものを撮ろうということなのだろう、とオレは思った。

「ところで、○○クン(オレ)は何でスーツなんか着てるの? もう就活?」
と、道重さん(仮名)が聞いてきた。

オレは慌てて、「いや 寺田さん(仮名)たちとの飲み会ですよ」と、答えながら、
「そうだ。もし2人ともこの後空いていたら、一緒にいきませんか?」と、誘ってみた。
桃子(仮名)がチラリと、オレを睨んだような気がした。

「私はこのあと用事がありますから…」と、真野ちゃん(仮名)が言った。
オレが道重さん(仮名)の方を見ると、道重さん(仮名)は、
「さゆみ(仮名)は別に用事ないけど…。えーっ…? 寺田さん(仮名)たちと…?
遠慮しとくわー」と、素っ気無い感じで答えてきた。

何故だか桃子(仮名)がホッとしたような顔でオレを見てから、
「じゃあ、もぉ(仮名)はそろそろバイト行ってくる」と言って、
道重さん(仮名)たちに挨拶してから、部室を出て行った。

3201:2015/09/06(日) 03:16:22
真野ちゃん(仮名)は暗室に戻って、現像液などを片付け出した。
ジャージャーと水の流れる音が暗室から響きだした。

道重さん(仮名)は椅子にどっかりと座り込んで、
「それで、今日はどこにご飯食べに行くの?」と、オレに聞いてきた。

「はぁ…。○○ホテルですけど…」と、新宿の高級ホテルの名を挙げてから、
「道重さん(仮名)、やっぱり一緒に行きませんか? 在校生オレ1人なんですよ」と、
オレはもう一度問いかけてみた。
「フレンチですよフレンチ」

「そうねえ…」
道重さん(仮名)がじらすようにオレの眼を覗き込んできた時、
部室のドアがいきなりガチャリと開いた。

寺田さん(仮名)?
と思いきや、部室に入ってきたのは、
オレが一年生の時に四年生だった、吉澤先輩(仮名)だった。

「よっ」と、やる気のない感じの声を上げながら部室に入ってきた吉澤さん(仮名)に、
「あーっ、吉澤さん(仮名)! お久しぶりですー!」と、
道重さん(仮名)が、いつもより1オクターブ高い声を出して応じた。

3211:2015/09/06(日) 03:19:33

「シゲさん(仮名)じゃんー。元気だったー?」と、
吉澤さん(仮名)が笑顔で応じた。

「吉澤さん(仮名)、こんにちはお久しぶりです」と、オレが挨拶すると、
吉澤さん(仮名)は、初めてオレに気づいたようにこっちを見ながら、
「あっ、○○クン(オレ)。元気だった?」と、微笑んだ。

「あの…、ひょっとしてOB会の下見の…?」と、オレが聞くと、
「いやー。今日のお昼に寺田さん(仮名)からいきなり電話かかってきてさー…、
『オレたち行けなくなったから代わりに行ってくれ』って。去年もそうだったけど」
と、吉澤さん(仮名)は説明してから、心なしか頬を少し赤らめたような気がした。

そういえば…、去年の下見の時…。
オレと吉澤さん(仮名)は酔った勢いも手伝って…、
吉澤さん(仮名)の部屋で体を交えあったのだった。

(注・過去のシリーズにそういう話があったのです)

その時のことを思い出すと、オレは急に自分の顔が赤くなっているんじゃないかと、
気になりだして黙り込んだ。

吉澤さん(仮名)もオレと同じ気持ちになったのか、一瞬黙り込んだ。

そんなオレたちを道重さん(仮名)が不思議そうにキョロキョロと見回した。

3221:2015/09/06(日) 03:19:56
祝・よっすぃー婚約

323名無し募集中。。。:2015/09/06(日) 19:01:43
おめでたいね

324名無し募集中。。。:2015/09/06(日) 22:51:49
とは言っても保全的に何かを書いてもいいかな

狼の全寮制スレ落ちてた…

3251:2015/09/07(月) 03:59:38
会社帰りだからか、黒いスーツ姿の吉澤さん(仮名)は、また一段と綺麗だった。
心なしか、去年よりまたちょっと痩せたんじゃないかと思いながら、
オレは一瞬、見とれてしまった。

「それで…、在校生側は○○クン(オレ)だけ?」
という吉澤さん(仮名)の問いかけに、オレはハッと我にかえった。

「は…、はあ…」と答えようとした時、道重さん(仮名)が、
「さゆみ(仮名)もです! さゆみ(仮名)も行きます!」と、大きな声を上げた。

その時、暗室から真野ちゃん(仮名)が戻ってきた。
「えっと…、この子は?」と聞く吉澤さん(仮名)に、
「新しく入った2年生の真野ちゃん(仮名)です!」と、道重さん(仮名)が答えると、
真野ちゃん(仮名)が、「真野恵里菜(仮名)です。よろしくお願いします」と、
丁寧にお辞儀をした。

「真野ちゃん(仮名)って言うの? よかったらあなたも来ない?
4人で予約してあるから、1人分席が余るんだ」と、吉澤さん(仮名)が問いかけると、
真野ちゃん(仮名)は、「ハイ!ぜひ!」と笑顔で応じた。

「あれっ? 真野ちゃん(仮名)用事あったんじゃ…?」と、オレが聞くと、
「だってさっきは…、センパイ(オレ)と2人っきりじゃ、
嗣永さん(仮名)に悪いと思って、遠慮したんです…」と、
真野ちゃん(仮名)が困ったような顔で答えた。

3261:2015/09/07(月) 04:06:56
学校の裏のバス停からバスに乗って、4人でぞろぞろと新宿西口のホテルに向かった。

チュニックにジーンズという、ラフな格好の道重さん(仮名)は、
「吉澤さん(仮名)や○○クン(オレ)はスーツ着てるのに、
さゆみ(仮名)、こんな格好でいいのかしら」と、しきりに気にし出し、
ポロシャツにミニスカート姿の真野ちゃん(仮名)も、「私もですう…」と、
困ったように言ったけれど、吉澤さん(仮名)は、「別にいいんじゃん、そんなの」
と、全く意に介さないように答えた。

ホテルの宴会場の受付に行き、係の人とOB総会当日の打ち合わせを済ませた後、
レストランに案内された。

木目の壁の雰囲気がオーセンティックな感じの、メインダイニングだった。
「私、こういうとこくるの初めてです」と、真野ちゃん(仮名)が小声で緊張気味に囁いた。

4人掛けの大きなテーブルに、オレとその横に真野ちゃん(仮名)。
向かい側に、吉澤さん(仮名)道重さん(仮名)が並んで座った。

3人の顔を見回して、オレはハタと気づいた。
ここにいる女の子たちは…、

去年激しく体を求め合った先輩と、
ついこの間、アロマオイルにまみれながら、先っぽまで入れた先輩…、
それに、最近、間違って手マンまでしてしまった後輩…。

ひょっとして、またしても地雷を踏もうとしているんじゃないのかオレ…。

「どうしたの○○クン(オレ)? 顔色悪いよ」と道重さん(仮名)が言った

3271:2015/09/07(月) 04:10:08
ワインで乾杯して、食事が始まった。
吉澤さん(仮名)が、「ところでさっき、真野ちゃん(仮名)は暗室に入ってたけど、
フィルム現像なんかしてるの?」と、ナイフとフォークを動かしながら話しだした。

「ハイ!そうなんです!」と、元気よく答える真野ちゃん(仮名)。

「へえ…。どんな写真撮ってるの?」と、吉澤さん(仮名)が重ねて聞くと、
「さゆみ(仮名)の写真撮ってもらったんです!」と、道重さん(仮名)が、
横から答えて、鞄の中をごそごそと探り、さっきの六つ切りのポートレートを取り出して、
吉澤さん(仮名)に見せた。

「へえ…。なかなか上手じゃん…」と、少し嬉しそうな吉澤さん(仮名)と、
照れ笑いを浮かべる真野ちゃん(仮名)。

『そういえば、女子でフィルム写真の現像までやってたのは、
吉澤さん(仮名)が卒業した後は、誰もいなかったっけ…』と、オレは思い出した。

「ところで○○クン(オレ)はどんな写真撮ってるの?
相変わらず、お寺とかばっかり?」と、吉澤さん(仮名)はオレを少しからかうように聞いてきた。

「は…、はあ」とオレが愛想笑いをしようとした時、道重さん(仮名)がいきなり、
「○○クン(オレ)、最近結構女の子の写真とか撮ってるんですよ。
さゆみ(仮名)もこの間撮ってもらいました」と言い出して、鞄の中をごそごそと探り出した。

「あっ、ちょっと!」と、オレが制止するより早く、道重さん(仮名)が臆面もなく、
この間のオレが撮った写真を取り出して、テーブルの上に置いてしまった。

3281:2015/09/07(月) 04:14:58
「どれどれ…」と、言いながら覗きこんだ吉澤さん(仮名)と真野ちゃん(仮名)は、
テーブルの上の写真を見て、そのまま固まった。

2、3秒してから、真野ちゃん(仮名)が、「うわぁ…、すごく綺麗…」と、
ため息をつきながら言った。

「センパイ(オレ)、やっぱり私なんかより写真ずっと上手い…」と、
真野ちゃん(仮名)は、ちょっとボーッと上気した顔をして、オレを見上げて言った。

『真野ちゃん(仮名)…、これがどんな写真か全然気づいてないな…』と、
オレは一瞬ホッとしかけたけど、吉澤さん(仮名)の冷ややかな視線に遭って、
すぐにたじろいだ。

「あのさあ…」
一瞬頬を赤くさせた吉澤さん(仮名)が、何か言いかけたけど、
「いや…、よくやるね…。 ○○クン(オレ)もシゲさん(仮名)も…」と、
呆れたような冷ややかな口調で話を接いだ。

真野ちゃん(仮名)は「?」という顔でオレを見て、
道重さん(仮名)もキョトンとした顔をして、オレと吉澤さん(仮名)の顔を交互に見てきた。

『真野ちゃん(仮名)はともかく、道重さん(仮名)もやっぱり処女だ…。
何も分かっちゃいねえ…』と、オレは心の中で嘆息した。

道重さん(仮名)は単純に、綺麗に撮ってもらったた写真を、
吉澤さん(仮名)に見て欲しかっただけなのかもしれないけど、こんな写真、
大人の女の吉澤さん(仮名)の眼からは、どう見ても、
「セックスの最中」としか思えない一枚だったろう。

3291:2015/09/07(月) 04:17:09
一瞬、しらけた空気がその場に漂った。

吉澤さん(仮名)は、「いや…、でもシゲさん(仮名)、やっぱ美人だわ」と、
その場を取り繕うように言ってくれたので、道重さん(仮名)もホッとしたように、
「吉澤さん(仮名)にそういってもらえると嬉しいです!」と、笑顔を浮かべた。

オレも一瞬ホッとしかけて吉澤さん(仮名)を見たけど…、
吉澤さん(仮名)は、丸っきり軽蔑したような眼でオレを見つめ返してきた。

針の筵にいるようだった。

その時、そんな空気にはまったく気づいていない様子の真野ちゃん(仮名)が、
「この間、○○センパイ(仮名)とカメラを買いに行って、これを見つけたんです!
正確に言うと、まだ私のものにはなっていないんですけど…」と、例のカメラ…、
エクサ1Cを取り出して、テーブルの上に置こうとした。

「えっ! ちょっと! このカメラは!?」
それを見た吉澤さん(仮名)が突然叫んで、真野ちゃん(仮名)の手から、
半ば奪い取るようにして確かめた後、言った。
「やっぱりそうだ…。間違いない…」

「?」
オレと真野ちゃん(仮名)は思わず眼を見合わせた。

3301:2015/09/07(月) 04:18:53
「このカメラ…、どこで手に入れたの?」
詰問するような口調で吉澤さん(仮名)が聞いてきた。

「は…、はあ…。前に吉澤さん(仮名)に教えてもらった、
保田さん(仮名)の店ですけど…」と、オレが答えると、
吉澤さん(仮名)は、「やっぱりそうか…。圭ちゃん(仮名)め…」と、
呆れたような顔をしていった。

「このカメラに何かあるんですか?」と、道重さん(仮名)が聞いた。

吉澤さん(仮名)は、2秒くらい言い澱んだ後、口を開いていった。
「このカメラは…、不幸のカメラなのよ…」

331名無し募集中。。。:2015/09/07(月) 18:57:16
“針の筵”が結構いい気味だわ
俺君ちょっと良い目に合い過ぎだからねw

332名無し募集中。。。:2015/09/08(火) 00:14:13
センパイヤりまくりやなあ

3331:2015/09/08(火) 03:33:04
「不幸のカメラ!?」
オレと真野ちゃん(仮名)は、びっくりして顔を見合わせた。

「それって…、持ってると死んじゃうとかですか!?」
何故かすごく嬉しそうに、道重さん(仮名)が吉澤さん(仮名)に聞いた。

「いや…、全然そういうのじゃないから、安心していいんだけど…。
そのカメラを持った人はみんなね…」と、言いながら、吉澤さん(仮名)がオレたちを見回した。

五クりと生唾を飲み込む真野ちゃん(仮名)。

「そのカメラを持った人は…、みんな男運がすごく悪くなる…」
冗談とも本気ともつかない顔で、吉澤さん(仮名)が言った。

3341:2015/09/08(火) 03:35:34

「最初にそのカメラを買ったのは…、先輩の安倍さん(仮名)なのよ。
確か、故郷の室蘭に帰ったときに、フリーマーケットかなんかで見つけて買ってきたの。
安倍さん(仮名)のことは、みんなも知ってるでしょ?」と、吉澤さん(仮名)は言った。

「もちろんです!」と、道重さん(仮名)。

「安倍さん(仮名)っていう方に…、何があったんですか?」と、
真野ちゃん(仮名)が脅えた表情を浮かべながら聞いた。

吉澤さん(仮名)は辺りを見回してから、
「ロクでもない男に引っかかってね…。本人は『プレステしてただけ』って言ってたけど…。
その男はクスリ絡みで人を死なせちゃって… 確か今は刑務所に入ってるわ…」
と、少し声を落として言った。

真野ちゃん(仮名)は、ドン引き、といった感じの表情を浮かべて、
吉澤さん(仮名)を見つめていた。

「それで…、安倍さん(仮名)が手放したそのカメラを、
次に手にしたのは、やぐっつぁん(仮名)…」

3351:2015/09/08(火) 03:38:32
「ええっ!? 矢口さん(仮名)が!?」
信じられない、といった口調で、道重さん(仮名)が聞いた。

「まあ…、やぐっつぁん(仮名)の場合はね…、単なる自業自得って言えないこともないけど…」
と、吉澤さん(仮名)は言った。

「次は…?」
恐る恐るといった感じで道重さん(仮名)が聞いた。

「次はごっちん(仮名)。その次が加護(仮名)…。
実は私も持ってたことがあるんだけど…。確かその後、高橋(仮名)もちょっと持ってたのかな…」

オレたちは無言で吉澤さん(仮名)を見つめた。

「まあそれで…、あんまりひどいもんだから、圭ちゃん(仮名)に処分を頼んだんだけど…。
まさか私の後輩に売りつけようとしていたとは…」
と、呆れたような口調で吉澤さん(仮名)が言った。

3361:2015/09/08(火) 03:41:47
「真野ちゃん(仮名)! ヤバイよそのカメラ! 手放したほうがいいよ!」
と、道重さん(仮名)が言った。

どことなく、道重さん(仮名)が面白がっているように見えるのは、
オレの気のせいだろうか…。

「でも…! でも…!」と、真野ちゃん(仮名)が必死に反論した。
「このカメラで撮ると、何だか自分が、
すっごく写真うまくなったような気がするんです…!」

「そうなのよねえ…」と、吉澤さん(仮名)が頷いた。

「だからみんな、ついつい手放せなくなっちゃったり、譲り受けたりしちゃったのよね…。
実際、安倍さん(仮名)もやぐっつぁん(仮名)も、ごっちん(仮名)も私も、
そのカメラで撮った写真で、コンクールで賞とったりしたし、
何か不思議な力のあるカメラって気は、確かにするんだわ…。
また、そのレンズ…、テッサーもすごくいい描写するし」

「あれ…? レンズはもともとドミプランだったんじゃ?」と、オレが口を挟むと、
「ドミプラン? いや最初から、そのテッサーだったよ」と、
吉澤さん(仮名)は不思議そうに答えた。

『そうか。保田さん(仮名)が、あわよくば安物レンズと組み合わせて、
売ろうとしてただけだったんだな…。道理で気前よく交換してくれた訳だ』
と、オレは納得した。

3371:2015/09/08(火) 04:48:37
食事を終えたオレたちはホテルを出た。

真野ちゃん(仮名)はまだ納得のいかない表情で、
「でも私はこのカメラ…、手放したくありません」と言った。

吉澤さん(仮名)は少し考え込んだ後、
「まあ…、それもいいんじゃないの? 男運が悪くなるって言っても、
別にとって食われる訳でもないし」と、サバサバした口調で言った。

真野ちゃん(仮名)は一瞬ホッとしたような顔を浮かべてから、
「あの…、吉澤さん(仮名)…、このカメラで写真撮らせてくれませんか?」
と、言い出した。

「えーっ? モデルになれってこと? 今から?」
と、吉澤さん(仮名)は少し驚いたような顔をしたけど、
「まあ…、かわいい後輩に頼まれたらイヤとは言えないけど」
と言って、微笑んだ。

オレたちはホテルの裏手の中央公園の方に歩いていった。
公園の薄暗い街灯の下で即席の撮影会が始まった。

3381:2015/09/08(火) 04:50:51
「そう…、そこでニッコリ…、ちょっと肩越しに振り返って…、そう!そうです!」

吉澤さん(仮名)に堂々とポーズの指示をしながら、
真野ちゃん(仮名)がパシャパシャと写真を撮り始めた。

それに、あの吉澤さん(仮名)が、また何のためらいもなく、
真野ちゃん(仮名)に言われたとおりの表情をしてみせるのにも、正直言って驚いた。
これがさっき吉澤さん(仮名)が言っていた、このカメラの不思議な力なのだろうか…。

「ちょっとオレにも撮らせてください…」と言って、
オレは自分の鞄から例のFE2改を取り出して構えたけど、
吉澤さん(仮名)は露骨にイヤな顔をして、
「えーっ…、○○クン(オレ)に撮られるのはヤダ…」と、冷たいことを言った。

オレがしょんぼりしていると、助け舟を出してくれたつもりなのか、
「さゆみ(仮名)は撮ってもいいよ」
と、頼んでもいないのに道重さん(仮名)が、オレの前でポーズをつけだしたので、
オレは仕方なくカメラを道重さん(仮名)に向けて、何回かシャッターを切った。

