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消せない番号のようです

1同志名無しさん:2014/08/17(日) 16:40:28 ID:0Znl/ILg0

  .,、
 (i,)
  |_|

.

25同志名無しさん:2014/08/17(日) 17:18:33 ID:0Znl/ILg0


ξ゚⊿゚)ξ「……遅いなぁ」


 それでも待ち合わせは続ける。
 今日は、もう30分は待っている。時間に折り目正しいトソンは、私よりも先に着いていることの方が多い。
 遅れる時も、ちゃんと連絡をくれるのに、今日はそれもなかった。
 メールしようとケータイを取りだした時、ちょうど着信が入る。――トソンだ。


ξ゚⊿゚)ξ「もしもし、トソン?」

     『もしもし。すみません、連絡が遅くなって』

ξ゚⊿゚)ξ「それはいいけど、どうしたの?」

     『実は、ちょっと捻挫してしまって』

ξ;゚⊿゚)ξ「え、だ、大丈夫なの? っていうか今どこ?」

     『今、外来で――』

ξ゚⊿゚)ξ「――」


 トソンの告げた病院は、兄さんが搬送された病院だった。
 
.

26同志名無しさん:2014/08/17(日) 17:19:49 ID:0Znl/ILg0

(゚、゚トソン「公園に向かう途中、何かにつまづいて」

ξ゚⊿゚)ξ「それで足を捻挫しちゃったの?」

(゚、゚トソン「はい。……左手を掴まれて、そっちもちょっと捻りかけました」

ξ゚⊿゚)ξ「……なにか、に?」

(゚、゚トソン「……はい」


 白い包帯を巻かれた足首。
 制服から覗く手首には、くっきりと痕が残っていた。
 手で掴んだような痕が。

 頻度は少ないけれど、トソンの家でも似たような現象が起こっている。
 その現場にも居合わせた。
 そしてついに、トソン自身にも。


ξ ⊿ )ξ


 黙り込んだ私に、トソンは声を掛けられずにいる。

.

27同志名無しさん:2014/08/17(日) 17:21:17 ID:0Znl/ILg0


ξ゚⊿゚)ξ「……兄さん、なの?」

(゚、゚;トソン「っツンちゃ、」

ξ゚⊿゚)ξ「兄さんなのかな。寂しがり屋だもんね」

(゚、゚;トソン「ツンちゃんっ」

ξ゚⊿゚)ξ「でも」

(゚、゚;トソン「……」

ξ ⊿ )ξ「父さんや……トソンにまで、怪我させるなんて、そんなの」

(゚、゚;トソン「違いますよ! きっと、ただの偶然です」

ξ ⊿ )ξ「だって、いるんだもの」

(゚、゚#トソン「だって、ネーヨさんはそんなことしません!!」


 キツい声で怒鳴られて、はっと我に返る。
 トソンは泣きそうな顔で、私を見つめていた。


( 、 トソン「そんなことする人じゃないって、ツンちゃんが一番よく、分かってるでしょう……」


 通夜の時の、必死に堪えている顔だった。

 『優しい子だーヨ』
 『うまく自分を表現できない所は、ちょっとツンと似てるかもしれネーヨ』

 ぎゅっと、抱きつく。
 ごめん、と言うと、小さく首を振るのが伝わった。
 暫くそのまま、私たちは抱き合っていた。

.

28同志名無しさん:2014/08/17(日) 17:22:40 ID:0Znl/ILg0


 兄さん。
 ねえ兄さん。
 そこにいるの?

 兄さん。
 こたえてよ、にいさん。


 異常な現象は、続いた。
 不意に落ちてきた置物にぶつかったり、水が滴っていたり。
 兄さんの部屋から物音がする。
 こつこつ、私の部屋をノックする。


(゚、゚#トソン『だって、ネーヨさんはそんなことしません!!』


 でもね、トソン。
 兄さんがいるなら、そうとしか考えられないの。

.

