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ヤムチャ「ここがハンター試験会場か……!」

1 ◆seQBwpiAy2:2019/01/15(火) 15:48:45 ID:dfsL1CCM

 人造人間との戦いまであと二年を切っていた。
 ヤムチャは悟空たちと別に修行を重ねていたが、
 自分の力の限界を感じていた。
 
 フリーザより強いとされる人造人間……。
 正直ついていける気はしなかったが、もう足手まといになるのもこりごりだった。
  
 ヤムチャは悩みぬいた末、一つの決断を下した。

 ドラゴンボールを集め、神龍を召還したのだ。


神龍「さぁ願いを言え……。どんな願いも一つだけかなえてやろう……」

ヤムチャ「お、オレでも満足に修行できる場所に送ってくれ!!」

神龍「それがお前の願いか……?」

プーアル「ヤムチャさま! ボクもご一緒させてください!!」
ヤムチャ「ああ! 神龍! オレとプーアルを、だ。
     オレだってもっと強くなりたい……!! 頼む! 神龍!!」

神龍「わかった……」

 神龍の目が光り、フッ、とヤムチャとプーアルの姿が消える。
 その瞬間、ヤムチャとプーアルは地球から消えた。

66 ◆seQBwpiAy2:2019/01/15(火) 16:32:24 ID:dfsL1CCM
クラピカ「会長!」

ネテロ「ん?」

クラピカ「その試合、我々も観に行ってもいいだろうか」

ネテロ「まぁ構わねェよ。自信なくさねェならな」

ネテロ「さて、行こうか。ついてこれるか?」

ヤムチャ「ああ、そういうことか。いいっすよ!」

 そういうと、ヤムチャとネテロはものすごい速さで駆け出した。
 一瞬で視界から消えた二人に、クラピカ達は見呆けていた。

クラピカ「し、しまった! 急いで追いかけるぞ!!」

67 ◆seQBwpiAy2:2019/01/15(火) 16:33:20 ID:dfsL1CCM
 ――――荒野

ネテロ「流石だな、余裕でついてきやがった」

ヤムチャ「ひどいぜネテロさん。これじゃオレ以外
     誰もついてこれないだろ」

ネテロ「へっ、ギャラリーがいなきゃ本気出せねぇか?」

ヤムチャ「そういうわけじゃないけどさぁ」

サトツ「はぁ……はぁ……ではこの試合は私が立ち会いを務めさせていただきます」

ネテロ「おーサトツか。よく追いついたもんだ」

サトツ「ええ……はぁ……正直見失うかと思いました……ぜぇ……」

ネテロ「んじゃー立会人もきたとこで……」

ネテロ「やりますか」

68 ◆seQBwpiAy2:2019/01/15(火) 16:34:02 ID:dfsL1CCM
 ネテロが両の手を合わせた。同時に、ネテロの背後に千手観音が出現する。
 そして放たれる、一撃。

 『百式観音・壱乃掌』

 それはヤムチャに上方から激突し、地面に大きな裂け目を造った。

ネテロ(――――硬ぇな、さすがに……)

ヤムチャ「おお、すげぇや全然見えなかった……」

 ヤムチャは何事もなかったかのように立ち上がった。

ネテロ(ま、そうこなくちゃよ)

 ネテロは再び手を合わせた。同時にヤムチャも駆けだした。

69 ◆seQBwpiAy2:2019/01/15(火) 16:34:41 ID:dfsL1CCM
 戦いの場にようやくたどり着いたクラピカ達は、絶句した。
 その戦いの、あまりの別次元っぷりに。

クラピカ(速――? 上? いや下? 
     いや今のは右から……もうあそこまで移動している……)

レオリオ(か、会長の攻撃も、ヤムチャがどう動いてるかも全く見えねェ……
     な、なんなんだこりゃ……何が起こってんだ……)

ハンゾー(おいおいウソだろ……こいつら人間じゃねー……)

クラピカ「レオリオ。見えるか? 会長の後ろ……」

レオリオ「気を感じれるから、見えるッちゃ見えるが。
     何がどうなってんのかさっぱりだ……」

キルア(やっぱり、あの話マジだったんだな……)

70 ◆seQBwpiAy2:2019/01/15(火) 16:35:41 ID:dfsL1CCM
ネテロ「九十九乃掌!!」

ヤムチャ「くっ!」

 ネテロの攻撃はヤムチャに一切ダメージを与えていない。
 しかし、ヤムチャは驚いていた。
 おそらく戦闘力だけならネテロはヤムチャの1/1000にも満たない。
 事実、スピードもパワーも耐久力も、ヤムチャの方が遥かに上である。
 しかし、ヤムチャには百式観音の初動が見えなかった。

ヤムチャ(どういうことなんだよ? オレの方が速く動いてる。
     間違いなくネテロさんの攻撃より、オレがネテロさんの
     懐に入る方が速いはずなのに……!)

 何度跳びかかっても、ヤムチャのスピードより、ネテロが手を合わせる速度が速い。
 そこから繰り出される攻撃は、攻撃の気の気配も全くないため
 どの方向から飛んでくるかを予測することすらできない。

ヤムチャ「くっ……」

ネテロ(こんだけ撃ってダメージなしかよ……全く、嬉しいぜ!!)

71 ◆seQBwpiAy2:2019/01/15(火) 16:36:26 ID:dfsL1CCM

 矢継ぎ早に飛びかかって来るヤムチャ。
 ネテロは歓喜していた。万分の一秒でも気を抜けば、消し飛ばされるこの感覚。
 分かっている。このまま観音で攻撃し続けても大した効果はない。
 ジリ貧だ。しかし、だからこそ意味がある。

 だからこそ喜びがある。

 敗色濃い難敵に、全身全霊を持って挑む――それこそ、
 アイザック=ネテロが求めてやまないモノだからだ。

ネテロ(感謝するぜ! おまえと出会えた、これまでのすべてに……!!)

