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SSスレ「マーサー王物語-サユとベリーズと拳士たち」

612 ◆V9ncA8v9YI:2015/10/21(水) 18:09:51
「メインイベントも良いけど、今はエキシビジョンマッチに注目してほしいな〜」

マーサー王たちにそう言い放ったのは、いつの間にか訓練場の中央辺りまで移動していたサユだった。
いつもの豪華なものとは異なった、動きやすい訓練着を着用しており
その両手には鏡のように美しく磨かれたレイピアとマンゴーシュが握られていた。
対戦相手であるオダ・プロジドリを負かすために、一時的に剣士に戻ったのである。
この極めて希少な光景に帝国剣士一同は湧き上がったが、
ここで、余計なことが頭をよぎってしまった。

「ねぇみんな……ちょっと思ったんだけど……」
「カノンちゃんも思ったと?……ぶっちゃけサユ王って……オーラ薄いよね。」

エリポンは決してサユに聞こえないくらいの小さな声でカノンに返した。
本来ならば一国の王に対してオーラが薄いなどとは到底言えないはずなのだが
フクもサヤシもそれに対して非難することなく、コクリと頷いてしまった。

「サユ王だってあの時代を戦い抜けた伝説の戦士のはず。
 でも、マーサー王様やマイミ様と比べると……」

帝国剣士らは食卓の騎士の放つプレッシャーの凄さを知ってしまっている。
時には身体を重くしたり、時には血を凍らせたり、時には嵐を起こしたりと
凄腕の戦士から滲み出るオーラは天変地異のようなビジョンを見せてくれていた。
ところが、サユにはそれが無いのだ。
もちろんサユにだって威圧感はある。だがそれは良いとこアヤチョやマロ、マノエリナ程度。
食卓の騎士には遠く及ばない。
では戦士を退いたブランクでそうなったのかとも思ったが
そもそも戦士では無いマーサー王があれだけ尊いオーラを纏ってるのだから、言い訳にもならない。
これまで尊敬していたサユ王が大したこと無いのかも……と思い始めた帝国剣士たちの心境は複雑だった。

「ひょっとしてオダちゃんにも負けたりして」
「エリポン!そんなバカなこと言っちゃダメ!」

言葉ではそう言うフクだったが、心から固く信じることは出来なかった。
決闘前にこんなに心を乱しては良く無いと思い
首をブンブン振ってから、改めて中心へと目をやった。

「あれ、そう言えばオダちゃんはどこにいるんだろう……」

もうエキシビジョンマッチが始まる時間だというのに、中央にはサユ王しかいなかった。
マーサー王に礼する時は確かにいたのに、いったいどこに消えたのだろうか?

「ちょっとオダー? あなたが戦いたいってい言い出したんだからさぁ……」

サユは呆れたような顔をして、剣を持つ腕をダラリと下げた。
せっかくこの日のために用意をしてきたのに、遅刻で無効試合だなんて締まらない。

「あと1分で約束の時間じゃない……本当にどこに行ったのあの子。」

決闘の場にサユだけ立っている、といった時間がしばらく続いた。
開始時間まで残り10秒といったところでもそれは変わらない。
残り3秒
残り2秒
残り1秒

約束の時が来た、まさにその時。
サユ王の右ももから間欠泉のように血が吹き出していく。

「……え?」


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