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八幡「やはり俺の自粛生活はまちがっている」

9以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/25(土) 22:16:47 ID:tJj2dnZ2
八幡「ちなみに時差出勤で遅く出たら、よその会社も同じように時差出勤してて、もともとラッシュタイムより電車の本数が少ないからかえって混雑してたんだと」

小町「ええ……」

八幡「こんな時にも修羅の外界に働きに出なきゃいけないとか……やっぱ社畜とかクソだな! 俺は働かない選択肢を選ぶぞ!」

小町「まーたそこに戻って来たよこの人……」

八幡「いや、だから専業主夫という道がだな」

小町「専業主夫目指すんならもっと家事とかしようよ。お兄ちゃん、休みになってもからずっとだらけてるだけじゃん」

10以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/25(土) 22:17:48 ID:tJj2dnZ2
八幡「いや、それは小町が何でもやってくれてるからでな……。出来のいい妹にはつい頼っちまう。これ八幡的にポイント高い!」

小町「え、なに。キモい」

八幡「ちょっと小町の真似しただけなのに……そんな辛辣な言葉やめてくれない? マジでへこむんだが」

小町「もー冗談だってば、この人本当にめんどくさいなぁ。お褒めに預かり光栄ですよ、お兄ちゃん様」

八幡「おう、褒めてつかわすぞ妹様」

小町「妹様ってなにその呼び方〜」ぷっ

11以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/25(土) 22:18:28 ID:tJj2dnZ2
八幡「ごちそうさん。食洗機かけとくわ」

小町「あ、うんお願い」

八幡「これでよし」カチッ 

小町「お茶入れようか?」

八幡「あーいい。自分で入れる」

八幡(そういやマッカンの在庫がそろそろ切れそうだな……一週間ぶりに買い出し行ってくるか)

小町「お兄ちゃんさ」

八幡「ん?」

12以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/25(土) 22:19:05 ID:tJj2dnZ2
小町「今年受験生でしょ。いろいろ不安とかない? 学校休みになってて」

八幡「ああ、まあ全くないというわけでもないが、俺だけの問題じゃないしな。他の連中も条件は同じなんだし」

八幡「そもそも普通に学校行ってたところで、たいして授業なんて聞いてねぇよ」

八幡「むしろ捨ててる科目でこそこそ内職なんかせずに、家で自分の時間配分で勉強できるんだ」

八幡「私立文系で絞ってる俺にとっては、むしろやりやすいくらいだな。登下校の時間ロスとかもなくなるし」

小町「……うん、そうだね。そういう意味だとお兄ちゃんには合ってるのかも」

八幡「……。小町は」

13以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/25(土) 22:19:43 ID:tJj2dnZ2
小町「あーうん、一応、高校から課題とか送られてきたからそれはやってるけど」

小町「でも、やっぱいろいろ不安なんだよね。受験終わって、合格してさ……さあ、これからってときに」

八幡「……」

小町「それに、……部活のこととか」

八幡「部活か。何かやりたいことでもあるのか? まあ、中学のとき生徒会やってたんならそっち系もあるだろうが」

小町「ふふふ、内緒♪」

14以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/25(土) 22:20:19 ID:tJj2dnZ2
八幡「えぇ……思わせぶりに言っておいて秘密なの?」

小町「まあね、でもお兄ちゃんきっと喜ぶよ。涙流しながら小町を妹に持って良かったって感動するんだ……」

八幡「何だよそれ……嫌な予感しかしないんだが」

小町「はぁー! 早く学校始まらないかなー」

八幡「いつかは始まるんだから気長に待ってろよ。そんなことよりプリキュアの放送延期がショックすぎる……再開いつになるんだよ」

小町「いやもっと現実問題でショック受けようよ……」

15以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/25(土) 22:21:34 ID:tJj2dnZ2
八幡「プリキュアのヒーリングがないと、地球を蝕み人類を侵略しているコロナビョーゲンズは倒せない……このままでは世界が終わる」

小町「お兄ちゃん、大丈夫……? 何か別の病気発症してない? ちゃんと現実とフィクションの区別ついてる……?」

八幡「まあ、こんな状況になったら逆にフィクションの世界とかに救いを求めたくなるだろ?」

八幡「あのラノベのあのキャラとか、あの漫画のアイツとか、あのアニメのあの人とかがいたら……この状況を何とかしてくれるんじゃないかっていう」

小町「あぁ。まあ、うん。分からなくはないかも」

小町「よぉし」スクッ

八幡「小町?」

16以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/25(土) 22:22:35 ID:tJj2dnZ2
小町「わたし、魔法少女になる」

