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SSスレ「マーサー王物語-サユとベリーズと拳士たち」

624 ◆V9ncA8v9YI:2015/10/23(金) 08:41:32
サユの秘密。
それは多重人格者であることだった。
彼女の器の中には「マリコ」という人格が同居していて、
数年前からはそのマリコとも対話できるようになっていたのだ。
しかしこのマリコ、非常に幼稚な性格をしており
気に入らないものを捻り潰すまで暴れることも珍しくはない。
美しく戦うことを信条とするサユとはまったくの大違い。
共通点といえば自分を好きなことだけ。
そのためサユはマリコを外に出さぬよう常に尽力していたのだ。
今もこうしてサユとマリコとで自問自答をしている。

(マリコ!大人しくしなさいってば!)
『やなの!やなの!あいつ生意気だから〆てやるの!』
(あなたが出たら本当に殺しちゃうでしょ……)
『それの何がダメなの?あいつはマリコの脚を斬ったの。万死なの。』
(帝国剣士は私の可愛い後輩たちなのよ。それを傷つけるなら例え自分でも許さない!)
『うるさいの。さっさと肉体よこせなの。』
(そっちがその気ならこっちにだって手が有るわ。)
『なんなの?』
(あなたがオダの命を奪ったら、私は自害する。)
『え?……』
(マリコ、あなたの活動時間はそう長くはないはずよ。
 肉体が私に返ってきたらすぐに心臓に刃を入れてやるわ。)
『なんでなの!?そんなことしたらマリコもサユも消えちゃうの!
 頭がおかしくなっちゃったの!?』
(嫌なら大人しく眠ってなさい。少なくともあの子たちの決闘が終わるまではね。)
『むぅ……最近表に出てないから暴れ足りないの。』
(それなら安心して。きっと大暴れできる日は近いはずよ。)
『そうなの?』
(もうすぐで帝王のお仕事はおしまい。そしたらエリチンやレイニャ達と毎日遊びましょう。
 だからちょっとの間だけ我慢して。)

ふぅ、と息を吐いてサユは腕に刺さったマンゴーシュを抜いていった。
かなりの損傷だというのに、今の彼女はもう苦悶していない。
とても晴れやかな表情をしている。

「失礼。それじゃ続きを始めましょう。」

凶悪な感じがすべて抜け切ったはずのサユだったが
オダはそんな彼女を見て、さっき以上に恐怖を感じてしまう。
そしてそれはオダだけではなく、他の帝国剣士たちも同様だった。

「サユ王の身体から……光が出てる……」


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