29同志名無しさん:2014/08/17(日) 17:24:46 ID:0Znl/ILg0


ξ゚⊿゚)ξ白


 兄さんの番号。
 繋がらない、番号。


ξ゚⊿゚)ξ白ピッ


 呼び出し音が響く。
 5つ数えた所で、途切れた。


 ざ、ざ、ぁ

    『―――…、』


ξ゚⊿゚)ξ白「兄さん……?」


 ざざ、ぎぃ、

    『  ン      ら』


ξ゚⊿゚)ξ白「にいさん」


 ぷつ、と、それきり何も聞こえなくなった。


ξ゚⊿゚)ξ「……いる、のね」


 手の中のケータイが、ぱちりと静電気の音を立てた。


.

30同志名無しさん:2014/08/17(日) 17:26:38 ID:0Znl/ILg0


 数日後の休日、トソンが訪ねてきた。
 父さんのお見舞いとお返しに、とのことだったけれど、父さんも母さんも仕事で出ていた。


ξ゚⊿゚)ξ「トソンだって捻挫してるのに」

(゚、゚トソン「もう普通に歩けますから、大丈夫ですよ」

ξ゚⊿゚)ξ「麦茶でいい?」

(゚、゚トソン「あ、お気遣いなく」


 さらりとそんな言葉を言えるトソンは、本当に大人びている。
 私だったら、いいよ大丈夫、とか言ってしまうだろう。
 麦茶を飲んで一息。


(゚、゚トソン「ご仏壇、いいですか」

ξ゚⊿゚)ξ「……うん」


 少し躊躇って、頷いた。
 だって兄さんが。
 いいや、いない、そこにいるわけがない。
 だって、

.

31同志名無しさん:2014/08/17(日) 17:28:24 ID:0Znl/ILg0


人(-、-トソン


 静かに手を合わせるトソン。
 いつも、何を伝えているのだろう。


 かたり、と部屋の隅から音がした。


(゚、゚トソン「!」


 トソンが目を開ける。
 かた、かた、と音は続く。
 その感覚はどんどん短くなり、部屋全体に響いて震えるまでに大きくなっていく。


(゚、゚;トソン「こ、れは」

ξ;゚⊿゚)ξ「い、今までより、強い……」


 がたん、がたん、がたん!


 激しく主張する。
 ここにいる、と。

.

32同志名無しさん:2014/08/17(日) 17:30:32 ID:0Znl/ILg0

(>、<トソン「きゃっ」


 トソンに倒れた花瓶の水が掛かる。
 その一瞬。
 トソンを掴む手を、見た。


ξ;゚⊿゚)ξ「――ッ」


 兄さん。


ξ゚⊿゚)ξ「――兄さんっ!」

(゚、゚;トソン「つ、ツンちゃん」

ξ゚⊿゚)ξ「兄さん、いるんでしょ、そうなんでしょ!?」


 声を張り上げる。


ξ゚⊿゚)ξ「ねえ、もういいよ、出てきて! 私に何かあるんでしょ?」

ξ゚⊿゚)ξ「電話とれなかったもんね。普段から喧嘩だってしたし」

ξ゚⊿゚)ξ「でも、でもさ、トソンにまで怪我させるの、違うよ!」

ξ ⊿ )ξ「だから兄さん、お願い、こたえて……」

.

33同志名無しさん:2014/08/17(日) 17:32:37 ID:0Znl/ILg0


 ふわりと、後ろから抱きすくめられた。


( 、 トソン「ツンちゃん」


 トソンの声がすぐ傍で聞こえる。


( 、 トソン「ネーヨさんは……あなたのシラネーヨ兄さんは、死んだんです」

ξ ⊿ )ξ「……でも、今、いる」

( 、 トソン「ええ。そこの、骨壺の中に」


 前を見て、と囁かれる。
 白い、木箱。


ξ ⊿ )ξ「……そんな、小さい所じゃないわ。今だって、ほら、部屋が――」

( 、 トソン「ツンちゃんは、まるでネーヨさんが生きてるみたいに話をします」

ξ ⊿ )ξ「……い、」

( 、 トソン「いるかもしれない。でも、生きてるのは、違う」

(゚、゚トソン「言って。ネーヨさんは、どうなったのか」


 トソンの声は、優しく――決して無言を許さない強さを持っていた。

.

