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SSスレ「マーサー王物語-サユとベリーズと拳士たち」

631 ◆V9ncA8v9YI:2015/10/24(土) 11:47:25
レイピアは一筋の光のように鋭く、オダの脚の中へと侵入していった。
ところが剣の切っ先は長く刺さることはなく、
すぐにサユの側へと引き戻されてしまう。
つまりは細い針がたった一瞬突き刺さっただけのこと。
健康診断で注射を受けるのと同程度の痛みしかない必殺技に、オダはまたも困惑する。

(これが必殺技って……サユ王、いったい何を考えてるの?)

訓練場を一撃で壊滅状態にしたクマイチャンの必殺に比べると、サユのヘビーロード"派生・レイ(一筋)"はあまりにも弱すぎる。
だがオダはもうサユの実力が劣ってるなどとは思わなかった。
必ず何かある。そう信じて一旦退くことに決めたのだ。
元気をとり戻したとはいえ、サユの脚からはまだ血が流れ続けている。
あの状態で瓦礫の山を移動するのは困難であるはずなので、
逃げ回りながら戦う作戦へのシフトを考えていた。
しかし、サユの必殺技はそれをさせなかった。

「えっ!?脚が重い……」

少し段の高いところに上がろうとしたオダだったが
急に脚が重くなったために中断せざるを得なくなってしまった。
原因は疑うまでもない。さっき喰らったサユの必殺技に決まっている。
そう思ってサユの側を振り向こうとした時には、既にふくらはぎを3回刺されていた。

「!?」
「重いでしょ?もっと重くしてあげる。
 ヘビーロード"派生・アフターオール(結局)"。」

このまま喰らい続けるのはまずいと考えたオダは必死で逃走しようとする。
すると意外にも彼女の脚は高くまで上がることが出来ていた。
これならばサユと距離を取ることも出来るかもと思ったが、
3、4歩ほど歩いたところで転倒してしまう。
結局、脚の重さには勝てなかったのだ。

「!?……なんで、なんで動けない……」
「オダ、あなたのことだからきっと毎日のように瓦礫の上を走る訓練をしてたんでしょ。」
「なんでそれを……!」
「疲れてるのよ、その脚。 針の感触から全部わかる。
 そんな脚ならね、ちょっといじめてやるだけで十分潰せるの。」
「!!」

サユの細いレイピアには二つの役割がある。
一つは相手の脚の状態を把握するための触診としての役割。
そしてもう一つは筋細胞を潰すための攻撃手段としての役割だ。
すぐに相手を殺せるような即効性は持ち合わせてはいないが
じわじわと相手をなぶるような、えげつない戦法を得意としている。


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