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SSスレ「マーサー王物語-サユとベリーズと拳士たち」

138 ◆V9ncA8v9YI:2015/05/24(日) 09:31:36
「私の勝ちだね。じゃあ色々教えてもらおうか……」

カノンは出刃包丁をトモの喉元につきつけた。
自分同様に襲われているかもしれないフク達に加勢するため、情報を聞き出したいと考えているのだ。
だがそれも、カリンの突然の叫び声でかき消されることになる。

「トモが負けるはずがないだろ!絶対に負けないんだ!」

カリンはまだ立ち上がり、背後からカノンの後頭部にパンチを当ててきていた。
重傷のカリンが襲ってくるとは想定していなかったため、カノンは直撃をうけてしまうが
すぐに振り返り、応戦の体制をとる。

(やられた……頭がグワングワンする、吐きそう……でもなんとかしなきゃ!)

カノンは流血する胸に目掛けて出刃包丁を突き出した。
以前食らった恐怖でカリンが臆するのを期待して、同じ場所を狙ったのだ。
ところがカリンは臆するどころか激しい勢いで体当たりを仕掛けてくる。
自身の胸が切られるのも構わず、敵を倒すためにカリンは全力で衝突する。
とは言えカリンの体重はカノンを押すにはあまりにも軽すぎた。
カノンの体重と脚力さえ有れば問題なく耐えきることが可能である。
もっともそれは通常時の話。
今置かれている状況は少しばかり特殊だった。

(え!?足が、スベる!!)

踏ん張ろうと脚に力を入れるカノンだったが、床にはカリンの血液が多量にこぼれ落ちていた。
ゆえにカノンは持ちこたえることが出来ず転倒してしまう。
しかも、先ほど殴られた後頭部から落ちたので状況は最悪だ。

(凄い……ヤバい……頭が働かないんだけど……)

頭を二回も打って危険な状態にあるカノンだが、カリンは決して容赦しない。
最後までフルパワーで戦い抜くのが戦士としての礼儀だからだ。
戦士カリンは拳をぎゅっと握ると、床に転がるカノンへと振り落とす。
狙いは硬い鎧で覆われていない顔面だ。
腕の骨が全部折れてしまうほどの、ストッパーの外れた強烈な突きで、カノンの鼻をグシャグシャにする。

「ぐぁ!!……」
「やった!勝ったよトモ!!トモは負けなかったんだ!」

トモは信じられないといった顔でカリンの勝利を見ていた。
囮役でしか無いと思っていたカリンがこんなに強いなんて知らなかったし、
普段からストレス解消の道具にしていたカリンが自分のためにこんなに頑張ってくれることも意外だったのだ。
そして何よりも、カリンの勝利を心から喜んでいる自分に驚いている。

(カリン・ダンソラブ・シャーミン……お前はいったい何者なんだ?
 どうしてそんなに強くて、頑張れるんだ……)

トモには聞きたいことがたくさん有ったが、質問は許されなかった。
グレープジュースの効き目が切れ始めて、カリンがフラついてきたからだ。
活動を維持するには血が足りなすぎたのである。

「おいカリン!大丈夫か!?」
「あはは、ごめんトモ、ちょっと眠いかも……」

誰よりも敗者のような見た目をしている勝者は、安らかな顔で眠りに落ちていく。
その寝顔はとても満足気だった。


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