34同志名無しさん:2014/08/17(日) 17:34:44 ID:0Znl/ILg0

ξ ⊿ )ξ「……」

(゚、゚トソン「……なら、あなたのお兄さんは、どんな人でしたか」

ξ ⊿ )ξ「にい、さん」


         ( ´ー`)


ξ ⊿ )ξ「間抜けで、寂しがり屋で……」


    ξ・⊿・)ξつ⊂(´ー` )


ξ ⊿ )ξ「のんびりしてて、その癖、妙な所で変な気遣いして……」


          ( *´ー`)∂


ξ ⊿ )ξ「……私を」


           (  ー )


ξ;⊿;)ξ「っ……私たちを、置いて……死んじゃった」


 二度と話せない、会えない、顔も見れない。


ξ;⊿;)ξ「馬鹿な、人よ……!」

.

35同志名無しさん:2014/08/17(日) 17:36:16 ID:0Znl/ILg0


 トソンの腕に力が籠る。
 その腕に縋って、顔をを埋めた。
 あたたかい。

 兄さんは、死んだ。
 ああ、何だ。
 そんなことも私は、知りたくなかったのか。


 ――何かが、頭を撫でる。
 トソンと全く違う、ひんやりした不思議な感覚。


ξ;⊿;)ξ「にいさん」


 そして、部屋の揺れは、ぴたりと止まった。

.

36同志名無しさん:2014/08/17(日) 17:38:15 ID:0Znl/ILg0


( 、 トソン「本当……馬鹿な人、ですよね」

ξ゚⊿゚)ξ「……うん」


 腕を解いて、トソンに向き合う。


(゚、゚トソン


 泣いているのかと思ったけれど、目元が赤くなっているだけで、トソンは泣いていなかった。


(゚、゚トソン「落ち着きました?」

ξ゚⊿゚)ξ「うん」

(゚、゚トソン「……ちょっとこれは、片づけないとですね」

ξ;-⊿-)ξ「あー、うん……」


 色々と物がズレて散乱していた。
 二人で元の位置に戻し、水を拭いてついでに掃除機もかける。

.

37同志名無しさん:2014/08/17(日) 17:40:20 ID:0Znl/ILg0

ξ゚⊿゚)ξ「トソン」

(゚、゚トソン「はい?」

ξ゚⊿゚)ξ「ありがとう」

(゚、゚トソン「……いえ」


    【( ´ー`)】


 遺影の兄さんを見る。
 火葬場で見た時と同じ、変わらない、気の抜けた顔。
 もう。
 ――もう、生身の兄さんに会うことは、ないのだ。

.

38同志名無しさん:2014/08/17(日) 17:42:13 ID:0Znl/ILg0

ξ゚⊿゚)ξ「さっき、ね。何か冷たいのが頭に触ったの」

ξ-⊿-)ξ「……ほんとにお別れ、ってことかな」

(゚、゚トソン「……」

(゚、゚トソン「ネーヨさんは、『いた』んですね」

ξ゚⊿゚)ξ「……うん。『いた』」

(゚、゚トソン「きっと、もう妙なことは起こらないですよ」

ξ゚⊿゚)ξ「そうかな」

(゚、゚トソン「ええ」


 トソンがきっぱり言い切るものだから、そうなのだろうと納得してしまった。
 もう、大丈夫なのだ。



 その日から、怪奇現象は、起こらなくなった。


.