3391:2015/09/08(火) 04:53:20
即席の「撮影会」が終わり、オレたちはぞろぞろとみんなで新宿駅まで歩いていった。
真野ちゃん(仮名)は小田急線の方へ、道重さん(仮名)は地下鉄の駅の方へ、
それぞれ分かれて帰っていき、オレと吉澤さん(仮名)が残された。

「んじゃ、私たちも帰ろうか」と、吉澤さん(仮名)が言いながら、
JRの乗り場の方へと歩き出した。

「ちょっと待って…」と、オレは言った。
「何?」と怪訝そうな吉澤さん(仮名)。

「あの…、もうちょっと飲みませんか?」とオレ。

吉澤さん(仮名)は二秒くらい冷たい表情のまま、無言でオレを見つめてから、
「まあ…、飲むくらいはいいけど…」とつぶやいた。

3401:2015/09/08(火) 04:55:17
オレたちは、もう一度駅を出てからブラブラと歩き、手近なバーに入った。

薄暗いカウンターの席に座り、吉澤さん(仮名)がジントニックを注文した。
オレが同じ物を注文すると、吉澤さん(仮名)は『マネすんなよ』と言わんばかりに、
軽く舌打ちをした。

ジントニックがやってくると、吉澤さん(仮名)はオレと乾杯もしようとせぬまま、
ぐいっと一口飲み込んでから、オレに向かって言った。

「○○クン(オレ)さあ…、女なら誰でもいいわけ?」

「はあっ?」
唐突な問いかけにオレが呆気にとられていると、
「さっきの写真だけどさあ…、シゲさん(仮名)と寝たんでしょ」
と、吉澤さん(仮名)はズバリと核心に切り込む問いかけをしてきた。

341名無し募集中。。。:2015/09/08(火) 09:34:07
女なら誰でもいい疑惑がw

3421:2015/09/09(水) 03:07:13
オレが答えに窮していると、吉澤さん(仮名)は、
「大体さあ…、○○クン(オレ)って、桃子(仮名)と付き合ってたんじゃないの?
もう別れたの? それともシゲさん(仮名)と二股かけてるってこと? 
それともシゲさん(仮名)とはただの遊びってこと?」と、矢継ぎ早に問いかけてきた。

「いや…、それは…」

オレが答えを探そうとすると、吉澤さん(仮名)は遮るように、
「遊びたい盛りなのは分かるけどさ…、桃子(仮名)にバレたらどうする気なの?
同じサークルの中で、やっていいことと悪いことがあるくらい、
三年生にもなったら分かるでしょ」
と、最初は冷たかった口調が、しまいには姉が弟を諭すような調子になって話してきた。

3431:2015/09/09(水) 03:08:45
『困ったな…』と、オレは思ったけど…、

ここのところの経緯を、道重さん(仮名)がオレのロッカーを勝手に覗いていて、
オレが道重さん(仮名)のポートレートを撮らなくてはならなくなったあたりから、
順序だてて説明していった。

吉澤さん(仮名)は、
「何それ…!? マジ? アロマオイルとか…」
と言って、頬を赤くした。

「そういうわけで…、道重さん(仮名)とはエッチしてないんですよ」
と、オレは説明したけれど、
「いや…、その状況でしてないとか、ありえないでしょ…」
と、吉澤さん(仮名)は、てんで信じてないようだった。

3441:2015/09/09(水) 03:12:12
しばらく沈黙が流れた後、
「それで…、桃子(仮名)とはうまくいってるの?」
と、吉澤さん(仮名)は二杯目のジントニックを注文してから、
オレに向き直って聞いてきた。

心なしか目の縁が赤く見えるのは、オレの気のせいだろうか…。

オレは自分のジントニックを飲み干し、今度はジンリッキーを注文してから、
吉澤さん(仮名)に向き直った。

「うまくいってる…、といえるのかどうか…」
オレはここ半年くらいの桃子(仮名)とオレの付き合いの成り行きを、
吉澤さん(仮名)に打ち明けた。

「えーっ! 何それ! そんなにつきあってて、まだエッチしてないってこと?」
と、吉澤さん(仮名)は呆れたようにオレの目を覗き込んできた。
「○○クン(オレ)、あんなに元気だったのに、インポになっちゃったの?」

「ちょ! 吉澤さん(仮名)! 品がないですよ!」
と、答えながら、オレは去年の夏に吉澤さん(仮名)と激しく体を求め合った時のことを、
思い出さずにはいられなくなってきた。

吉澤さん(仮名)も自分で言ってから、言葉の意味に気づいたのか、
「あっ…、いや…」と下を向いた。

3451:2015/09/09(水) 03:12:35
注文した酒をバーテンダーが差し出してきた。

吉澤さん(仮名)は自分のジントニックを一口飲んだ後、
「ちょっと頂き」と言って、オレのジンリッキーに手を伸ばして一口飲むと、
「あー、こっちの方がキリッとしておいしいわ。チェンジしてよ」と言って、
勝手にオレのグラスを奪い、自分のジントニックをオレの方に差し出してきた。

吉澤さん(仮名)の唇の跡がうっすらついたグラスに口をつけて、
オレはジントニックを一口飲んだ。

3461:2015/09/09(水) 03:15:27
「それはそうと…、吉澤さん(仮名)の方は、彼氏とうまくいってるんですか?」
と、オレは聞いた。

吉澤さん(仮名)は一瞬戸惑ったような表情を浮かべてから、
「ん? ああ…。半年くらい前に別れた…」と、さらりと言って、
ジンリッキーのグラスに口をつけた。

「あの…、それじゃ、この半年間フリーなんですか?」と、オレが重ねて聞くと、
「ん? ああ…。まあね」と、吉澤さん(仮名)は簡単に答えた。

「それじゃ…、半年くらいエッチとかしてないってことですか?」
酔った勢いもあったとはいえ、我ながら失礼なことを聞いた、とすぐに後悔しかけたけど、
「いや…、そんなこともないけど…」という、吉澤さん(仮名)の答えに、
オレは一瞬、カッと体が熱くなった。

「それは…、彼氏以外の男としたってことですか?」
と、オレが思わず身を乗り出して聞くと、
「いや…、いいじゃんそんな話」と、吉澤さん(仮名)は困ったような顔をした。

オレは自分の心の中に、激しい嫉妬の炎が燃え上がるのを感じながら、
「いや…、よくないです。どんな男と…?」と、重ねて聞きかけると、
「もー…。しつこい男って嫌われるぞ…」と、吉澤さん(仮名)は、
ちょっと辟易したような顔で答えてから、ジンリッキーのグラスをまた傾けた。

347名無し募集中。。。:2015/09/09(水) 04:31:07
桃子と付き合ってんのはバレてんのか

348名無し募集中。。。:2015/09/09(水) 23:28:49
桃子大切にしろよ
怒るぞ

3491:2015/09/10(木) 04:29:15
『確かにしつこい…』
と、オレは酔った頭で考えた。

しかし、目の前のこのかわいい人が、彼氏でもない行きずりの男に抱かれた…、
という告白は、オレを異様に興奮させてやまなかった。

会社の不倫上司に抱かれて、「アンアン」と少女のようなあえぎ声を洩らす吉澤さん(仮名)…。
街角でナンパしてきた男について行って、バックから激しく突かれまくる吉澤さん(仮名)…。

そんな妄想がオレの頭の中で、とまらなくなってきた。

オレはジントニックをぐいっと一口飲み込んでから、
「どんな男に抱かれたんですか? 会社のハゲオヤジですか?
それともチャラいアンチャンですか…?」と、吉澤さん(仮名)を見据えて言った。

吉澤さん(仮名)は二秒くらい真顔でオレを見つめてから、
「あのさあ…、いい加減にしないと怒るよ」と言った。

3501:2015/09/10(木) 04:32:04
オレはカウンターの上にあった吉澤さん(仮名)の手をギュッと握って言った。

「だって…、吉澤さん(仮名)がほかの男に抱かれたなんて…、我慢できません…」

我ながらいやらしい迫り方だ…。
と、酔った頭でもはっきりと自覚できた。

「ねえ…、吉澤さん(仮名)…。朝まで一緒にいたい…」
オレは吉澤さん(仮名)の手の甲を、ゆっくりとまさぐった。

ちょっと呆れたような困ったような顔をして、吉澤さん(仮名)が無言で、
オレを見上げてきた。

3511:2015/09/10(木) 04:34:54
吉澤さん(仮名)は、
「いやー…、それはさあ…、さすがにマズいんじゃないのかなあ…」と言って、オレの顔を見た。

バーテンダーが離れていくのを見計らって、オレは吉澤さん(仮名)の耳に口を寄せながら、
「何で?」と聞いた。

吉澤さん(仮名)は、「ちょっとくすぐったい…」と言って、体をひねるようにしてから、
「正直言うとさ…、寺田さん(仮名)に今日、『俺の代わりに行ってくれ』って言われた時、
○○クン(オレ)とエッチすることになるんじゃないかって…、考えなかった訳じゃないけどさ…。
やっぱ、そういうのよくないと思う」と言って、真面目な顔をしてオレを見上げてきた。

3521:2015/09/10(木) 04:36:09
きっぱりと拒絶された形になって、オレは狼狽したけれど、
引っ込みのつかないままに、吉澤さん(仮名)の手の甲をオレはまさぐりつづけていた。

また、吉澤さん(仮名)がその手を敢えて払ったりしないことも、
ますますオレの未練心に火を注いでいた。

「ひーちゃん(仮名)…」と、オレが尚も言いかけたとき、
「マスターそろそろお勘定してください」と、吉澤さん(仮名)が言った。

3531:2015/09/10(木) 04:39:43
吉澤さん(仮名)はさっさと会計をすませると、
「ほら…、行くよ」と、オレに微笑みかけてきた。

「あっ、オレもお金出します…」と、オレがいいかけると、
「寺田さんにもらってるから大丈夫」といいながら、吉澤さん(仮名)が席を立ったので、
オレも慌てて後を追った。

店を出て、エレベーターホールの前まできた。
吉澤さん(仮名)が下のボタンを押すと、エレベーターはたまたまそこに停まっていたのか、
すぐにドアが開いた。

2人でエレベーターに乗り込み、ドアが閉まると同時に、
オレは後ろから吉澤さん(仮名)を抱きすくめた。

「吉澤さん(仮名)…!」
「ちょっと…!」

吉澤さん(仮名)…、去年よりまた痩せたな…と、オレは思った。
背後から吉澤さん(仮名)の胸をゆっくりとまさぐると、
心なしか、胸も去年より小さくなっているような気がした。

「あっ、こらっ…!」
と言って、振り向きかけた吉澤さん(仮名)のかわいい唇に、オレは唇を重ねた。

3541:2015/09/10(木) 04:43:05
絡まりあう舌と舌。

やっぱり吉澤さん(仮名)だって、満更でもないのだ、と俺は思った。

「んぐっ…、んぐっ…」と、吉澤さん(仮名)の喉が鳴った。

オレは硬直した一物を吉澤さん(仮名)のタイトスカートのお尻に擦りつけながら、
吉澤さん(仮名)の胸を少し強めに絞り上げるように揉んだ。

その時、ポーンと電子音がして、途中の階でエレベーターが止まった。
オレたちが慌てて離れたのと同時にドアが開いて、OLさんの一団が、
ドヤドヤと乗り込んできた。

ぎゅうぎゅう詰めに近いほど人が乗ったエレベーターの中で、
「ねえ次どうする?」 「カラオケ行こカラオケ」と、
OLさんたちが酔った感じで声を上げていた。

オレは無言のまま吉澤さん(仮名)の手を握ろうとしたけど、
吉澤さん(仮名)はどういうわけか、その手をスルリと交わしてしまった。

3551:2015/09/10(木) 04:46:58
満員のエレベーターが1階に着くまでの間が、やけに長く感じられた。

オレはその間、無言のままで吉澤さん(仮名)の手を握ろうとしたけれど避けられ、
その次にお尻を触ろうとして手をつねられた。

エレベーターが1階に着き、OLさんたちがぞろぞろと降りていった。

一番最後にオレたちが降りて、OLさんたちの後についてビルを出た。

『どこか静かなところで、吉澤さん(仮名)をもう一度無理矢理にでも抱きしめれば、
きっと吉澤さん(仮名)も勢いに流されて、今晩一緒にいることを拒めなくなるはず』
と、オレは姑息に計算したけれど、街は賑やかで、通りはどこまでも人で溢れていた。

吉澤さん(仮名)はそんなオレの気持ちを知ってか知らずか、
駅に向かってまっすぐに歩いていった。

駅の近くまで来て、吉澤さん(仮名)が、「じゃあ今日は…」と、言いかけたとき、
オレは辛抱たまらなくなって、「やだ。離したくない」と言って、
人ごみの中だけど構わずに、吉澤さん(仮名)を無理矢理に抱きしめた。

3561:2015/09/10(木) 04:49:44
「ちょっと…! こんなところで…、ヤダ!」
吉澤さん(仮名)が激しく体を捻って抵抗しようとしたけれど、
オレは構わずに、もっと強く吉澤さん(仮名)の細い体を抱きしめた。

「ダメだってば…!」
荒くなっていく吉澤さん(仮名)の吐息に、オレは我を失いかけたけど、
次の瞬間、パンッ、と高い音とともに、オレは吉澤さん(仮名)に、
頬をしたたかに平手打ちされた。

一瞬、何が起きたか分からず途方にくれていたオレに、
吉澤さん(仮名)は不意に優しい口調で、
「ね…。桃子(仮名)のところに帰りなさい」と囁くと、
くるりとオレに背を向けて、駅の人ごみの中へと消えていった。

3571:2015/09/10(木) 04:52:15
オレはしばらく、その場に呆然と立ち尽くしていたけど、
やがて駅とは反対方向に歩き出した。

このまま帰る気にはなれなかった。
何でもいいから安い酒でも飲んで、酔いつぶれたい気持ちだった。

そんな気持ちとは裏腹に、歩いているうちにオレは、
少しずつ酔いが醒めていくのを感じていた。

さっきの吉澤さん(仮名)への迫り方は、いくらなんでもやり過ぎだった。
あれじゃただ、性のはけ口を求めていた、といわれても仕方ない。

オレはだんだん、恥ずかしさと済まなさで、いたたまれない気持ちになってきた。

そんなことを考えながら歩いていると、大きなデパートの前までやってきた。

「こんな時間にまだデパートやってるのか?」と思いながら腕時計に目をやると、
時間がまだ8時をちょっと回ったばかりなことを知って、二度驚いた。
そういえば、今日は最初の食事のスタート時間が早かったのだ。

オレは何とはなしに、ふらふらとデパートの中に入った。

3581:2015/09/10(木) 04:55:13
デパートに入ると、入り口のすぐ横にカウンターがあって、
案内嬢のきれいなお姉さんが、微笑みながら頭を下げかけたけど、
何故だかそのあと、こちらをガン見しているような気配に気づいて、
思わずオレも見つめ返した。

『あれっ…、この人、どこかで見たことあるような…』

そう思っていると、案内嬢のお姉さんは小首を傾げながら、
「○○さん(オレ)…、ですか?」と、オレの目を覗き込むようにして聞いてきた。

「えっ…? は…、はい。そうですけど?」と、オレが聞き返すと、
「やっぱりそうだ! お久しぶりです!」と、その子は弾けるような笑顔を見せた。

「えっ…、えーと…」
オレが戸惑っているとその子は、
「分からないんですか?」と、一瞬スネたような顔をして見せてから、
「佐紀(仮名)ですよ。清水佐紀(仮名)です」と、上目遣いにオレを見つめた。

「えっ、キャプテン!? うわー!久しぶり! あんまり綺麗に…、いや…、
大人っぽくなったから、気づかなかったよ…」と、オレがドギマギしながら答えると、
「そんなお世辞言って、桃子(仮名)に聞かれたら怒られますよ」と、
佐紀ちゃん(仮名)は悪戯っぽく笑った。

3591:2015/09/10(木) 04:59:33
オレは思わず、あらためてまじまじと佐紀ちゃん(仮名)を見つめてしまった。

去年一緒にアルバイトをした時にはまだ幼い印象があった佐紀ちゃん(仮名)なのに…。
(注・過去のシリーズにそういう話があったのです)

今オレの目の前にいるデパガ(死語)の制服を着た佐紀ちゃん(仮名)は、
すごく大人っぽくなっていて、オレよりも年下なのに、
「きれいなお姉さん」という言葉がぴったりくるような、美人さんになっていたのだ。

「イヤだ…。そんなにジロジロみないでくださいよ…」
と、佐紀ちゃん(仮名)は少し頬を赤らめて言った後、
「○○さん(オレ)は、これからどこか行くんですか?」と尋ねてきた。

「いや…。ブラブラ歩いてただけで…。
ちょっと1人で飲みに行こうかとか思っていたんだけど…」
と、オレがドギマギしながら答えると、佐紀ちゃん(仮名)は、
「いいなあ…。私もあとちょっとで仕事終わるんだけどなぁ…。
久しぶりに、○○さん(オレ)とお話したいなぁ…」と、
上目遣いにオレを見つめて聞いてきた。

360名無し募集中。。。:2015/09/10(木) 10:08:43
wktk

3611:2015/09/11(金) 01:34:52
「お待たせー!」
と、小走りに近寄ってきながら、佐紀ちゃん(仮名)が手を振ってきた。

さっきデパートで見た制服姿とは打って変わって、
私服の佐紀ちゃん(仮名)はすごく子供っぽく見えて、オレは一瞬ドキドキした。

佐紀ちゃん(仮名)の仕事が終わるのを待って、
オレたちは新宿駅の前で待ち合わせをしたのだった。

「あー、すごくお腹減っちゃった。何か食べたいです」
と、佐紀ちゃん(仮名)がオレを上目遣いに見ながら微笑んできた。

「何を食べたいの?」と、オレが聞くと、
「うーん…、何でもいいけど…」と、佐紀ちゃん(仮名)は小首を傾げてから、
「結構お腹すいてるんで、がっつり食べたいです。餃子とか野菜炒めとか…」
と、言って笑った。

オレはちょっと困りながら考えて、
「だったらションベン横丁でも行ってみるか?」と言うと、
佐紀ちゃん(仮名)はすごくムッとした顔をしながら、
「何横丁?」と、聞き返してきたので、
オレは慌てて、「思い出横丁」と言い直した。

