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『スウィート・メモリーズ』ロールスレッド

1J ◆4J0Z/LKX/o:2016/09/10(土) 22:14:51 ID:???
遠い昔の話だ。劣等と優越は互いに惹かれあい、
しかし相容れぬ性質は互いにそれを狂わせた。

狂った優越は劣等を捨て、
狂った劣等は優越を求めて心を病んだ。

優越を追えば世界という壁が二人を阻み、
そして劣等は世界を敵に回す事を心に決めたのだ。

境界が形を失い世界が解放されるその時、
”世界の境界線”を巡る決戦が幕を開ける。

甘い記憶を呼び起こし、
心を重ね、解けよ。

亡きものたちを想え。
彼等を偲べ。

129ニア・シューペリオリティE.月光.空色スカーフ:2017/02/13(月) 23:01:50 ID:???
>>127-128
「……中毒、治したかったってんですねぇっ……」
「……」

てっきりありのままがいいのかなーなんてソーマタージに対して思っていただけに意外そうにして呟く
月輪の虹色を頬に受け、微かに反応を示す彼に
しかしニアは微細な変化をも起こす事はない
ただ、そうなるべくしてなったのだと、確信めいた感覚を持っているからだ
無言にしていてだけれども、その表は誰にも覗く事が出来ない向きで彼に対して眼差されている

「……取り敢えずっ……」
「今まではえーっとぉ……ただ進めば別の世界に行けてましたってんですけどっ……」

130幕間 『父と子』:2017/02/13(月) 23:09:50 ID:???
>>127
『前にも言った通りユピ=セセットと私は親友……それ以上でも、以下でもありません』
『彼はここに住まうワームとは部族(トライブ)が異なります……敵になる心配も無い』

ソーマとジョシュアの疑問に対して、静かに、そして要点だけを告げるシェグムント。
エリシウムから逃げ延びる際に怪我をしているユピ=セセットを救い、そこから少しだけ旅路を共にした関係だ。

「ま、その案なんだがよ……無いこたァ無いぜ」
「それにはまずこのオッサンを俺達側に引き入れる必要があるが……まァそこは大丈夫だ」

「……オッサン、越境者なんだろ?」

元の世界に戻るプランをジョシュアは買い出しに際しいくつか用意していたようだった。
だがその為にはまずシェグムントに自らの身分を打ち明け、すべて承知の上で協力してもらう必要がある。
ゆえにジョシュアはエルミスとミスカから聞いた情報を元に、シェグムントが越境者であるということを推察していた。

『……いかにもね、君たちも越境者なんだろう?おおよその目星はついていたから、こうして正体を暴露する事が出来た』
『信頼を勝ち取るには、私から腹を割って話す必要があるからね、だがエリュシオンの人間相手ではリスクが高すぎる』

ミスカ「エリシウムの聖騎士になるには、外界からの侵入者を倒す事の力を持つ必要がある……」
ミスカ「シェグムントさんが私のように聖騎士であるなら、越境者だということは確実……ですから」

かつてミスカがそうであったように、エリシウムの女王ガブリエラに仕える為には越境者となる必要がある。
越境現象とその漂着者について理解し、正しく処理できるよう教育されるのだ。
その教育の一環として、王都の中央図書館からランダムな異世界に放り出される。これがミスカの越境の始まりでもあった。

エルミス「でもなぜミスカに?彼女は王都人、それも聖騎士隊の一員だぞ」

『……しまった、ガブリエラ様には告げ口しないでくださいね』
『でないと私、殺されてしまいますから……』

『というのは冗談で……何でしょう』
『彼女になら、どのような信頼でも寄せてもいい……そう思ってしまったんです』
『妻に似ているからですかね……あはは』

聖騎士隊にこの事が露呈すれば、追われる立場にあるのは勿論のこと
下手をすれば命すら危ういようなことをしでかして逃げ延びたのだろう。
冷や汗と共に頭を掻いて、シェグムントはずれた眼鏡を治した。

131ソーマタージ ◆.zilz3o6.U:2017/02/13(月) 23:23:24 ID:???
>>129-130
たまに思うのさ。もしオレが…もしもだ、もっと真っ当な生活を送っていたら、どうなっていたかってね
クスリも銃も戦も無い、退屈で平和な生活だったら……
【ニアの言葉に俯向き、ボソリボソリと呟くソーマタージ】
【幼い童か、死にかけの老人めいた弱々しくブザマな雰囲気を醸し出しつつも、その口調は忌々しい物を口にするかの様だ】

……なーんてな。まさかマジに取ってないよな?頼むぜ
俺はもしもの話はしない主義なの。過去とかクソ喰らえ
【顔を上げれば先程までの空気は消え、いつもの飄々とした、狂気を湛えた瞳が爛々と輝いているが】


意外と多いんだな、越境者……。高校生の頃のあいつもそうだったのかな…
【シェグムントの言葉にボソリと呟き、頭を掻く】
【彼の話には茶々を入れず、真剣に耳を傾ける。必要な情報だと感じたからだ】
【この国の話、シェグムントの経歴、その他色々を聞いていると成る程腑に落ちた】

……アンタが越境者なのはいいとして…仲間にして、どうやって帰るんだ
せっかちなんだよ俺は。そんな顔してるだろ?
【勝手にスニフを平らげ、シェグムントを指差す】
【納得も信用もした。だが、帰る手段を聞かないことにはどうにもならない】

132幕間 『父と子』:2017/02/13(月) 23:32:59 ID:???
>>129 >>131
「それについちゃ考えがあるが……今の正確な時間を知る必要があるな」
「ミスカ、シェグムントに時間を聞いてくれ」

ミスカ「分かりました。…シェグムントさん、今は聖暦何年ですか?」

『今日かな?えーと……948年の朝露の月 34日だね』
ミスカ「えっ……」

ソーマタージとニアの抱く共通の疑問、どのようにして”いま”から”未来”へと越境するのか?
それについての答えは、ジョシュアの中で少しずつ固まりつつあった。
だがそれにはまず現在の時間を知る必要がある。ジョシュアはミスカにエリュシオンでの時間を聞いてくれと頼んだ。
ミスカであればエリュシオンでの時間が分かる。ミスカ側の時間と照らし合わせてどれだけのズレが生じているのかが分かるのだ。

『どうかしたかい?でも急にどうしてそんなことを?』

ミスカ「エルミスさん……」
エルミス「ああ」

「何だよ……俺達にも分かるように説明しろよ」

シェグムントの告げた時間を聞けば、ミスカは目を丸く見開いてエルミスを見つめた。
エルミスはそれに続いて頷き、シェグムントの残りの越境者達は何事だろうと首を傾げるだろう。

エルミス「ジョシュア、奇妙な事だが……」
エルミス「俺達は……”あの日”から丁度……15年前に越境したようだ」

テッセラクトによってもたらされた時をも超える越境現象。
それはジョシュアらをあの日あの時、テッセラクトに巻き込まれたあの時点から寸分狂わず15年前へと越境させたのだ。

「今の時間がわかりゃまぁ、それほど大した時間差でもねェ。十分修正が可能な範囲だな」

「そのまま15年過ごすってのも悪くはないが……仲間がヨボヨボになるのは御免だ」
「つーワケで作戦会議、シェグムントにも手を貸して貰う必要があるなこりゃ」

「この世界には幸運な事に越境ポータルがある。王都のど真ん中の上流階級しか立ち入れない区域にだ」
「で、ミスカとシェグムントの身分証があれば聖騎士に変装してごり押しで入れる」
「一旦中に入ったらあとは強行突破、ボロが出るまでの間にポータルを乗っ取って俺達は別世界に移る」

「この時に重要なのが移動する世界線だ、この時俺らはなんとかして【29世紀の遠未来】に行かなきゃならねェ」
「俺が初めて越境した世界だ。ここには進んだテクノロジーがわんさかある」
「流石にタイムマシンはねェが、似たようなモンはある」

「コールドスリープ、加速器、宇宙船でのスリップスペース航行……」
「なんらかの手段で体感時間をかなり抑えつつ、15年後の未来まで物理的に到達する」

「最高なのはコールドスリープだ。死ぬ確率も少ないし寝てる間に未来に辿り着ける」
「……こんな所だが、どォだろ」

133ニア・シューペリオリティE.月光.空色スカーフ:2017/02/13(月) 23:33:01 ID:???
>>131
「過去は大切だとは思いますってんですけどぉ、それでももしもの話はしないってのは同感だってんですねっ」
「まぁそしたらっ、退屈で銃に手を出してますってんですよっ」

その狂気の宿る瞳に微笑み返す
各々に様々があって今がある
今に満足しているか否かは別として、ニアは皆の今が、こうして共にいられる今が好きだ
故に茶化すようにジョークで返せた、言葉の裏に今の皆がいいのだと意味を含ませる事が出来た

134ニア・シューペリオリティE.月光.空色スカーフ:2017/02/13(月) 23:39:45 ID:???
>>132
「15年っ……ですかぁっ……」
「……ふぅむっ……」

反芻して呑み込み、口元を曲げた指で覆った
コールドスリープ技術に関しては何かを感じる事はなかったが、いざ体験する可能性が出てくるとあれば別だ

「……なんとなぁくっ……」
「時間軸のズレを、越境中に誤魔化せないかなぁってのは思いますってんですけどっ……」

思い付いたのは先ずは自身の体感時間の事だ
衰退世界で3年を過ごしたが、同じより早く生まれたはずのタェンティースは未だ製造後半年と少し
越境仲間の傭兵クルトにも起こっているような、主観時間の経過のズレが生じているのだろう
それを上手い事任意で起こせないだろうか、との事

「あんまりほらぁっ、寝てるだけってのは……ちょっとぉ……」

要するにコールドスリープは最終手段としたいと思っているらしい

135ソーマタージ ◆.zilz3o6.U:2017/02/13(月) 23:40:20 ID:???
>>132
俺は十五年ぐらい平気だけどな…。明日天気になあれ全巻読んでたら十年二十年なんて一瞬よ
【冗談を返すとは、マジで嫌がってる時か面白そうだと感じた時かだ】
【楽しそうではある。失敗してもまあ、その時はその時だろう】
最期に楽しめるんならそれでも良いわな。乗ったぜ

その遠未来に行く手段が検討ついたら教えてくれ。それがなきゃ、意味無いんだろう?

136ソーマタージ ◆.zilz3o6.U:2017/02/13(月) 23:43:52 ID:???
加速装置、良いじゃあないか。ガキの頃憧れてたなぁ、そういうの……
何、十五年なんてすぐさ相棒。俺が言うんだから間違いない
【既に正常な時間軸を感じることの出来ないこの男は、コールドスリープやら何やらが無くても存外平気ではあるだろう】
【それを黙っていたのは、単に水を差したくないのと、退屈になりそうだからだ】

乗ったぜ。その案。準備はいつからだ?

//途中送信申し訳無いす……

137幕間 『父と子』:2017/02/14(火) 00:02:18 ID:???
>>134
「越境の時間軸のズレは正確性に欠ける。俺が20年幽閉されてた時にそっちじゃ数か月しか経ってなかった時みてェにな」
「つまりコントロールが効かねぇ、100年後に飛ばされでもしてみろ、今度こそ帰れなくなっちまう」

人間は時間に逆らって生きてゆくことのできる生き物ではない。
異能を持っている越境者といえども、そうした行為のできる者はごく少数に限られるだろう。
それにもし時間軸のズレに乗れたとして、未来へと進めば今度こそ戻れなくなってしまう。

「それに時間のズレこそあれど、俺達は確実にある一定の時間の流れを進んでるようにしか思えねェ」
「例えば2033年世界に越境して20年経ってたとしても、すぐ元の世界に戻った時にそっちも20年進んでる訳じゃねェだろ」
「先に進むにはあくまでその世界の時間の流れに乗らなきゃいけねェんだ。越境を繰り返せばジャンプできるってモンでもなさそうだろ」
「世界によって時間の流れ方が違ったとしても、やっぱ何処かで時空の流れは繋がってるんだと思うぜ」

>>135 >>136
「俺だって身体はヘーキだ、グリードが癇癪起こさなきゃな」

ジョシュアの寿命も実質理論上は永劫に近い。
人間であることを捨て無機生命との融合を選択したジョシュアにとって肉体的な制約はもはやないに等しい。
されど肉体は不滅でも、精神はどうか。現にジョシュアという存在は風前の灯だ。
ひとたび自我を見失えば姿形すら人間を離れ、食欲に支配されたただの怪物へと成り果ててしまう。

「だが一番ヤベェのは過去を変える事、とりわけの自分と出会っちまうコトだ」
「俺達が過去へと向けて越境したあの時間までにヘタに世界をイジってもみろよ、俺達のいる未来はパアだ」

「別の未来が生まれちまうってこたァ、別の俺らが生まれるってコトだ」
「下手すりゃ生まれねェか、生まれてても死んじまってるカモ。そうなりゃ俺らは……ポン、消えちまう」

握っていた手を開いてみせて、ジョシュアはソーマタージに告げる。
どこか狭い小部屋に引きこもるのならともかく、あちこちウロチョロして下手に歴史を変えてしまってはまずい。
その為のコールドスリープ、歴史との干渉を避ける手段なのだと。

「だからなるべく大人しくして、世界に干渉しないようにすんだ」
「その為にゃコールドスリープが最高だが、起きてたいんなら加速器の中で延々回るか宇宙船をジャックしてワープを繰り替えすかだな」

「作戦の決行は明日だ。修正する時間差は少ない方がいいからな」
「まずはシェグムントに身分証と鎧を借りる。そっからセントラ大陸に渡って、エリシウムを目指す」

「計画通りに行きゃ一ヶ月以内に元の世界に戻れるさ」

//イベントの方針説明回でした。今回はコノヘンデ!

138ニア・シューペリオリティE.月光.空色スカーフ:2017/02/14(火) 00:12:01 ID:???
>>137
「なるほどぉっ……」

そう簡単なモノではないなと再認識
唸って2度小さく頷いて、そしてコーヒーを啜る
少しのミルクと砂糖の味が心地良い
ともあれ今は、こうしていられる事実に感謝するしかなさそうではあった

//ありがとうでした、お疲れ様ですよー

139ロストメモリーズ:2017/03/01(水) 22:05:49 ID:???
――2033年世界 ボストン地下水道

『やあ久しぶり、グッドマンだよ』
『ついに作戦決行の日だ。諸君、気を引き締めて頑張ってきてくれ』

HEXA本社の真下に位置する閉鎖されたトンネルの一角、グッドマンの拠点ともなっているそこは、
ボストンに無数の網目のようにして巡らされている水道への入り口を兼ねる場所である。
越境者を用いたコントラクトは珍しい物でもない、差異自体は攻撃を仕掛ける相手がそこそこ大規模だと言う程だ。

『はいこれ、無線機と焼夷弾……あと脱出装置』
『JAUNTSHIFT Mod.0(ジョントシフト モッドゼロ)、名前の通り越境装置の試作品だ』
『業界最速で越境できるけど、越境地点はランダムだから戻って来るのに時間が掛かるカモ』

差し出したのはHEXA製の試作越境装置、高速での転移を目標として作られたもので、
座標の計算、設定、越境実行を一瞬で可能にするためのデモンストレーション用に造られたものだ。
ゆえにこれを用いて思い通りの場所に行くことはできないが、行き詰った場合などに逃げる手段にはなる。

『今回の我々の目的は生物兵器の破壊と、その一切の情報の抹消だ』
『生物兵器の出所はISAC、使い道も特性も分からず処遇に困り果てていた時にHEXAが強奪し今に至る』

『いくつもの偶然が生まれて出来たモノ故に再生産は絶対に不可能な唯一無二の代物だ』
『ゆえに一度破壊してしまえば私達の勝ちなのだけどね、確実な抹殺の為に関連情報も全て破壊してくれ』

本題に入れば、何故ここまで回りくどい方法で越境者を雇い、周到に用意をしていたかが分かる。
越境者とも距離の近い組織であるHEXAへの襲撃作戦。それも単なるカチコミではない。
しかもその目標が対エーカー戦線の中心人物たちに近しい者とあっては、雇う人物すら厳密に吟味する必要があるのだ。
言うなればこれはカノッサ対エーカーの大喧嘩の中、一時的とはいえエーカーよりの位置に着いてしまう事を意味する。

『コードネームは”NYX”、見つけ次第一切の躊躇なく抹殺しろ』
『可愛らしい外見に騙されるなよ、アレの本質は限りなく恐ろしいモノだ』

140ギャラエ 【くるりリデレクト】:2017/03/01(水) 22:23:09 ID:???
>>139
「暗ーい、狭ーい」
「もう少しいいオフィスにしてはどうなんですか?」
「……あぁ、これがそうなんです? へー……ほー……」

ほぼ第一声がそれである
室内においてもハート型のサングラスを外していない、まるでその奥のエメラルドの瞳を隠しているかの様だ
モッドゼロを受け取ればマジマジ見詰め、興味深そうにほうほう唸る

