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◆闇◆ダークネススレイヤー◆殺◆
1
:
闇の名無しさん
:2015/05/13(水) 06:30:54 ID:???
ダークネススレイヤー第一章「ネオヤミセカイ炎上」より「ガース・ワン・パーソン・カージング・ア・タントラム」
137
:
闇の名無しさん
:2015/06/12(金) 18:46:21 ID:H5UfcIOo
だがあなた!ごあんしんです。今なんかの縛りが解けたので、多分今日中に新エピソードオーが開始されます
138
:
闇の名無しさん
:2015/06/12(金) 18:46:52 ID:H5UfcIOo
◆◎◆
139
:
インストラクション・ゼロ
:2015/06/12(金) 18:51:22 ID:H5UfcIOo
ダークネススレイヤー第一章「ネオヤミセカイ炎上」より 「インストラクション・ゼロ」
140
:
「インストラクション・ゼロ」
:2015/06/12(金) 19:47:23 ID:H5UfcIOo
絶え間なく振り続ける重金属酸性雨が街を濡らす。淀んだ空を裂く青空も、やがては鉛一色に塗りつぶされることだろう。
「疲れが凄い」「肩凝ってしまう」「青な光対策メガネな」虚構を連ねる宣伝看板だけが、暗がりの街をケミカルに染めていく。
141
:
「インストラクション・ゼロ」
:2015/06/12(金) 19:50:22 ID:H5UfcIOo
ネオヤミセカイの中心、スゴイクライシティ。聳え立つ摩天楼の中に一際目立つヤミマカンパレスが、威圧的に空を刺す。
待ちゆく人々はかの摩天楼に恐れを抱き、そして憧れを抱きながら、深い闇に覆われたこの街の機構を繋ぐ歯車として働くのだ。
あのビルはまさしくカチグミの象徴。歯車によって生まれた血税が彼らカチグミの血肉となる。
142
:
「インストラクション・ゼロ」
:2015/06/12(金) 19:54:18 ID:H5UfcIOo
「幸福は市民の義務です。あなたがたは今日も幸せなことですね?」空を飛ぶ数隻のツェッペリンからは無機質な合成メイド音声が響く。
「アッハイ」「幸せ、幸せ」「アーイイ……遥かに良い」パブロフ・ドッグめいて音声に答えては歩みを進めるサラリマン。彼らこそが、この街の歯車なのだ。
彼らに自我は無いのか?否、ある。正しくは、あった。彼らの心は既に壊れきっているのだ。それは環境によるものでもあり、薬物による副作用でもある。
143
:
「インストラクション・ゼロ」
:2015/06/12(金) 19:58:24 ID:H5UfcIOo
ネオヤミセカイでの過酷な労働に耐えるサラリマンの半数は、滋養強壮ドリンクと言う名のドラッグによる恩恵を受けている。
エネルキ製薬が提供する栄養剤……デカビタドリンク。真実金ドリンク。サワヤカ・タブレット……それらは街の至るところで購入が可能だ。
何故違法な薬物が簡単に買えるのか?ネオサイタマのマッポーな治安が原因か?その何れでもない。このドリンクは、合法なのだ。
144
:
「インストラクション・ゼロ」
:2015/06/12(金) 20:00:38 ID:H5UfcIOo
一本飲む程度では効果はない。二本飲めば効き目が現れる。ドラッグとして利用するのなら、軽く5本は飲み干さなければならない。
そうしてオーバードーズを引き起こすことにより、精神をアッパー状態に……或いはダウナー状態に陥らせ、過酷な労働に耐え続ける。
身体が耐えられなくなったものの末路は推して知るべし。物理的に壊れるものや、中毒を起こし昏睡状態に陥るもの。狂ってマッポに射殺される者も少なくない。
145
:
「インストラクション・ゼロ」
:2015/06/12(金) 20:03:36 ID:H5UfcIOo
「真実金!シャキっとゲンキ!効き目が違う!」「デカビタ、デカビタ、ゲンキハツラツ」各所に設置された自動販売機から、変わらぬ宣伝文句が響く。
「ウィーピピ!」「仕事が出来て幸せです!」「タノシイヤッター!」待ちゆくサラリマンが虚ろに濁る目を見開き、本心を塗りつぶしながら会社へと向かう。