 ネテロの打撃が、やがてヤムチャを包むように繰り出される。

ネテロ(百式観音――)

 観音像の口が開く、そこから恒星をも思わせるまばゆい輝きが漏れる。

サトツ(会長、まさか零を――!?)

ネテロ(零乃――……!?)

72 ◆seQBwpiAy2:2019/01/15(火) 16:37:22 ID:dfsL1CCM
 そこでネテロは気づいた。包み込んでいるヤムチャから、
 凄まじいオーラが発せられている。
 ネテロの観音の零を、恒星の光と例えるなら、
 ヤムチャの発するそれは巨大な惑星そのものが凝縮したようなエネルギー。

ヤムチャ「かめはめ波ー!!」

ネテロ「――零乃掌!!」

 ヤムチャから打ち出された気弾は、零の咆哮を容易く掻き消し、
 観音像の右手全般を根こそぎ消しとばし――

 背後の小山に炸裂し、その存在をまとめて消し飛ばした。

クラピカ「……!!?」

サトツ(ば、バカな今のは……強化系だけでなく……。
    ま、まさか放出系も100%極めているというのですか……!!?)

73 ◆seQBwpiAy2:2019/01/15(火) 16:37:52 ID:dfsL1CCM

ヤムチャ「やべ、やり過ぎた」

サトツ(会長の観音の右半分が消し飛んだ……。
   それはつまり、会長があの念弾を受けた際にイメージした
   ダメージということ。アレが直撃していれば……)

ネテロ(……零が全く通じねェだと……まいったぜ、
    ちょっとは通ると思ったんだがな……)ゼェハァ
 
 勝敗は誰の目にも見えていた。
 疲弊しきったネテロと、今だ衰えのないヤムチャ。
 ネテロはそれでも構えを、手を合わせようとした。
 
ヤムチャ「参った。降参です」

ネテロ「!?」

見物人たち「!!?」

サトツ「な、なんですと……?」

74 ◆seQBwpiAy2:2019/01/15(火) 16:38:30 ID:dfsL1CCM
ヤムチャ「この試験は殺したら失格なんでしょ?」

ヤムチャ「悪いけど、オレにはネテロさんの技を、
     殺さずに突破する方法が思いつかねーんだわ」

ヤムチャ「だから、降参します」

ネテロ「ま、まてよ……まだ……!」

ヤムチャ「いったん不合格になったら、取り消しは効かないんでしょ?」

サトツ「は、はぁまあそうですが……しかし」

ヤムチャ「ありがとうございました。ネテロさん。勉強になりました」

ネテロ「……」

ネテロ(参ったゼ……完敗だ……)

75 ◆seQBwpiAy2:2019/01/15(火) 16:39:06 ID:dfsL1CCM
ヤムチャ「じゃあ、キルアはいったん家に帰るんだな?」

キルア「ああ。勝手に家でてきちまったからな。けじめはつけないと」

ゴン「オレはキルアについていくよ!」

レオリオ「オレはこれから勉強だ。医大受験にむけてな!」

クラピカ「私は……ヤムチャについていってもいいだろうか?」

ヤムチャ「オレに? なんで?」

クラピカ「会長との戦いで、私は確信したのだ」

クラピカ「気の力を極めれば、旅団を倒せると」

76 ◆seQBwpiAy2:2019/01/15(火) 16:39:47 ID:dfsL1CCM
クラピカ「もっと気のことを知りたい」

ヤムチャ「んー。まぁいいけど。ま、オレも一から修行し直すし、
     せったくだからつき合ってくれよな!」

クラピカ「もちろんだ。よろしくヤムチャ」

プーアル「ボクも忘れないでくださいよ〜」

クラピカ「プーアルもよろしく」

77 ◆seQBwpiAy2:2019/01/15(火) 16:40:20 ID:dfsL1CCM
ヤムチャ(ネテロさんと戦って思い知った)

ヤムチャ(オレは、いやオレたちは戦闘力って奴に、縛られてたんだ)

ヤムチャ(武術を極めたら、戦闘力が足りなくても、戦っていける)

ヤムチャ(悟空たちと同じ道を進んだって、かないっこないんだ)

ヤムチャ(オレはオレの道を行くぜ……!)

ヤムチャ(神龍はそれを学ぶ場として、ハンター試験を受けさせてくれたのかもな)

78 ◆seQBwpiAy2:2019/01/15(火) 16:40:53 ID:dfsL1CCM

クラピカ「ヤムチャ、どうしたボーっとして。おいてくぞ」

プーアル「ヤムチャさま〜。はやくはやく〜!」

ヤムチャ「ああ、今いくよ!」


 こうして、ヤムチャは自らの道を見定め、
 それを極める修行を開始するのだった。

79 ◆seQBwpiAy2:2019/01/15(火) 16:41:29 ID:dfsL1CCM

サトツ「会長、本気ですか?」

ネテロ「うん。もう決めたことじゃ」

ネテロ「わし会長止めるから」

メンチ「ちょっと会長!」

ネテロ「次の会長は十二支んから選んでもいいし、
    選挙で決めてもいい。あいつらに任せるわい」

ネテロ「わしちょっと山にこもるから」

ネテロ「そんじゃな」


 そういってネテロは協会を後にした。
 その顔は童心に帰ったように若々しく、そして清々しい顔をしていたそうだ。


つづく?

