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仮投下スレ

110 ◆m8iVFhkTec:2012/11/18(日) 10:56:55 ID:9/kA3fW.0
月明かりだけが照らす近鉄百貨店の屋上、一人の男が立ちつくしていた
名前は竹安佐和記。株式会社crimの代表取締役として活躍するイラストレイターだ
彼は今、あまりにも唐突に、そして突飛な状況に放り込まれ茫然自失となっていた

…殺し合い? 何故、俺がそんな不可解な事を強いられているんだ…?
どうして一市民でしかない俺が、こんな理不尽な目にあってるんだ…?
世界に何億、何十億と人間がいる。その中で、何故俺が選ばれたのか…?

そりゃあ誰だって事故に巻き込まれる可能性はある
飛行機事故とか、拉致とか、それで運悪く被害に遭う人は必ずいるだろう

でも、自分がそんな不運な事故に遭う確率なんて1%もないじゃないか…!
まさか、自分がそれに巻き込まれるなんて思いもしない
今までそんなの、ニュースの中だけの出来事だと思っていたんだから…
こんなの何かの間違いだ…自分がこんな理不尽に巻き込まれるなんて有り得ない…!

彼は現実を受け止められなかった。突然拐われてお前ら殺し合え、だなんてフィクションの世界の事だと思っていたからだ
何よりも、先刻に彼が見た惨状が、現実ということを拒否していたのだ
脳裏に浮かび上がるのは自分の目の前で、首を跳ね飛ばされた少女の姿…
なすすべもなく、一瞬で、あっけなく一つの命が吹き飛んだのだ
血飛沫が飛び散り、首を失った胴体がドタリと倒れる様…
唖然としてその無残な姿から目を背ける。すると男の罵声が聞こえ、またしてもパァンと言う破裂音
無謀にも主催に歯向かい、首と泣き別れをする男の胴体、足元へ転がってきた黒く焦げた男の頭部…

信じられるわけがない。こんな無茶苦茶な惨殺が現実に、ましてや俺の目の前で起きるなんて信じられるわけがないだろ…!


―――夢だ、俺は悪夢を見ているだけなんだ……


ごく普通の一般人の俺が、こんな非現実的な悲劇に遭うわけがないじゃないか
もう嫌だ!早く目を覚ませ!いつもの仕事尽くしの日常に帰してくれ…!

腕をつねったり、頭を殴ったりする…残念ながら、相応の痛みを感じる…
徐々に恐怖と不安が佐和記を支配していった
自分もあんな風に無残に殺されるのか?訳のわからない世界で、何も分からずに殺されるのか?

ターン…

少し離れたところから銃声が響く
続けて必死に名前を呼びかける悲痛な叫び声…


殺し合いが始まっている?
たった今、新たに誰かが死んだ?
次に殺されるのは………


その瞬間、彼の中で何かが弾けた

…こんなの、現実で起きるわけがないじゃないか
これはちょっとリアルな夢なんだ。そうに違いない
さっさと目覚めたい。こんな悪夢、もうまっぴらだ!
…そうだ、この屋上から跳んでみれば流石に目が覚めるんじゃないか?
地面に激突するその瞬間に、いつものベッドから飛び起きるはずだ

佐和記は屋上の柵を飛び越え、淵際に立つ
恐怖から逃れたい一心で、最悪の手段を選択した

冷たい風が吹き付け、新たに恐怖が湧き上がる
もし、これが現実だったらどうする?この高さなら確実に…

―――いや……

…これは僕が見ている悪夢なんだ…こっから一歩足を踏み出せばそれで目が覚めるんだ…
そう、目が覚めるだけなんだ…大丈夫だ、問題無い…

我を見失っていた彼は、自分に言い聞かせる…これは現実ではないと…
それは『自己暗示』の領域に達していた
さもなくては気が狂ってしまいそうだ
こんな残酷な現実を受け入れるくらいなら…



そして彼は




―――足元に広がる闇の中へ体を投げ出した


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