39同志名無しさん:2014/08/17(日) 17:44:13 ID:0Znl/ILg0


 後日、トソンと電話の話をした。


ξ゚⊿゚)ξ「結局、何だったのかは分かんないままだけど」

(゚、゚トソン「ツンちゃんが、心配だったんじゃないですか」

ξ゚⊿゚)ξ「……うー」

(゚、゚トソン「どうしたんです?」

ξ;*-⊿-)ξ「何かハズい」

(゚、゚トソン「照れることないのに」

ξ∩⊿∩)ξ「いや、もう何ていうかさ。ぅぐー……」


 くすくすとトソンの笑う声が聞こえる。
 居た堪れなくない。というか暫く顔を上げられそうにない。

.

40同志名無しさん:2014/08/17(日) 17:46:00 ID:0Znl/ILg0


(゚、゚トソン「……私も、あの電話が何だったかは分からないんですけど」


 ちらりと横目で見ると、トソンはスマホを取り出していた。
 見ている画面は、恐らく着信履歴。


(゚、゚トソン「ネーヨさんが、心配してくれてたんだって、思うようになりました」

ξ∩⊿∩)ξ「うん。そだね」

(゚、゚トソン「……いつまでそうしてるんです?」

ξ゚⊿゚)ξ「ぶっちゃけこの態勢、ちょっと疲れてた」

(゚、゚トソン「ですよね」

ξ゚⊿゚)ξ「私も」

ξ゚⊿゚)ξ白「結局なに言いたかったのか分かんないけど、
        また変な気遣いだったんだろうなって思うことにした」

.

41同志名無しさん:2014/08/17(日) 17:47:43 ID:0Znl/ILg0


 着信履歴。
 今、残っているのは兄さん。そして、今日待ち合わせする時に掛かってきた、トソン。
 見上げると、兄さんの間抜け面みたいな雲があった。


ξ゚⊿゚)ξ「ばぁか」


 呟いて、立ち上がる。


ξ゚⊿゚)ξ「ね、何か甘いもの食べに行かない?」

(゚、゚トソン「いいですね。持ち帰りにして、一緒に勉強しましょうか」

ξ;゚⊿゚)ξ「ええー、お店で食べてこうよー」

(゚、゚トソン「受験、もう半年ないんですから。第一志望、A判定貰えてます?」

ξ;-⊿-)ξ「うっ」

(゚、゚トソン「私も教えますから」

ξ゚⊿゚)ξ「はぁ。しゃーない、頑張るか」

(゚、゚トソン「ええ、頑張りましょう」

.

42同志名無しさん:2014/08/17(日) 17:49:26 ID:0Znl/ILg0


 もう、着信履歴を消すことはない。
 いつか自然に埋まって、流れていくまで残り続けるけれど。
 番号だって暫く、もしかしたらずぅっと消せないかもしれないけれど。


ξ゚⊿゚)ξ「よっし、行こ!」

(゚、゚トソン「何にしましょうか」


 思いは消えないから。
 今、ここにいるのは、私たちだから。

 だから、大丈夫だよ、兄さん。


.

43同志名無しさん:2014/08/17(日) 17:50:17 ID:0Znl/ILg0




ξ゚⊿゚)ξ消せない番号のようです



.

44同志名無しさん:2014/08/17(日) 17:51:17 ID:0Znl/ILg0







.

45同志名無しさん:2014/08/17(日) 17:52:35 ID:0Znl/ILg0



 恋人が、死んだ。
 優しい、大らかな人だった。



('A`) 川 ゚ -゚)


 葬儀で会った彼の両親は、彼と同じように優しく、温かだった。


ξ゚⊿゚)ξ


 そして、私と同い年の妹も。
 彼――ネーヨさんと同じように、私を受け入れてくれた。

.

