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仮投下スレ

202 ◆shCEdpbZWw:2013/03/11(月) 10:55:06 ID:Y9OHWRk60
「……ギコさんは、もしかするとしぃさんの知っているギコさんとは別の世界から来たギコさんかもしれない、ということです」
「……エ?」
「そうでなければ、あそこまで彼がしぃさんに対してあのような応対をするとは思えないのです。
 しぃさんから聞いたギコさんは、口は悪いですけれども貴女に対してはあのように邪険に扱うようなことは無かったはず」

そこまで言ってから一呼吸置き、さらにいわっちが続ける。

「……もっとも、しぃさん。恐らくは貴女も私とは別の世界の住人ではないでしょうか?」
「……しぃが?」
「ええ。少なくとも、私の身の回りには貴女のように言葉を話す猫というものは存在しませんから。
 ですが、どこかに猫が言葉を使い、文明を築き上げている世界があるとして、そこからしぃさんがやって来たとすれば理屈は合います」

想像だにしなかったことを聞かされ、しぃは思わず黙りこくってしまう。

「それに、クタタンが使役していたあのような生物も……私の住む世界には存在はしていませんでした。
 支給品の一つなのでしょうが、それも様々な世界から集められたのだとすれば合点がいきます」
「じゃ、じゃあ……あのギコ君の世界にはしぃが存在していないかもしれない……ってコト?」
「その可能性はあります。見ず知らずの娘にいきなり抱きつかれればああいう反応も無理なからぬことかもしれませんねえ」

しぃは寂しさに囚われていた。
黒コゲになってしまったけれども、あのギコ猫が自分の知るギコ猫とは全く別の存在であること。
そして、あのギコ猫には自分にまつわる思い出などそもそもが存在しないということ。
見た目は同じなのに、そんなことが本当にあるのだろうかという思いを抱いていた。
いわっちの言うことも推測でしかないが……さっき見かけた怪物もしぃは見たことが無かったのだ。
とするならば、やはりさまざまな世界から参加者のみならず武器が集められているということを意味する、しぃはそう思った。
それはつまり、パラレルワールドの存在を認めることでもあり、あのギコ猫が自分とは何の繋がりもない赤の他人であることも認めざるを得ないことだった。

(デモ……)

しぃは心優しい。
たとえ自分のことを知らなくても、たとえ先刻のような扱いを受けたとしても。
黒いことを除けば自分のよく知るギコ猫を放っておくことが出来なかった。
出来ることならば、いわっちを置いてでもギコ猫の下へと駆け寄りたかった。
そこでどんなに邪険に扱われようとも、連れ添って歩いていきたかったのだ。
だが、それは自分をここまで守ってくれたいわっちとの決別を意味しかねないことをしぃは承知していた。
その選択を取れないのもまた、しぃが心優しい所以である。

「……大丈夫ですよ、しぃさん。ギコさんを信じましょう」

しぃの心中を知ってか知らずか、いわっちがしぃを励ますように声をかける。

「ギコさんには私たちの方針もお教えしました、テレビを使って停戦を呼びかけることもです。
 それならば、私たちがすべきことはなんでしょうか?」
「……それまでに仲間と情報を集めて……テレビ局に行くコト?」
「その通りです。ギコさんにやらなきゃいけないことがあるのと同じように、私たちもやらなきゃいけないことが多いのですから」

そう言ったいわっちが辺りを見回す。
漆黒の闇に包まれた森林公園の空に、ほんの僅かであるが光が射してくるのをいわっちは感じ取った。

「朝も近いですね。今しばらく仲間と情報を集め、テレビ局へと向かうことにしましょう。
 随分寄り道も長くなってしまいましたしね」
「ウン、分かったヨ」


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