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ノスタルジア
21
:
名無しの権兵衛殿
:2016/05/04(水) 20:54:50 ID:/EB5ZDbI
それは、生きた人だった。そう、人であったモノだった。
「食うカ?」
「そこまで落ちぶれちゃいないよ」
「そうカ。うまいのニ」
「喰ったことがあるのか?」
「いや、そういウ話を聞いたことがある」
「うげー。だな」
自分よりも黒ずんだ死体は、いくつかのハエをその身に纏っていた。
しばらくの間、俺はその死体を見つめていた。
「かえるゾ。日が暮レる」
「あぁ」
いつかは自分も、あのように死ぬのだろうか。
そう、考えていた。そのいつかは、一体何時なのだろうか。
「たす、けて」
そのとき、その死体が言葉を発した。
22
:
名無しの権兵衛殿
:2016/05/04(水) 20:56:05 ID:/EB5ZDbI
「うわっ!!!」
思わず、距離をとる。黒コゲの肉体は相変わらず、静かにそこにたたずんでいる。
よく耳を済ませていると、小さな呼吸音と、鼻を啜る音が聞こえる。
「…魔物か?」
「いヤ。匂イが違う」
相棒が、スタスタとその死体に近づく。
勇敢であるのか、無謀であるのか、そのどちらともみえる。
「おい。やめておけよ。何が起きるかわからないぞ」
「そりゃたのしみダナ」
そういって、相棒はその死体を蹴り上げた。
23
:
名無しの権兵衛殿
:2016/05/04(水) 20:56:57 ID:/EB5ZDbI
相棒の小さな足が力強く死体をふっとばす。
いくつかの肉片と、ハエどもが、空中に舞い上がる。
「んー。すとらいク」
「おい!何してるんだよ!」
「ザンネン。さすがに生きたにんげんハ喰えないナ」
「え?」
その死体のあった場所。正確にはその死体の影にいたのは、小さな金髪の髪をした少女だった。
「どうスル?」
「どうするって言っても…」
「このままほおって置いたら、きっと肉になるゾ」
「……」
「任せるヨ」
そういうと、相棒はテクテクと行ってしまった。
24
:
名無しの権兵衛殿
:2016/05/04(水) 20:57:38 ID:/EB5ZDbI
「おい!っちょっと待ってって!」
「たす…けて…」
「っ」
少女は、まだ息がある。
しかし、どう考えても厄介ごとでしかない。
ゴミ置き場に捨てられた少女。その傍らにあった死体。
厄介ごとは沢山だ。しかし。
「水を、ください…」
「ったく!少し待ってろ!」
先ほど落とした水筒を探しに戻る。もう少しで日が暮れる。
日が暮れると野犬が出る。
そうすると、俺まで危険が及ぶかもしれない。
25
:
名無しの権兵衛殿
:2016/05/04(水) 21:07:02 ID:/EB5ZDbI
無駄なことだ。
彼女だってどうせもう少しで死んでしまうのだから、無駄になってしまうカも知れない。
しかし。しかし。
「あぁ!!めんどうくさい!!どこだよ!!」
ゴミ山を必死に漁る。
「どこだってば!くそ!」
ない。ない。ゴミしかない。
なぜ、こんなにも焦っているのだろうか。見ず知らずの少女に対して、なぜ俺はこんなに苛立ちを覚えているのだろうか。
少女に欲情した?同情した?それとも死体を見て焦っている?犬に怯えている?
それとも、俺はあの少女に自分の姿を重ね合わせている?
26
:
名無しの権兵衛殿
:2016/05/04(水) 21:08:02 ID:/EB5ZDbI
いつか死んでしまう瞬間に、寄り添ってくれる誰かを望んでいたのだろうか。
「わっかんねぇよ!そんなこと!」
「しかたないサ。そういう時もアルさ」
「…ヘッド」
「いいかげんその言い方はやめろっテ」
「お前も探してくれよ」
「なにヲ?」
「だから…」
「お探しものはコレだロ?」
相棒の右手には、汚れた水筒が握られていた。
そして、その右手も同じくらい汚れていた。
「俺の水筒・・・!!」
「肉。おごれヨ」
「さすがだゼ。相棒」
「話し方を、真似するんじャネェ」
もう少しで、日が暮れる。
27
:
名無しの権兵衛殿
:2016/05/11(水) 19:31:34 ID:akk5WQrQ
期待
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