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強すぎる宗教 death論教

1death論教:2015/01/11(日) 17:09:27 ID:2jSFvgYQ
death論教

2名無しさんの住居は極寒の地:2018/06/10(日) 14:23:09 ID:???
もう今から30年以上前、当時はまだ昭和という時代だった頃。
僕はとある地方都市に暮らす小学三年生だった。

僕の通っていた学校は、今でこそ地元産業の斜陽化と少子化で随分と児童は減ってしまったようだけど、当時は全校で千人近くの児童を擁するマンモス校だった。

僕はその頃、クラスメイトの井上晴花という女の子が好きだった。
彼女はロングヘアに切れ長の目でスラリとした背をした、当時の同級生の中では随分と大人びて見える美少女だった。

僕にとってはそれまでも、それこそ幼稚園の頃から気になる女の子というのは何人かいたように思う。
しかしそれらは今となっては、いや当時としても極めて幼い感情であり、とても恋と言えるようなものではなかった。
事実として僕はそれらの女の子の名前すら覚えていないのだから。僕にとっての初恋の人は、小学校三年生と四年生の時のクラスメイトであった井上晴花といってよいと思う。

3名無しさんの住居は極寒の地:2018/06/10(日) 14:25:32 ID:???
当時の僕は、まだ自分の気持ちを表現することについて、同級生と比べても未熟だったのかもしれない。
僕が晴花を好きだという事は、何故かあっという間にクラス中に知られることとなった。
勿論、その気持ちを皆の前で口にしたこともないし、その気持ちを晴花に伝えるということなど思いもよらぬことなのに。

ある時、こんな出来事があった。
クラスの悪ガキふたり組が、チビだとか、下唇が厚いクチビルオバケだとかいって、ある女の子を虐めていた。彼らはクラスで目立ちたいがために、いつも幼稚な悪戯や嫌がらせを繰り返していた。
僕は彼らに掴みかかった。別に正義感があったわけでも、その女の子に対して可哀想だとかいう感情があったわけでもない。僕は、晴花について普段から僕に嫌がらせをしてくる奴らが嫌いだった。
それと、正直、女の子の味方をしておけば、晴花の気を引けるのではないかという下心もあった。

決して体格の良くない、背も高いほうではない僕がひとりで立ち向かったところで、ふたり組の奴らに敵う筈がなかった。
たちまち床に押し倒され、馬乗りにされてしたたかに殴られた。
まるで格闘技の試合を楽しむかのような男子達の歓声、女子の悲鳴。冷ややかな視線と憐れみるような視線。

僕は教師の介入で止められるまで殴られ続けた。

4名無しさんの住居は極寒の地:2018/06/10(日) 14:26:46 ID:???
僕が晴花について奴らにされた嫌がらせは、極めて幼稚なものだったが、それによるダメージは僕にとって、そして晴花にとっても決して小さいものではなかったと思う。

ある時は、黒板に相合い傘に僕と晴花の名前を書くという、よくある嫌がらせをされた。
今となってはそれがどうしたという程度のものだが、それを見た晴花は号泣し、僕は何もできずにただ俯いて突っ立っていることしかできなかった。
周りからの非難の視線と声が僕に突き刺さる。まるで晴花を泣かせたのが僕であるかのように。

僕が晴花を好きなのが、悪いことなのだろうか。間違ったことなのだろうか。

落書きはいつの間にか誰かが消してしまった。だけども僕の心に『人を好きになるって何なんだ』という疑問が燻り続けた。

5名無しさんの住居は極寒の地:2018/06/10(日) 14:44:06 ID:???
こういった出来事があったから、僕はこの頃、クラスの男子からは孤立していた。
一方、女子の僕に対する態度は大きくふたつに別れていた。
ひとつは、女の子に対して優しくて、かっこいい男子という評価。実際、僕は今でも年齢より若く見られて、まあ、わりとモテる。
だから当時、男子の間では孤立していても、仲の良い女子はいたし、毎年バレンタインには二桁に届くくらいのチョコレートを貰っていた。一方で、そんな僕を女たらしといって毛嫌いする女子達もいた。