「何ですかー、それ? 行ってみたいですー」
と、佐紀ちゃん(仮名)が微笑みながら、オレの腕に触れてきた。

3621:2015/09/11(金) 01:37:32
佐紀ちゃん(仮名)と寄り添うように歩きながら、思い出横丁までやってきた。

立ち飲み屋が軒を並べる光景を見ながら、
「えーっ! 新宿にこんなとこあったんですかー?」と、
佐紀ちゃん(仮名)は驚いたようにオレを見上げてきた。

「こういうとこ、イヤだった?」とオレが聞き返すと、
「ううん! 全然!」と佐紀ちゃん(仮名)が、にっこりと微笑んできた。

オレと佐紀ちゃん(仮名)は、中華料理屋の丸椅子に腰を下ろすと、
店の兄ちゃんが、「イラシャイマセー」と、怪しげな日本語で挨拶をしてきた。

「とりあえずビール。それと野菜炒めと餃子と水餃子」と、オレは注文した。

3631:2015/09/11(金) 01:39:34
周りの客のオッサンたちは、好奇の目で佐紀ちゃん(仮名)を見つめていた。

オレはその視線に気づかないふりをしながら、
佐紀ちゃん(仮名)のコップにラガービールを注いだ。

「あっ、私もお注ぎします」と、
佐紀ちゃん(仮名)がオレから瓶を奪うようにして、
オレのコップにビールを注いだ。

「じゃあ乾杯」
カチンとコップを合わせてから、二人でぬるいビールを飲んだ。

ひと口飲んだ後、「うふふふ」と、佐紀ちゃん(仮名)が含み笑いをした。

「何がおかしいの?」と、オレが聞くと、
「なんか佐紀(仮名)、こういうところきたの初めてだから、嬉しくて」
と、佐紀ちゃん(仮名)が言いながら、上目遣いにオレを見つめてきた。

364名無し募集中。。。:2015/09/12(土) 10:24:34
佐紀ちゃんの佐紀ちゃんはおぱょしちゃうのかな

365名無し募集中。。。:2015/09/13(日) 05:42:44
おぱょ

3661:2015/09/14(月) 02:51:17
その佐紀ちゃん(仮名)の上目遣いに、内心クラクラきながらオレは言った。

「佐紀ちゃん(仮名)って、なんか感じ変わったよね」
「えっ、そうですか?」
「何ていうか…、すごく色っぽくなったっていうか」
「いやいやいや(笑)」

ほんのりと頬を赤くした佐紀ちゃん(仮名)が、照れ隠しをするように、
クイッとビールを空けた。

オレは佐紀ちゃん(仮名)のコップに、無言でビールを注ぎ足した。

3671:2015/09/14(月) 02:54:34
「初めて会った日のこと覚えてる?」
「?」
「冷蔵倉庫に2人で閉じ込められて…(過去スレ参照)」
「あー(笑)。はいはい!」
「あの時の佐紀ちゃん(仮名)は、すごく子供っぽかったけど」
「えー!?そうですかー!?」
「さっきデパートで見たときは…」
「?」
「何かすごく、きれいなお姉さんみたいで、すぐには気づかなかった」
「そんなこと言われると照れちゃいますよー」

3681:2015/09/14(月) 02:56:39
「でも本当に佐紀ちゃん(仮名)…、色っぽくなった」

コップのラガービールをぐいっと飲み干しながら、またオレが言うと、
「もう…。そんなことないってばー」と、佐紀ちゃん(仮名)は耳まで真っ赤にしながら、
オレのコップにまたビールを注いできた。

「みんなにも言われるでしょ?」とオレ。
「えー!? それは…、言われないこともないけど…」と、はにかむ佐紀ちゃん(仮名)。

「何かあったんでしょ?」
「もう、ヤダー。○○さん(オレ)ってば(笑)。そりゃ佐紀(仮名)もハタチだから…、何もないこともないけど…」

上目遣いにオレを見る佐紀ちゃん(仮名)の視線に、下半身がダイレクトに反応してくるのを感じながら、
オレはまたコップのビールを空けた。

3691:2015/09/14(月) 02:58:58

「ヤサイイタメト、ギョーザオマチー」
怪しげな日本語の店員がそういいながらオレたちの前に料理を並べた。

「わー、おいしそー」と、佐紀ちゃん(仮名)が微笑んだ。

「○○さん(オレ)、取ってあげる」と言いながら、
佐紀ちゃん(仮名)が、小皿に野菜炒めを取り分け始めた。

腕を動かす佐紀ちゃん(仮名)の方から、何ともいえぬいい匂いが漂ってきた。
桃子(仮名)からは、いや…、道重さん(仮名)からも感じたことのない、
大人っぽいタイプの香水の匂いに、オレは少しドキリとした。

モヤシばかり目立つ野菜炒めを、佐紀ちゃん(仮名)は「おいしいね!」と、
目を細めながら食べ始めた。

その時、店に4〜5人連れのサラリーマン風の客たちが入ってきた。

「スミマセン、チョトツメテモラエマスカ」
店員の求めに、佐紀ちゃん(仮名)が「あっ、はいはい」と応じながら、
丸椅子を体ごとオレの方に寄せてきた。

半そでのシャツから出た、佐紀ちゃん(仮名)の白い腕が、オレの腕に一瞬触れた。

佐紀ちゃん(仮名)の少し汗ばんだ腕が、ぺたっとオレの腕に張り付く感触が、
たまらなく心地よかった。

3701:2015/09/14(月) 03:06:26
佐紀ちゃん(仮名)の腕が触れてくる感触に、オレはドキドキしていたけど、
佐紀ちゃん(仮名)の方は全然意に介してない様子だった。

「ところで佐紀ちゃん(仮名)…、いつデパートに就職したの?」とオレが聞くと、
「うん。春から契約社員になったんだ。ほら、お歳暮のバイトしてた時(過去スレ参照)、
いろいろ世話してくれた、社員の宮地チーフが誘ってくれたの」
と、佐紀ちゃん(仮名)は、何故かちょっと顔を赤らめながら答えた。

「宮地チーフって…、えーっと…、ボサボサ頭の?」と俺が思い出しながら聞くと、
「それは織田澤さん…。てゆーかチーフじゃないし」と、佐紀ちゃんは一瞬ムッとした口調になった。

「そっかー。でも、いい就職決まって良かったね。制服ホントに似合ってて、大人っぽかったよ」
とオレがいうと、
「もう…。またからかって…」と、佐紀ちゃん(仮名)は言葉では困ったふりをしたけれど、
その表情は意外に堂々としていて、自分に自信を持って振る舞っている大人の女、というようにも見えた。

『佐紀ちゃん(仮名)、やっぱり前と全然感じ変わったわ…。こりゃ本当に女になったかな…』と、オレは思いながら、
「佐紀ちゃん(仮名)は、まだ梨沙男クン(過去スレ参照)と付き合ってるの?」と、聞いてみた。

「梨沙男クン?」と、佐紀ちゃん(仮名)は一瞬誰のことかわからない、といったような怪訝な表情を浮かべた後、
「ああ、梨沙男クンね(笑) やだあ(笑) とっくに別れましたよ、あの子とは…」と言って、蓮っ葉な笑みを見せた。
「別れ話の時に、『離れたくない』とかって泣かれたけど(笑) あの子、全然子供なんだもん」

「じゃあ、今付き合ってる人いないの?」
「それは、もちろんいるけど(笑)…」

冷蔵倉庫の一件の時に、佐紀ちゃん(仮名)の身を案じてオレに殴り掛かってきた熱い梨沙男クンを思い出して、
なぜだか分からないけど、オレはちょっぴり切ない気分になってきた。

3711:2015/09/14(月) 03:10:55
野菜炒めと餃子を食べ終えて、オレと佐紀ちゃん(仮名)は思い出横丁を出て、新宿の街をブラブラと歩き出した。

「佐紀ちゃん(仮名)の今の彼氏って、どんな人なの?」と、オレは聞いてみた。
「うーん…」と、佐紀ちゃん(仮名)はもったいをつけるように、唇に指を当てて考えるような仕草をした。

「年上? 年下?」
「…年上だよ」
「いくつぐらいの人」
「えーと…、40歳くらい…」

『そんなオッサンと…!』
オレはカッと胸が熱くなってくるのを感じながら、重ねて問いかけた。

「それって…、もしかして…、不倫…、とかじゃないよね?」
少し間を置いて佐紀ちゃん(仮名)が、「えー…? 知らない(笑) 桃(仮名)には内緒にして下さいよー…」
と、甘ったるい声を出した。

『マジかよ…、佐紀ちゃん(仮名)…』
オレは胸の中で叫んだ。

3721:2015/09/14(月) 03:12:44
『この、小っちゃい佐紀ちゃん(仮名)の体を、思うさま弄んでるオッサンがいる…』

そう考えただけで、オレはまるで発狂しそうなほどの嫉妬にかられた。

『今日はこんな気持ちになってばかりだ…』と、オレは思った。
そういえば、さっき吉澤さん(仮名)と喧嘩別れをしたのも、吉澤さん(仮名)の男関係への嫉妬心が原因だったのだ。

オレは自分が破滅に向かって一直線に突き進んでいるのを予感しながら、
今夜無理やりにでも、目の前の佐紀ちゃん(仮名)を、自分のモノにしたい気持ちでいっぱいになってきた。

「佐紀ちゃん(仮名)…」
そう呼びかけながら、オレは佐紀ちゃん(仮名)の小さな手をギュッと握った。

「えっ? なに…、いきなり?」 
ひどく困惑したような目で、佐紀ちゃん(仮名)がオレを見上げてきた。

3731:2015/09/14(月) 03:14:31

沈黙が流れた。

上目遣いの佐紀ちゃん(仮名)の瞳を見た途端、オレは『好きだ』とも『抱きたい』とも、
言葉が出てこなくなってしまった。

『何やってんだ…、オレ…』
オレは激しく焦りながらも、佐紀ちゃん(仮名)の手を握ったまま離せずにいた。

「あの…」
何か佐紀ちゃん(仮名)が言いかけた時、いきなり佐紀ちゃん(仮名)の携帯電話が鳴りだした。

佐紀ちゃん(仮名)は明らかに、『これ幸い』とでもいうような、ホッとした表情を一瞬見せた後。
「ちょっとゴメンね」と言って、オレの手をふりほどいて電話に出た。

「もしもし…。佐紀(仮名)です…。あっチーフ? いま友達と…、えっ?これから? うん。大丈夫…」

3741:2015/09/14(月) 03:16:13
電話を終えた佐紀ちゃん(仮名)は、オレに向き直ると、
「○○さん(オレ)、ゴメンね。佐紀(仮名)、ちょっと用事できちゃった」
と、パッと華やいだような、嬉しそうな表情を隠そうともせずに言った。
これからその彼氏と会うのだろうか…。

「ところでいま、何か私に話でもあったの?」と、佐紀ちゃん(仮名)が聞いてきた。

「いや…。別に」と、オレはいったん答えかけたけど、 
「これから会うのは彼氏? それってもしかして、デパートのチーフ?」と尋ねてみた。

少し間を置いてから、佐紀ちゃん(仮名)が不愉快そうな目の色を見せて言った。 
「いいじゃん。誰でも…」

3751:2015/09/14(月) 03:18:35
佐紀ちゃん(仮名)と別れてから、どれくらい安酒を飲んだのだろう…。

オレは寂しい気持ちを抱えながら泥酔して、フラフラと自宅の前までたどり着いた。

『もしかして…、ももち(仮名)が家に来てないか?』
そんなムシのいいことを願ったものの、オレの部屋の窓は真っ暗だった。

部屋に入って、ベッドの上に大の字になった。
無性に人肌が恋しい気分だった。

無意識のうちに、桃子(仮名)に電話をかけていた。

10回ほどの呼び出し音の後に、今まで寝ていたような声で桃子(仮名)が出た。
「はい…。もしもし…」

「もぉ(仮名)、オレだよオレ」
「センパイ…? 酔ってるの?」
「もぉ(仮名)、会いたいよ…」
「…もぉ(仮名)、寝てたんだけど…」
「今すぐ会いたいよ、もぉ(仮名)…」
「あのさあ…、もぉ(仮名)明日一限から授業なんだ…。それじゃね、お休み」

切れた電話を握って、再びかけた。
「もぉ(仮名)…、会いたい」
「もー! センパイ! し・つ・こ・い!!」

再び電話が切れた。

3761:2015/09/14(月) 03:20:28
通話の切れた携帯を握ったまま、オレはしばし呆然とベッドの上に佇んでいた。

今日一日の出来事を反芻すると、情けないことに、ムラムラと性欲が湧いてきて、自分自身であきれ返った。

酔った頭で桃子(仮名)のことを考えながら、自分自身をしごき出すオレ。

しかし、さらに情けないことに、桃子(仮名)のことを考えようとすればするほど、
行きずりの男に抱かれる吉澤さん(仮名)とか、
デパートのおっさんチーフに激しく攻められて嗚咽を漏らす佐紀ちゃん(仮名)の姿がまぶたに浮かんできて、
とまらなくなってしまった。

「くそっ!」
力ずくでしごいて放出しようとした瞬間、唐突にカメラ店の保田さん(仮名)の顔が脳裏に浮かんできた。
「アッー」

3771:2015/09/14(月) 04:26:59
本スレの方は
どうすれば満足するの?
って感じ

378名無し募集中。。。:2015/09/14(月) 04:52:37
おつおつ
今回もおもしろかった
いろいろ難しいだろうけど、ストレス溜めないようにね

379名無し募集中。。。:2015/09/14(月) 11:24:43
乙です
サキタムお持ち帰りはならなかったかw

あんな雰囲気じゃ書きづらいよね
ただ待ってる人も多いと思うよ

380名無し募集中。。。:2015/09/14(月) 23:25:59
全員を満足は無理だけど
1さんの思うように書いて満足する人達はたくさんいると思うよ
自分は1さんの文章とか発想がすきだから楽しみに読んでる

3811:2015/09/15(火) 02:32:46
ありがとう
打たれ弱いから優しくされるとウルっとくるわ(笑)

3821:2015/09/15(火) 02:39:45
次の日…。

昼ごろになってようやく眠りから覚めたオレは、まだ酒の抜けてない体を引きずって、
のろのろと学校へ向かった。

授業に出る気力は全くなかったけれど、昨日撮ったフィルムを現像しておきたいと思ったからだ。

部室に行って準備をしていたら、ガチャガチャとドアが開いて、真野ちゃん(仮名)が入ってきた。

「あっセンパイ。おはようございます! センパイも現像ですか?」
と、真野ちゃん(仮名)の弾んだ声が、二日酔いのオレの頭に少し響いた。

「うん…」と、生返事をするオレに、
「よかったら、私が二連タンク使って、私の分とまとめて現像しましょうか?」と、
すっかり頼もしいことを言いだす真野ちゃん(仮名)。

「えっ、いいの?」と、一瞬お言葉に甘えようとしたオレだったけど、
昨日の夜の暗い撮影状況を思い出して、
「ちょっと(露出が)アンダーだったから、『押し気味』にしたいんだよな…。やっぱ自分でやるわ」
と、返事をした。

「『押し気味』って、なんですか?」
「撮影した時の光が足りなかった時とか、少し長めに現像して感度を上げてやることだよ」
「へえ…。私もそれやってみたいから、今度やり方教えてください!」

全く…。
吸収が早いというか、教え甲斐のある子だ。
桃子(仮名)とも、こうやって写真の話ができれば楽しいのに…、とオレはまた思った。

3831:2015/09/15(火) 02:44:35
真野ちゃん(仮名)と二人並んで現像をして、フィルム乾燥まで終わると、今度は引き伸ばしにとりかかった。

赤いセーフライトの下、現像液の中から浮かび上がるモノクロの画像…。
オレが昨日撮った、道重さん(仮名)の写真だった。

ざっと画像を点検してみて、「うむ…。悪くない」と、オレは思った。
手前味噌ながら、ちょっと酔った感じの道重さん(仮名)の、淫靡な表情がよく出ていると思ったし、
画像自体も、あの暗い所で、ほとんど絞り開放で撮った写真にしては、割合シャープに見えたからだ。
「やっぱりあのニッコール、いいレンズだな…」と、オレは満足した。

そう思って印画紙を定着液に移すと、今度は真野ちゃん(仮名)が、自分のネガを引き伸ばし機にかけ始めた。

「どれどれ…。あっ!」
現像液から浮かび上がる吉澤さん(仮名)の画像を一目見て、オレは驚いた。

吉澤さん(仮名)の艶やかな表情もさることながら、画質自体も、オレの撮った写真よりも明らかに芯のある、
一段上のレベルのシャープな画像がそこに映っているように見えたからだ。

『そんなバカな…』と、オレは焦った。
いくら真野ちゃん(仮名)のテッサーが、歴史的名レンズといっても、
それは戦前からせいぜい1960年代初頭までの、クラシカルなレベルの話。
コンピューター設計が当たり前になり、加工技術も進歩した現代のレンズが、
画質で負けるはずがないではないか。

「焼きミスでもしたかな…」
オレはそう言いながら、もう一度引き伸ばし機に自分のネガをセットして、さっきの画像を焼き直してみた。

何度焼き直しても、結果は同じだった。

3841:2015/09/15(火) 02:47:37
引き伸ばしが終わり、暗室を出たオレは、真野ちゃん(仮名)の印画紙とネガを奪うように受け取ると、
ルーペを使って、自分の撮ったものと比較してみた。

明るいところで細部を拡大すると…。
暗室で思ったのとは異なり、やっぱりオレの写真の方が粒子が荒くなく、
画質がシャープなように見えた。だが、離れた位置から全体像を眺めると印象が一変する。

これは要するに、真野ちゃん(仮名)の写真の方がコントラストが高いのだ。
明暗がくっきりと画像に出ているので、パッと見だと、全体のシャープさでも勝っているような錯覚を受ける…。
「やっぱすげえわ、あのテッサー…」と、オレは素直に脱帽せずにはいられなかった。

真野ちゃん(仮名)はちょっと誇らしげな、照れくさそうな顔をしてオレを見ながら、
鞄の中から、件のテッサーが付いたEXA 1Cを大事そうに取り出して言った。

「やっぱり、このカメラにして良かった…」

3851:2015/09/15(火) 02:49:47
あらためてこの不思議なカメラを見つめると、
吉澤さん(仮名)の言ってた、「不幸のカメラ」との言葉が頭に浮かんできた。

『男運がどうとか、あのクールな吉澤さん(仮名)が大真面目に言ってたけど…』

オレが考え込んでいると、「ところでセンパイは昨日、あの後まっすぐ帰ったんですか?」
と、真野ちゃん(仮名)が笑顔で尋ねてきた。

オレは一瞬、吉澤さん(仮名)との出来事とか、佐紀ちゃん(仮名)との出来事を思い出して凹みそうになったけど、
「ん…、あ…、いや…。ちょっと飲んでから帰った」と、言葉を濁した。

