◆闇◆ダークネススレイヤー◆殺◆ - 1431466254

86：「ガール・ワン・パーソン・カージング・ア・タントラム」：2015/05/19(火) 18:15:56 ID:fLa.Gu52: 「ア……？」ナムサン！先行シツジの一人が状況を判断するよりも早く、クローンシツジの首が漆塗りの廊下を血で染め上げる！
いや、飛び散ったのは血ではない。クローンである彼らに血も涙もない。代わりに体内をめぐるのは、ケミカルな色を持つ発光する液体だ。
そんな蛍光色の鮮血が辺りを埋め尽くした時、既にもう一人のクローンシツジも地に伏していた。その間、僅かに0.3秒。ここでようやく、リーダーシツジが自体を飲み込む。
87：「ガール・ワン・パーソン・カージング・ア・タントラム」：2015/05/19(火) 18:19:53 ID:fLa.Gu52: 「ザ……ザッケンナコラー！」BANG！BANG！BANG！クローンシツジ特有の一糸乱れぬ射撃！射撃！
幾つかの銃弾が玄関を通りぬけ、突き当りの壁に幾つもの銃痕を生む。その数、およそ70！だがその“風”は吹き止まぬ！
「「「グワーッ！」」」ナムサン！射撃シツジが纏めてソクシ！東側を担当していたクローンシツジはあわれ、ケミカルな血の池と化す！
88：「ガール・ワン・パーソン・カージング・ア・タントラム」：2015/05/19(火) 18:21:43 ID:fLa.Gu52: 「スッゾオラーッ！」残されたリーダーシツジが果敢に突撃！だが取り出したドスダガーは虚しく空を切り、一瞬の後、腹部を一閃が貫く！
ようやく風は止み、吹き付けていた銀色が形となって現れた。至る箇所に返り血を浴びたその姿は……我々もよく知る、ダークネススレイヤー。
89：「ガール・ワン・パーソン・カージング・ア・タントラム」：2015/05/19(火) 18:24:26 ID:fLa.Gu52: 「「「「「「ザッケンナコラー！」」」」」」向こう側から届く怒声を耳に受ければ、他のクローンシツジと同じく地に付したリーダーシツジを飛び越え、向こうの廊下へと視線を移す。
このフロアは一階から続く吹き抜けを挟む形となっており、数mの間を挟み、向こう側の廊下の様子をうかがうことが可能となっている。そして、ダークネススレイヤーは……
「イヤーッ！」跳んだ！何たるダークネス跳躍力！常人ならば半ばほどにも届かず落ちるであろう間を、余裕めかせて飛び越えてみせたのだ！
90：「ガール・ワン・パーソン・カージング・ア・タントラム」：2015/05/19(火) 18:26:20 ID:fLa.Gu52: 「アッコラーッ！？」その行為に困惑したクローンシツジが銃を構える間もなく、ダート・ナイフを眉間に受け死亡！
「アッコラーッ！？」背後を駆け抜ける風に気がついたクローンシツジが銃を構える間もなく、ダート・ナイフを心臓に受け死亡！
「アッコラーッ！？」異常を察知したクローンシツジが銃を構える間もなく、ダート・ナイフを股間に受け死亡！
91：「ガール・ワン・パーソン・カージング・ア・タントラム」：2015/05/19(火) 18:28:13 ID:fLa.Gu52: 「アッコラーッ！？」銃を構えたクローンシツジが引き金を引く間もなく、ダート・ナイフを拳銃に、右腕に受け死亡！
「アッコラーッ！？」銃弾を切り落とされたクローンシツジがリロードする間もなく、ダート・ナイフを両目に受け死亡！
「「「ザッケンナコラー！」」」残されたクローンシツジが一糸乱れぬ突撃！だがすべからくダート・ナイフを全身に受け死亡！
92：「ガール・ワン・パーソン・カージング・ア・タントラム」：2015/05/19(火) 18:30:20 ID:fLa.Gu52: 「ザッケ……グワーッ！？」唯一取り残されたクローンシツジが、首元を掴み上げられ、吹き抜けへと投げ落とされる。
フロントロビーの天井ガラスを突き抜け落下するクローンシツジ！そこへ間髪入れずに風が落ち、勢いをそのままにクローンシツジを上下に両断！
こうして数分の間に、予約も取らずに現れた団体様は、丁重に現世からもお引取りを願われてしまったようだ。
93：「ガール・ワン・パーソン・カージング・ア・タントラム」：2015/05/19(火) 18:32:04 ID:fLa.Gu52: ダークネススレイヤーは舌打ちし、巻き付けていた……巻きつけられていた……包帯を拭い去る。
頬には鮮血。彼らの血液は空気に触れることで、蛍光色から深い赤色へと、その色を変色させるのだ。
両断されたクローンシツジから湧き出る血だまりを尻目に、サキは踵を返して……その時！
94：「ガール・ワン・パーソン・カージング・ア・タントラム」：2015/05/19(火) 18:34:35 ID:fLa.Gu52: 「イヤーッ！」「…！イヤーッ！」轟く雷光！光とも見劣りせぬ速さでサキへと駆けた雷光が、間一髪の所で弾き返される！
くるくると空中で身を翻し、サキからタタミ5枚分ほど離れた場所で着地してみせると、その雷光は華麗に振り返り、奥ゆかしく頭を下げた。
「ドーモ、ダークネススレイヤー＝サン。エンジェルです」「ドーモ、エンジェル＝サン。ダークネススレイヤーです」
95：「ガール・ワン・パーソン・カージング・ア・タントラム」：2015/05/19(火) 18:38:14 ID:fLa.Gu52: エンジェルと名乗った人物から雷光が掻き消え、その姿が露となる。体格は女性のものだ。見積もって、おおよそ19～22歳、といったところだろうか？
その名が示す通り、天使を思わせるような服装に、ファンタジックな軽装の鎧を纏う姿は、この時代にあって異色。
「………どうやってこの場所を？」「状況判断よ」睨みるけるようなサキの問い掛けに、くすくすとエンジェルは笑って返す。
96：「ガール・ワン・パーソン・カージング・ア・タントラム」：2015/05/19(火) 18:41:12 ID:fLa.Gu52: 一際目を引く純白の翼をいたずらに羽ばたかせると、瞳を覆う目隠しに刻まれたダークネス・コープスのエンブレムが現れた。