では、肝心の井上晴花は僕のことをどう思っていたか―

明らかに、彼女は僕を嫌っていた。僕が彼女を好きだということ、そのせいで僕がからかわれ、それが自分に飛び火してくること、自分自身もからかわれることを迷惑だと思っていることが、彼女の態度からありありと感じられた。
僕と彼女は学校生活で必要最小限な会話しかすることはなかった。

時代が平成に移り変わった年、僕達は五年生になり、悪ガキ共とも井上晴花とも別々のクラスになった。

6名無しさんの住居は極寒の地:2018/06/10(日) 14:46:51 ID:???
五年生になり、僕の友人関係は大きく変わった。
何人もの男子の友人ができ、放課後は誰かの家に集まってはゲームや漫画に興じる、三、四年生の頃にはなかった、普通の男子小学生の生活を送れるようになった。
それは六年生、そして中学一年生と何回かの友人関係の入れ替わりを経て、また興味の対象もエロ本やエロビデオへと移り変わりながら続いていった。オナニーを覚えたのも、精通が始まったのもこの頃だった。

中学生になった頃、井上晴花は学年一の美少女として男子の注目の的になっていた。
かつて僕をからかっていた奴らが、彼女について騒いでいる様子を、僕はまるで自分とは別世界のことのように、冷めた感覚で遣り過ごしていた。

僕には井上晴花に対する恋心はもうなかった。他に好きな女の子ができたわけではない。
彼女への恋心、それは子供の恋心だっただけのことだ。僕は彼女の上辺の部分しか見ていなかったことに気づいていたし、内面の部分を含めても、もう彼女への異性としての興味はなかった。知りたいとも思わなかった。

この数年間で異性に対する感覚はすっかり変わってしまっていた。ただ、かつて思い悩んだ『恋って何なんだ』という答えの出そうのない迷いだけが燻り続けていた。

あれから四半世紀以上が流れた今となっては、自分がどのように井上晴花が好きだったのか、彼女が好きという気持ちがどのようなものだったのか、もうすっかり忘れてしまった。
今はただ、彼女が好きだったという事実を覚えているだけになってしまった。

7名無しさんの住居は極寒の地:2018/06/10(日) 14:48:35 ID:???
阪神大震災、911テロ、そして東日本大震災―
何か衝撃的な出来事があった時、その日朝起きてから寝るまでの一日、どこで何をしていたか、まるでその日の記憶をまるごと冷凍保存したかのように、いつまでもありありと思い出せるような感覚は、誰しもあるのではないだろうか。

その日、朝起きた僕が目にしたのは、寝台列車の脱線事故を延々と報ずるテレビの映像だった。日常のものとは思えない列車事故の映像は、それ自体十分に衝撃的なものではあったが、それはその後訪れる―おそらくは一生記憶に残るかもしれない出会いの前触れに過ぎなかったのかもしれない。

その日は中学二年の始業式。

新学期特有のドキドキを感じながら僕は登校した。張り出されたクラス分け表を確認する。僕のクラスは8組だ。小学校もそうだったが、中学も全校生徒約千人のマンモス校で、市内の三つの小学校から生徒が集まる学校だった。

8組の教室に入る。座席表に従って指定の席に着席し、周囲を見渡した。

僕はひとりの女の子に目を奪われていた。
一瞬で恋に落ちた。

8名無しさんの住居は極寒の地:2018/06/10(日) 14:49:37 ID:???
一目惚れしてしまった、髪が長くて目がぱっちりとした可愛らしい少女―彼女の名前は桜木紗千子―

その日から僕の学校生活は彼女を中心に回ることになった。

彼女は別の小学校の出身で勿論それまでに僕との接点はない。さて、いかにして紗千子と関わりをもっていくか…
ここで目をつけたのが、僕の後ろの席にいる三浦という男子。彼は一年の時、紗千子と同じクラスだったということがわかった。
幸い、三浦は小学一年生の時に同じクラスで、やはりその時も僕の後ろの席だったから(新学年の席順は五十音順なので)彼とは真っ先に友達になった。
三浦との友人関係はそれほど長くは続かなかったが、あれから7年を経ての友情?の復活に、僕は感謝した。