彼らの心はもはや、鉛一色に塗りつぶされたネオヤミセカイの空めいて、一生涯晴れることはないのだろう。
146
:
「インストラクション・ゼロ」
:2015/06/12(金) 20:07:36 ID:H5UfcIOo
「…………」その中にあって異色。待ちゆくサラリマンの中に紛れ、小柄な少女が歩みを進めている。
纏う衣服はボロボロに擦り切れて、乱雑に巻かれた包帯からは血が滲み、乱れた灰色の髪を整えることもせず、淡々と足を前へ。
通りすがるサラリマンは彼女のことを気にかけることもせず、デカビタをキメた者は不自然な程の笑みを浮かべ、真実金をキメた者は不気味な静けさで通り過ぎる。
147
:
「インストラクション・ゼロ」
:2015/06/12(金) 20:10:26 ID:H5UfcIOo
だがしかし、この街に棲むものは彼らのような歯車だけではない。中には歯車のサビとなるような害悪も存在するのだ。
「ッテェー!ダッテメオラー!」ナムサン!アタリヤだ。アタリヤは通行人に自らぶつかり、大げさに痛がる演技を見せた上で、慰謝料を請求する社会の害悪である。
「アッコラー!ガッキャラー!シメッゾラー!」ヤクザスラングめいて言葉を浴びせるアタリヤ!その餌食となったのは、例の少女。
148
:
「インストラクション・ゼロ」
:2015/06/12(金) 20:12:57 ID:H5UfcIOo
彼女はこのまま彼の言いなりになるというのか?言いなりになってしまえば、風俗メイドへ沈められることは想像に難くない。
「ナッカエッラー!」「…………」おお、ブッダ!胸ぐらを掴まれ軽く身を持ち上げられた少女は、今にも殴りかかられそうな程に怒声を浴びせられる!
常人ならば即座に失禁、その後有り金を全て差し出した上でドゲザも行うであろう恐怖的カツアゲだ!しかし、少女は言葉ひとつ発さない。
149
:
「インストラクション・ゼロ」
:2015/06/12(金) 20:16:14 ID:H5UfcIOo
そして、あろうことか……見よ!少女は胸ぐらをつかむ腕を掴み返し、骨の軋むような音を響かせ、腕をあらぬ方向へとねじ曲げたのだ!
「アイエッ」「………………・」アタリヤは思わず一歩後退し、目の前の少女を二度見する。身震い一つ見せぬ少女。その乱雑な灰色の髪から覗く双瞳!
「ア、ア、アイエエエエエ!?」失禁!モータルとは思えぬ瞳に射抜かれたアタリヤは、まさしく蛇に睨まれた蛙と言えるだろう!
150
:
「インストラクション・ゼロ」
:2015/06/12(金) 20:19:42 ID:H5UfcIOo
「アイエエエエエエエェェ……」数秒の間もなく逃げ出すアタリヤ。少女はそれを追いかけることもせず、再びサラリマンの群れの中を歩き出す。
回りにいたサラリマンといえば、この一連の流れすらも意に介す事なく歩き続けていた。このような出来事はチャメシ・インシデントなのだから。
やがて少女は装甲市営バスに乗り込み、行く宛もなく揺られ続ける。車内に設けられた電光UNIX時計は「03:98」と、ありえぬ表示を見せていた……。
151
:
「インストラクション・ゼロ」
:2015/06/12(金) 20:20:25 ID:H5UfcIOo
――――――――――――
152
:
「インストラクション・ゼロ」
:2015/06/12(金) 20:24:17 ID:H5UfcIOo
装甲市営バスはネオヤミセカイの交通機関、ヨクツナガル機構によって運営される路線を走る対暴徒仕様のバスである。
中心部であるスゴイクライシティを走るバスだけならばともかく、こうしたネオヤミセカイ全体を回るバスは、必然的に自衛を余儀なくされる。
何故ならば乗客を狙うテロリストやアナーキストが多く跋扈する区画を通らねばならぬからだ。もしこのバスが中央区を行くバスだったなら、即座に火炎瓶の雨にさらされる事だろう。
153
:
「インストラクション・ゼロ」
:2015/06/12(金) 20:28:25 ID:H5UfcIOo
こういったバスは格安であり安全、その分快適さとは程遠いものだ。シートは粗悪だし揺れも酷い。道路も舗装されていないので揺れは倍増だ。