「えぇ、破壊ですね破壊、デストロイ」
「任せて下さい、私そういうのもう本当に得意ですから」

信頼度で言えばもう全くといっていい程のアレだ
だがしかしそれでも、動ける駒としては実戦経験も豊富であるしビジネスライクな部分も無くはない
尚彼女はカノッサに身を置いているが、その組織そのものに忠誠を誓っている訳ではないのだ
むしろ彼女のかつての仲間達に対する意識の方が余程優先される

141ロストメモリーズ:2017/03/01(水) 22:47:28 ID:???
>>139
『お金ないしねぇ、目立つ場所にあると見つかっちゃうじゃない』
『それにほら、こういう場所の方が雰囲気あって、こう……正義の味方感あるでしょ?』

『まぁ、君を雇う事になるとは思わなかったけど……仕事はきっちり、ね』
『戦利品として、NYX関連の情報以外は持ってっていいから』

グッドマンはギャラエの事を知っている。あれだけ派手に事を起こしていれば当然でもあるが。
火事場泥棒を容認する形で引き入れたのだろう、契約に背きさえしなければ所属は関係ない。

『そんな訳で、実行に移すとしようか』
『水道から上層に上がればすぐ本社ビルだ、これを着て行動してくれ』

彼を挟むようにして立っていたケーニッヒとアードリゲ、彼の付き人。
そのうちの小柄な女性、アードリゲが、自分の着ているものと同じフードつきのローブを渡した。
あらゆるセンサーでの探知を防ぎ、攪乱する素材で出来ているという。
これによりビル内部に潜入した際に、身元がバレる事は無い。少なくともそれを脱ぐまでは。

『このビルは40階建て、一般社員の立ち入りできるフロアは35階まで』
『それより上はこの企業の実態を知る僅か数十名だけが立ち入りできる場所だ』

『天井のある35階まで直通のエレベーターはこの中央エレベータだけだ』
『レベル5以上のICカードを持つ者だけが操作を許される特別なモノだから、そこらのセキュリティからカードを手に入れても乗る事はできない』

時は移り変わり、ビルのエントランスまで到達した越境者達。
フードをしている時点で立派な不審人物ではあるが、すぐに撃たれるなりすることはない。
越境者達の侵入に気付いた警備員が無線で連絡、すぐに応援が駆け付ける。
それまでの間にケーニッヒが警備員の数を確かめ、アードリゲはエレベーターの場所を目視で確認していた。

『そこでケーニッヒがエレベーターシャフトに侵入し、物理的に暴走させて無理矢理ジャックする』
『研究施設自体は地下にあるんだけど、NYXだけは例外で39階にケージがある、やはり上へ昇る必要があるんだ』
『其処でエージェントがNYXの面倒を見てる、つまりそれの破壊前に最低でも一人のエージェントと戦う羽目になるね』

『36階からはまた新たな吹き抜けが39階まで繋がっている』
『螺旋状の階段が吹き抜けに設置されているから、そこを駆け上がれば目標の場所まではすぐに辿り着く筈だ』

『くれぐれも40階には原則立ち入るな、目標を達成したらすぐにジョント・シフトを起動させるんだ』
『0.2秒でこの世界とはオサラバだ、報酬についての連絡はそこから端末を通してくれ、通常の回線で構わない』

淡々とオペレーションの解説が入る中、ケーニッヒとアードリゲは静かに、そして冷静に作戦をこなしてゆく。
ケーニッヒが無線機でアードリゲに警備員の数を伝えれば、アードリゲはこくんと頷いてローブの中に手を突っ込んだ。
それに反応した警備員が、アードリゲに向かって声をかける。ほぼ全員の警備員の視線がアードリゲに向いた。
それと同時にケーニッヒが移動を開始。人込みに紛れなるべく気付かれないように、地下施設へと続く防火扉目掛けて駆ける。
アードリゲを取り押さえようと駆け付けた警備員数人の首が飛ぶ。それと同時に鳴り響く爆発音。
ケーニッヒが防火扉を蹴り開けたのだ。重機にも匹敵する馬力で、むりやり力でこじ開けた。
けたたましく鳴り響く警報と、惨劇を目にした群衆から叫び声が上がるのは同時であった。

『では仕事を始めようか』
『諸君、世界を救うぞ』

【警備員殲滅:エントランスには10人弱の警備員が存在し、ケーニッヒとアードリゲの奇襲により混乱状態にある】
【素早く殲滅することによって、増援到着前にエレベーターをジャックすることができる】

142ギャラエ 【くるりリデレクト】:2017/03/01(水) 23:00:48 ID:???
>>141
「下水道住みの正義の味方ですかぁ……」
「亀か黒猫? 辺りでしょうか?」

小首を傾げて小さく嗤った
そして報酬のオマケ……否、彼女にしてみればそちらが本命なのだろう
その話を聞けば満足そうに三度頷いて応じる

「気前が良くていいですね、そういうの、私好きですよ」

そんでもってエントランス

「私だったら私が来たら速攻射殺しますけどねこれ……」

フードを目深に被り、更にハート型のサングラス
変人以外の何者でもない、不気味ですらある
ともあれ2人が行動を開始、実に手慣れた迅速なモノだと内心

「わぁ、とっても素敵な響き」
「憧れていたんですよね、ヒーローとかそういうの」

「最も、

大まかに警備員の方向に向けて左手を伸ばした
手のひらを翳す格好、距離も離れている
直後に轟音、可視性をも帯びた衝撃波が爆発的に放たれる
予め吸収していた、超高圧の破壊エネルギーを解放したのだ
警備員達を、雑踏諸共粉砕すべく轟くそれは余りの威力に10m以上の射程距離をも有していた

……なろうと努力した事は一度もなかったですけど」

143ロストメモリーズ:2017/03/01(水) 23:17:08 ID:???
>>142
『うわぁぁァァッッ!!』
『て、テロだ!!警備部門を……ぎゃ!!』

ギャラエの放つ衝撃波に粉砕され、あるいは怯まされるセキュリティたち。
アードリゲがその脇を駆け、刈り残しに止めを差して回る。
突風の様に吹き荒れるそれに巻き上げられ、影が和らいで一瞬露わになる口元。
そこにはギャラエの力を称える様な笑みが浮かんでいた。まるで品定めをしているかのような。

結果として連携攻撃によってセキュリティは全滅。応援を呼びつけるよりも前にエレベータを掌握することに成功した。
アードリゲが中央エレベーターのパイプをぶった切って、そこでようやく目視する事が出来るだろう。
彼女の得物は剣だ。細いサーベルのような二振りの剣。それを目にも留まらぬ速度で振るっていたのだろう。

アードリゲ『………』

やがて剣を鞘に納め、くいくいとギャラエに手招きするアードリゲ。
彼女が切り拓いたパイプの中、エレベーターの上に乗れと言うのだろう。
剥き出しのワイヤーと隣り合うのはリスクが高いが、扉が開けられないのであればやむを得ない。
バランスを崩せば擦り潰され、また透明である為に周囲から狙い撃ちにされる可能性もある。

ケーニッヒ『押さえた、乗っているな?』
ケーニッヒ『私はこのまま地下を壊滅させる、お前達はアリスを破壊しろ』

やがて二人がエレベーターの上に乗れば、というより乗った瞬間にエレベーターは急発進。
ケーニッヒから通信が入り、エレベーターのモーターを暴走させた旨が伝えられるだろう。
その速度は通常の昇降の倍近く、立っているのもやっとである。
さらに最上層に到達する際にタイミングよく飛び降りなければ、天井とエレベーターに挟まれオダブツという訳だ。
アードリゲは腕を組んで目を閉じ、じっとその機を伺っている。

144ギャラエ 【くるりリデレクト】:2017/03/01(水) 23:24:53 ID:???
>>143
「……ご覧の通り、暴力しか脳のない人間なんですよねぇ私」

けらけらと嗤って歩きエレベーターへ
道中靴を汚さない様にするのを意識した
そう言えば今日のスニーカーはお気に入りなのだから
ひょいと何の躊躇もなく飛び乗り、高速での浮遊感を味わう
サングラスの下に隠された瞳は細まり、口は半月めいて釣りあがっていた

「……ハンバーガーの気分が味わえるまたとない機会みたいですけど、」
「よぉく考えたらそんな体験、する必要もありませんね」

やがてその瞬間が来るや刹那
まるで階段を一段抜かしで降りる様な仕草
大ごとではないのだ、この位のムーブは

145ロストメモリーズ:2017/03/01(水) 23:36:10 ID:???
>>144
『……』

彼女のジョークをそのままの意味で捉えたか、
食べ物になりたいの?とでも言いたげな顔つき、腕を組んだままギャラエに怪訝そうな眼差しを向けている。
やがてエレベーターが最上層に到達する一歩手前、キラリと刀身を光らせ、その直後には姿が消える。
衝突音と煙がシャフトから噴き出るその頃には、ギャラエと肩を並べて35階の床に立っていた。

辺りを一瞥してみれば、なるほど一般企業めいたものとは程遠い内装。
黒を基調とした装飾に蒼い照明やライトがピカピカと。目に悪いと僅かに眼を細める。
秘密基地めいたインテリアは悪役に相応しいな、などと考えながら刀を抜いた。

だがどうも妙だ、エージェントの一人や二人、待ち構えていてもおかしくない筈なのに。
静かすぎる、目標のある39階まで誰一人としてこの企業の裏を知る職員が待ち受けていることもない。
ふい、とギャラエへ視線を合わせ、罠であることも示唆しつつニュクスのケージを目指す。

146ギャラエ 【くるりリデレクト】:2017/03/01(水) 23:44:25 ID:???
>>145
「……いいセンスしてますね、これはなかなか」

こちらは皮肉ではなく、本心でそう思っているらしい
色々とギャラエの趣味が残念なのは仕方ない、というより見た感じ明らかであろう
そんな軽口を叩きながらも警戒は怠っておらず、しかしその実妙な静けさに不信感も抱いていた

「……目を合わせて何秒でしたっけ、恋愛感情を抱いているって直感的に思わせる秒数があるんですよね」
「えーっと、7秒でしたっけ……半端な時間だった気がするんですけど……」

そんなこんなで囚われの檻へと向かうふたり
静謐の中、響く足音と喋り声

147ロストメモリーズ:2017/03/02(木) 00:03:16 ID:???
>>146
ギャラエのその言葉を聞いてか、七秒手前で視線を逸らした。
その先にあるニュクスの檻、檻とはいえ見た目は監視室に近い。
グラスコートされた鋼鉄製のドア、防弾ガラスで四方を区切られ、外部からのみ内部を見る事が出来る。
ニュクスを完全に封じ込め、外部からのみ干渉が可能ないわば密閉容器、ハザードシェルターのようなものだ。

???『あら』

そしてそこへ足を踏み入れたふたりに、声をかける初めての遭遇者。
黒の礼服にコートを羽織った、病的なまでに白い肌と、それと同じ色の髪を持つ女。
虚ろな目をしてぐったりとしたニュクスを膝の上に乗せて抱きかかえ、弄んでいた。
この組織のボス、ヘキサ・アクチュアル。オメガ・インフェリオリティその人だ。

オメガ『いらっしゃい、二人とも』
オメガ『思ったより速かったね、ニュクスのおうちへようこそ』

ニュクスの手首を掴んで、そのまま為すがままに振らせてみせる。
完全なる待ち伏せ、周囲には一切の書類が無い。襲撃自体が読まれていたか

『我々の動きが読まれていた……か』
オメガ『いいや、君たちが私の脚本通りに動いてくれていたのさ、グッドマン』

オメガ『今日は良い日だ、ケーニッヒとアードリゲが居ない今、確実に君を殺せるのだから』
オメガ『そして……私は目の前の彼女らでNYXの性能を測る事が出来る』

動揺するグッドマンに、まるで無線の会話が聞こえているかのようにオメガは割り込む。膝の上のニュクスを愛でながら。

『売女が……謀ったな』
エツィオ『動くなよオッサン』
ハッシュ『両手を組んで膝をつけ、早く』

ハッシュ『……はやく、……しろ』
『ぐっ!!……お手柔らかに頼むよ、足が悪いんだから……うぅっ!!』

グッドマンが悪態を吐く。それと同時に扉が蹴破られ、エージェントが突入する音が聞こえた。
銃を向けられ無力化され、そのまま床に倒された。そうして鈍い殴打音。グッドマンは敵の手に堕ちた。

ハッシュ『その必要はない……エツィオ、連れてって』
ハッシュ『尋問したら、その後で殺す』

ワザとらしい演技がかった声、直後に無線連絡が途切れた。
隠れ家が壊滅し、完全に追いやられたという状況らしい。

148ギャラエ 【くるりリデレクト】:2017/03/02(木) 00:15:17 ID:???
>>147
「……ふむ? フムン、フンフン……?」
「……あっぶな、私達地下に居なくてよかったですね……」

即座に数で制圧されてしまっては流石に、何が出来る訳ではない
逆に言えば恐らくは目の前の脅威にのみ集中すればいい今のこの現状の方がマシだと、そう言う意味であろう

「あー……」
「実戦テストですか? 私達で?」
「……お辞めになられた方が良いとは思いますよ御大将」
「……私達はその気になればここを後にする事が出来る」
「お土産を残して、ですね」

その声は粘り気を帯びた霜のようで、脳障りな気配を多分に孕む
手渡されたモッドゼロと、そして焼夷弾
すぐさま何方をも使用可能な状態で潜めてあるギャラエ、恐らくは戦力比に於いて大いに相手側に傾いている今でさえ絶望を感じては居ない

「……あー、」
「それにほら、報酬が無いってなったら私」
「働く意味もありませんし?」

じり、と摺り足
取り敢えず物陰へと転がり込めるような位置取りを行なっているのだ

149ロストメモリーズ:2017/03/02(木) 00:34:15 ID:???
>>148
オメガ『辞めないよ、辞めはしない。この日をどれだけ待ちわびたコトか』
オメガ『マウスィム、私はお前達に勝った。この子はその証明だ』

くすくすと笑みを浮かべながら、余裕の表情を見せつけながら。
相も変わらずニュクスを弄びながら、そうして終始ギャラエの表情を観察していた。

オメガ『さぁお行き、ニュクス……立ちはだかる障害は消し去るんだ、たとえどんなにちっぽけなモノだろうとね』

す、とオメガがギャラエの眉間に指を向けたその瞬間、ニュクスはふらりと立ち上がり、ギャラエをじっと見つめる。
ほんのわずかに前傾姿勢になれば、その背から生えた刺々しい、ドス黒い触腕が目にも留まらぬ速度で延びて。
ギャラエの脳髄までを貫く……その手前、額にこつんと触れた所で止まる。外傷すら与えぬほどの髪の毛一枚ほどの隙間。

オメガ『……ん?』

何故止まった?動作が不完全?それともオメガの気まぐれ?否、それはオメガの意識が一瞬、ギャラエから逸らされたからだ。
それと同時にニュクスの動きも止まった。涎を垂れ流しながら虚ろな目でじっとギャラエを見つめてそのまま硬直。
オメガの意識の先には、ある聞き慣れた作動音。始めは小さく、されど徐々に大きく。迫る”羽音”に眉を少し潜めた。

オメガ『おっと……これは予想外だ、ドク……そんな命令を出した覚えはないぞ』

ぴくり、とオメガ表情が引き攣るのが判る。オフィスの窓の地平線から、のそりと顔を覗かせた巨体。
プラズマエンジンを搭載した巨大な”蜂”、スクランブラー・ホーネットが”針”を剥き出しにしてギャラエ達を睨んでいたからだ。

オメガ『ニュクス、やっぱりいいや……戻ろう』
オメガ『君たちも機銃掃射が来るより前に……ここから逃げた方がいいんじゃないかなぁ』

ニュクスを抱きかかえて戦闘体勢を解除させ、自らのオフィスと脱出口のある40階へと退くオメガ。
あのままここに留まっていれば、蜂の機銃掃射に巻き込まれるのは必至。妥当な判断だ。
操縦席でパイロットの隣に立つドクは、少し安堵したような、一方ある種憎悪を含んだ顔つきで越境者らを見つめる。
そのまま砲撃指令を出せば、ホーネットの機銃がギャラエ達目掛けてスピンアップ、ワンテンポ遅れて火を噴いた。

150ギャラエ 【くるりリデレクト】:2017/03/02(木) 00:42:40 ID:???
>>149
「……ふゥん……?」

その名を聞いた刹那
半月の上に位置する悪趣味なサングラスの奥の瞳は凍てついた炎を宿す
綽々と生きる彼女の、明確な敵意だとか害意の現れだ
彼女に取って彼女自身の存在はギャラエであり、それ以外の何者でもない
そしてそれ以上を知ったモノに対する処遇はいつも決まっているのだ、彼女はそれを是が非でも成さなければならない