三浦を介して、僕は少しずつ紗千子と会話をすることができるようになっていった。

9名無しさんの住居は極寒の地:2018/06/10(日) 15:07:36 ID:???
紗千子の少し舌足らずで可愛らしい声は、僕の耳を心地よくくすぐった。僕は彼女との会話の中から少しでも、ひとつでも多く彼女の断片を集めることに夢中になった。

可愛くて、ピアノが弾けて、勉強が出来て、明るくて、笑顔の素敵な彼女はまさに、典型的なクラスのマドンナだった。

当然のことだが、紗千子に好意を抱く男子生徒は僕だけではなかった。暫くたつと、紗千子を巡るライバル関係が徐々に確立されてきた。
明らかに彼女に好意を寄せる男子は、僕以外にふたり。
ひとりは三浦。一年の時紗千子とクラスメイトだった点でいえば、彼が一歩リードしているようにも見えるが、彼のちょっといい加減で調子に乗りやすい性格と、女性に対するデリカシーに欠けた物言い、はっきり言ってブサイクな顔面に背が低く小太りな体型―
紗千子と三浦の仲はまあ良くは見える。だが友達以上の関係はまず無いだろう。

もうひとりは加藤という男。背が高い点、三浦よりは幾分マシな顔。あとは三浦とどっこいどっこいなちゃらんぽらんな性格。彼も三浦を介すようにして紗千子と親しくなろうとしていることが、手に取るようにわかった、だが、まだまだ彼女との間の壁はまだまだ低くはないようだ。

10名無しさんの住居は極寒の地:2018/06/10(日) 15:08:44 ID:???
僕はどうだろうか。はっきり言って容姿では三浦には圧勝だし、加藤にも勝っているだろう。だが、積極性、というか図々しさでは、彼らにはとても及ばない。
少しでも紗千子と親しくなりたい、彼女と近づきたいという思いは強くても、どうしても彼らより一歩退いた位置から踏み出すことができなかった。
それは小学生の時から心の奥底で燻っている『恋って何なんだ』という迷いによるものなのかどうかはわからない。ただ、傷つきたくないという恐怖心は、僕には間違いなくあった。

紗千子は、僕にも親しく接してくれた。だが、それは他の誰とも変わらない親しさだった。彼女は皆に平等に接する女の子だった。

もう、僕にとって紗千子は特別な存在だった。僕はいつも彼女との未来を思い浮かべていた。それはまだ、全く具体性のない空虚な妄想でしかないこともわかっていた。

彼女のほうから僕に告白してくるなんて、たぶんないだろう。
僕のほうから動き出さなきゃならないことは、わかっている。

僕はこれから、前に踏み出すことができるだろうか…

11名無しさんの住居は極寒の地:2018/06/10(日) 15:09:51 ID:???
中学二年の時、僕にとって初めての経験がひとつ、あった。

ある日、たまたま僕がひとりで廊下にいると、同じクラスのひとりの女子が僕のところにやって来て―

「好きです。つきあってください」

…はぁ?

この女はいったい何を言っているのだろうか。一瞬では理解できなかった。
たしか青山とかいったっけ。しばし目の前のギョロ目で唇の厚い女を見つめる。
はっきり言って僕のタイプではない。今思い返すと、大人になってバッチリ化粧したら、今でいうと滝沢カレンみたいなモデル顔になっているかもしれないようにも思うが、ともかく僕のタイプではなかった。
何より、僕は青山とはほとんど面識がなかった。別の中学出身で、この年同じクラスになるまで勿論青山のことは知らなかった。同じクラスになってからも、彼女と話したことは、たぶんなかったように思う。
地味で、普段ほとんど発言しない。休み時間には地味目グループ数人で教室の端で小声で話しているような、間違いなく、この一件がなければまったく記憶に残らなかったであろう女子。

青山が僕を本気で好きなのか、それとも冗談で言ってるのかはわからないけど、いずれにせよ、僕には好きな女の子がいる。「ごめん。無理」以外に返事のしようがなかった。
青山は「わかりました」と言うと、教室に戻っていった。

