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SSスレ「マーサー王物語-サユとベリーズと拳士たち」

365 ◆V9ncA8v9YI:2015/07/28(火) 08:26:21
クールトーンが書いたメモには以下のように記されていた。

・モモコ様が強く地面を踏みつけるとブーツの上部から風が吹き出すようだけど、何かは分からない。
・モモコ様の小指の周りに半透明で見えにくい何かがついているようだけど、何かは分からない。
・モモコ様がジャンプする時は脚が急に伸びて少し背が高くなるようだけど、何かは分からない。
・モモコ様の掌に銀色の防具が付いていて、それがクマイチャン様の腕を壊したようだけど、何かは分からない。
・クマイチャン様を縛った糸は手じゃなくて足で操作しているように見えたけど、何かは分からない。
・モモコ様のお尻が急に尖ったように見えたけど、何かは分からない。

どれも「何かは分からない」で締められてはいるが、クールトーンは暗器の全てを認識していた。
知識不足ゆえに詳細まで突き止めたのは電磁石のみとなったが、眼で見た全てを速記する才能は、ありのままを紙に写していたのだ。
モモコはいつどのタイミングで仕掛けたのか分からないように戦ったつもりだというのに
全てが見透かされていたことに恐怖を覚える。
もっともクールトーンがこれだけ見えていたところで、モモコと一騎打ちで勝利できる確率はゼロパーセントだろう。
万に一つも勝ち星はあり得ない。
最悪全ての暗器を捨てたとしてもモモコは決して弱くはないからだ。
だが、もしもクールトーンがクマイチャンに肩入れしていたらどうなっていただろうか?
クマイチャンでなくてもいい、他の食卓の騎士クラスの戦士に情報を教えてしまえば
途端にモモコの強みは消え去ってしまう。
故に、モモコは手に取ったメモを容赦なく破り捨てた。

「あぁ!なにするんですか!」
「あーごめんごめん、手が滑っちゃった。」
「せっかく書いたのに……」

クールトーンはともかく、サユ王はモモコの発言を鵜呑みにしたりはしない。
珍しく焦りを見せるモモコを面白がりながらも、クールトーンの成長を実感する。

「へぇ、折れた手で破り捨てなきゃならないほど大事なことが書いてたんだ。」
「別に?……そもそも怪我なんてしてないしね」
「ふふ、ところでモモコ。うちの書記係は凄いでしょう。
 いろいろ経験させてきたけど、やっと食卓の騎士の戦いを見れる程度に成長したの。」
「はぁ……私とクマイチャンをダシにしたってこと?」
「ダシだなんてとんでもない。プレミアライブをアリーナ席で見せてくれてありがとね。」
「……ちょっと羨ましい。」
「え?何が?」
「私もいま何人か育ててるんだけどね、ワガママな子ばっかりで……
 すぐにルールを破るから罰としてセロリ食べさせたりとか工夫してるんだけど
 なかなかうまくいかないのよね。帝国の教育メソッドを教わりたいもんだわ。」
「へぇ、そっちも結構大変なんだ。」


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