80以下、名無しが深夜にお送りします:2019/01/15(火) 16:48:49 ID:xA656ESs

テンポが良いからさくさく読めた
ヤムチャの対人スキルはさすがだな

81以下、名無しが深夜にお送りします:2019/01/15(火) 17:27:22 ID:sS6et9XQ
続き気になりますねぇ

82以下、名無しが深夜にお送りします:2019/01/15(火) 17:27:33 ID:WrA.ynOg
あ、ゆるして

83以下、名無しが深夜にお送りします:2019/01/15(火) 20:08:37 ID:ifJrIg4o
乙、面白いわ
続き待ってる

84以下、名無しが深夜にお送りします:2019/01/16(水) 14:08:43 ID:faoYc8w2
戦闘力(パワー)を上げるんじゃなくて武術を磨く
これは身勝手習得フラグか

85以下、名無しが深夜にお送りします:2019/01/16(水) 19:25:05 ID:nJvcLBxs
トリないけど>>1です
感想ありがとうございます。すげー励みになる

今続編書いてるけどこのスレに直接書けばいいのか
新しくスレ立てしてもいいのかわからん

86以下、名無しが深夜にお送りします:2019/01/16(水) 19:32:19 ID:g2BaUNqw
このスレで良いよ

87以下、名無しが深夜にお送りします:2019/01/16(水) 19:32:43 ID:3qpq.V32
ここで続けたほうがわかりやすいんじゃないかな
埋もれるほどここで新スレ建つわけでもないから別スレでも問題なさそうだけど

88以下、名無しが深夜にお送りします:2019/01/17(木) 09:05:01 ID:IbacrKU6
おめぇヤムチャのプロレス書いてたやろ

89以下、名無しが深夜にお送りします:2019/01/17(木) 12:04:11 ID:WusUr.oM
>>88
そういうのいけないと思うんだよね

90以下、名無しが深夜にお送りします:2019/01/26(土) 10:58:20 ID:r5hiWaLc
亀仙人最強説だな

91 ◆seQBwpiAy2:2019/04/25(木) 14:52:55 ID:pWKe3jUQ
つづきです



 ハンター試験を終えたヤムチャたち(ヤムチャは不合格だった)。
 ヤムチャは行動を共にしたクラピカと話し合い、この地球がどうやら
 自分がいた地球とは別の星であることに気付いた。
 
 最初は驚いたヤムチャであったが、まぁそれはそれでいいとして納得していた。

 それよりも、戸籍もなにもないヤムチャではまともな職もアルバイトにも就けるはずもなく、
 プロハンターのクラピカ助手として、『賞金首(ブラックリスト)ハンター』の手伝いをして
 修行も兼ねた生活を続けていた。

