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SSスレ「マーサー王物語-サユとベリーズと拳士たち」

344 ◆V9ncA8v9YI:2015/07/14(火) 22:00:04
マーチャンは右手で紐をシュンシュンと回しながら、オダから距離を取っていく。
少しでも近づこうものなら紐の先に括り付けられた忍刀をぶつけるつもりなのだろう。
今のオダにとって、時間を稼がれているこの状況は非常にまずい。
なんせ立っているだけで気を失いそうなのだから。

「オダちゃん、これでもうマーには近づけないよ。」
「……」
「でも終わりじゃない。」
「……?」
「オダちゃんならきっとなんとか出来るよ!
 だってオダちゃんの強さ、よく知ってるもん。
 ねぇ、早く見せてよ!ここから逆転するところをマーに見せてよ!
 そしたらマーチャンもね、もっと強くなれるんだから!!」

誰よりもオダに期待しているのは、他でもないマーチャンだった。
八方塞がりの状況を突破する姿をしっかり見届けることで
その経験を持ち前の超学習能力で習得するのが狙いなのである。
つまるところ、ここでパタリと死なれてもらったら困るのだ。
そうは言いつつ、忍刀を振る速度は全く緩めないマーチャンを見て、オダは苦笑いする。

「まったく仕方ないですね。分かりましたよ。
 一流剣士の逆転劇、とくと目に焼き付けてください。」

オダに気力が戻ったのは、マーチャンに勇気付けられたというだけの理由ではなかった。
モーニングラボが、オダお得意の「必中の一撃」を放てる環境に変化したことが大きい。
では以前と今とでこの部屋の何が変わったのか。
答えは、明るさだ。
薄暗かった部屋の明かりはマーチャンの木刀に灯った炎のみであるが
時間が経つにつれて、火力が強くなっていったのである。
これだけ燃え広がれば、「必中の一撃」を放つには十分だ。
オダはブロードソード「レフ」の、鏡のように磨かれた刀身をマーチャンの側へと向ける。
こうすることで、炎の明かりをマーチャンの目へと反射させていく。

「うわっ!!」

わざわざ自分の炎をちゃんと見てはいなかったマーチャンにとって
薄暗い世界に舞い込む微弱な光は、目を焼くほどに眩しかった。
これこそがオダの「必中の一撃」の正体。
目をつぶる一瞬の隙に仕掛けることで、回避させずに斬ることが出来るのだ。
オダ・プロジドリは光を使役することにかけては帝国剣士随一だろう。

(でも、これだけじゃマーチャンさんには通用しない。)

マーチャンは過去にオダの「必中の一撃」を受けた経験があった。
目が見えないために回避行動をとることは難しいのだろうが
これまでの例を見る限り、なんらかの対応をしてくるのは確実だろう。
だからこそオダは決して気を緩めなかった。
常に新鮮な体験をマーチャンに味あわせるために、更にもう一工夫を加える。


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