「付けてきたの……？」「それもあるけど、ふふ、この街は初めてじゃないし」「何？」エンジェルの返答を受けて、サキの脳裏に、あまり良くない感触が走る。
この街は初めてではない？その違和感はサキのニューロンを巡り続け、落ち着いていた思考を徐々に乱し始めていく。
97：「ガール・ワン・パーソン・カージング・ア・タントラム」：2015/05/19(火) 18:52:07 ID:fLa.Gu52: ダークネス・コープス。エンジェル。ニューアクムシティ。初めてじゃない。以前にもこの街に来たことが。いつ？どこで？
「ああ、そっか、貴女……オペレーション・ナイトメアの被害者だったんだっけ」「っ！」その言葉で、抱いていた疑問が確信へと変わっていく。
そして一瞬、ロビーに銀の風が吹き付ける！モータルなら……いや、ダークネスであっても見切るのは困難な一閃が、エンジェルへ。「イヤーッ！」
98：「ガール・ワン・パーソン・カージング・ア・タントラム」：2015/05/19(火) 18:55:30 ID:fLa.Gu52: 「ンアーッ！？」悲鳴が上へと叩き上げられ、言い終えるよりも早く、その一撃が上から下へとその身を揺さぶった。
響く轟音、蜘蛛の巣めいてヒビを広げる大理石の床、立ち込める土煙。その中心で突っ伏すのは……ナムサン、サキだ！
「ふふ、話は最後まで聞くものよ、お嬢さん」「う……」何故亜音速の動きでエンジェルを襲ったサキが叩きつけられているのか？
あなた方の中にアーチ級ダークネス動体視力を持つものがいたならば、その一部始終を観測することが可能だっただろう。
99：「ガール・ワン・パーソン・カージング・ア・タントラム」：2015/05/19(火) 18:57:40 ID:fLa.Gu52: サキの一閃が駆けるコンマ数秒前、エンジェルは光の速さで雷光となって、走りださんとしていたサキの先手を打った。
これにより駆けることは叶わず打ち上げられたサキを、それよりも早く飛び上がっていたエンジェルがかかと落としを放ち、サキを打ち付けた。
これが一秒にも満たぬ時の中で行われたのだ。なんたる刹那的決着！サキは全身に走る苦痛に顔を歪める。
100：「ガール・ワン・パーソン・カージング・ア・タントラム」：2015/05/19(火) 18:59:52 ID:fLa.Gu52: 「……イヤーッ！」「イヤーッ！」「ンアーッ！」だが飛び上がって体制を整えたサキは、再び疾走！
しかしまたも雷鳴が早い！降りしきる雨がエンジェルを鼓舞するように、天井ガラスから振り続けていた。
「イヤーッ！」「ンアーッ！」またしても打ち上げられるサキの矮躯！だが今度はかかと落としではない、高く高く、蹴り上げ続ける！
101：「ガール・ワン・パーソン・カージング・ア・タントラム」：2015/05/19(火) 19:01:04 ID:fLa.Gu52: 「イヤーッ！」「ンアーッ！」「イヤーッ！」「ンアーッ！」「イヤーッ！」「ンアーッ！」「イヤーッ！」「ンアーッ！」
「イヤーッ！」「ンアーッ！」「イヤーッ！」「ンアーッ！」「イヤーッ！」「ンアーッ！」「イヤーッ！」「ンアーッ！」
102：「ガール・ワン・パーソン・カージング・ア・タントラム」：2015/05/19(火) 19:05:41 ID:fLa.Gu52: ゴウランガ！気が付けばサキの身は高く高く、ヨイクラシの上空にあった！見下ろせば、屋上に据えられた岩風呂が映る。
「イイィィヤアアアァッ！」「ンアアーッ！」CLAAAAAASH！空気すらも歪む一撃！貯めこまれた一発が轟音とともに放たれた！
その体は抵抗することも叶わず、屋上の岩風呂へと落下！枯れ果てた岩風呂に溜め込まれた雨水に打ち付けられた身体が、巨大な水柱に包まれていく。
103：「ガール・ワン・パーソン・カージング・ア・タントラム」：2015/05/19(火) 19:16:35 ID:fLa.Gu52: 「アハハ！まだまだね、まだまだ完成には程遠い」遅れて屋上へと着地したエンジェルが、雨水の貯水湖に浮かぶサキの身を釣り上げた。
滴る水がサキの全身を濡らし、燻色の髪からは、幾つもの水滴が零れていく。咳き込みながらサキはエンジェルを睨みつけ、懐から包帯を……
「あら、そのタネはもう割れているわ、巻かせない」「ンアーッ！」万力めいた握力でサキの首が、包帯を取り出そうとした右手首が締め上げられる。
104：「ガール・ワン・パーソン・カージング・ア・タントラム」：2015/05/19(火) 19:23:14 ID:fLa.Gu52: 「ニジュージンカク・ジツの類？それとも憑依……けど、巻かせなければいいのでしょう？」次第に握力が増し、呼吸すらも困難とする！
「ン、ア……ッ」「素養はいいけど、まだまだ荒削り……マドーすらも身につけていないのね」力を込めているなどとは微塵も思わせぬ笑みでエンジェルが続ける。
「ふふ、進捗は25％……まだ未熟、もう少し熟れるのを待たなければね」その言葉を最後に、エンジェルは乱暴にサキを、屋上の外へと放り投げた。
105：「ガール・ワン・パーソン・カージング・ア・タントラム」：2015/05/19(火) 19:28:18 ID:fLa.Gu52: 遥か高くから落下する最中、サキのニューロンは水の中を漂うように停滞する。降りしきる雨粒も停滞し、落下する自分自身も、遅れて見えた。
（エンジェル）（あいつが）（ルカを）（お母さんを）（仇）（ダークネス・コープス）（オペレーション・ナイトメア）（悪夢）（進捗）その中を交錯する幾つものニューロン。
瞳を屋上へと向ければ、こちらを悠々と眺めるエンジェルの姿。やがてその羽根が羽ばたき、大空へと飛び立って、幾つもの羽根が散って行く。
106：「ガール・ワン・パーソン・カージング・ア・タントラム」：2015/05/19(火) 19:30:59 ID:fLa.Gu52: そして、サキはその唇の動きを、一片も見逃すことなく、目撃する。
声は届かない。だがその意図を、サキは深く暗いナラクへと落ちながらも、決して消えぬニューロンの奥深くへと焼付け、刻み込んだ。
