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SSスレ「マーサー王物語-サユとベリーズと拳士たち」

123 ◆V9ncA8v9YI:2015/05/21(木) 12:57:34
「よし、じゃあそろそろ反撃を……」

十分に矢を回避可能であることが証明出来たので、カノンは守りから攻めへの転向を決意する。
遠距離攻撃使いは接近に弱いのが常なので、トモ目掛けて走ってやろうと考えたのだ。
そうすれば射撃を封じられるし、パンチも元々通用しない。つまり完封勝利が約束されることになる。
それに気づいているからこそ、カリンはカノンを全力で妨害した。

「トモに近寄るなっっ!」
「!?」

カリンが死角から体当たりをかましてきたので、カノンは一瞬だけフラつく。
ぽっちゃり系のカノンと小柄なカリンとでは重量に差があるため転倒することは無かったが、
それでも走行は止められてしまった。
そして現在のカリンの姿を見て、カノンはひどく驚くことになる。

「え!?その身体、大丈夫なの?……」

ジュースを飲む以前と比較して、カリンの全身はドス黒く変色していた。
もともと青アザだらけではあったが、ジュースの成分が内出血の進行を促進することによって
まさにグレープのような色になってしまったのだ。
こんな大怪我人のような姿をしているが、カリンは戦える。

「これでも喰らえ!!」

カリンは自らの腕に勢いよく噛み付き、そこから血を吹き出させた。
そしてその血液を口に含んでは、カノンの目に向けて唾ごと吐きかけたのだ。
一部のじっちゃんにはご褒美かもしれないが、カノンはたまったものじゃない。
相手の出方が分からない以上、目にかかった液体が毒である可能性もあるからだ。

「わわっ!なんだこれ!!」

思えばカリンの肌の色はとても凶々しいものだった。
それはまるで有毒生物が天敵に大して警戒色を示しているかのよう。
カリンが口にした紫色のジュースの正体は毒液で、カリンの身体にはその毒が蓄積されていると思えば筋は通る。
ならばそれを目で浴びたカノンは失明してしまうのではないか?
そのように考えたのたカノンは、必死で目を拭うほかに選択肢は無かった。
だがその選択が誤りであることはすぐ分かるようになる。

「失礼な人!私の血、そんなに汚い?……」

気づけばカリンはカノンの太めの脚にしがみついていた。
要するに彼女はカノンをこの場に縛りつけようとしているのだ。
では何故そのようにするのか?答えは簡単だ。
毒よりずっと恐ろしい、凶悪な弓矢から逃さない以外に理由はない。

「よくやったカリン!これでおしまいだ!!」

トモは「デコピン」と名付けられたボウの弦を引き、カノン目掛けて解き放つ。


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