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SSスレ「マーサー王物語-サユとベリーズと拳士たち」

374 ◆V9ncA8v9YI:2015/07/31(金) 08:42:33
数年前の合同演習プログラムでは、リナプーとサユキは同じ班に属していた。
そのため互いに認識はあったのだが、当時と今とでは戦闘スタイルが異なるので
まるでまったく違った人間と戦っているような感覚に陥っている。
過去のリナプーは犬を使わず素手で戦っていたし、サユキもジュースは飲んでいなかったのが主な違いだろう。
では何故リナプーよりもサユキの方が有利に戦いを進めているのか。
それはリナプーの強みである透明化術を知っていたからに他ならない。
リナプーはマロから教わった「道端タイプ」と言われるメイクを日頃からしているのだが
その化粧には「私を見るな」という本能に訴えかけるメッセージがサブリミナル的に刻まれている。
つまり姿の見えない彼女を見ようとすればするほど、脳が感知を拒否する仕組みという訳である。
それを知っていたサユキは、リナプーを見ることをはなから諦めていた。
そしてその代わりに音を聴くことに集中したのだ。
サユキには絶対的な音感が備わっているとは言えないが、KASTの中では非常に優秀な方であり、
ボイスを聞き分けるトレーニングを欠かしたことは一度もなかった。
かつて帝国のサユ王が世話になったトレーニング講師が、最近果実の国に来て指導をしているというのも役立っているだろう。
つまりサユキは「見ざる」代わりに「聞かざる」ことはしないことでリナプーの居場所を突き止めたのである。

(犬の音まで聞き分けるのは大変だけど、空にいたら問題ないよね。
 身体が軽くなった私に敵はいないんだ!)

音を聞き分けられて、且つ空間も自在に操るサユキを切り崩すのは困難だろう。
だがそんな彼女にも突け入る隙は存在した。
それは自慢気で、思ったことはなんでも口にしてしまう性格ゆえに
「言わざる」ことまでは徹底できなかった点にあった。

「番長ってのも大したことないね。強いのはアヤチョ王くらいかな?」
「……なんで王の話が出るの?それにマロさんだってアレでなかなか強いし。」
「え?マロさんならさっきアヤチョ王にボコボコにされてたけど。」
「!?」


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