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SSスレ「マーサー王物語-サユとベリーズと拳士たち」

470 ◆V9ncA8v9YI:2015/09/10(木) 13:00:02
「許せない……」
「ん?」
「こんなことが許されていいわけありません!」

フクの年齢はアヤチョ王よりもやや下ではあるが
この時の激怒した姿は、まるで生徒らに指導をする監督生のような迫力があった。
(隣に鞭を構えたお姉様がいれば完璧だ。)
本来守らなくてはならないはずのタケ達を痛めつけたことが
普段滅多に怒らないフク・アパトゥーマの琴線に触れたのである。
もっとも、アヤチョの考えがすべて理解できないという訳ではない。
狂信的とはいえハルナンを愛することは良きことだし、
大切な存在のためなら何だってしてやろうと思うことはフクにだってある。
フクにとってのエリポン、サヤシ、カノンがアヤチョにとってのハルナンなのだろう。
だが、フクは自国民を憎むべき敵とみなしたことは一度たりともない。
形式上ハルナン達とは敵対してしまっているが、そこに悪意や殺意がある訳ではないのは明らかだ。
どちらかと言えば「守りたい」という思いが強いからこそ戦っている。
一方、アヤチョは自分の口からも言った通り、国民への愛情はこれっぽっちも無いようだ。
一国民ならばそういう考えを持つ人もいるかもしれないが
アヤチョはアンジュ王国の王なのだ。
王がそんな考えでは国が持たない。
大勢が不幸になる。

「アヤチョ王……あなたは私の越えるべき壁なんですね。」
「え?ん?何言ってるの?」
「あなたを正すこと、それが私が王になるための第一歩です!」

モーニング帝国の帝王になりたい。
フクがそう強く願うのは、これがはじめてのことだった。


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