 クラピカは出かけていてヤムチャ一人だった、そんなある日。
 ヤムチャ達の寝泊りする安ホテルに、男が訪ねてきた……

92 ◆seQBwpiAy2:2019/04/25(木) 14:54:22 ID:pWKe3jUQ

男「おう、アンタがヤムチャか!」

ヤムチャ「誰だあんた? オレに何か用か?」


 ガタイの良い男だった。顔には傷が入っていて、只者ではない空気を纏わせていた。


男「ヤムチャ、おまえは最近、『賞金首(ブラックリスト)ハンター』として名を売ってるそうじゃねぇか」

ヤムチャ「だったらなんだ?」

男「おまえの腕を見込んで、スカウトしに来たんだ」


男「ヤムチャ、おまえオレのとこの陰獣にならねェか?」

93 ◆seQBwpiAy2:2019/04/25(木) 14:54:57 ID:pWKe3jUQ

クラピカ「なんだって! そ、それは本当か!? ヤムチャ!」

ヤムチャ「本当だって、本当本当。で、陰獣ってなんなんだ?」


 ヤムチャは帰ってきたクラピカに事の次第を話した。
 クラピカは驚いていた。


クラピカ「陰獣とは、世界中のマフィアを束ねる十老頭。それぞれの長の、
     組織最強の武闘派を用いて結成された……言ってしまえばマフィアの最高戦力部隊だ」

ヤムチャ「マフィアの!? うぇ! そ、それって結構ヤバい奴らなんじゃ……」

クラピカ「そうだ。この世界の裏の支配者(フィクサー)の兵隊だ」

ヤムチャ「うーん……マフィアか……」

94 ◆seQBwpiAy2:2019/04/25(木) 14:55:39 ID:pWKe3jUQ

クラピカ「ヤムチャ、受ける必要はない。陰獣に入れば否応が無くマフィアの敵を殺さねばならなくなる」

クラピカ「大抵はクズだろうが……。中には殺すべきではない相手を殺せと言われることもあるだろう」

クラピカ「キミには向いていない」

ヤムチャ「よし、受けることにするよ」

クラピカ「ヤムチャ!?」

ヤムチャ「だって、マフィアの最高戦力だぜ?」

ヤムチャ「ってことは、幻影旅団の情報が入ってくる確率は高いんじゃないか?」

クラピカ「!!」

95 ◆seQBwpiAy2:2019/04/25(木) 14:56:15 ID:pWKe3jUQ


 クラピカはつい先日、マフィアのノストラードファミリーの用心棒として雇われていた。
 『緋の眼』を探すためには必要なことだとヤムチャを納得させて。


クラピカ「た、確かにそうだが……」

クラピカ「十老頭はヨークシンの闇オークションを取り仕切っている……」

ヤムチャ「だろ? だったら緋の眼を探すのにも役立つし、一石二鳥じゃないか」

プーアル「さすがですヤムチャさま〜」

クラピカ「し、しかし一度陰獣に入ればそう簡単には抜けられなくなるぞ」

ヤムチャ「ま、そんときはそんときに考えるさ。それに……」

ヤムチャ「いざとなったら、力付くで抜けてやるさ!」

96 ◆seQBwpiAy2:2019/04/25(木) 14:56:51 ID:pWKe3jUQ

クラピカ「…………」

クラピカ「……ヤムチャ」

ヤムチャ「ん?」

クラピカ「……すまない」

ヤムチャ「いいってことよ」

97 ◆seQBwpiAy2:2019/04/25(木) 14:57:29 ID:pWKe3jUQ

 ヤムチャは十老頭の使いに返事を出した。
 そして、正式に陰獣となった。

 ほかの陰獣に挨拶したいというヤムチャのため、
 何人かの陰獣が集められた。

ヤムチャ「おす! オレが先日陰獣にはいりましたヤムチャです」

陰獣たち「……」

ヤムチャ「コードネームはまだないんだけど……」

ヤムチャ「な、仲良くしてくれよな……はは……」

98 ◆seQBwpiAy2:2019/04/25(木) 14:58:08 ID:pWKe3jUQ

病犬「おい、新入り」

ヤムチャ「お、なんだなんだ! 何でも聞いてくれよな」

病犬「オレは病犬ってんだ。おまえの念能力はなんなんだ?」

ヤムチャ「えっ?」

病犬「新入りは念能力をメンバーに包み隠さず明かすキマリだぜ?」

病犬「オレたちは仲間なんだからよ」

病犬「隠し事はなし、ってわけだ」

豪猪(病犬のイビリが始まったんだな、うん)

蛭(くっくっくっ、そう言ってアイツの念能力だけ聞きだして)

蚯蚓(自分は教えない……良い性格してるぜ……)

ヤムチャ「ああ、えーっと……」


 ヤムチャは念の修業を受けた時を思い返す――。

99 ◆seQBwpiAy2:2019/04/25(木) 14:58:41 ID:pWKe3jUQ
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


イスナビ「ヤムチャ、その気の力ってやつは、できる限り隠しておけ」

ヤムチャ「えっ? どういうこと」

クラピカ「ワケを聞いてもいいか」

イスナビ「……いいか、その気と念は、よく似ているが全くのべつもんだ」

イスナビ「生命エネルギーが具象化したものなのは同じだが、質がまるで違う」

イスナビ「気を無理やり念で例えると、強化系と放出系を100%極められる特質系ってことになる」

イスナビ「ハッキリ言おう」

イスナビ「これは念能力の概念を根本から覆しちまうシロモノだ」

100 ◆seQBwpiAy2:2019/04/25(木) 14:59:19 ID:pWKe3jUQ

ヤムチャ「そうなのか……?」

イスナビ「前に話したように、念にはいくつかの決まりがある」

イスナビ「一つは念能力は本人の資質に大きく左右される」

イスナビ「そもそもどの系統の力が身につくかという点」

イスナビ「発現した能力がどんなものになるかという点」

イスナビ「能力の限界強度はあくまで、基本的には人間の限界を超越しない点」

イスナビ「だが、気は違う」

101 ◆seQBwpiAy2:2019/04/25(木) 14:59:56 ID:pWKe3jUQ

イスナビ「ヤムチャの話とクラピカの気の習得具合を見るに」

イスナビ「気は誰でも同じ能力が習得可能なんだろう?」

イスナビ「これは非常に危険な話だ」

ヤムチャ「なんで……?」

クラピカ「どんな人間でも習得でき、一定以上の強さを発揮する……」

クラピカ「能力は人の善悪を選ばない」

ヤムチャ「!」

イスナビ「……そういうことだ」

102 ◆seQBwpiAy2:2019/04/25(木) 15:00:46 ID:pWKe3jUQ
イスナビ「その力をもし極悪人が――」

イスナビ「例えば、おまえが追ってる幻影旅団の人間が手にしたらどうなる?」

ヤムチャ「……」

クラピカ「……」

イスナビ「そういうことだ」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

103 ◆seQBwpiAy2:2019/04/25(木) 15:01:20 ID:pWKe3jUQ

ヤムチャ「ああ、オレは強化系なんだ!」

病犬「強化系……」

蛭(ということは固有な能力は持ってないってことか……)

豪猪(ある意味期待外れなんだな、うん)

病犬「だったら練を見せてみろよ」

ヤムチャ「ああ、いいぞ(軽く軽ーく……)」

ヤムチャ(このくらいかな……)


 ボ ッ

104 ◆seQBwpiAy2:2019/04/25(木) 15:01:55 ID:pWKe3jUQ
病犬「……!」

蛭(へぇ……)

豪猪(なかなかのオーラなんだな、うん)

病犬「……やるじゃねぇか」

ヤムチャ「あっ、おい! あんたたちの能力は……」

病犬「ま、そのうち教えてやるよ。クククッ……」

ヤムチャ「そ、そうか……」

ヤムチャ「なあ、オレは何してたらいいんだ?」

病犬「好きにしてろよ。オレたちは十老頭からお呼びがかかったら動くが、
   それ以外の時は好き勝手してるぜ」

ヤムチャ「そうか……。じゃ、オレはとりあえず帰るわ」

ヤムチャ「これからよろしくな、病犬と、えーっと……」

豪猪「豪猪なんだな、うん」

蛭「オレは蛭……」

蚯蚓「蚯蚓だ……」

ヤムチャ「じゃーな、豪猪! 蛭! 蚯蚓!」

105 ◆seQBwpiAy2:2019/04/25(木) 15:02:29 ID:pWKe3jUQ
 格安ホテル


プーアル「あ、ヤムチャさまおかえりなさい〜」

ヤムチャ「おう、帰ったぜ。アレ? クラピカは?」

プーアル「クラピカさんはお仕事で今日は帰れないそうです」

ヤムチャ「そっか、ならしばらくお前と二人だな」

プーアル「そうですね〜」

106 ◆seQBwpiAy2:2019/04/25(木) 15:03:43 ID:pWKe3jUQ

 そしてしばらくは何もない日々が続いた。
 ヤムチャはくそまじめに基礎的な修行に励んでいた。


ヤムチャ(今までの修行を思い出すんだ……)

ヤムチャ(心を無にして……雷より素早く動く!)

