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SSスレ「マーサー王物語-サユとベリーズと拳士たち」

383 ◆V9ncA8v9YI:2015/08/08(土) 19:05:07
もう一度天井へと跳びあがろうとした時だった。
子犬2匹ではない、それらとは全く異なる足音が聞こえるのをサユキは感じる。
2匹よりも速く、そして大きな足音は耳に入れるだけで恐ろしい。

(なんだこの音!?ひょっとして、3匹目の犬か!!)

新たな足音は小型なププとクランと比べて、明らかに「大型犬」だった。
かと言って機敏さに劣るわけではなく、スピードも据え置きだ。
このまま激しい勢いを保ったままサユキにぶつかるつもりなのだろう。

(私には力を消す技術がある。でもこの力強さ……消し切れるか?)

突如現れた援軍であるために、サユキには情報が不足していた。
いくらカンフー(自己流)に自信が有るとはいえ、このまま考えなしに突っ込むのは愚の骨頂だろう。
ならば少し様子を見ればいい。
サユキには自分の身体ごと天井へと連れて行く蹴りがあったのだ。

(しばらく観察させてもらうよ!えいっ!!)

空という安全圏がある限りサユキは優位に立つことが出来る。
好きな時に攻撃できて、好きな時に休めるなんてまるで理想郷だ。
だからこそ、「3匹目」はその理想郷を破壊することにした。
走りの勢いを全て上方向に変換し、サユキのいる天井へと飛び上がったのだ。
姿の見えにくい3匹目が迫ってきているなんて思いもしないサユキは、
無防備のまま横っ腹を食い千切られてしまう。

「ぎゃっ!!!!」

強烈な痛みを感じたサユキは思わず地へと落下する。
まさに猿も木から落ちるといった感じだ。
ププとクランがサユキを待ち構えているがその必要はない。
何故なら3匹目が渾身の突進をするだけで事足りるからだ。

「ひぃっ!!」

サユキは何をされたか分からないうちに地へと落とされ、
なにをされたか分からないうちに体当たりを貰い、
そのまま身体を壁にぶつけられてしまった。
全身打撲ゆえにもう立つこともままならない。
サユキは精一杯の力で顔を上げて、
いつの間にか透明化の解除されていたリナプーを見上げながら言葉を発する。

「リナプー……私は何をされたの……」
「教えない。」
「私を噛んだ犬はどこ?姿も音も無いんだけど……」
「教えない。」
「リナプー?なんでリナプーの口は血だらけになってるの……?」
「教えない!私もう急ぐの!!」

そう言うとリナプーは2匹の犬を連れて作戦室の方向へと走っていった。
自国の王、アヤチョをどうにかして止めるためだ。


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