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川 ゚ -゚)子守旅のようです
83
:
同志名無しさん
:2015/11/04(水) 18:50:14 ID:QWuTePfQ0
爪'ー`)y‐「SMも色々あんだよ。だーいじょぶだって親分、死なない程度に俺が加減してやるから」
川;` ゥ´)「命に関わるのかよ! そしてお前が相手なのかよ!」
£°ゞ°)「フォックスさんの解体技術が評価されれば、劇場で短期バイトするだけでがっぽがぽですよ」
川*` ゥ´)「おい解体っつったろ。SMショーじゃないじゃん解体ショーじゃん。私ゃマグロか」
爪'ー`)y‐「おいおい、マグロじゃ需要下がっちまうよ親分」HAHAHA
川*` ゥ´)「……?」
£°ゞ°)「下ネタ通じにくいんですよこの人」
爪'ー`)y‐「マジかよ親分やったな、解体前に色々遊んでもらえるネタが出来たぞ。無知は好ましい」
川*` ゥ´)「何か嫌な話をしてるのは分かった……」
84
:
同志名無しさん
:2015/11/04(水) 18:51:00 ID:QWuTePfQ0
£°ゞ°)「で、どうします? ショーやるんですか?」
川;` ゥ´)「やらねーよそんな悪魔の隠し芸大会!!」
爪'ー`)y‐「たとえが意味わかんねえよ」
川;´ ゥ`)「ロミスは何か案ないか? 痛いの無しで……」
£°ゞ°)「このお金を整形費用に当てれば、SMじゃないショーで一財産稼げるのでは?」
川;´ ゥ`)「お前らに訊いた私が馬鹿だったよ〜〜〜〜〜」
爪'ー`)y‐「この時代に完璧な手術できる奴は少ねえだろ」
川;´ ゥ`)「医者の稀少性の問題じゃねえんだよ〜〜〜〜〜」
85
:
同志名無しさん
:2015/11/04(水) 18:52:53 ID:QWuTePfQ0
£°ゞ°)「医者といえば、ここ数年で新しい病気が増えて、新薬も増えてるそうですよ。
治験って言うんですか、親分が実験台になるのはどうです」
川;´ ゥ`)「う、うーん、時間かかりそうだし、ちょっと恐いし……」
£°ゞ°)「あるいは血を売るというのも」
川;´ ゥ`)「でも大した金額にはならなそうな……」
爪'ー`)y‐「おう、じゃあ内臓売るか?」
川#` ゥ´)「いい加減にしろボケ!!!!!
何で私だけが文字通り身を削る方針で進めてんだ!! お前らは何かしないのかよ!」
爪'ー`)y‐「いやあ、俺らは普段から護衛として働いてるもん」
£°ゞ°)「そうですよ」
川#` ゥ´)「お前らのどこが護衛だ!
護衛は毎朝主人の顔面踏んで起こしたりしねえの!」
86
:
同志名無しさん
:2015/11/04(水) 18:53:33 ID:QWuTePfQ0
川#` ゥ´)「ちっくしょ、もうやだ! お前らといる方が危険感じるわ!
クビだクビ! この金持って組織に帰れ!!」
爪'ー`)y‐「あー? いいの?」
£°ゞ°)「またそんなこと言って。大丈夫なんですか?」
川*` ゥ´)「……な、何だよ意味深な……」
爪'ー`)y‐「親分、色んな悪党ども潰して回ってるから目ェつけられてるぞ?」
川;` ゥ´)「ぴゃっ!?」
£°ゞ°)「僕らがいなくなったら、その日の内に親分ゲームオーバーですよ」
川;` ゥ´)「う、嘘だ嘘だっ。それに直接手を下してるのはお前らだし、」
爪'ー`)y‐「ちゃんと毎回親分が首謀者であることはアピールしてるもの」
川;` ゥ´)「うわああああああああああ
何してくれてんだよお!!」
87
:
同志名無しさん
:2015/11/04(水) 18:54:27 ID:QWuTePfQ0
£°ゞ°)「親分、大悪党になりたいんでしょう?
なら本望じゃないですか」
川;` ゥ´)「そっ! ……れは……そりゃ……まあ……」ゴニョゴニョ
爪'ー`)y‐「善人だったせいで死んじまった親父さんのようにはなりたくないんだろ?
でも今のままじゃあ善人でも悪人でもないまま無意味に死んじまうなあ」ケラケラ
川;` ゥ´)「う……」
£°ゞ°)「死んだ方がマシって目に遭う可能性の方が高いですよ」
川;` ゥ´)「ひえっ」
爪'ー`)y‐「違ェねえ。マジで解体ショーコースじゃねえの」ゲラゲラ
£°ゞ°)「まあでも親分が選んだ道ですから」
爪'ー`)y‐「だよな! じゃあな親分、1秒でも早く死ねるよう祈ってるぜ」
£°ゞ°)「この金額、お給料としては多いですよね。
帰る前に女の1人2人買っていきますか」
爪'ー`)y‐「おっいいねえ、むちむちの美女買おうぜ」
川*; ゥ;)「わーん待ってえ! 1人にしないでー!」ピャーン
爪'ー`)y‐「あはははは鼻水」
88
:
同志名無しさん
:2015/11/04(水) 18:55:22 ID:QWuTePfQ0
川*; ゥ;)「やだやだ1人になるの恐いよお化粧覚えるしもっと肉付けるから守って」ガシッ
£°ゞ°)「はいはい、まだ契約は切れてないので親分が望むなら一緒にいますよ、仕方なく」
爪'ー`)y‐「ひっつくな汚れる」
川*; ゥ;) ピャーンピャーン
£°ゞ°)「はあ愉快愉快」
爪'ー`)y‐「こんなイジり甲斐あるのに今までよく無事だったよ親分」
£°ゞ°)「と、無駄話で時間を稼いでいる間に、さっそく仇討ちに来た輩があんなところに」
爪'ー`)y‐「よーし、もう一稼ぎすっかあ。
離れんなよ親分、死ぬぞ」
川*; ゥ;)「ひっつくなっつったり離れんなっつったりどっちだよお」
89
:
同志名無しさん
:2015/11/04(水) 18:57:15 ID:QWuTePfQ0
£°ゞ°)「しかし、こうして悪党狩りをしている我々を悪人扱いとは心外です」
爪'ー`)y‐「そうだよなあ、寧ろヒーローじゃん」
川*; ゥ;)「ヒーローは道端でぶつかった子供に煙草近付けて脅したりしねえんだよクズ!!!!!
何であのとき一番無関係だった私が一番謝罪する羽目になったのか未だに解せねえ!!」
爪'ー`)y‐「煙草近付けただけで、押しつけたわけじゃねえのにあの親怒りすぎだよな」
£°ゞ°)「先にぶつかってきたの向こうですのにね。
まあそれはともかく、今は目の前のチンピラをどうにかしませんと」
川*; ゥ;)「ひぐうう……こいつらと一緒にいるのも離れるのも恐いよお……誰か助けてええ……」
#
90
:
同志名無しさん
:2015/11/04(水) 18:58:05 ID:QWuTePfQ0
(-@∀@)「あのー、先生」
( ´∀`)「ん? 何モナ?」
(-@∀@)「15歳の女の子に、フォックスとロミスなんか派遣して本当に大丈夫だったんですかね……?」
( ´∀`)「あれはあの3人でセットにしておいた方が、それぞれの抑止力になって
飛び抜けた悪事に手を染めることはないと思うモナ」
(-@∀@)「はあ、そんなもんですかね」
( ´∀`)「そんなもんだモナ」
(-@∀@)「じゃあ逆にあの2人を雇っていってくれてありがたいのかもしれませんね」
( ´∀`)「そうモナねえ」
(-@∀@)「しかしこれは人身御供というやつでは」
( ´∀`)「はははなにをばかなことを」
(-@∀@)「こういう点では、やはり先生が一番お人が悪い」
3:悪くなりたい少女
91
:
同志名無しさん
:2015/11/04(水) 18:58:30 ID:QWuTePfQ0
extra:平和な人々 終
92
:
同志名無しさん
:2015/11/04(水) 19:01:59 ID:QWuTePfQ0
今日はここまで。番外編というかおまけというかそんな感じでした
>>53
は地味にミスしてるので無視してください
番外編
>>32
>>81
逆なんです!
93
:
同志名無しさん
:2015/11/04(水) 19:15:24 ID:Ezcew9p20
おつ
飛び込んで消化〜のくだりでびびった
94
:
同志名無しさん
:2015/11/04(水) 19:20:06 ID:QWuTePfQ0
あっ消化じゃなくて消火だ……
95
:
同志名無しさん
:2015/11/04(水) 19:48:24 ID:txLEXfsk0
乙なんです!
96
:
同志名無しさん
:2015/11/04(水) 20:37:56 ID:QWuTePfQ0
あああしかも訂正したはずの
>>54
にもミスがある
正しくは「落ち着きのない大人達」です
度重なる誤字脱字ごめんなさい 探せばまだありそうだから探さないでください
97
:
同志名無しさん
:2015/11/04(水) 23:19:43 ID:9/gGjQ9M0
乙乙!面白かった
ピャー子かわいいな
98
:
同志名無しさん
:2015/11/06(金) 13:50:38 ID:nSC5o53I0
おつ!
