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本達は森の奥に

1名無しの権兵衛殿:2014/01/27(月) 20:59:36 ID:UyYTXWRk
やぁ、こんにちは

僕は、ある図書館にいる、一冊の本

数多くの、本という本のなかの、一冊の、本

この図書館は、古めかしい窓から見える木々を見るに、辺境の場所にあるのかと思う

そのせいか、人は、あまり来てくれないね

でも、そのおかげで、ここでは落ち着いて本を読めるらしい

…僕は、まだ読んでもらったことはないけどね

2名無しの権兵衛殿:2014/01/27(月) 21:50:29 ID:UyYTXWRk
ここの館長さんは、優しそうなお爺さんだ

ずっとずっと、僕たちと一緒にこの図書館にいる、お爺さん

いつもギィギィ音のする椅子に座っていて、いつも図書館入り口の木製の扉の横のカウンターに座っている

朝から夜までそこにいる

動いたかと思えば、図書館の奥にある扉に入る

朝日が昇ったと思ったら、いつの間にかそこにいて、また朝から夜までそこにいる

そんな、繰り返し

3名無しの権兵衛殿:2014/01/27(月) 22:15:15 ID:UyYTXWRk
ギィィ と、音がした

扉のすき間から、木漏れ日がさしこむ

その光は、どんどん大きくなっていく

そのなかに見えてくるシルエット

年は、17、8くらいだろうかの、青年

彼は、よく、この図書館に来てくれる

二週間に一回くらい来てくれる

彼は、いつも僕の向かいの本棚にいる、赤い表紙の本を手に取る

その本の名前を、僕は知らない

いつも、その場で立って読むから、本の名前は見えないんだ

青年は、いつもその赤い表紙の本を読み続けている

ここ数年、その本ばかり読んでいる

この図書館に初めて来たときから、その本ばかり読んでいる


…たまには、向かいにある本とかも読んでみようかな

なんて、思ってくれそうにはないね

4名無しの権兵衛殿:2014/01/27(月) 22:33:46 ID:UyYTXWRk
図書館だけあって、とても、静か

音という音は何も聞こえず、時が動いてるのかさえ不安になる

古めかしい窓からさしこむ光は、ゆっくり、ゆっくりと動いている

それを見てると、意外と時間が過ぎるものは早いものだと気付かされる

さっきまでは、窓の近くの床にしか光は届いていなかったのに

今は、青年の足元まで光が近付いている

5名無しの権兵衛殿:2014/01/27(月) 23:24:30 ID:lYvm7rCc
新スレ……だと……?

