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SSスレ「マーサー王物語-サユとベリーズと拳士たち」

420 ◆V9ncA8v9YI:2015/08/24(月) 02:02:11
冗談のようなことを言うハルだが、その表情は真剣そのものだった。
涙を拭って、ビシッとサヤシを指さすその姿勢に「嘘」などないことは明白だ。
こうなってくると兵らの士気は俄然あがってくる。

「うぉおおおおおお!!!」

男性兵らはハルの親衛隊だが、サヤシのことだってもちろん大好きだ。
自分たちにとってモーニング帝国剣士は雲の上の存在であるために、普段は手を触れることも恐れ多いが
今回に限りどこを触ってもOKだとハルが約束してくれている。
こんなチャンスは二度とないと断言しても良いだろう。
ならば達人の剣捌きに恐れおののいている場合ではない。特攻すべきは今なのだ。

「行くぞ!俺はやってやるぞ!!」
「させるか!サヤシ様に触るのはこの私だ!」
「いやいやこの俺が!!」

サヤシは絶句した。
屈強な男たちが自分の身体目当てで飛び掛かってくることは恐怖でしかなかった。
居合刀を握る時は「足を切られても構わない」「腕を落とされても構わない」といった覚悟で臨んでいるが
それとこれとでは話は別だ。
剣士である前に女性である自分を守るために、サヤシはなんとしてもこの局面をしのがなくてはならない。

「ば、ばかああああ!!」

顔をリンゴのように真っ赤にしてはいるが、剣の腕前はやはり確かだった。
自分に触れようとする愚か者たちに一発ずつ強烈な打撃をお見舞いしていっている。
しかしいくら敵の数を減らしても、残った兵らの士気が落ちることはなかった。
何が起きようと揺るがない目標は、烏合の衆だった彼らに力を与えてくれたのだ。
この思いの強さは、優位に立っているはずのサヤシをジリジリと消耗させていく。

「うそ、やだ、それだけはお願い、やめて……」

サヤシが極限まで精神をすり減らしたその時、雷は発生する。
その正体は天気組団の「雷の剣士」であり、親衛隊の指揮官であるハル・チェ・ドゥーだ。
男性兵の陰に隠れてサヤシの近くまで接近していたのである。
自分がサヤシの意識の外にいる今がチャンスであると、竹刀を構えている。
この竹刀は親衛隊が用意してくれた予備のもの。手入れはハルが自分で行う以上に万端だ。

(行くぞサヤシさん!これが本当の本当の最後の一撃だ!
 狙うのは"小手"じゃない。それじゃあ意識を断ち切れない。
 そして"面"でもない。サヤシさんの眼力で避けられちゃうだろう。
 だから!ハルが打ち込むべきは!)

ハルは腕と脚にグッと力を込めた。
非力な彼女が力を入れたところでたかが知れているかもしれないが、
決着をつけるための道しるべはジッチャンら一般兵らが作ってくれた。
指揮官ハルは期待に応えるため、電撃のごとき速さでサヤシへと竹刀をぶつける。

「"ドウ"!!!!」


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