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八幡「やはり俺たちの性行為は間違っている」
78
:
名前なんか必要ねぇんだよ!
:2016/12/12(月) 23:21:38 ID:kTMpofXI
「――私は、逃げたのよ。あなたと由比ヶ浜さんとの関係を考えることから」
訥々とした口調なのは、行為の後で疲れているからというだけではないだろう。
俺の目に映る雪ノ下雪乃は、その名の通りというわけではないが儚く消えてしまうような危うさをたたえていた。
それはあの日――小町が雪ノ下を糾弾し、結果として雪ノ下が「壊れた」時の姿を想起させた。
「こんな結果を生むような人間になるなんて……思いもしなかったわ」
そう呟く雪ノ下に、俺はそっと口付ける。
彼女は不意を突かれた様子だったが、静かに俺に応じた。
おもむろに舌を入れ、彼女はそれを俺にもし返す。
いつだったか、「保健室でやってきちまったよー」なんてのたまうクラスメイトがいて、みんなに囃し立てられていた。
いかにもなリア充(笑)がスイーツ(笑)っぽい彼女との体験を誇らしげに語るのを、内心で見下しながら聞き流していた。
なにがカッコワライだ。
なに、人のことを見下して悦に浸っていたのやら。
一番の笑い者は……この俺じゃないか。
目の前の美人も、明るく振る舞いながらも酷く悲しげな様子を隙間から覗かせる由比ヶ浜結衣も。
誰一人として不幸じゃないにせよ、幸せでもないとしか思えない。
79
:
名前なんか必要ねぇんだよ!
:2016/12/12(月) 23:32:05 ID:kTMpofXI
「……また、一人で自己欺瞞に浸っているの?」
見透かしたように言う雪ノ下の瞳に映る俺は、きっと酷く情けない顔をしていることだろう。
唇を静かに離し、彼女は俺をそっと抱き寄せた。その繊細な感触の中で、雪ノ下の温かさに甘える俺がいる。
「あなたは何に責任を感じてるの? 少なくとも、この国で『こういう関係』は望ましくないとか、私たちを幸せにできていないとか」
そんなことを考えているんでしょう、と。
どこまでも的確に、俺の心をなぞるように雪ノ下の言葉は刻み込まれる。
「それを決めるのはあなたじゃないわ。それじゃ、私や由比ヶ浜さんの気持ちはどこにあるの?」
「……」
分かっていた。
分かっていた上で、燻っている。
堂々巡りの袋小路にハマっていることには、俺も気付いていた。
この関係は望ましくないはずだ。これじゃ二人は幸せになれない。
完全に明るみに出たらどうなる? 俺はいい。
でも、周りの人間は? 例えば家族は?
何より……この二人は?
――みんなでどっかいっちゃおっか。
ついこの前、ホテルで由比ヶ浜が顔をクシャッと、どこか痛々しさを見せながら言った言葉を思い出す。
誰も触れない二人だけの国、という歌詞があるが、誰の目にも触れない三人だけの世界。
それを望んで、三人で旅に出る――
80
:
名前なんか必要ねぇんだよ!
:2016/12/12(月) 23:42:19 ID:kTMpofXI
ガラ、っと扉が開く音がした。
世界が崩壊したかと思った。目の前でさすがの雪の下も、瞠目していた。
そんな都合よく保健医がいない時間が続くわけがない。漫画じゃあるまいし。
分かっていたはずだ。それなら、もっと早く服装を直したりしておくべきだった。
「ゆ、雪ノ下。ど、どうす……」
「やっはろー」
聞き馴染みのある声と共に、カーテンが開かれた。
そこにいるのは、今まさに俺の頭の中で雪ノ下と共にあった姿だった。
「旅」の相方の一人――由比ヶ浜結衣がそこにいた。
「ゆ、由比ヶ浜さん……どうして」
「ん? ああ、さいちゃんに聞いたら、ヒッキーが保健室に行ったって聞いて。……ゆきのんも一緒だったんだね」
そう言いながら満面の笑みを形作る由比ヶ浜。
その笑顔には、何ら含むところは無さそうだった。
全てを抱擁し、温めてくれる……きっとそんな安心感を、雪ノ下も覚えていることだろう。
「……やっぱり二人とも疲れてたんだね」
「ち、ちがっ」
「違う? 二人のことだから、保健室でしようなんて計画立てないよね? きっと……どっちが先に寝てて、流れで、って感じじゃない?」
ことアホキャラで通っている由比ヶ浜だが、俺たちの関係については誰よりも察しがいい。
それはきっと由比ヶ浜が、俺や雪ノ下とは違い人の顔色を読む能力に長けているのと――
きっと、誰よりもこの関係を考えているのが由比ヶ浜結衣だからだ。
81
:
名前なんか必要ねぇんだよ!
