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SSスレ「マーサー王物語-サユとベリーズと拳士たち」

211 ◆V9ncA8v9YI:2015/06/10(水) 09:15:11
カナナンを吹き飛ばして道を作ったフクは、まばゆく光る装飾剣「サイリウム」を構えてタケに斬りかかった。
相手が旧知の中だろうと関係ない、むしろ、よく知った間柄だからこそ本気で剣を振り下ろす。
そして対するタケも負けてはいなかった。
不本意ではあるがカナナンが時間を稼いでくれたおかげで一投分の体力は回復している。
懐から第3の隠し球を取り出すと、勢いよく振りかぶる。

「行くよ!タケちゃん!」
「来い!フクちゃん!」

お互いがお互いを超えるために、渾身の一撃を繰り出さんとする。
このままあと数秒経てば、勝負の決着がついていたことだろう。
だが、それはまだお預けとなってしまった。
メイがフクに体当たりを、リナプーがタケにゲンコツを喰らわせることで真剣勝負が妨害されたのだ。

「やめてーーーー!」「やめろ!」
「「!?」」

傍観していた2人が急にやってきたので、フクとタケは対応しきれず攻撃を止めてしまう。
メイの行動はまだ理解できるが、ここで不可解なのはリナプーだ。
何故仲間であるタケの攻撃を止めたのか、フクにもタケにも分からなかった。

「おい何すんだよリナプー!お前、どっちの味方なんだよ!」
「どっちもだよ。」
「そうそうお前はどっちも……えぇ!?」

フクとタケ両方の味方などと意味の分からないことを言うのでタケは大混乱だ。
フクも同じように頭にクエスチョンマークが浮かんでいるようだ。
リナプーと味方になった記憶など無いのだから無理もないだろう。
そんな2人の疑問を解消するべく、転倒していたカナナンがタチアガーり、説明を始める。

「驚かせてすいません。たった今、マロさんから戦闘を止めるという合図が有ったのです。」
「「合図?」」
「2人は勝負に集中していて聞こえなかったかもしれませんが
 遠くから、そう、司令部がある辺りから銃声が聞こえたんですよ。
 私たちの上司マロ・テスクからは、状況がどうあれ銃声が聞こえたら、即、Q期に加担しろと命令されています。
 フク・アパトゥーマ剣士団長さん、我々アンジュの番長はあなたを全力でサポートします。」

突然の協力宣言にフクとタケはポカンとしてしまった。
そして緊張の糸が切れたのか、フクはその場にドサッと倒れ込んでしまう。
タケほどではないが、彼女も相当に疲労していたのだ。
そして大粒の涙を流しながら、アンジュの番長たちに礼を言う。

「ありがとう……これで、みんなを助けられる……!」

さっきまでは敵だったカナナンもメイも、フクの心からの謝礼を微笑ましく見守っている。
ところが唯一タケだけはまだ腑に落ちない顔をしていた。
実はタケだけは今回の件についてマロから何も聞いていなかったのだ。

「ちょっとちょっとリナプー、わたし何も知らないんだけど。」
「すぐ顔に出るから教えてもらえなかったんでしょ。」
「……っ!!!!」


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