悪い奴らの掛け合い、声出して笑ったわwww
番外編おかわりしたいわ(チラッ
99
:
同志名無しさん
:2015/11/06(金) 18:55:22 ID:1XpycScc0
>>98
悪い性格がでてんぞ糞ブタ
100
:
同志名無しさん
:2015/11/18(水) 13:21:21 ID:KWjBjX7M0
今更だけどドクオのくだり、暴動の裏側を知ったら横堀は何を思うんだろうか
101
:
同志名無しさん
:2015/11/18(水) 16:36:48 ID:V0mkNu6E0
>>100
横堀はとにもかくにも自分の判断ミス(港の確認やら手の修理やら何やら)が第一にあると認識しているので、
ドクオやブーンやフィレンクトのことは、数ある要因の一部でしかない、と
どこかの教会の片隅で考えると思います
102
:
同志名無しさん
:2015/11/19(木) 08:51:06 ID:VrK1Ewsk0
そんなことないって言い切れないのが悲しいな
横堀に元気になって欲しい
103
:
同志名無しさん
:2015/11/19(木) 17:35:19 ID:RsVk9WSw0
乙 次回最終回か、番外編含めてもっと見ていたかったな
104
:
同志名無しさん
:2015/11/19(木) 19:53:24 ID:Nr0BT2f20
>>92
トソン護衛じゃないの?
105
:
同志名無しさん
:2015/11/19(木) 19:58:01 ID:DKz5raJI0
最後のとこで分かるじゃないか、護衛はミセリの方なんだよ
で、トソンは元々使用人で使われる側だから、人を雇って護衛させるっていう使う立場に慣れないんだ
ミスリードとか叙述トリックとかそこら
106
:
同志名無しさん
:2015/11/26(木) 07:33:21 ID:DOZDzSFU0
すんごい前の作品だけど、レモンパイを食べるようですってのあったな
107
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:19:09 ID:XtofEtDE0
川 ゚ -゚)「……」
ぽたり、血が落ちた。
私のものではない。
(;ФωФ)「ひいっ……!」
切りつけられた腕を押さえ、ロマネスクは──私の「元」雇い主は、
ひいひい息を引き攣らせながら後退する。
しかし背後に壁があるため、それ以上逃げられない。
ノハ;⊿;)「死ね! 死ね!」
包丁を持ち、ロマネスクに追い縋る女も、ひいひい嗚咽している。
その後ろで、各自適当な凶器を持った男女がロマネスクを睨んでいた。
前にも後ろにも逃げ場がない。
108
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:20:14 ID:XtofEtDE0
川 ゚ -゚)
私は──ロマネスクの「元」護衛は、それを、じっと見ている。
どこぞの廃墟の窓から、路地裏の彼らを見下ろしている。
くるり、右手のナイフを回す。
夕日の金色の光を反射させる刃と、眼下の彼らを見比べ、
ナイフをベルトに戻した。
ガラスの抜けきった、歪んだ窓枠に頬杖をついて、路地裏をただ眺める。
川 ゚ -゚) …〜♪
もはや口に馴染んでしまった子守唄を舌の上で転がした。
彼らには届かないほど、小さな声で。
ロマネスクの悲鳴を聞いている内、何故だか1年前の──
旅の始まりを、思い出していた。
#
109
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:20:34 ID:XtofEtDE0
( ФωФ)「──名前は何という」
川 ゚ -゚)「クール」
偉そうな男だ、というのが最初の印象。
腕を組み、ふんぞり返り、私をじろじろ眺め回す目付きも態度も気に入らなかった。
私より20は歳上であろうかと目算を立てつつ、男の顔を窺う。
川 ゚ -゚)「あなたは、スギウラさんだな。よろしく」
差し出した手を無視されて、やっぱり気に入らないなと思った。
そのように対面を果たした後は、組織のロビーで業務の確認。
概ね普通の護衛任務だ。
先日発表されたばかりの新政府案。それに向け、寄り道しつつ中央へ行きたいという。
110
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:21:18 ID:XtofEtDE0
( ФωФ)「ここの護衛はそこそこ出来がいいと聞いたのである。
決して安くはない金を払うのだから、ちゃんと働いてもらうぞ」
川 ゚ -゚)「もちろん」
( ФωФ)「まあ貴様は所詮、中央に着くまでの間に合わせだがな。せいぜい盾になれ」
再三言うが、気に入らない。
私は嘘が苦手──というか、良くも悪くも素直だと皆から言われるような性分であるため、
彼に対する感情も、もしかしたら態度に出ていたかもしれない。
実際、ロマネスクがトイレに行くと言って席を外した途端、
傍らで契約書の確認をしていた「受付」が苦笑した。
(-@∀@)「クール。彼は君の主人になるんだから、もっと丁寧な対応をしないと」
川 ゚ -゚)「分かっているが、あの人と旅をするのかと思うと、既に疲れたような気分になる……」
言葉や仕草の端々で、どうにも合わない人間であると逐一思わされるのだ。
こればかりは何ともならない。
受付は一度唸り、そうだ、と人差し指を立てた。
111
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:21:47 ID:XtofEtDE0
(-@∀@)「迷子のお守りをするんだと思うのはどうだい?
あやしながら家に連れてってやるだけだと思えば、気が楽になるかも」
川 ゚ -゚)「……あなたも結構言うなあ」
(-@∀@)「『先生』の相手をしていると、時々、子守をしている気分になるんだ。
特にデルタさんがいないときなんかは」
その言葉に思わず吹き出してしまう。
ひとしきり笑うと、いくらか楽になった。
.
112
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:22:20 ID:XtofEtDE0
( ´∀`)「──そろそろ出発するモナ?」
昼を回った頃。
私達が立ち上がると、どこからともなく先生が現れた。
受付の言葉を思い出してしまい、上がりそうになる口角を必死に抑える。
──奴隷商を殺して逃げ出し、行き場もなく彷徨っていた私を拾ってくれた恩人。
時に優しく時に厳しいこの人は、もともと貴族だったからなのか、
たまに自由すぎる言動をとっては側近のデルタさんや受付係に窘められている。
育ての親だと先生を敬愛する横堀さえも、彼を諫めることがあった。
そういったところが子供のようだと受付は言いたいのだろう。正直同意する。
けれど自由だからこそ、こんな、護衛を派遣する組織などを立ち上げられたのだ。
素直に尊敬しているし、憧れもする。
113
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:22:46 ID:XtofEtDE0
( ´∀`)「気を付けて」
川 ゚ -゚)「はい」
見送りの言葉は、いつもそれだけだ。誰に対しても。
怪我をするなとか、死ぬなとか、そういうところの決定権は既に雇い主に移っているから。
先生は最低限の挨拶で済ませる。
そのくせ普通に心配するような表情を浮かべるので、
薄情とも言い切れないのだ。
#
114
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:23:21 ID:XtofEtDE0
初日は2人での行動に慣れるため街をぶらついて、日が暮れてから宿に一泊した。
翌朝に馬車で他所の町へ行くと決めてある。
歌の得意な人間を、という理由で雇った割に、
それらしい仕事を与えられなかったのが不思議だった。
( ФωФ)「……」
──夜、ロマネスクは寝台の中央で胡座をかくと、
私へ意味ありげな目を向けてきた。
若い女を雇っていく男には(その逆も)、
それなりの目的があるものと思え──度々言い聞かせられてきたこと。
もちろん全員がそうではないだろうが、可能性がある限りは、覚悟をしておかねばならない。
2年前、どこぞの富豪の息子に雇われていった友人が、
そいつの子を身籠った状態で突き返されてきた。
護衛らしい仕事もなく、ただ慰み者にされたらしい。
先生は黙って彼女を抱き締め、すまないと震える声で漏らした。
彼女は、覚悟していたことだからと笑った。泣いていた。
115
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:24:17 ID:XtofEtDE0
鞄の中の避妊薬を布越しに確かめつつ、ロマネスクへ視線を返す。
しばらく見つめ合って(いや、睨み合って)いると、
焦れたようにロマネスクがシーツを叩いた。
( ФωФ)「来い」
川 ゚ -゚)「……はい」
どう接近すればいいのか悩み、とりあえず、
膝を突き合わす形で座った。
寝台の上で俯き気味に向かい合う男女。まるで初夜だ。
