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SSスレ「マーサー王物語-サユとベリーズと拳士たち」

113 ◆V9ncA8v9YI:2015/05/19(火) 08:24:29
機動力を奪われることで自身の敗北を覚悟したフクだったが、
これから猛攻をしかけるべきであるタケがフラつき、その場で転倒することで状況は変化する。

「うぐっ……ハァ、ハァ、おかしいな……」
(タケちゃん、何もないところでどうして?)

ここでフクは、例の野球好き研修生の熱弁を思い出した。
ピッチャーというポジションは突っ立っているようで実はものすごい体力を消耗している。
本気の投球は全力で空を殴るのと同程度に疲れるし、
常にコントロールを意識すること自体、かなり精神をすり減らすという。
だからピッチャーは他の誰よりも走り込みをするのだと、フクは耳に入れていた。

(そうか、タケちゃんはボール拾いまで自分でやってるから特に疲労が溜まっているんだ。)

フクの思った通り、スローとダッシュ、そしてキャッチを繰り返すタケの体はもうボロボロだった。
9人分の仕事をたった1人でしてるのだから無理も無いだろう。
もちろんそれくらいでヘコたれるようなタケでは無いためまだまだタチアガールのだが、
その疲れきった表情はフクに対策を思いつかせてしまった。

(よし、もっともっと疲れてもらおう!!)

笑みを浮かべるフクを見て、カナナンは頭を抱える。
タケの戦法がスタミナを異常消費することは元から知っていたのだ。

「やっぱり野球スタイルだとこうなるか……タケちゃん、自分は従姉妹とは違うでって言うてもきかんもんな。」
「あの子、手の抜き方が下手なのよ。」
「それは言うたらあかんでリナプー。普通は真剣勝負で手を抜ける人なんかおらへん。
 ウチの知る限り、それで強くなるのはリナプーただ一人だけや。」
「ん、ありがと。」


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