数日後、青山の仲間らしきブスにつかまり、なぜ断ったのかと詰問された。そんな事言われても困る、知るかよとその場を足早に立ち去った。

その後青山とは何もなかったが、次のクラス替えで離れるまで、多少は彼女の視線を意識せざるをえなかった。

12名無しさんの住居は極寒の地:2018/06/10(日) 15:11:12 ID:???
桜木紗千子を巡っての、三浦と加藤との駆け引きは続いていた。
僕は依然、彼らから一歩引いた所から紗千子への想いを募らせていた。三浦や加藤が僕を恋のライバルと認識していたかはわからない。僕たちは表面上、友人としての関係を崩すことはなかった。端から見たら、僕ら三人のグループのそばに、たまたまもう一人の友人として紗千子がいる、というようにしか見えなかったろう。

結局、僕らの中から紗千子を射止める者は現れないまま1年が過ぎた。結局、紗千子に想いを伝えることはできなかった。三年になったら、たぶん紗千子とは離ればなれになるだろう。

小学生の頃の恋とは違うんだ。ただ好きだというだけの感情じゃない。俺がしているのは、大人の恋なんだ。彼女との未来も想像できるし、彼女とのセックスも想像できる。何より、彼女の心が欲しいと強くつよく想う。

言葉にもできない癖に、そんな空虚な文言を並べることしかできない子どもだったのだと、今ならばわかる。

三学期の終業式、僕は彼女になんの言葉もかけることもできなかった。大人になりきれなかった僕は、ひどく暗い気持ちで家路についた。

13名無しさんの住居は極寒の地:2018/06/10(日) 15:12:48 ID:???
中学三年の始業式を迎えた。
1年前の鮮烈な出会いの記憶が、まだまだ僕の脳裏に鮮かなものとして残っている。できるなら、叶うならあの日の出会いをもう一度―そんな虫のいいことを思いながら、あるいは諦めのような気持ちも感じながら、僕は登校した。

学校に到着し、クラス分けの表を確認する。僕は2組だった。そのまま、目線を2組の女子の名簿に移す。

『えっ…あ…あった!』

紛れもなく、そこに桜木紗千子の名前があった。確率8分の1。この時の喜びはそれまでの何物にも例えようのないものだった。また彼女とクラスメイトとして1年間を過ごすことができる。今度こそ、今度こそ僕は彼女に想いを伝えられる―

僕はどきどきしながら、教室への階段を昇っていった。教室の扉を開く。いた!後ろのほうの席に座る紗千子の姿が。
「ようっ!」軽く手を上げて彼女に声をかける。平静を装ってはいるが、心臓の鼓動は止まらない。
「あっ、松原くん!また一緒になったね!」久しぶりに(実際は2週間くらいしか経っていないはずなんだけど)耳にする彼女の声。ああ、なんて心地のよい響きなんだろう。彼女の声が、僕の中で何度も、なんどもこだました。

席に座り、紗千子のほうを見やる。1年前と変わらない光景が、1年前と同じ気持ちが、そこにあった。

14名無しさんの住居は極寒の地:2018/06/10(日) 15:30:26 ID:???
1年前、三浦を介してようやく話せていた紗千子。今、このクラスにはライバルだった三浦も加藤もいない。そしてもう僕と紗千子には1年来の友人という実績がある。

勿論、三年になるとお互いに新しい人間関係が生まれてくる。1年前の僕がそうだったように、クラスのマドンナである紗千子に注目する男子が新たに現れるのは、当然のことだ。彼らは続々と、二年の時からのクラスメイトである僕に、彼女の情報を求めてきた。

僕にとって彼らはライバル視するほどの存在ではなかった。彼らに自分の気持ちを悟られないよう言葉を選びながら、話しても差し支えない程度の内容を教えることに抵抗はなかった。といっても、僕だって彼女に関して大したことを知っているわけじゃなかったけれど。

それよりも、紗千子のほうに大きな人間関係の変化が訪れてきてていた。
二年の頃は、特にグループに属さず、クラスのほとんどと分け隔てなく交流を持っていた彼女が、いつもふたりの女子とグループを組み、固まって過ごすようになっていったのだ。
その光景はまるでお姫様とその取り巻きのようだった。僕と彼女の間に少しずつ壁ができつつあるのを感じた。

15名無しさんの住居は極寒の地:2018/06/10(日) 15:31:49 ID:???
紗千子自信にはお姫様気取りな気持ちなど微塵もなかったはずだし、彼女の僕に対する態度そのものは、それまでと何ら変わりはなかったのだけども、そんなこととは関係なく僕達の周囲は、僕と彼女の間に少しずつ亀裂を作るかのように勝手に巡っていた。