「……」
「……そうさせていただきましょうか」
「ただやっぱり、この空間……思ったより悪趣味、よく見れば好みじゃあありませんでした」

モッドゼロと焼夷弾を起動させ、片方を残してこの場から消える

151ロストメモリーズ:2017/04/04(火) 14:32:58 ID:???
その日、ボストンの街は混乱と悲鳴で満たされた。

爆炎と灰燼の舞い散る中、ジョントシフト試作型を起動させて消えるギャラエ、続いてアードリゲも装置を作動させた。
グッドマンが処刑される光景を無線機を通じて聞き届けながら、ぎりりと歯噛みしながら放電を伴い跳んだ。

ロケットポッドが撃ち込まれ、ビルは中腹からくの字に折れ曲がって傾く。徐々に歪みを増してゆく巨体。
ケーニッヒが地下階を滅茶苦茶に破壊し尽くしていたこともあり、高層ビルは自らの重さに耐え兼ね、根元から折れ曲がり始めた。
瓦礫とガラスの破片を階下やストリートに撒き散らしながら、ついに圧倒的質量は落下を開始した。
シージ・オブ・シャンハイを彷彿とさせる。ボストンの湾へと向けバラバラに砕け散りながら倒れるHEXA本社ビル。

すぐにOSATが駆け付けるであろう、グッドマンの事前の手配によってHEXAがカノッサ傘下の系列組織であるとのリークを施していたからだ。
本来であれば間も無くOSATとHEXAとが正面より衝突を果たしていた筈だ、しかしその直前でHEXAが自壊を果たす事となった。
OSATの一団が到着したその頃には、既にHORNETも、NYXの痕跡も。全てが平等に消え失せ、そこに残るは数を増した謎のみだ。

突如街中に飛来した謎の降下艇によるHEXA本社への爆撃、それが表向きに公表された事件のカタチ。
ISAC側はこれをエーカーによるカノッサ組織への攻撃と断定、米国議会ではISACにマサチューセッツの運営権を委任するクライスラー条約が締結。
軍拡の際に州議会の顔色を伺う必要が無くなり、ボストンだけではなくマサチューセッツ各所にOSATが配備されることとなった。

そしてこれを機にUSSワールシュタットの退役、解体が正式に決定。以後はランドマークとして改装され、ボストン湾に永久に鎮座することが決まる。
さらに解体されたワールシュタットの部品や動力機関を用いて新たなISAC旗艦、”USSヴァルキリーII”を建造することが決まり、
ワールシュタットとは異なり比較的小型軽量で、大気圏内運用を主目的としたヴァルキリーIIが以後OSATのヘッドクォーターを担う事となった。
こうして2033年世界のボストンは徐々に、しかし確実に大きな争いへの道を歩み始めることとなったのだ。

そして、この日を境に新たな勢力が頭角を現し始めることとなった。

それはカノッサでも、エーカーでもない。完全なる第三勢力。必要とあれば誰にだろうと牙を剥く。
その名はニュー・ヘイヴン。ボストンの近隣、コネチカットに位置する都市と同名の組織である。
カノッサなどの既存の勢力と全く異なる点は、損得勘定の一切存在しない貪欲な活動方針にある。

ニュー・ヘイヴンはあらゆる世界に現れる。
幾多もの世界に触手を伸ばしては、その世界の特異点的遺物、または特異能力の持ち主を狩り、自らの”胃袋”に持ち帰る。
限りなく貪食なこの組織は、発覚から数週間足らずでほぼ全ての境界線上で、それらの世界に対する敵対行動を取った。
だがこの組織を止める者は、止められるものはいない、それが可能な者達はみな、この”時代”には存在しないのだから。

時を超えた守り人たちの不在を良いことに、世界の腐食は徐々に進んでゆく。

152ジョシュア・アーリントン【ソルダート・フトゥーロ】:2017/05/20(土) 21:54:21 ID:???
―過去の神話世界エリュシオン エスタ大陸 泉の渓のエリッタ

シェグムント『ジョシュア、エルミス』
シェグムント『君達……私に何か隠し事をしているんじゃないかい?』

15年前の世界に越境して二日目、険しい表情のシェグムントが一行の元へとやって来たことで朝が始まる。
シェグムントの診療所をフルに活用することでなんとか全員分の寝床は確保していたのだが、まぁ狭い。

石の床に獣の毛皮で造った寝袋を敷いて眠っていたジョシュアとエルミスがまず呼び声に呼応するように目を覚ました。
患者用のベッドはみなダグラスと女性陣の為にあてがわれ、男どもはすぐ傍の床で雑魚寝である。

ジョシュア「何だってんだ……このクソ早くに……」

促されるままにジョシュアは起き上がり、続いてエルミスがジョシュアの後を追ってシェグムントに付いてゆく。
通されたのは越境者らが不意のアクシデントにより過去から連れて来てしまった男、ダグラスの眠る病室。
シェグムントがドアを開けると、そこに眠っているダグラスの姿は無い。空のベッドにジョシュアは顔を顰めた。

ダグラス『……シェグムント、彼等は……』

シェグムント『彼はダグラスと名乗った……黄金色の髪ゆえに失念してはいたけど……』

声のする方へと視線を向ければ、ジョシュアは目を大きく見開いた。
血に塗れたボロボロのワイシャツ。腕を組み、窓の外の仄暗い空を見つめる人影。
ちらりと振り返ればその顔つきが露わになる。白金の頭髪に顎髭。銀色の瞳でジョシュアらを見つめる。

ジョシュア『どうして13代目の勇者が居るのかってハナシだろ?誘拐してきたワケじゃねェよ』
ジョシュア『そいつも未来の人間だ。この世界のダグラスはまだハタチにもなってねェガキだろ』

ダグラスとはこの世界に於ける、当代魔王を討伐する定めにある人物、言うなれば”勇者”である。
それが傷だらけの死にかけで運ばれてきたと知れば殆どの人間は困惑するだろう。
シェグムントもそのうちの一人、ジョシュアは当惑し、こちらを問い詰めるシェグムントを説得する。
彼はこの世界よりも未来の人間、そしてジョシュアらの時代よりも過去に住まう人間であること。
本来ならばこの世界に居るべき存在ではないということを。

シェグムント『じゃああの、ミスリルの剣を持った逃亡騎士の話は……』
ジョシュア『でっち上げだよ、嘘に決まってんだろ』

シェグムント『だと思った!!あんな強力な祝福……勇者の剣以外にそうそう見ないよ』
シェグムント『マナを吸ってくれる霊樹の傷当てがマナで飽和するし、急いで剥がしたら傷が塞がり掛けてるし……流石に肝を冷やしたね』
シェグムント『勇者の肉体がマナ中毒になる訳がないし、衰弱からの回復が早いのも納得だ』

説得の末、シェグムントはすんなりジョシュアの主張を受け入れたようだ。
元より彼等の存在が現実離れしすぎているのだ。今更何が起こった所で些細な疑問にしかなり得ないのだろう。
それにエリュシオンの勇者が襲われただの、そういった報せもない。そのような事があればエリュシオン中に噂が広がるだろう。
魔王の勢力拡大を食い止めるかすかな希望、それが襲われ死にかけているとあれば人類の存亡に関わる大事件であるからだ。

シェグムント『でも……だとするとどうして彼は自らの剣で自分を傷つけたんだろう?』
シェグムント『それに、エリッタに立ち寄ったあの黒いローブの男は……』

エルミス『話し込むのも結構だが、通してやってくれないか』
エルミス『何より先にダグラスを見たい人間が……そこに居るだろう』

ダグラスを横目でチラ見しつつ腕組みしてそわそわと落ち着かない様子のジョシュアと、顎を持って俯き加減に思案するシェグムント。
そんな二人の間に割って入ったのはエルミスだ。もうウンザリとでも言いたげな表情で。
もっと大事な事があるだろうと、ジョシュアとシェグムントを引き離して、病室に通じる道を作るのであった。

153ニア・シューペリオリティE.月光.空色スカーフ:2017/05/20(土) 22:04:03 ID:???
「んむむ、み、見えないってんですっ……!」

ひょっこらひょっこらひょいひょいっと、一同の後ろで飛び跳ねて室内を見ようとしているニア
タイドメイカーの触腕で体を持ち上げればいいのだが、何故かそれは憚られた
多分この場に於いて何処までもただ、ひとであろうとしているのであろう

「起きたってんですかっ? お加減どうだってんですかっ?」

誰かしらの肩に捕まって跳躍、病室内の人物へと元気で、心配を多分に孕んだ声を掛けるのであった

154ソーマタージ ◆.zilz3o6.U:2017/05/20(土) 22:06:27 ID:???
>>152
「今時の医者は睡眠管理までしてくるのか。
 傭兵は早起き出来ない。次までに覚えとけ」
【不機嫌そうな声と共に、目元を擦りながらベッドの下から這い出てくるのはソーマタージ】
【掛け布団代わりのボロボロのコートを放り、関節を鳴らして着いていくと、件の"勇者"が待っていた】

「話が早くて助かるよ。強引に分かってもらう必要もなくなった」
【腕を組み、割とすんなり受け入れてくれたシェグムントに鼻を鳴らす】
【ウダウダ言われるのなら、殺してでも黙らせる事を考えていたが、杞憂に終わったようだ】


「厄介事はゴミ箱に、面倒事はまた今度、涙もちょちょ切れる感動の再会といこう。
 ……いや、俺は感慨も感動もクソ程もないけどな?」
【初対面だし、と居心地悪そうに一歩引く】
【流石にこういう時の空気は読めるのだ】

155アキレス&ベティ>521-522と>215 ◆eZKgukyN3c:2017/05/20(土) 22:11:48 ID:???
>>152
「ふぁぁぁぁ・・・・あと五時間」
―――ギィ!!
「アバーッ!」

なんか起こしに来たシュグムントにめげず寝返りを打つアキレス
だがベティのクラブハンマーで強制起床

とりあえず白髪な男がいて 何か小難しい話をしている

「・・・・・・・・・」
とりあえず沈黙を保つ なぜかって?
話が全く分からないから余計なことを言うことすらできないからだ

156ジョシュア・アーリントン【ソルダート・フトゥーロ】:2017/05/20(土) 22:32:26 ID:???
>>153
ダグラス「悪いな、まるで身体が鉛になったようだ」
ダグラス「……君たちは?」

ニアに身体の調子を問われれば、ダグラスは腕組みしたまま憮然とした表情で答えた。
以前のような温かさや優しさは影すらなく、それはまるでニアと出会う前の彼のような冷酷さを秘める。
そしてジョシュアを凍り付かせたのは、その言葉の後に発せられた問いだ。
ダグラスはニアとジョシュアを差して、彼等が何者かを問うたのだ。

「は……?何言ってんだダグラス……俺が分からねェのか?」
「ジョシュアと……ニアだよ!俺ァあんたの部下で……ニアは……!」

流石にジョシュアも黙っていられなくなった。ダグラスに詰め寄り、自らの胸とニアを差して訴える。
されどダグラスは浮かぬ顔。ジョシュアもニアも。何者であるかを分かっていないようだった。

エルミス「……記憶が混乱してるのか?」

ダグラス「エルミス……!私は……ここは何処だ?」
ダグラス「髪が伸びたな……それは誰に結んでもらった?そんなに洒落っ気は無かった筈だ」

エルミスもさすがに焦りを隠し切れなくなったようで、ダグラスの顔を覗き込む。
と、ダグラスはエルミスに対して反応を見せた。彼の顔を見て確かに顔色を変え、口元をほころばせたのだ。
これはジョシュアの知る所ではなかったが、ダグラスとエルミスとは生まれた頃からの親友である。
尤もダグラスが物心付いたときには、エルミスは今の姿であったが。

>>154 >>155
シェグムント「私は早起きだよ、おかげでほら、こんなに元気いっぱい」
シェグムント「君もジャンキーみたいな生活を止めて、偶には身体にも気を遣うんだよ?」

ヘラヘラ笑いながら肘でソーマの脇腹を小突く。
シェグムントに言わせてみれば身体に悪いものばかり好み早起きが苦手というソーマの生活態度はまるで子供のそれだ。
我が子に言い聞かせるように、それは逆を言えば口やかましいオフクロ的鬱陶しさを孕む。

ミスカ「おはようアキレス、あの人、もう目を覚ましたんだ……?」
ミスカ「ふぅん……」

ダグラスの生い立ちを知っているとはいえ、ミスカはその回復能力に感嘆の声を漏らしていた。
彼女の親友であるエドもまた、戒めの血を引いた勇者の血統と言える。
となるとエドにもあんな力が備わっているのかな、といった疑問が脳裡をよぎったのだ。

「……状況が変わったみてェだ」
「あいつにとっちゃこの場の全員……初対面らしィ」

認めたくはねェが、ジョシュアはそう続け、ダグラスから離れて壁にもたれ掛る。
20年以上ぶりの再開だというのに、彼はジョシュアが誰かを分かっていないのだ。
流石のジョシュアも、どこか呆然としたように。生き甲斐を喪ったかのように放心していた。

>>ALL
ダグラス「……ふむ、鈍っているな」

首に手を当ててぐるりと回し、そうして小さく呟く。
全身の筋肉が凝り固まって、まるで生気を抜かれたように体が重い。
聖務に復帰する前にこれをどうにかする必要がある、ダグラスは思案した。

ダグラス「君達……が何者かは知らないが、恐らく私の命を救ってくれたのだろう、感謝する」

胸に手を当てて礼を述べる。そうしてワイシャツを脱ぎ払えば、着替えとして置いてあった質素なチュニックを着る。
随分と不格好だが、今はこれでいい。仕立てた鎧は必要ない。

ダグラス「礼の一つも出来ないが……もう一つ頼まれてやってくれないか」
ダグラス「身体が思うように動かないんだ、私の稽古の相手をしてくれ」

越境者相手に提案するのは、勘を取り戻すための稽古である。
いきなり魔王の城に乗り込むわけにもいかない。先ずはコンディションを整えることが先決だ。
既に魔王はアキレスらによって倒されているが、過去の人間たる彼の記憶の中ではまだである。

157アキレス&ベティ>521-522と>215 ◆eZKgukyN3c:2017/05/20(土) 22:41:32 ID:???
>>156
「みたいね よくわかんないけど」
―――ギィ!!

寝ぼけ眼であくびをかみ殺しながら 挨拶を返すアキレス
ベティは今日も元気いっぱいだ

さて 頼み事があると言われれば なんと組手のお誘い

「えぇ〜・・・俺殴り合いの方はちょっと…」
確かに魔王を倒した経験はある だがあれはただ剣の切っ先を魔王に向けて突進しただけと言うか 単なる体当たりと言うか
兎に角腕っぷしはさっぱりなアキレスである

「俺なんかとやったら腕更に錆びつくんじゃね?」
と懸念である まぁやるとなったら誰かしらにひきずりだされる事になるでしょう

158ニア・シューペリオリティE.月光.空色スカーフ:2017/05/20(土) 22:41:35 ID:???
>>156
「……、」
「……わ、私はぁっ、」
「ニアって言いますってんですっ」
「『ダグラスさん』には、そのっ……」
「前にっ、とっても、とっても、お世話になったってんですっ……」

その時のニアの表情を形容する言葉は、きっと存在しない
大いなる情愛を取り戻したと同時に失い、しかし確固として目の前に存在するという奇跡
それをそれで良しとするのか否かの判断を決する事が叶わないのだ
ニアの名も、剣も、そして命すら
全てを与えた男がすぐ手を伸ばせばそこにあって、それだけで感無量
しかし足りない、不足に感じてしまう部分も無論にある
微笑みながら泣きながら、それでもニアは言葉を掛ける事が出来た

「……稽古」
「……お稽古っ!」

一語一句を聞いて噛み締めるように
そしてその中のひとつの言葉を聞き逃す事など、勿論しなかった

「よろこんでってんですっ」

ふふん、と月光を翳して見せる

159ソーマタージ ◆.zilz3o6.U:2017/05/20(土) 22:45:30 ID:???
>>156
「面白いことを言う輩だな。気に入った。機会が来たら真っ先にブチ殺してやるぞ…!」
【フフン、と鼻で笑うが、その表情は険しい】
【彼がオカン的に敵意をむき出しにする理由はちゃんとあるのだが、今はまだ語るべきではない】


「…記憶喪失ってヤツか。そういう時もある。
 こればっかりは、時間が解決してくれるだろうさ。下手に弄ると却ってよくない」
【Hmm、と口元を隠して考え込み、あっけらかんと返す】
【本来なら死ぬはずで、助かっても数日寝込んでいたのだ。悪影響が残ってない方がおかしい】

「マジか。命の恩人にそんな事頼んじゃう?」
【片眉を吊り上げ、思わず思ったままの言葉が口をついて出る】
【模擬戦自体はどうこう言う気はない。だが、相手が伝説級の勇者となれば流石に気が引ける】
【「加減できるんだよな?」という猜疑の目をジョシュアに向け、決めあぐねる】
【他の人が了承するのなら、一応参加はするだろう】