「真野ちゃん(仮名)はまっすぐ家に帰ったの?」
「それが私…、駅前で知らない男の人にナンパされて…」

まあ、真野ちゃん(仮名)くらい可愛い子なら、そんなことだってあるだろう。

「へえ…。まさかついて行ったりはしなかったんでしょ?」
「それが…。自分でもすごく不思議なんですけど、ついて行っちゃったんです、私…」

オレは一瞬びっくりして、カメラを落としそうになった。

3861:2015/09/15(火) 02:54:02
「『ついて行った』って…、どこに?」 
驚いてオレが聞き返すと、
「最初に『カラオケでも行こう』って誘われて。カラオケ行ったら今度は『ホテル行こう』って言われて…」
と、屈託のない笑顔で答える真野ちゃん(仮名)。

「…」
言葉の出ないオレに、
「さすがにそこまでは行きませんでしたけど(笑)」と、てへぺろ顔で笑う真野ちゃん(仮名)。

オレが呆れて真野ちゃん(仮名)をまじまじと見つめると、真野ちゃん(仮名)はそんなオレの表情にも気づかずに、
「エッチな人で、すぐお尻や胸触ってきたり、キスしたりしてきて…。『イヤです』って言ったらやめてくれたんですけど」

オレは思わず首を大きく振った。
行きずりのナンパ男について行って、激しく犯される真野ちゃん(仮名)の姿が頭に浮かんで、止まらなくなったからだ。

「センパイ…、どうしたんですか?」
不思議そうにオレの顔を覗き込んできた真野ちゃん(仮名)を見つめ返して、
オレは思わず大声で怒鳴った。

「何やってんだ真野ちゃん(仮名)! バカじゃねえの!?」

3871:2015/09/15(火) 02:56:01
沈黙が流れた。

一瞬真顔でオレを見つめ返してきた真野ちゃん(仮名)の両目が、しだいに赤く潤んできた。

「あっ…、いや…」
オレは慌てて何か言おうとしたけど、もう遅かった。
真野ちゃん(仮名)の両目から、涙が一しずく、二しずくと頬に流れた。

「自分でも、どうしてかわからないんだもん…」
そう言うと、真野ちゃん(仮名)は辺りもはばからずに、子供のように声を上げて泣き出してしまった。

オレはうろたえて周囲を見回した。
もしいま、誰か部室に入ってきたら、どんな誤解を受けるとも限らないではないか。
それこそ、もしも桃子(仮名)が入ってきたりしたら…。 

「真野ちゃん(仮名)、怒鳴ったりしてオレが悪かった! これ! この通り!」と、オレは土下座する勢いで謝った。

「真野ちゃん(仮名)のせいじゃない。やっぱりこのカメラに何かあるんだよ! ちょっと見せてみて!」
オレがそういうと、真野ちゃん(仮名)はまだ嗚咽を上げながら、例のEXA 1Cをオレに手渡してきた。

3881:2015/09/15(火) 02:57:45
「このカメラに…、一体どんな因縁があるというんだ…」
オレはあらためてカメラを見回して、あちこちいじってみたけれど、
そんなことで何が分かる訳もなかった。

ようやく泣くのをやめた真野ちゃん(仮名)が、真っ赤に腫れた目でオレを見つめてきた。

「くそっ!」
オレは思わず、乱暴にレバーを巻き上げながら、何度も空シャッターを切ってみた。
その時、突然「ガリッ!」と、カメラから異音がして、巻き上げレバーがビクとも動かなくなってしまった。

「あっ!」と、慌てるオレ。
「ちょっとセンパイ! どうしたんですか!」と、悲鳴を上げる真野ちゃん(仮名)。

「どうしたんですか!? 私のカメラ!?」
「スマン…。壊したかも…」
「いやあっ!」

重ね重ねの失態に、オレは動揺した。
力ずくでレバーを回そうとするオレを見て、真野ちゃん(仮名)が慌てて叫んだ。
「やめてください! いいから保田さん(仮名)に見てもらいましょう!」

3891:2015/09/15(火) 02:59:54
確かに、それが一番の解決法だった。

取るものも取り合えず部室を出たオレたちは、電車に乗って五反田の保田さん(仮名)の店に向かった。

店に着いてドアを開けると、奥のカウンターには先客の背中が見えた。

オレたちが入ってきたのに気付いた保田さん(仮名)は、
「あら…。今ちょうど、あなたたちのこと話してたところよ…」と、笑った。

保田さん(仮名)と話をしていた先客も、こちらを振り向いた。
誰あろう、それは吉澤さん(仮名)だった。

「あっ…、昨日はどうも…」と、緊張するオレを見て、吉澤さん(仮名)は、
「例の不幸のカメラについて、圭ちゃん(仮名)を問い詰めてたところ」と、苦笑いした。

昨夜のことは水に流してくれているのか…、いつものクールな吉澤さん(仮名)の口調にオレは少しホッとした。

3901:2015/09/15(火) 03:02:47
「そのカメラのことなんですが!」
と、慌てて真野ちゃん(仮名)がしゃべろうとするのにもとり合わず、保田さん(仮名)は、
「何? もういい写真撮れたの? 見せてごらんなさい」と、有無を言わさぬ口調で言った。

オレと真野ちゃん(仮名)は一瞬目を見合わせた。
そんなことより、カメラを見てほしいのだが…。

しかし、この人に逆らうと、余計話が面倒になるような気がしたオレは、真野ちゃん(仮名)に目配せをした。
真野ちゃん(仮名)もその意味に気付いたように、さっき引き伸ばしたばかりの印画紙を、
鞄の中から取り出して、保田さんに手渡した。

「あら。モデルはよっすぃー(仮名)じゃないの」と、プリントを一瞥した保田さん(仮名)は微笑を浮かべた。
「おー。照れるねどうも」と、大して照れてなさそうな表情で覗き込む吉澤さん(仮名)。

「あの…」と、話しかけようとした真野ちゃん(仮名)を、
「ちょっと黙って!」と、制した保田さん(仮名)は、印画紙を手にとって、あらためてまじまじと見つめなおした。

「ふーん…」と、したり顔の保田さん(仮名)。
緊張した表情の真野ちゃん(仮名)。

「アンタ、なかなかやるじゃないの…。カメラの性能だけではこういう表情は撮れないわ…。 
それに焼き方もまずまずね…。これなら合格点を上げてもいいわ」と、保田さん(仮名)は言った。

「やったーっ!」
真野ちゃん(仮名)が興奮して、オレの手を握り締めてきた。

3911:2015/09/15(火) 03:05:27
真野ちゃん(仮名)の柔らかい手の感触に、一瞬オレがボーッとしていると、
「ところでアンタの方はどうなんだい?」と、保田さん(仮名)がオレに顎をしゃくってきた。

「へ?」と、オレ。
「アンタの撮った写真だよ」と、保田さん(仮名)。

オレは慌てて、自分の鞄から自分の印画紙を取り出した。

印画紙に写ってる道重さん(仮名)を一瞥した保田さん(仮名)は、「これ誰?」と首を傾げた。
「うちらの後輩のシゲさん(仮名)。圭ちゃん(仮名)も会ったことあるよ」と、吉澤さん(仮名)が言った。

しばらく印画紙を凝視していた保田さん(仮名)は、いきなり顔を上げてオレを見ると、
「45点…。やり直し」と、不機嫌そうな表情で言い放った。

がっくりとうなだれるオレに、保田さん(仮名)は、
「『モデルの違い』とか、『レンズの違い』とかって程度にアンタは思ってるかも知れないけど…、
そういう以前の問題として、アンタはこのモデルの子に飲まれちゃってるんだわ」
と、耳の痛いことを指摘した。

『全く同感』と言いたげに、吉澤さん(仮名)がうんうんと頷くのが見えた。

3921:2015/09/15(火) 03:06:51
「ところで、このカメラなんですが…」
話が途切れたのを待っていたように、真野ちゃん(仮名)が話し出した。

「いや…、オレがいじっていて、壊しちゃって…」と、オレが話を継ぐと、
「どれ…。見せてごらん」と、さして驚く風でもなく、保田さん(仮名)が言った。
さすがにプロらしい、頼もしい口調だった。

カメラ用の精密ドライバーを使って、慣れた手つきで保田さん(仮名)は、カメラの底蓋を外しはじめた。
「中のギアに何かが噛んでるみたい…」と、保田さん(仮名)は早速アタリをつけたようだった。

3931:2015/09/15(火) 03:08:50
それから数分。

「直った」と、保田さん(仮名)のあっさりした声に、
「ホントですか!」と、真野ちゃん(仮名)が歓声を上げた。

喜んでカメラを手に取る真野ちゃん(仮名)を尻目に、保田さん(仮名)はオレや吉澤さん(仮名)に向き直ると、
「ギアの間にこんなものが絡まってたんだけど…」と、
長さ1センチ弱、直径1ミリほどの細い棒のようなものを示した。

「なんだろう? ゴミかな…」と、オレが訝ってると、
「ちょっと貸して」と言って、吉澤さん(仮名)がその棒のようなものを取り上げて弄りだした。

「紙だわ…。蝋で固めてある…」と言いながら、吉澤さん(仮名)は長い爪でその蝋を削り取った。

すると…。

棒のように見えていたのは、小さく固く巻かれた紙の切れ端だった。
吉澤さん(仮名)は、その紙を丁寧に広げ出した。

「何か書いてある…。外国の文字と…、地図みたい…。なんだろうこれ?」
オレたち4人は、いっせいにその小さな紙切れを覗き込んだ。

3941:2015/09/15(火) 03:13:37

「これ…、ドイツ語だと思います。äとかöとか出てくるし…」
紙切れに書かれていた、細々とした文字と地図を見つめて、真野ちゃん(仮名)が言った。

「真野ちゃん(仮名)、ドイツ語なんか分かるの?」と、吉澤さん(仮名)。
「はい…、いえ…。 一般教養の第二外国語で習ってる程度なんですけど…」と、真野ちゃん(仮名)。

「何て書いてあるの?」と、興味津々な保田さん(仮名)に、
「そこまでは…。何か単語の羅列みたいで、文章になっていないような…」
と、困った様子で真野ちゃん(仮名)が答えた。

少し沈黙が続いた後、
「単語の羅列って…、暗号か何かかしらね?」と、保田さんは自問するように言った。

「あるかもよ。このEXAって昔の東ドイツ製でしょ? 東西冷戦の時に、スパイが軍事機密を伝えるために、
隠した文書かも…。地図の場所には軍資金が隠されていたりして…! それとも死体とか?」
珍しく芝居がかった口調で、吉澤さん(仮名)が言った。

「いや…、話の腰を折って悪いですけど…、この手紙が不幸のカメラの呪いの原因だったとしたら…、
そんなものとは違うんじゃないですかね? 男運が悪くなるとか、スパイにしてはずいぶんショボい呪いですよ」
と、オレは疑問を口にしてみた。

「何だろう…? あーん!とにかくすごく気になります!」と、真野ちゃん(仮名)が叫んだ。

3951:2015/09/15(火) 03:13:56
とりあえず今日はここまで

396名無し募集中。。。:2015/09/15(火) 06:46:16
乙でしたー

3971:2015/09/16(水) 00:40:44
「何かはわからないけど…、とにかくこのカメラを使って、
誰かが秘密の文書をやりとりしてたってことよね…」
と吉澤さん(仮名)が言った。
こんなに興味津津な感じの吉澤さん(仮名)を見るのも、オレは意外な気がした。

「んー、そこなんだけどさ…」と、保田さん(仮名)がクールな表情のままで口を挟んだ。

「何? 圭ちゃん?」
「『やりとり』って感じが、今イチしないのよねぇ…」
「何で?」
「このカメラのネジとか中身とか、キレイすぎるんだわ…。素人が何度も底を開けたり閉じたりしたカメラって、
私らプロから見れば大体検討つくんだけどさ…。このカメラにはそんな気配が全然ないのよねぇ」

二人の会話をオレと真野ちゃん(仮名)は、黙って聞いていた。

3981:2015/09/16(水) 00:41:15
「でもさ圭ちゃん(仮名)、スパイがカメラの素人とは限らないじゃん」
吉澤さん(仮名)の頭の中では、すでに文書の主はスパイと決まっているらしい。

「カメラの修理屋同士が、わざわざカメラに暗号隠してやりとりすんの? 何のために?」
「そりゃわからないけど…」

そこまで言い合うと、二人は腕を組んで黙り込んだ。

「あの…」
と、真野ちゃん(仮名)が声を出した。

「とにかく何て書いてるのか、私明日、フロイライン・エリカに聞いてきます」

「『フロイライン・エリカ』って誰?」と、オレ。
「あっ、私のクラスのドイツ語の先生で、エリカ先生って言うんです」

エリカ先生…。
ドイツ風色白美人教師の姿を、勝手にオレは想像した。
「じゃ…、じゃあ、オレも一緒に聞きに行くよ」と慌てて言うオレ。

「んじゃ、私はこのカメラを最初に買った安倍さん(仮名)に、当時の状況をもっと詳しく聞いとくわ。
明日の夕方、学校の部室で落ち合おう」と、吉澤さん(仮名)もどこまでもノリノリであった。

3991:2015/09/16(水) 00:43:21
家に帰ってからも、オレは謎の文書のことが気になってしかたなかった。

「誰が、いつ、何のためにカメラに入れたんだ? 呪いとのかかわりは?」
そんなことを考え始めると、ベッドに入ってからも目が冴えて寝付かれなくなった。

突然、桃子(仮名)のことが頭をよぎった。そういえば、今日はお互い電話もしていない。
オレはベッドから身を起こすと、部屋の灯りをつけ、携帯電話を握って桃子(仮名)にかけようとした。

『でも…、今日はもう時間が遅いか…。昨日も酔って変な時間に電話して怒られたんだよな』

オレは考え直して電話を置くと、部屋の電気を消して再び眠ろうとした。
そうすると、また謎のカメラについての妄想がとめどなくはじまるのであった。

4001:2015/09/16(水) 00:45:10
その翌朝…。

完全に寝坊したオレは、真野ちゃん(仮名)との約束時間に遅れそうになって、慌てて家を飛び出した。

駅から走って、ようやく学校の前まで来たところで、携帯電話が鳴った。
桃子(仮名)からだった。

「センパイ(オレ)、おはよー」
「ん? お…、おお」
「ねえ、今日お昼とか、会えるかな?」
「あっ…、ちょっと今日、用事があってな…」

例のカメラのことやら、謎の文書のことやら、話したいことはいっぱいあったのだが、
今は説明する時間が惜しかった。

「じゃあ…、夕方は?」
「んー…、ちょっとまだわからん。ごめん、もぉ(仮名)、今オレ急いでて…」
「そう…。それじゃあとで連絡してよ」
「わかった」

電話を切って部室の前まで走って、ギリギリ約束の時間に間に合った。
ドアを開けると、すでに真野ちゃん(仮名)は支度を整え、オレを待っていた。

「あっ、センパイ(仮名)来た! さっそく先生のところ行きましょう!」
真野ちゃん(仮名)も気合十分だった。

4011:2015/09/16(水) 00:49:43
『フロイライン・エリカ』の講師室は、古びた研究棟の奥にあるとのことだった。

薄暗い廊下を真野ちゃん(仮名)と二人で進んでいくと、
「あっ、ありました。ここです!」と、真野ちゃん(仮名)が指をさした。

『現代ドイツ文学・梅田えりか講師(仮名)』と、ドアのプレートに書いてあった。

「えっ…『エリカ』じゃなくて、『えりか』なの? しかも『梅田(仮名)』って…。
ひょっとして日本人?」

妙齢のドイツ人女教師を勝手に妄想していたオレは、拍子抜けしながら真野ちゃん(仮名)に聞いた。

「そうですけど…。ドイツ人なんていいましたっけ私?」と、怪訝な表情の真野ちゃん(仮名)。

「なんだ…、オレはてっきりドイツ美人の先生が出てくると思ったのに」と、オレが軽口を叩くと、
真野ちゃん(仮名)は、一瞬呆れた表情を見せたけれど、
「日本人だけど…、でも、美人には違いないですよ」と、
オレの耳元に小声でささやいてから。ドアを2回ノックした。

4021:2015/09/16(水) 00:51:49
真野ちゃん(仮名)の話はウソではなかった。

ノックの後、「はぁい♪」と、思ったより高い声の返事がしてドアが開くと、
そこに現れた「えりか先生(仮名)」は、まるでモデルさんのようにプロポーション抜群で、
年齢不詳な感じの、少しバタ臭い顔をした、まごうことなき美人であった。

えりか先生(仮名)から漂ってくる、今まで嗅いだことのない、外国風の香水の匂いに、
オレがボーッとなっていると、真野ちゃん(仮名)が、「ゴホン」と、
一つわざとらしい咳払いをして、オレを睨み付けた。

「なぁに? あーた達、私に何か御用かしら?」
と、えりか先生(仮名)は、オレと真野ちゃん(仮名)を等分に見ながら首を傾げた。

「お忙しいところスミマセン。実は教えていただきたいことがありまして…」と、真野ちゃん(仮名)。

「まあ?何かしら? とりあえず中にお入りなさい」と、えりか先生(仮名)がほほ笑んだ。

4031:2015/09/16(水) 00:54:49
「実は…」
真野ちゃん(仮名)が、カメラのいきさつや、中から出てきた文書のことを説明し始めると、
「まあ…、カメラの中に?」と、えりか先生(仮名)も興味津々といった感じで、
身を乗り出して話を聞き始めた。

「それで、その文書はどうも暗号みたいなんです」と、オレが口を挟むと、
「あーた今、暗号って言わなかった?言わなかった!? すごいじゃない?テンション上がるじゃない!?」
と、何故かすごくうれしそうなえりか先生(仮名) 。

「どうもドイツ語みたいなんですが、私には全然わからなくて…」との、真野ちゃん(仮名)の言葉に、
「いいわよ! この私に見せてごらんなさい」と、えりか先生(仮名)は頼もしげに胸を叩いた。

404名無し募集中。。。:2015/09/16(水) 01:01:40
テンション上げ子懐かしいw

4051:2015/09/17(木) 03:52:32
「いいわよ!」と、頼もしく引き受けてくれたえりか先生(仮名)だったけど…。

いざ真野ちゃん(仮名)から例の紙を受け取って読み始めると、
「うーん…」と、唸ったっきり動かなくなってしまった。

無言のまま五分くらいが過ぎた。
オレと真野ちゃん(仮名)は目を見合わせた。

「あの…、先生…」と、オレが痺れを切らして話しかけた時、
えりか先生(仮名)が意を決したように顔を上げた。

「この文章…、散文みたいで全然文章になっていないのよ…。
思い切って私なりに意訳してもいいかしら?」

オレが思わず真野ちゃん(仮名)の顔を見ると、
「は…、はい。先生の思うとおりに訳してください」
と、真野ちゃん(仮名)がきっぱりとした口調で返事をした。

「それじゃ行くわよ…」と、えりか先生(仮名)。
五クりと唾をのみこむ真野ちゃん(仮名)とオレ。

『ベルリンから帰ってきました! 金色のくまさんがあなたをくまくまにしてあげる。
見つけてくれないと、くまったくまった。ドレスデンより愛を込めて』

と、あくまで真剣な顔をして読み上げるえりか先生だった。

4061:2015/09/17(木) 03:56:33
オレが呆気にとられていると、
「地図は? 地図には何と書いてあるんですか?」と、真野ちゃん(仮名)が言った。