八幡「!?」

小町「小町の願いは世界中のすべてのコロナを消し去ることだよ」

小町「もう誰も自粛してイライラしたり無職になって絶望したり悲しんだりしない世界をつくるんだ……」

小町「お兄ちゃん。小町行ってくるね。必ず帰ってくるから……ほんのちょっとだけお別れだね」にこっ

八幡「小町……!」

17以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/25(土) 22:23:51 ID:tJj2dnZ2
八幡「頭大丈夫か?」

小町「お兄ちゃんにだけは言われたくないよっ」

八幡「つか、そのアニメ見てたのかよ」

小町「だって暇だから、ドラマとかアニメとか見放題のサイトで見てるの。アニメストアってやつ」

八幡「ああ、あれね」

八幡(妹が面と向かってこんなセリフ言ってきたら『残念な娘かな?』って思っちまうが)

八幡(でもよくよく考えると小町って魔法少女適性あるんじゃね? 主に声的な意味で)

18以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/25(土) 22:24:44 ID:tJj2dnZ2
小町「プリキュア再開したらまた一緒に見よっか」

八幡「いいんじゃねぇの。この年になって見ると普通に泣けるぞ」

小町「朝っぱらからキッズ向けアニメを見てるいい年した兄妹の後ろ姿でお母さんも泣いちゃうかもね……」

八幡「おいやめろ。リアルに構図想像できて辛くなるから……」

小町「さーてと、じゃあ小町ちょっと出てくる」

八幡「出るのか?」

19以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/25(土) 22:26:25 ID:tJj2dnZ2
小町「軽く散歩に。さすがに体なまっちゃうしね。お兄ちゃんも一緒にいかない?」

小町「たまには日光浴びた方がいいよ」

八幡「……そうだな。ちょうどマッカンを買い締めしようと思ってたんだ。ついでに少し歩くか」

小町「いや、お兄ちゃん買い締め禁止じゃない?」

八幡「マッカンはマスクのように不足してないからいいんだよ。むしろマッカンの本当の価値に気づいていない千葉市民が多すぎる。そもそも」

小町「あー、面倒なスイッチ押しちゃったなー」

20以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/25(土) 22:28:45 ID:tJj2dnZ2
ガタン

小町「はぁー、もうすっかり暖かくなったよね。軽く汗ばむくらい」

八幡「だな」

八幡(ちょっと出てない間にも、季節はちゃんと移り変わっていく)

八幡(世間で何が起きようと時間は同じリズムで流れていくし、いずれ次の局面を迎えることになる)

八幡(思わぬ休校でできた貴重な時間は、来るべき未来のために有効活用しなければならない)

八幡(そういう意味では、自堕落に生活が乱れて非生産的に過ごしている俺の自粛生活は、やはりまちがっているといえるだろう)

21以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/25(土) 22:29:28 ID:tJj2dnZ2
八幡(とはいえ)

小町「こんな感じで一緒に歩くのも久しぶりだね」

八幡「だな」

小町「こーゆー時間は、小町嫌いじゃないよ」

八幡「そうかい」

小町「なんてね、いまの小町的にポイント高い! 2%還元しちゃう」

八幡「えー還元率低くない?」

22以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/25(土) 22:33:04 ID:tJj2dnZ2
八幡(同じ高校に通うことになるとはいえ、小町は小町でやりたいことがあるだろう)

八幡(この年齢で一緒に通学するっていうのも考えづらい。小町にもいろいろ付き合いはあるだろうし)

八幡(俺が卒業して大学に行けば、まあ家を出るかどうかは別として、小町と関わる時間はさらに減るはずだ)

八幡(社会人になればなおのこと。まあ、兄妹揃って“働かないふたり”にでもならない限りな)

八幡(だから小町とこうやって長いときを一緒に過ごせるのは今が最後かもしれない)

八幡(これはこれで、悪くない時間だろう。――まあ、さっさと終息してくれるに越したことはないがな)


やはり妹さえいればいい。


                            (完)


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