160ジョシュア・アーリントン【ソルダート・フトゥーロ】:2017/05/20(土) 23:03:17 ID:???
>>157
「何だアキレス、まさかビビってんのか?」
「男は度胸って言うだろ、大丈夫だよ殺されやしねェって!」

ジョシュアはこう言ってはいるが、確かに前衛タイプではないアキレスにとっては少々辛い提案かもしれない。
その場合はミスカと仲良しピクニックコース(オッサン二人が付属)コースが待っている。
既にミスカはお昼ごはんを作りにキッチンへと走っている。七八が居れば賭博の準備を始める頃合いであろう。

>>158
ダグラス「そうか……宜しく頼む、ニア」
ダグラス「その剣は……私も持っている」

ニアの言葉に素っ気なく返すも、流石に月光の剣には興味を示したようだ。
食い入るように見つめ、鞘から刀を抜くような、ニアにとっては見慣れた仕草。
されど彼の愛刀たる月光は出てこない、それもそのはず、ニアが彼を助け出す際、ビルの最上階に置いてきてしまったのだから。

ダグラス「……?、剣が出ない」

エルミス「……当たり前だ、あれは聖剣を打ち直したモノだからな」
エルミス「ダグラス……お前が自分で、あの子に託すと決めたんだ」

ダグラスはエルミスの言葉に首を傾げていたが、僅かに眉を顰めていた。
それはただ県が無くなった事への驚きを現すだけの仕草ではないということは明らかだろう。

>>159
「俺は参加するぜ、ヤツの顔をブン殴りてェ」
「ニアにあんな顔させるためにあいつを連れて来た訳じゃねェんだ」

ジョシュアはやる気満々、ここでダグラスを斃せば勇者を斬った男として箔が付くことは確か。
しかしジョシュアの上官ともなれば、中々曲者だというのは言われずとも察する事は出来るだろう。

>>ALL
ダグラス「ふむ……では宜しく頼む」
ダグラス「武器が無いからな……私は木剣で戦うとしようか」

木剣を片手にぱんぱんと当てながら、ダグラスは越境者に取り囲まれた状態で呟く。
武器は真剣、手加減無し。その方が戦いの感覚に近いからだとダグラスは言う。
ルールは単純、ウェポンズフリー。先に参ったを言った方が負けだ。

「丁度良かった、そのすましたツラを凹ませてやりてェと思ってたんだ」

ダグラス「……容赦はしないという事か……病み上がり相手に酷いものだ」
ダグラス「いいだろう……では、滅びよ」

両者の間には闘気が渦巻き、徐々に空間が滲み歪み始めていた。
正に火花散ると言った光景を、少し遠巻きに見つめるのはミスカとシェグムント。

ミスカ「滅びよとか言っちゃってるんだけどあの人大丈夫なんですかね……?」
シェグムント「あー……うん、大丈夫だと思うよ」

エルミスも含め、欠席組はこちらで仲良くピクニックだ。
エリッタから少しはなれた原っぱは朝露が冷たく気持ちがいい。服は濡れるが。

161ソーマタージ ◆.zilz3o6.U:2017/05/20(土) 23:14:21 ID:???
>>160
「熱心なことで…。病人は労わってやれよ?」
【周りはやる気らしい。特にヤる気満々なジョシュアにちょっと引きつつも、参加】


「アンタは真剣じゃなくていいのか?いいなら別にもう言わねーけど」
【大剣を軽々と担ぎ、念のため言っておく。どうも調子が狂う】
「…模擬戦なんて、最後にやったのいつだ?高二の夏以来か?」

「───イヤーッ!!」
【ダグラスが言うと同時、歪みだす空間の中、砲弾めいて突っ込む!大きく仰け反り、手には矢の様に引き絞られた大剣!】
【稲妻めいて接近し、まず彼の持つ木剣を体重と勢いを乗せた突きで破壊するつもりだ!】

【普段の得物とは違うため、やや精彩に欠ける武骨な突きは届くか】

162ニア・シューペリオリティE.月光.空色スカーフ:2017/05/20(土) 23:16:25 ID:???
>>160
「……これっ、なんでしたら今だけお返しっ……」
「あ、大丈夫ってんですかっ? ……ではっ」

ニアが愛剣を手放す事は決して多くはない
彼女が越境を始めてから3年程だが、その中では衰退世界に於いて武器を奪われた時位のモノだ
それだと言うのに全くの気軽に賃借の申し出が出来る程度の仲なのであったと言う事であろう

そんでもって稽古戦の場へ

「……♪〜」

ニアは上機嫌に月光を構えていた
勿論模擬戦とはいえ戦闘である、軽く見ている訳ではない
ただそれでも、その仕草、挙動を見るだけで抑えられないのだ、堪えられない

「行きますってんですよぉっ!」

イナズマめいて突撃するソーマタージ、彼と異なる軌跡を描き駆け抜け鋭い刺突一閃!

163アキレスとベティ>521-522と215 ◆eZKgukyN3c:2017/05/20(土) 23:21:17 ID:???
>>160
「び・・・bbbびびってねーし!?」
男アキレス虚勢を張るの巻き

そして虚勢を張った結果

「どうしてこうなった どうしてこうなった」
戦いのフィールドにご案内

「あぁもう虚勢張るんじゃなかった!! いくぞアキレスデモンレッグ!!」
ショートソードほどの長さの木刀を持ち 脚に青い霧を出す

「イィィィィヤッホゥ!!」
一気呵成に突撃を仕掛ける

164ジョシュア・アーリントン【ソルダート・フトゥーロ】:2017/05/20(土) 23:30:09 ID:???
>>ALL
ダグラス「まぁ直ぐに分かる」

真剣を使わなくていいのかと問い詰められれば、首を振ってソーマを一瞥。
闘ってみればその理由が直ぐに分かるだろう、ジョシュアが生贄となった。

「舐めやがって……ブッ殺す!!」
ダグラス「ちゃんと構えろ、武器が泣く」

ナイフを構えて真っ先に突撃するジョシュア、ダグラスは木剣でそれをいなし、彼の手首を叩き落す。
なるほど真剣であったならば、ジョシュアの手首は飛んでいるだろう。

「クソがッ……!」
ダグラス「武器を振り回しているのか、武器に振り回されているのか、どっちだ?」

その後のジョシュアの反撃をいなし続けるダグラスであったが、越境者らは拍子抜けするだろう。
技巧こそ中堅の剣士以上のものではあるが、どうも動きにキレがない。
年相応の壮年の相手をしているが如く息切れも激しく、ジョシュアも全くダメージを受けていないのだ。

「おっと……」
「フム、良い突きだ。あの若者とは違うな」

三人の突きが一斉に迫り来れば、それが命中する寸前に身を引いて回避を試みる。
しかしソーマの刃を脇腹に喰い込ませ、そのまま膝をついてしまう。

「もう一度……お手合わせお願いできるかな?」

困ったような笑顔を浮かべ、三人に向けて指を一つ立てる。
ジョシュアは呆れて踵を返してしまった。ただの老兵を甚振るのは趣味ではない。
ただその背中には、呆れと同時になんらかの失望のようなものもあった。
彼の記憶のダグラスはもっと強く、そして絶対に膝をつかない男であったからだ。

165ニア・シューペリオリティE.月光.空色スカーフ:2017/05/20(土) 23:41:05 ID:???
>>164
「……っ、とっとっ!?」

刺突を躱され二歩、たたらを踏んだ
確かにジョシュアの攻撃を否し、三人の波状攻撃にも対応して見せた
成る程充分強い、しかし勇者であればそうではない

「……いいですってんですけどっ、怪我ぁ……」
「へーきだってんですかっ……?」

ふむ、と身を引いて重心を背後に
ゆらりと揺れる動き、首筋から出でる1本の触腕に体重を支えられたのだ
ニアは多くの戦術や戦法を学び編み出している
そしてその中で、対人戦剣技に於いて有用な場合が多いのがこれである
つまり真剣、先程より余程本気の攻勢の構え

「……へーきだってんですよねっ」
「だってぇっ、あなたはぁっ……」
「……ニアのパパだってんですからっ!」

「本気だってんですよっ……月、光ォォッッ!!」

触腕で地面を強く叩く
自然、跳ねて前方へ飛翔する体
先と同じく突撃、だが速度が段違いに疾風い!
月光を構え全霊、雷閃が如き刺突を解き放つ!

166ソーマタージ ◆.zilz3o6.U:2017/05/20(土) 23:41:51 ID:???
>>164
「素っ首落として……アレ?」
【左手の裾から飛び出した短剣を逆手に持ち、ダグラスに放とうとして───止まる】
【単純に拍子抜けしたのだ。想像と余りにもかけ離れている。伝説とか勇者とは程遠い、ちょっと腕の立つ老兵程度だ】
【ゆっくりと数歩下がり、大剣と短剣をクルクルと回して鞘に納める。その表情は浮かばない】

「…水入ってると思ってヤカン持ち上げたら空だった感じー…。
 あいつ本当に勇者か?老人虐待は嫌いじゃないが、直に死ぬぞ、このままじゃ」
【さらに数歩下がり、首を少しだけ傾けてニアに耳打ち】
【彼女の記憶のダグラスは、この程度だったのだろうか】


「え?あ、ああ…それが望みなら」
【困惑しつつも、頼まれたなら付き合う。再び大剣を構え、ダグラスに斬りかかる】
【勢いも力も、先程の突きよりは弱い。精彩の欠けた、やや力任せの武骨な剣術だ】

167アキレスとベティ>521-522と215 ◆eZKgukyN3c:2017/05/20(土) 23:44:14 ID:???
>>164
とりあえず一端はこちらで勝つことができたらしい
だがジョシュアがなんか離れて行ってしまいました

「ちょちょちょ・・・ジョッシュどうしたのさちょっと…えぇとちょっと俺離れるわ」
ダグラスに愛想笑い一つ 木刀担いで戦線離脱

「ねぇちょっとジョッシュどうしたのさごご機嫌斜めじゃない?」
離れるジョシュアについていくアキレス

168ジョシュア・アーリントン【ソルダート・フトゥーロ】:2017/05/20(土) 23:51:38 ID:???
>>165
ダグラス「クッ……」

呻きを上げる勇者、ぱぱは呻きを上げない。
ニアの渾身の一撃に押し切られ、一歩後ずさる。勇者は退かない。

ダグラス「はぁッ!!」

なんとか受け流し、追撃の形で木刀を振るう。
ひゅんと空を切る音は弱々しく、しかし先ほどより強い。

「もう一度……手合わせ願おう」

>>166
ダグラス「手を……ッ」

ソーマの斬撃は先ほどよりも手加減の為されたものだ。
ダグラスはそれを両手で力一杯に握った木剣で受け止める。
刃が欠け、軋み、徐々に押される。されどダグラスはかっと目を見開き、木刀を握る両腕に一層の力を込めた。

ダグラス「抜くんじゃない」

ただの木刀で斬撃を弾き返し、ソーマの大剣を打つように木剣で振るう。
横薙ぎの一閃は草木を揺らす。ほんの僅かに大気が震えた。

「もう一度」

169ジョシュア・アーリントン【ソルダート・フトゥーロ】:2017/05/20(土) 23:57:51 ID:???
>>167
「俺の上官はあんなモンじゃない」

ジョシュアに突いてくるアキレスに、彼は顔を見せないように言い放つ。
その言葉の端々から漏れる感情、怒り、悲しみ、失望、様々だ。

「ダグラスは……強くて、絶対に負けない……俺にとってヒーローだった」
「いや……あの人は部隊の憧れだったんだ……」

次第にジョシュアの声は微かに震え、彼の無念が伝わって来るだろう。
その拳は皮膚を爪が突き破らん程に握り込まれていた。

「見てられるかよ……!記憶も無くして、力も失って……あんな情けない姿をよォ……」
「クソッ!!」

右の手ですっと目元を拭えば、悔し紛れにそこらの木を力任せにぶん殴った。

170ソーマタージ ◆.zilz3o6.U:2017/05/21(日) 00:03:12 ID:???
>>168
「カンを取り戻してきたか?結構、お互いケガしない程度にやろうや」
【SRHHHK!振るわれる木剣を受け止め、口元を僅かに歪める。赤い瞳が不吉な光を放った】
【読めてきた。この男は、戦いの中でカンを取り戻してきている。強くなっている。早抜けしたジョシュアはどう思うだろうか】


「そうこなくてはな。まだまだいくぜ、オイ」
【酸素供給機が物々しい音を立てて装着される。左手に短剣、右手に大剣を持ち、姿勢を低くして構える!】

「イヤーッ!」
【低い姿勢のまま、地を滑るかの様に飛び込み!ダグラスの側を通り抜けようと、真っ直ぐ突っ込む!】
【低い姿勢で足を狙い、刈り取るかの様に短剣を振るう。ボールを打ち上げるかの様に大剣を振り上げる。また飛び掛かる───】
【まるで狼の様に、素早く、鋭い攻勢!手を抜く気配はない、そんな事を続ければ、こちらがやられる】

171ニア・シューペリオリティE.月光.空色スカーフ:2017/05/21(日) 00:03:39 ID:???
>>168
「えぇっ、」

追撃を触腕で受け止め、飛び退いて距離を開く
再び構え、微笑み、そして真摯の眼差し

「……一刹ッッ!!」

腕に細い触腕を巻き付ける
伸縮性に富んだそれを外装式の補助筋肉として活用、再度鋭く駆け込み振るう月の影
闇夜を剣跡に宿した横薙ぎは鋭く速い
成人男性の体躯を両断する程の破壊力を秘めたそれを放つのは、絶対な信頼の証左である

172アキレスとベティ>521-522と215 ◆eZKgukyN3c:2017/05/21(日) 00:15:33 ID:???
>>169
「ジョッシュ・・・」
憧れの存在のの情けない姿?に失望する姿に言葉を失い
タダ去っていくジョシュアを見送ることしかできなかった

「・・・」
ジョシュアに背を向けて主戦場に戻ってきたアキレス
ピクニック状態のミスカに近づいて

「なぁミスカ やっぱりあのオッサン本調子じゃないらしいんだけどさ どうにかなんないかな>?」
と癒し手としての見解を聞いてみる

173ジョシュア・アーリントン【ソルダート・フトゥーロ】:2017/05/21(日) 00:35:48 ID:???
>>170
ダグラス「素早いな……」

襲い来るソーマの短剣を小さく跳んで回避、大剣の打ち上げを剣で防ぎ、また撃ち落とす。
同じような攻撃が来ればすべて対処し、最初は危なげであったそれも次第にキレを増す。
終いにはソーマと同等、それ以上にも匹敵する鋭さを持った切り返しを放ち始めた。

ダグラス「だが、私だってそれくらい動けるさ、動いてみせる」

ダン!!短剣を思い切り踏みつければ地が割れ、大きな窪を作ると共に亀裂が走る。
まるで戦車にのしかかられたように、多少の力では引き抜こうにもビクともしない!

>>171
ダグラス「来い、ニアッ!!」

声高らかに娘の全力を受け止める覚悟を伝える。両手を広げ、ソーマの短剣を踏みつけたままだ。
腰を低く落とし備える事も無く、ただ両手を広げて棒立ちで彼女を待ち受ける。
まるでそれは抱擁に備えるかのような動きだ。差異は互いの手に剣が握られているということくらいのものだろう。

やがて剣閃は交錯し、辺りを衝撃波が駆け抜ける。

呻きもない、たじろぎもない。只の木剣でニアの渾身の一撃を受け止め、なおも立っている。
にやりと口元を歪めれば、お返しに剣を思い切り振り上げる。
突風が巻き起こり、森が震え、雲が避け、空が啼いた!