「『ライプチヒのいつもの公園』って…。 三本並んだ木の真ん中に印がついてるみたい」
と、えりか先生(仮名) 。

またオレたちは無言になった。

「『くまくま』とか、『くまったくまった』とか、やたらとクマが出てきますけど…、
何の意味でしょうか?」と、オレは気になったことを聞いてみた。

「さあ…。それは私にも分からない…、けど…」
「けど?」
「ヨーロッパやアメリカでは、昔はソ連の悪口を言うときは、よくクマに例えたみたいよ…」
「ソ連…、ですか…」

そういえば、昔買った戦争のゲームでも、ソ連が攻めてくるシナリオの名前は「赤いクマ」だったな…。
じゃあ「金色のクマ」ってのは何だろう…。

なんてことをオレが考えていると、真野ちゃん(仮名)が、
「やっぱり、スパイとかの暗号でしょうか?」と、生真面目な顔で先生に聞いた。

「うーん…、どうだろうな…。ただこの字…、まるで女子高生が書いたような、
かわいらしい文字に見えるわよ」

4071:2015/09/17(木) 03:59:43
えりか先生(仮名)に丁重にお礼を言ってから、オレと真野ちゃん(仮名)は部室に戻った。
椅子に座ったきり、言葉も出ないまま、オレたちは考え込んだ。

「ちょっと情報を整理してみようか」と、オレが言うと、
真野ちゃん(仮名)がコクンと一つうなずいてから、
「はい」と、素直な声で返事をした。

「まず街の名前が三つ出てきたね…、ベルリン、ドレスデン、ライプチヒ…」とオレ。
無言のまま頷く真野ちゃん(仮名)。

「ベルリンは言うまでもなくドイツの首都だけど…、恐らくこの文書が書かれた当時は、
東西に分かれた、東ドイツの首都だった」
「でも西ベルリン、って言うのもありましたよね」
「うん。ベルリンの半分は西側に属していて、東ドイツの中で西側の飛び地みたいになっていたんだ。
有名な『ベルリンの壁』って言うのは、冷戦の時にその西ベルリンを囲んだもので…」

そこまで説明すると、「そのくらいは私も知ってます」と、ちょっと怒ったように、
真野ちゃん(仮名)が口を挟んだ。

「そ…、そうか」と、オレは少し真野ちゃん(仮名)に気圧されながら話を続けた。

「さて…。ドレスデンだけど、ドレスデンと言えば、連合軍の無差別爆撃で有名だ」
「無差別爆撃…、ですか」
「うん…。ドレスデンには昔からドイツの精密機械工場がたくさんあったから、爆撃目標にされて…、あっ!」
「どうしたんですか?」
「ひょっとしてそのカメラ…、EXAを作ったイハゲー社も、ドレスデンにあったんじゃないのかな?」

「調べてみます!」
そう言うと、真野ちゃん(仮名)は部室のパソコンに向かって、カチャカチャとキーを叩き始めた。

「ありました! そうです! やっぱり私のカメラが作られたのは、ドレスデンの工場みたいです!」
明るい声で真野ちゃん(仮名)が叫んだ。

4081:2015/09/17(木) 04:04:50

「んで…、残りはライプチヒだけど…。旧東ドイツでは、ベルリンに次ぐ大都市のはずだな」と、オレが言うと、
真野ちゃん(仮名)が、パソコンのキーボードをたたきながら、
「文化や音楽の街ですよね…。えーと、『ゆかりの著名人、バッハ、ワーグナー、ゲーテ、森鴎外…』」
と、教科書に出てくるような人物の名前を次々と読み上げた。

「でも、『ライプチヒのいつもの公園』じゃ、いくらなんでも漠然としすぎだ…。これじゃ調べようがない」
とオレが言うと、真野ちゃん(仮名)も「うーん…」とため息をついて黙り込んだ。

「探偵ごっこもここまでかな…」と、オレが言いかけた時、
「私…、ドイツに行って調べてみたい…」と、真野ちゃん(仮名)がポツリとつぶやいた。

「えっ!? 『調べる』って言ったって…。これ以上は何の手がかりも…」
「そうかもしれないけど…。昔のカメラ工場で働いていた人に聞けば、何かわかるかも…」

「いや…、聞いたところで…。さすがにそれは、雲をつかむような話じゃないかな…」
オレがそう断定すると、真野ちゃん(仮名)はぷーっと、ほっぺたを膨らませた。

真野ちゃん(仮名)はしばらく黙り込んでいたけど、やっぱり収まりがつかないのか、
椅子から立ち上がって言った。

「私…、このカメラに呼ばれているような気がするんです! 調べてみて分からなかったらそれはそれでいい!
今、できる限りのことをしてみたい!」

オレが呆気にとられていると、真野ちゃん(仮名)はつかつかとオレの方に進み出てきて、
いきなりオレの手を握り締めて言った。

「だからセンパイも手伝ったください! ねっ!? 私と一緒にドイツに行きましょう!」

その時、突然部室のドアが開いた。

慌てて振り向くと、鬼の形相をした桃子(仮名)が、オレたちを睨んでいた。

4091:2015/09/17(木) 04:08:20
慌てて手を離す、オレと真野ちゃん(仮名)。

桃子(仮名)はつかつかと一直線にオレの前まで歩いてくると、「パンッ!」と、いきなりオレの頬に平手打ちをした。

勢いに押されて、黙り込むオレと真野ちゃん(仮名)。

「ひどい…」
そうつぶやく桃子(仮名)の両目から、一筋の涙がこぼれた。

「センパイ…、連絡してって言ったのに…。『忙しい』って…、
真野ちゃん(仮名)と会うのに忙しかったってこと?」

「いや…、それは…」
弁解しようとするオレにも取り合わず、
「今日センパイに相談したいことあったのに…。センパイはもぉ(仮名)より、真野ちゃん(仮名)の方が大事なの!?」
と、金切声を上げながらオレに詰め寄ってくる桃子(仮名)。

「違うの!桃ちゃん(仮名)!これは…!」
そう叫ぼうとした真野ちゃん(仮名)に向き直った桃子(仮名)は、憎悪に燃える目つきのまま、返す刀で言い放った。

「泥棒猫!」
「えっ!?」
「センパイのこと諦めたとか言ってたくせに! 本当はもぉ(仮名)から奪う気マンマンだったんでしょ!?
この泥棒猫!!」
「そんな…」

「おい…、やめろ!」
真野ちゃん(仮名)に掴み掛りそうな勢いの桃子(仮名)を見て、驚いてオレが止めに入ると、
「何よセンパイ! センパイはもぉ(仮名)より、真野ちゃん(仮名)の肩持つの!? もうホントに許せない!!」
と、ますます半狂乱になって、オレに掴み掛ってくる桃子(仮名)であった。

4101:2015/09/17(木) 04:11:15
「ちょっ…、落ち着け、もぉ(仮名)」
「何が『落ち着け』よ! もーっ!悔しいっ!!」
バシバシと、オレを叩いてくる桃子(仮名) 。

そんな桃子(仮名)を、放心したように見つめる真野ちゃん(仮名)。

その時、部室のドアが開いて、誰かが入ってきた。

「何やってんの…、あんたたち…?」
クールな声がして振り向くと、スーツ姿の吉澤さん(仮名)が呆れ顔で立っていた。

「あっ…、いや…、その…」と、オレが言葉に詰まると、
吉澤さん(仮名)の背後から、もう一人のスーツ姿の小柄な女性が顔をのぞかせて、
何故かすごくうれしそうな口調で言った。

「何?何? ひょっとして修羅場? わあ!キタコレ…!」

うちのサークルの伝説のOGにして、騒動の発端となった呪いのカメラの初代所有者…、安倍さん(仮名)だった。

4111:2015/09/17(木) 04:15:44
「よーしーざーわーさーん(仮名)!」と、
桃子(仮名)は助けを求める子供のような泣き声を上げた。

「まあ…、あんたたち…、3人ともそこに座んなさい」と、吉澤さん(仮名)は言ってから、
「一体何があったの?」と、呆れ顔でオレを見つめてきた。
『だから言わんこっちゃない』と、吉澤さん(仮名)の顔に書いてあるようで、
オレは穴があったら入りたい気分になってきた。

その間も、安倍さん(仮名)は何故かすごくニコニコしながら、オレたちを見回していた。

オレは昨夜からのいきさつや、今日の顛末をこと細かに説明し始めた。
吉澤さん(仮名)に話している格好だけれど、もちろん聞かせたいのは桃子(仮名)にだった。

黙って聞いていた吉澤さん(仮名)は、オレの説明が終わると、
「○○クン(オレ)が悪い!」と、一言の下に切り捨てた。
「…はい」と、オレ。

「んでどうすんの? 二人は別れたいの?」と、突き放したような吉澤さん(仮名)の質問に、
慌てて、「いえ!」と、同時に答えるオレと桃子(仮名)。

「じゃあまず、○○クン(仮名)が桃(仮名)に謝んなさい」と、吉澤さん(仮名)。
「もぉ(仮名)…、すまんかった…。オレが悪かった」と、平謝りのオレ。
「…わかったよ」と、小さな声でつぶやいたものの、
まだ完全には納得していない様子の桃子(仮名)。

そんな桃子(仮名)の様子を見てとったのか、吉澤さん(仮名)が、
「まあ…、桃(仮名)に黙っているつもりはなかったんだけどさあ…、こういう訳で話が急展開してんのよ」
と、「不幸のカメラ」の謎の文書について、説明を補ってくれた。

一通り説明を終えた吉澤さん(仮名)は、「一応納得してくれた?」と、桃子(仮名)に問いかけた。
「はい…。一応…」と、桃子(仮名)が答えると、「そう…。それじゃ次に…、桃(仮名)も真野ちゃん(仮名)に、
酷いこと言ったんでしょ? 謝んなさい」と、これもまた有無を言わさぬ口調で言った。

「真野ちゃん…、ごめん…」と、まだ口を尖らせたまま謝る桃子(仮名)。
「ううん! 私こそ興奮してセンパイの手を握ったりして…。桃ちゃん(仮名)が怒るのも当たり前よね…。 
ごめんなさい」と、真野ちゃん(仮名)は言った。

「よし! 3人の喧嘩は解決したわね。それじゃここからが、本題のカメラの話よ」
と、吉澤さん(仮名)が切り出した。

412名無し募集中。。。:2015/09/17(木) 14:08:46
更新乙ですー

4131:2015/09/17(木) 23:31:04

「昨日までのことを安倍さん(仮名)に話したら、『なっち(仮名)もその文書見たい!』って強く言うから、
今日は一緒に来てもらったのよ…。○○クン(オレ)は安倍さん(仮名)知ってるでしょ?
桃(仮名)と真野ちゃん(仮名)は初めてかしら?」と、吉澤さん(仮名)が言うと、

「よろしくー!」と、異常にフレンドリーな笑顔でほほ笑みながら、二人の手をつかむ安倍さん(仮名)。
「こちらこそ…」と、恐縮した様子で桃子(仮名)と真野ちゃん(仮名)が慌てて返事をした。

「じゃあまず、安倍さん(仮名)から、あのカメラ買った時の話をしてください」と、吉澤さん(仮名)は言った。

「話って言っても、正直なっち(仮名)、そんなに覚えてないんだけどさ…」
と、安倍さん(仮名)は前置きしてから話し出した。

「確か、室蘭のお祭りのフリーマーケットで見つけたのね。売ってたのは外国人のおじさんだったけど、
今思えば、ドイツ人だったかも知れない」と、あまり当てにならなそうな話ぶりの安倍さん(仮名)だった。

「そのおじさんの名前とか、特徴とかはわかりませんか?」と、真野ちゃん(仮名)が勢い込んで尋ねた。
「特徴って言ってもねー。ずいぶん前のことだし、なっち(仮名)もよく覚えて…」と、
安倍さん(仮名)が答えるのを遮るように、
「どんな話したとかも、覚えてませんか?」と、吉澤さん(仮名)が重ねて聞いた。

しばらく小首を傾げて考え込んでいた安倍さん(仮名)は、「そうだ!」と、思い出したように声を上げた。
「確か、仕事は船員さんで、世界中仕事で旅してるって言ってた。カメラは生まれ故郷で買ったって言ってて…、
えーと、確か音楽で有名な街で、すごい作曲家も暮らしていたいたとか…」

「バッハですか!?」と、オレと真野ちゃん(仮名)がほとんど同時に声を出した。
「そう!その人!」と、満面の笑みの安倍さん(仮名)。

桃子(仮名)と吉澤さん(仮名)が不思議そうな顔でオレたちを見た

4141:2015/09/17(木) 23:34:22
不思議そうな顔をする桃子(仮名)と吉澤さん(仮名)に、オレと真野ちゃん(仮名)は、
えりか先生(仮名)の訳してくれた言葉を説明した。

『ベルリンから帰ってきました! 金色のくまさんがあなたをくまくまにしてあげる。
見つけてくれないとくまったくまった。ドレスデンより愛を込めて』

そして地図にあった、『ライプチヒのいつもの公園』…。

「うーん…」
全員が頭を抱えて考え込んだ。

「あのさ…、口出しして悪いけど…、そもそもその訳してくれた先生、大丈夫なの? 信用できるの?」
と、オレの耳元で小声でささやく桃子(仮名)。

「えっ? もぉ(仮名)は真野ちゃん(仮名)と同じクラスだろ? 知ってんだろ?えりか先生(仮名)」
と、オレが言いかけると、
「知らないよそんな人! センパイ、もぉ(仮名)の第2外国語がフランス語ってことも覚えてないの?」
と、また桃子(仮名)が目を吊り上げて怒り出した。

「えっ…、同じクラスなら、2外って一緒じゃないのか…?」と、オレが慌てて聞くと、
「うちの学科は人数少ないから、混合なんです…」と、申し訳なさそうに真野ちゃん(仮名)が口を挟んだ。

「もー! センパイひどいー!」と、また愚図り出す桃子(仮名)。

再び喧嘩が始まるか…、と覚悟した瞬間、「ゴホン!」と、吉澤さん(仮名)が咳払いをした。

「それで…、今のライブチヒを入れて、一応3つの街は何となく話に登場したのね…。
でもそれぞれが何を意味するかは、全然手がかりなしか…」と、吉澤さん(仮名)は言った。

「はい…。オレもここまでが限界だと思うんです…」
そう言いながら、オレはチラリと真野ちゃん(仮名)を見た。

4151:2015/09/17(木) 23:37:15
吉澤さん(仮名)がノートを広げて、これまでにわかったことを整理し始めた。

・ドレスデン(カメラの製造場所)
・ベルリン(東ドイツ首都・ここから何かが来た?)
・ライプチヒ(3本並木の公園・何かが埋められてる? カメラが売られた場所)
・金色のクマとは?

「ちょっとこれ以上は無理かもね…」
少し考えてから吉澤さん(仮名)が言った。

「私は…、ドイツに行ってもう少し調べてみたいんです」
と、真野ちゃん(仮名)がまた言った。

「調べる…って、何を?」と、吉澤さん(仮名)が聞くと、
「ドレスデンの工場で勤めていた人に聞いてみるとか…、
ライプチヒに行って、3本並木の公園を探すとか…」
と、さっきと同じようなことを真野ちゃん(仮名)は言った。

「正直言って…、ずいぶん見込みが薄い話のような気がするな、私も…」と、吉澤さん(仮名)。

「そうかもしれません…。でも、今できる限りのことをしておかないと、
後ですごく後悔するような気がするんです。私一人でもドイツに行って、納得するまで調べてみたいんです」
と、真野ちゃん(仮名)。

吉澤さん(仮名)は、また考え込んでから言った。
「そこまで思ってんなら、もう止めないけどさ…。それにしても真野ちゃん(仮名)一人で行くってのは、
やっぱりどうかなって思う。そんなに危ないことがあるとは思わないけど、何が起きるか分からないし…、
やっぱり、男手があった方がいいんじゃないかな」

みんなが一斉にオレを見た。

4161:2015/09/17(木) 23:39:29
「だからって…、別にセンパイが行かなくても…」
桃子(仮名)が口を尖らせて、ブツブツと呟いてからオレの方を見て聞いてきた。
「センパイもドイツ行きたいの?」

オレは慎重に言葉を探りながら答えた。
「行きたくない、といえばウソになるかな…。乗りかかった船だし、
このカメラの顛末には、確かにオレもちょっと興味ある」

浮かない表情の桃子(仮名)を気遣ってか、吉澤さん(仮名)が口を挟んだ。
「いっそ桃子(仮名)も一緒について行ったら? カメラに興味なくても観光なら興味あるでしょ?」

「あっ! それいいじゃん!」とオレは思わず叫んだ。
「最近オレたち一緒に旅行とかしてないし、ドイツはビール旨いぞきっと。行こうぜ桃子(仮名)!」

桃子(仮名)は数秒真顔でオレを見つめてから、
「もぉ(仮名)だって、行ければ行きたいけどさ…。実は今日センパイ(オレ)に相談したかった話ってのはさ…、
お母さんがちょっと体調崩しちゃって、今晩から実家帰ることになったんだ、もぉ(仮名)…。
大学も当分、自宅から通わなきゃならないし、旅行とかはちょっとムリ…」

4171:2015/09/17(木) 23:43:35
「お母さん…、そんなに悪いのか…?」と、オレ。
「電話では大したことなさそうに言ってたけど…、 帰ってみないと正直分かんない…」
と、心配そうな桃子(仮名)。

沈黙が流れた。

「そうか…。そんなこととは知らず、悪かったな…」
と、オレは桃子(仮名)に囁いてから、真野ちゃん(仮名)や吉澤さん(仮名)たちに向き直って言った。
「すみません。オレはドイツには行けません。今は桃子(仮名)のそばにいてやりたいんです」

再び沈黙が訪れた後に、「当然です!」と、真野ちゃん(仮名)が言うと、
吉澤さん(仮名)と安倍さん(仮名)も、『仕方ないわね…』という表情をした。

「さて…。それじゃどうしようか…」と、吉澤さん(仮名)が言いかけた時、
「センパイ、行っておいでよ!」と、突然桃子(仮名)が声を上げた。
「えっ?」と驚くオレ。

「だってさ…、このカメラのいきさつ知ってる男の子なんて、
うちのサークルにもセンパイのほかにいないしさ…。それに、真野ちゃん(仮名)にも吉澤さん(仮名)にも、
頼りにされてる訳じゃん、センパイ…。行っておいでよ」
桃子(仮名)はさっきまでとは打って変わった、優しい表情で言った。