107：「ガール・ワン・パーソン・カージング・ア・タントラム」：2015/05/19(火) 19:31:32 ID:fLa.Gu52: 『カミヅキ・サクヤになってから、またおいで』
108：「ガール・ワン・パーソン・カージング・ア・タントラム」：2015/05/19(火) 19:32:13 ID:fLa.Gu52: 激しい衝突音と土煙があたりを覆った時、サキの思考は既に、降りしきる雨の中へと消えていた。
109：「ガール・ワン・パーソン・カージング・ア・タントラム」：2015/05/19(火) 19:32:44 ID:fLa.Gu52: （「ガール・ワン・パーソン・カージング・ア・タントラム」終わり）
110：かんな：2015/05/20(水) 04:42:30 ID:d76j6eEA: 動と静の書き分け　いいぞ。
111：「ガール・ワン・パーソン・カージング・ア・タントラム」：2015/05/20(水) 08:51:06 ID:H5UfcIOo: ◇やさしみ◇しっぴつチームの一人から、この物語は多大な独自用語が用いられていて、ニュービーは困惑するのではという指摘がはいった。
これをうけて我々は質問箱を設けることにより、読者たちの疑問を解決するという方法をとった。なので物語への質問や疑問は随時受け付けており、気が向いたら答えます◇しよう◇
112：「ガール・ワン・パーソン・カージング・ア・タントラム」：2015/05/20(水) 08:53:09 ID:H5UfcIOo: ◇鯖◇なお我々に意見を申し立てたしっぴつチームの一人は反逆行為を犯したとしてすみやかに、送られました。ごあんしんください。◇鮪◇
113：「ガール・ワン・パーソン・カージング・ア・タントラム」：2015/05/23(土) 18:01:11 ID:H5UfcIOo: ◆○◆
114：01111スト010000ショ101・ゼ0100100：2015/05/23(土) 18:04:17 ID:H5UfcIOo: 「イン0111ラクシ1100・01ロ111011」#000000
115：01001011010000000110100110000000100：2015/05/23(土) 18:05:02 ID:H5UfcIOo: 011100011011000000011111001011010110010000110010001
116：「クローズ・エンカウンターズ・オブ・ザ・サード・カインド」：2015/05/23(土) 18:08:21 ID:H5UfcIOo: ダークネススレイヤー第一章「ネオヤミセカイ炎上」より　「クローズ・エンカウンターズ・オブ・ザ・サード・カインド」
117：「クローズ・エンカウンターズ・オブ・ザ・サード・カインド」：2015/05/23(土) 18:12:12 ID:H5UfcIOo: 窓枠から差し込んでくる雨粒が、窓際に置かれたボロボロのベッドを濡らし続ける。ベッドは苔むしていて、生活感は感じられない。
微かに差し込む日光が照らす部屋も同じく、壁はヒビ割れ、床は抜け落ち、片隅に置かれたデスクも既に粗大ごみといった格好だ。
無造作に開け放たれたドアからも、雨粒と突風が容赦なく侵入し、床のヒビ割れから顔を覗かせる草花に糧を与える。
118：「クローズ・エンカウンターズ・オブ・ザ・サード・カインド」：2015/05/23(土) 18:27:06 ID:H5UfcIOo: シュコー、パタン。シュコー、パタン。カラカラカラ……無機質な換気扇とUNIXのファンが回る音だけが室内に満たされる。
窓際の真向かいに置かれたデスクの上、唯一生活感を漂わせる真新しいデスクトップモニタが、照らすものもなくひたすらに画面を映し続けていた。
このUNIXの主は？残念ながら今は語るべきではない。デスクトップに映る文字列が、目まぐるしい速度で流れてはかき消えていく。
119：「クローズ・エンカウンターズ・オブ・ザ・サード・カインド」：2015/05/23(土) 18:27:37 ID:H5UfcIOo: 0110111100000101101101100101011110101111000000000111100110010……
120：「クローズ・エンカウンターズ・オブ・ザ・サード・カインド」：2015/05/23(土) 18:53:57 ID:H5UfcIOo: 0111011101010100001000000110010「おっ0110あぶ01え00」
121：「クローズ・エンカウンターズ・オブ・ザ・サード・カインド」：2015/05/23(土) 18:59:54 ID:H5UfcIOo: 一頻り激しく雨粒が打ち付け、次第にモニターにも雨粒が生まれ始める。一粒、二粒……そして、三粒目が弾け、飛び散った時。
文字列が歪み、黒一色であった背景に亀裂が走る。それは壁に広がる日々のようでもあり、モニタを割らんとすべく、音も無く。
0　11000011　0　　　101　01011　　////..........,,@:sum/mon 　　　[Unknown]
122：「クローズ・エンカウンターズ・オブ・ザ・サード・カインド」：2015/05/23(土) 19:03:37 ID:H5UfcIOo: デスクトップから部屋の中央へ、太陽のごとく光り輝く物体あり。それは徐々に肥大化し、人の姿を形作るように変化する。
端から零れていく0と1の粒子が音も無く掻き消え、吹き付ける雨粒は光の力に当てられ弾け飛ぶこともなく蒸発していた。
やがてその光が成人女性ほどの体格を作り上げた時、謎の発光体は不気味なほどに抑揚のない音を奏でていく。
123：「クローズ・エンカウンターズ・オブ・ザ・サード・カインド」：2015/05/23(土) 19:07:18 ID:H5UfcIOo: 「01010011111」「001001？」言葉にも聞こえるが、それは言葉ではなく、ただ無意味な文字列を繋いでいるだけだ。
「01100100」SPARK！止めどない粒子にショートしたUNIXから黒煙が立ち昇る。発光体は小首を傾げ、開け放たれたドアへと首を向ける。
