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花田煌「大丈夫ですか?おっぱい揉みますか?」

424名前なんか必要ねぇんだよ!:2018/06/24(日) 00:30:11 ID:bbNHbpPg

その日は、雨がよく降る一日だった

会社の飲み会に延々と付き合わされて、気がつけば終電の時間は過ぎてしまった。

そのことに気がついたのは、ホームで帰りの電車を待っていた時。何も書かれていない電光掲示板を見た時だ

その時は思わず呆然としてしまって、暫くの間ホームの屋根を叩く大雨の音に包まれていたものだ

ーーあの子に久し振りに会ったのは、その少し後のこと

ちょうど、同居している姫子に終電を逃した事を連絡しようとした時だったか。反対側のホームからバタバタと駆けていく音がして、なんとなくその方向を向いた

足音の正体が誰か分かる前は、同情したものだ。ご愁傷様と、残念ながら終電は5分前に行ってしまったと、諦めてタクシーを使うなり漫画喫茶やラブホで一人寂しく夜を過ごせと。

私がぼんやりと見つめていると、向こうも視線に気がついたようで、顔を上げて視線を交差させてきた

そうして私はあの子にーー麻雀部の、花田と付き合っていた、生意気な一年坊にーー再会したのだ。


〜if X年後(X=8)〜


私があの子の姿を認めるのと、あの子が私の姿を認めたのはほぼ同時だったようだ

こちらに向かって会釈をしてきたので、私も思わず返した

そうしてあの子の姿が反対側のホームから階段に消えたかと思うと、またバタバタと駆け足で私の前にやってきた

私と同じように、社会の荒波に揉まれてきたのだろう。久々のあの子からは、先程居酒屋のトイレの鏡に映った自分と似通ったものが感じられた

その後は暫くの間、駅員に追い出されるまであの子と世間話をしていたものだ。卒業してからどうしたとか、花田とは上手くやっているかとか、他にも色々と話をしていた

また暇のある時に、茶でも飲みながら話をしよう。ーーそう言ってさっさと帰っていれば、今も忙しく、退屈な、平凡な毎日を楽しく過ごしていたことだろう。

でも、別れ際に私の口から出た言葉はそうじゃなかった。

酒に、再会の空気に、そして過去の思い出に酔っていた私の口から出たのはーー

『…なあ。お互いタクシーで帰るには、懐ん厳しかじゃ。…こん近くに、安かホテルがあるったい。…部屋代は折半して朝まで飲み明かさんか?』

知っていた。あの子の左手の薬指の輝きを

知っていた。姫子が私の帰りを待っていることを

知っていた。知っていた。あの子も私も、知っていた。

なのにあの子は無言で頷いて、私も無言であの子を傘に入れた

ーー私もあの子も、知らない振りをした。


雨は、いっそう激しく降ってきた。


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