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仮投下スレ

254 ◆shCEdpbZWw:2013/05/21(火) 11:20:55 ID:eKluyms.0

愛用の日本刀を杖代わりにしてゆっくり、ゆっくりとその歩を一条三位は進める。
ゲームキューブを切りつけ、モッピーを突き刺した日本刀は確実にその切れ味を失っていた。
さらに、イオナズンの爆破の衝撃で、左腰に挿していた鞘はその用を成さぬほどにボロボロになってしまっていた。
その結果、抜身の刀を知らずとはいえアスファルトに突き立てながら歩くものだから、刃こぼれはさらに加速する。
目指す近鉄百貨店が徐々にその姿を大きくする頃にはすっかり日本刀はなまくらと化してしまった。
しかし、一条三位はそのことに気付かない。

気付かない、といえばもう一つ。
一条三位は時刻が六時を過ぎたにもかかわらず、未だに定時カキコを見ていなかった。
zip蒐集を生業とする彼がPDAの扱いを知らぬというわけはない。
ただ単純に、時間も忘れて近鉄百貨店を目指していたばかりに、大事な情報が流れているのにも気づいていなかった。
これが、後からでも見返すことのできる"定時カキコ"というスタイルであることが一条三位にとっては幸いしてはいる。
が、自らの所業が晒されているということには、今の一条三位は完全に無自覚であった。

「ま、まだでおじゃるか……?」

当の一条三位は、いつまで足を動かしても近鉄百貨店に辿りつけないことに苛立ちを感じつつあった。
確かに見る景色に心を奪われたりすることはあったものの、寄り道の出来るような身体ではない。
一直線に近鉄百貨店を目指していたはずだが、一向に目的地に近づいているような感覚が無かった。
それはつまり、本人の想像を超えて体力が失われていることの証左でもあるのだが。

「まったく……麿が何故に歩かねばならぬでおじゃるか……
 普段ならば従者に牛車でも引かせて雅に動くところで……」

少しずつ愚痴も漏れ始めたその時だった。



「……でクヨクヨしてんのよっ!!」
「!?」

ビル街に響き渡る女の怒声に、思わず一条三位は辺りを見回した。
声の発信源は遠くない……むしろすぐ近くであるように思えた。

「……むふふ、場も弁えずに大声を張り上げる間抜けがおるようじゃな……
 ちょうどよい、この刀の錆にしてくれようか……それとも先程手にしたあの南蛮風の槍で……」

屍を築き続けることが、zipの桃源郷を創る最短ルートと信じて疑わない一条三位は、思わぬ獲物の出現に顔を醜く歪ませた。
ひとまずは声のする方へそろり、そろりと忍び寄ろうとして……



そこで体力の限界が訪れた。



裏路地にその体を滑り込ませたその時に、何でもない段差に一条三位が躓く。

「うおっ!?」

膝から崩れ落ちるように地面を舐めた一条三位は、すぐさま体を起こそうとする。
……が、身体に力が入らない。

「ど……どういうことで……おじゃるか……?」

左手の一部を吹き飛ばされただけではない。
イオナズンの爆発による衝撃は身体全体にもダメージを与えていた。
そんな身体で、アスファルトを歩くにはお世辞にも適したとは言えない靴で数時間も歩き続けたのだ。
最早、精神力で肉体をカバーするには足りないほどに、一条三位は消耗しきってしまっていた。

「こ……こんなところで……!」

最後の気力を振り絞って数m這いずるが、それが精一杯だった。
目標とする雑居ビルを目の前にしたところで……一度一条三位はその意識を手放したのだった。





 *      *      *





「ちょ、ちょっとどういうこと!?」
「だ、大丈夫ですか!?」

変わり果てた姿で倒れる男を目の前にし、思わず鬼女と鬼子が驚きの声を上げる。
鬼子に至ってはすぐさま駆け寄って助け起こそうとしたその時だった。


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