その時だ！「ア……？なんだお前」ドアから身を乗り出して部屋へと乗り込んできたのは、シアンの装束を纏う男。その胸元にはダークネスのエンブレム！
124：「クローズ・エンカウンターズ・オブ・ザ・サード・カインド」：2015/05/23(土) 19:10:31 ID:H5UfcIOo: 「01010」「ア？何？」「010011100011……」ツカツカと歩み寄る男に対し、発光体はどこかうろたえたように言葉を発し続ける。
しかし男は意にも介さず、眉を顰めつつ苛立ちを露わにする。そして懐から取り出したのは、波打ような刀身を持つ、威圧的な長剣だ！コワイ！
「ア？不法侵入？殺すよ？お前」「0111110100」男の装束から覗く瞳が狂気に歪む。対して発光体は、腕を竦め、ため息を吐く動作をしてみせた。
125：「クローズ・エンカウンターズ・オブ・ザ・サード・カインド」：2015/05/23(土) 19:14:04 ID:H5UfcIOo: 「イヤーッ！」先に繰り出したのは男だ！異質な長刀から繰り出される恐るべき斬撃！「01111101001」振るわれた刃が発光体の胴を襲う！
だが、見よ！発光体は切れ目すら生まず、血の変わりの吹き出すのは0と1の粒子。それも僅か数秒で収まり、男は思わず刃と発光体を見比べる。
「ア？切れてない？手応えもない？ナンデ？」「0011100011010」発光体は驚愕する男を見据えるような動作を見せ、少しばかり、微笑んだようにも見えた。
126：「クローズ・エンカウンターズ・オブ・ザ・サード・カインド」：2015/05/23(土) 19:17:54 ID:H5UfcIOo: 「01111101001！」「グワーッ！」刹那、光ファイバーめいた速度の斬撃が男へと飛ぶ！それは男が繰り出した斬撃とも似通っている。
吹き飛んだのは、男の右腕！廃墟と化した部屋を一筋、鮮血の彩りが裂く！「ア、アバッ」「0b11110100011000101001」発光体は吹き飛んだ右腕を、長刀を拾い上げる。
ドロドロと流れ出る赤の血を眺めながら、それを手慣れたように持ち上げて、まるで筆でも取り扱うように、スラスラと血文字を床へと描き始めた。
127：「クローズ・エンカウンターズ・オブ・ザ・サード・カインド」：2015/05/23(土) 19:21:20 ID:H5UfcIOo: やがて発光体が右腕と長刀を外へと投げ捨てた時、足元に、恐怖を煽る文字で書かれた言葉。
『ドーモ。アンノウンです』「ア、バババ」するとどうだろう、男の瞳に映る発光体はやがて人の姿へと近づき始め、瞬きを二回ほど繰り返した時。
「イヤーッ！」「グワーッ！？」靭やかに伸びた脚より繰り出される一撃が男の首を跳ね飛ばす！それは投げ出された腕と同じく、窓へと一直線に。
128：「クローズ・エンカウンターズ・オブ・ザ・サード・カインド」：2015/05/23(土) 19:25:42 ID:H5UfcIOo: 「サヨナラ！」降りしきる雨に打たれながら、男の首はしめやかに爆発四散。残された四肢が力無くうなだれ、描かれた文字に覆いかぶさるように突っ伏す。
「あら、アイサツする前に殺しちゃった」発光体……だった女性は、美しい金色の紙をはためかせながら、窓枠へと乗り出して、鉛色の雲が覆う空を眺めはじめた。
「汚いなあ、この世界の空は」汚れ一つ無いウェディングドレス、澄んだ藍色の瞳。その姿は余りにも幻想的であり、穢れが蔓延る掃き溜めを舞う一羽の鶴めいて輝く。
129：「クローズ・エンカウンターズ・オブ・ザ・サード・カインド」：2015/05/23(土) 19:29:04 ID:H5UfcIOo: 「あ、やば011110もう限1101001？」「011000111……」窓枠に乗りかけていた腕がほつれるように0と1へ還元され始めると、女性は後ろへと飛びのいた。
その時は既に腰ほどまでが粒子となって、吹き付けていた風に乗って掻き消えている。舌打ちを残すように唇を歪ませると、降りしきる空へと手を掲げる。
既に腕の先は掻き消えてはいるが、女性……アンノウンはそれでも、全て粒子となって掻き消えるまで、腕を掲げ続けた。
130：「クローズ・エンカウンターズ・オブ・ザ・サード・カインド」：2015/05/23(土) 19:29:37 ID:H5UfcIOo: 01011101001110011111000000111100110010…………
131：「クローズ・エンカウンターズ・オブ・ザ・サード・カインド」：2015/05/23(土) 19:31:57 ID:H5UfcIOo: 静まり返る廃墟。人の存在を物語るのは、皮肉にも、人の死を告げる一筋の血痕のみ。
しかしやがてそれらも雨と風によって塗り落とされ、数週間もしない内に、この部屋の無機質さを取り戻すことだろう。
シュコー、パタン。シュコー、パタン。ショートしたUNIXが狂ったように同じ音だけを響かせ続け、戻ることのない主を待ち、ひたすらにファンを回す。
132：「クローズ・エンカウンターズ・オブ・ザ・サード・カインド」：2015/05/23(土) 19:33:17 ID:H5UfcIOo: 『…ーシャ……ン』古寂れた一切れの表札が、雲に切れ間からほとばしる日光に照らされていた。
133：「クローズ・エンカウンターズ・オブ・ザ・サード・カインド」：2015/05/23(土) 19:34:03 ID:H5UfcIOo: （クローズ・エンカウンターズ・オブ・ザ・サード・カインド　終わり）
134：かんな：2015/05/23(土) 23:17:10 ID:d76j6eEA: (52149？)
135：闇の名無しさん：2015/06/12(金) 18:44:14 ID:H5UfcIOo: 「ハァーッ！ハァーッ！」イソソは走り、駆けました。
「更新が……更新が来ない！来ない！来ない！更新が来ない！ナンデ？更新が！来ないんだ！」
実家に帰っていたイソソは不審に思い、新年バーベキューの場から抜け出し、ヒッチハイクを繰り返して、一人で家に帰ってきてしまいました。