>>172
ミスカ「うーん、記憶喪失の割にはエルミスさんのコト知ってたよね……」
ミスカ「それってひょっとして記憶が消えたんじゃなくて……きゃ!」

「……?」

真っ先にソーマが気付いた、続いてニアが。そして最後にジョシュアが異変に気付き、振り返った。
暴風に煽られ、ミスカが転ぶ。ジョシュアは呆気にとられ、そうしてダグラスの姿を目に焼き付けた。
舞い踊る風の中、剣を掲げ、彼の切先を避ける様に雲が丸く穴を開けている光景を。

エルミス「ふん、そうか……お前は……戻ってしまったんだな」
エルミス「ジョシュアやニア達と出会うよりも前……人生で最も幸せだったあの頃に」

ダグラスの旧来の友人たるエルミスは、ダグラスの症状の正体に気が付いたようだ。
合点がいったように独り言ち、それを聞いたミスカもやっぱり、と続けた。

エルミス「まだ心は青年のままか、肉体と精神の整合性の不一致……老いた身体では全盛の動きの要求に応えられまい」

防衛機制に則り、ダグラスの心は退行した。魂を破壊し解放する作用のある聖剣を自らに突き刺す事で心に大きなダメージを受けたのだろう。
故にダグラスの心は壊れ、彼の記憶は彼が最も幸せであったと感じる時代まで退行したのだ。
若い頃と同じ感覚で身体を動かそうとすれば、鉛のように感じるのも妥当である。

>>ALL
ダグラス「さて……この辺りで終いにしようか」
ダグラス「最低限のリハビリは済んだ、後は実戦でゆっくりと慣らしてゆくとしよう」

木剣を降ろせば、役目を終えたかのようにそれはほろほろと崩れ、朽ちるようにして壊れた。
弘法筆を選ばずとは言ったものだが、ここまで極端な例もない。木剣を破壊せずに打ち合うのも一種の才ではあるが。

ダグラス「有意義な時間だった、礼を言う」

こうして聖王は記念すべき戦線への復帰を遂げるのであるが……
さて、彼が本来倒すべき魔王は既に越境者達が死闘の果てに討伐してしまった。
そして勇者はそれを知らない、この先どうすべきであろうか、知らずのうちに佳境のダグラスであった。

174ニア・シューペリオリティE.月光.空色スカーフ:2017/05/21(日) 00:42:50 ID:???
>>173
剣技による邂逅、言葉なき会話
彼我の合間に交わされるそれにニアが籠めた思いは万感であり、言葉としては語り尽くす術を持たない
やがて巻き起こる乱流、風鳴、広がる蒼天
その極みは果たして何処にあろうか、そらを見上げる度にニアはそれを考える

「……ふぅっ……」
「此方こそっ」
「楽しかったってんですよっ、ありがとうってんですっ」

今の彼は彼であり、父親ではない
それがニアの達した結論であり、しかしだからと言って他人では決してない
複雑な感情が絡まり、それでも好意的に考える事が出来るのは重畳だ
僅かな薄墨の香りを吸い込み、月光を抱き、頷いた

175アキレスとベティ>521-522と215 ◆eZKgukyN3c:2017/05/21(日) 00:45:02 ID:???
>>173
「じゃあ記憶喪失zウワッ!?」
―――ギィ!?

ミスカとの相談中である エルミスの方に注意を向けなかったがゆえに暴風に対処できずミスカと共に転げる

「な・・・なにごと・・・?」
―――ギィ@@

目を回すベティ 顔を上げてエルミスを見れば どうやら向こうは自らの不調の原因について合点が言った模様

とりあえず稽古は終了とのことなので

「よし じゃあみんなでオベント・・・」
先ほどの暴風で お弁当はどうなってしまったでしょうか?

176これまでのあらすじ ◆4J0Z/LKX/o:2019/04/13(土) 17:21:34 ID:???
【勇者の誕生】
神話世界エリュシオンにて、強大な力を持つ魔王に対抗するため生み出された存在である『勇者』の血統。
彼らは聖人と呼ばれる古代文明の末裔たちで、天使の血液を輸血するという禁術を施すことで人為的に人を超える力を授かった戦士達でもある。
そして強大な力を持つその血族を異世界へと持ち出し、クローン技術を用いることによって複製の私兵を生産することを企てた者が居た。

しかし天然の『勇者』であり、『勇者』の中でも最強の力を持つ聖王ダグラス・ルカのクローンが謀反を企てたことにより、施設は破壊され計画は頓挫。
脱走した聖人たちは異世界に散り散りとなり、聖王ダグラスの妹であるラヴレスクローンもまた、半人タェンティースとともに異世界へ渡った。

【聖人殺し】
だがゼファー社に鹵獲されたタェンティースを救出する際、ラヴレスクローンは謎の不調に陥り負傷、タェンティースの目の前で命を落とす。
それを皮切りに次々と聖人のクローン達が殺害され始めた。双子の聖人スコルとハティ、ミスカの同僚エドモンドも狙われ、エドを除く全ての聖人がオリジナルやクローンの関係なく殺されてしまった。
越境者でありダグラスの娘であるオルティアのクローンも殺害され、その遺体を回収するためにジョシュアを中心とした越境者達が派遣される。
しかし遺体確保の際に何者かによって遺体の顔面が狙撃され、本当にオルティアの遺体であったのか識別が不能となるなど、一連の事件は第三者の思惑が感じ取れる結末となった。

177これまでのあらすじ ◆4J0Z/LKX/o:2019/04/13(土) 17:22:11 ID:???
【眼の台頭と破滅】
聖人殺害事件の遺恨を残したまま、新たな事件が越境者を襲う。『眼(ジ・アイ)』と名乗る異能者集団がカノッサ機関へと宣戦布告したのである。
カノッサは越境者にとっては薬にも毒にもなる存在。これまで助けを得てきた越境者も多く、特にカノッサを母体とし、様々な異世界のアーティファクト収集を目的とする組織であるHEXAは、ジョシュアの身元請け合い人でもあった。
そのため越境者らは『眼』の最高司令官『女教皇(ハイプリエステス)』と交戦。異能を阻害する新兵器『スクランブラー』の助力を得て彼女を瘴気の谷へ突き落とし、勝利する。
ハイプリエステスの死亡を経て『眼』は瓦解、のちに幹部であるサー・グッドマンもHEXA本部と相討つ形で殺害され、2033年世界の『眼』は完全に駆逐されることとなる。

【生体兵器NYXの誕生】
海兵隊員ジョシュア・アーリントンが人類最初の接触を果たした、遠宇宙より飛来せしナノマシン群、グリード。
その正体はエリュシオンの古代文明によって生み出された七つの大罪が一柱、『暴食のベルゼブブ』であった。
2033年の世界を襲ったそれは遠未来より越境した宇宙軍IASCによって駆逐されるも、多数の死傷者を出し世界に癒えることのない大きな傷跡を残した。

異世界の宇宙軍IASCが民間企業ISAC(アイザック)として再編成され、2033年世界に土着し各地の紛争解決に勤しむ中。ボストンを襲ったグリードのサンプルは密かに衛星軌道上の実験施設に隔離され、違法な生体実験が続けられていた。
以前にイムカ・グリムナーの肉片から採取された皇帝の遺伝子もまた、グリードと同じくそこへ隔離されていた。グリードと同じく先進的な調査が続けられるも、失敗作のミュータントを生み出すにとどまっていた。
しかし限られた空間ゆえ、実験体の失敗作を保管する場所が無くなると、ISACの研究員は廃棄物の隠匿のため、グリードに実験体を捕食、消化させることで失敗作の処分を行なっていた。

その際イムカの遺伝子と、彼女が持つ皇帝の遺伝子の双方を吸収したことにより、グリードに突然変異が発生。
これまで凶暴な異形を創り出すに終わっていた実験の中で、図らずとも唯一知能を持った個体を生み出すことに成功する。
グリードとイムカの遺伝子を持った生体兵器はNYX(ニュクス)と名付けられ、その知的欲求をなるべく刺激しないよう、密室に隔離され白痴を保たれていた。
コードネームNYXはのちに皇帝因子の抹消のため衛星研究所を襲撃したイムカ・グリムナーらによって保護、バイオハザード防止のため、HEXAの管理下においてのみイムカらとの面会が許されていた。

178これまでのあらすじ ◆4J0Z/LKX/o:2019/04/13(土) 17:22:53 ID:???

【NYXの暴走】
地球へと降り立ち人間と関わりはじめると、NYXはすぐさまグリードと同様の激しい知的欲求を見せ始める。
グリード襲来の前例に倣い、社会性構築の過程において暴力や死などのネガティブな概念と切り離され、過剰に健全に育ってゆくNYX。
その過程で彼女にはグリードと同様、珪素以外の物質に対する全能の捕食能力と、その性質の模倣という特性が確認される。
HEXAの司令官オメガはその性質に眼をつけ、世界中より収集していたアーティファクトをNYXに接種させるという実験を極秘裏に行うことを決定。
ギャラエらのボーダーブレイカー計画によって追い詰められたオメガは、NYXを最強のカードへと成長させるべく、より大量のアーティファクトをジョシュアらに収集させる。

そして極秘実験のさなか、NYXが突然体調を崩す。

傷付き、死に掛けたジョシュアの姿を初めて見たことをきっかけに、彼女の中に『ある感情』が芽生えたのだ。
それは喪失への恐怖である。ジョシュアが傷付いたようにイムカも傷付き、『動かなくなる』かもしれない、『壊れて』しまうかもしれない。
死という概念を排除され続けたゆえに、それらはNYXとって理解しがたい事態であった。そして理解できない事象というものは、これまで知的欲求をすべからく満たしてきたNYXにとって最大の恐怖をもたらすことになる。
それからNYXは寝込み、毎夜毎晩のようにイムカが壊れ、失われてしまう夢を見るようになった。

夢の中、イムカの喪失を恐れたNYXはうなされるままその事象を回避すべく頭を巡らせる。イムカを失うことが無いよう、自分はどうすべきなのだろうと。
そして苦悶の果てに導き出された選択は、実に合理的なものであった。接種したアーティファクトのチカラを行使することにより時間を巻き戻し、「イムカが壊れる」という結果を無かったことにしたのだ。
惜しむらくはそれが現実へと影響を及ぼしたことだろうか。まるで寝言のように繰り出されたそれは、現実時間までをも巻き戻し、越境者達を次元の境界の彼方へと吹き飛ばしたのだ。
かくして次元は破壊され、越境者らは時空の迷子となり、見たこともないような場所へと転移したのであった。

179これまでのあらすじ ◆4J0Z/LKX/o:2019/04/13(土) 17:23:27 ID:???
【15年前、神話世界エリュシオン】
越境者らが辿り着いたヘルゲン地方のエリッタという村。そこはミスカの出自と関係があるようだが、現代のエリュシオンの地図からは既に失われた土地であった。
そこには現代では絶滅した種族である『龍鬼(ワーム)』の生き残りが暮らす数少ない場所でもあった。彼らは魔力に適応しマナの濃い地で暮らす、鹿のようなツノと大きな翼を持った亜人である。

ヘルゲン人の中には高い魔力適性から多人種を見下した優生主義者が存在しており、エリッタ近郊のワームたちは彼らに里を焼き払われ、とても攻撃的になっている。
さらにエリッタは天から降り注いだ巨大な魔力結晶の墜落地点でもあり、未だに膨大な魔力と放射線が放たれている土地でもある。
そのため、魔力をふんだんに吸い込んだ深い森の中には誰も近寄らず、エリッタは世と関わりを断った世捨て人たちの住む集落となっている。

越境者らはそこで聖王ダグラスの傷を癒すため、王都から妻を匿う元聖騎士、シェグムントの世話になる。
ダグラスの傷を治し、記憶の回復を待つ越境者。怒涛の数日と比べれば、比較的穏やかな時を過ごす。

しかし遠く離れた砂漠のワーム、ユピ=セセットと出会ったことから、状況は大きく進展を遂げることとなる。
ジョシュアらが村を訪れた際、言い訳として槍玉に挙げたローブの男。その男がユピ=セセットを追い、再びエリッタに訪れたのだ。

180これまでのあらすじ ◆4J0Z/LKX/o:2019/04/13(土) 17:24:07 ID:???
【主な登場人物】
「ダグラス・ルカ」
最強の聖人でありニアの育ての父親。現代異能都市リベルタスに派遣された、対異能特殊戦隊HEXの司令官。
アグラーヤの異能によって剣を残して消滅するという運命を辿っていたが、時を遡ったニアによって救出される。
現在は記憶が青年期まで退行しており、越境者になった後の事を忘れている。

「エルミス」
HEX及びHEXAの諜報担当。常にスーツ姿で、ミディアムロングヘアを括っている。
エリシウム教皇ガブリエラと個人的な関わりがあり、天使と契約した不死者である。
勇者の血族の住む屋敷の執事であり、数代前の勇者からずっと彼らの面倒を見ていた。

「シェグムント・エリッタ」
くせ毛に丸眼鏡が特徴的な、気の優しそうな男性。
元はミスカと同じエリシウムの聖騎士であったが、政府から妻を匿うため逃亡。
腕は立つが重い病気を患っているようで、激しい戦闘をこなすことは出来ない。
エリッタという名は、この村に隠れ住むもの全員が、家族として名乗る姓である。

「リーゼロッテ・エリッタ」
シェグムントの妻であり、美しい黄金色の髪を持つ小柄な女性。
風貌こそミスカと瓜二つであるが、ほんの少しだけ大人びた顔立ちをしていたり、
ミスカとは異なり髪がウェーブがかっていたりと、差異は多い。
今はシェグムントの子を身ごもっており、あまり診療所から出てこない。

「レヴィ・ルビィ・ルイズ」
エリッタに隠れ住む腕利きの呪術師。根暗な性格ゆえに誰にも認められず、常に他人を羨んでいる。
未来では越境者らによって討伐され、ジョシュアによってエネルギーへと変換され死亡した。

「ユピ=セセット」
森のワームとは異なる出自を持つ、砂漠のワームの生き残りの少年。
シェグムントの旧友であり、若年だがほんの少しだけ人語が分かるらしい。
優生主義者によって砂漠の里が滅びた事で、旧友の匂いを頼りにエリッタまで逃げ延びてきた。

181ジョシュア:2019/04/14(日) 22:02:52 ID:???
過去のエリュシオンにて……

ここはエリュシオン西方の大陸エスタ。ヘルゲン地方にある草深い森の中には、泉の渓のエリッタというしゅうらくが密かに存在していた。
ニュクスの引き起こした時空間越境に巻き込まれ、四次元立方体という片道切符の旅路を通り、越境者らはこの地に訪れていた。

「スー……スー……」

ミスカやエルミスなどの、仲間の越境者が寝静まった夜。ジョシュアは一人で少し離れた小屋のソファで睡眠をとっている。
ニュクスの一件以来その身に宿すベルゼブブの危険性を案じたようで、ジョシュアはよくこうした行動に彼は出るようになった。
前はアキレスらと川の字で寝る事もままあったが、最近ではかつてのように仲間と肩を寄せて眠るような事は無くなっており。
少々肌寒いながらも一人は居心地が良い。越境先から持ってきたプレーヤーで静かな音楽を掛けながら、一人うとうとと仮眠のような状態で夢と現を行き来している。

「…………ん」

無論一人という事は、人目を忍ばなくてはならない会話などもできるということだ。
暴走したニュクスの事や、ジョシュアらグリードの行く末の事について。
今ならば、きっと根掘り葉掘り問いただす事だってできるだろう。

182イムカ・グリムナー【最善への希求:2019/04/14(日) 22:11:45 ID:???
>>181

「………」

 いつの間にいたのかわからないが、月夜に相対するかのように腕を組んで立っているのは
 イムカ・グリムナー。銀河帝国上級政治将校にして帝国の密使。あるいはISAC外部軍事顧問。

【相も変わらず世界に対峙しているような不遜なポーズであり、】

「イヤーッ!!」

 微睡むような仮眠中のジョシュアの脳天にげんこつをくらわす。
 まずは起きろ!話はそれからだ!!