気まずくて目を逸らす。
丁度そのとき、疑問が首を擡げた。
たしかロマネスクは、護衛に性別も年齢も指定しなかった。特別、女が欲しかったわけではない筈。
咳払いの声が聞こえる。
私が顔を上げると──突然ロマネスクが、歌い出した。
116
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:24:40 ID:XtofEtDE0
川;゚ -゚)「え」
少し気恥ずかしそうに歌うロマネスクも、私から目を逸らしていた。
子守唄だろうか。
歌詞と曲調からして、そのようだが。
区切りのいいところで声を切ったロマネスクが、ようやくこちらを見る。
( ФωФ)「ヴィプ国の子守唄だ。これを覚えろ。覚えて、歌え」
川 ゚ -゚)「……子守唄を?」
( ФωФ)「うむ」
川 ゚ -゚)「あなたに?」
( ФωФ)「うむ」
でないと眠れないのだ──
また視線を逸らしながら、そう続けた。
117
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:25:23 ID:XtofEtDE0
川 ゚ -゚)「それだけでいいのか」
思わず訊ねる。
添い寝はいらないのかと付け足してしまった辺り、私も多少困惑していたのだろう。
それを揶揄と取ったか、若干憤慨しながら、歌うだけでいいとロマネスクが答えた。
脱力。
変な人だ。
──その夜は、子守唄を覚えるまでロマネスクに歌ってもらった。
118
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:25:46 ID:XtofEtDE0
10:ふたり
119
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:26:13 ID:XtofEtDE0
最初に私が護衛らしい仕事をしたのは、雇われてから3日目の昼だった。
とある町のレストランで食事をしていると、それまでこちらを凝視していた客の1人が突然立ち上がり、
ロマネスクの名を叫んで襲い掛かってきたのだ。
手には食事用のナイフがあった。
(;ФωФ)「ひいいいっ!」
情けない声をあげて縮こまるロマネスクを背に、私が男を捩じ伏せる。
普段は尊大なくせに、すこぶる臆病なたちであるのをそのとき知った。
防衛庁の役人だったそうなので、いくらか耐性があるだろうと思っていたのだが。
襲ってきた客はすぐに店員によって叩き出された。
とはいえ、さすがに落ち着いて食事を続けられる筈もないので
早々に店を出て隣の町へ移動した。
120
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:26:40 ID:XtofEtDE0
川 ゚ -゚)「さっきの人と、何があったんだ」
(#ФωФ)「知らん! 誰なのかすら知らん。まったく、何だあの野蛮人は……」
川 ゚ -゚)「あなたの名前を知っていたから人違いってことはないだろう、何かあった筈だ」
私がそう言うと、途端に目を泳がせた。
心当たりはあるのだろう。
川 ゚ -゚)「可能なら教えてほしい。
今後の旅にも影響があるかもしれない」
(#ФωФ)「……知らん!」
それでも話す気にはなれなかったようで、結局、聞き出すことが出来なかった。
ちりちり、不信感に火が点る。
#
121
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:27:23 ID:XtofEtDE0
別の町では女がロマネスクを見るなり泣き喚いた。
さらに別の町で、「あんたを殺せと頼まれた」などと男が切りかかってきた。
とある町など、ロマネスクの名を聞いた瞬間に宿の主人が「満室です」と言い放った(記帳している最中にだ)。
川 ゚ -゚)「ほんとに何したんだ、ロマネスク」
ものの一ヵ月で、ロマネスクに対する私の信用は尽き果てていた。
「スギウラさん」と呼んでいたのが「ロマネスク」、
「あなた」が「お前」に変わるくらいに。
122
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:28:31 ID:XtofEtDE0
──町に着けば真昼から酒場で馬鹿騒ぎをし、女を買って好き勝手し、
少しでも気に食わぬことがあれば怒声を飛ばす。
そして行く先々でトラブルを起こしたり誰かから恨み言をぶつけられたりしている。
信用しろという方が無茶だ。
私を扱き使うのは、まあ、そういう契約だから仕方ないとは思うけれど。
私だけでなく、全ての他者を軽んじるような振る舞いは目に余る。
( ФωФ)「何もしとらん」
返り血を拭いながら問う私に、ロマネスクはぷいとそっぽを向いて、いつも通りの返答。
この日もまた、ヴィプ国人だという女がロマネスクに危害を加えたのだった。
初めは出自を隠し、繁華街でロマネスクにすり寄って、
すっかりその気になったロマネスクと2人きり(私も陰に居たが)になったところで、
本性を現して彼を脅し始めたのである。
──「ここには元ヴィプ国人が大勢いる、あんたを憎む奴もいる、
突き出されたくなければ金を寄越せ」──
脅し文句からして女自身はロマネスクに恨みなど無いのだろう。
ただ、誰かに恨まれているという点は相違ない。
前述通り、誰かに頼まれてロマネスクを殺しに来たという輩までいるくらいだし、
この恨まれようは最早、ちょっとおかしいとさえ思える。
123
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:28:56 ID:XtofEtDE0
川 ゚ -゚)「何もしてないのにこんなこと起こるか」
(#ФωФ)「……ええい、やかましい! 貴様は黙って我輩を守っていろ!!」
女の死骸を一瞥して、ロマネスクは踵を返した。
──震えるロマネスクに「そいつを殺せ」と命令されたので、殺した。わずか3分前だ。
彼は人命を軽く見ていると思う。
脅迫はたしかに良くないことだが、殺すほどだったろうか。
川 ゚ -゚)(追い払うだけで充分だったんじゃないか)
ロマネスクを追いながらその旨を指摘すると、彼は心底馬鹿にしたような顔をして振り向き、
鼻で笑ってから前へ向き直った。
そうして私はまた彼に不満を抱く。
124
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:29:24 ID:XtofEtDE0
昔、奴隷商を殺したときは後悔などしなかった。
そうしなければ私が──人間として──生きていけなかったからだ。
実際ロマネスクを狙った強盗などを殺すことにも、
多少の躊躇はあれ、それ自体は不当でないと納得している。
しかし、明らかにロマネスクの方に原因があるらしい事態において、
問答無用で相手の命を奪うのが正しい行為だとは思えなかった。
#
125
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:29:54 ID:XtofEtDE0
結局、ロマネスクがこうも嫌われる理由は
3ヵ月ほど経った頃に分かった。
(・∀ ・)「……ロマネスクのせいで俺の母さんが死んだんだ」
──ある小さな町で、またんきという少年に出会った。
彼もまた、かつてヴィプ国に住んでいたという。
酒場で殺気を振りまいていたので散歩ついでに引き離したところ
(ロマネスクは臆病なくせに私が四六時中そばにいるのを嫌う)、
あいつが過去にやらかしたことを聞き出すことができた。
126
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:30:55 ID:XtofEtDE0
(・∀ ・)「5年前、あいつはヴィプ国の防衛庁の人間だった」
──天災で世界が恐慌に陥ったとき。
市民に避難を促すべきロマネスクは、担当地区の民に金を要求した。
金を積んだ者から避難させる、と。
各地でも同じことが起こったと聞いている。
しかし他の事例に比べると、ロマネスクのそれはもう一段悪質であった。
金を集めるだけ集めておきながら、
あいつはほんの一部の人間のみを避難させて、残り大勢を見捨てた。
またんきとその母親も見捨てられたのだという。
幸いにしてまたんきは他所の避難所に拾われたが、
定員により母親の方は避難所に入れず、その後どうなったのか今も分かっていない──
.
127
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:31:34 ID:XtofEtDE0
(;∀ ;)「殺す。殺してやる。たとえ護衛がいたって……」
私がその護衛であるとも知らず、またんきはロマネスクへの殺意を涙と共に溢れさせていく。
子供とは思えぬほどの怨嗟はあまりに悲痛で、
そのどろどろした怒りがこちらにまで伝染するようだった。
けれども、彼の復讐を看過することも、まして私が代行することも許されない。
私に出来るのは釘を刺すくらいだ。
それも、意味はなかったのだけれど。
.