「次はウルシストリートです、ゴシュジンサマ」安っぽい合成メイド音声の合図とともに、簡素なベル音が響き、いくつか設けられたボタンに赤のUNIX光が灯る。
このバスに運転手などは存在しない。全てAIによって管理され、コスト削減と安全面を理由にコンピュータが操縦を行う。実に合理的なシステムだ。
154
:
「インストラクション・ゼロ」
:2015/06/12(金) 20:32:17 ID:H5UfcIOo
「お降りの方は足元にお気をつけください、ゴシュジンサマ」圧縮空気の漏れる音が車内に響き、車内は一時、外の土煙で満たされる。
三人ほど、とても清楚とは言えぬ服装の乗客が降り、入れ替わるようにして、また同じような身なりの乗客が乗り込んできた。
その様子を一番奥の座席で眺めるのは、先ほどの少女……カミヅキ・サキ。視線は乗り込んできた客へと向けられているようだ。
155
:
「インストラクション・ゼロ」
:2015/06/12(金) 20:34:49 ID:H5UfcIOo
足、胴、胸元、腕、手のひら。滑るように目を走らせるうち、やがてサキはその乗客の違和感に気がつく。
(靴下がキレイすぎる)そう、全身みすぼらしい姿であるにもかかわらず、その男は靴下だけが異様に綺麗なのだ。
よく目を凝らせば、靴下には「ストライプビレッジ」のロゴ刺繍。ストライプビレッジといえば、ヤミセカイきっての一流ブランドである。
156
:
「インストラクション・ゼロ」
:2015/06/12(金) 20:36:39 ID:H5UfcIOo
何かがおかしい。目を伏せながらもその男へと注意を図るサキ。そしてサキの杞憂は現実のものとなった。
「動くな!俺はダークネスだ!」ナムサン!男は背負っていたバッグから威圧的なカスタムが施された拳銃を二丁取り出し天井へ発砲!
「アイエエエエ!?」「ナンデ!?ダークネスナンデ!?」即座に混乱に包まれる車内!バスジャックだ!
157
:
「インストラクション・ゼロ」
:2015/06/12(金) 20:39:28 ID:H5UfcIOo
「ハァーッ!ハァーッ!お前ら!金を出せ、それと女は俺の所に残れ!」硝煙が漂う銃口を乗客へ突きつけながら男は告げる。
ダークネス……それはモータルにとって恐怖の存在である。いわば絶対的な権力であり、恐怖を従えた警察や自衛隊といえばわかりやすいだろう。
モータルでは敵わぬ相手であり、ただ従うしかない存在。それがダークネス。乗客は悩む間もなく、一斉に財布を差し出していく。
158
:
「インストラクション・ゼロ」
:2015/06/12(金) 20:42:33 ID:H5UfcIOo
「アー、イイ……金だ!そして、暴力!」「アバーッ!?」BLAM!バスジャックの銃弾が乗客の男を貫通!ソクシ!
「暴力!そして!」「アバーッ!」再び発砲!近くの老婆が脳天を撃たれソクシ!なんたる非道!?車内は更に混沌に包まれた!
「セックスだ!オイ!女だ!俺は若い女これが好きだ!」が、乗客は労働者や高齢者がほとんどであり、彼の望むような女性は存在しない。
159
:
「インストラクション・ゼロ」
:2015/06/12(金) 20:45:22 ID:H5UfcIOo
「ブッダシット!ハズレかよ!暴力!」「アバーッ!」苛立たしい様子を見せながらバスジャックは車内を歩き出す。ついでに労働者がソクシ!
ここで読者のみなさまに彼の名を教えておこう。彼の名はアウトロー。ダークネスに連なるはぐれ組織の一員であり、ダークネス・コープスの末端の下っ端だ。
言わばダークネス・コープスの歯車にすらなれぬ存在。即ちマケグミであり、ダークネスでありながら、その将来は暗いものだ。
160
:
「インストラクション・ゼロ」
:2015/06/12(金) 20:47:57 ID:H5UfcIOo
アウトローはその生活の中で、己よりも弱い存在、つまりモータルを陵辱することで、フラストレーションを晴らしている。
(ここでは俺がキングだ。俺に逆らえる奴はいない。タマラナイ。俺が最強だ)BLAM!更に追加で男がソクシ!なんたる横暴な行いか!?