「でも…」と、オレが躊躇してると、
「センパイが心配してくれただけで、もぉ(仮名)は嬉しいよ。だから行ってきて…、ねっ?
あっ! でも真野ちゃん(仮名)と二人っきりっていうのはダメー!」
と、冗談めかしていう桃子(仮名)の、作り笑顔が痛々しくて、
オレはみんながいなければ、この場で桃子(仮名)を抱きしめたい衝動に駆られた。

「そっか…。二人っきりじゃそりゃ心配だよね。分かった。それじゃ私も一緒に…」
と、吉澤さん(仮名)が言いかけた時、

「心配しないで! なっち(仮名)が一緒について行って見張ってるから! 
真野ちゃん(仮名)となっち(仮名)と、○○クン(オレ)の三人だったら心配ないでしょ?」
と、安倍さん(仮名)が身を乗り出しながら満面の笑顔で言った。

呆気にとられる吉澤さん(仮名)
「は…、はあ」と言って、顔を見合わせる桃子(仮名)と真野ちゃん(仮名)。

「なっち(仮名)も前から行きたかったんだ、ドイツとか! それになっち(仮名)、旅行会社に勤めてるから、
飛行機のきっぷとか安いの探してあげる! 全部任せといて!」

4181:2015/09/17(木) 23:45:52
詳細は後日詰めるということになって、その日はそこで解散した。

安倍さん(仮名)はウキウキとした表情で、
「よっちゃん(仮名)! 久しぶりに晩ご飯一緒に食べようよー」と、言って、
半ば無理やりに吉澤さん(仮名)の腕をつかんで、さっさと部室を出て行ってしまった。

真野ちゃん(仮名)はオレたちに向き直ると、
「桃ちゃん(仮名)、あらためていろいろゴメンね。お母さんお大事にね」
と、何度も念を押してから帰って行った。

ようやく桃子(仮名)と二人っきりになれた。

「もぉ(仮名)、今日は何時までに実家に帰らなきゃならないんだ?」と、オレ。

「夜中まででいいよ…。ねえセンパイ…。部屋の冷蔵庫の食べ物とか片づけてから実家に帰らなきゃならないから…、
今日の夕ごはんは、もぉ(仮名)の部屋で一緒に食べよ…」
そういうと桃子(仮名)はオレの腕をとって、思い切り自分の体をオレに寄せて歩き出した。

419名無し募集中。。。:2015/09/18(金) 08:58:26
更新乙です
wktk
もぎたて召し上がれるか

4201:2015/09/19(土) 03:40:01
桃子(仮名)の家に着いて、桃子(仮名)の手料理…、といっても、
ありあわせのおかずを並べたものだったが、を、二人一緒に食べた。

あらかた食べ終わった後、「はあ…」と桃子(仮名)がため息をついた。

「どうした? お母さんのこと心配なのか?」と、オレ。
「それもあるけどさ…。今日はなんかいろいろと考えちゃって…」と、桃子(仮名)。

「『いろいろ』って?」
「もぉ(仮名)もさ…、気が付いたら19…、いや20歳なわけじゃん(注・この章連載開始当時)」
「…うん?」
「いわゆる『青春』とかさ…、うざいと思ってたけど、あっという間に大学生活も半ばになってさ…、
正直言って、最近焦ってたんだ…、私」

「そういうもんか?」
「うん。だけどさ、真野ちゃん(仮名)なんか、ものすごく青春してるな…、と思って」
「そうか?」
「真野ちゃん(仮名)はセンパイには失恋した形だけどさ…、新しい趣味みつけて、すごくイキイキしてるじゃん」
「…」
「何か最近、真野ちゃん(仮名)のそんなところに、正直嫉妬してた部分もあったんだ…。
だから今日は、カッとなってあんなこと言っちゃったのかな。あーあ!
真野ちゃん(仮名)との友情もこじれちゃった」
「…大丈夫だよ」

沈黙が流れた。

4211:2015/09/19(土) 03:40:50

「今日からは実家に帰るわけだけど…。『寂しい夜にも慣れちゃった…』って、なるのはヤダな…」
と、桃子(仮名)がボソリと言った。

オレは黙って桃子(仮名)の髪の毛を撫でた。

「だけどさ…、真野ちゃん(仮名)にとってみればさ…、この数か月の出来事って、
マンガに出てくるような、ウソみたいなマジの連続だよね」と、桃子(仮名)。
「そうかな…」とオレ。

「そうだよ」と、断定するように答えてから、桃子(仮名)はマジマジとオレの顔を見つめてきた。
「どうした?」
「だいたい真野ちゃん(仮名)みたいな真面目な子が…、何でセンパイみたいなチャラそうな奴に、
恋愛モード全開になっちゃったのか考えたら、不思議で…」
そう言うと、桃子(仮名)は思い出したように笑った。

「お前はどうなんだよ?」
オレが苦笑して聞くと、桃子(仮名)はいきなり真顔になって、
「ねえ、センパイ? もぉ(仮名)のこと好き?」と、聞いてきた。

「なんだよいきなり?」
「ねーえー! ちゃんと答えて!」
「もちろん好きだよ」
「ちゃんと目を見て!」

4221:2015/09/19(土) 03:41:12
オレは桃子(仮名)の目を見つめながら言った。
「Loving you too much so much very much right now」

「何で英語なの〜?」と、笑う桃子(仮名)。
「君に本気で夢中じゃん」
オレがそう言うと、桃子(仮名)はオレの胸の中に飛び込んできた。

「ね…、ドイツに行っても絶対浮気しちゃダメよ! ふったりしたら許さないから!」
と、桃子(仮名)は笑いながら、オレの口をふさぐようにキスしてきた。

絡まり合う舌と舌。

オレはゆっくりと桃子(仮名)をソファーに押し倒した。

「なあ…、ももち(仮名)…、いいだろ…。オレもう我慢できん」
オレはそう言って、桃子(仮名)の首筋にむしゃぶりついた。

考えてみれば、これまでずっと寸止めの憂き目に逢ってきて…、
今日こそは桃子(仮名)を自分のものにしたい、という思いが、オレの中にふつふつと湧きあがっていた。

「もぉ(仮名)も…、もぉ(仮名)も…! もう全部をささげたい!」と、途切れ途切れに言う桃子(仮名)。
「だったら!」
「でもダメ…。もうそろそろ行かないと、電車間に合わない」

久しぶりに会った金曜の夜だと言うのに…、もう離れ離れにならなくてはならないとは!
「大変ツライ。会えないぜ Friday night」

http://www.youtube.com/watch?v=IF9AgZevL2g
ちょっと無理やりだったけど。

423名無し募集中。。。:2015/09/19(土) 08:26:06
先輩チャラい系だったのかw

4241:2015/09/20(日) 03:05:35
一応ここまでが第2部

<ここまでのあらすじ>

オレや桃子(仮名)の所属する写真サークルに2年から入ってきた真野ちゃん(仮名) は、
部内ではあっという間にモテモテの人気者になった。

そんな真野ちゃん(仮名)が保田さん(仮名)の写真店で、巡り合った一台の変わったカメラ。
真野ちゃん(仮名)はすっかりそれを気に入ったけど、実は男運が悪くなる、
「不幸のカメラ」なのだと、OGの吉澤さんは言う。

そんなある日、カメラに隠されていた謎の暗号?が見つかった。
暗号の秘密を探るため、カメラが作られたドイツへ、オレたちは謎解きの旅へ出ることになった。

4251:2015/09/20(日) 03:08:21
<第3部>

桃子(仮名)の実家は千葉の奥地だ。
確かにそろそろ出発しないと、今夜中に辿り着けないかもしれない。

オレは桃子(仮名)から離れるのが名残惜しくて、抱きしめたままでいたかったけど、
「ね…、センパイ…、またすぐに会えるから…。ね?」と、桃子(仮名)に諭されて、
のろのろと身を起した。

中野の駅まで見送ることになり、オレが桃子(仮名)の大きなボストンバッグを持って、二人で駅に向かった。

金曜の夜とあって、中央線のホームにはいつもより多くの人がいた。
二人無言のままホームに佇んでいると、すぐに東京行きの快速電車が滑り込んできた。

「じゃあ…」と、オレが言いかけた時、
「センパイ…、チュウして」と、突然桃子(仮名)が言った。

「ここでか?」と、オレは面食らった。
どちらかというと、桃子(仮名)は人前でイチャついたりするのが苦手なタイプで、
むしろ普段はオレが求めても、顔を真っ赤にして拒む側なのに…。

そんな桃子(仮名)が人前でキスを求めるなんて…。
『やっぱりお母さんのこととか不安なのかな』と、オレは思った。

多少恥ずかしくはあったけど、オレは思い切って桃子(仮名)の両肩を抱いて、静かに口づけをした。

ホームに流れ出す発車メロディー。

慌てたように、桃子(仮名)がオレを振りほどいて電車に飛び乗ったのと同時に、ゆっくりとドアが閉まった。

「桃子(仮名)!」
思わず叫ぶと、ドアの向こうから桃子(仮名)が笑いながら手を振ってきた。

電車が動き出した。

4261:2015/09/20(日) 03:10:13
桃子(仮名)と別れたオレは、ホームから改札口へ向かう連絡通路へと、のろのろと歩き出した。

階段を降りたところで、「○○クン(オレ)!」と声をかけられ、
驚いて振り向くと、目の前に吉澤さん(仮名)と安倍さん(仮名)が立っていた。

「○○クン(オレ)たち、さっきホームでキスしてたでしょ! 隣のホームから見てたよ、ヒューヒュー!」
と、なぜかすごくうれしそうな安倍さん(仮名)と、少々呆れ顔の吉澤さん(仮名)。

「あっ…、いや…、あの…、お二人は?」と、オレが慌てながら聞くと、
「今まで新宿でご飯食べてたけど、中野で飲みなおそうって話になって」と、吉澤さん(仮名)。

「あっ、そうですか…。でも吉澤さん(仮名)の家って、高円寺でしたよね?」と、オレが聞くと、
「なっち(仮名)は中野に住んでるんだよ! ○○クン(オレ)も中野なの? じゃあ一緒においでよ!」
と、安倍さん(仮名)は言うなり、オレの腕をつかんで歩き出した。

4271:2015/09/20(日) 03:13:08
連れて行かれたのは、中野の南口からちょっと歩いたところの、
ダイニングというのか、バーというのか…。
いかにも女性陣が好みそうな、こまっしゃくれた感じの店で、
オレにとっては正直言って、少々居心地が悪かった。

同じ中野に住んでいても、北口方面のオレには、南口のことは全然わからないといってよかった。
そう告げると安倍さん(仮名)は、「なっち(仮名)は逆に北口が分からないの」と言って笑った。

安倍さん(仮名)がカンパリソーダ、吉澤さん(仮名)が黒霧島のロック、オレがバランタインの水割り、
という、三人バラバラなオーダーで乾杯して飲み始めた。

「いやあ、でもいきなりドイツ行くことになるとは、思ってなかったなっち(仮名)。
でも最近休みなかったから、楽しみだなあ!」と、とにかく愉快そうな安倍さん(仮名)とは対照的に、
あまり浮かない表情で黙々と焼酎を飲む吉澤さん(仮名)のことが、オレは少し気になった。

4281:2015/09/20(日) 03:17:52
陽気にはしゃいでた安倍さん(仮名)がトイレに立った時に、
オレは吉澤さん(仮名)に聞いてみた。

「吉澤さん(仮名)…、あまり浮かないようですけど、本当は吉澤さん(仮名)も、
ドイツに行きたかったんじゃないですか? もしそうなら一緒に行きましょうよ」

吉澤さん(仮名)は一瞬憐れむような目でオレを見てから言った。
「○○クン(オレ)、きっと大変よ…。相当覚悟決めてかからないと…」

「…えーと、どういうことでしょうか…?」と、オレ。
「私もさー…、ドイツには行ってもいいかなとは思ってたけど、
なっち(仮名)に振り回されるのはカンベン…」
吉澤さん(仮名)はそう言うと、焼酎のグラスをぐっと煽って続けた。

「○○クン(オレ)さあ…、よほどしっかりしてないと、桃子(仮名)と別れるハメになるわ。
いやあ…、さっきからそのことが、桃子(仮名)に申し訳なくて、浮かない気分なのよ」

「えっ?」
何の話かわからずに、オレはとまどった。
吉澤さん(仮名)は、そんなオレの反応がもどかしいような素振りで言った。
「○○クン(オレ)…、ドイツに行ってる間に、絶対なっち(仮名)に誘惑されて落とされちゃうから…」

4291:2015/09/20(日) 03:18:13
オレはしばし呆気にとられた後、
「いやあ、オレそんなにモテませんよ」と、笑って答えたけど、
「いや…。あんたがモテるとかモテないとか、イケメンだとかブサメンだとかは全然関係ないの。
なっち(仮名)は人のものを見ると、何でも欲しくなる性格なの」
と、吉澤さん(仮名)は全く笑みも見せずに言った。

オレが無言でいると、「なっち(仮名)の学生の時のあだ名知ってる?」と、吉澤さん(仮名)が聞いてきた。
「いえ…」と、オレ。
「『ぬっち』って言うのよ」と、吉澤さん(仮名)。

「えっ…?」と、オレが返答に困っていると、
「なっち(仮名)は、中のいいカップルを見ると、それが先輩だろうが後輩だろうが、
必ず男の方を誘惑しては関係をぶち壊すの。で、そのあとで男の方がなっち(仮名)に夢中になっても知らんぷり。
なっち(仮名)にとっては、しょせんただの遊びだから」

そう言ってグラスを開けた吉澤さん(仮名)は、「同じやつもう一杯」と店員に告げた。

4301:2015/09/20(日) 03:18:30
オレが黙り込んでいると、
「○○クン(仮名)…、なっち(仮名)のことを、私との時と同じみたいに、
後腐れなく遊べるような便利な女と思ったら大間違いよ。なっちはたとえ桃子(仮名)の前でも、
自分が何をしたか、はっきりしゃべっちゃうタイプだからね」
と、吉澤さん(仮名)は少し自虐的な口調で言った。

「吉澤さん(仮名)のことを…、そんな風に思ったことはないですけど…」
オレはそう答えるのが精いっぱいだった。

4311:2015/09/20(日) 03:22:07
吉澤さん(仮名)は少し酔ってるのか、幾分据わった目でオレを見つめてから、
「…まあいいわ」と言って、店員が運んできた新しいグラスに口をつけた。

「どっちにしろ…、なっち(仮名)は○○クン(オレ)を誘惑してくるのは確実。
それでもしも○○クン(オレ)が誘惑に負けたら、桃子(仮名)に関係をばらされて破滅するのも確実…。
それだけは肝に銘じて置くことね…」

その時、安倍さん(仮名)が化粧室の方から帰ってきた。
入れ替わりに吉澤さん(仮名)が化粧室へと立って、オレと安倍さん(仮名)は二人っきりになった。

4321:2015/09/20(日) 03:22:33
オレの顔を見ると、安倍さん(仮名)は「うふふ」と笑ってから、
「よっちゃん(仮名)と何話してたの?」と、かわいらしい声で囁きながら、
上目遣いにオレの目を覗き込んできた。

「いえ…、別に」と、オレは慌てて答えた。

よく見ると…、
この安倍さん(仮名)という人は、やはり強烈な美人と言ってよかった。

もう30歳は超えているだろうに、年齢をまるで感じさせない童顔。
うちのサークルで歴代最も人気が高かった女子…、という噂は伊達ではないとオレは思った。

『もしかしたら、真野ちゃん(仮名)よりも、道重さん(仮名)よりも美人かもしれない…』

そんなことを考えていると、安倍さん(仮名)がいきなりオレの耳元に口を寄せて、
「ねえ…、○○クン(オレ)、この店出たら、よっちゃん(仮名)撒いて、
二人でどっか行っちゃおうよ」
と、甘い声でささやいてきた。

4331:2015/09/20(日) 03:25:44
『据え膳食わぬは男の恥』
とは言うものの…。

吉澤さん(仮名)の脅しは強烈過ぎた。

「『どっか』って…? どこ行くんですか?」と、オレがかろうじて聞き返すと、
安倍さん(仮名)は、「じゃあ、なっち(仮名)の家行こうか?」と、何の屈託もなく笑った。

「安倍さん(仮名)の…、家、ですか…?」と、オレが驚いて聞き直すと、
「うん。一緒にプレステでもやろうよ」と、どこまでも悪びれない様子の安倍さん(仮名)だった。

そんな話をしているうちに、吉澤さん(仮名)が戻ってきた。

「よっちゃん(仮名)、じゃあそろそろ帰ろうか。すみませーん、お会計お願いしまーす」
と、安倍さん(仮名)が店員に向かって手を振った。

434名無し募集中。。。:2015/09/20(日) 03:33:14
ぬっちwww

4351:2015/09/21(月) 03:57:50
店を出て、三人でぞろぞろと中野の駅まで戻った。

吉澤さん(仮名)が中央線で帰ると言うと、
「じゃあ、よっちゃん(仮名)、またねー」と、安倍さん(仮名)が笑顔で手を振った。

駅の改札口へと吉澤さん(仮名)が消えると…。

「じゃあ○○クン(オレ)、行こうか」と、安倍さん(仮名)がオレの腕をとって歩き出した。

オレの肘が、ムニュッと安倍さん(仮名)のオッパイに当たった。

桃子(仮名)や真野ちゃん(仮名)のような、堅い芯のあるオッパイとは違い…、
ただただ、もの凄く柔らかい安倍さん(仮名)のオッパイの感触に、オレは陶然となった。

オレは左肘に全神経を集中する一方で、
「いかん! このままついて行ったら、蟻地獄に落ちる蟻そのものだ」
と、自分に言い聞かせた。

普段滅多にひとの悪口を言ったりしない吉澤さん(仮名)の忠告は、
素直に受け取るべきだと、理性ではよく解っていた。
しかし、安倍さん(仮名)のオッパイの素晴らしい感触が、オレの思考を麻痺させていた。

4361:2015/09/21(月) 04:01:00
その時、オレの携帯電話がいきなり鳴りだした。

『救いの神か!』
オレは「すみません」と言って、安倍さん(仮名)の腕をふりほどき、
ポケットから電話を取り出した。画面を見ると、「公衆電話」と表示されていた。

『誰だろう…?』
そう思いながら電話に出ると、いきなり、
「もしもし! お兄ちゃん!」と、女の子のでかい声が聞こえてきた。

オレをお兄ちゃんと呼ぶこの子は一体誰だろうか?