46同志名無しさん:2014/08/17(日) 17:54:26 ID:0Znl/ILg0


 彼女――ツンちゃんは少し口が悪くて、でも悪意を含まない照れ隠しのようなもので、一緒にいて心地よかった。
 死んだ兄の恋人など、扱いに困るだろうに、普通に接してくれている。
 ツンちゃんとは、ネーヨさんの話をよくした。
 当然といえば当然だったけれど――少し、不可解な部分が出てきた。


ξ゚⊿゚)ξ「それでね、何回も同じ場所で頭ぶつけて、毎度手当する私の身にもなれって話よ」


 最初はほんの少し違和感を覚える程度だった。
 ただそれが積み重なっていく内に、その違和感は増々はっきりしていく。


ξ゚⊿゚)ξ「兄さんったら、幾つになっても子供みたいなのよね」


 まるで、ネーヨさんが生きているような口ぶりなのだ。
 話す内容はそのものは思い出話だ。なのに口調は、ついこの間あったことのようだった。


 そして、あの日。
 ネーヨさんからの電話の話をしてから――はっきりと、変わった。
 ツンちゃんが取れなかった電話、壊れたケータイから私に掛かってきた電話。
 偶然だと、私もツンちゃんも、言い聞かせて。

.

47同志名無しさん:2014/08/17(日) 17:56:37 ID:0Znl/ILg0


□(゚、゚トソン


 消せない番号と履歴を眺める。
 暫くそっちいけない、と言ったネーヨさん。
 確かにネーヨさんの声だった。あれは、どういう意味だったのか。
 彼にはいく所がある、だから私の所へはいけない、単純に解釈するならそうなるのだけれど。


ξ゚⊿゚)ξ「……最近、物音がするの」

(゚、゚トソン「私の家も……時々」


 電話の話をしてから、話題は奇妙な現象についてが多くなった。
 事実、ツンちゃんの家ではかなり頻繁に起こっているようだし、私の家でも時々ある。
 ツンちゃんのお父さんは、怪我をしたそうだ。
 ――電話の話は、お互い出せなかった。

 それでも尚、ネーヨさんのことを話すツンちゃんの口調は、変わらなかった。

.

48同志名無しさん:2014/08/17(日) 17:58:44 ID:0Znl/ILg0


(゚、゚トソン(……よし、時間ぴったりに着きそう)


 ツンちゃんとの待ち合わせに向かう。
 途中、不意に足を取られた。
 転ぶ。
 右腕が、下に、


(゚、゚;トソン「っ」


 がくん、と左手に強い力が掛かる。
 強引に体勢が戻されて、けれどバランスは取りきれずに転んでしまう。
 足が痛い。多分、捻挫だろう。
 左手と右手を見比べる。
 手形のような痕が、くっきりついていた。

 でも――利き腕は、無事だった。


.

49同志名無しさん:2014/08/17(日) 18:00:49 ID:0Znl/ILg0

ξ゚⊿゚)ξ「……兄さん、なの?」

(゚、゚;トソン「っツンちゃ、」

ξ゚⊿゚)ξ「兄さんなのかな。寂しがり屋だもんね」

(゚、゚;トソン「ツンちゃんっ」

ξ゚⊿゚)ξ「でも」


 私の腕を見たツンちゃんは、浮かされたように言葉を紡いでく。
 その目はどこを見ているのか。


ξ ⊿ )ξ「父さんや……トソンにまで、怪我させるなんて、そんなの」

(゚、゚;トソン「違いますよ! きっと、ただの偶然です」


 駄目。そうじゃない、違う。


ξ ⊿ )ξ「だって」(゚、゚#トソン


      「いるんだもの」

   「ネーヨさんはそんなことしません!!」


 ツンちゃんの声をかき消すように叫ぶ。
 目の焦点があって、ようやくこちらを見てくれた。
 ぎゅっと、抱きしめる。

 ネーヨさんはそんなことする人じゃない。ツンちゃんが一番知っている筈なのに。
 ツンちゃん。
 あなたの中で、ネーヨさんはどうなっているの?

.