「ちょっとやめないか」「アッ?スッゾオラーッ!」「アバーッ!」BLAM!BLAM!勇気を振り絞って制止に入った男があえなくソクシ!ムゴイ!
161
:
「インストラクション・ゼロ」
:2015/06/12(金) 20:50:19 ID:H5UfcIOo
ああ、アウトローの残虐非道な行いを止められる者はいないのか!?ブッダは寝ているのだろうか!?
「オッ若い女だ!女子高生重点!」やがてその矛先は、隅で俯いていたサキへと向けられた!強引に手繰り寄せられる矮躯!
「セックスだ!女子高生と直結!激しく前後だ!」ナムサン!もはや暴走は止まらない!その欲望はサキの服へと、身体へと向けられ、そして!
162
:
「インストラクション・ゼロ」
:2015/06/12(金) 20:52:56 ID:H5UfcIOo
「……殺すべし」「え?」「ダークネス、殺すべし」CLAAAAAAAAAAASH!!見よ!アウトローの肉体が弾け飛び、ガラスを突き破って外へと投げ出された!
「グ、グワーッ!?」ロケットランチャーすらも弾き返す特殊合金の装甲すらも突き破る衝撃がアウトローを襲う!そしてアウトローは道路へ立ち直り、車内を見やる。
すると、そこには……アウトローへと歩み寄るサキ、否、ダークネススレイヤーの姿が!殺戮者のエントリーだ!
163
:
「インストラクション・ゼロ」
:2015/06/12(金) 20:56:39 ID:H5UfcIOo
夜の帳から差し込む月光がバスを照らし、穿たれた穴から差し込む光がダークネススレイヤーを包み込む。
気が付けば雨は止み、道路に残された水溜りにはそれぞれ叢雲が映えていた。アウトローは銃を突きつけ、素早く発砲!
BLAM!BLAM!だがダークネススレイヤーは無傷!「アイサツすら出来ぬか、サンシタめ!」伴って車外へと飛び出し、バスの天井へと着地しながら、ダークネススレイヤーは高々と告げたのだ!
164
:
「インストラクション・ゼロ」
:2015/06/12(金) 20:57:14 ID:H5UfcIOo
「ドーモ、ダークネススレイヤーです」
165
:
「インストラクション・ゼロ」
:2015/06/12(金) 20:57:46 ID:H5UfcIOo
(「インストラクション・ゼロ」#1おわり #2に続く)
166
:
かんな
:2015/06/13(土) 14:47:54 ID:d76j6eEA
宴の準備じゃあ!
唐突に挿しこまれるKBS いいぞ
167
:
「インストラクション・ゼロ」
:2015/06/14(日) 10:45:36 ID:H5UfcIOo
◆◎◆
168
:
「インストラクション・ゼロ」
:2015/06/14(日) 10:46:17 ID:H5UfcIOo
「インストラクション・ゼロ」 #2
169
:
「インストラクション・ゼロ」
:2015/06/14(日) 10:53:36 ID:H5UfcIOo
ドサンコ・シバレルシティ。ネオヤミセカイの最北に位置するこの街は、ネオヤミセカイ5大都市の一つに数えられる。
イゴ・マトリックスめいて整然とした区画に東西を隔てるオードリー・パーク。計画都市として完成されたこの街は、観光都市としての側面も持つ。
特に一大観光地である時計台には今もなお多くの人々が訪れており、地上147mからの夜景は100万ドルだとも例えられるほどだ。
170
:
「インストラクション・ゼロ」
:2015/06/14(日) 10:59:33 ID:H5UfcIOo
冬季はスノースポーツ稼業で栄え、夏季はカチグミ達の避暑地として栄える。まさにネオヤミセカイのオアシスとも言えるだろう。
「やはり夏のシバレルシティは遥かに良いですね、キバラギ=サン!」「流石シバレルシティです!」浮かれた会話を交わすサラリマン二人組もまた、カチグミだ。
スゴイクライシティの雑踏を離れ、静かで涼しいシバレルシティで一旦の夢を見る。それはカチグミにのみ許される究極の現実逃避といえる。
171
:
「インストラクション・ゼロ」
:2015/06/14(日) 11:03:45 ID:H5UfcIOo