136：闇の名無しさん：2015/06/12(金) 18:45:04 ID:H5UfcIOo: 「絶対これはおかしいよ。更新が無さすぎる。事件の臭いしかしない」
イソソはブツブツと独り言を呟きながら、家の隣の執筆アジトの庭を覗き込みます。
「更新が来ない……すなわち、なんかストップかけられている？まさか更新制限！課金な……？」
イソソは歯を食いしばりました。「なんてこった！」
137：闇の名無しさん：2015/06/12(金) 18:46:21 ID:H5UfcIOo: だがあなた！ごあんしんです。今なんかの縛りが解けたので、多分今日中に新エピソードオーが開始されます
138：闇の名無しさん：2015/06/12(金) 18:46:52 ID:H5UfcIOo: ◆◎◆
139：インストラクション・ゼロ：2015/06/12(金) 18:51:22 ID:H5UfcIOo: ダークネススレイヤー第一章「ネオヤミセカイ炎上」より　「インストラクション・ゼロ」
140：「インストラクション・ゼロ」：2015/06/12(金) 19:47:23 ID:H5UfcIOo: 絶え間なく振り続ける重金属酸性雨が街を濡らす。淀んだ空を裂く青空も、やがては鉛一色に塗りつぶされることだろう。
「疲れが凄い」「肩凝ってしまう」「青な光対策メガネな」虚構を連ねる宣伝看板だけが、暗がりの街をケミカルに染めていく。
141：「インストラクション・ゼロ」：2015/06/12(金) 19:50:22 ID:H5UfcIOo: ネオヤミセカイの中心、スゴイクライシティ。聳え立つ摩天楼の中に一際目立つヤミマカンパレスが、威圧的に空を刺す。
待ちゆく人々はかの摩天楼に恐れを抱き、そして憧れを抱きながら、深い闇に覆われたこの街の機構を繋ぐ歯車として働くのだ。
あのビルはまさしくカチグミの象徴。歯車によって生まれた血税が彼らカチグミの血肉となる。
142：「インストラクション・ゼロ」：2015/06/12(金) 19:54:18 ID:H5UfcIOo: 「幸福は市民の義務です。あなたがたは今日も幸せなことですね？」空を飛ぶ数隻のツェッペリンからは無機質な合成メイド音声が響く。
「アッハイ」「幸せ、幸せ」「アーイイ……遥かに良い」パブロフ・ドッグめいて音声に答えては歩みを進めるサラリマン。彼らこそが、この街の歯車なのだ。
彼らに自我は無いのか？否、ある。正しくは、あった。彼らの心は既に壊れきっているのだ。それは環境によるものでもあり、薬物による副作用でもある。
143：「インストラクション・ゼロ」：2015/06/12(金) 19:58:24 ID:H5UfcIOo: ネオヤミセカイでの過酷な労働に耐えるサラリマンの半数は、滋養強壮ドリンクと言う名のドラッグによる恩恵を受けている。
エネルキ製薬が提供する栄養剤……デカビタドリンク。真実金ドリンク。サワヤカ・タブレット……それらは街の至るところで購入が可能だ。
何故違法な薬物が簡単に買えるのか？ネオサイタマのマッポーな治安が原因か？その何れでもない。このドリンクは、合法なのだ。
144：「インストラクション・ゼロ」：2015/06/12(金) 20:00:38 ID:H5UfcIOo: 一本飲む程度では効果はない。二本飲めば効き目が現れる。ドラッグとして利用するのなら、軽く5本は飲み干さなければならない。
そうしてオーバードーズを引き起こすことにより、精神をアッパー状態に……或いはダウナー状態に陥らせ、過酷な労働に耐え続ける。
身体が耐えられなくなったものの末路は推して知るべし。物理的に壊れるものや、中毒を起こし昏睡状態に陥るもの。狂ってマッポに射殺される者も少なくない。
145：「インストラクション・ゼロ」：2015/06/12(金) 20:03:36 ID:H5UfcIOo: 「真実金！シャキっとゲンキ！効き目が違う！」「デカビタ、デカビタ、ゲンキハツラツ」各所に設置された自動販売機から、変わらぬ宣伝文句が響く。
「ウィーピピ！」「仕事が出来て幸せです！」「タノシイヤッター！」待ちゆくサラリマンが虚ろに濁る目を見開き、本心を塗りつぶしながら会社へと向かう。
彼らの心はもはや、鉛一色に塗りつぶされたネオヤミセカイの空めいて、一生涯晴れることはないのだろう。
146：「インストラクション・ゼロ」：2015/06/12(金) 20:07:36 ID:H5UfcIOo: 「…………」その中にあって異色。待ちゆくサラリマンの中に紛れ、小柄な少女が歩みを進めている。
纏う衣服はボロボロに擦り切れて、乱雑に巻かれた包帯からは血が滲み、乱れた灰色の髪を整えることもせず、淡々と足を前へ。
通りすがるサラリマンは彼女のことを気にかけることもせず、デカビタをキメた者は不自然な程の笑みを浮かべ、真実金をキメた者は不気味な静けさで通り過ぎる。
147：「インストラクション・ゼロ」：2015/06/12(金) 20:10:26 ID:H5UfcIOo: だがしかし、この街に棲むものは彼らのような歯車だけではない。中には歯車のサビとなるような害悪も存在するのだ。
「ッテェー！ダッテメオラー！」ナムサン！アタリヤだ。アタリヤは通行人に自らぶつかり、大げさに痛がる演技を見せた上で、慰謝料を請求する社会の害悪である。
「アッコラー！ガッキャラー！シメッゾラー！」ヤクザスラングめいて言葉を浴びせるアタリヤ！その餌食となったのは、例の少女。
148：「インストラクション・ゼロ」：2015/06/12(金) 20:12:57 ID:H5UfcIOo: 彼女はこのまま彼の言いなりになるというのか？言いなりになってしまえば、風俗メイドへ沈められることは想像に難くない。
「ナッカエッラー！」「…………」おお、ブッダ！胸ぐらを掴まれ軽く身を持ち上げられた少女は、今にも殴りかかられそうな程に怒声を浴びせられる！
常人ならば即座に失禁、その後有り金を全て差し出した上でドゲザも行うであろう恐怖的カツアゲだ！しかし、少女は言葉ひとつ発さない。