50同志名無しさん:2014/08/17(日) 18:02:37 ID:0Znl/ILg0


□(゚、゚トソン


 未だに残るネーヨさんの番号。
 消せない。


( ´ー`)『ほら、卒業までに何かあるかもしれないし。卒業したら、ちゃんと紹介したいんだーヨ』

(゚、゚トソン『……私が心変わりするかもって意味ですか?』

( ´ー`)『そうじゃ……や、まあ、そういう可能性もなくは』

(゚、゚トソン『ネーヨさん』

( ;´ー`)『…………あの、ごめん、言い方悪かったーヨ』

(゚、゚トソン『そうですね』

( ;´ー`)『いや……うん、ごめん。
      でも卒業したら絶対紹介するし、トソンのご両親にも挨拶に行くーヨ』

(゚、゚*トソン『はい』

( *∩ー∩)、『ぅぐ……何か、照れるな』

(゚、゚*トソン『ふふ』

( ´ー`)『……ツンに会うことがあったら、仲良くしてくれると嬉しいヨ。意外と繊細だから』

.

51同志名無しさん:2014/08/17(日) 18:04:11 ID:0Znl/ILg0


 何故か、寂しさを覚えた。
 ネーヨさんの言い方は確信している響きがあった。
 今思えば、その場に自分がいないのが分かっているような。


□(゚、゚トソン「……ネーヨさん」


 ある可能性を、思いつく。
 馬鹿みたいな可能性。でも、私はもう、怪奇現象に遭遇している。
 ならば、その可能性を調べてみようじゃないか。

 図書館、本屋、ちょっと怪しげな占い師。
 思い至った可能性が少しずつ確信に変わっていく。
 ツンちゃんに連絡をとって、休日にお邪魔することにした。


□(゚、゚トソン「ネーヨさん」


 あの電話は、私を気遣うものであると同時に――私を頼るものだったと、思っていいんですね?


.

52同志名無しさん:2014/08/17(日) 18:05:55 ID:0Znl/ILg0


ξ゚⊿゚)ξ「いらっしゃい」


 ツンちゃんはいつも通りに迎えてくれた。
 私の怪我を案じてくれるのもいつも通り。
 仏壇に、と言うと、少し躊躇ってからツンちゃんは頷いた。


人(-、-トソン


 ネーヨさん。
 私はあなたが好きでした。
 あなたのご両親にもよくして頂いて、ツンちゃんとは仲良くなれたと思います。
 今、私は――ツンちゃんが、とても大切です。
 だから。

.

53同志名無しさん:2014/08/17(日) 18:07:55 ID:0Znl/ILg0


(゚、゚;トソン「こ、れは」

ξ;゚⊿゚)ξ「い、今までより、強い……」


 響いて、揺れる部屋。


(>、<トソン「きゃっ」


 花瓶が倒れ、ひんやりした何かが私の身体を引いた。


ξ;゚⊿゚)ξ「――ッ」


 ツンちゃんが息を呑む。


ξ゚⊿゚)ξ「――兄さんっ!」

(゚、゚;トソン「つ、ツンちゃん」

ξ゚⊿゚)ξ「兄さん、いるんでしょ、そうなんでしょ!?」

ξ゚⊿゚)ξ「ねえ、もういいよ、出てきて! 私に何かあるんでしょ?」


 ツンちゃんが必死に声を上げる。
 私の心配をしてくれる、優しい友達。

.

54同志名無しさん:2014/08/17(日) 18:09:04 ID:0Znl/ILg0

ξ゚⊿゚)ξ「電話とれなかったもんね。普段から喧嘩だってしたし」

ξ゚⊿゚)ξ「でも、でもさ、トソンにまで怪我させるの、違うよ!」


 どんどん声が泣き出しそうになっていく。
 だから、私は。


ξ ⊿ )ξ「だから兄さん、お願い、こたえて……」


( 、 トソン「ツンちゃん」


 私は、ツンちゃんを――繋ぎ止めてみせる。

.

55同志名無しさん:2014/08/17(日) 18:10:51 ID:0Znl/ILg0


( 、 トソン「ネーヨさんは……あなたのシラネーヨ兄さんは、死んだんです」

ξ ⊿ )ξ「……でも、今、いる」

( 、 トソン「ええ。そこの、骨壺の中に」

ξ ⊿ )ξ「……そんな、小さい所じゃないわ。今だって、ほら、部屋が――」


 部屋はまだ震えている。
 ツンちゃんの身体の震えと同調しているみたいに。


( 、 トソン「ツンちゃんは、まるでネーヨさんが生きてるみたいに話をします」

ξ ⊿ )ξ「……い、」

( 、 トソン「いるかもしれない。でも、生きてるのは、違う」


 そう、いるかもしれない。
 いや――いるのだと、この瞬間私は確信していた。
 でも違うのだ。
 ツンちゃんとネーヨさんは、もう、違う場所にいるのだ。

.

