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SSスレ「マーサー王物語-サユとベリーズと拳士たち」

492 ◆V9ncA8v9YI:2015/09/16(水) 19:51:21
「ああああああああああ!!あああああああああ!!!!」

アヤチョは叫びに叫んでいた。
自分の責任でハルナンを傷つけたことが、半身を失うよりも辛いのだ。
己の不甲斐なさをどこにぶつければ良いのかも分からず
戦闘中だというのに、ただただ大声を出している。

「ハルナン目を覚ましてよ!目を、目を、お願いお願いお願い!!!ぎゃあああああ!!」

完全に取り乱しているアヤチョに対して、フク・アパトゥーマは冷静だった。
激痛の走る足に負担をかけないように、地を這いながらゆっくりとアヤチョから離れていく。
今のアヤチョは隙だらけに見えるが、
そうとも限らないことをフクはこれまでの戦いで学習している。
むしろ激昂することで今まで以上に攻撃が激しくなることだってありえるのだ。
現在の足の状態ではダッシュやバックステップで猛攻を掻い潜ることは非常に難しいため、
今は距離を置くことにする。

(とは思ったけど……アヤチョ王の様子、なんだかおかしい。)

ハルナンの敵討ちのために怒り狂うと思われていたアヤチョだったが、
その予想に反して現在の姿はとても弱々しかった。
激しいのは泣き喚く声のみ。それ以外はどんどん萎れていっている。
その原因は、アヤチョのエネルギー源のほぼすべてがハルナンとの友情に起因していたからに他ならない。
アヤチョは自らの手でハルナンを傷つけたことで、友情が完全に消え去ってしまったと思っているのだ。
こんなことをしでかしたからには、どれだけ謝っても許してはもらえないだろうと、勝手に決め付けている。
この世でただ一人の友達を失ったアヤチョの胸の内は、もう空っぽ。
何もかもが虚しくなった結果、戦う気まで失せてしまったのである。

「ハルナン……ハルナン……涙が止まらないよ……」

そんなアヤチョを見て、フクは勝てるかもしれないと思い始めてきた。
壊れかけの足で床を踏みしめては、
廃人寸前のアヤチョの元へと近づいていく。

「アヤチョ王……覚悟してください。」
「?……あれ、あれ……身体が動かないや」

装飾剣「サイリウム」を握ったフクが接近してくるというのに、アヤチョは何も出来なかった。
彼女の精神はもはや己の身体すらも動かすことが出来ないほどにまいっているのだ。
アヤチョの胸が空っぽである限り、フクの脅威を免れることなど出来やしない。


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