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仮投下スレ

249 ◆shCEdpbZWw:2013/05/21(火) 11:19:04 ID:eKluyms.0
嗚咽が、噛み殺したような鳴き声が、うらぶれた雑居ビルの間に響き渡った。
吹き抜けるそよ風は、錆びついた鉄の匂いを帯びており、空虚な雰囲気に拍車をかける。
そんな錆びついた非常階段には三つの人影が並んでいた。
二人の女に見下ろされるような格好で、二頭身の黒服男――クラウドさんがむせび泣いている。

「……くっ……うぅっ……」

涙はこぼすまいと努めるも、そんな理性を上回るほどにクラウドさんの心中は無念さに支配されていた。
それをオロオロと見つめるばかりの日本鬼子に、少しばかりの苛立ち交じりに見つめるのは鬼女だ。

三人が出会ってものの数十分。
その間に転機となるべき定時カキコが行われた。
進入禁止となるエリアの発表に加え、行われたのがここ六時間での死者の発表だった。

既にその目の前でMSKKの死を見届けたクラウドさんが、最もその生命を案じていた男。
レベル男の名を、居並ぶ死者の中に見つけたその瞬間、クラウドさんは膝からガクッと崩れ落ちた。
そのまま鉄サビなど意に介することもなく突っ伏して、声を殺して泣き続けた。

ほんの僅かの間とはいえ、生死を共にした男の死。
それはクラウドさんに言いようのない悲しみと、自信に対する慙愧の念を同時にぶつけてきた。
「例え悪い結果だとしても気を落とさないこと」、これは先刻鬼女が発した言葉だ。
それはクラウドさんとて重々承知はしている……しているが、事実として自分が護れなかったことはそんな言葉も吹き飛ばしてしまった。



「あ、あの……クラウ……」

見るに見かねた鬼子が言葉を絞り出そうとしたその時だった。

「いつまでクヨクヨしてんのよっ!!」

怒号を叩きつけながら、鬼女が首根っこを掴むようにしてクラウドさんを引き起こす。
クラウドさんのその小さな体に合わせるように、片膝を突いて鬼女が真っ直ぐクラウドさんを見据えた。
対するクラウドさんは、涙を浮かべながらも決してその視線を外そうとはしなかった。

「私言ったわよね!? 殺されちゃった時はもうどうしようもないって!
 卑屈になるのは間違いだって!! 悪いのは全部……全部殺した人なんだって!!!」

一つ言葉を並べるごとに、鬼女はその語調を強めていく。
決してそれはクラウドさんにだけ叩きつけられたものではない。
この忌むべき殺し合いに乗った連中に向けてぶつけられたようなものだった。
それは目の前のクラウドさんも、そして傍らの鬼子も分かっていた……だからこそ、二人とも言葉を挟むことは出来なかった。

「アンタは……アンタはどうせこう思ってるんでしょ……!
 『ボクが護れなかったから、あの人は殺されちゃったんだ』、って……!」

クラウドさんがコクリと小さく頷く。
事実、鬼女の言葉は図星であったからだ。

「正義の味方気取ってるけど、所詮一人だけの力でやれることなんて限られてるのよ!
 アンタがどれだけ力を持っていたとしても、一人だけで全員を護れるだなんてのは思い上がりもいいとこよ!」
「そんなの……そんなの分かってるよ!」

ついにクラウドさんもせき止めていた感情を爆発させるかのように口を開いた。


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