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SSスレ「マーサー王物語-サユとベリーズと拳士たち」
229
:
◆V9ncA8v9YI
:2015/06/14(日) 12:50:27
マロは両手に握られた二丁の小型銃「ベビーカノンをアヤチョに向けて
相手が自国の王であるにも関わらず躊躇なく発砲した。
接近戦は分が悪いため、近づかれる前に決着をつけなくてはならないのだ。
その銃は破裂音だけは一丁前に大きいものの、サイズ自体はマロの掌に収まるくらいに小さい。
ゆえにそこから放たれる銃弾も米粒ほどしかなかった。
まるでおもちゃの拳銃。屈強な肉体を持つ戦士なら避けるのも億劫になるかもしれない。
それでもアヤチョは身体で受け止めるなんて愚かな真似はしなかった。
ヒラヒラとした衣装を強くはためかせ、そうして起こした風圧で弾の軌道を変えたのだ。
カノンの弾丸は極小サイズゆえに剣で弾くことは困難だが、こうすればいとも簡単に無力化出来る。
「知ってるよ。カノンちゃんの攻略法。」
アヤチョはマロと付き合いが長いため、嫌でもマロに詳しくなっていた。
その熟知の度合いはフクとタケのレベルを遥かに凌駕している。
常に背中を預けた関係性だからこそ、一挙手一投足を理解しているのである。
だがそれはマロだって同じこと。
宇宙と交信中のアヤチョは非常に読みにくいが、おおよその行動は理解出来る。
アヤチョの動きを支配するために、マロは次の行動へと移る。
「こうしたらアヤチョはどう動くのかな?」
アヤチョが風圧を起こしてガードする一瞬の隙をついて、マロは銃口をハルナンへと向ける。
突然ターゲットとなったハルナンは一瞬ドキリしたが、特に取り乱しはしなかった。
立場上、マロが帝国剣士団長であるハルナンを撃つことはありえないので
アヤチョの精神を揺さぶるためのブラフであるとすぐ分かったのだ。
ここでワーキャー騒いだらアヤチョを邪魔することになるため、ハルナンは凛とした表情を崩さなかった。
ところが予想は外れ、マロは容赦無く銃弾を発射する。
これには流石のハルナンも驚愕したが、意地でもその場を動こうとはしなかった。
以前アヤチョから聞いた話ではマロの銃弾には毒がたっぷりと塗られており、
傷口から侵入した毒が血管を巡り、全身を麻痺させる効果を持つらしいが
今更避けるのも難しいため、後はアヤチョに任せようと覚悟したのだ。
だが、ここでハルナンは己がアヤチョを真に理解していなかったことを痛感する。
なんとアヤチョはマロが銃口を向けた時点で走り込んでいて、ハルナンの前に立ちはだかることで毒から守ったのだ。
薄い衣は攻撃を防ぐことなど出来ず、アヤチョは腹に二発の弾丸をぶち込まれてしまう。
「アヤチョさん!……いや、アヤチョ!なんで!」
「知ってたよ……カノンちゃんは撃つってね……
でもアヤ、もっと知ってるんだ。 これくらいがちょうど良いハンデだって……」
「え?……でもアヤチョとマロさんは同格じゃ……」
「同格?それは違うよ。絶対に違う。」
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