ヤムチャ(気に頼るんじゃなく、空気のちょっとした流れを感じるんだ……)


 そして、ある日。ヤムチャに十老頭から司令が入る。


 オークションの競売品が賊に奪われた。
 賊は只者じゃなく、念能力者である。とのことだった。
 ヤムチャは急いで現場に向かった。

107 ◆seQBwpiAy2:2019/04/25(木) 15:04:15 ID:pWKe3jUQ
 郊外の砂漠

 ヤムチャはクラピカの気を感じ、先にそちらに向かった。
 クラピカたちは既にほかの陰獣たちと接触していた。


ヤムチャ「あ、やっぱりクラピカか!」

クラピカ「や、ヤムチャ! そうか、陰獣になったんだったな……」

ダルツォルネ「クラピカ……そ、その男も陰獣か」

クラピカ「はい。ヤムチャと言います。私の師の一人です」

スクワラ「なっ! クラピカおまえ陰獣とつながりがあったのか……!?」

バショウ「ただものじゃねーとは思ってたが……」

センリツ(この人、とても暖かい音をしている……)

108 ◆seQBwpiAy2:2019/04/25(木) 15:04:47 ID:pWKe3jUQ

病犬「ヤムチャか、遅かったじゃねーか」

豪猪「今から殺しに行くんだな、うん」

蛭「ま、新入りのおまえは黙って見てるといいぜ」


 ヤムチャは遠くのウヴォーギンを見た。
 そして言った。

109 ◆seQBwpiAy2:2019/04/25(木) 15:05:41 ID:pWKe3jUQ

ヤムチャ「あ、あのさ。オレ一人にやらせてくれない……?」

病犬「なんだと!?」

豪猪「何を言ってるんだな、うん」

ヤムチャ「いや、さ。ほらオレ入ったばかりの新入りじゃん」

ヤムチャ「手柄を立てて認められたんだよなーって……」

陰獣たち「……」

ヤムチャ「あ、無理ならいいんだよ無理なら! オレが手柄全部もってくのもアレだし……」

病犬「なに……!」

豪猪「まるで一人でもあいつに勝てると言ってるんだな、うん」

クラピカ(ヤムチャ……優しい男だ)

110 ◆seQBwpiAy2:2019/04/25(木) 15:06:14 ID:pWKe3jUQ

クラピカ(あの蜘蛛の男の放つオーラはこの陰獣たちより圧倒的に上だ)

クラピカ(戦えば間違いなく全員殺されるだろう)

クラピカ(それを……この男は……)

病犬「けっ、じゃあ良いぜテメェに譲ってやる!」

蛭「せいぜい殺されてこい」

豪猪「骨くらいは拾ってやるんだな、うん」

ヤムチャ「サンキュー!」

クラピカ「ヤムチャ!」

111 ◆seQBwpiAy2:2019/04/25(木) 15:06:52 ID:pWKe3jUQ

ヤムチャ「なんだクラピカ」

クラピカ「できるなら、生かしたまま捕えてほしい」

ダルツォルネ「クラピカ! 何を言っている!?」

スクワラ「あの化け物を生かしたまま捕える……? 無理に決まってんだろ」

ダルツォルネ「すまない、今のは気にしないでくれ……」

ヤムチャ「いやいいぜ。元から殺すつもりはねーしな」

クラピカ、センリツ以外「!!!?」

センリツ(心音は安定してる……この人はウソを言ってるつもりでも、
     強がりでもないわ……本心でできると思ってる……)

センリツ(それにこのクラピカの音からは圧倒的な信頼が聞き取れるわ……)

112 ◆seQBwpiAy2:2019/04/25(木) 15:07:27 ID:pWKe3jUQ

 ヤムチャは堂々と、正面からウヴォーと対峙した。


ウヴォーギン「おっ、陰獣のおでましか」

ヤムチャ「ああ、オレは陰獣のヤムチャだ」

ヤムチャ「おまえをとらえに来た。よろしくな」

ノブナガ「ウヴォーに正面から挑みに来るたぁな」

シズク「ただのバカなのかな?」

シャルナーク「いや、それだけ自信があるってことかもしれない」

フェイタン「なんにせよあいつオワリね」

113 ◆seQBwpiAy2:2019/04/25(木) 15:08:01 ID:pWKe3jUQ

ヤムチャ(崖の上にもいるのか……)

ウヴォーギン「おい、よそ見してると死ぬぜ」

ヤムチャ「ん? ああ悪いな」

 
 ヤムチャ、腰だめに構えをとる。


ヤムチャ「さ、どっからでもかかってこい!」

114 ◆seQBwpiAy2:2019/04/25(木) 15:08:38 ID:pWKe3jUQ

ウヴォー「……てめぇ強化系か」

ヤムチャ「ああそうだ。なんでわかったんだ?」

ウヴォー「ハッ! 面白れェ! じゃあいっちょやりあうか!!」


 ウヴォーギンがオーラを纏ってヤムチャに突進した。
 繰り出された右拳は並の強化系なら硬で固めても即死するほどの威力を秘めている。
 それを、ヤムチャは正面から掌で受け止めた。