183ジョシュア:2019/04/14(日) 22:19:44 ID:???
「グワーーーーッ!!」

休息の最中、最も不用意なその有様に何らかの悪戯が加わるのはジョシュアも織り込み済み。悪戯好きな越境者達に囲まれていてはそれも当然だ。
しかし純然たる暴力をその頭頂部に受ければ、悲鳴を上げてソファより飛び起きるだろう。
人間のままであれば頭蓋の接合部に亀裂が走り、致命傷は免れぬところであった。アブナイ。

「お、おはようございます……コミッサー」

いつもこういう時のジョシュアは机の上にピカピカに手入れされた銃が並んでいるところだが、此度ばかりは少々事情が異なる。
越境時にジョシュアは入院中ゆえ、丸腰のままで越境を迎えてしまったのだ。そのため衣服も中世らしく、武器も弓矢とナイフに留まっている。
だからこそ代わりと言ってはなんだが、流石に手持ち無沙汰だったのか。机の上には熊をかたどった掘りかけの木材が置いてある。

184ジョシュア:2019/04/14(日) 22:20:34 ID:???
//安価忘れ>>182

185 ◆T/233Moei6:2019/04/14(日) 22:26:37 ID:???
>>183

「ああ、おはようだな」

 まったく悪びれもせずに(政治将校辞書にんな単語ない)ソファに座るイムカ。
 ジロリとジョシュアを一度にらむと、顔ををそらして天井を仰ぐ。

「何か言いたいことは?というか吐き出すことがあれば出せ」

 と、唐突に言ったものだ。前後の言葉があからさまに足りないが察しろということらしい。

「貴様は事態が深刻化すると内向して自滅傾向になる節があるからな。
 ――貴様の調整をしつつ私も状況を整理したい。憶測でも心境でもいいから何か言ってみろ」

 実際、突然げんこつかましてコレである。
 ぞんざいなのか気に留めているのか単に傍若無人なのか。である。

186ジョシュア ◆4J0Z/LKX/o:2019/04/14(日) 22:35:54 ID:???
>>185
「え、今日も……お綺麗ですね」

ズキズキと痛む頭頂部をさすりながら、これは寝起きドッキリなどではなく略式拷問なのだという事実に気付くジョシュア。
とぼけてシノビエクスキューションを喰らうよりも先にイムカの求める情報を吐き出さなくてはならない。
とりあえず寝起きの頭を精一杯回転させ、まず最初に思った事を口から吐き出そうとする。ああ、月明かりに照らされる金糸が綺麗だ。

……どうやら、これは違うようだ。

「……戸棚にあったクランペットは俺が食いました」

「……ニュクス、グリードの事……」

イムカが一体何を求めているのか、あれやこれやと話題を並べ立て、上目でイムカの反応を伺っている。
どうやら数打って彼女が興味ありそうな事について推測した後、洗いざらい話すつもりのようだ。

187イムカ・グリムナー【最善への希求:2019/04/14(日) 22:46:32 ID:???
>>186

「世辞はいらん。相変わらず典雅さの欠片もない」

 厳しいダメ出しである。帝国詩文でも暗記させようかと思ったが、
 全部が全部、神なりし皇帝陛下を称える美句麗句のみなので問題外だと即棄却した。

「携行食を食うのは問題あるまい。兵士は食わねばなんとやらだ」

 なお、味に一切拘りが無い御仁が言うのだから、
 まさに食事=栄養摂取である。ジョシュアの矯正の試みという涙ぐましい努力が期待される。

「ニュクスか。…ジョシュア、私は何手遅れた?」

 と、唐突にそんな事を言ったものだ。
 そも、ISACを強化したのは銀河帝国の密使としての聖務の他に、
 私事としてHEXAとの直接交渉権(武力含む)を得る布石の一環でもあった。

【が、事態はイムカの想定よりずっと早く起こってしまった。が、それはいい。
 万事計画通りにすべて進むなど妄想の類であろうし、それをいちいち嘆くほど女々しくもない】

188ジョシュア ◆4J0Z/LKX/o:2019/04/14(日) 23:00:09 ID:???
>>187
「ニュクスについては、俺でもまだ何が起こったのか……完全には把握できていません」
「ただ……」

ニュクスの能力による越境は偶発的な事故だということは分かる。そこは間違いないとジョシュアは確信していた。
HEXAによって意図的に引き起こされたものであれば、越境者達はこうも無事ではいられなかっただろう。
それに、HEXA司令官オメガによって、ニュクスには定期的に「おやつ」が与えられていた際、HEXA本社では度々不可解な事象が巻き起こっていた。
今回の件もそれによって引き起こされたのではないかとジョシュアは予測していたらしい。

「HEXAというより、司令の個人的な思惑が噛んでるのは間違いないでしょう」

ジョシュアはHEXAの構成員であったが、ニュクスを用いた実験の内容については詳しく知らされてはいない。
社外秘は勿論のこと、社内ですらオメガの目論見を知っているものは居ない。今の彼女は完全に暴走機関車のような手のつけられない女だ。
だからこそ、ニュクスの次元に越境者が不在であること。この大きな穴は不安要素でもある。オメガの異常な行動を制するものが居ないからだ。
このまま行き過ぎた実験を続ければ、ニュクスはグリードの再来……ともなりうる。最悪の場合にはだが。

189イムカ・グリムナー【最善への希求:2019/04/14(日) 23:11:06 ID:???
>>188

「〝おやつ〟か。概ね実験だろうな。何を〝取り込ませて〟いたのやら」

 グリードの性質を知悉していれば、それくらいの憶測は容易だ。
 そして、何を取り込ませていたかはおそらく本筋ではない。実際起こったことが問題だ。

「まあいい。事態は進んだ。ニュクスが越境の穴をこじ開ける真似をした。
 ならば、その司令とやらを無力化しつつ、ニュクスの所有/制御権を奪取するが本筋かな」

 そうなると、ジョシュアはどちらの味方だ?という話になるが、今はいい。

「貴様の感触では司令の個人的な〜だな。つまりHEXA全体の思惑ではない。
 あるいはこの事象そのものも、司令とやらの思惑ではなく暴走事故の類・・・と見るべきか」

 HEXA自体は極端に大きい組織という印象はない。
 少数精鋭、そして我が強いエージェントばかりで忠誠心という面は非常に怪しい。

「内部に居るはずの君もご覧の有様だしな。派閥抗争に持ち込めれば早いし楽だったのだが…うーむ」

 しかして、我が強すぎてわかりやすい権力に興味薄なのばかりが有力者の場合にはそれが出来ない。
 その余地はあるかとも言外に聞いている。

190ジョシュア ◆4J0Z/LKX/o:2019/04/14(日) 23:22:32 ID:???
>>189
「HEXAは仲間意識が希薄な反面、怨嗟も生まれにくい環境です。内部崩壊は難しいでしょう」
「ですが……司令官のオメガは、ギャラエや他のカノッサ派閥とはあまり協力的ではなかった」

「ニュクスは個人に帰属するには余る存在です。簒奪には外的圧力……ヨブ・バロウズが使えるかと……」

HEXA内部の不和より、母体であるカノッサとの不和を用いれば、比較的容易に戦闘へと発展するだろう。
そうなれば屈強なエージェント達を制し、あるいは離反させてニュクスを奪還することも可能だ。
しかしジョシュアには懸念があった。一つはαシリーズを先頭に巻き込んでしまうこと。もう一つは……

「ですが、こっからじゃコンタクトの術もありません」
「とりあえずはISACの故郷である、29世紀への越境が先決です」

「未来に帰る術は、そこにあります……コミッサーも心当たりがあるんじゃ?」

191イムカ・グリムナー【最善への希求:2019/04/14(日) 23:34:50 ID:???
>>189

「カノッサ機関に借りをつくりすぎるのも問題なのだがな」

 ジョシュアはアラズァヘッドにこだわりすぎであると思う。が、別段指摘はしない。
 そして、越境については――

「越境についてはさして心配しておらんよ。直近の問題は君達の奮闘に期待だ」

 と、帰還についてはひとまず置いておくイムカである。そちらは成功見込みは低くないと踏んでいるからだ。
 これは将校としての思考であったし、下手すれば運命に配置された意地悪い小石に躓く可能性もあったが、

「そちらは君が…あー、君達がやってくれるのだろう?」

【と、若干、頼るという行為に思うところあったようで】

「ごほん、ゆえに私はもう少し遠くを見られるのだ。分かったな!
 最終的な行動指針はくニュクスをHEXA司令から切り離す。そして制御だ。
 制御不可能の事象兵器になるならば、他の組織が群がり始めればいよいよ収拾がつかなくなる」

 なお、イムカが想定する最悪のケースは銀河帝国の介入である。
 連中に確保されれば、ニュクスに未来はない。何よりイムカに拒否権が無い。気取られる前に事態を収拾せねば。

「私の行動の前提だったのはHEXAにとってニュクスがワイルドカード。
 そう使いつぶしも出来なければ、観察にも慎重であったということだった」

 実際、本気でただの戦闘実験動物のみとして扱うならジョシュアに預けてすらおくまい。
 情緒、教育などを含めてそのカリキュラムはかなり冗長性と慎重さを伴っていたはずだ。

「HEXAの司令とやら。何を焦っている?」

192ジョシュア ◆4J0Z/LKX/o:2019/04/14(日) 23:49:25 ID:???
>>191
「まぁ、どうしてこんな状況になったのかはよくわかりませんが……今俺たちが出来る事ってのは、ニュクスの無事を祈る事だけでしょう」

とりあえずは今後の指針が決まったこともあり、ジョシュアは眠い頭に鞭打つことを一度やめてしまったようだ。
眠たげな眼をイムカに向けたまま、水瓶からコップ一杯のそれをすくって飲むと、大きな伸びと欠伸。

「コミッサーもどうです?」

いつまでも立ちっぱなしもなんだ。ジョシュアは再びソファに腰掛けると、隣をポンポンと叩いて座るように促すだろう。
ソファの半分ほどをベッドがわりにしてゴロンと横になると、ジョシュアは両手を頭の後ろで組んで何かを考え始める。
記憶の奥底、そう遠くもない過去の思い出。オメガが乱心していたあの日のことを。
そうだ、ジョシュアがオンモとの血戦に赴いたあの日。司令官オメガは確実にある焦りを抱いていた。

「そういえばオメガの野郎、何か気になる事を口走ってやがったな……」

記憶の片隅にあった違和感が、ぽろりと口をついて零れ出る。

193イムカ・グリムナー【最善への希求:2019/04/14(日) 23:56:37 ID:???
>>192

「んっ」

 腕を組んだまま改めてソファに座る。
 しかして、夜に二人きりというのに何たるムードの無さか。
 なお、実はこれで本人結構頑張っているつもりなのだから解りづらいにも程がある。

【イムカの女子力である】

 とまあ、将校らしい思考法でいろいろ考えているイムカであるため、
 HEXA司令の焦りという着眼点に至ったわけだがそれを裏付けるようなジョシュアのつぶやき。

「話せ」

 と、これまた端的である。

194ジョシュア ◆4J0Z/LKX/o:2019/04/15(月) 00:13:11 ID:???
>>193
「ふぁーぁ……えと、確かあれは……」

二人きりの男女が同じ屋根の下で過ごす。こういった行為について、度重なる越境により感覚がジョシュアの麻痺しているということもあるが。
何よりもジョシュアのイムカを想う気持ちは四六時中に不変であり、それがいつ何処であろうとも発揮されているに他ならないのだ。
夜だろうが朝だろうが、二人であろうが十人であろうがそれは変わらない。

頑張りという概念が存在するイムカに対し、ジョシュアは既になんらかの境地へと達してしまっているようだ。
それは大罪を征伐した際に人をやめ。以来僅かに残されていたヒトの因子さえもが、残滓と消え失せてしまっているからなのかもしれない。

「そうだ、ボーダーブレイカーってヤツが現れた時でした」
「奴は計画を台無しにされたと怒り狂ってました、それから台無しにされたのなら、さらに上書きし返せばいい、と……」

横たわっているジョシュアだが、尊敬するコミッサーに足を向ける訳にもいかず。
頭側をイムカの方へと回して、少し欲張ったのか先程殴られた頭頂部をイムカの膝あたりに載せようと甘えてくる。
その間にも肘掛をまたいだ脚は、ぶらぶらと心地好さそうに揺れている。

「それからです、『アリス』……という単語を、司令官は頻繁に」
「それもうわごとのように呟くようになりました」

逆さまの整った顔をイムカに見せながら、ジョシュアはそう囁いた。
傷だらけになったり、歳をとったり、若返ったり。様々な時代とカタチを経て、最近のジョシュアはイムカと初めて出会ったあの頃と同じ顔をしている。
常に眉間にしわを寄せていたあの頃に比べ、今の彼の面持ちはとても穏やかである。そしてほんの少しだけ眠そうだ。

195イムカ・グリムナー【最善への希求:2019/04/15(月) 00:24:22 ID:???
>>194

「………ムン!」

 欠伸しているジョシュアに理不尽極まるげんこつ!!何故!モンドムヨー!!

【女子力欠如こころを理解せずに、なんかの境地がスゴクシツレイだからだ!理不尽!!】

「なんか、腹立ったのであやまらん。失礼者め」

 そもそも普段から謝ったことないのではというツッコミは無用。
 とまあ、そんな阿呆な一幕はともかくとして――

【ボーダーブレイカーの単語に聞き入る。なお、膝は乗せようとしたら蹴りかます勢いだ!朴念仁へのインガオホーである】

「アリス?童話じゃああるまいし」

 仕舞いにジャバウォッグでも拵える気か?と考える。
 焦りか。そんなものに巻き込まれてはたまったものではなかろう。

【そもカリキュラムからして妙なのだ】

「何で生死の概念を切り離していたのだろうな。アホらしい」

 集中力が途切れつつあるジョシュアの前だ。ほとんど独り言に近かったが、

「我々とニュクスの出会いの時点で既に〝選ばせて〟いるのだぞ?本気で隔離しているつもりだったのか」

 そのように呟きながら、嘆息をつくのだった。

196ジョシュア ◆4J0Z/LKX/o:2019/04/15(月) 00:41:27 ID:???
>>194
「おぼふ」
「痛いですよ……」

眠たさからかリアクションに元気もなく、スキンシップを拒否されたジョシュアは心なしか……いや、とても悲しそうである。
こういった奔放な性格も軍人と化す以前のジョシュアが反映されているのか、それは定かではない。
現時点で克明に理解できることといえば、イムカの拳骨と膝はとても痛いということだ。ジョシュアは諦めたように再び頭の後ろで腕を組む。

「まぁ、それまで慎重一辺倒だったニュクスの扱いが急変したのは、その辺りからです」
「……死の概念を排除してた理由は、俺は聞かされましたよ」

ニュクスの社会性構築は越境者たちの貢献により目覚ましい速度で行われたが、本来であればそれは10年単位で行われるような緻密な計画であった。
それを一気に飛ばし、アーティファクトの摂取と進化の過程へと進むには、ボーダーブレイカーの登場が相応の障害であったことに他ならない。
今回の事故を引き起こしたのも、ニュクスに対するアーティファクトの過剰な摂取が一役買っているのかもしれない。
新しい力の扱いを慣らし、

「人類はグリードに銃弾を浴びせ続けた。だからグリードは凶暴かつ攻撃的に人類への報復を続けた……と」

「ニュクスは好奇心旺盛で、さらに知識を求める欲求も凄まじい……その上、なんでもすぐモノにしちまう」
「先に社会性を与えた上で、死や暴力を好意的なものと騙ってニュクスに教えたら……?」

「あいつは躊躇い無く、ヒトを殺せるようになるでしょう」

越境者とオメガとの認識の違いとして、HEXAは少女を保護したのではなく、生体兵器を鹵獲したに過ぎないのだ。
だからジョシュアやドク、それにイムカがどれだけ彼女に愛情を注ぎ、教育を施しても。敢えて教えることを避けられてきた未知の概念である死については、オメガが後から自由に脚色することができるのだ。
アリス……かつて世界を破壊した至高の存在。最強にして最上の能力者。ニュクスと彼女の関連性は、未だはっきりとは見えない。

197イムカ・グリムナー【最善への希求:2019/04/15(月) 00:57:26 ID:???
>>196

「反省しろ」

 端的である。そして実はちょっと拗ねている。
 モノスゲー解りづらいのも相変わらずでイムカに多分に問題あるのだが。

【女子力!】

「短絡的だな。私のようなネグレクトはともかく周囲はそれなり以上にあの子に情を注いでいた。
 感情というのは机上の空論で制御できるものではない」

 イムカにとってニュクスはあくまで少女だ。生体兵器扱いは他所でやれ!だ。
 VR越しが多かったが自分で考えること。判断力をイムカは様々な場面でそれとなく教え続けたつもりだ。
 HEXAがあの子を戦闘ロボットに仕立てる気では?などと、それこそ最初から念頭してしたことだ。

【好奇心旺盛で知識欲もある。が、イムカが教育の一端に関われたなら一石を投じるのは判断力と思考法だ】

「ジョシュア。もう少しあの子を信用しろ。微力ながらそうならぬようにしてきたつもりだ」

 しかし、である。イムカの盲点もここにあった。何かを壊せる=何かの壊されることを恐れるという概念がイムカは希薄だ。
 仮に仲間と殺しあっても、〝殺しあった程度で友誼を損うわけがない〟という思考法の持ち主。
 イムカはイムカゆえ、別方向/別視点から見たリスクにたどり着けないのだ。盲点とはよくいったものだ。

198ジョシュア ◆4J0Z/LKX/o:2019/04/15(月) 01:10:06 ID:???
>>197
「……俺に足りねェのは、誰かを信頼することですね」

ジョシュアは自分以外に期待しないし、信じない人間だった。任務の際に最も重要となるのは正確性(プレジション)だ。自分の求める基準の仕事を最も正確にこなせるんkは、自分自身のみと考えていた。
故に死地へ赴くたびニアへ過干渉し、イムカを手放すまいと必死に足掻き、彼女らを守り続けようとしていた。
しかしそれが間違いであったと気づいてからは、彼の悪癖も少しはマシになったものだが、まだまだ根本的な解決には至っていないようだ。

「そうだ、コミッサー……帰ったら……久し振りに酒でも飲みに行きましょう」
「いい店……知ってるんです、俺好みの……」

ジョシュアはニュクスに会いたいと感じるとともに、2033年のボストンがたまらなく恋しく感じた。
たった数日離れただけなのに、もう何年もあの街の土を踏んでいないかのような寂しさに晒される。
そのせいかジョシュアらしくもない、妙に感傷的な言葉で一方を取り付け、

「スー……スー……スー……」

そのまま寝入ってしまった。相当疲れが溜まっていたのか、今度は鉄拳程度では起きそうにもない。
この状態のまま日が昇るまで爆睡し続けるだろうし、鬱憤を晴らすなら今のうちである。

//それではこの辺で!