149：「インストラクション・ゼロ」：2015/06/12(金) 20:16:14 ID:H5UfcIOo: そして、あろうことか……見よ！少女は胸ぐらをつかむ腕を掴み返し、骨の軋むような音を響かせ、腕をあらぬ方向へとねじ曲げたのだ！
「アイエッ」「………………・」アタリヤは思わず一歩後退し、目の前の少女を二度見する。身震い一つ見せぬ少女。その乱雑な灰色の髪から覗く双瞳！
「ア、ア、アイエエエエエ！？」失禁！モータルとは思えぬ瞳に射抜かれたアタリヤは、まさしく蛇に睨まれた蛙と言えるだろう！
150：「インストラクション・ゼロ」：2015/06/12(金) 20:19:42 ID:H5UfcIOo: 「アイエエエエエエエェェ……」数秒の間もなく逃げ出すアタリヤ。少女はそれを追いかけることもせず、再びサラリマンの群れの中を歩き出す。
回りにいたサラリマンといえば、この一連の流れすらも意に介す事なく歩き続けていた。このような出来事はチャメシ・インシデントなのだから。
やがて少女は装甲市営バスに乗り込み、行く宛もなく揺られ続ける。車内に設けられた電光UNIX時計は「03：98」と、ありえぬ表示を見せていた……。
151：「インストラクション・ゼロ」：2015/06/12(金) 20:20:25 ID:H5UfcIOo: ――――――――――――
152：「インストラクション・ゼロ」：2015/06/12(金) 20:24:17 ID:H5UfcIOo: 装甲市営バスはネオヤミセカイの交通機関、ヨクツナガル機構によって運営される路線を走る対暴徒仕様のバスである。
中心部であるスゴイクライシティを走るバスだけならばともかく、こうしたネオヤミセカイ全体を回るバスは、必然的に自衛を余儀なくされる。
何故ならば乗客を狙うテロリストやアナーキストが多く跋扈する区画を通らねばならぬからだ。もしこのバスが中央区を行くバスだったなら、即座に火炎瓶の雨にさらされる事だろう。
153：「インストラクション・ゼロ」：2015/06/12(金) 20:28:25 ID:H5UfcIOo: こういったバスは格安であり安全、その分快適さとは程遠いものだ。シートは粗悪だし揺れも酷い。道路も舗装されていないので揺れは倍増だ。
「次はウルシストリートです、ゴシュジンサマ」安っぽい合成メイド音声の合図とともに、簡素なベル音が響き、いくつか設けられたボタンに赤のUNIX光が灯る。
このバスに運転手などは存在しない。全てAIによって管理され、コスト削減と安全面を理由にコンピュータが操縦を行う。実に合理的なシステムだ。
154：「インストラクション・ゼロ」：2015/06/12(金) 20:32:17 ID:H5UfcIOo: 「お降りの方は足元にお気をつけください、ゴシュジンサマ」圧縮空気の漏れる音が車内に響き、車内は一時、外の土煙で満たされる。
三人ほど、とても清楚とは言えぬ服装の乗客が降り、入れ替わるようにして、また同じような身なりの乗客が乗り込んできた。
その様子を一番奥の座席で眺めるのは、先ほどの少女……カミヅキ・サキ。視線は乗り込んできた客へと向けられているようだ。
155：「インストラクション・ゼロ」：2015/06/12(金) 20:34:49 ID:H5UfcIOo: 足、胴、胸元、腕、手のひら。滑るように目を走らせるうち、やがてサキはその乗客の違和感に気がつく。
（靴下がキレイすぎる）そう、全身みすぼらしい姿であるにもかかわらず、その男は靴下だけが異様に綺麗なのだ。
よく目を凝らせば、靴下には「ストライプビレッジ」のロゴ刺繍。ストライプビレッジといえば、ヤミセカイきっての一流ブランドである。
156：「インストラクション・ゼロ」：2015/06/12(金) 20:36:39 ID:H5UfcIOo: 何かがおかしい。目を伏せながらもその男へと注意を図るサキ。そしてサキの杞憂は現実のものとなった。
「動くな！俺はダークネスだ！」ナムサン！男は背負っていたバッグから威圧的なカスタムが施された拳銃を二丁取り出し天井へ発砲！
「アイエエエエ！？」「ナンデ！？ダークネスナンデ！？」即座に混乱に包まれる車内！バスジャックだ！
157：「インストラクション・ゼロ」：2015/06/12(金) 20:39:28 ID:H5UfcIOo: 「ハァーッ！ハァーッ！お前ら！金を出せ、それと女は俺の所に残れ！」硝煙が漂う銃口を乗客へ突きつけながら男は告げる。
ダークネス……それはモータルにとって恐怖の存在である。いわば絶対的な権力であり、恐怖を従えた警察や自衛隊といえばわかりやすいだろう。
モータルでは敵わぬ相手であり、ただ従うしかない存在。それがダークネス。乗客は悩む間もなく、一斉に財布を差し出していく。
158：「インストラクション・ゼロ」：2015/06/12(金) 20:42:33 ID:H5UfcIOo: 「アー、イイ……金だ！そして、暴力！」「アバーッ！？」BLAM！バスジャックの銃弾が乗客の男を貫通！ソクシ！
「暴力！そして！」「アバーッ！」再び発砲！近くの老婆が脳天を撃たれソクシ！なんたる非道！？車内は更に混沌に包まれた！
「セックスだ！オイ！女だ！俺は若い女これが好きだ！」が、乗客は労働者や高齢者がほとんどであり、彼の望むような女性は存在しない。
159：「インストラクション・ゼロ」：2015/06/12(金) 20:45:22 ID:H5UfcIOo: 「ブッダシット！ハズレかよ！暴力！」「アバーッ！」苛立たしい様子を見せながらバスジャックは車内を歩き出す。ついでに労働者がソクシ！
ここで読者のみなさまに彼の名を教えておこう。彼の名はアウトロー。ダークネスに連なるはぐれ組織の一員であり、ダークネス・コープスの末端の下っ端だ。
言わばダークネス・コープスの歯車にすらなれぬ存在。即ちマケグミであり、ダークネスでありながら、その将来は暗いものだ。
160：「インストラクション・ゼロ」：2015/06/12(金) 20:47:57 ID:H5UfcIOo: アウトローはその生活の中で、己よりも弱い存在、つまりモータルを陵辱することで、フラストレーションを晴らしている。
