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善子「猫の恩返し」

1 ◆XksB4AwhxU:2019/04/24(水) 12:41:33 ID:VmS9V0jI
私は生まれながらの不幸──そう、美貌に嫉妬した神様が天界からこの世へ堕天させたから。
外に行けば雨に降られ、遠足に行けば大雨、大事なテストの日はインフルエンザ──極めつけは何も無いところで躓いて海に堕ちるなんてことも。
そう、どうしようもない程不幸なの。

私は堕天使ヨハネだから。
でもね、人を呪いたくない。
私の不幸は誰かのせいじゃない──私のものだから。

「うぅ。せっかく買った傘なのに.......」

23 ◆XksB4AwhxU:2019/04/24(水) 13:00:13 ID:VmS9V0jI
「だめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

誘われたように吸い込まれて車に突き飛ばされ地面へ堕ち押し潰され、鳴り止まないクラションの中、少女は生命を否定されるように見るも無残な肉塊へと成り果ててしまった。最初から存在してないように。
膝から崩れ落ち、地面へ横たわるそれが善子だと2人は認識したくなかった。

止まった時の中、堕天使の血に汚れた雨はまるで救いを求めるように崩れ落ちた膝へ伸ばされ、生暖かいはずなのに酷く冷え切っている。
「ごめんなさい.......」そうルビィの口から無意識に漏れた時、

「なにこれなにこれ!」

「え!?誰か轢かれたの!?」

「ちょ、めちゃくちゃグロ.......!」

騒ぎを聞きつけたのか、野次馬のシャッター音と歓喜の声が雨音を描き消し人の死を陵辱していく。まるで1種の娯楽のように。

24 ◆XksB4AwhxU:2019/04/24(水) 13:00:50 ID:VmS9V0jI
どうして笑うの?
どうして撮影してるの?

水溜まり越しに見える地獄の光景にルビィは心の底から煮えたぎるどす黒い感情と、助けられなかった重すぎる罪悪感に挟まれ、隣で嘔吐を繰り返す花丸に気づけないほど壊れそうになり、

「──────────────────!!!」

終わらない慟哭を狂ったように泣き叫んだ。

25 ◆XksB4AwhxU:2019/04/24(水) 13:01:42 ID:VmS9V0jI
♢♢♢

「お久しぶりですわね、善子さん」

お墓に顔を合わせるのは何十年も先なのに「津島家」と書かれたお墓へ花を添えることが信じられない。

「あれからルビィも塞ぎ込んでしまい、花丸さんもショックで.......」

枯れ果てたはずの涙、しかし顔を覆う手を拭うことが出来ず必死に「また、来ますわね」と唇を噛み締めながらも告げ現実から逃げるように立ち去ってしまう──。

「ごめんなさい」
と涙に潰れた謝罪を零しながら。

「.......」
その光景を無表情の善子が轢かれた猫と共に眺めていた。

26 ◆XksB4AwhxU:2019/04/24(水) 13:02:30 ID:VmS9V0jI
終わりです。


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