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仮投下スレ

207 ◆m8iVFhkTec:2013/04/19(金) 18:28:07 ID:5fphdqVU0
「遅い……!」

読み終えた本をパタンと閉じて、キバヤシは呟いた。
あれから結構な時間が経った。バイク君はまだ帰ってこないのか。
話に聞く限り、レストランがある場所はそこまで遠くはないはずだが。

「川越に呼び止められて説得されてるのだろうか?……まぁいい、それならそれで俺だけで調査するまでだ」
「キバヤシー、ボクハー?」
「あぁ、ジサクジエン君。君にも手伝ってもらう。頼りにしているよ」
「オー!!」

この生物はジサクジエン、僕に支給された謎の生物だ。
UMAの類なのは間違いない。コイツは頭だけで動き、さらに人語を話す。
とても興味をそそられる存在だが、意思疎通をする内に『UMA』と言う観念が『相方』に変わってしまった。
そして気が付けば、ジサクジエンの調査は後回しでいい、先に鮫島事件を……と考えていた。
もはや「それがコイツの能力だろうか?」と疑いたくなるほど、コイツの存在は俺の中にスルリと馴染んでいた。
どうにもジサクジエンの方を調査する気が起きないため、結局鮫島の方を再開することにした。優先順位的に間違ってないため、構わないだろう。

ジサクジエンに手伝ってもらい、図書館中から集めてきたいくつもの資料や本。
机の上に山積み……というほど多くはないが、それらのうち、一つを手に取って読み始める。




……先程からいくつもの資料に目を通しているが、一向に情報がまとまらない……。
鮫島事件関連と思われる資料を抜粋し、メモを取ってまとめているものの、どれも内容に統一性が無い。
ある資料では「鮫島と言うコテハンの男がリンチされた事件」と書かれている。
またある資料には「鮫島代議士絡み」の話が語られた。
先ほどの資料じゃ「呪いが関係する」と記されており、この本には「2002年に自殺者、行方不明者が増えた理由に鮫島が……」と明言されている。

「きっとデマが……デマが多すぎるせいだ……。完全に隠蔽されてしまっている……」

そう、諸説を数多く流すことにより、どれが正しい情報かを判別出来ないようにする隠蔽工作……。
それがこの鮫島事件において行なわれている可能性が非常に高い。
この手法は有名なもので挙げれば『都市伝説』なんかに使用されている。

都市伝説のほとんどは、個人の範疇では真相が確認出来ない程の突拍子もない陰謀論やウワサが語られている。
そのどれもが妄想や夢物語のような内容であるものの、確実にウソだとは言い切れないようなものばかり。
―――悪魔の証明。"100%無い"と断定するのは不可能、そんな話が集められているのが都市伝説である。
そこが魅力であり、話のタネとして広がる要因なのだ。ただし、口では「本当にあるかもよ?」と語りつつも、多くの人々は内心では信じていない。

では、その突拍子のないウソが詰められた箱の中に、たった一つだけ突拍子のない『事実』を混ぜてみたらどうだろう?
それを真実だと見抜ける者がどれだけいるだろうか? 仮に見抜いたとしても、それを公表したところで人々は信じるだろうか?
……これがいわゆる隠蔽工作の一つ。木を隠すなら森の中とはよく言ったものである。
もはや真相と言う名の木は、とてつもなく広大な森の中に埋もれてしまっていた。


俺は荒々しく本を閉じると、机の上へと放り出した。
検証出来る術が無い状況で諸説ばかりを集めたところで、もはやどうにもならないだろう。

「調査が完全に行き詰まってしまったな……」

このバトルロワイヤルの真相へたどり着くまでの道のりは果てしなく長い。
そして、それまでに俺が生き残っていられるかどうかの保証は無い……。
あぁ、なんてやるせない思いなんだろうか。何も分からないまま、死んでいくのだと思うと悔しくてならない。
机に突っ伏したまま、感情に任せて拳を机に叩きつける。
ドンッ、と激しい音が薄明かるくなった図書館に響き渡り、やがてすぐに静寂が戻ってきた。

……音? そういえばこれは何の物音だ?

キバヤシが図書館内の『音』に注意を傾けた時、初めて先程からガサゴソといった物音がしていることに気が付いた。

「ジエン君、何をしているんだ?」
「ピーディーエーダヨ」

何かと思えば、退屈していたであろうジサクジエンが、キバヤシのデイパックを漁っていたようだ。
ジサクジエンはPDAを取り出して床に置いて、上に乗ったりして遊んでいた。


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