（ここでは俺がキングだ。俺に逆らえる奴はいない。タマラナイ。俺が最強だ）BLAM！更に追加で男がソクシ！なんたる横暴な行いか！？
「ちょっとやめないか」「アッ？スッゾオラーッ！」「アバーッ！」BLAM！BLAM！勇気を振り絞って制止に入った男があえなくソクシ！ムゴイ！
161：「インストラクション・ゼロ」：2015/06/12(金) 20:50:19 ID:H5UfcIOo: ああ、アウトローの残虐非道な行いを止められる者はいないのか！？ブッダは寝ているのだろうか！？
「オッ若い女だ！女子高生重点！」やがてその矛先は、隅で俯いていたサキへと向けられた！強引に手繰り寄せられる矮躯！
「セックスだ！女子高生と直結！激しく前後だ！」ナムサン！もはや暴走は止まらない！その欲望はサキの服へと、身体へと向けられ、そして！
162：「インストラクション・ゼロ」：2015/06/12(金) 20:52:56 ID:H5UfcIOo: 「……殺すべし」「え？」「ダークネス、殺すべし」CLAAAAAAAAAAASH！！見よ！アウトローの肉体が弾け飛び、ガラスを突き破って外へと投げ出された！
「グ、グワーッ！？」ロケットランチャーすらも弾き返す特殊合金の装甲すらも突き破る衝撃がアウトローを襲う！そしてアウトローは道路へ立ち直り、車内を見やる。
すると、そこには……アウトローへと歩み寄るサキ、否、ダークネススレイヤーの姿が！殺戮者のエントリーだ！
163：「インストラクション・ゼロ」：2015/06/12(金) 20:56:39 ID:H5UfcIOo: 夜の帳から差し込む月光がバスを照らし、穿たれた穴から差し込む光がダークネススレイヤーを包み込む。
気が付けば雨は止み、道路に残された水溜りにはそれぞれ叢雲が映えていた。アウトローは銃を突きつけ、素早く発砲！
BLAM！BLAM！だがダークネススレイヤーは無傷！「アイサツすら出来ぬか、サンシタめ！」伴って車外へと飛び出し、バスの天井へと着地しながら、ダークネススレイヤーは高々と告げたのだ！
164：「インストラクション・ゼロ」：2015/06/12(金) 20:57:14 ID:H5UfcIOo: 「ドーモ、ダークネススレイヤーです」
165：「インストラクション・ゼロ」：2015/06/12(金) 20:57:46 ID:H5UfcIOo: （「インストラクション・ゼロ」#1おわり　#2に続く）
166：かんな：2015/06/13(土) 14:47:54 ID:d76j6eEA: 宴の準備じゃあ！
唐突に挿しこまれるKBS いいぞ
167：「インストラクション・ゼロ」：2015/06/14(日) 10:45:36 ID:H5UfcIOo: ◆◎◆
168：「インストラクション・ゼロ」：2015/06/14(日) 10:46:17 ID:H5UfcIOo: 「インストラクション・ゼロ」　#2
169：「インストラクション・ゼロ」：2015/06/14(日) 10:53:36 ID:H5UfcIOo: ドサンコ・シバレルシティ。ネオヤミセカイの最北に位置するこの街は、ネオヤミセカイ5大都市の一つに数えられる。
イゴ・マトリックスめいて整然とした区画に東西を隔てるオードリー・パーク。計画都市として完成されたこの街は、観光都市としての側面も持つ。
特に一大観光地である時計台には今もなお多くの人々が訪れており、地上147mからの夜景は100万ドルだとも例えられるほどだ。
170：「インストラクション・ゼロ」：2015/06/14(日) 10:59:33 ID:H5UfcIOo: 冬季はスノースポーツ稼業で栄え、夏季はカチグミ達の避暑地として栄える。まさにネオヤミセカイのオアシスとも言えるだろう。
「やはり夏のシバレルシティは遥かに良いですね、キバラギ＝サン！」「流石シバレルシティです！」浮かれた会話を交わすサラリマン二人組もまた、カチグミだ。
スゴイクライシティの雑踏を離れ、静かで涼しいシバレルシティで一旦の夢を見る。それはカチグミにのみ許される究極の現実逃避といえる。
171：「インストラクション・ゼロ」：2015/06/14(日) 11:03:45 ID:H5UfcIOo: 多くのカチグミは自家用ジェットか、もしくはネオヤミセカイから飛ぶドサンコ航空のジェットを利用してシバレルシティにやってくる。
陸路で訪れることも出来なくはないが、空路に比べ圧倒的に危険度が高く、快適さも圧倒的に劣るということで選ぶものは少ないのだ。
とはいえマケグミはジェットなど利用できるはずもなく、必然的に陸路での移動を迫られる。そう、超硬合金装甲で覆われた市民バスでの移動を……
172：「インストラクション・ゼロ」：2015/06/14(日) 11:09:27 ID:H5UfcIOo: 「「アイエエエエ！？」」圧縮空気の漏れる音とともにドアが開くと同時に、二人のサラリマンの悲鳴が重なって響く。
その二人の視線の先には……ナムサン、血みどろの死体だ！バスに寄りかかっていたものが倒れ落ちたのか、死体は力なく路上に突っ伏す。
胸元には血染めのダークネス・エンブレム。読者の方々ならばこの死体に見覚えがあるはずだ。己の自尊心を満たすために横暴を続けた男の姿を。
173：「インストラクション・ゼロ」：2015/06/14(日) 11:14:23 ID:H5UfcIOo: 「到着しました、ドサンコ・シバレルシティですゴシュジンサマ」無機質な合成メイド音声が到着を告げ、大きな穴が開けられた車内から、数人の乗客が降車していく。
皆が一様に恐れをなし、死体には目もくれず、足早に駆け出していく。そして再び装甲バスは走り出し、数人の死体を抱えたままターミナルへと帰還するのだろう。
思わず失禁するサラリマン二人組をよそに、投げ捨てられた死体が清掃係の社員によって回収される。観光都市であるシバレルシティに、このような穢れは許されないのだ。