ウヴォー「何!?」

ヤムチャ「なるほど、確かに凄いパンチだな」

115 ◆seQBwpiAy2:2019/04/25(木) 15:09:34 ID:pWKe3jUQ
 ヤムチャはウヴォーの手を払った。
 再び距離が開く。


ウヴォー「オレのパンチを片手で止めただと……」

ヤムチャ「手加減なんかする必要ないぞ! 全力でこい!」

ウヴォー「!!」

ノブナガ「ウヴォーのパンチを止めただと……」

シャルナーク「うーん、どういうことなんだろう。
       あいつ、オーラを纏っているようには見えないけど」

シズク「ヤバそうな感じ?」

マチ「すごくやな予感がするんだけど……」

フェイタン「ウヴォーも本気だすね」

116 ◆seQBwpiAy2:2019/04/25(木) 15:10:07 ID:pWKe3jUQ

 ウヴォーの叫びと共に、体から圧倒的なオーラが発せられる。
 それがひとしきり爆発し終わると、ウヴォーギンの体を纏うように収縮した。


ヤムチャ「……」

ウヴォーギン「これがオレの100%だ。どうした、ビビったか?」

ヤムチャ「思ってたより強いな、正直びっくりしたぜ」

ウヴォーギン「ハッ! 言うじゃねぇか!!」

ウヴォーギン「『超破壊拳(ビッグバンインパクト)』!!!!」

117 ◆seQBwpiAy2:2019/04/25(木) 15:10:57 ID:pWKe3jUQ

 ウヴォーギンは再び突進した。そのスピードは先程の比ではない。
 その拳は無防備なヤムチャの右頬をたたいた。
 爆発音が響き、その光景を見ている者は様々な表情を浮かべた。