199イムカ・グリムナー【最善への希求:2019/04/15(月) 01:16:46 ID:???
>>198

(………)

 散々アレでさらに眠りこけやがってイライラする。
 何か解消法はないものか?と(デースデスデスデス)とどっかのガスマスクを連想。

【なお、一個人の典雅の無さににこうもイライラするのは実はイムカにはかなり珍しい】

≪000111110101≫

 そして忠実なるサーボスカルが油性ペンを持ってくる。忠実!!

「…私がそんな子供じみた真似を?うーむ」

 とりあえずホッペに〝朴念仁〟と達筆で描くイムカであった。

//乙!

200 ◆4J0Z/LKX/o:2019/05/04(土) 21:21:34 ID:???
【15年前 神話世界エリュシオン】

「いや、クランペットはパンケーキじゃねェ。あんなもんを食うくらいなら俺ァ……」
「……待て、誰か来たな……俺が出る」

「いえ、ジョシュアさんは下がって。私が出ます」

エリッタの昼下がり、シェグムントの診療所は常とは打って変わっていやに騒がしい。
騒音の原因は先程軽食として食卓に出てきたモノの名前について、なにやら言い争っているエルミスとジョシュアである。
パンケーキか、クランペットか。しょうもない争いは徐々にヒートアップし、外野も交わって混沌の様相を呈していた。

その最中に診療所のドアが叩かれると、ノイズ・コンプレイントと勘違いしたジョシュアが肩をいからせながらドアへと向かう。
そんな彼を制止しながら、最終的に対応のために玄関へと出たのはエリュシオン出身、花の魔女であるミスカであった。

「はーい……!」

「……お前達が匿っている龍鬼(ワーム)」
「……渡して貰おう」

急いで扉を開けて応対するミスカの前に現れたのは、黒いローブを纏った怪しげな男。
顔を隠したまま、腰に提げた剣を見せつけ、静かにそう言い放ったのだ。

「……あの、みなさん」

凍りついた表情のミスカの声の方へと振り返れば、診療所の中へと踏み込まんとしている男の姿が見えるだろう。
その姿はまさに、越境者らが初めてここに訪れた際、追っていた(ことにしていた)逃亡騎士と同じものである。

201BB ◆AaNrqSY5ys:2019/05/04(土) 21:31:32 ID:???
>>200
「何やら剣呑な雰囲気ですね。サー、診療所ですよ此処は」

たまたま怪我の治療で立ち寄ったらしい
無難な服装の美丈夫然とした金髪碧眼の青年が
事情もよく分からぬままに立ち塞がる。

202イムカ・グリムナー【最善への希求:2019/05/04(土) 21:33:18 ID:???
>>200

「腹に入って栄養になればどうでもよかろう」

 なんという馬鹿馬鹿しい内容だと一蹴するのはイムカ・グリムナー。
 味に意はないと言わんばかりに、まったく以って呆れるばかりである。

「エネルギーグリスを食え。栄養価もあるし味もないから下らん争いとも無縁だ」

 味蕾が退化するという多少のリスクはあるが些細なことである。

(引き取りにでも来たか?まあ、勝手にすればいい。この世界の難儀だ)

 現在の騒動に関してはイムカは極力干渉しない方針であった。
 正直なところ、異種族(ゼノ)の命運に責任を持てる状況ではないと思っている。

「過干渉は筋が通らん」

 龍鬼に肩入れする理由もまたない。
 もちろんミスカの行動を制約する気もないが。

203ソーマタージ ◆P2bEA4mHeU:2019/05/04(土) 21:35:34 ID:???
>>200
「パンケーキとホットケーキの違いって何?」
食後のお茶を啜りながら、割とマジでキョトンとした間抜け面でおじさん臭い疑問を呈するソーマタージ。
首筋まで伸びた白髪が、竦められた肩に揺れた。今日も今日とて平和でくだらない日常。魔法世界の。
「悲しみの歌は忘れておしまい。ヘイ・ノニー・ノニー」

「ついでに牛乳も貰ってきて。成分調整していてもいーよ、俺低脂肪乳好き」
ヒラヒラと、気怠げにミスカに手を振って見送り、常に持ち歩いている手帳に何事かを書く作業に入る。彼の日課だ。
この世界にも大分と慣れてきたが、サラサラと綴るペンが止まる。理由は鬱陶しい呼びかけ。


「何だよ、宗教も新聞もセールスも間に合って───」
ため息と共に立ち上がり、ミスカの方へ振り返る。───長い脚を突き出して飛びかかる!
常在戦場。日常と非日常の切り替えをスイッチすら生温い速さで終え、硬いブーツの底で謎の騎士の顔面を蹴り飛ばそうとしている!

「───ダメだゼオッさん?ここがアメリカなら、そんな物見せた時点でお陀仏だ。
 どこのどいつかは知らねーが、人様に剣向ける時点で真っ当な人種じゃァあるめぇ。“歓迎”してやるよ!」

204イムカ・グリムナー【最善への希求:2019/05/04(土) 21:39:29 ID:???
>>203

「パンケーキ」

 カ〇リーメイトをテーブルに置く。

「ホットケーキ」

 温めたカ〇リーメイトをテーブルに置く。

【これでよかろうと腕を組んで頷く】

205BB ◆AaNrqSY5ys:2019/05/04(土) 21:43:47 ID:???
>>203>>204
「雑ぅっ!?
 こほん…いやそもそも明確に違いはないはずですよ。
 ホットケーキはパンケーキの一種でしょう確か…確か」

イムカの説明に思わず反応せざるを得ない。

206 ◆4J0Z/LKX/o:2019/05/04(土) 21:48:38 ID:???
>>202
「そんな問題じゃねェんです!」
「そんな問題ではない!」

ギャーギャー喚きあっているジョシュアとエルミスが、一斉にイムカの方を向いて吠えた。
お互いこの一件には譲れない何かがあるようで、諍いはしばらく続くであろう。

>>ALL
「あの……すみません!」
「ユピ=セセットさんは……シェグムントさんの大切なご友人なんです」

「それに、貴方が……龍鬼を殺して回っている優生主義者でないということ」
「それを証明していただくまで、ユピ=セセットさんには会わせられません」

ずかずかと踏み入ってきた男を、ソーマより、BBより。誰よりも最初に制止したのは正義感の強いミスカだ。
ユピ=セセットが龍鬼という、命を狙われる立場であるということもあるが、彼はシェグムントの友なのだ。
故にみすみす差し出す事はできないと、ミスカは凛とした表情で立ちふさがるのだ。

「全ては、世界の均衡のため……」
「渡せぬというなら、力づくでも」

「!」

立ちふさがるミスカに、男が剣を抜いたその瞬間にソーマの蹴りが飛び、男は刀の側面でそれを受け止める。
ビリビリと手が痺れるような衝撃を感じながら、男は玄関先まで弾き飛ばされた。
すかさずそれを追うのはミスカ。越境者達も交戦の意思があれば、それを追うべきだろう。

「いいだろう……それでは、ユピ=セセットとやら……貴公らを斬り、貰い受ける」

すらりと剣を抜く男。所作を見る限りはかなりの手練れのようである。
しかし診療所には大勢の越境者がおり、男は一人。ゆえに戦闘に交わるかどうかは、個人の判断に任される。

【戦う、若しくは、傍観する】

207BB ◆AaNrqSY5ys:2019/05/04(土) 21:56:47 ID:???
>>206
「サー、時と場所を改めては?腕に覚えがあるようですが多勢に無勢。
 そうでなくとも此処は診療所です。剣を振るう場所ではありませんよ?」

事情は分からないが見て見ぬ振りができる雰囲気でもない。
ミスカらを追い、男へと言葉を投げる。

208イムカ・グリムナー【最善への希求:2019/05/04(土) 21:57:18 ID:???
>>206

「勝手にやるといい」

 イムカは不干渉の腹積もりだ。実際、無駄な争い以外の何物でもない。
 この世界の問題に首を突っ込む資格もない。

【異種族(ゼノ)排斥に意を唱えるなど、銀河帝国政治将校のイムカがやれば恥知らずどころの騒ぎではない】

 シェグムントに一宿一飯の恩義はあるが、他世界のメタヘイト(亜人排斥)などというドロ沼に足を突っ込む気はないのだ。

「ヘルゲン人の魔力適性がメタヘイトとどう結びついたかは興味があるかな」

 当時のエリュシオンの情勢を調べてみたくはあるイムカだった。

209ソーマタージ ◆P2bEA4mHeU:2019/05/04(土) 22:03:42 ID:???
>>204-206
「オイオイオイ 死ぬわアイツ」
珍しく吠える二人。口を丸くしてポカンとした後からかう。
しかしドン!と出されたカロリーのメイツには何とも言えない表情。助けを求めるように一度BBの方を向いた。
「これ俺もツッコミしなきゃダメかな?“お前の舌は味覚障害のクソ野郎”って」


>>206
「よく受け止めた。褒美に、初撃で死に損なった事を後悔させてやる」
蹴りを受け止め弾き飛ばされる騎士。ズダン!と着地するその顔は、鼻から下がいつの間にか現れていたフラットな形状の酸素供給機に覆い隠されていた。
決断的な敵意の下、統合しかかった人格は警鐘をけたたましく鳴らす。相手は武器を持ち、こちらは無手。件の『勇者』とやらの練習で使った大剣はあるが、取りに戻ってる暇は無し。


「おい間抜け!話聞いてたか?テメーの素性も分かんねーのに渡せる訳ねーっつってんだよ!こちらのおっそろしい大魔女さンは!
 素直に言う事聞いて、剣を納めてみてはいかがかな。この方にかかればお前なんざペッーだ。 ダメみたいだ、センセイドーゾ」
ザリ、と決断的に一歩踏み出し睨みつける。向こうにも事情があるらしいが、だからといってハイそうですかと渡す訳にはいかない。個人的な気分の問題もある。
壮絶な戦意の炎燃やす瞳を向け───ザリ、と威圧的に一歩引いてミスカに前に出るよう促した。最初に突っかかったのはそっちだと言わんばかりに。

「越境者ジョークだよ……、ちょっとは気分紛れるかなって……。 来な。お前に俺を殺害する機会を与えてやるよ」
バツが悪そうに頭をポリポリと掻けば、今度こそソーマタージはゆらりと手を前に油断なく構え、一歩前に踏み出した。
向こうがやる気ならば仕方あるまい。事情も理由も、叩きのめしてから聞き出す!
「先手は譲ってやるョ。大因果キメてやる」

210 ◆4J0Z/LKX/o:2019/05/04(土) 22:12:57 ID:???
>>207
「今は問答の時ではない、戦わぬのなら……口を挟むな」
「……時間が無いのだ」

未だ諭すような口調のBBに対して、男はその剣を収めようとはしない。
むしろ何かを恐れるように、焦燥を見せながらBBへ詰め寄るのだ。

「世界を癒すためならば、何人切ろうが私は構わん!」

剣を振ればそこに纏う紫の火炎。火炎と言えども灼熱ではなく、凍るように冷たいそれは闇の神がもたらす月の炎の加護だ。
闇の力は静寂と安寧の証。それを纏った剣を思い切り振るえば、BB目掛けて冷たい火炎の渦が飛んだ!

>>209
「えっ……あ……えいっ!」

「……それで終わりか」

ソーマの無茶振り。真に受けるのはミスカの良い点かそれとも逆か。
男に駆け寄って杖で思い切り鳩尾を殴るものの、ガインと鈍い音が響いて終わり。

「あぐぅッ……!」

続けざまに放たれた手甲の裏拳を頭に喰らい、鮮血を撒き散らして地面へと倒れる。

「貴様らの軽率な物言いには、もうウンザリだ……!」

そんなミスカを捨て置き、男は暗い炎を纏った剣を振るう。
凍るような低温のそれは、BBと同じようにソーマを襲うだろう。

211 ◆4J0Z/LKX/o:2019/05/04(土) 22:18:53 ID:???
>>208
「……コミッサー」

黒いローブの男との戦いに関しては、傍観の立場を決め込むイムカ。
ソーマとBBが当たれば、戦力として不足はない。それは正しい判断だと言えるだろう。
しかしそれは、相手があの男一人の場合にのみ適応される。

ジョシュアがイムカの肩を叩き、常ならぬ声色で彼女の名を呼ぶ。
先程の喧騒は何処へやら、ジョシュアもエルミスも黙り、異様な静けさが診療所を支配する。
エルミスに至ってはシェグムント達が隠れている部屋へ駆け込んでゆく始末だ。

「コミッサー、イムカ!シールドをッ!!」

ジョシュアがイムカを呼ぶ声がさらに大きく、強くなってゆく。
しまいには怒号ともなるそれに振り返れば、窓の外に数人のソーサラーが両手を掲げているのが見えるだろう。
彼らの頭上には大きな火球が浮かび、それはなお大きさを増して診療所へと投擲されつつある。

【成否判定:不意打ちの極大破壊魔法(火炎)】

212BB ◆AaNrqSY5ys:2019/05/04(土) 22:19:54 ID:???
>>209
「ミズ・イムカは冗談で言っていなさそうなので触れてあげない方が優しさでは?」

苦笑いしか出ない。

>>210
「その世界は誰の為の世界です?」

ギラギラと照り付け何もかもを白日のもとへ晒すが如き太陽の光。
それを体現するかのような熱く激しい炎が迫る一撃に相対し斬り飛ばす。
青年の手には盛る三尺の炎の刀身を生じる剣。

「放浪騎士ブラフォード=ブラドッレーお相手仕る」

213ソーマタージ ◆P2bEA4mHeU:2019/05/04(土) 22:24:07 ID:???
>>210
「あっ」
「て、テメー……なんてヒドイ奴だ……」
自分でけしかけといて若干、否かなりのドン引き顔。後で恨まれなければいいが。
とまあれ、向こうも本気なのは分かった。油断なく身構えつつ、瞳を動かして後方の越境者へ声を張り上げる。
「怪我人だ、回収ぐらいしてやれよ。メディコ呼んでこい。
 来いよ、男尊女卑野郎。ポリコレ棒でその小さいケツの穴拡張してやる。比喩もある」


「───ッ!」
振るわれる黒き炎。凍てつく空気。何らかの魔術や異能だろう、食らえば危険という情報以外を判断してる暇は無い。
春の夜の夢よりも朧げな残像を残し、横に飛んで回避したその片方の顔が、猛烈な低温に晒される。紙一重で避け続けるのも危険か。
舌打ちを漏らすと、振り抜いたその瞬間を狙い、顎先目掛けて振るわれる抉りこむような拳!幾ら世界が変わろうと、脳を揺さぶられれば人は倒れる事は変わらない。
───勿論、それも正確に当たれば、それも尋常の人が相手ならばの話だが。

「イル直か?……お喋りは嫌いか?気が合うな」

214イムカ・グリムナー【最善への希求:2019/05/04(土) 22:26:30 ID:???
>>211

(まあ、こうなるか)

 メタヘイトに自ずから巻き込まれる気もなかったイムカの別方面の思考。
 それは、メタヘイトをやらかす奴らは概ね〝見境がない〟

「解っている。お決まりのパターンだ」
≪0001111010101≫

 自衛ならば名誉も傷つくまいと、ノールックで窓の外に銃口を向ける。
 ノールック…否、アクセスするサーボスカルよりARを通じてイムカは視認している。

【ブラスターモード:エリミネーター/バーストショット】

 ソーサラー達の手首を狙って撃つ。
 複数人による魔力の乗算によって放つ連携魔術ならば解れてしまえば、
 最悪は自滅、そうでなくとも威力減衰は見込めるかという狙い。

【そしてリフラクターフィールドは既に起動済みだ】

215 ◆4J0Z/LKX/o:2019/05/04(土) 22:50:23 ID:???
>>212-213
「この程度では仕留められぬか……しかし、それもまた承知」
「時間がない……本気で斬るぞ」

迫り来る黒く冷たい炎。それを迎え撃つのはBBの放つ灼熱。
男の放った炎は空中で両断され、霧散して消える。

ソーマもまたそれを躱し、ミスカの仇を取ろうと反撃の体勢を取った。
しかし男は少しも尻込みせず、剣を構えたままソーマを待ち受けていた。
その様子を見る限り、男は剣の腕に絶対的な自信があるようだ。

顎めがけ放たれたソーマの鋭い拳。男はそれをギリギリまで引きつけ

"瞬間的な其の動作"

ソーマの前より消えた。
攻撃を躱すその足取りは、まるで膝から崩れ落ちるような不安定な所作でもあり。
何処か既視感のあるその技は、かのドワーフの勇者を知っているものであれば、誰でも見たことのあるもの。
膝抜きだ。最速の縮地であるそれを、この男はかなり不完全ながらも、体得している。
ソーマの背後へ回り、そこから刺突に繋げようとした矢先。診療所で起きた大爆発と共に男は大きくよろめく。

