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ななくしゃ
:2017/12/24(日) 20:10:55 ID:fqwjHBzY0
オルガン II
11/29/2017
あんなに眺めていた窓は、くもっていたんじゃない。あれはすりガラスで、中なんてもとから見えない仕組みだった。
大きいものを作りたいって人ほど慎ましくまとまって、小さくやろうとする人ほど変におかしな偉大さをまとってしまったりする。計画を見通しが立たない時期にやってしまおうとすると、こういう自然な不自然が起こる。畏怖と驚嘆はいい名前だったと思う。古臭くて、誰もが考えつくような安心感がそこにはある。僕はイヤフォンを耳から外す。おいしくないコーヒーをすする。キャラメルが焦げる香りがする。僕のコーヒーにも、キャラメルがのっかっているはずなのに、何の匂いもしなかった。こんな寒いのに、冷たくてクリームののったコーヒーを頼むなんてアメリカ的だね、と彼は言った。僕はイヤフォンの色を見ていた。銀色の、削り出された金属の質感。彼の耳穴を離れて時間の立ったそれは、氷のように冷たかった。そこで繰り返される彼の音楽もまた、温かくはなかった。顔がないんだ、この人は。顔がないから、僕はうまく今を体験することができない。少しだけ雪がちらつく外を眺めながら、彼の行きつけのカフェで匂いのないコーヒーを飲んでいる。彼はそれをもう飲み終えている。これは、僕の内臓だ。あの音は、ぶちまけられた血の床の上をすべる靴底が鳴らしている。靴と床が愛し合うのに、血が邪魔だ。
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