 ある者は終わったとほくそえみ。

 ある者は圧倒的な破壊の力におののき。

 ある者は――。


 クラピカは――――微笑みを浮かべていた。

118 ◆seQBwpiAy2:2019/04/25(木) 15:11:43 ID:pWKe3jUQ

ウヴォー「……バカな……」

ヤムチャ「いやーすげーパンチだ。結構痛かったぜ」

旅団たち「!!!!?????」

ノストラード組「!!!?」

クラピカ「さすがだ……。さすがはヤムチャだ」

119 ◆seQBwpiAy2:2019/04/25(木) 15:12:49 ID:pWKe3jUQ

ウヴォー「そんなバカな……オレは間違いなく本気で撃ったぞ……」

ヤムチャ「おう、確かにすげー威力だったぜ」

ウヴォー「こんなことが……」

ウヴォー「う、うおおおおおおおおおお!!!!!」


 ウヴォーギンは狂ったように拳を振るった。
 それをヤムチャは涼しい顔で躱していく。

120 ◆seQBwpiAy2:2019/04/25(木) 15:13:49 ID:pWKe3jUQ
シャルナーク「……」

ノブナガ「おいシャル! 何やってんだ……?」

マチ「何って、逃げるのさ」

ノブナガ「!?」

シズク「ウヴォーギンが正面から勝てそうにないなら、
    ここにいる誰もあの陰獣には勝てないでしょ?」

フェイタン「そういうことね、退くが正解よ」

ノブナガ「ふざっけんな!! ウヴォーが負けるかよ!!!」

ノブナガ「仮にウヴォーが勝てなくても、全員で掛かりゃあ……」

121 ◆seQBwpiAy2:2019/04/25(木) 15:14:23 ID:pWKe3jUQ

シャルナーク「それはだめだ。陰獣は全員で10人いるんだよ」

マチ「ウヴォーと戦ってるやつ以外が、どこで狙ってるか分からないからね」

シャルナーク「あの男が陽動だったらどうするんだ?」

シャルナーク「オレたち全員があいつに釘付けにされてる間に、
       背後から『そういう』念能力で襲われたら」

フェイタン「最悪、全滅ね」

ノブナガ「くっ……」

マチ「一応……」ヒュッ

122 ◆seQBwpiAy2:2019/04/25(木) 15:15:22 ID:pWKe3jUQ

ウヴォー「ハァッ……ハアッ……」

ヤムチャ「攻撃は終わりか? じゃあこっちから行くぜ」

ウヴォー「おめぇら!!!」

 ウヴォーは叫んだ。

ウヴォー「逃げろ!!!!」


 ヤムチャは察した。崖の上の気配が消えている。

123 ◆seQBwpiAy2:2019/04/25(木) 15:15:56 ID:pWKe3jUQ
ヤムチャ「おまえ……」

ウヴォー「さ、これで何も気にせずやりあえるぜ……」


 そういうと、ウヴォーギンのオーラはさらに倍に膨れ上がった。
 誰かを守る時、誰かのために戦う時、ウヴォーギンはさらに強くなる。

 しかし――……

124 ◆seQBwpiAy2:2019/04/25(木) 15:16:38 ID:pWKe3jUQ
ヤムチャ「……」

 ウヴォーが殴りかかる。
 ヤムチャはそれより速くウヴォーの懐に潜り込み、
 その腹にひじを撃った。

ウヴォー「がっ……!」

ヤムチャ「……」

 ウヴォーは気絶した。
 気絶したウヴォーを抱えて、ヤムチャはクラピカたちの所に行った。


 ――それでもなお、ヤムチャは強かった。

125 ◆seQBwpiAy2:2019/04/25(木) 15:17:20 ID:pWKe3jUQ
ヤムチャ「……悪いクラピカ。他は逃げられちまった」

クラピカ「構わない。ありがとうヤムチャ」

ダルツォルネ「…………」

クラピカ「リーダー」

ダルツォルネ「……ん、ああ」

クラピカ「まずこの男はうちで預かりましょう。
     この男から情報を吐かせるだけ吐かせてみせます」

ダルツォルネ「え、いやしかしコミュニティに……」

ヤムチャ「あ、いいですよ。そっちはオレがなんとか連絡しとくから」

ダルツォルネ「ああ。わ、わかった……」


 そうして、クラピカたちはウヴォーギンを連れていった。

126 ◆seQBwpiAy2:2019/04/25(木) 15:18:10 ID:pWKe3jUQ

病犬「……おい、ヤムチャ」

ヤムチャ「ん? ああごめんな。勝手に話を進めちゃって」

病犬「いや、そうじゃねーよ……」

病犬「おまえ……」

病犬「やるじゃねーか……」

127 ◆seQBwpiAy2:2019/04/25(木) 15:18:40 ID:pWKe3jUQ

 ノストラードファミリーの隠れ家。
 ウヴォーギンは目を覚ました。


ダルツォルネ「これから何をされるかわかるな……?」

ウヴォー「おい……」

ウヴォー「あの道着の男はなにもんだ……?」

ダルツォルネ「質問をするのはこっちだ!!」

128 ◆seQBwpiAy2:2019/04/25(木) 15:19:16 ID:pWKe3jUQ

 ノストラードはヴヴォーギンに拷問を試したが、
 彼の肉体とオーラによってすべて弾かれてしまう。
 ウヴォーは競売品の場所を聞き、またヤムチャのことを聞き、
 知らなければ命だけは助けると言った。


クラピカ「あの道着の男なら、わたしが知っている」

ダルツォルネ「クラピカ……!?」

クラピカ「彼の名はヤムチャ。わたしの念と武術の師だ」

ウヴォー「なんだと……」

クラピカ「取引をしよう」

129 ◆seQBwpiAy2:2019/04/25(木) 15:19:46 ID:pWKe3jUQ

クラピカ「わたしと正々堂々正面から戦え」

クラピカ「わたしに勝てたのなら、彼がどこに住んでいて、
     なんの能力を持ち、なぜあんなに強いのかすべてを教える」

ウヴォー「……」

クラピカ「わたしが勝ったなら、ほかの旅団のメンバーについて、
     知っていることをすべて話してもらおう」

ウヴォー「……」

スクワラ「おいクラピカ……! 何考えてんだ!?」

クラピカ「おまえはヤムチャにリベンジしたいのだろう。
     だが弟子であるわたしを倒せないようなら、到底ヤムチャには勝てんぞ」

ウヴォー「おもしれー……」


 ウヴォーは神経ガスを吸っているにも関わらず、拘束具を破壊しながらその体を起こした。


ウヴォー「やってやろうじゃねぇか!」

130 ◆seQBwpiAy2:2019/04/25(木) 15:20:17 ID:pWKe3jUQ
 
 ヨークシンの郊外の荒野――


クラピカ「殺した者たちのことを覚えているか?」

ウヴォー「少しはな」

クラピカ「クルタ族は?」

ウヴォー「なんだそりゃ?」

クラピカ「緋の眼を持つルクソ地方の少数民族だ」

ウヴォー「なるほど……つまるところ、おめーは復讐者ってわけか」

ウヴォー「あのヤムチャもそうなのか?」

クラピカ「彼は違う。これはわたし個人の復讐だ」

ウヴォー「」ニッ

131 ◆seQBwpiAy2:2019/04/25(木) 15:20:51 ID:pWKe3jUQ

ウヴォー「これだから殺しはやめられねェ……」

クラピカ「クズが……」


 ウヴォーは最初からオーラを全開に纏った。
 あのヤムチャの弟子というクラピカ相手に、様子見などするつもりはない。

 その様子を、遠く双眼鏡でノストラードファミリーがうかがっている。


ウヴォー「手加減は無しだぜ! 『超破壊拳ビッグバンインパクト』!!」

クラピカ「……ッ!」

 クラピカはオーラを纏い、超破壊拳を左腕でガードした。
 骨は折れなかったが、肉がきしんだ。

ウヴォー「なるほど、確かにてめぇも強い! だがあいつ程じゃねェ!!」

 ウヴォーは激しいラッシュを繰り出した。
 守勢に回るクラピカ。ウヴォーは止まらない。

132 ◆seQBwpiAy2:2019/04/25(木) 15:21:31 ID:pWKe3jUQ

バショウ「おいおいやべーんじゃねぇか……?」

スクワラ「おいどーすんだよ! クラピカがやられたら、
     あいつオレたちを殺しに来るぞ!!」

ダルツォルネ「クラピカ……っ!」

センリツ(クラピカ……あなた……)



センリツ(あなた、笑ってるの……?)

133 ◆seQBwpiAy2:2019/04/25(木) 15:22:06 ID:pWKe3jUQ

 ウヴォーの右腕を、クラピカが掴んだ。
 返しに打たれる左腕も同様に。

 均衡が訪れる。 

ウヴォー「なに……?」

クラピカ「絶対時間の使用も考えていたが……」

クラピカ「どうやら、その必要はなさそうだ」

134 ◆seQBwpiAy2:2019/04/25(木) 15:22:37 ID:pWKe3jUQ

 クラピカは右腕を放すと拳を造り、
 それにオーラを纏わせた。それは念のオーラと気を混ぜたものだ。

 吸い込まれるようにウヴォーの腹に直撃したそれは、
 ウヴォーの口から血を噴出させた。

ウヴォー「おぐっ!!」

クラピカ「ふっ!」

 前かがみになったウヴォーギンの横顔を裏拳で薙ぎ払う。
 ウヴォーは横に吹き飛び崖にぶつかった。

135 ◆seQBwpiAy2:2019/04/25(木) 15:23:33 ID:pWKe3jUQ

ウヴォー「てめぇ……操作系じゃなかったのか……!?」

クラピカ「鎖のことか? それなら正解だ。わたしは強化系ではない」

ウヴォー「なんだと!?」

ウヴォー(強化系じゃないのにこの打撃力とタフさ……)

ウヴォー(間違いなく強化系を極めたオレ以上だぞ……)

ウヴォー(いや……あの男の弟子だ。考えを改めろ!)