128
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:32:37 ID:XtofEtDE0
翌日またんきはロマネスクに刃を向けた。
だから殺した。
(・∀ ・)
ただ母の仇に報いたかっただけの少年は、死の間際、呆然とした目で私を見つめていた。
腹の奥がぎゅうと痛んで、「ごめん」という言葉が口から出掛かって、むりやり飲み込んだ。
私に非があるわけではないから言っても仕方ない。あるいはそう思いたかっただけか。
ともかく飲み込んだ。
川 ゚ -゚)「おやすみ」
代わりに、昨日の別れ際に向けたのと同じ言葉を落とした。
聞こえたのかは分からないけれど、彼の顔からは苦痛が消え、
本当に眠りにつくような安らかな表情を浮かべて、そっと死んでいった。
朝方に押し入ってきた強盗を5人殺したときより、
母想いの少年1人殺したときの方が、やはり、心苦しかった。
(;ФωФ)「このガキ、どういう躾を受けたのだ」
死体に向かってそう呟くロマネスクに、ナイフを持つ手が震える。
諸々を溜め息に代えて、全て絞り出すように吐き出した。
#
129
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:33:14 ID:XtofEtDE0
川 ゚ -゚)「……またか……」
げんなりして首を振る。手に返り血。
とある町で、またロマネスクに恨みを持つヴィプ人に襲われたのだ。
ヴィプ国全体で言えば、生存者は多い。
地区ごとに被害の大小はある(もちろんロマネスクの担当地区は『大』の方だ)が、
対応自体が早かったのが幸いしたのだ。
一部の国民を早々に他所の国へ避難させたのも要因だったろう。
故に、世界各地にヴィプ国人がいて──
彼らの多くは、ロマネスクの所業を風の噂で聞いている。
130
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:33:56 ID:XtofEtDE0
(;ФωФ)「……くそっ、くそっ! 庶民が!」
川 ゚ -゚)「これで何人目だ」
ただ噂を聞いただけの人間なら、然して害はない。
多少の悪感情はあれど基本的に手出しはしてこないからだ。
例の、脅迫してきた女は例外として。
問題は、またんきのように直接被害にあった者や、
それが身内であった者達だ。
彼らはロマネスクに対し、憎しみと言えるほどの怒りを抱いている。
それゆえ、衝動に任せて罵声を浴びせたり、襲ったり、あるいは刺客まで寄越したりする。
そして私は彼らを殺す──心の内で、同情と罪悪感を抱えたまま。
川 ゚ -゚)「……」
真っ赤な手を見下ろす私に、
恐怖から立ち直ってきたらしいロマネスクが汗を拭いながら冷眼を向けた。
131
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:34:36 ID:XtofEtDE0
( ФωФ)「貴様、人を殺しても平気なくせに
時々そういうつまらん顔をするな」
川 ゚ -゚)「同情している」
( ФωФ)「同情するときとしないときの違いが分からん」
川 ゚ -゚)「お前のせいで悲しい思いをした人々を、
お前の都合で殺していることに嫌気が差す」
嫌みたらしく言ってやると、ロマネスクが一瞬だけ瞠目した。
( ФωФ)「どこかで聞いたのか」
川 ゚ -゚)「この間、実際の被害者から聞いた」
大して気にも留めていないのか、それ以上の詮索はされなかった。
そのことに無性に腹が立った。
反省する様子が全く見られなかったからだ。
川 ゚ -゚)「……何であんなことをしたんだ」
( ФωФ)「何で、とは」
川 ゚ -゚)「別に、大多数を切り捨てる必要はなかったんじゃないか。
せめて避難させられるだけ避難させてからでも、お前は間に合ったろう」
132
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:35:06 ID:XtofEtDE0
またんきは9番目のグループで待機させられたが、それでも早い方で、充分に間に合う筈だった。
なのにロマネスクは、4番以降のグループを見捨てたというのだ。
あまりに早すぎるではないか。
その分だけ、彼の罪は重い。
( ФωФ)「貴様には関係ないだろうが」
ロマネスクが顔を顰めて言う。
それにもまたかちんと来て、さらに嫌味をぶつけたら、ちょっとした口論へ発展した。
.
133
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:35:39 ID:XtofEtDE0
そのまま数日ほど、ロマネスクと口をきかなくなった。
ロマネスクが機嫌を損ねたのが主な原因で、
私は一応、たまに話し掛ける程度の気概はあったのだが。まあ無視されていた。
つくづく子供っぽい。
( ФωФ)「……」
川 ゚ -゚)「……」
この数日間は、子守唄を歌わなかった。
歌えと言われないのだから、と私も意地になっていたのだろう。
最初の2日ほどは行きずりの女に歌わせていた。
しかし3日目からは寝台列車での移動になったため、
女を調達することも敵わず、ロマネスクはあからさまに眠気を溜め込んでいた。
.
134
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:36:24 ID:XtofEtDE0
──そこから更に2、3日経った頃。
すっかり隈を作ったロマネスクが、買い溜めておいた酒を浴びるように飲み始めた。
酔いに任せて眠ろうとしたのだと思う。
今夜は歌うつもりだった(護衛である以上は主人の体調も気遣わないといけない)私は、
酒が導入剤になるのならばと放置しておいた。
間もなく、ロマネスクは気絶に近い形で眠りに落ちる。
だが、
(;+ω+)「……うう」
10分かそこらで、苦しげに呻きだした。
落ち着かなそうにもぞもぞ動き、
不意に、何かを求めるように手を伸ばした。
震えていた。
川 ゚ -゚)
咄嗟に近付き、その手を握る。
突然の感触に目を覚ましたか、ロマネスクが瞼を持ち上げた。
こちらを見る瞳が、いつも危険が迫ったときと同様に弱々しく揺れていた。
そして私を認識した途端に和らぎ、ほうっと安堵するように息をつくものだから。
知らず、握った手に力を込めた。
135
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:36:51 ID:XtofEtDE0
(;ФωФ)「……」
川 ゚ -゚)「……おはよう。よく眠れたか」
大丈夫か、と訊くべきだったのだろうが、
珍しく殊勝な態度に動揺して、また嫌味な言い方をしてしまう。
(;+ω+)
ロマネスクは私を睨んだあと無言で寝返りを打ち、
狭い寝台にスペースを作って、そこを片手で叩いた。
空いた場所に座り、子守唄を歌う。
今度はうなされることもなく、ぐっすりと眠っていた。
眠れて良かったと、なぜ思ってしまったのだろう。
.
136
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:37:24 ID:XtofEtDE0
互いに謝ることはなかったが、そもそも元から修復するような仲も無かったので、
以前のように適当な距離感に戻った。
ただ、夕食の折、
( ФωФ)「……」
川 ゚ -゚)「……」
何も言わずに高そうな酒を私のグラスに注いできたので、
私も何も言わずに受け取っておいた。
小遣いらしい紙幣もグラスの下に差し込まれていた。
酒と金がすこぶる好きなあいつが、女を買うためでもなく
そのようなことをするとは思わなかった。
あいつなりに、いくらか機嫌をとろうと考えたのだろうか。
本当に子供くさい。
ふ、と小さく吹き出すと、また睨まれた。
#
137
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:38:06 ID:XtofEtDE0
('、`*川「スギウラさんに、どうかしら」
川 ゚ -゚)「どう……だろうか、それは。本当に」
──薄桃色に可愛らしい猫の柄が入ったネクタイを持ち上げる彼女に、
私の目は未だかつてないほど泳いだ。
ペニサスさん。彼女もまたヴィプ人だ。
彼女と護衛デミタスの2人組とは、示し合わせたわけでもないのにしょっちゅう会う。
移動ペースがほとんど同じなのだろう。
今回は結構長めに同行していて、数週間前に列車で再会してから、
共にいくつかの町を転々とした。
まあ途中、病にかかり、しばし拘束されたのもあるが。
この日は、少しの間だけ護衛を交換しようというペニサスさんの提案により
私が彼女の買い物に付き合っていた。
デミタスは大層不服そうだったが。
138
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:38:53 ID:XtofEtDE0
川 ゚ -゚)「ロマネスクは好き嫌いが激しいから、少し、難しいと思う」
('、`*川「そうかしら……」
適当に宥め、ネクタイを戻させる。
まず確実にあいつは文句を言うし、それはペニサスさんに悪いし、
ついでにペニサスさんが落ち込めばデミタスが不味いことになりかねない。
デミタスとは、なるべくやり合いたくないのだ。
川 ゚ -゚)「あいつには構わなくていい。
それより、デミタスの快気祝いを買いに来たんだろう」
('、`*川「デミタスのは、これって決めましたから」
言って、ペニサスさんは落ち着いた赤い地に暗い銀色の刺繍が入ったネクタイを掲げてみせた。
そちらは普通なのに、何故ロマネスクにはあんな柄を選んだ。嫌がらせか。
ふと、それが、かつてデミタスが彼女に付けさせられていた
「変わったアクセサリー(控えめな表現に留めておこう)」に似た配色だと気付く。
そのことを示してみれば、ペニサスさんは、うん、と小さく頷いた。
139
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:39:47 ID:XtofEtDE0
('、`*川「デミタス、本当はとても嫌がっていたんですよね。
……申し訳なかったから、代わりに、ちゃんとしたものを贈ろうと思って」
川 ゚ -゚)「なら、何故わざわざ似た色合いのものを」