174：「インストラクション・ゼロ」：2015/06/14(日) 11:18:28 ID:H5UfcIOo: 気が付けば周りの通行人も、死体には驚き一つ見せない。理由は明白、これもまたチャメシ・インシデントなのだ。
いくら観光都市として栄えているとはいえ、ここはネオヤミセカイ。化粧で塗り固められたメイドの素顔のように、この街もまた、おぞましき闇が蔓延る。
「アイエエエ……シバレルシティいいかげんにしろよ……」力なくサラリマンが悪態をつくと同時、初夏の風が吹き付ける街を一陣の灰風が駆けて行く……。
175：「インストラクション・ゼロ」：2015/06/14(日) 11:19:09 ID:H5UfcIOo: ――――――――――
176：「インストラクション・ゼロ」：2015/06/14(日) 11:28:11 ID:H5UfcIOo: テレビジヨン・タワーの展望台は今日も多くの人びとで賑い、規則正しく並ぶ夜景をその目に焼き付けるべく、瞳を輝かせて眼下を望む。
「パパ！すごい！すごいキレイ！」「そうだね、すごいキレイだね」綺羅びやかな服装に身を包む親子もまた、闇夜に浮かぶ地上の星の虜となっていた。
「ママにも見せたかったねー」「ママはまだ来られないからね」「どうして？」「お腹の中に赤ちゃんがいるからだよ」「そっかー」
177：「インストラクション・ゼロ」：2015/06/14(日) 11:32:49 ID:H5UfcIOo: 30代前半といったような風貌の父、カンラ・タダイチは、メガコーポであるトバリ・インダストリの課長。すなわちカチグミだ。
「じゃあまた来ないとね！」二つ結びのブロンドを揺らす娘、カンラ・イチゴもまた将来を約束された令嬢であり、やがては社長令嬢となるだろう。
「イチゴが来たいだけじゃないのか？」「えー、違うよー！」美しい夜景に照らされながら、親子は会話を弾ませていく。
178：「インストラクション・ゼロ」：2015/06/14(日) 11:36:30 ID:H5UfcIOo: 「あれ？」「どうした？」「今流れ星が見えた！」イチゴは空を指さし、地上とは真逆に雲で覆われた淀み色の空を指差す。
「曇っていて星なんて見えないじゃないか」「本当に見えたもん！」「何色だった？」「えっと、銀色」「いいかいイチゴ、銀色の星なんて無いんだよ」「本当だもん！」
頬を膨らませるイチゴと困った様子を見せるタダイチ。ガラス一枚隔てた上空で、その様子を流し見ながら、銀の流れ星が空へと昇っていった。
179：「インストラクション・ゼロ」：2015/06/14(日) 11:37:26 ID:H5UfcIOo: ―――――――――
180：「インストラクション・ゼロ」：2015/06/14(日) 11:42:25 ID:H5UfcIOo: 展望台エリアの遥か上、まさに頂上と言うべき足場に身を預けるのは、灰色の髪を靡かせる少女、カミヅキ・サキ。
（……お腹すいた）目前に広がる星々の海も、今のサキの前では一文にもならぬ風景だ。本当に100万ドルの価値があったなら、とサキは逡巡する。
（貯金残高ゼロ）（ダークネスの仕業？）（バス代払ってたらやばかった）（ゴメンナサイ）膝を抱え、虚ろな瞳を夜景へと向けながら、尽きぬ思考を巡らせていく。
181：「インストラクション・ゼロ」：2015/06/14(日) 11:46:58 ID:H5UfcIOo: サキがこの街、ドサンコ・シバレルシティへやって来たのにはわけがある。キッカケは先日、いつもの様に貯金を下ろそうとした時のことだ。
『現在、ゴシュジンサマのご利用を停止させてもらっています』淡々とした合成メイド音声を耳にした時、サキは一瞬で事態を悟った。
ダークネス・コープスのハッキング。ネオヤミセカイを牛耳る彼らにとって、サキの口座を凍結させることなどベイビー・サブミッションにも等しい。
182：「インストラクション・ゼロ」：2015/06/14(日) 11:52:01 ID:H5UfcIOo: コンビニストアを巡ってみても、突きつけられるのは合成メイド音声のみ。やがて口座を確認できた時、そこには0の文字が残されるのみだった。
（ウカツだった）（バカ）（イディオット）己に悪態の言葉を吐いても何も始まらない。そうしてサキはスゴイクライシティを後にし、この街へとやってきたのだ。
ドサンコ・シバレルシティはサキに馴染み深い土地であり、父方の祖父母が住まう土地である。その祖父母に相談を持ちかけようと、バスに揺られながらこの北の果てへと辿り着く。
183：「インストラクション・ゼロ」：2015/06/14(日) 11:55:53 ID:H5UfcIOo: しかし、サキの考えは浅はかだった。既に祖父母宅は何者かに寄って破壊され、無残な瓦礫の山と化していたのだ。
（私のせいだ）（どうしよう）（ゴメンナサイ）幸い近所の人の話しによれば、祖父母は外出中で、破壊されたのは家屋だけだったという。
だが被害は甚大なものだろう。そんな最中で祖父母に金を無心するわけにも行かない。望みを失ったサキは、行く宛もなくこの場所へと辿り着いた。
184：「インストラクション・ゼロ」：2015/06/14(日) 12:00:34 ID:H5UfcIOo: （ススキノ・ストリート）（お金を稼ぐ？）（お腹すいた）道中での襲撃もあった、恐らく数日もせぬ内に、この街にもダークネスがやってくる。
それまでに金を稼ぐのが摂理だが、この街での稼ぎといえばススキノ・ストリート……即ちメイド風俗以外にはあるまい。
もともとメイドを志していたサキにとって、メイド風俗で働くことは最大の屈辱でもある。彼女にとってメイドとは、もっと高貴で高潔な職業なのだ。
185：「インストラクション・ゼロ」：2015/06/14(日) 12:07:16 ID:H5UfcIOo: しかし背に腹は変えられないか？一層煌めく夜景を他所に、サキは支柱に背中を預け、静かに力を抜いていく。
「フゥ……」ここ数日、色々なことが起こりすぎて、眠る機会も少なかった。目を瞑ってみると、すぐに多量の睡魔が押し寄せてくる。
肌寒いシバレルシティの風に吹かれながら、カミヅキ・サキは深い酩酊感の中へ、微睡みの中へと落ちていった。