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SSスレ「マーサー王物語-サユとベリーズと拳士たち」

340 ◆V9ncA8v9YI:2015/07/13(月) 15:49:45
忍刀と木刀を握ったマーチャンを前にして、オダは次の攻め方を考える。
マーチャンの新武器である忍刀については詳しくないが
刀にしてはやや短めの刀身を見るに、近距離専門の武器なのだろうと推測できる。
軽量化によって一撃の振りを軽くしているのかもしれない。
となれば遠く離れることが対策に繋がるかと思ったが、そういう訳にもいかなかった。
マーチャンはいざとなれば火のついた木刀を勢いよく振ることによって
火炎を遠距離の的に当てることが出来るからだ。
つまり今のマーチャンは遠近両方をカバーしていることになる。
これではかなり攻めにくい。

(木刀が燃え尽きるまで待つってのはダメだよね……
 その頃には部屋中に煙が充満してたいへんなことになっちゃう。
 じゃあどうやって攻めればいい?早く決断しないと!)

急がなければ一酸化炭素中毒でオダは御陀仏。
かと言って焦って中途半端な攻撃をすれば、覚えられてしまい取り返しのつかないことになる。
このジレンマにオダは相当悩まされていた。
マーチャン自身はパワーもスピードも体力も並程度だと言うのに
どんな屈強な戦士よりも切り崩しにくいと感じているのだ。
だがオダもオダでこれまでの蓄積がある。
窮地に岐路を見出すことくらい、何度も経験してきたのだ。

(常に新しく、かつ威力の高い攻撃……これしかない!!)

オダはダッシュでマーチャンの方へと接近していった。
とは言っても目的はマーチャンそのものではない。
マーチャン制作の新武器、「両手剣」を拾い上げることこそが狙いだったのだ。
本来この「両手剣」は「投げナイフ」とのセットを想定して作られているのだが
二つ同時に扱えるわけがないのでオダは両手剣のみを選択する。

「あ、ドロボー!」
「放火魔に言われたくないですよっ!」

オダは両手剣を持つと同時に、マーチャンのお腹へと思いっきり振り上げた。
かつてサユ王の同期が使っていたグレートソードほどの重量はないが
この両手剣もなかなかの重さを誇るため、オダの腕にかかる負担は相当のものだった。
だがこの攻撃が絶対的に有効だと知っているからこそ、力もみなぎってくるものだ。
マーチャンは覚えた攻撃への対応力はピカイチだが
逆に初見の攻撃にはめっぽう弱かった。
作ったばっかりの新武器で斬られた経験なんて当然ないため、モロに受けてしまう。

「!!!」
「どうですか!自分の作品の切れ味はっ!」

オダはマーチャンの腹の深くまで刃が入ることを期待していた。
いくら不安定な体勢から切り上げたとは言ってもダメージは相当なはずなのだ。
実際マーチャンの瞳孔が開ききっていることからも、ひどく痛がっていることがよく分かる。
ところが、おかしなことが一点あった。
それは斬られたはずのマーチャンが腹から出血していないということ。
オダはまたマーチャンが何か仕掛けたのかと思ったが、そうではなかった。
問題はオダの扱う両手剣にあったのだ。

「なにこれ……刃が鈍すぎて切れたもんじゃない!
 これじゃあまるで金属の棍棒……!」

オダの言う通り、その両手剣は剣と呼ぶには鋭さが足りなかった。
これでは相手を殴ることは出来ても、斬ることは出来ない。
そのためにオダの思ってたような結果を出せなかったのだ。
そして、イメージと違うのは両手剣だけではない。
マーチャンの右手に握られていたものが、忍刀ではなく長めの紐に変わっていたことにもオダは気づきだす。

「マーチャンさん……刀はいったい何処に!?」
「どこだと思う?」

こんな質問をしてはいたが、オダは忍刀の所在に気づいていた。
ただ、認めたくなかったのだ。
音もなく自分の左肩に突き刺さり、激痛を起こさせていることなど、気のせいであって欲しかったのである。

「どういうこと……」
「ふふふふふ、マーチャンを殴ったバチが当たったんだよ……」


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