('、`*川「こう言っては失礼だけれど、あの赤い首輪と鎖が、本当にデミタスに似合ってたんです。
──首輪が似合ってたっていうか、えっと、赤い色と銀色が。
だからデミタスにぴったりな色っていうと、私にとっては、この色なんです」
ネクタイを撫で、ペニサスさんはにこりと微笑んだ。
同性でありながら、彼女からは時おり妙な色気を感じることがある。
攻撃的なものではなく、寧ろその逆の。
川 ゚ -゚)「……デミタスも、喜ぶと思う」
('、`*川「そうだといいけど……
クーさんは、スギウラさんに快気祝い、差し上げないんですか?」
くたりと首を傾げるペニサスさん。
彼女だって少し前まで病に臥せっていたのに、
やけにデミタスやロマネスクに気を遣っている。
──もう一度言うが彼女もヴィプ人だ。
資産家である彼女の家とロマネスクは何かしら関係があったという。
彼女とロマネスクに直接的な面識は無かったようだが。
例の噂を知っているのかいないのか、彼女はこれといってロマネスクに思うところも無いらしい。
実際、会うごとに親しげになってはいる。
140
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:40:34 ID:XtofEtDE0
川 ゚ -゚)「別に、そんなもの用意してやる義理もない」
('、`*川「でもクーさん、ずっと心配して付きっきりで看病していたのに」
多分、苦虫を噛み潰したような顔をしたと思う。
看病してやったのは私が護衛だからだし、
ロマネスクが馬鹿みたいに弱気になって、ひんひん泣きながら縋りついてきたからだ。
(。ФωФ)『我輩はきっと死ぬである……ここで死ぬ……罰が当たったのだ……』
死んでしまう、と何度も言っていた。
子供みたいに不安そうな顔をして、半泣きで震えていた。
いくら何でも、いい歳したオッサンが。あれはちょっと、なあ。
とりあえず寝かしつけるために何度も子守唄を歌ったので、
相部屋状態だったペニサスさんやデミタスはうんざりしたことだろう。
141
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:41:29 ID:XtofEtDE0
('、`*川「まあ、あんなに弱っていたら誰だって心配するでしょうけど……」
川 ゚ -゚)「私は仕事をしただけだ」
──それにしても。
罰が当たった、などと。
そんなことを言ったのが、よりによってロマネスクだという事実が信じられない。
悪事を悪事と認識していたのが意外だった。
あいつは己の行いを全て正しいと信じている人間だと思っていた。
見捨てた人々に対しても、己の生存のために必要な犠牲だった、なんて言いそうな奴だったし。
('、`*川「クーさん、本当に何も差し上げないの?」
川 ゚ -゚)「……さっきも言ったが、好き嫌いが激しいから
何か買ってやったところでどうせ無駄に終わる」
そう、と残念そうに答えて、ペニサスさんは会計を済ませた。
丁寧に包装されたネクタイは、ひとまず私が預かった。荷物持ちも仕事の一環。
デミタス達と合流するため軽い足取りで歩き出す彼女に付いていく。
142
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:42:09 ID:XtofEtDE0
('ヮ`*川「ビーグルちゃん達も来てるって、スギウラさんに教えてあげないとね」
川 ゚ -゚)「ああ、そうだった」
先ほど会った、小型犬とその護衛である大男を思い浮かべる。
それから、数日前のロマネスクの言葉も。
──「あの犬、次に会ったら肉でも買ってやるか」。
病み上がりにあいつはそう言った。
妙な話だが、ロマネスク達3人は犬に救われたようなものだ。
それを恩と感じ、そして返してやろうとしているらしいロマネスクの言葉にもまた、
私は心底驚いていた。
#
143
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:42:47 ID:XtofEtDE0
とある姉妹に会った。
家族を探して旅をしているそうだ。
( ФωФ)「──母親が何だというのだ、馬鹿らしい……」
母を求めて泣く子供の声に、ロマネスクは吐き捨てるように言った。
それに違和感を覚える。
子供へ嘲笑を向けたとしたら、こいつの性格からして分からなくもないのだが、
腹を立てているのは理解できない。
その上、直後判明した事実に私は更に困惑させられた。
その姉妹もヴィプ国──の防衛庁──の被害者だったのだ。
そちらにロマネスクは関わっていなかったようだが、
事前に情報を得ていながら止めようとはしなかったというのだから、
その時点で共犯のようなものだと私は思う。
.
144
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:43:31 ID:XtofEtDE0
(#ФωФ)「……何であるか、その目は!」
宿泊している部屋に戻るなり、ロマネスクがサイドテーブルを蹴飛ばした。
よくよく怒る奴だが、これはあまりに唐突すぎて目を丸くしてしまう。
疑問と疑念が私の顔に出ていて、それが彼を刺激したのだろう。
しかし今までも散々見せてきた表情なのに、なぜ今回に限ってそれほど怒るのか。
ロマネスクは私を突き飛ばして廊下へ戻った。
追い掛ける私に「付いてくるな」とまた怒鳴り、
階下のこぢんまりとした酒場に入っていく。
そこで適当な女と酒を引っ掛け、部屋へと帰った。
私が中に入るわけにはいかないので、ドアの前で待機する。
──どうせ、すぐに私を呼ぶだろうと見当をつけていた。
.
145
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:44:23 ID:XtofEtDE0
( ФωФ)「……」
しばらくすると、案の定ロマネスクがドアを開けた。
部屋から出てきた女が私を見て怪訝な顔をし、
無言で私の腕を引っ張るロマネスクを一睨みして、心外だとばかりに去っていった。
最近は、私以外の子守唄では寝付けないらしい。
難儀なものだ。
この旅が終われば私は組織に帰ることになっている。
私と離れたら、こいつはどうやって眠るのだろう。
川 ゚ -゚)「……どうして、そう機嫌が悪いんだ」
歌う前に訊ねてみると、ロマネスクは不貞腐れた顔をして、
ふいとそっぽを向いた。
.
146
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:45:59 ID:XtofEtDE0
翌日、町を出るという姉妹に、誕生日の祝いとして菓子を渡した。
本当は昨夜渡すつもりだったが、色々あって渡せず、しかも寝る前にロマネスクに食われたので
今朝新しく買い直したものだ。
菓子を買う際、お前が食ったのだからとロマネスクに支払いを促すと、
存外あっさり金を出した。
祖国に傷付けられた姉妹への詫びなのか、私への当てつけなのか、ただの気まぐれか。
意図はどこにあったのだろう。
こいつは単純な男だ、と分かっているようなツラをして、
実際は、日ごとに分からなくなって戸惑っていた。
#
147
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:46:28 ID:XtofEtDE0
いつからか、ぐらぐらと揺れるのを常に感じていた。
「ロマネスク」という、私の中での印象が幾度も揺れて、ぶれて、
元の位置に戻ったり外れたりを繰り返す。
そうしている内に、決定的に崩れる日が訪れた。
.
148
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:48:23 ID:XtofEtDE0
( +ω+) ゴォオ
川 ゚ -゚)(まるで獣の唸り声だな)
まあ疲れていたのだろう。
そう思いつつ、ずれた毛布をかけ直してやる。
──「新政府」の期限まで残り3週間となり。
中央を目前に控えた街で、あろうことかロマネスクが殺人の容疑を掛けられた。
(幸い、ある人達によって疑いは晴らされたが)
解放されたのはほんの一時間前。
自警団を始めとして各々から謝罪があったようだが、ロマネスクはそれを受ける暇もなく──
眠気に従い、部屋に戻るなり私に子守唄を歌わせ就寝したのであった。
149
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:48:58 ID:XtofEtDE0
( ^ω^)「ヴィプのスギウラさんって、防衛庁にいた方だおね?」
やかましく眠るロマネスクに苦笑を向けつつ、
椅子に腰掛けた男──首長が、私に問い掛けてくる。
歳の割に、立場に見合った振る舞いをする人だった。
かと思えば、やや間の抜けたところもあって、
どことなく先生に似ている。ような、気がした。
このときも、ロマネスクと私へ謝罪をしたいという理由で、部屋を訪れてくれていた。
生憎ロマネスクは眠ってしまったが。
彼の護衛は事後処理のため席を外している。私に害は無いと判断してくれたのだろう。
川 ゚ -゚)「……うん」
寝台の縁に座る私は、ロマネスクを一瞥してから頷いた。
首長が「やっぱり」と手を叩く。
150
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:49:45 ID:XtofEtDE0
( +ω+) グガー
川 ゚ -゚)「こいつのことを知ってるのか?」
( ^ω^)「ヴィプは色々あったから、噂も色々聞いてるんだお。
スギウラさんの話も」
──ああそうか。
やはりロマネスクの悪評は、中央にまで届いていたか。
川 ゚ -゚)『……もし、あの男が中央に着いたとして……
政府に選ばれるかどうかは、まだ分からないだろう?
お前が知っているくらいだから、あいつの所業は中央に伝わってるかもしれないし……』
かつて、またんきに掛けた言葉。
「かもしれない」などと曖昧な言い方をしなければ良かった。
もっと、しっかり説得すれば良かった。
川 ゚ -゚)「どういう話だ」
確認の意味も込めて問う。
首長は頬を掻き、宙を見遣った。
「まあ、よくは知らないけれど」と前置きして。
( ^ω^)「元々は、とても真面目で、優秀な人だったと聞いてるお」
.
