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SSスレ「マーサー王物語-サユとベリーズと拳士たち」

804 ◆V9ncA8v9YI:2015/12/26(土) 17:33:43
舞台に主役が登場することで、会場は一気に静まり返る。
純白のドレスと、金色に輝くティアラで彩られた新王フク・アパトゥーマに目を奪われているのだ。
普段は軍服や訓練着ばかり着ているイメージが強いため、誰もがその美しさに息を飲む。
だが、しばらく経つと来場客はまたざわつき始めた。
フクではなく、その三歩後ろについている帝国剣士団長に注目している。
関係者席にいるサヤシも、その事実が公に晒されてしまったことにガックリきていた。

「はぁ〜……なんでエリポンなんかが剣士団長になってしまったんじゃ……」

王の後ろの帝国剣士団長は、新任のエリポン・ノーリーダーと、従来通りのハルナン・シスター・ドラムホールドの2名だった。
今後はそれぞれがQ期団と天気組団の団長をも兼ねることになる。
この時のエリポンの表情はドヤ顔にも程があり、
今すぐにでも「これが現実です。」と言いたそうな雰囲気を醸し出している。
このまま放っておけば会場はいつまでもざわついていたのだろうが、
フク王が拡声器に手を伸ばすことでそれもピタリと止む。
やはり主役はフク。みな彼女の演説を聞きに来たのだ。
最重要同盟国であるマーサー王国の面々もこれは見逃せない。

「ほらフクちゃんのスピーチが始まるよ。 あの時モモが晴れさせたおかげで王になれたんだよね。」
「え?クマイチャン何言ってるの?意味が分からないんだけど……」
「またまたぁ。」

誰もが新王フクの力強いスピーチを期待したのかもしれない。
先代サユがやってみせたように、人の心を鷲掴みにする話術を見たいと思うのは当然だろう。
だが、残念ながらフクにはそんなトークなどできやしない。
弱々しいかもしれないし、文量もサユと比べてずっと短いが、
フクは自分の思いの全てを言葉に詰め込んでいた。

「モーニング帝国史上、最も頼りない帝王だと思われてしまうかもしれません。
 でも、タカーシャイさん、ガキさん、レイニャさん、アイカさん、
 そしてサユさんに教わったことには誰よりも自信があります。
 サユさんのように背中で語ることは出来ないと思いますが、
 みんなで頑張っていくことは出来ると思うので、精一杯頑張りますので、
 これからのモーニング帝国をよろしくお願いします。」

本心を言葉にしたフクに対する反応は、文句無しの拍手喝采だった。
立ち上がりながら手を叩く人たちまで視界に入ってくる。
確かにサユのような名演説とは言えないかもしれないが、
この場にいる人々の心を掴むには十分すぎたのだ。

「さて、それでは仕上げですね。」

ハルナンが重厚そうな剣を取り出し、フク王に膝をついて手渡した。
王が剣を取り、力強く掲げることが恒例の儀式となっているのだ。
フクは宝石が贅沢に散りばめられた剣を見て、
剣士時代愛用していた装飾剣「サイリウム」のことを思い出した。

(懐かしいなぁ、確かにアヤチョ王に折られちゃったんだっけ……
 剣士だった私を支えてくれてありがとう。
 そして王となる私をこれからも支え続けて欲しい。」

フクは鞘から剣を引き抜くと、雲ひとつない天空へと突き上げた。
その剣は装飾剣「サイリウム」のようにピンク色単色には輝かない。
決闘の日の模擬刀のように虹色の7色にも輝かない。
新たなる剣は太陽に照らされることで13色に輝くのだ。
王が握るに相応しき装飾剣、その名も「キングブレード」。
その剣が放つPRISMのGRADATIONは、この国の全ての「かがやき」を表現している。


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