期待

6名無しの権兵衛殿:2014/01/28(火) 15:39:31 ID:cG/HpFHs
新しいスレ立ってんの見てなぜか笑っちまった
面白そうだから期待

7名無しの権兵衛殿:2014/01/28(火) 22:57:19 ID:W4s6uFTA
それは、青年の体を少しずつ登っていき、やがては赤い表紙の本にも届く

この頃になると、それは紅く染まっていく

青年が本を読む後ろ姿も、だんだん赤色へと変わっていった

赤い表紙の本は、ページ一枚一枚も赤くなって、徐々に赤い本と呼ぶに相応しくなっていく


赤い本を読んでいた、赤い服を着た青年が、ふと、足下の床を見た

次に、窓を見た

最後に、僕のいる本棚の上を見た

それを確認すると、青年は赤い本を元の場所に戻す


ギィィ と、音がして、青年は図書館からいなくなる

8名無しの権兵衛殿:2014/01/29(水) 00:24:17 ID:DM7zWDzc
次第にそれは、だんだん細くなっていく

窓から見える景色は、だんだん赤から黒に

窓から入るそれは、一つ一つの点となっていく

黒く塗りつぶされた空のなかに見える星は、僕らと同じくらいの数なのかな


僕は、誰にも気付いてもらえなさそうな、とても、小さい、小さい、あの点が好き

……なんとなく、自分に、似ている気がするから

9名無しの権兵衛殿:2014/01/29(水) 18:32:15 ID:rg2MIjm2
雰囲気好き

期待

10名無しの権兵衛殿:2014/01/30(木) 18:40:53 ID:MEa/owIU
…あれ、点達が、だんだん消えていく

綺麗に輝いていた点が、少しずつその姿を隠していく

一つ、また一つと、消えていく


しばらく見ていると、上の方から何かが降りてきた

そう思うと、また一つ、また一つ……

……そして、二つ、三つと降りていくようになっていって……

だんだん、その数が、増えていく

それは、白くて、綺麗

綺麗がたくさん、降りていく


窓から見えていた星が降りてきたかのよう

それを、古めかしい窓が映し出す光景は、やっぱり綺麗

11名無しの権兵衛殿:2014/01/30(木) 19:02:11 ID:MEa/owIU


そんな光景に見とれていたら、少し外が明るくなってきた

すると、白が光を反射して、それがよりいっそう輝いて見えた


ふと、窓の下を見てみると、白い地面が広がっていた

辺り一面、いっそう輝いている

まるで、物語の展開が変わるように、昨日とは別の場所に来たようだ

いつの間にかいたお爺さんも、窓の外をぼんやり眺めていた

12名無しの権兵衛殿:2014/02/02(日) 02:14:27 ID:cbXEtFPs
これは、確か………

『雪』、という物だったかな

僕の記憶に、『雪』があるみたい

だから、雪が分かる

あの、白くて綺麗なのが、冬にやってくる

それは、空に広がる、とても大きな雲が、まるで我が子を旅立たせているようにも見える

そう、書いてある


……僕も、この雪と同じなのかもしれない

僕のことを生み出してくれた、あの人

そして、僕はあの人の、子供

あの人は、僕のことを旅立たせてくれた


でも、僕はいずれ、雪と同じで、時間が過ぎるとともになくなっていっちゃうのかもしれないね

13名無しの権兵衛殿:2014/02/03(月) 22:13:27 ID:uRtNaznY
え?

雪は溶けてなくなるけども、本はなくなるわけがない……だって?

あはは、そうかもね

でも、確かに本も消える事はある

空から降りてくる雪も、ここにある本達も、そして、君だって、僕と同じで、消える事はある

いつか、その存在はなくなって

いつか、その存在はみんなに忘れられていって

いつか、その存在は消える


空も晴れ、積もっていた雪が溶けていくのを見たら、君もそう思えてくるんじゃないかな


まぁ、僕の場合、そもそも誰にも忘れられる事がないというか……

存在がなくなったら、すぐに消える事になるというか………

14名無しの権兵衛殿:2014/02/06(木) 19:44:46 ID:vUQ8ps3.
ギィィ……


あ、誰かが来たみたい

ドアの音をさせながら、入ってくる人は、弱々しい声で

「失礼します…」

と、言って図書館の中へと足を踏み入れる

この人は、初めて見る人だ

白いコートを着ていて、どこか物静かな雰囲気の女性だ

その人は、入ったらまず周りを見渡した

そして、ギィギィ音のする椅子に座っているお爺さんを見て、少し驚いた様子だ

あの…と、その人が声をかけてみても、反応はない

ただただ、座っているだけのお爺さん

どこかを見ている訳でもなく、本当に座っているだけのお爺さん

15名無しの権兵衛殿:2014/02/08(土) 21:23:24 ID:CEHn.j8k
女性は、そんなお爺さんを見て、不思議に思いながらも一歩、二歩と前へ進む

また、図書館のなかを見渡す


……今いる、そこから右を向いてほしいな

……あ、そうそう

そしてあわよくばこっちに……

ああ……また向こうを向いちゃった……


そして……彼女は、僕のところから離れていっちゃった……


……別に、僕を読んでほしかった訳じゃないからね

本当だからね

16名無しの権兵衛殿:2014/02/09(日) 20:07:18 ID:YVHUagJM
トッ……トッ……トッ……


彼女の足音がしばらく聞こえてくる

どうやら、どの本を読もうか選んでいるようだ

一体、彼女はどんな本を読むのだろう……


……もう一度、僕の近くに来てくれないかな……

そして………僕の事を、選んでくれないかな……


トッ……トッ……………


………足音が、止まった

どの本を読むのかが、決まったのかな?