56同志名無しさん:2014/08/17(日) 18:12:31 ID:w9N7fEcs0
シエンヌ

57同志名無しさん:2014/08/17(日) 18:13:11 ID:0Znl/ILg0


(゚、゚トソン「言って。ネーヨさんは、どうなったのか」


 ツンちゃんは答えない。
 答えられない。


(゚、゚トソン「……なら、あなたのお兄さんは、どんな人でしたか」

ξ ⊿ )ξ「にい、さん」


 ぽつりと、零れる。


ξ ⊿ )ξ「間抜けで、寂しがり屋で……」


          ( ´ー`)


ξ ⊿ )ξ「のんびりしてて、その癖、妙な所で変な気遣いして……」


         ( ´ー`)v(゚、゚トソン


ξ ⊿ )ξ「……私を」


           (  ー )


ξ;⊿;)ξ「っ……私たちを、置いて……死んじゃった」


 ツンちゃん。 


ξ;⊿;)ξ「馬鹿な、人よ……!」

.

58同志名無しさん:2014/08/17(日) 18:13:56 ID:0Znl/ILg0


 ああ。ようやく。
 ツンちゃんが泣いている。
 ツンちゃんが――ネーヨさんを、死んだと、言った。


ξ;⊿;)ξ「にいさん」


 そして、部屋の揺れは、ぴたりと収まった。


.

59同志名無しさん:2014/08/17(日) 18:15:54 ID:0Znl/ILg0


 私が行き着いた仮説は、まず幽霊がいるということを前提に、
 ――いわゆる超能力というもののせいではないか、ということだ。
 自分でも馬鹿なとは思うけれど、幽霊を前提にしている時点で、もう大概何でもいい気はしている。
 PSI、サイとも言うらしい。

 ネーヨさんは、予知能力のようなものを持っていたのかもしれない。
 だから卒業するまで私の両親に会おうとしなかったし、私を紹介することもなかった。
 もしかすると、自分が亡くなった後、ツンちゃんがどうなるかまで。

.

60同志名無しさん:2014/08/17(日) 18:17:17 ID:0Znl/ILg0


 ツンちゃんは、ネーヨさんの死を認められなかった。
 そこに『いる』のだと、足音や物をずらす――ポルターガイストを起こして逆説的に証明していたのだ。
 ただし、無意識に。

 それが加速したのは、電話の件を話してからだ。
 ツンちゃんは『いる』のだと確信した。だから、呼応してポルターガイストも酷くなった。
 お父さんや私の怪我は――偶然か、暴走してしまった結果なのだと思う。

 そしてもう一つ。
 私を掴んだ手。
 ……きっとあれは、本当にネーヨさんだったのだ。

.

61同志名無しさん:2014/08/17(日) 18:20:05 ID:0Znl/ILg0


 秋晴れの空の下、私とツンちゃんは電話の件を話題に出した。


ξ゚⊿゚)ξ「結局、何だったのかは分かんないままだけど」

(゚、゚トソン「ツンちゃんが、心配だったんじゃないですか」

ξ゚⊿゚)ξ「……うー」

(゚、゚トソン「どうしたんです?」

ξ;*-⊿-)ξ「何かハズい」

(゚、゚トソン「照れることないのに」

ξ∩⊿∩)ξ「いや、もう何ていうかさ。ぅぐー……」


 ああ、照れ方が同じだ。
 堪えきれずに笑うと、ツンちゃんは更に顔を覆った。

.