多くのカチグミは自家用ジェットか、もしくはネオヤミセカイから飛ぶドサンコ航空のジェットを利用してシバレルシティにやってくる。
陸路で訪れることも出来なくはないが、空路に比べ圧倒的に危険度が高く、快適さも圧倒的に劣るということで選ぶものは少ないのだ。
とはいえマケグミはジェットなど利用できるはずもなく、必然的に陸路での移動を迫られる。そう、超硬合金装甲で覆われた市民バスでの移動を……
172
:
「インストラクション・ゼロ」
:2015/06/14(日) 11:09:27 ID:H5UfcIOo
「「アイエエエエ!?」」圧縮空気の漏れる音とともにドアが開くと同時に、二人のサラリマンの悲鳴が重なって響く。
その二人の視線の先には……ナムサン、血みどろの死体だ!バスに寄りかかっていたものが倒れ落ちたのか、死体は力なく路上に突っ伏す。
胸元には血染めのダークネス・エンブレム。読者の方々ならばこの死体に見覚えがあるはずだ。己の自尊心を満たすために横暴を続けた男の姿を。
173
:
「インストラクション・ゼロ」
:2015/06/14(日) 11:14:23 ID:H5UfcIOo
「到着しました、ドサンコ・シバレルシティですゴシュジンサマ」無機質な合成メイド音声が到着を告げ、大きな穴が開けられた車内から、数人の乗客が降車していく。
皆が一様に恐れをなし、死体には目もくれず、足早に駆け出していく。そして再び装甲バスは走り出し、数人の死体を抱えたままターミナルへと帰還するのだろう。
思わず失禁するサラリマン二人組をよそに、投げ捨てられた死体が清掃係の社員によって回収される。観光都市であるシバレルシティに、このような穢れは許されないのだ。
174
:
「インストラクション・ゼロ」
:2015/06/14(日) 11:18:28 ID:H5UfcIOo
気が付けば周りの通行人も、死体には驚き一つ見せない。理由は明白、これもまたチャメシ・インシデントなのだ。
いくら観光都市として栄えているとはいえ、ここはネオヤミセカイ。化粧で塗り固められたメイドの素顔のように、この街もまた、おぞましき闇が蔓延る。
「アイエエエ……シバレルシティいいかげんにしろよ……」力なくサラリマンが悪態をつくと同時、初夏の風が吹き付ける街を一陣の灰風が駆けて行く……。
175
:
「インストラクション・ゼロ」
:2015/06/14(日) 11:19:09 ID:H5UfcIOo
――――――――――
176
:
「インストラクション・ゼロ」
:2015/06/14(日) 11:28:11 ID:H5UfcIOo
テレビジヨン・タワーの展望台は今日も多くの人びとで賑い、規則正しく並ぶ夜景をその目に焼き付けるべく、瞳を輝かせて眼下を望む。
「パパ!すごい!すごいキレイ!」「そうだね、すごいキレイだね」綺羅びやかな服装に身を包む親子もまた、闇夜に浮かぶ地上の星の虜となっていた。
「ママにも見せたかったねー」「ママはまだ来られないからね」「どうして?」「お腹の中に赤ちゃんがいるからだよ」「そっかー」
177
:
「インストラクション・ゼロ」
:2015/06/14(日) 11:32:49 ID:H5UfcIOo
30代前半といったような風貌の父、カンラ・タダイチは、メガコーポであるトバリ・インダストリの課長。すなわちカチグミだ。
「じゃあまた来ないとね!」二つ結びのブロンドを揺らす娘、カンラ・イチゴもまた将来を約束された令嬢であり、やがては社長令嬢となるだろう。
「イチゴが来たいだけじゃないのか?」「えー、違うよー!」美しい夜景に照らされながら、親子は会話を弾ませていく。
178
:
「インストラクション・ゼロ」
:2015/06/14(日) 11:36:30 ID:H5UfcIOo
「あれ?」「どうした?」「今流れ星が見えた!」イチゴは空を指さし、地上とは真逆に雲で覆われた淀み色の空を指差す。
「曇っていて星なんて見えないじゃないか」「本当に見えたもん!」「何色だった?」「えっと、銀色」「いいかいイチゴ、銀色の星なんて無いんだよ」「本当だもん!」