僕が紗千子と話していると常に、清水という女が間に割って入ってくるようになった。それはあからさまな妨害だった。清水は明らかに僕を敵視している。他の男子への態度とは全く違う、清水の僕に対する視線は怨みのこもった、ぞっとするほど冷たいものだった。
それがしばらくの間続き、次第に紗千子も僕と距離を取るようになっていった。彼女達はグループ内で内向してゆき、他の何者も寄せ付けない雰囲気を高めていった。

そのうちにクラスのどこからともなく、紗千子と清水はレズである、という噂がたちはじめた。誰かが「お前らレズだろー」と茶化すと、否定も肯定もせずニヤニヤ笑う彼女達。
たとえそれが冗談であろうと、そんな状況が、僕にとって愉快なはずはなかった。

後から思えば、この噂は決して的外れなものではなかったのかもしれない。確率的にクラスにひとりは同性愛者や性同一性障害者がいてもおかしくないというし、清水が紗千子に恋心を抱き、そして僕を恋敵と認識して紗千子との仲を妨害しようとしてきたということは、あり得ない話ではないのかもしれない。

16名無しさんの住居は極寒の地:2018/06/10(日) 15:34:00 ID:???
紗千子との間に溝ができてから、僕は休憩時間を男の友人や、小学生時代から仲の良かった女子と過ごすことが多くなった。

その日は小学三、四年の時クラスメイトだった石川優子と休憩時間を過ごしていた。といっても、石川が一方的に喋るのを生返事で聞き流しながら、僕は窓の外をボーッと眺めていた。

石川は、クラスで一番背が小さく、童顔で、かわいくないことはないけれど、一言でいうと『ちんちくりん』である。少なくとも女としてどうこういうレベルじゃない。はっきり言ってガキだ。
毎年バレンタインにチョコをくれる女子のひとりだったから、放課後や休日に遊ぶような仲ではないけれど、まあ友達といえる間柄だった。

「ねえ、松原くんって好きな人いるの?」

石川が唐突に問いかけてきた。何言ってんだこいつは。僕は面倒臭えなという態度を隠さずに「いねーよ」と返す。

「好きな人、いるんでしょ?ねえ、誰?桜木さん?桜木さんが好きなんでしょ?」

図星を突かれて、正直狼狽えたんだと思う。「はあ?違げえよバカ!」
「あーやっぱりね。可愛いもんねー桜木さん」とニヤつく石川。
こいつは小学生時代、僕に好きな女の子がいて、それに纏わるいろんな出来事があったことを知っている。だから僕が紗千子を好きだと知っても、それを言いふらしたりすることはないだろうけど、今まで他人には悟られないようにしてきたことを、石川ごときに見破られてしまっていたことに戸惑いを隠せなかった。

17名無しさんの住居は極寒の地:2018/06/10(日) 15:35:06 ID:???
女々しくも、相変わらず紗千子への想いを募らせていた僕だったが、そもそも僕達は中学三年生、すなわち受験生なのだ。
さすがにいつ結論がでるかわからない恋にばかりうつつを抜かしているわけにもいかない。まずは自分の進路を確立すべきだろう。紗千子だって進路を見据えて必死な時期のはずだ。

きっと成績優秀な彼女だから、高校もレベルの高い所を目指すだろう。
僕はどうするべきだろうか。僕の成績は中の上くらいで、今の状態ではちょっと彼女のレベルには届かないだろう。
でも、僕は、今の彼女との煮え切らない現状を何とかしたいんだ。何としてでも突破口を開きたいんだ。やってできないことはないはずだ。

よし。紗千子と同じ高校を目指すことに決めた。中学の間に彼女に告白することはたぶんできないだろう。だったら、彼女と同じ高校に行って、そこで僕は彼女に、想いを伝えるんだ―

その日以来、僕は必死に勉強した。成績も上がっていった。
年が明けた。この時期になるとクラスの雰囲気もすっかり受験モードだ。休み時間に雑談するような光景も見られなくなってきた。