151
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:51:01 ID:XtofEtDE0
──がくりと足場が崩れて視界がぶれた、ような錯覚。
首長が冗談を言ったのだろうという思考だけは、辛うじて拾えた。
( ^ω^)「いい噂も悪い噂もあるおね。
天災の前後で評価が真逆になってるお」
いい噂、なんて、そんなの私は知らない。
天災の前後ということは、天災が起こるまでは評価されていたのか。こいつが。
有り得ない。だってこいつは、筋金入りの──人でなしだろう。
首長は視線を一度空中に逸らしてから、改めて口を開いた。
( ^ω^)「僕が新政府案を発表したとき、多くの人は、急いで中央にやって来た。
でもスギウラさんは、政府に加わるに当たって、
時間をかけて各地を回ってきたと言っていたお」
川 ゚ -゚)「は……」
何を言っている。
私の戸惑いを察したか、怪訝な顔をしながら首長は小首を傾げた。
152
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:52:12 ID:XtofEtDE0
( ^ω^)「各地の実情を知るために、一年かけて巡ってきたって言ってたお?」
各地の実情。
受けた言葉を、そのまま口の中で繰り返す。
まっすぐ中央へ向かわない理由について、本人からの説明はなかった。
旅行が好きだと聞いたことがあったので、それが理由だろうと考えていたのだが。
──けれども、たしかに。疑問は以前からあったのだ。
どうして、これといった特徴のない小さな町にまで寄るのか。
どうして、あんなにもたくさんの人から恨まれているのに、臆病者のくせに、
わざわざ寄り道ばかりして、危険な目に遭う確率を上げるのか。
どうして、金が何より好きなくせに、いちいち金がかかるような旅をしているのか──
ロマネスクなりに調査をしていたのだと考えれば、
納得するかは別として、理解は出来る。
153
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:54:44 ID:XtofEtDE0
( ^ω^)「たとえば、架空の船便の噂を流している悪質な港の話をしてくれたお。
恥ずかしながら、僕らはそちらの調査をしていなかったから助かった」
小さな教会で会った知り合い。
ある港に騙された彼女の話。
あのときロマネスクは眠っていたものの、途中からは起きていた。
彼女の話にまるで興味がなさそうな態度をとっていたが、
そういえば、その割に、話し終わるまで邪魔をしてこなかった。
どんな気持ちで、何を思いながら、聞き耳をたてていたのだろう。
( ^ω^)「西の方で新種の病が出たことも聞いたお……
やっぱりちゃんとした機関がないと他所の細かい情報が伝わりづらいから、
彼のように広範囲から情報を持ってきてくれるのは本当にありがたい」
( ^ω^)「とはいえ取り調べの最中だったし彼も眠気や二日酔いでぐらぐらしてたから、
これくらいしか、まだ話せてないけど。
──出来るなら、もっとじっくり聞かせてほしいところだお」
好印象と言わんばかりに、首長は笑んでいる。
違う。違うのだ。
あなたは騙されている。──そんな思いが、私を焦らせる。
川 ゚ -゚)「……善意でやったんじゃない」
( ^ω^)「お?」
154
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:56:04 ID:XtofEtDE0
川 ゚ -゚)「そうやって取り入るために、調査って名目でぶらぶらしてきただけだ。
……あなたもこいつと話したのなら、こいつがどんなに身勝手な奴か分かっただろう」
言い切ってから、口を押さえる。
私は雇い主のためになることをしなければならないのだから、
本当はこんなこと、言うべきではない。
けれど。けれども。黙っていられない。
眉間に皺を寄せる私に、首長が困ったように苦笑して、頬を掻いた。
( ^ω^)「別に、それならそれで、いいんだお」
──は、と吐息のような声が漏れる。
今、何と言った。
視線を絡めると、首長は肩を竦めてみせた。
( ^ω^)「ポイント稼ぎのためだろうと、実際、僕は話を聞けて助かったお。
今どういう情報が僕らに必要なのかも、彼は分かってるわけだし」
川 ゚ -゚)「……」
( ^ω^)「そりゃ清廉潔白な人は好ましいけど。それは、人として、の話であって」
窘めるような言い方。
じくり。頭の奧に灯るものがある。
155
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:56:52 ID:XtofEtDE0
( ^ω^)「僕が仲間に欲しいのは、世界のために、いま何が必要なのかを分かっている人だお」
──ああ、その言葉。
まるで。
「先生」のよう。
( ^ω^)「彼が昔、真面目で優秀だったと評されていたのも、
そういうところに理由があるんだと思うお」
そりゃあ。
性根が腐っていたとしても、仕事が出来るなら優秀だろう。
本心が捩れていたとしても、きっちり務めを果たしているなら真面目だろう。
理屈は分かる。
それならたしかに、ロマネスクは優秀で、真面目な奴だったのかもしれない。
天災が始まるまでは。
156
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:57:46 ID:XtofEtDE0
川 ゚ -゚)「──こいつはたくさんの人間を見殺しにした」
首長は姿勢を直したが、表情は変わらない。
噂を聞いたらしいから、知ってはいるか。
川 ゚ -゚)「いざというとき国民を見捨てる奴だ。
そんな奴を政府に入れていいのか」
( ^ω^)「んん、その噂はたしかに僕も、気にはなってる。
事実ならもちろん考慮するべき点だお」
川 ゚ -゚)「事実ならって……」
事実も何も、今まで何人も被害者とその身内がロマネスクに恨み言を──
いや。
恨み言でしか、私はその話を知らないのか。
川;゚ -゚)「……」
口を噤む。
既に崩れた筈の足場が、ますます揺れるのを感じた。
少し悩むような素振りを見せてから、首長は思いもよらない名前を口にした。
( ^ω^)「……イトーさん、知ってるかお? イトー・ペニサスさん。
何時間か前にもツンが言ってた、デミタスさんの雇い主」
川;゚ -゚)「え。あ、ああ。ロマネスクの知人だ」
157
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:58:29 ID:XtofEtDE0
( ^ω^)「以前、中央で彼女と話す機会があったんだお。
──戦時中、彼女の家でシェルターを管理していたことは?」
川;゚ -゚)「それも知ってる。
イトー家の当主が多くの恨みを買っていて、市民にシェルターを奪われてしまったと」
ペニサスさんは1人、他所の避難所へ逃げたから助かったと聞いている。
首長が浅く頷いた。
いま私達は、何の話を、しているのだろう。
( ^ω^)「イトー家が所有していたシェルターはとても大きくて、
有事の際には、イトー家以外の人間も受け入れるように言われていたらしいお」
「言われていた」──誰から?
それほど大きなシェルターなら、国からも目をつけられていたかもしれない。
──イトー家。
国。政府。
関わりがあった、イトー家とロマネスク──
川;゚ -゚)「まさか」
( ^ω^)「天災のとき、ロマネスクさんが担当した地区の住民の一部は、
そのシェルターに入れられる予定だったらしいお」
158
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 18:59:40 ID:XtofEtDE0
けれどシェルターは近隣の市民に奪われた。
それでロマネスクは、こいつは、一体どうしたというのだ。
( ^ω^)「あの頃は、どこもめちゃくちゃで、どこも一杯一杯だった。
そんなときに予定していた避難先が使えなくなったら、どうなるだろうかお」
川;゚ -゚)「でも。……でも、そういう事情で避難が上手く行かなかったのなら……
そのこと自体、噂になる筈じゃ……」
( ^ω^)「まあ、たしかに。……これ以上は部外者が考えたところで答えは出ないおね。
イトーさんもそれ以外の事情は知らないみたいだし」
ここで、話の区切りとしたらしい。
首長は伸びをして、こちらに集中させていた意識を僅かに散らした。
欠伸を一つ。
( ^ω^)「こっちでも出来る限り、調べてはみるお。
ヴィプの役人さんも中央にぼちぼち来てるから、
誰か1人くらいは事情を知ってるかもしれない」
( ^ω^)「……もしスギウラさんが進んで見放したわけではないのなら、政府としては歓迎したいお。
少なくとも今のところは」
そうして、話は完全に終わった。
私が何も言わないから、首長も気まずそうに頬を掻いて視線を彷徨わせるばかり。
沈黙。
私は己の膝とロマネスクと首長を見比べていた。
私達の呼吸以外に、音はない。
159
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 19:00:46 ID:XtofEtDE0
──ドアのノックで我に返った。
ξ゚⊿゚)ξ「ブーン様、自警団の責任者とお話を」
首長の護衛、ツンがドアを開ける。
それを受け、先より明るい──空気を変えたかったのだろう──声をあげ、彼は立ち上がった。
( ^ω^)「ん、じゃあ行くかお! ──本当にこの度は迷惑をかけたお」
川 ゚ -゚)「いや……こいつが余計なことをして、勝手に巻き込まれただけだから……」
( ^ω^)「中央に行くなら、一緒に船に乗っていかないかお?
