したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

仮投下スレ

250 ◆shCEdpbZWw:2013/05/21(火) 11:19:22 ID:eKluyms.0
「だけど、自分の力で出来るだけのことをやろうと思うことの何が悪いっていうの!?
 ボクは、ボクの力で出来るだけの人を護りたかった……それが出来なかった自分を責めることぐらい……」
「それが現実だって言うのよ!」
「現実……?」

鬼女も一歩も引かない。
ここでクラウドさんの精神が崩壊するようでは、戦闘能力に乏しい自分たちの危機をも意味するからだ。

(冗談じゃないわよ……! 荒療治かもしれないけど、この子にはシャンとしてもらわないと困るのよ……!)

もし、自分の言葉に打ちのめされてしまうようならば、それまでの人間だった……鬼女はそう割り切ろうとしていた。

「そう、アンタ一人じゃ、全員を護りきれっこない……それが現実よ……
 そして、それをアンタは受け入れなきゃいけないのよ!」
「だからって……! それを認めちゃったら、ボクがボクである存在意義が……!」
「人の話は最後まで聞きなさいよ!!」

クラウドさんの言葉を遮って、鬼女がもう一度ジッと見つめた。
まるで吸い込まれそうな瞳に、思わずクラウドさんも言葉を詰まらせた。

「どうして一人でなんでもかんでも抱え込もうとするのよ! そんなに私や鬼子ちゃんが信用できないの!?」
「だ、だって……」
「そりゃ、私たちはアンタみたいにあの猫妖怪を正面から撃退できるだけの力は無いわよ……
 でも、それが出来るアンタだって、結局殺しまくってるクズたちの前じゃ私たちと五十歩百歩よ!
 何も出来ていないってことにかけては、アンタと私たちに大した違いは無いわよ!」
「そんな……」

自分のアイデンティティを真っ向から否定されたクラウドさんは、もう心が折れそうになっていた。
ただでさえ痛感していた自分の無力さを、ここまで容赦なく突きつけられることなど、今までに経験していなかったのだ。
レベル男を喪った悔しさから流した涙と、別の種類の涙がうっすらとその瞳に浮かび始めた。

「……だからさ」

それを押し留めたのは、先ほどまで忌憚ない言葉を浴びせていた鬼女だった。

「一人じゃどうにもならないんだったら……みんなでなんとかするしかないでしょ!?」
「みんな……で?」
「そうよ……"みんなで"、よ」

自分が皆を護るという意識の強いクラウドさんからすれば、皆で手を取り合って立ち向かうという発想はすっぽりと抜け落ちていた。
浮かびかけた涙もすぅっと引いて、キョトンとした目で鬼女を見据えた。

一方で、鬼女からすればそれこそが当然の思考であった。
所詮は一介の市民に過ぎない鬼女は、それ単体の力だけを見れば大したことは無い。
だが、時として皆を戦慄させる"鬼女ネットワーク"を駆使し、彼女たちなりに巨悪へと日々立ち向かっているのだ。
時にそれが行き過ぎになるきらいこそあるものの、一人一人ではとても出来ないことを皆で手を取り合えば出来ることを鬼女は誰よりも知っている。

「……いい? 誰かに頼るなんてことは別に恥ずかしいことじゃないのよ?
 人には誰にだって得手不得手ってものがあるんだから……自分一人でなんでも出来るなんてのはただの思い上がりよ」
「思い上がり……か」
「誰かを支えて、そして誰かに支えられて生きている……それが社会の理ってもんなのよ。
 猫野郎みたいな殺し合いに乗ったクズはそんな簡単な事さえ忘れちゃってる奴なの。
 そんなクズに鉄槌を下すならね……そんな社会の道理ってもんを叩きつけてやりゃいいのよ!」

クラウドさんにとって、このバトルロワイアルは今までの自分というものを粉々に粉砕するだけのイベントだった。
自分は誰かを護れるほどじゃないという現実を突き付けられ、それに思い悩んだりもした。
だが、ここにきて新たな考えを示してくれるようなそんな人物との邂逅を果たすことが出来た。
それは、今までなら単に護る対象でしかなかったような、そんな人物。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板