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SSスレ「マーサー王物語-サユとベリーズと拳士たち」

419 ◆V9ncA8v9YI:2015/08/22(土) 17:43:57
サヤシはちょっぴり落ち込んだ。
兵がハルの方にばかりつくので、自分には人望が無いのかもと思ってしまったのだ。
だが、そんなサヤシももう気持ちを切り替えている。
この状況に対処するには冷静でなければならないのだから。

(親衛隊を一瞬で結成するその能力は正直羨ましいのぉ……
 じゃけど、ウチの腕っぷしなら恐るるにたらんけぇ。)

サヤシの実力は抜けているが、それは決して個対個に限った話ではない。
個対多だろうとサヤシは強いのだ。
この事実はサユの「戦いは数」発言に矛盾しているように聞こえるかもしれないが、そうではない。
相手が数百数千であればサユの言う通りだが、今現在ハルについた男性兵らは数十人程度。
しかも念密な策の練られていない烏合の衆であれば、やりようはいくらでもある。

「まずは……3人。」

サヤシは最も近くにいる兵士に飛びかかり、到達すると同時に横っ腹に刀をぶつけだした。
峰打ちとは言え、サヤシほどの達人の振りからなる鉄棒の強打は激痛では済まない。
ボキバキといった音を鳴らしながら、兵はあばらを折り、倒れていく。
そしてサヤシの侵攻はこれでは留まらない。
またも近くにいる相手に対して、逃げ足よりも速く二撃目三撃目を繰り出していく。
派手な骨折音を鳴らしながら、あっという間に3人をのしてしまったサヤシに一般兵らは当然恐怖する。
このようにあえて悲痛な音を聞かせることによって、恐怖で足を止めてしまうのがサヤシの狙い。
この世の流れが一騎打ちから多勢での戦いに変遷していっているのは百も承知。
だからこそサヤシは相手が複数でも戦えるように努めてきたのである。

「怖すぎる……あれが帝国剣士エースの実力か……」
「俺たちの力ではハル様を守れないというのか!?」

たった3回の振りで敵の士気を下げたサヤシはさすがだった。
ハルだって閉口している。
だがハルが黙っているのは敗北を認めたからではない。
サヤシを倒す策をじっくりと考えていたのだ。

「ジッチャン達……怖くて動けない?」
「申し訳ありません……お守りしたい気持ちをは有るのですが。」
「じゃあ、許可する。」
「え?」
「サヤシさんを触るのを許可する。 胸でも、脚でもどこでも触っていいよ。」
「は?……」
「責任はハルが全部取ってやるって言ってるんだ!!
 お前達、サヤシさんを好きに触っちゃえ!!
 さっさと動け!上官の言うことが聞けないのか!!」

ハルの突拍子のない発言に一般兵らはポカンとしてしまった。
そして他でもないサヤシ・カレサス自身が、何が何だか分からないような顔をしている。

「え?え?ハル……今なんて言ったの?」


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