:2016/12/13(火) 00:00:19 ID:ByBujD5Y
「もう。考えすぎだよ。あたしは二人が大好き。で、二人もきっとあたしが好き。それでいいじゃん」
カラッと日本晴れのような笑顔を見せられて、由比ヶ浜は明るく言った。
そうだ。シンプルイズベスト。きっと、それが一番いい。
おもむろに俺は立ち上がり、由比ヶ浜に抱きつく。
「ちょっ、ひ、ヒッキー!?」という声に、俺は耳元で囁くことで返事とする。
「――愛してるぞ、由比ヶ浜」
「……!」
ボンッという音がした気がする。それもすぐ近くから。ラブコメ漫画かよ。
顔を見なくても分かる。顔を真っ赤に染め上げていることは間違いないだろう。
……ホント、いつまで経っても初心なヤツだと思う。
その初心さに、間違いなく俺たちは救われている。
82
:
名前なんか必要ねぇんだよ!
:2016/12/13(火) 00:02:00 ID:ByBujD5Y
「……二人とも、いつまでそうしているつもり?」
あっ、雪ノ下を忘れてた。いや、さっきまでしてたし、由比ヶ浜だけ可哀想だと思ったわけで。
なんてことを言い訳として使おうと思った矢先、雪ノ下は背中から俺に抱きついてきた。
長い腕は俺の先にいる由比ヶ浜をも包み込む。
「私も混ぜてよ。もう、運命共同体でしょう?」
「……お前がそう歯の浮くようなことを言うのは未だに慣れないな」
「あら? そもそも、運命共同体の語源はね」
「はいはい、そういうのは後でウィキで調べとくから」
ユキペディアさんに聞いてもいいが……そろそろ時間だ。
こうして二人の温かさを感じていたかったが、教室に戻らないといけない。
学生の本分は勉強だ、なんてどの口が言えた柄か分からんが。
83
:
名前なんか必要ねぇんだよ!
:2016/12/13(火) 00:23:21 ID:ByBujD5Y
素早く、しかし的確に後処理を済ませ、俺たちは保健室を出た。
とはいえ、保健医が戻ってこなかったことはとんだ幸運だった。
長い黒髪をファサッとさせる雪ノ下と、後処理の手伝いをしてくれた由比ヶ浜を見ながらふと思う。
保健室を出ると、視線の先に葉山と保健医が談笑しているのが見えた。
「……!」
三人で一緒に踵を返し、反対方向に向かった。
示し合わせたわけでもないのに、上手く合ったものだ。さすが運命共同体。さすうん。
出来る限り静かに、二人の視界から外れることに成功した。
「あ、危なかったね……」
「そ、そう、ね……」
二人の感想に俺も同意だ。ただ……引っかかるものがあった。
なんかこう、喉に魚の小骨があるような感覚が。
84
:
名前なんか必要ねぇんだよ!
:2016/12/13(火) 00:24:39 ID:ByBujD5Y
「二人は、先に教室に戻ってくれ」
「え? ヒッキーも一緒に戻ろうよ」
「そうよ、比企谷くん。由比ヶ浜さんだけじゃ何かと不安だし」
「ちょっ!? ゆきのん酷くない!?」
「いいから」
有無を言わさない口調を意図的に作ると、二人は渋々と戻っていった。
しかしまあ、遠目に見ている分にもいいコンビなんだよな、あの二人……。
正反対のはずなのに。何とは言わんが。どことも言わんが。
「お疲れ、比企谷」
「……来ると思ったよ」
さて、と。頭のなかで遊ぶのも一旦終了のお知らせだ。
目の前には、葉山隼人が立っていた。悲しそうな表情で。
「で、だ。まず、言っとくわ。……サンキュな」
「……君のためじゃないけど、な」
やれやれ。男のツンデレとか誰が得するんだよ?
