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SSスレ「マーサー王物語-サユとベリーズと拳士たち」
378
:
◆V9ncA8v9YI
:2015/08/03(月) 14:43:01
姿は見えないが、リナプーが動揺するのは感じ取ることが出来た。
掴み所のない彼女の精神を揺さぶる唯一の手段であると判断したサユキは、
連絡担当として、作戦室で起きたありのままを伝えることにした。
「びっくりでしょ、アヤチョ王はこの城に来てたんだ。
そして、ハルナンを裏切ったマロさんに激怒して、容赦なく切り捨ててたよ。
他の番長たちも許さないって言ってた。怖いね。ウチのユカニャ王とは大違い。」
一国の王が自国の戦士たちに斬りかかるなんて普通はあり得ないが
アンジュ王国のアヤチョ王ならやりかねないと、リナプーは納得する。
むしろそうなって当然だろうとも思っていた。
「じゃあ、私も王にやられちゃうってことか」
「そうとも限らないんじゃない?」
「え?」
「アヤチョ王は裏切り者を許さないんであってさ、
だったら裏切るのを辞めれば不問なんじゃないかな。」
「私がマロさんじゃなくて、王の方につけばいいって言ってる?」
「そう。」
サユキは戦闘に飢えてはいたが、あの時のようにリナプーとまた共闘したいとも思っていた。
隊長こそ居ないが、サユキ、リナプー、ハルが組めば「73隊」の復活だ。
当時最強の小隊だった「ゴールデンチャイルド」と呼ばれたフクやタケを、
73隊で倒せる日が来ると思うとワクワクしてくる。
リナプーを倒すよりも、味方につける方がずっと楽しいとサユキは考えたのだ。
ところが、リナプーの返答はノーだった。
「辞めとく。今日はマロさんにつくわ。」
「なんで!?マロさんはもう戦えないんだよ!つく意味ないじゃん!
そんなに尊敬してるってこと?ちょっと意外……」
「いや、全然尊敬してないけど」
「え、じゃあなんで。」
「教えてもいいけど、これみんなにバラしたら怒るよ。」
「バラさない。」
「……カナナンが、タケが、メイが必死だから。それだけ。」
そう言うとリナプーは四つん這いになりだした。
特に脚部の負傷は見られないのに立つのを辞めたので、サユキには不思議に思えた。
「何やってるの」
「決着を急ぐ理由が出来た。本当はやりたくなかったけど、早く王を止めなきゃ……」
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