オレには妹はいないし、間違い電話か…と、一瞬思ったけど、
「○○兄ちゃんでしょ?」と、その子が聞いてきた名前は、まさしくオレの名前だった。

「そうだけど…、誰?」
戸惑いながら聞き返すと、
「ひどーい! えりなの声忘れちゃったの!?」と、おかんむりの様子。

えりな…?

真野ちゃん(仮名)か?
いや…、真野ちゃん(仮名)はこんなに甲高い声ではないし…、
そもそもこんなに馴れ馴れしくはない。

「もう! 衣梨奈だよ、衣梨奈(仮名)!」
「あっ! 福岡の衣梨奈(仮名)か! 久しぶりだから全然分からなかったよ!」

ようやく思い出した。
福岡に住むオレの従姉妹の衣梨奈(仮名)であった。

「それで…、どうした? 何かオレに用事か?」
「衣梨奈(仮名)、家出してきたけん…。今東京駅におると…」
「何!?」

437名無し募集中。。。:2015/09/21(月) 16:07:52
謎解きとかのテーマを盛り込むと自己満足でつまらなくなりがちだから気をつけて

438名無し募集中。。。:2015/09/21(月) 17:41:23
金色のくまさんには期待してる
くまくまにされたい

4391:2015/09/22(火) 01:29:07
本スレにも書きましたが、
当分の間更新できないかもしれません。
よろしくご容赦ください。

4401:2015/09/22(火) 01:49:37
>>437
ここのスレの話は、基本的には4年前に一度掲載した話をそのまま載せています。
明らかにつまらなくなっても大幅な改変はしませんのでご容赦ください

441名無し募集中。。。:2015/09/22(火) 07:56:16
改変とかしなくていいよ

442名無し募集中。。。:2015/09/24(木) 09:18:32
本スレ落ちちゃったんですね
一騒動あったから保全が間に合わなかったか残念です

443名無し募集中。。。:2015/09/24(木) 16:08:42
野中スレの勢いヤバかったもんね

444名無し募集中。。。:2015/09/26(土) 09:32:11
待つわ

445名無し募集中。。。:2015/09/26(土) 12:32:07
いつまでも待つわ

446名無し募集中。。。:2015/09/27(日) 21:00:34
私待つわ

447名無し募集中。。。:2015/09/29(火) 01:18:46
まだかなー

448名無し募集中。。。:2015/10/01(木) 01:43:07
待ってるよ

4491:2015/10/02(金) 20:49:40
「さっき新幹線で着いたばってん、駅の広すぎて、どこ行けばよかか、いっちょんわからんけん…」
と、今度はいきなり心細そうな声に変わった衣梨奈(仮名)。
やはりまだ子供だ。

「しょうがないやつだな…。お前みたいな中学生がこんな時間にうろうろしてると、補導されるぞ。
迎えに行ってやるから、じっとしてろ」
「どがしこかかると?」
「そうだな…、30〜40分」
「そげんかかるん!?」
「最高に急いでそのくらいなんだよ」

電話を切ると、安倍さん(仮名)に向き直って、オレは言った。
「すみません。九州に住んでる従姉妹が、いきなり『家出してきた』って…。
オレ迎えに行きますんで、今日はここで失礼します」

「あらあら! それは大変ね! 早く行ってあげて!」
と、安倍さん(仮名)は思いのほかの笑顔で送り出してくれて、オレは少しホッとした。

4501:2015/10/02(金) 20:51:29
こちらもちょっとずつ更新再開します
怪しげな博多弁を補正するのに結構時間がかかるので
ペースは下がりますがご容赦ください

451名無し募集中。。。:2015/10/02(金) 23:17:25
仮名とかいるのか

452名無し募集中。。。:2015/10/03(土) 17:36:09
わーい待ってたよ

453名無し募集中。。。:2015/10/03(土) 23:36:34
>>451
今と違ってこの連載やってた当時は
桃子のエロ小説とか狼でやるとアンチ扱いされたからな
あくまで桃子に似た他人という体裁にする必要があったんだろ

454名無し募集中。。。:2015/10/04(日) 01:34:03
>>453
それは今も変わらんだろ

455名無し募集中。。。:2015/10/04(日) 16:33:41
今はオーケー

456名無し募集中。。。:2015/10/08(木) 02:44:05
お待ちしてまーす

457名無し募集中。。。:2015/10/13(火) 19:02:30
とりまお待ちしまーす

4581:2015/10/17(土) 02:10:46
安倍さん(仮名)と別れたオレは、大急ぎで中野駅へとダッシュし、
ホームへ駆け上がると、ちょうどやってきた東京行きの快速電車に飛び乗った。

しかし…、突然家出とは…。
一体何があったのだろう?

衣梨奈(仮名)と最後に会ったのは、オレがまだ高校生で彼女が小学生の時。
北海道のオレの実家に、衣梨奈(仮名)の一家が家族で遊びに来て以来のことだった。

とにかく元気で、ちょっとませた子供、
というイメージしかなかったのだか、果たして今会って、すぐに顔がわかるだろうか?

そんなことを考えていると、電車が東京駅に到着した。

急いで改札口を出たところに、黒のニットに黒のプリーツスカート、黒のタイツといった、
全身黒ずくめの大人びた格好をした女の子が、所在無げに立っていた。

4591:2015/10/17(土) 02:24:24
「もしかして…、衣梨奈(仮名)か?」

息を切らしながらオレが尋ねると、
「うわーん! お兄ちゃん! 心細かったよー!」と、
その子(生田似)がポロポロと涙をこぼしながら、いきなりオレの胸に飛び込んできた。

「おいおい…、まあちょっと落ち着け。一体何があったんだ?」
オレがそう聞くと、衣梨奈(仮名)は鼻をすすりながら、いきさつを説明し始めた。

「衣梨奈(仮名)、子供のころからアイドル目指しよったけん…」
「ああ…、そういや『世界一のアイドル目指す』とか、よく言ってたな(笑)」

「そいで…、オーディションがあったから受けたんよ。そしたら1次、2次と、トントン拍子に進んで…」
「へえ…。すごいじゃん」
「そいで、3次審査があさっての日曜日なのに、パパやママが『芸能界やら許しゃん』って言いよって…」
「まあ…、大抵の親はそう言うだろうな…」
「ばってん、1次受けるときは、そげなこつ言うてなかったちゃ。『どうせ受かりっこない』ってバカにしよって」
「ははあ…」
「そいで言い合いになって、埒あかないから家飛び出してきた…」

4601:2015/10/17(土) 02:28:06
オレは少し考えてから言った。
「でも、芸能界ってきっと大変だぞ。悪いプロデューサーのおもちゃにされて、
キモいおっさんと握手ばかりさせられて、売れなくなったらAVとかに売り飛ばされちゃうぞ」

「そげん話も聞きよるけど…。くんつさん(仮名)のところは大丈夫ってネットに書いとった…」

「それで…、今晩どうするつもりでいたんだ? どっか泊まるお金とか持ってんの?」
「そげんお金があったんよら、兄ちゃんに電話したりせん!」

「オレの部屋に泊まるつもりだったの?」
「うん」
「泊めてやってもいいけど…、条件があるぞ」
「何?」
「今すぐお母さんに電話すること」
「ヤダ!」

4611:2015/10/17(土) 02:35:06

「『ヤダ!』じゃないでしょ…」
オレは呆れた気持ちをなるべく顔に出さないように、努力しながら言った。

「たとえオーディションに合格したって、親の承諾がなければ契約してもらえないぞ。
アイドルになりたかったら、頑張って父さんや母さん説得するしかないぞ…」
オレがそういうと、衣梨奈(仮名)は頬を膨らませながら、
「それはそうだけど…」と、つぶやいた。

「それにな、衣梨奈(仮名)…」
「それに?」
「もう夜遅いし、連絡しないときっと、父さんや母さんは警察に届け出るぞ。
同級生の全員の家にも電話して回るだろうよ。そしたら、週明けには学校中の噂になって…」
「いやあっ!」

「だったら…、早く電話しなよ…」
オレはそう言って、自分の携帯電話を衣梨奈(仮名)に差し出した。

衣梨奈(仮名)は少し逡巡する様子を見せた後で、
「ねえ…、兄ちゃんからもママに頼んでくれる?」
と、泣きそうな声で言った。

「まあ…、口添えくらいはしてやらんこともないけど…。あまり期待するな」と、オレが答えると、
「じゃあ、兄ちゃん電話して…」と、衣梨奈(仮名)はオレを上目遣いに見ながら、甘えるように言った。

4621:2015/10/17(土) 02:40:45
「まず、ちゃんとお母さんに謝るんだぞ。それから頼むんだぞ」
オレがそう念を押すと、衣梨奈(仮名)は口を尖らせたまま「わかったよ…」と呟いた。

そんな様子を確認してから、オレはケータイのアドレス帳から、衣梨奈(仮名)の家の番号を探しだした。

福岡の衣梨奈(仮名)の家に電話をすると、呼び出し音が2回も鳴らないうちに、
「はい! 生田(仮名)です!」と、緊張したような声で、衣梨奈(仮名)の母さんが出た。

「あっ、北海道の…、いや、東京の○○(オレ)です…」と、オレが名前を告げると、
「ああ、○○ちゃん(オレ)…、ごめん、今ちょっと取り込んでて…」と、落胆したようなおばさんの声。

「いや…、衣梨奈(仮名)ちゃんのことなんですけど」
「えっ! 衣梨奈(仮名)!?」
「来てるんですよ…。こっちに」
「あら! まあー!」
驚いたおばさんの声には、はっきりと安堵の様子も含まれていたので、オレも少しホッとした。

「うちのバカ娘と替わって下さい!」と、お母さん。
「あっ、はい、いま。あの…、差し出がましいようですけど、衣梨奈(仮名)ちゃんも思いつめてるみたいですから、
あまり怒らないで、話を聞いてあげてください…」

そう言ってオレは、衣梨奈(仮名)に携帯を差し出した。

4631:2015/10/17(土) 02:57:02
衣梨奈(仮名)は一瞬ためらう素振りを見せたけれど、意を決したように携帯をつかむと、
「もしもし…、衣梨奈(仮名)やけど…」と、話し出した。

「うん…、うん…、ごめん…。それは…! うん、確かに衣梨奈(仮名)が悪かったけど…」
と、衣梨奈(仮名)は何やら仏頂面で弁解している様子だった。

しかし、話しているうち、突然満面の笑みを浮かべて、
「えっ?本当? うん!うん! やったー! ママ大好き!」と、嬉しそうに大声で叫ぶと、オレに携帯を手渡してきた。

オレは慌てて携帯を握り、「あっ、電話替わりました」と言うと、衣梨奈(仮名)の母さんは、
「まあ全く困ったもんだけど…。もうそっちに行っちゃったものは仕方ないから、
とりあえずオーディション受けるのだけは許すことにしたから…。まだ全部認めたわけじゃないんだけどね…」
と、渋々といった感じで俺に話した。

「それでね…、迷惑かけて悪いんだけどね、○○ちゃん(オレ)のところで、衣梨奈(仮名)の面倒見てもらえないだろうか?」
と、衣梨奈(仮名)の母さんは言った。

「はあ…。それはまあ、構わないんですが…。でも、いいんでしょうか、オレのところなんかに泊めても?」
「何が?」
「いや…、衣梨奈(仮名)ちゃんも年頃の女の子だし、いくら従兄妹とはいえ、オレみたいな若い男の部屋に…」
そこまでいうと、衣梨奈(仮名)の母さんは「あははははは」と、いきなり笑いだし、
「○○ちゃん(オレ)のところ以上に、安全なところないわー」と、太鼓判を押した。

まったく…。
何とも信用されてしまったものだ。

オレが呆気にとられていると、衣梨奈(仮名)の母さんは、
「日曜日のオーディションやらには、何だか親族の付き添いも要るみたいなんだけど…、悪いけどそれも頼めるかしら?」
と済まなそうに聞いてきた。

4641:2015/10/17(土) 03:04:25
電話が終わり…、

オレと衣梨奈(仮名)は中央線の電車に乗って、中野のオレのアパートへと向かった。

電車の中でも衣梨奈(仮名)は、さっきまでの不安そうな顔とは打って変わった明るい表情で、
アイドルへの夢を語り続けた。 

中野駅で快速電車を降りた後、『お腹がすいた』という衣梨奈(仮名)に、
ブロードウェイの近くのハンバーグ屋でメシを食わせて、
アパートに着いた頃には、もう12時近くになっていた。

部屋に入るなり、衣梨奈(仮名)は「何、この部屋、狭い〜!」と、文句を言った。

「仕方ないだろ。東京の学生の一人暮らしなんて、普通こんなもんだ」と、オレが呆れて答えると、
「ふーん、そうなん…」と、分かったようなわからないような返事をしてから、
「お兄ちゃん、衣梨奈(仮名)汗かいたから、シャワー浴びていい?」と言うと、
オレの返事もろくに聞かぬうちに、衣梨奈(仮名)は鞄からバスタオルを取り出して、
勝手にバスルームへと入って行った。

「はあ…」
一人になって、オレは思わずため息をついた。
この週末、オレはコイツにずっと、振り回されつづけるのだろうか…。

4651:2015/10/17(土) 03:11:00
とはいえ…。

アイドルになるために家出なんて、わが従兄妹とは言え、なかなか思い切った、根性のあるヤツだ。

オレは芸能界のこととかはあまりよく知らなったけど、
それでも自分の従兄妹がアイドルになるかも知れないと思うと、
やはり何となく浮き浮きするような、愉快な気分になってきた。

そんなことを考えていると、意外にも早く衣梨奈(仮名)がシャワーから上がったのか、
ガタゴトという音がバスルームの方からしてきて、オレは思わず振り返った。

「あー、気持ちよかった!」といいつつ、バスルームから出てきた衣梨奈(仮名)は、
こともあろうに、素っ裸に短いバスタオルを一枚巻いただけ、という呆れた格好。

「こ…、こら! お前、なんちゅう格好しとるんじゃ!」

慌てて目を逸らしながらオレが叫ぶと、
「だって…、着替え持って入るの忘れたんだもん!」と、
まるで意に介してないような口調で、衣梨奈(仮名)が答えた。

衣梨奈(仮名)はそのままオレに背を向けると、福岡から持ってきた旅行鞄をがさごそと探り出した。

「おっかしいな…。確かにパジャマ入れたと思ったのに…」と、呟きながら衣梨奈(仮名)が身をかがめた時、
いきなりバスタオルがパラリとほどけ落ちて、オレの目の前に衣梨奈(仮名)の白い背中と丸いお尻が丸見えになった。

「きゃあっ!」と、悲鳴を上げる衣梨奈(仮名)。
思わず目が点になるオレ。

慌ててバスタオルをつかみ上げながら、
「見たでしょ!? 見たでしょ!? お兄ちゃんのエッチ!」と、衣梨奈(仮名)が叫んだ。

「人の部屋で、自分で勝手にそんな恰好しといて、何言ってやがる…」
オレはそう言い返すのがやっとだった。

4661:2015/10/17(土) 03:19:05
バスタオルを巻きなおした衣梨奈(仮名)は、その後もしばらく鞄の中を探していたけど、
やがて、「お兄ちゃん、パジャマ忘れてきちゃったよー」と、泣きそうな声で言った。

「そんなこと言われても…。まあ、オレのTシャツで良けりゃ貸してやるけど…」
「いいよそれで! 貸して貸して!」

オレが収納ボックスの中からTシャツを取り出して渡すと、
「ちょっとあっち向いてて!」と、衣梨奈(仮名)は言いながらバスタオルを外そうとしたので、
オレは慌てて後ろを向いた。

「もういいよ…」
衣梨奈(仮名)の声に振り向くと…。

裸の上に、俺の薄手の白いTシャツを、まるでワンピースのように着てる衣梨奈(仮名)。

ブラジャーもしてないのか、ガキのくせに生意気に、ツンと尖ったオッパイ…。
そして、さすがにパンツは履いてるんだろうけど、
Tシャツの裾から飛び出した、意外にもむっちりとした太もも。

『コイツ…、乳首透けてやがる…。いかん! 息子が、息子が元気者に!』

オレはその場から逃げるようにして、「オレもシャワー浴びてくるわ」と、バスルームへ飛び込んだ。

467名無し募集中。。。:2015/10/19(月) 05:30:56
大量更新あざす

468名無し募集中。。。:2015/10/19(月) 05:39:17
素晴らしい

469名無し募集中。。。:2015/10/19(月) 09:35:49
待ってた

4701:2015/10/20(火) 02:40:53
『落ち着け! とにかく落ち着くんだ! 相手はまだ中学生のガキ。しかも自分の従兄妹だ』
オレはわが愚息に言い聞かせながら、熱いシャワーを浴びた。

しばらくしてシャワーを止めて上がろうとしたら、
部屋の方からオレの携帯電話が鳴っている音に気が付いた。

着信音が二回、三回…。
慌てて体を拭いていると着信音が聞こえなくなったので、
『途切れたか』と思っていると、
「はい。もしもし」と、衣梨奈(仮名)の声。

『あいつ! 勝手にオレの電話出てやがる!』

急いでパンツを穿いてから、バスルームを飛び出すと、
「『あんた誰?』って、あんたこそ誰ね?」
と、喧嘩腰で電話に怒鳴っている衣梨奈(仮名)。

「こら! 何してやがる!」
慌てて電話を奪い取り、「もしもし!」と叫ぶと、
沈黙のまま、ブチッと電話が切れた。

着信履歴を見ると…、
案の定、電話の相手は桃子(仮名)…。

「衣梨奈(仮名)! お前、何で勝手に人の電話なんか出てるんだ!?」
「だって、こんな時間にいつまでも鳴りやまないから、急用なのかと思って…」
「あー、もう! 空気読めよ!」

オレはそう言いながら、慌てて桃子(仮名)に電話をかけた。

「もしもし! もぉ(仮名)?」
「……」
「違うんだ! これには訳が…!」

471名無し募集中。。。:2015/10/20(火) 14:22:35
>>539
あああ…!