頬を膨らませるイチゴと困った様子を見せるタダイチ。ガラス一枚隔てた上空で、その様子を流し見ながら、銀の流れ星が空へと昇っていった。
179
:
「インストラクション・ゼロ」
:2015/06/14(日) 11:37:26 ID:H5UfcIOo
―――――――――
180
:
「インストラクション・ゼロ」
:2015/06/14(日) 11:42:25 ID:H5UfcIOo
展望台エリアの遥か上、まさに頂上と言うべき足場に身を預けるのは、灰色の髪を靡かせる少女、カミヅキ・サキ。
(……お腹すいた)目前に広がる星々の海も、今のサキの前では一文にもならぬ風景だ。本当に100万ドルの価値があったなら、とサキは逡巡する。
(貯金残高ゼロ)(ダークネスの仕業?)(バス代払ってたらやばかった)(ゴメンナサイ)膝を抱え、虚ろな瞳を夜景へと向けながら、尽きぬ思考を巡らせていく。
181
:
「インストラクション・ゼロ」
:2015/06/14(日) 11:46:58 ID:H5UfcIOo
サキがこの街、ドサンコ・シバレルシティへやって来たのにはわけがある。キッカケは先日、いつもの様に貯金を下ろそうとした時のことだ。
『現在、ゴシュジンサマのご利用を停止させてもらっています』淡々とした合成メイド音声を耳にした時、サキは一瞬で事態を悟った。
ダークネス・コープスのハッキング。ネオヤミセカイを牛耳る彼らにとって、サキの口座を凍結させることなどベイビー・サブミッションにも等しい。
182
:
「インストラクション・ゼロ」
:2015/06/14(日) 11:52:01 ID:H5UfcIOo
コンビニストアを巡ってみても、突きつけられるのは合成メイド音声のみ。やがて口座を確認できた時、そこには0の文字が残されるのみだった。
(ウカツだった)(バカ)(イディオット)己に悪態の言葉を吐いても何も始まらない。そうしてサキはスゴイクライシティを後にし、この街へとやってきたのだ。
ドサンコ・シバレルシティはサキに馴染み深い土地であり、父方の祖父母が住まう土地である。その祖父母に相談を持ちかけようと、バスに揺られながらこの北の果てへと辿り着く。
183
:
「インストラクション・ゼロ」
:2015/06/14(日) 11:55:53 ID:H5UfcIOo
しかし、サキの考えは浅はかだった。既に祖父母宅は何者かに寄って破壊され、無残な瓦礫の山と化していたのだ。
(私のせいだ)(どうしよう)(ゴメンナサイ)幸い近所の人の話しによれば、祖父母は外出中で、破壊されたのは家屋だけだったという。
だが被害は甚大なものだろう。そんな最中で祖父母に金を無心するわけにも行かない。望みを失ったサキは、行く宛もなくこの場所へと辿り着いた。
184
:
「インストラクション・ゼロ」
:2015/06/14(日) 12:00:34 ID:H5UfcIOo
(ススキノ・ストリート)(お金を稼ぐ?)(お腹すいた)道中での襲撃もあった、恐らく数日もせぬ内に、この街にもダークネスがやってくる。
それまでに金を稼ぐのが摂理だが、この街での稼ぎといえばススキノ・ストリート……即ちメイド風俗以外にはあるまい。
もともとメイドを志していたサキにとって、メイド風俗で働くことは最大の屈辱でもある。彼女にとってメイドとは、もっと高貴で高潔な職業なのだ。
185
:
「インストラクション・ゼロ」
:2015/06/14(日) 12:07:16 ID:H5UfcIOo
しかし背に腹は変えられないか?一層煌めく夜景を他所に、サキは支柱に背中を預け、静かに力を抜いていく。
「フゥ……」ここ数日、色々なことが起こりすぎて、眠る機会も少なかった。目を瞑ってみると、すぐに多量の睡魔が押し寄せてくる。
肌寒いシバレルシティの風に吹かれながら、カミヅキ・サキは深い酩酊感の中へ、微睡みの中へと落ちていった。
186
:
「インストラクション・ゼロ」
:2015/06/14(日) 12:07:58 ID:H5UfcIOo
【DARKNESSSLAYER】
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