>>ALL
「グアーーーッ!」

イムカの放ったブラスターはソーサラーの一人の手首に着弾、損傷箇所周辺を綺麗に消し飛ばす。
悲鳴と共に均衡を失った極大呪文は、暴走し肥大化を繰り返しながらやがてソーサラー達も制御が不可能となり。

「「「へ、ヘルゲン万ざァーーいッッ!!」」」

優勢主義者の証左である雄叫びと共に極大呪文は暴発。大爆発を伴ってソーサラーは消え去った。
その余波はリフラクターフィールドによって減衰されたものの、診療所の殆どを爆炎によって吹き飛ばす。
幸いジョシュアらを殺す程に威力が有り余っていた訳ではないが、これがモロに直撃していたら、などと考えたくはないものだ。

「遅かったか……龍鬼(ワーム)はッ!」

パラパラと天から落ちる破片を眺め、ローブの男は舌打ちを打つ。
その振る舞いを見るに、男は龍鬼こそ狙うものの、ただ単に殺す優勢主義者とは異なる派閥に属しているようだ。

216BB ◆AaNrqSY5ys:2019/05/04(土) 22:54:38 ID:???
>>215
「…んー」

剣を虚空へと仕舞い込んで考え込む青年。

「とりあえず、安否確認が先ですか」

診療所へと踵を返す。
ミスカが意識を失っているなら抱えて行くだろう。

217ソーマタージ ◆P2bEA4mHeU:2019/05/04(土) 23:00:30 ID:???
>>215
(膝抜き───ッ!)
驚愕に見開かれる眼。空を切る拳を戻す間は無い。
背後に現れた気配、バックスタブの持つチリチリとした殺気にせめてもの抵抗と、ダブルラリアットめいた回転で裏拳を放とうとし───


「グアッ……!!」
爆風に蹌踉めく。診療所が吹き飛ぶ。中の者は?確認してる暇は無い。
重要なのは、今こうして生きているという事。まだ自分は動けるという事。ならばする事は一つ、目の前の敵の無力化のみ。
破片を眺める男の腰に向かい、放たれるのは暴走機関車めいた猛烈な勢いのタックル!ソーマタージの義体の質量も合わさったそれは、まともに受ければ車両事故にも等しい!
押し倒し、マウントを取り、制圧する。想定されるインパクトまでの数旬の間で、ニューロンはいくつものシミュレーションを繰り返した。

「殺しと火葬の手間がいっぺんに省けて良かったな、エェッ?
 貴様の目的は!貴様の所属は!答えぬなら、答えたくなるまで貴様を痛めつけてやるッ!」

218イムカ・グリムナー【最善への希求:2019/05/04(土) 23:02:28 ID:???
>>215

「全く、典雅の欠片もない連中だ」

 シールドが大幅にエネルギーを失い、バチバチと放電している中、
 イムカは随分と見晴らしがよくなった診療所(跡地)で、
 かろうじて無事だった椅子に座った。

「大尉、無事か」

 肝っ玉が据わっているというか不感症めいているというか、
 周囲の有様とは正反対にまったく抑揚のない声音で呼びかけるイムカであった。

>>216-217

「おーい、私の安否も気遣え。か弱い女が特大火球を放り投げられたんだぞ?」

 酷い目にあったと、崩壊した診療所の中、椅子に座りながら言ったもんだ。

219 ◆4J0Z/LKX/o:2019/05/04(土) 23:17:47 ID:???
>>216
「貴公、私を忘れてはいまいか」
「敵に背を向けるなど、笑止千万」

ミスカは気を失ってはいるものの、命に関わるような負傷はしていないようだ。
彼女を気にかけ剣を納めたBBに対して、懐疑的な視線を向けるローブの男。
BBが戦う意思を見せないとはいえ、未だ彼らは敵同士であることに変わりはない。
今更剣を収めることなどできぬと、男はBBの背後より冷たい炎を纏った刺突を繰り出すだろう。

>>217
「うがっ……ま、待てッ!」
「私は、ア、『眼(アイ)』の……ッ!」

が、それはソーマが繰り出したタックルによって未然に終わった。
押し倒される身体は、ローブの中に鎧を着込んでいるせいか地上では鈍く。
何度か顔面を殴打されれば、体を跳ねさせて動かなくなる。

はらりと崩れたフードの中から覗くのは、ボコボコに歪んだアーメット。
装甲の隙間から血が流れているのを見るに、打撃はキチンと中まで通っているようだ。
死にはしていないようだが、周囲は火の海。エリッタには魔法が飛び交っており、ゆったりとした尋問日和ではないことは確かだ。
ミスカは倒れ、ジョシュアは負傷。周囲には優勢主義者のソーサラーがわんさかと湧いていた。

>>218
「……はい」

ガラガラと瓦礫を掻き分けてジョシュアが這い出てくる。
背中には大きな梁の破片が刺さっており、唸り声と共にそれを抜く。

「エルミスは地下です。異能で……シェグムント達を保護したよォで」

隣の部屋のあった場所にある瓦礫を除ければ、そこには異能でぽっかりと空いた穴が見える。
その穴を通って地下の貯蔵庫までストンと落ち、シェグムントとその妻は爆風から逃れたらしい。
しかしソーサリーがいる限りは、いずれユピ=セセットを殺しに地下室まで押し寄せてくることだろう。
周囲の安全を確保するまで、診療所には誰も近寄らせない方が良い。

220BB&メアリー ◆AaNrqSY5ys:2019/05/04(土) 23:21:05 ID:???
>>218
BB「一応メアリーを置いてはいたのですが…杞憂だったようで」
メアリー「で、結局コレはパンケーキ?ホットケーキ?」

黄色い襤褸を纏った青長髪の色白裸足少女、
いつの間にやら件のブツをハチミツたっぷりで堪能中。

メアリー「将校さんが一人で全部出来ちゃうから出番はなかったわ!」

>>219
BB「敵にすらなれてませんよ、サー。正直野犬を相手にしている気分です」

吐き捨てるように言うとイムカらに合流しようとミスカを抱え駆ける。
群がるソーサラー?取りあえず守るべきものをひとまとめにしないと動きにくい!

221ソーマタージ ◆P2bEA4mHeU:2019/05/04(土) 23:32:19 ID:???
>>218-219
「ヨガってみせろよ。演技でも盛り上げられるだろ!?」
ガツン、ガツンと拳による無慈悲な殴打。こちらも痛いが、相手ももっと痛いのならばやめるつもりは無い!
数度の後、息を吐いて額を拭う仕草を見せれば、自身のコートの裾を肩口から引き千切り、後ろ手に騎士をふん縛って拘束しようとする。
「『眼(アイ)』…?確か、あの女教皇の……」

「か弱い女は次元大介みたいな早撃ちでの妨害なんてしねーの!」
意識を削がれ、声を張り上げイムカには猛抗議!自分の行動に責任を取れと言いたげに中指を立てる!
苛立たしげに舌打ちを漏らすと、周囲をグルリと見渡し、騎士の持っていた剣を掴もうと手を伸ばす。拒まれるのなら、飛び散った破片の一つを手に取るが。
「話の続きは、あのカスどもがこの世からいなくなってからだ。いざ鎌倉」
「暇で動けるヤツは、この猪武者を押さえとけ!聞きたい事が山程ある。俺は、遊んでくる」


「BGMはCelldwellerのThe Best It's Gonna Getでお願い。劣等差別主義者を殺す時にはピッタリの曲だ。
 踊ろうぜ、クソ優生学者サマよ。踊るってのは───」
虚空に向かってカメラ目線。その片手には剣か、大きめの破片か、そのどちらか。
手に持った得物の調子を確かめるように一度軽く放り上げて弄べば、しっかりと構えて色付きの風となり走り出す!血みどろの舞台へ、悍まし色の戦場へ!
「───殺し合うって事だ」

222イムカ・グリムナー【最善への希求:2019/05/04(土) 23:36:47 ID:???
>>219

「だろうな。随分と機敏な動きだったぞ」

 ジョシュアの負傷については特に言うことなし。
 その程度でくたばるようなら遥か昔に戦死しているだろう。

「大尉、あからさまな敵性存在が私を狙った。速やかに反撃・排除しろ」

 椅子に座ったままそれを告げるという傲慢ムーヴ。
 しかし、それで何もせぬという訳でもない。

【予備の粒子短銃を一丁。セミショットモードで固定しジョシュアに放り投げる】

「射撃のワザマエを見せてみろ」

 敵は多くともミサイルなど、補給のアテの無い武装は使えない。極力省エネでいかねば。
 なお思いっきり負傷しているんですけど?などという言い訳は聞きません。はい。

【改めて席を立ち、粒子短銃とトンファーバトンを手に相手のほうに向けて歩いていく】

>>220

「出来れば家屋が吹っ飛ばされる前にどうにかしてもらいたかったがな」

 嘆息を付くイムカ。見晴らしが随分とよくなってしまったものだ。

「まあいい。出番が出来たら動いてくれってところだ」

>>221

「まったく、いまいち恰好のつかない奴め」

 なお、自分が原因などとは露ほどにも思っておりません。

223 ◆4J0Z/LKX/o:2019/05/04(土) 23:51:52 ID:???
>>220
「何だ?まだ敵はわんさかといるぞ」
「まさか休憩なんて言わないよな、さぁ……さっさと働いて来い」

ミスカを地下へと放り投げれば、代わりに中から飛び出してきたのはスーツの男、エルミスだ。
皮手袋をぐっと付け直し首を回して準備運動。ミスカを届けたBBの背中を叩けば、いざ先陣を切ってソーサラーの群れに飛び込んでいった。
みるみる敵勢は目減りしてゆき、ぼうっと突っ立っているだけでは戦功を上げるよりも先に戦いが終わってしまうだろう。

>>221
「……」

ブン殴られた男はすっかり伸び、ソーマが剣を奪おうとしてもさしたる抵抗は見せないだろう。
この男がかのハイプリエステスの配下であるとするなら、エリッタが地図から消えた事件というものにも、『眼』が関わっているのか。
ともあれソーマが剣を振るうたびに、2、3のソーサラーが上半身と下半身を泣き別れさせてゆくだろう。
黒炎纏い冷気を滾らせるサイボーグの足元には、瞬く間の死体の山が積み上がってゆく。

「異教徒のクソめ!」

ソーマの前にはソーサラーが4人。ソーマへと向けて氷の槍を続けざまに放ってくる。
これを潰せば、付近の脅威は掃討完了といったところだろうか。

>>222
「了解、コミッサー」

ぱし、と飛んできたそれを受け取ると、ジョシュアはセレクターを確認。
本当はもっと派手なのを撃ってみたかったが、そこまでする相手でもないことは分かっていた。
少し落胆しつつも、イムカの銃を握れただけで満足。狙いを定めて次々と引き金を引いてゆく。

「ウダラァーーーッ!!」

一方のイムカには、高密度の魔力をエンチャントしたメイスを携えた二人が立ちはだかる。
ヘルゲン人とはいえその素性は民兵に近く、軍人並みの練度はない。
今の彼女にかかれば、瞬殺も良いところだろう。

224BB&メアリー ◆AaNrqSY5ys:2019/05/04(土) 23:58:40 ID:???
>>221>>222>>223
BB「まあ流石にコレ以上の搦め手は…ないと思いたいな」
メアリー「そのまさかで休憩しちゃう?」
BB「自棄を起こして最後に自爆でもされた厄介だからなあ…警戒といこう」

張り切って功績を上げる気はない。
やる気満々の面子も揃っている事だし、
ソーマタージの要請に従い気絶した男でもふんじばっておきましょう。

225イムカ・グリムナー【最善への希求:2019/05/05(日) 00:04:52 ID:???
>>223

「イヤーッ!!」

 トンファーバトンを振り抜きでエンチャントメイスを捌くイムカ。
 頑丈な黒檀製であり、さらに先端部はセラマイト鋼。強度は折り紙付きだ。

【可能ならば直後に回し蹴りを放ち、鋼鉄で補強されたブーツによる頭蓋骨破砕を狙う】

「イヤーッ!!」

 そしてそのまま継続して行動可能であれば、回転の勢いのままにローキック。
 それで姿勢を崩せれば、トンファーバトンにより、相手の足をすくい一瞬の行動不能状態を見出す。

【ここまで成功したならば、後は無防備となった頭部にめがけ粒子短銃を2発叩き込んで終わりとなろう】

226ソーマタージ ◆P2bEA4mHeU:2019/05/05(日) 00:05:38 ID:???
>>223
「『眼』とやら……。いつから活動している?それとも、奴等も時間を越えるとでも?」
斬、斬、斬。剣を振るい、拳で止めて刺し、蹴り倒して斬り、死の山を築くソーマタージ。
振るうだけで冷気が出るのは有難かった。魔術回路はすでに焼け尽き、マジックアイテムにありがちな魔力の消費などしたくても出来ないのだから。
冷気は無慈悲な死の女王となり、ソーサラーの命を収穫していく。考えてる余裕はまだある。


「神は慈悲深い。俺は違う」
嘲る笑いと共に剣をクルクルと手の中で回し、逆手に持つソーマタージ。躊躇う事無く、その切っ先を己が腹部に迎え入れた!
これは切腹か?否、噴き出る朱に染まって引き抜かれる刃を見よ。手の中で迸り、剣を覆う紫電を見よ。無双惨殺秘術の儀式也。
忌々しく赫い死の刃。体内を無尽に駆け抜ける金属細胞『Fahkeet』、電解人工血液『BAZARA』。二つの組み合わせにより完成されし血の剣は、刃渡りを優に二倍以上に伸ばし、ここに顕現せり。

「───セェェエエアアアアッッッ!!!」
壮絶な叫びと共に、横薙ぎに剣を振るう!遠心力で半月状の血の刃が放たれ飛ぶ!
水圧カッターじみた切断力、血の質量、サイボーグの怪力による勢いを以って、氷の槍ごと奥の四人を一纏めに惨殺せしめんと、唸りを上げて死は地面と平行に飛んでいく!

「秘術(thaumaturgy)なら俺も持ってんだよッ!」

227 ◆4J0Z/LKX/o:2019/05/05(日) 00:31:05 ID:???
>>ALL
「「アッバァァーーーーーッ!!」」

イムカの回し蹴りはメイスによる防御越しに側頭部へと叩き込まれ、アッサリと一人の頭蓋を破砕!
さらにもう一人に対しても慣性を利用して放たれた足払いに続き、トドメのダブルタップによって完全なる死を贈る。
ソーマに至っては剣が発する魔力の炎が、飛ぶ斬撃となって四人をまとめてぶった斬る。
ただ両断するだけでは飽き足らず、彼の残虐性を示すかの如くソーサラー達は瞬時に凍結し、膾の如く切り刻まれ破砕されるだろう。
双方とも、これ以上ないエクスキュート・ムーブだ。

「うおっ!誰か核でも起爆しやがったのか……」

かくしてエリッタに攻め入った優勢主義者のソーサラーは全滅した。
しかしそれと同時、少し離れた森の中で巨大な爆発が巻き起こり、広大な森全体の木々が揺れる。
空は昼間と見まごうほどに明るく、目がくらむようなキノコ雲が遠くに見えた。
あれはかつて霊薬を求めて足を踏み入れた、龍鬼の里の方角だ。

「ジョシュア……ほとぼりが冷めるまで、一度ここを離れた方がいい」
「う……一体……一体何が……」

爆音に驚いたジョシュアの方に手を置くエルミスと、それを聞いて目を覚ますミスカ。
戦況は混迷を極めている。前々からヘルゲンの各地に住まう龍鬼のねぐらには、こうして断続的に攻撃が行われているらしいが。

ついにエリッタの里が標的となった今、越境者はシェグムントを連れてここから逃げるべきだとエルミスは提案する。
なぜ今になってエリッタが狙われ、なぜユピ=セセットを求めて『眼』がやって来たのか。
それを知る由も、男が倒れた今となっては知ることも叶わないと思われたが。

「間に合わなかったか……」
「君らが、こいつらを倒してくれたの? ……ついでに、うちも下っ端も」

ザク、と焼けた土を踏みしめ、診療所の跡地へとやってきた黒いローブの集団。
それを従えて越境者達へ声を掛けたのは、見慣れた黒剣を提げ、同じく黒いローブを纏った黒髪の女であった。
左目に刻んだホルスの眼のタトゥーは、女教皇の証だ。

228BB ◆AaNrqSY5ys:2019/05/05(日) 00:35:15 ID:???
>>227
「…ええと、はい」

その下っ端をグルグル簀巻きにしている最中の青年。
誤魔化しがきかないので素直に答える!

「刃傷沙汰は控えるように言ってください。
 それがなければ診療所が吹っ飛ぶこともなかった」

さり気無く責任をブン投げる!


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