17名無しの権兵衛殿:2014/02/12(水) 22:21:13 ID:S6dkd9p2
…………トッ……トッ……トッ……


彼女の足音が、再び聞こえてきた

本は、窓の近くに用意されている机で読むのかな?


彼女の姿が見えてきた

でも、その手には本はなかった


そして、彼女はいきなりこちらを見て、僕の方へと近づいてきた

もしかして、僕のことを読んでくれるの?

その期待に答えるかのように、彼女は僕の前に立った

18名無しの権兵衛殿:2014/02/13(木) 22:14:24 ID:f4lrBF4M
彼女の手が、僕の元へと向かってきた

ああ……僕もとうとう、読んでもらえるんだ………


でも、世の中、そうはうまくいかないらしい

彼女が手にとったのは、僕の隣の本

隣の本がないことにより、僕は少し斜めに倒れてしまった


更に、彼女はその本を

僕の目の前で読み始めたんだ

19名無しの権兵衛殿:2014/02/16(日) 11:54:58 ID:quDw3i.M
ペラッ………………ペラッ…………………


彼女はその本を読み進めていく

僕の、目の前で


ペラッ………………ペラッ…………………


本の中の世界に、引き込まれている

僕の、目の前で


ペラッ………………ペラッ…………………


彼女は、時間がたつことを忘れ、その本を読んでいる

僕の、目の前で




20名無しの権兵衛殿:2014/02/19(水) 22:17:54 ID:CYckChXg
……しばらくして、女性がはっとして、後ろに下がって彼女の持っている本があった本棚の上を見る