夜明け頃に出るんだけれど」
川 ゚ -゚)「……遠慮しておく」
ロマネスクは、船に乗るのを嫌がる。理由は分からないが。
だから首長からの誘いといえど、乗りたがらないだろう。
改めて挨拶をして、首長とツンが部屋を出ていく。
ドアが閉まり、足音が遠ざかってから、私はロマネスクを見下ろした。
少し前から、いびきが聞こえない。
( +ω+)
川 ゚ -゚)「……おい」
もう一度、おい、と声を掛けると、ロマネスクは面倒臭そうに瞼をゆっくり持ち上げた。
160
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 19:01:16 ID:XtofEtDE0
川 ゚ -゚)「寝たふりして盗み聞きか」
( ФωФ)「枕元でごちゃごちゃ話されれば起きるである」
いつ頃いびきが消えたのか、明確には記憶していないが
そう遅くはなかった筈だ。
( ФωФ)「やはり首長ともなれば、よく分かっているものであるな」
寝返りをうち、私に背を向けてロマネスクは嘯く。
「新政府入り確実だ」。暢気な発言の割に、声色は硬い。
川 ゚ -゚)「……何があったんだ」
気付けば、問うていた。
天災のとき、何が起こっていたのかを訊きたかった。
ロマネスクも分かっているだろうに、
彼は緩慢に振り向いて、低めた声で思わぬ答えを寄越した。
161
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 19:03:55 ID:XtofEtDE0
( ФωФ)「──子供の頃、時々、母親に殺されかけた」
川 ゚ -゚)「は?」
会話が成立していない。
はぐらかす気かと苛立ち、冷静に発言の内容を反芻して、
その内容に息を呑んだ。
テンポのずれた反応に、ロマネスクは小馬鹿にするような目付きをしてから
また向こうへと頭を戻した。
( ФωФ)「普段は優しい人で、毎晩、子守唄を歌ってくれるのだがな。
たまにおかしくなるのだ」
川 ゚ -゚)「……」
( ФωФ)「子守唄を歌いながら我輩の首を絞める。
我輩は気絶するように眠り、朝目覚めて、ああ良かった生きていると安堵するのだ」
川 ゚ -゚)「……何でそんなこと」
( ФωФ)「我輩が父に似ていたからではないか」
162
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 19:05:41 ID:XtofEtDE0
川 ゚ -゚)「何で父親に似てるからってお前を殺そうとするんだ」
( ФωФ)「知るか。どうでもいい。10歳になる前に、両親とは離れたし。大した記憶もない」
夫婦仲がいいのか悪いのか分からぬ両親だった、とロマネスクは言う。
こっぴどい罵り合いの末に暴力沙汰になることもあれば、
子供そっちのけで睦まじくすることもあったと。
ロマネスクが祖父母に引き取られるまで──恐らく引き取られてからも──その繰り返しだった。
新たな保護者となった祖父母には、真っ当に育てられたそうだ。
わがままは滅多に言わなかった。
両親を怒らせないようにと幼い頃から気を遣っていた名残で。
ただ内面では、今のような人格が既に形成されていた。
( ФωФ)「……まあ表に出さなかったから、
皆は我輩のことを、普通に真面目な人間だと思ったのだろうが」
思いのほか客観的な発言だった。
表に出せば煙たがれる性格だと理解しているわけだから。
163
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 19:07:34 ID:XtofEtDE0
川 ゚ -゚)「どうして今は……そう正直に生きてるんだ」
ロマネスクは答えなかった。
毛布を耳元まで引っ張り上げると、少し背を丸めながら「寝る」とだけ言って、
催促するように枕を一度叩いた。
──結局、はぐらかされた。
それとも本当は、もっと話を続ける気でいて、それが実行されていれば
私の最初の問いへの答えを得られたのだろうか。
子守唄を歌う。ふと疑問が湧く。
首を絞められながら子守唄を聴かされたというくせに、
どうして子守唄がないと安心して眠れないのだろう。
川 ゚ -゚)(もしかして嘘ついたんじゃないのか)
同情を煽って有耶無耶にするために、適当なことを言ったのかもしれない、なんて。
( +ω+)
川 ゚ -゚)「……」
なんて。一度は思ったのだ、けれど。
以前、母が恋しいと泣いた少女に苛立ちを向けたのは、
きっと真っ当に愛を注がれ愛に応えていた彼女へ嫉妬していたのだろうと考えたら、
すとんと落ちるものがあった。
164
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 19:07:57 ID:XtofEtDE0
何とはなしに、眠りに落ちかけているロマネスクの頭を撫でてみる。
彼の眉間に薄く皺が寄ったが、すぐにほどけて、寝息をたて始めた。
#
165
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 19:09:01 ID:XtofEtDE0
──2年前に。
先生に、訊いたことがある。
川 ゚ -゚)『何で、依頼主をふるいに掛けないんですか』
雇われていった友人が富豪の息子に孕まされ
もう必要ないと組織に帰された日の、翌日だったか2日後だったか。
私は件の「元」雇い主とやらに苛立ちを覚えながら、その怒りを少しだけ、先生にぶつけたのだ。
( ´∀`)『……急にどうしたモナ』
先生は惚けてみせた。
私の言いたいことなど分かっているくせに。
166
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 19:10:41 ID:XtofEtDE0
川 ゚ -゚)『あの男がろくでもない奴なのは、最初から分かっていたじゃないですか。
人前だろうと付き人に怒鳴り散らして、いちいち嫌みたらしく話して、
明らかに「物」を見る目で私達をじろじろ見ていた』
あの男は、ずらりと並べた女達を値踏みするように眺め回して誰を雇うか決めていた。
下卑た顔つきは、まるで性根がそこに表れたかのようだった。
──先生は私達に、「雇い主の命令は可能な限り聞きなさい」と言う。
理不尽なものでも、不愉快なものでも、出来るだけ聞きなさいと。
まるで私達の意思を無視して尊厳を踏みにじるかのような方針だ。
そのくせ、それにより私達が傷付けば、先生も悲しむのである。
「大丈夫、こういう仕事だもの、だから平気」──
そう言って腹を押さえながら泣き笑う友人に、先生も泣きそうな顔をするのだ。
167
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 19:11:37 ID:XtofEtDE0
心ない雇い主によって辛い目に遭わされた護衛達は何人もいる。
その度に先生は苦しそうに「すまない」と言う。
みんなが苦しむくらいなら、せめて、もっと──まともな人間の依頼だけ受ければいいのに、と。
私が思うのも、仕方ないことなのではなかろうか。
川 ゚ -゚)『先生は、「世界に必要な人間」を守るために私達を育てた筈だ。
なら、その、必要な人間とやらの依頼だけ受けるべきじゃないのですか』
私がそう言うと、先生は首を傾げた。
( ´∀`)『たとえば、どんな人間モナ?』
川 ゚ -゚)『……利他的で、拝金主義ではなくて、真面目で……』
( ´∀`)『そういう人間が集まれば、この世界を立て直せるモナ?』
川 ゚ -゚)『……』
自分で言ったくせに、頷けなかった。
この世にお人好ししかいないのならそれで良かったかもしれないが、
生憎、そんなに都合のいい世界ではない。
168
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 19:12:26 ID:XtofEtDE0
( ´∀`)『利己的でも……いや利己的だからこそ、
誰にとっても有意義な何かを見付けられる人もいる。
拝金主義だからこそ、経済を真面目に考えられる人もいるモナ』
( ´∀`)『もちろん、クーが言うような人間だって、
いた方がいいに決まってるけれど』
続ける先生の顔は、どこか悲しげだった。
( ´∀`)『……結局ね、どんな人間なら間違いなく世界を救えるかなんて、
僕にも、──誰にも、分からないんだモナ』
この組織が世界を救うのではなくて。
どこかにいる「世界を救える人」を護るために、この組織がある。
本当に護るべき人、とやらを見極めることは誰にも出来ないから、
せめて手の届く限りの人を護って、「もしかしたら」の可能性に賭けているだけなのだ。
前もって悪人だ善人だと振り分けることに意味はない。
それは個人の価値観であって、世界の価値観ではないから。
169
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 19:13:19 ID:XtofEtDE0
( ´∀`)『彼だって、僕らには分からないような、いい面があったかもしれない』
言って、先生は妙に力を込めた手で件の男の書類を持ち、
殊更ていねいに引き出しへしまった。
それでも引き出しを閉める手つきには些か乱暴さが窺えた。
私は何も言えなかった。
──あのときの先生の言葉と、宿で話した首長の理念は、概ね同じだ。
それなら私は、首長の言うことが正しいのだと信じてしまう。
それなら。
それなら、ロマネスクが必要だという首長の意思も、
間違っていないというのか。
でも。
170
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 19:13:49 ID:XtofEtDE0
(;∀ ;)『もしもあいつが新しい政府に選ばれたら!?
そんな世界で生きてて誰が幸せになれる!
俺の母さんがどうやって救われる!?』
泣いていた──
たしかに泣いた人が、いたのだ。
#
171
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 19:14:11 ID:XtofEtDE0
残りの3週間は何事もなく過ぎた。
中央のすぐ隣の町に宿泊し、期日を待ったた。
期日までに中央で名前と素性の登録をしなければいけないらしいが、
直前でも間に合うだろう、とロマネスクが動こうとしなかったのだ。
そうこうしている内に、とうとう期日が2日後へと迫る。
川 ゚ -゚)「いつ中央に行くんだ」
( ФωФ)「明日の夜に出発すれば、充分間に合うである」
川 ゚ -゚)「……分かった」
ロマネスクは中央直前のこの町で、宿に篭ったまま外へは出なかった。
酒は私に買ってこさせて1人で飲んでいるが、女の方は完全に我慢しているようだった。
私には絶対に手を出さない。そりゃ出されても困るが。
多分「物」という感覚で私を見ているのだろう。
172
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 19:14:56 ID:XtofEtDE0
──なぜ宿に篭るのか。
なぜぎりぎりまで中央に行かないのか。
その理由は、うっすらと分かっている。
川 ゚ -゚)「……」
私はカーテンの隙間から窓の外を見下ろした。
表通りに面しており、昼というのもあって人の往来が活発だ。
そんな中、不自然に動かないまま宿を見つめている男がいる。
( ФωФ)「クール」
川 ゚ -゚)「ん?」
( ФωФ)「酒と、つまみを買ってこい」
川 ゚ -゚)「まだ昼だぞ」
寝台の上で本を読んでいたロマネスクが、本から目を離さぬまま紙幣をこちらに差し出した。
もともと読書が好きなたちらしいが、女を買わなくなってからはますます没頭しがちである。
小言を返しつつも、丁度いい機会だとは思ったので
金を受け取り、おとなしく部屋を出た。
.
