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SSスレ「マーサー王物語-サユとベリーズと拳士たち」

156 ◆V9ncA8v9YI:2015/05/29(金) 12:56:57
どんなに強い者でも体勢を崩されたら隙が生じる
アユミンは戦場を極端にスベりやすい場に作り変えることで、つけいる隙を増やしたのだ。
この状況でまともに立っていられるのはスベり慣れしているアユミンただ一人。
今回も圧倒的優位に立ってエリポンに勝とうとしたのだが、
エリポンが奇妙な動きを見せることでその計画は崩れてしまう。

(ここで転んでたまるかー!)

前方に倒れこんだエリポンは刀を持たぬ左手を伸ばして、ツルツルの地面に当てていく。
そしてそのままの勢いで逆立ちをし、腕の力で上方へと舞い上がったのだ。
転ぶかと思いきや逆に空を跳んだエリポンを見て、アユミンは目を丸くする。
あまりに驚きすぎて、空中からの打刀による斬撃に反応することが出来なかった
薄い胸板をサクッと斬られてしまう。

「アユミン隙あり!」
「ぎゃあ!」

フクやカノンならなんともない斬撃も、アユミンには不公平ながら致命傷。
激痛を感じながらも慌てて後ろに下がっていく。
空から地に落ちたエリポンはさすがにスベって転んでしまったが、そこに追い打ちをかける余裕は無かったのだ。

「はぁ…はぁ…今の動きはいったい……」

エリポンが行ったのは新体操というスポーツの技である、ハンドスプリングを応用したものだった。
アンジュや果実の国のようなスポーツに力を入れている国の者ならば見覚えもあっただろうが、
モーニング帝国はスポーツに割く予算が少ないため、アユミンは知らなかったのだ。
(余談だが数代前のヨッスィー帝王時代はフットサルやキックベースなどの競技が盛んだったらしい。
 国内に野球ファンが何人かいるのもキックベースの影響だとか。)

「ふふふアユミン、エリが何をしたのか分からんっちゃろ。」
「なんかちょっとだけ空を跳んでいたような……あんな舞踏技術あったっけ?……」
「アユミンが知らんのも無理もない。だってエリが使ったのは魔法だから!」
「ま、まほう!?」
「飛行魔法っちゃん。魔法剣士エリポンはまだまだたくさんの魔法を持っとるけん、楽しみにしといてね!」

エリポンは独学で世界各国のスポーツを学んでいた。
秘密特訓で得た知識と技術が彼女には備わっている。
スポーツを知らぬ者には、各競技の固有の動きはまるで魔法のように思えるだろう。


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