それを見て、彼女は僕の隣に本を戻した


彼女は、出入り口の扉の前に立つと、また、座っているだけのお爺さんの方を向く

そして、小さく、ありがとうございますと言い、この図書館を後にした




21名無しの権兵衛殿:2014/02/22(土) 11:18:20 ID:U.1BC3TM
………僕の隣には、先程まであの女性に読まれていた本がいる

別に、嫉妬してる訳じゃない

いずれ、僕たち本は誰かにしっかりと見てもらえる

今回は、それが僕ではなく、隣にいる君だっただけの話だ

だから、嫉妬するわけがないんだ


そうだ、いずれは僕も読まれるんだ

誰かが、僕の事を読んでくれるんだ


そう、信じて、僕たち本は待ち続けるんだ

22名無しの権兵衛殿:2014/02/23(日) 20:48:37 ID:fRWhELfM
それから何日間かは、いつものように誰も来なかった


お爺さんが、ギィギィ音のする椅子に座ったり立ったりしてる

いつもの、図書館の光景

どこも変わらず、いたって平凡な毎日


今日は、お爺さんも本を読んでいる

当然、お爺さんも本を読むことはある


お爺さんが本を読むときは、老眼鏡をかける

その、老眼鏡をかけているお爺さんが、僕は少しかっこいいと思ったりする

いつものお爺さんは、ぼーっとしている

だけど、老眼鏡をかけた時のお爺さんの目は、なんとなくしっかりしている

いつものお爺さんとは、なんとなく違うから、そう見えるのかな

23名無しの権兵衛殿:2014/02/28(金) 19:51:59 ID:ISN6q.i.
お爺さんが読む本は、いろいろある

青い色の本だったり、白い色の本だったり、緑色の本だったり………

とにかく、お爺さんはたくさんの本を読むんだ


とは言っても、お爺さんの読む本は、ギィギィ音のする椅子の隣の本棚にある本しか読まない

それでも、本がぎっしりと敷き詰められているから、いろいろな本を読んでいる

24名無しの権兵衛殿:2014/03/01(土) 11:58:58 ID:9cfkplEM
支援

25支援感謝:2014/03/01(土) 18:41:39 ID:IQCHS3jQ
お爺さんが読む、あのいろいろな本達には、一体どんなことが書かれているのだろう

数々の本に囲まれているなか、お爺さんだけが読む、あのいろいろな本達

多分、図書館の本は皆、あの本達に憧れたりするんじゃないかな


そういえば、お爺さんが本を最後まで読んだあと、またしばらくして同じ本を繰り返し読むことがあるんだ

あの本達の中でも、よりお爺さんに読まれる本

多分、あのいろいろな本達も、その本に憧れているんじゃないかな

26名無しの権兵衛殿:2014/03/05(水) 00:10:12 ID:NNn9eUIQ
ギィィ………


あ、またあの青年が来てくれた


この青年は、お爺さんの本を読む姿にも見慣れている

だから、お爺さんを見ても、別に驚きはしない


そして、またいつものように、あの本を手にとるのだ


そういえば、あの本も、この図書館中の本達からは憧れの的なんだろうな

いつも、同じ人に、ずっとずっと長い間、読み続けられているからね


相変わらず、別の本を読んでみようかと、向かいにある本どころか、隣の本にすら、興味を示さないね

27名無しの権兵衛殿:2014/03/15(土) 09:44:19 ID:uklXtvHQ
……あの赤い表紙の本の、隣にある本は、これまでどんな気持ちでいたんだろう

すぐ隣の本は読んでもらえるのに、自分はいつまでも読んでもらえない

僕は、この前の自分の気持ちを思い出した

あの気持ちを、二つの本はずっと噛み締めてきたのかな


そう思うと、自分はまだまだ小さいんだなと、感じた

28名無しの権兵衛殿:2014/03/30(日) 16:30:36 ID:qtDLj/I2
彼が帰る頃には、また赤い光が図書館の中に一線引いている

その一線が、図書館全体を少し赤く染めている

その一線が入り込む窓の方を見ると

そこに見える木々の枝をよく観察してみれば、小さなつぼみがところどころに見えた

点々とあるつぼみの中には、もうすぐで開きそうな物もあった


もうすぐ、春がくるんだな

29名無しの権兵衛殿:2014/06/01(日) 23:44:52 ID:e4nhrDbg
僕はこの図書館に、いつからいたのかというと、大分前からだということだけしか覚えていない


この図書館には、その時から来てくれる人がいる



ギィィ…


「…今年も来たよ、父さん」


見るからに社会人のその人は、家族と一緒に来る


女の人と、子供を一緒に連れてきて


あの子供、この前見たときよりも背が大分伸びたように見えるな……



お爺さんは、彼らを見ると立ち上がって、よぅきたなぁ、と細々とした声で出迎える

30名無しの権兵衛殿:2014/06/08(日) 14:29:59 ID:oCN4BPuM
この人達は、毎年このお爺さんに会いに来てくれる

社会人のその人の手には、手持ちバッグがぶらさがってある

「…あ、去年借りた本、返却します」

そう言うと、バッグから何冊かの本を取り出した

そして、一冊一冊の貸し出し表を確認していく

そうしている間も、お爺さん達の会話は進む

31名無しの権兵衛殿:2014/09/10(水) 19:09:26 ID:ePJG9LEU
「どうだ、最近は」

「うん、頑張ってるよ」


お爺さんは、毎年同じことを聞く

そして、社会人は毎年頑張ってると言う


彼は、お爺さんの息子なのだろう

彼がこの図書館に来るたびに、お爺さんはいつも少しだけ元気になる気がする

32名無しの権兵衛殿:2014/10/14(火) 11:21:06 ID:i4OLhMw6
「まぁ、立って話すのも何だし、あがってあがって」

「うん、そうさせてもらうよ」


イヤハヤ、スッカリオオキクナッタナァ

ハハハッ···


ギィィ···バタンッ


お爺さん達は、ドアの向こうにいってしまった

また、何も変わらない風景

いつもの、静かな図書館

そこは、何も喋らないけど、たくさんいるから

多分、皆寂しくない

ずっと昔から、きっとそう

だから、僕もずっと寂しくない

33名無しの権兵衛殿:2014/10/14(火) 11:23:30 ID:i4OLhMw6
sage忘れた、ごめん

34名無しの権兵衛殿:2014/10/15(水) 06:38:17 ID:VbTUswHU


さすがにここでsageを気にする人はいないと思うの

35名無しの権兵衛殿:2014/10/16(木) 02:45:01 ID:ZUbLpYV2
ふむ

36名無しの権兵衛殿:2014/10/16(木) 19:17:21 ID:YOHxyJKE
こんな糞スレageてんじゃねーよカス 放置してろ


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