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SSスレ「マーサー王物語-サユとベリーズと拳士たち」

815 ◆V9ncA8v9YI:2015/12/29(火) 03:28:08
変顔はともかく、華麗に滑りながら攻撃する戦法はなかなか見事なものだ。
ハーチンのバランス感覚ならば、アユミンがツルツルに均した地面の上でも転倒せずに活躍出来るかもしれない。
先輩剣士と連携可能であれば技のバリエーションも増えるため、実戦が非情に楽しみになってくる。
そんなハーチンに続こうと、もう一人の新人剣士が準備をし始める。

「ハーチンの戦い方は本当にfabulousだなぁ……そろそろ私も行かなきゃ。
 あ、その前に先輩方にご挨拶か……」

二人目の新人は少しボーっとした、どこか田舎臭い雰囲気を残した少女だった。
彼女の名はノナカ・チェルシー・マキコマレル。異国での修行経験を誇りに思っている。
異国語を「覚えた」ことのあるマーチャンも、そこに興味を持ったようだ。

「外国の言葉話せるの?」
「Yes!」
「喋ってみて。」
「How are you doing? I am fine.
 I'm so happy to be a member of this team.
 Why don't we talk about the globalization of Moning empire's swordwoman together?
 I want to liven up the Military strength with you all!」
「What do you want? Is it necessary?」
「Oh! マーチャンさん、さすがです。」

異国語となると急に流暢に喋りだすノナカに、マーチャン以外の先輩剣士らは困惑してしまった。
その中でもエリポンだけはなんとか話に入ろうと頑張ってはみたものの、
語学力が足りないために「I am a pen!」としか言えなかった。
そうこうしているうちに、ハーチンがノルマの100人斬りを達成する。

「よっしゃ終わった!ノナカちゃん交代な〜……ってあれ?ノナカちゃんどこに消えた?」

もうすぐ出番だというのに、さっきまで先輩の前で自己紹介していたというのに、
ノナカは足音も無くその場から消え去ってしまっていた。
いや、正確には「足音が無い」というワケではない。非情に聞き取りにくいだけで有るには有るのだ。
帝国剣士の中でも特に優れた音感を備えたカノンとマーチャンだけが、一般兵の密集地帯へといち早く視線を向ける。

「あそこだ!ノナカちゃんはもう戦闘開始してるんだよ!」

カノンが叫んだころには既に、ノナカは柄の部分に紐のついた忍刀をぐるりと回して、周囲の敵をぶった切っていた。
音が鳴るよりも速く刀を投げつける芸当は、忍刀「勝抜(かちぬき/かつぬき)」がおもちゃのように軽いからこそ出来ることだ。
この「無音切り」を自身の代名詞としているノナカだが、彼女の特徴はそれだけではなかった。
次の行動が、特にエリポンを驚愕させる。

「アクロバットまでやりようと!?」

周りの兵をあらかた切り終えたノナカは、次の敵が集まるところへと前転で移動していた。。
他にもバク転や側宙など、エリポンを彷彿とさせるアクロバットで相手を翻弄する。
回転数や力強さなどは先駆者であるエリポンに軍配が上がるが、その代わりノナカの器械体操はとても静かだった。
音をほとんどたてずに縦横無尽に跳び回る様はまるで忍者のよう。
海外生活の長いノナカは、それが反動となって母国の文化に強い興味を持つようになっている。
その結果、はるか昔の暗殺者として実在したとされる忍者の戦闘スタイルを好んで取り入れたのだ。

「はぁ、やっぱりみんな西洋の鎧ばっかり着てるなぁ……忍者がいなくてちょっぴりSHOCK……」


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