もうすぐ春が来る。もうすぐ―

18名無しさんの住居は極寒の地:2018/06/10(日) 15:37:17 ID:???
結論から言うと、紗千子と一緒に受けた第一志望校には受からなかった。
ほかに紗千子も受けていた第二、第三志望校には合格したから、僕は第二志望の私立校に進むことになった。紗千子が第一志望校に受かったかは、聞けなかった。

卒業式までの数日間、僕は紗千子のことはほとんど何も考えずに過ごした。
最後の日に告白しよう、という気持ちも起こらなかった。頭の中には言わなきゃ後悔するぞという気持ちはあるのに、それでもいいやという気持ちがそれに蓋をしてしまっていた。

俺はいったいどうしちまったんだろう―

卒業式の日が来た。
僕は、紗千子に「じゃあ、元気でね」という一言しか言えなかった。
紗千子は「うん、元気でね」と返した。

それが何ヵ月かぶりに交わした紗千子との言葉。たったそれだけだった。中学時代最後の、もしかしたら、これがほんとうに最後になるかもしれない言葉なのに。

19名無しさんの住居は極寒の地:2018/06/10(日) 15:55:17 ID:???
僕が進んだ私立校は、自宅最寄り駅から電車で30分ほどの所にあった。

入学式の日。僕の目の前に、二度目の奇跡が―

起こるわけがなかった。僕は紗千子のいない学校に電車で通った。時々駅や車内で中学時代の同級生に出会うこともあった。だが、紗千子に逢うことはなかった。彼女の進んだ高校も、僕は知らなかった。

逢えなければ想いは募るのか、それとも徐々に彼女のことを忘れてゆくのか―

高校生活は忙しい。授業に、部活に、新しくできた友人との遊びにと、とにかく忙しい。
僕は心にぽっかり空いた隙間を無理矢理にでも埋めるように、毎日を過ごした。

そして、夏が来た。

20名無しさんの住居は極寒の地:2018/06/10(日) 15:56:46 ID:???
夏休みに入ってすぐ、中三のときのクラスメイトの辻本晶子が電話してきた。
辻本は小学二年から四年までと中一、中三で同じクラスだった。小、中の9年間一度も同じクラスになったことのない同級生もいる一方、辻本のように5年間も一緒だった奴もまた珍しく、人懐っこく明るい性格もあって腐れ縁のような仲だった。
もっとも、辻本はぽっちゃり、を通り越し、はっきり言ってデブだから、失礼ながら女性としてどうこうは無い。ま、痩せれば結構可愛くなるんじゃね?とでも言っておこうか。

辻本からの電話は、カラオケの誘いだった。「2組のメンバーで遊ぼうよ。女子3人行くから松原も男子ふたり誘ってきてよ」
まあ、いいかと誘いを受けて電話を切る。あとふたり来るという女子は誰だろう。
同級生の女子といえば、やはり浮かぶのは紗千子の顔だ。でも彼女は来ないだろう。辻本と紗千子は特に仲がよかった訳でもないし。まあ、普通にあの地味なメンバーだよな。

21名無しさんの住居は極寒の地:2018/06/10(日) 15:58:10 ID:???
約束の日、まず男子メンバーと合流してから、女子との待ち合わせ場所に向かった。
男子メンバーは高橋と植村のふたり。まあまあノリが良くて、辻本たちとも仲の良い奴らを適当に厳選して誘った。
高橋に電話したら「女子は誰が来る?」「真央ちゃんあたり来ると思うよ」と答えたら即答で参加決定。
真央ちゃん―広沢真央は一見地味でおとなしいメガネっ子だけど、クラスでは桜木紗千子にも劣らない美人として男子の間で密かな人気だった。

待ち合わせの場所に着くと、小柄な女の子ふたりと豚一匹、予想通りのメンバーが待っていた。彼女達との4ヶ月ぶりの再会にひとしきり話に花を咲かせてから、6人でカラオケ店に向かった。
俺の横には石川優子―クラスで一番小さな女の子―が並んで歩いていた。高校に入学してから髪を伸ばしはじめたのか、小学時代以来のボブが、いい感じのミディアムになっていた。それに、可愛らしいブラウスとスカート姿。はっきり言って、俺好みのファッションだ。あのいも臭いガキが随分と大人っぽくなったなぁーと感心してしまった。
よし、ちょっとリップサービスしてやるか。


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