62同志名無しさん:2014/08/17(日) 18:22:22 ID:0Znl/ILg0

(゚、゚トソン「……私も、あの電話が何だったかは分からないんですけど、
     ネーヨさんが、心配してくれてたんだって、思うようになりました」

ξ∩⊿∩)ξ「うん。そだね」

(゚、゚トソン「……いつまでそうしてるんです?」

ξ゚⊿゚)ξ「ぶっちゃけこの体勢、ちょっと疲れてた」

(゚、゚トソン「ですよね」

ξ゚⊿゚)ξ「私も」

ξ゚⊿゚)ξ白「結局なに言いたかったのか分かんないけど、
        また変な気遣いだったんだろうなって思うことにした」


 そう。気を使うなら、伝言でも残してあげればよかったのに。
 でも、いいのだ。
 それが、私たちが好きなネーヨさんだから。
 ツンちゃんを心配して、私を心配して、そして頼ってくれたネーヨさん。


ξ゚⊿゚)ξ「ばぁか」


 ツンちゃんが呟いて、立ち上がる。
 あの日、『いた』とツンちゃんは言った。
 もう、思い出を語っても、そこに引きずられることはない。

.

63同志名無しさん:2014/08/17(日) 18:23:31 ID:0Znl/ILg0

ξ゚⊿゚)ξ「ね、何か甘いもの食べにいかない?」

(゚、゚トソン「いいですね。持ち帰りにして、一緒に勉強しましょうか」

ξ;゚⊿゚)ξ「ええー、お店で食べてこうよー」

(゚、゚トソン「受験、もう半年ないんですから。第一志望、A判定貰えてます?」

ξ;-⊿-)ξ「うっ」

(゚、゚トソン「私も教えますから」

ξ゚⊿゚)ξ「はぁ。しゃーない、頑張るか」

(゚、゚トソン「ええ、頑張りましょう」


 まだツンちゃんに仮説を伝えてはいない。
 仮説は仮説だし、当たっていたとしたらツンちゃんは気に病むだろう。
 伝えるのなら、もう少しだけ時間をおいて。


ξ゚⊿゚)ξ「よっし、行こ!」

(゚、゚トソン「何にしましょうか」

.

64同志名無しさん:2014/08/17(日) 18:25:03 ID:0Znl/ILg0


 スマホに残る番号。
 いつか、掛けてみようか。
 使われていないとアナウンスされるか、知らない人に繋がるか。
 それできっと、さようなら。

 もしもあなたに繋がったら――ツンちゃんと一緒にこう言ってやろう。


 『大丈夫だから、さっさと成仏してよね』


 何の甘味にしようかツンちゃんと話しながら、自然と小さな笑みが零れていた。


.

65同志名無しさん:2014/08/17(日) 18:26:04 ID:0Znl/ILg0



消せない番号のようです(゚、゚トソン


.

66同志名無しさん:2014/08/17(日) 18:27:47 ID:0Znl/ILg0


         (
         )
( ´ー`)-3  i  フッ
        |_|

67同志名無しさん:2014/08/17(日) 18:38:05 ID:/IqZAyjgO
怖かったけど最後ちょっとほっこりした、乙

68同志名無しさん:2014/08/17(日) 22:01:09 ID:1psdjU7s0
乙です
話読むのに夢中になっててどっと疲れたわ

69同志名無しさん:2014/08/18(月) 17:01:45 ID:kBMNARxI0
ネーヨが消すのかww
乙乙

70 ◆v9sUzVr/7A:2014/08/25(月) 22:48:01 ID:ZO400mL.0
こっそりはい俺ー
(´・ω・`)は見ちゃったようです と合わせて、支援と乙ありがとう
またどこかでお会いしましょう

71同志名無しさん:2014/08/26(火) 11:01:00 ID:UtHZDNNc0
おお、乙!
趣の違う二作品面白かったお

72同志名無しさん:2014/09/15(月) 13:20:43 ID:Rg4bO3Es0
 の は

73 ◆zEGpD4VZDY:2014/09/21(日) 02:46:12 ID:aISMc5Bo0



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