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SSスレ「マーサー王物語-サユとベリーズと拳士たち」

186 ◆V9ncA8v9YI:2015/06/07(日) 00:46:15
城の前には男性兵たちが大挙してやってきていた。
それらを率いていたのはハル、マーチャン、アーリーの3名だ。
どこかに消えたサヤシを見つけるべく、捜索範囲を寮から城内へと変更したのである。
しかしこれだけの人員を裂いてもサヤシは見つからなかった。
この時のサヤシはエリポンを助けに城外広場に行っていたため、見つかるはずが無いのだ。
時間と労働力の両方をかけても成果が出ないので、ハルはますますイライラしてくる。

「あーもう!こんなに上手くいかないのはプログラム以来だよ!」
「プログラム?なんですかそれ」

聞き慣れぬ単語について質問を投げ書けたのはアーリーだった。
ムシャクシャしているハルも、相手が女の子なので優しく返す。

「何年か前にあった、近隣国の若手戦士を集めた合同プログラムのことだよ。
 今で言うKASTのメンバーも何人か参加してたけど、アーリーちゃん知らない?」
「あーその頃はまだ戦士をやってませんでしたー。サユキとカリンちゃんが参加したんでしたっけ。」
「そうそう、カリンはフクさんやタケ、それともう一人とで"ゴールデンチャイルズ"っていう班を組んでたんだよ。
 直訳すると"金の子たち"だぜ?最初はどれだけ自画自賛してんだよって思ったけどさ、
 悔しいけど全員が全員強いんだよ。ハルたちの"73班"は1回も勝てなかった。」
「へー。ハルさんは"73班"ってチームにいたんですね。」
「最悪のチームだよ。チーム構成はアーリーちゃんとこのサユキ・サルべ、やる気ない奴、泣き虫班長。
 こんなメンバーじゃ"ゴールデンチャイルズ"達に勝てる訳無いっての、本当にイライラしたよ。
 ま、ハルが超頑張ったから2位の訓練成績を収めることが出来たけどさ。」

自慢風に言ってみせるハルを見て、近くにいたマーチャンは吹き出してしまう。
マーチャンも当時はまだ戦士になってはいなかったが、ハルが話を盛っていることには気づいたのだ。

「ふふふっ、フク濡らさんたちに勝てなかったのはドゥーが弱かったからじゃない?」
「・・・・・・は?」

馬鹿にされてカチンときたハルは竹刀を取り出して、マーチャンへと突きつける。

「おいマーチャン。ハルは女の子には手を出さないって決めてるけどさ、帝国剣士は別なんだぜ。
 対等とみなした相手は男だろうと女だろうと容赦しない。それがハルのポリシーだ。」
「え?対等?マーが?ドゥーと?」
「馬鹿にしてるのか!!」

ハルは怒りに任せて竹刀を振ったが、剣はマーチャンには届かなかった。
二人の争いを止めるために、アーリーがハルの腕を掴んでいたのだ。

「喧嘩はダメですよー!サヤシさんを探すまでは仲間割れしちゃいけません!」
(なんだよアーリーちゃんのこの力!!・・・・・・腕が全く動かない・・・・・・)

アーリーの巨体からなる怪力を前にして、ハルは何も出来なかった。
すぐに竹刀を引っ込めては、恥ずかしそうにポツリとつぶやく。

「分かったよ、アーリーちゃんの言うとおりだ。さっさとサヤシさんを探そう。」


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