大方、この完璧超人のことだ。由比ヶ浜が俺のことを聞いて慌てた様子を見て、後を追った。
由比ヶ浜が保健室に入ったのを確認したところで、保健医と遭遇でもしたのだろう。
そこで話を持ちかけて時間を稼いでくれた、と比企谷は想像します。
85
:
名前なんか必要ねぇんだよ!
:2016/12/13(火) 00:25:03 ID:ByBujD5Y
「いや。結果的に、被害は免れた。……俺は別にいい」
「そうだな。結衣と雪ノ下さんは『被害者』だろうしな」
その通り。さすが葉山、頭の回転も速い。そこに痺れる、憧れる。
「――って、言われたら満足なんだろ?」
憧れすぎて、さすがに憎らしい。
まあ、何分か前の俺だったらそれに「はい、そーです」とでも応えただろうが、今は違う。
「まあ、俺が『加害者』ってわけでもないけどな」
「……え?」
「だって、あの二人がそう言ってたし。というか、そういうのを『自己欺瞞』とか言ってきたし」
「……君は、それで納得したのか?」
葉山のことだ。きっと、分かっている。
正反対の俺たちは、だからかお互いのことがよく分かるという皮肉すぎる状況にあった。
86
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2016/12/13(火) 00:25:25 ID:ByBujD5Y
「ああ、もちろん」
だから俺は開き直るしかない。
本心で、こう思っている自分に気づきたくない。
それでもやっぱり、この関係は間違っている、と。
でも、そんなことでウジウジしてる主人公(?)なんて今日日はやらない。
もう、決めた。俺は、いや俺たちは……開き直るしかない。
「――君がそう言うのは勝手だけどな」
ズイッと、葉山が顔を近づけてきた。あの、顔近いです。そういうのは雪ノ下と由比ヶ浜だけでいいです。
「あの二人を不幸にしてみろ。君のことを俺は絶対に許さない」
「ああ。その場合、俺も俺を絶対に許さないだろうな」
しばし睨み合った後で。
「……それじゃ、教室行くか」
「……ああ。そうだな」
葉山の提案に、俺は乗っかった。
よく分からないが……「協力者」が出来てしまった気がする。いや、それでいいのか、おい。
二人で教室に戻った時の、由比ヶ浜のふくれっ面を忘れられない。
「あたしじゃなくて隼人くんのがいいの?」なんてわけがわからないよ。俺、そういう趣味ないし……ただし、戸塚は例外とする。
87
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2016/12/13(火) 00:26:44 ID:ByBujD5Y
もしかしたら一旦ここまでです
話は進んだようで進んでないってはっきりわかんだね
いろはすは出そうと思いますが絡む(意味深)のかは分かりません
88
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2016/12/13(火) 02:35:50 ID:D23p/cHk
続き来てるやん!(歓喜)
89
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2016/12/13(火) 10:35:55 ID:5AGEO6Qk
冨樫よりずっと良心的だってはっきり分かんだね
90
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2016/12/14(水) 04:11:42 ID:5BuFXpcE
待ってるから完結させて、どうぞ
91
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2016/12/14(水) 22:12:18 ID:vLM0Iyac
やったぁ!
92
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2018/06/18(月) 00:13:09 ID:ELcBQyW2
由比ヶ浜さんの誕生日なので
93
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2022/02/18(金) 01:26:41 ID:71EvIK4.
https://i.imgur.com/0M7Jh8JNOH
94
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2022/02/18(金) 01:27:58 ID:71EvIK4.
https://i.imgur.com/0M7Jh8JNOH.jpg
95
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2022/02/21(月) 13:12:25 ID:ZLWoPGrc
https://i.imgur.com/EABVHvw.jpg
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2022/02/21(月) 13:18:26 ID:ZLWoPGrc
https://pbs.twimg.com/media/FLjJ7fCagAADNaU.jpg
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2022/04/28(木) 15:29:23 ID:MsrUw07o
https://i.imgur.com/ZHJOEYF.jpg
https://i.imgur.com/3R19ayu.jpg
https://i.imgur.com/rMIluBG.jpg
https://i.imgur.com/yvMMHxk.jpg
https://i.imgur.com/VwPiFlc.jpg
https://i.imgur.com/eXOREVE.jpg
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2022/07/16(土) 07:10:47 ID:v25HNiuo
https://i.imgur.com/ip06bv0.jpg
https://i.imgur.com/2UmyRyP.jpg
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