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仮投下スレ

341 ◆m8iVFhkTec:2013/11/13(水) 22:45:01 ID:bf5RQd8w0
「……ごめんなさい。私たちが行ったところで何も出来ないわ……」

出てきたのは謝罪の言葉。
不用意にリスクのある行動を取りたくなかった。
例え、助けたいという気持ちが本物であっても、自分の方が大切だった。

「やる夫、逃げるわよ」
「わ、わかったお……」

やる夫もまた、その意見に反対しようとはしなかった。
薄情な行為かもしれない。しかし、わざわざ死地に飛び込みたいとは思わない。

二人は黙って外へと走り出した。
すぐにチハに乗り込んで、その場を離れる。
彼の身が無事であることを祈りながら。


 ◆


廊下を全力で駆け抜け、奥のロッカールームの方へと進む。
そして、そこに広がる光景は、想像しうる中で最悪のものだった。

赤、赤、赤。
生き物という容器に目一杯詰められた、血液という液体。
その大量の液体が溢れ出て、廊下に大きな池を作っている。

ぐちゃり、ぐちゃり、ぐちゃり。
肉を貪る黒い怪物の姿あった。
内臓を引きちぎり、牙でさらに滅茶苦茶に咀嚼されていく。
怪物が食しているのは、ミルコが知っている顔。
タレ目を少しだけ引きつらせた驚愕の表情を携えたまま、ピクリとも動かない。

「ネメア、アイアンヘッド」

クタタンの声に反応し、化物はすぐさま食事を中止する。
赤く――文字通り血のように赤く、ナイフのように尖った鋭い角が、ミルコの方に向けられる。
そして突撃。
ミルコはその動きを捕捉する。そしてギリギリまで引き寄せ、左側へと抜ける。
真横の位置から、強烈なキックを叩き込む。確かな手応え、怪物の体が僅かに軋む。

急停止をした怪物はこちらへ居直ろうとする、そこへもう一撃蹴りを叩き込む。

「てっぺきだ!」

クタタンの指示、刹那、ネメアの体が水銀のような光を放つ。
顔面へと叩きつけられた蹴り、それが金属的な音を響かせた。

「―――ッ!?」

その硬さの変化に、体が予測出来なかず、己の足の骨が嫌な音を奏でる。
この鈍い痛みは、ひびが入ったに違いない。襲い来る苦痛にミルコは顔を歪ませた。

ネメアはそのまま覆いかぶさり、マウントポジションを取る。
ミルコはアーチをネメアの口内に押し付け、必死に牙を押さえつける。
その時、頭に強烈な衝撃を受けた。
巨大な鈍器で殴りつけられた。視界が大きくブレた。
そばには、バスタードソードを構えたウラーの姿があった。

その顔は恐怖に満ち溢れ、たった今自分が行なった行為にも焦りをあらわにしていた。

「ウラー、一体何を……」
「悪くない、俺は悪くない、悪くないんだ、殺さなきゃ俺が殺される、だから悪くないんだ。
 これは正当防衛なんだ、悪いことじゃないんだ、仕方ないんだ、自分の命を優先していいんだ」
「お前は、何を言っているんだ」
「あんな殺され方したくない、だから仕方ないんだ。俺が生きるためだから、悪くない。
 きんきゅ、緊急き、ひ、避難法、緊急避難法が、ついて、ついてるんだ、俺には」

もはや気が動転して、言っていることが完全に曖昧だった。
だがわかった。きっと、クタタンに恐怖を刷り込まれたのだろう。
モナーが殺される様を間近で見て、自分もこうなりたくなければミルコ・クロコップに襲いかかれと。

ネメアのアイアンクローが、ミルコの胸を思い切り貫く。
湧き上がる嘔吐感、喉から溢れ出てきた血が、口から吐き出される。

「フフフフ、いいお姿ですねぇ。自分が虐げた人物に逆襲される気分はどうですか?」
「てめぇ……どうやって抜け出しやがった……このモンスターは……」
「赤と白のカプセルに入ってたんですよ、私の従順な下僕としてね。
 ついでに言えば、ご丁寧にネメアを出してくれたのはウラーさんですよ、ありがたいですね」
「やはり、殺しておく、べきだった……か……」
「今更そんなこと言っても遅いですよ。甘かった自分をせいぜい恨みなさい」

そう嘲り、そして笑った。
あぁ、この憎らしいクソッタレに今から制裁を下せる。
散々侮辱しやがった罰を与えられる。
考えるほどに愉快な気持ちが湧き上がってくる。

「ネメア、そいつをしっかりと押さえておきなさい」

ネメアの前足が乱暴に顔面を押さえつける。
動けない様を見て、クタタンはその傍へと近寄り、思い切り蹴りつけた。
何度も、何度も、まるでサッカーボールを蹴るように放っていく。
叩かれた痛み、プライドを傷つけられた怒り、それら全てを足に込める。
頭部の形が徐々に変わっていく様を見るうちに、愉悦が溢れ出していく。


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