173
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 19:15:39 ID:XtofEtDE0
──宿を後にして、私は辺りを見渡した。
先ほど窓から見えた男がいなくなっている。
ただ気配までは消せていない。
川 ゚ -゚)「そこの人」
物陰を覗き込むと、隠れていた若い男が小さく悲鳴をあげた。
(;´ー`)「うわっ!」
川 ゚ -゚)「ヴィプ国の人か」
彼はしばらく呆然と私を見ていたが、
はたと我に返った様子で、目を鋭くさせ睨んできた。
最近、宿の近くをうろつき何かを探すような人間をちょくちょく見掛ける。
ロマネスクに用があるのだろうと、すぐに分かった。
居場所は分かっているらしいのに、真っ向から訪ねてこないことから、堂々とは会えぬ用なのだとも。
174
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 19:16:48 ID:XtofEtDE0
( ´ー`)「あんたロマネスクの付き人だろ」
川 ゚ -゚)「付き人……なんだろうか」
ロマネスクの身を護るより、ほぼ日課である子守唄の方が主な業務と化しているので
付き人という表現も決して間違ってはいないのだろう。
訂正せず、頷いておく。嘘でも真実でもない。
川 ゚ -゚)「何の用でここにいる?」
( ´ー`)「分かってるくせに」
川 ゚ -゚)「……私は雇われて世話をしてるだけだから、あいつの事情をよく知らない」
これまた、嘘とも本音とも言える。
どういう事情で狙われているかは知っている、
だが「事実」はまだ知らない。
男から警戒心が薄まった。
彼は呆気にとられたように目を瞬かせ、視線を斜め下にやった後、
「ちょっと来い」と自分の背後を指差した。
少し迷う。宿と男を見比べていると、彼は決まり悪そうに付け足した。
( ´ー`)「あんたにもロマネスクにも、何もしないヨ。……今は」
.
175
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 19:18:06 ID:XtofEtDE0
移動しながら、男はロマネスクが市民を見捨てた件を私に説明した。
またんきから聞いた話と同じだった。
この男の場合は恋人が犠牲者だったそうだ。話しながら、怒りで震えていた。
徐々に人気がなくなっていく。
女である私をこういうところへ誘導することに男は気を遣っていたようだったが、
当の私は、何かあれば返り討ちにすればいいと考えていた。
天災の被害が激しかった一画なのか、崩れかけた幾つかの廃墟が
そのまま放置されている区域に到着する。
とある路地の奥に、十数人ほどの集団がいた。
年齢や性別はばらばらだが、いずれも目をぎらつかせている。
川 ゚ -゚)「……みんな、ヴィプ人なのか」
先に質問すれば、男が頷いた。
怪訝な瞳がこちら一点に集中する。
男は、私がロマネスクの付き人であること、そしてロマネスクの過去を碌に知らぬことを彼らに話した。
付き人という点でやはり警戒されたものの、
事情に疎いのだというところで警戒は少し薄れた。
176
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 19:19:41 ID:XtofEtDE0
川 ゚ -゚)「あなた達はどうやって集まったんだ」
( ´ー`)「ロマネスクが中央へ向かってるって噂を聞いて、先回りしてたんだヨ。
なかなか来ないからやきもきしてたけど、おかげでこうして仲間が増えた」
初めから集団でいたわけではなく、
同じような考えを持った者が自然に集まったわけか。
それだけの執念を持った者が、これだけいる。
川 ゚ -゚)「どうしてゴールの中央ではなく、一つ隣のこの町に?」
( ´ー`)「今、あいつのような人間が中央に集まってきてる。
だから騒ぎが起きないよう、厳重な警備態勢が敷かれてるヨ。
まあ俺達はそれでも玉砕する覚悟は決めてたが」
たしかに、天災、あるいは大戦で何かしらのごたごたに巻き込まれた権力者や資産家は多い。
ここにいる彼らのように、行動を起こそうとする者も。
( ´ー`)「けど、いくつか先の街で起きた殺人事件に
あいつが関わったって話を今更ながら聞いてな」
川 ゚ -゚)「ああ、……うん」
177
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 19:20:37 ID:XtofEtDE0
( ´ー`)「あの街から中央に直接来るなら、3週間前の列車か船に乗って、とっくに到着してる筈。
なのに探しても見付からないってことは、徒歩か馬車で移動してるんだろうと踏んだ」
( ´ー`)「それなら必ずこの町を経由する。
──で、来てみれば当たってたってわけだヨ」
川 ゚ -゚)「なるほどな」
( ´ー`)「やたら強い護衛を何人も連れてるって噂があったから
なんとか隙をつけないかと警戒してたけど、
そもそも宿から出てきやしネーからちょっと困ってたヨ」
──ロマネスクも、彼らのような存在を予測していたのだろう。
だから宿から出ないし、ぎりぎりまで出発しない。
( ´ー`)「とはいえ中央に行くなら、いつまでも篭ってるわけにもいかネー筈だ。
そこを狙う」
川 ゚ -゚)「……殺すのか」
分かりきったことを問う。
すると彼は顔を顰め、私の目を覗き込んできた。
178
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 19:21:56 ID:XtofEtDE0
( ´ー`)「俺らの話を聞いても、あいつの味方をするのかヨ?」
川 ゚ -゚)「味方、……というわけでは、ないが」
(#´ー`)「……なら協力してくれヨ!
俺達がどれだけあいつを憎んでるか分かるだろ!?」
男だけでなく、辺りにいた者達も声を荒らげた。
ロマネスクによって、いかに自分の大切な人を奪われたかを訴えてくる。
情に訴えるか脅すかして、私を抱き込むつもりなのか。
──その中で、1人、涙を流して座り込む女がいた。
ノハ;⊿;)
蹲り、ぼろぼろと泣いている。
彼女の背を摩ってやりながら、男は些か落ち着いて口を開いた。
( ´ー`)「あいつは、ロマネスクは、今も犠牲者を増やしてる。
用心棒がいるせいだ」
( ФωФ)『いやあ強い強い、おかげで我輩は屈強な男を何人も雇っていると勘違いされたのである』──
数ヵ月前にロマネスクが言っていた。
彼らもその勘違いをしているようで、私が護衛だという考えには至っていないらしい。
179
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 19:22:33 ID:XtofEtDE0
川 ゚ -゚)「……誰か、身内を、その──用心棒に殺されたのか」
平静を装い、女の前にしゃがみ込んで訊ねる。
彼女はしゃくり上げながら、切れ切れに答えた。
ノハ;⊿;)「またんきが──息子が、息子が……殺されて……」
心臓が嫌な跳ね方をした。
妙な方向に跳ねて、そのまま引っ掛かってしまったような、
収まりが悪くて息苦しい感覚に襲われた。
180
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 19:23:57 ID:XtofEtDE0
──またんきの母親?
生きていたのか。
またんきと別れたあと、どこか避難所を見付けられたのか。
それなら。
またんきは何のために。
( ´ー`)「この人はロマネスクのせいで、天災のときに息子さんと離れ離れになったんだヨ。
何ヵ月か前、ようやく息子さんがいる町を突き止めたが──」
( ´ー`)「息子さんは路地で死んでいた」
またんきは何のために死んだのだ。
.
181
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 19:25:23 ID:XtofEtDE0
男の声が、どこかふわふわして、上手く入ってこない。
右手が震えそうになる。小さな体を貫いた手応えが蘇る。
ノハ;⊿;)「お、女の人が、その町の女の人が、またんきに頼まれて、
ロマネスクを路地に誘導、したって、言ってた……っ」
ノハ;⊿;)「あの子、ロマネスクに何かしようとして用心棒に殺されたんだ!
あんな小さい体で、無茶して……!」
( ´ー`)「……きっと、母親が生きてるのを知らなくて仇をとろうとしたんだヨ」
その通りだ。
あの子は母親を愛していた。そのためにロマネスクを殺そうとした。
だから私に殺された。
手にかけたのはロマネスクではなく私だ。
しかし彼らは、護衛よりも、全ての元凶であるロマネスクに憎しみを向けている。
それが、居心地悪い。
( ´ー`)「……あいつは、ここで殺さないといけネーヨ」
男が真剣な目を私に向けた。
「これ以上のさばらせておいたら、ますます犠牲者が増える」。
彼がそう言うと、後ろから一歩出た初老の男が、ずだ袋を私の目の前に置いた。
何枚もの紙幣が詰まっている。
182
:
同志名無しさん
:2015/12/06(日) 19:25:29 ID:OlJ8ijGw0
うわあ……
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