472名無し募集中。。。:2015/10/21(水) 08:34:01
なにを予知したんだよw

473名無し募集中。。。:2015/10/21(水) 10:30:46
普通に間違えました恥ずかしいな…

4741:2015/10/22(木) 02:31:25
俺の言い訳をさえぎるように、
電話の向こうで、桃子(仮名)はさっそく大声で喚き散らしはじめた。

「センパイ、(オレ)最低! さっき駅でもぉ(仮名)としたキスは何だったの!?」
「違うんだ、もぉ(仮名)、誤解だよ誤解…」
「何が誤解なのよっ!?」

それから10分近くかけて、オレはひたすら桃子(仮名)に事情を説明し続けて、許しを乞うた。
その間、衣梨奈(仮名)はオレの横で、不服そうに口を尖らせていた。

ようやく状況を理解してくれた桃子(仮名)が、
「もう…、分かったわよ。じゃあもう一回さっきの子電話に出して!」
と、有無を言わさぬ口調で言ってきたので、オレは電話を衣梨奈(仮名)に差し出した。

女二人で何を話そうというのか…?
最初のうちは「はい…、はい…」と、素直に答えていた衣梨奈(仮名)だったけど…。

「はあ…。すみません。えっ? だからすみませんって言ってるでしょ? もう何言うとうと!? しつこい!」
と、叫ぶと、オレに電話を突き出してきて言った。

「衣梨奈(仮名)、ちゃんと謝っとうのに、この人いつまでも『ちゃんと謝って、ちゃんと謝って』って…」
と、衣梨奈(仮名)は怒って叫んだ。

4751:2015/10/22(木) 02:32:22
「はあ…」と、オレはため息をついた。
また桃子(仮名)の悪い癖が出たか…。

オレが電話に出ると、桃子(仮名)は、
「センパイの従姉妹のこと言って悪いけど、もぉ(仮名)、この子キライ!」
と、こちらも激高した様子。

「なっ、もぉ(仮名)…、今日のところは堪忍してくれ…。それよりお母さんの様子どうだった?」
と、オレが何とか話題を変えると、
「そのことで電話したのよ。病気とかじゃなくて、足をねんざしたみたいで…。
正直ホッとしたの。でも店の仕事ができなくなって、本人は塞いでるみたいで…」
と、桃子(仮名)が少し声を落とした。

「そうか…。でも大事なくてよかったな…。もぉ(仮名)が母さんの力になってやれよ」
と、オレが言うと、
「そのつもりだからさ…。あんまり別の心配させないでよセンパイ!」
と、桃子(仮名)は皮肉交じりに言って、電話を切った。

4761:2015/10/22(木) 02:35:04
その瞬間、オレが電話を切るのを待っていたように、衣梨奈(仮名)が叫んだ。
「もう! 兄ちゃん(オレ)の彼女なのかもしれないけど、衣梨奈(仮名)、この人キライ!」

「はあ…」
ため息をついてから、オレは衣梨奈(仮名)を真っ直ぐ見つめた。
「お前なあ…」

そのまま無言で数秒。

「兄ちゃん…、怒ったと?」
と、怯えた表情の衣梨奈(仮名)。

「怒っちゃいないけど、怒りたくもなるぞ…」
オレがそう言うと、衣梨奈(仮名)はオレの目を見つめたまま、
ポロリと涙をこぼすと、見る見る顔が歪んでいった。

「あー! 泣くなよもう! 面倒くせえ!」
「らって…、らって…」
「わかった! わかったから!」

4771:2015/10/22(木) 02:37:11
「なっ? 怒ってないから泣くな…。今夜はもう遅いから寝よう」と、オレが言うと、
衣梨奈(仮名)は「うん」と笑って、すぐに泣き止んだ。

どこまで本気で泣いていたものやら…。

さて。
それにしても困ったのは、コイツをどうやって寝かせるかだ。

オレの部屋には、オレ用のベッドが一つあるきり。
まさか衣梨奈(仮名)と、二人で一つのベッドに入るわけにもいくまい。

オレは押入れから座布団を取り出して、床に敷いた。

「オレはここで毛布にくるまって寝るから、衣梨奈(仮名)はそのベッド使え」
オレがそう言うと、衣梨奈(仮名)は「えっ? 悪いよ兄ちゃん。衣梨奈(仮名)が下で寝る!」
と、驚いたように言った。

「いいからいいから。それともオレが普段寝てるベッドはイヤか?」
「そんなことないけど」
「だったらもう寝ろ。今日は衣梨奈(仮名)も疲れただろ」

そう言ってオレは部屋の電気をちび電にした。

4781:2015/10/22(木) 02:39:35
それにしても…。

今日は波乱に富んだ長い一日だった。

えりか先生(仮名)に聞いて分かった、謎の文書の内容…。
真野ちゃん(仮名)をめぐる、桃子(仮名)との喧嘩…。
そして、吉澤さん(仮名)が「身の破滅」と警告する、安倍さん(仮名)の誘惑…。

とどめに、この衣梨奈(仮名)の家出だ。

『疲れた…』
そう思って目を閉じると、途端に眠りに吸い込まれそうになった。

その時。
「…兄ちゃん、ねえ兄ちゃん、もう寝たの?」と、衣梨奈(仮名)の声。

寝ぼけ眼のまま「どうした?」と聞き返すと、
「眠れないよぉ…」と、か細い声で言い出す衣梨奈(仮名)。

「家出なんかしたから、興奮が冷めないんだろ。
目閉じてろ。そのうち眠くなる」と、オレが言うと、
「そうじゃないの」と衣梨奈(仮名)。

「じゃあどうした?」
「いつも家じゃぬいぐるみと一緒に寝てるから、一人じゃ寂しくて眠れないの」

4791:2015/10/22(木) 02:42:07
「そんなこと言ったって…」 オレが呆れていると、
「ねえ…、兄ちゃんもこっちのベッドに来て! 一緒に寝ようよ」
と、衣梨奈(仮名)はオレが呆れるようなことを、子供丸出しの口調で言った。

「あのなあ…、お前ももう小学生じゃないんだから…、あんまりバカなこと言うんじゃない。寝ろ寝ろ」
そう言って、オレは再び衣梨奈(仮名)に背を向けた。

それから数分…。
オレがうとうとと、眠りに引き込まれ始めたころに、ガサゴソと部屋に物音がし始めた。
『衣梨奈(仮名)のやつが、眠れずに寝返りでも打っているのかな…』
寝ぼけた頭でそう思った瞬間、いきなり衣梨奈(仮名)が、背後からオレの毛布の中に入り込んできた。

「わあっ!」
驚いてオレは跳ね起きた。
「何やってんだお前!?」
「だって…、眠れないんだもん…」と、衣梨奈(仮名)。

「『眠れないんだもん』じゃないだろ…、あっ!」
オレが説教しようとしている間にも、オレの寝床の中に、さらにぐいぐいと侵入してくる衣梨奈(仮名)。

「ちょっ! 衣梨奈(仮名)! 本当にダメだって! 狭すぎるよここ」
「じゃあベッドの方が広いから、ベッドで一緒に寝ようよ! ねえ!ねえってば!」

4801:2015/10/22(木) 02:44:27
とうとう…。
この中学生の従姉妹と、同衾するはめになってしまった…。

二人並んでベッドに入りながら、
『早いとこ背向けて、先に寝ちまわなければ…、とんでもないことになる!』
と、オレは焦った。

そんなオレの心を知ってか知らずか、
「ねえ兄ちゃん…」と、甘い声を出す衣梨奈(仮名)。
「…何だ?」

「さっきの桃子(仮名)って人も…、この部屋に泊まったりすることあるの?」
これはまた…、危険な香りのする話題を始める衣梨奈(仮名)だった。

「あるけど…。いいからもう寝ろ」
「その時は、このベッドで一緒に寝てるの?」
「……」
「やっぱり大学生になったりすると…、その…、エッチなこととかもするものなのかな?」
「あのなあ、衣梨奈(仮名)…」
「お兄ちゃんのエッチ(笑)」
「頼むから、もう寝てくれ…」

4811:2015/10/22(木) 02:46:25
そんなバカなことを喋り続けていた衣梨奈(仮名)だったけど…。

やがて喋り疲れたのか、「ふあーっ…」と、大きな欠伸を一つしてから、
「お兄ちゃん(オレ)、衣梨奈(仮名)もう寝るね。お休み」と言って、ようやく静かになった。

それから数分。

「スー…、スー…」という規則正しい寝息が、衣梨奈(仮名)の方から聞こえ始めてきた。

『速攻寝やがった…。やっぱり疲れてたんだなコイツも…』
ちらりと衣梨奈(仮名)の寝顔を見ると、やっぱりまだ子供の顔…、に見えた。

『よし。オレも邪心を振り払って寝よう』
そう思って、衣梨奈(仮名)に背を向けて目を閉じた。

ようやく、うとうととしてきたその時。
「うーん…」と、寝返りを打った衣梨奈(仮名)が、オレの背中に抱きついてきた。

『コイツ、寝相悪すぎ! いや…、オレをぬいぐるみの抱き枕だと思っていやがるのか!?』

寝顔は子供だと思っていたのに…。
オレの背中に、ツンツンと当たってくる尖った二つの物体…。

482名無し募集中。。。:2015/10/23(金) 04:46:15
きてたー!

4831:2015/10/24(土) 06:15:55
薄いTシャツ越しに、オレの背中にツンツンと当たってくる、
衣梨奈(仮名)の生意気なオッパイ…。

それと、シャンプーなのかリンスなのか化粧水なのかよくわからんけど、
ガキのくせに濃厚に漂ってくる、甘い女の香り…。

『いかん…、こんなとこにいては…』
幸い、衣梨奈(仮名)は気持ちよさそうに眠ってることだし、今のうちにベッドを離れて、
床に敷いた座布団の寝床に戻ろうと、オレは思った。

『よいしょ…』
身を起そうとしたその時、

『!!!』
寝返りを打った衣梨奈(仮名)の脚が、オレの脚にしっかりと絡められてきた。
しかも、布団もTシャツもめくれあがって、衣梨奈(仮名)のお尻が丸見えに…。

『コイツ…、大人もののパンツ穿いてやがる…! ガキのくせに!ガキのくせに!』

「うーん…」
その時、衣梨奈(仮名)が何か寝言のようなことをムニャムニャと言い出して、オレは一瞬固まった。

そのまましばらくすると、またスースーと、規則正しい寝息が聞こえてきた。

『何とかこの体勢から抜け出さなくては…』
そう思った時、眠っている衣梨奈(仮名)が、ゆっくりと規則性を持って動いているのに気がついて、オレは唖然とした。

『コイツ! さっきからオレの太ももに自分の股間を擦り付けてやがる!』

4841:2015/10/24(土) 06:20:09
思わず…、

太ももに全神経を集中してしまうオレ…。

『気のせいか…』と、一瞬思ったけれど、やっぱり衣梨奈(仮名)はオレに自分を押し付けるように、
小さくグラインドしているように感じる。

段々じっとりと湿ってくる、そこの感触…。

間違いない。
衣梨奈(仮名)のやつ、眠りながら俺の太ももを道具にオナッてやがる。

さっき寝る前に桃子(仮名)とのエッチの話なんかをオレに聞いてきたのが脳内に残っているのか、
それとも毎日ぬいぐるみを抱いて、こうするのが癖になっているのか。

情けないことに、すでにビンビンにいきり立っているわが愚息。

『いずれにしろ、コトが一段落するまでは、オレも動くわけにいかないではないか…!』

そう覚悟を決めた時、後ろから衣梨奈(仮名)の腕が伸びてきて、オレの乳首のあたりに、
細い指が触れてきた。

『アッー!』
呆気なく第1チンポ汁を発射してしまうオレ。

485名無し募集中。。。:2015/10/24(土) 08:05:23
第一チンポ汁ってなんだよww

4861:2015/10/25(日) 05:10:41
それからしばらくの間…。
衣梨奈(仮名)は小刻みな動きをし続けた。

それも一様に動き続けるわけではなく、ちょっと動いて止まったり、また少し動いたりと、
誠にわがまま勝手極まるものであった。

まあ…。
寝てる子供にそんなこと言っても始まらないのだが…。

一連の動きがようやく収まったのは、小一時間もしてからのこと。

それが済むと衣梨奈(仮名)は、もう寝返りも打たずに、すやすやと深く眠り続けてたけど、
オレの太ももに絡められた脚は解けないままだった。


それから何時間経ったのか…。
俺が半勃ちの息子を持て余したまま、まんじりともできずにいると、
やがて窓の外が少しずつ明るくなってきたのだった。

4871:2015/10/25(日) 05:12:54
しばらくして…。

寝るのを諦めたオレが、衣梨奈(仮名)の脚をどかしてベッドを出ようとしたら、
衣梨奈(仮名)が目を覚ましたのか、「兄ちゃん 今何時?」と、寝ぼけたような声で聞いてきた。

時計を見ると5時だった。

「まだ早いから、寝てろ」
オレはそう言って、トイレに行ってから戻ってくると、ベッドには入らずに下の寝床に入った。
部屋が薄明るくなってくると一人でも寂しくないのか、衣梨奈(仮名)はもう何も文句を言わなかった。

『これでようやく眠れる』
そう思ったのと同時に、オレはストンと眠りに引き込まれた。

4881:2015/10/25(日) 05:14:37

「お兄ちゃん! 朝だよ! もう起きて!」
そう言って、衣梨奈(仮名)に揺り起こされたのは、それからたった3時間後のことであった。

「まだ8時じゃねえかよ…。もう少し寝させて…」と、オレが毛布にくるまりながら言うと、
「何言ってんの!? もうたっぷり寝たでしょ! それに衣梨奈(仮名)練習しないと」と、
衣梨奈(仮名)がオレに顔を近づけてきて言った。

「練習? 練習って何だよ?」
「オーディションで歌う、歌の練習」
「ここでか?」
「ダメ?」
「隣から苦情くるぞ…」
「じゃあ、カラオケボックス連れてって」
「もうちょっとしてから…」
「ダメ! 練習不足でオーディション落ちたらどうすんのよ!」

そう言うと衣梨奈(仮名)は、オレから毛布を奪い取った。

4891:2015/10/25(日) 05:18:00
衣梨奈(仮名)に強引に引っ張られるようにして、オレたち2人は中野駅近くのカラオケ屋に行った。

部屋に入るなり、衣梨奈(仮名)は手慣れた手つきで、リモコンを繰って曲を入れた。

イントロが流れ出したところで、「何この曲?」と聞くと、
「『リルぷりっ』の曲だよ。明日歌うの」と、衣梨奈(仮名)は答えた。

「『リルぷりっ 』って何だ?」
「お兄ちゃん、『リルぷりっ』も知らないの?」

とか言ってたところで歌が始まって、衣梨奈(仮名)は真剣な顔で歌いだした。

段々と眠りに落ちそうになるオレを、時折いちいち叩いて起こしながら、衣梨奈(仮名)は歌った。

歌が終わって、「どうだった?」と聞いてくる衣梨奈(仮名)。

「あー、うまかったよ」と、テキトーに答えると、
「もう! そんな抽象的な答えじゃなくて、ちゃんとどこが上手いとか、どこがダメとか指摘してよ!
もう一回歌うから、今度は真面目に聞いてよね!」

再びリモコンを手にして、リピート再生を始める衣梨奈(仮名)。

ひょっとして今日一日、これがずっと続くのだろうか…。

4901:2015/10/25(日) 05:23:49
衣梨奈(仮名)は何度も同じ歌をリピートし続けて、そのたびにいちいちオレに感想を求めてきた。

寝不足のオレにとって、正直これは拷問以外の何物でもなかったけど、仕方ないので、
「もっと表情にも気をつけた方が」とか、「今のは声がよく出てた」とか、テキトーな論評をし続けていた。

かれこれ13回は聞かされただろうか…。

「おい…、もうそろそろいいんじゃねえの? あんまり歌いすぎて喉痛めたらどうするんだよ?」と、オレが言うと、
衣梨奈(仮名)はちょっと不満そうな顔をしたけれど、「じゃあこれで終わりにするけん…」と言って、
最後のもう一回を歌った。

カラオケ屋を出たのは、ちょうどお昼頃だった。

オレは眠くて家に帰りたかったけど、衣梨奈(仮名)は、
「せっかく東京に来よるんやし、夢の国とか行ってみたい」と、わがままなことを言い出した。

「今からかよ? 結構遠いんだぞ」と、オレが言うと、衣梨奈(仮名)は一瞬唇をとがらせた後、
「じゃあ、お兄ちゃん(オレ)の大学見てみたい!」と言って、強引に腕をとって歩き出した。

「まあ…、そのぐらいなら連れて行くけど…」とオレ。

491名無し募集中。。。:2015/10/26(月) 03:51:57
最近の若いやつには
第一チンポ汁が通じないのか

492名無し募集中。。。:2015/10/26(月) 15:48:43
ガマン汁のこと?

493名無し募集中。。。:2015/11/06(金) 08:56:13
おお、11月入ったかー気長にお待ちしてます

494名無し募集中。。。:2015/11/13(金) 00:19:33
このあたりまでは読んでたなー
こちらもあちらも待ってます

495名無し募集中。。。:2015/11/14(土) 23:15:07
かもんかもん!

496名無し募集中。。。:2015/12/25(金) 21:19:21
再開してくれー

497名無し募集中。。。:2017/08/09(水) 14:32:00
桃子関連で懐かしくなって来てみた

498名無し募集中。。。:2018/03/19(月) 03:17:34
素晴らしい

499名無し募集中。。。:2019/01/18(金) 00:48:49
上げ

500名無し募集中。。。:2019/12/05(木) 01:54:57
生田みたいな疫病神出したのが失敗のもと

501名無し募集中。。。:2019/12/05(木) 15:23:35
昨日あの回を見て菊地の有能さを痛感したから
菊地って単なるひな壇アイドルじゃなくて実質二人目のMCだったよな
もうアイドルではないのでアイドル番組の中での存在感を語っても
全員卒業してるから一人の芸能人としての評価になる
誰かのようにグループの中で推されていても一人になると何も出来ずやがて・・・
いるよ
https://ameblo.jp/juicejuice-official/entry-11836293090.html
https://pbs.twimg.com/media/EKyXdYeUEAEB9nr.jpg
朝日は客観的な視点で自分の現状をしっかり理解して未来のことを考えていて頭が良かったと言うこと
朝日の頭のキレは想定外だったね
馬鹿だから無理かもと評価してたんだが
朝日が頭悪ければ未だにモデルをやりたいとか言いだしていただろうからな
頭が良いから十円玉挟むんだよ
あんなことでつかみがしっかり取れるのならこれほど簡単なことは無い

502名無し募集中。。。:2019/12/05(木) 15:24:21
朝日、ルリたん、大川しか生き残らないと思ってたが大当たりだ
大川は寿だから良いけど
えなこと顔の大きさを比較される芸とかありだろ
必要以上に綺麗な特別に用意した10円玉よりどこにでもあるような普通の10円玉を使った方が良いと思うが
朝日売れて事務所の序列もかなり上がっただろうな
取り巻きが頭悪くても朝日自身の力で売れたんだろうな
ボックスは取り巻きが良かったのに売れずにクビか
そろそろ歌出すかもな
まいぷるのことをまいぷるさんって呼ぶヲタは
そいつの推しがまいぷるのことをまいぷるさんって呼んでる影響
トレーナー付けて絞ってる成果出てるね
https://pbs.twimg.com/media/EK_o0LgUYAIDZo7.jpg

503名無し募集中。。。:2021/06/02(水) 02:22:24
あげ


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