ウヴォー(既存の概念を捨てろ! 全力をだせ! ウヴォーギン!!)

 しかし、クラピカの打撃は速く、強く、重かった。
 ウヴォーは成すすべなく殴られていった。

136 ◆seQBwpiAy2:2019/04/25(木) 15:24:07 ID:pWKe3jUQ

クラピカ「どんな気分だ」

 クラピカの拳がウヴォーの右腕を砕いた。

クラピカ「どんな気分だ。圧倒的な力で蹂躙される気分は……」

 クラピカの蹴りは右足を破壊した。ウヴォーが崩れ落ちた。

クラピカ「わたしは不愉快だ……」

 顔を挙げたウヴォーに拳を見舞う。頭蓋骨にが割れて出血する。

クラピカ「肉を殴る感触も、圧倒的弱者をいたぶる感覚も……!」

クラピカ「なぜお前たちは何も感じることなくこんなことができるんだ!!」

 顎にアッパーを打ち込んだ。ウヴォーは大きくのけぞって倒れた。
 顎の骨が砕け、口からとめどなく出血した。
 自身の血に溺れるがごとく、ウヴォーの呼吸が弱まった。

137 ◆seQBwpiAy2:2019/04/25(木) 15:24:42 ID:pWKe3jUQ

 クラピカは一歩踏み出した。

ダルツォルネ「落ち着けクラピカ!! 殺すな!!!」

 いつの間にか近くまで来ていたダルツォルネが、クラピカを羽交い絞めにした。

スクワラ「まだ情報を聞き出してねぇ! 殺すな!!」

バショウ「落ち着けってクラピカ!!」

クラピカ「……」

 しかし、クラピカの足は止まらない。

 と、ふと音楽が流れた。
 それはクラピカ達に花が咲き乱れる草原を見せた。

138 ◆seQBwpiAy2:2019/04/25(木) 15:25:17 ID:pWKe3jUQ

クラピカ「……!」

ダルツォルネ「……これは!?」

センリツ「みんな、少し落ち着きましょ」


クラピカの足が止まった。


クラピカ(センリツ、ありがとう)

センリツ(いいわ。大丈夫よ)


 瀕死のウヴォーギンを、ノストラードファミリーは
 再び隠れ家に運び込んだ。

139 ◆seQBwpiAy2:2019/04/25(木) 15:26:48 ID:pWKe3jUQ
とりあえずここまでです

140以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/25(木) 21:00:15 ID:OuE2Y0dk
久しぶり

141以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/25(木) 21:16:23 ID:m9ym8EBg
続きがきた

142以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/04(土) 12:44:44 ID:kig7awM2


143以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/05(日) 17:05:34 ID:Ed2uFIuc
待ってた

144以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/21(火) 01:21:15 ID:ZRM5CfrI
待ってる

145以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/21(火) 06:57:03 ID:tN4yCObU
ヤムチャ系のss書くやつは逃げるからエタるのが運命プロレスとかな

146以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/24(金) 11:54:51 ID:ptlH/swU
他の掲示板のssと比較するのはどうかと思う

147以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/24(金) 17:02:05 ID:J92vjjvY
>>146
ヤムチャのプロレスss書いてた方と同じ作者なんだよなぁ

148以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/27(月) 21:25:23 ID:7Jll8eMA
>>147
誰が言ってたんだよそれ
>>1が明言したの?

149以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/27(月) 22:00:59 ID:5RUW93sQ
>>148
自分で作者のブログ見つけろ今まで投稿してたssとか載せてるから7割りがた途中で放置なってるけどな

150以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/27(月) 23:16:26 ID:7Jll8eMA
>>149
いや確信あるんならソースを出せよ
そこまで言うなら同じ作者って明言されてる文があるわけだろ
出せないんならもうそれは荒らしに他ならないでしょ

151以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/28(火) 01:01:50 ID:JjH/qFVE
顔真っ赤で可哀想

152以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/28(火) 02:02:28 ID:hAVbUgso
ヤバいな

153以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/28(火) 06:42:13 ID:8i7RZXqQ
>>150
あなた顔真っ赤ですよ

154以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/28(火) 08:44:57 ID:g/2D0wk2
>>150
一理ある
ワイもなんでおんなじ作者なんか調べてもわからんからソースくれや

155 以下、名無しが深夜にお送りします:2019/06/16(日) 17:58:19 ID:/qoqjLes
クラピカ誰に念教わったんだ?
ヤムチャは修行しにきて念教わらないのか?

156以下、名無しが深夜にお送りします:2019/06/17(月) 06:43:45 ID:dz4H4U.E
>>155
念教わるもなにもそれ以上の気や力持ってるから…
ヤムチャでもこの世界なら少し力出すだけで余裕で世界征服できるんじゃないかな

157以下、名無しが深夜にお送りします:2019/07/12(金) 13:37:55 ID:ww/eYNO6
そういえばヤムチャって操作系も使えるな

頑張ったら変化系もできそうだな

158以下、名無しが深夜にお送りします:2019/07/12(金) 20:29:06 ID:GKSyrCh.
ヤムチャは盗賊だった

159以下、名無しが深夜にお送りします:2019/07/13(土) 02:08:21 ID:NhqGccY6
ドラゴンボールの世界の登場人物が異常なだけでヤムチャ決して弱くないからなむしろサイバイマンがハンターの世界行くだけで普通に征服出来そうなレベル差だろ

160 ◆seQBwpiAy2:2019/09/17(火) 12:49:16 ID:aIojtFy2
おひさしぶりです。仕事やらなんやら忙しかった(言い訳)
あ、あと僕ヤムチャプロレスの人とは別人ですのであしからず

161 ◆seQBwpiAy2:2019/09/17(火) 12:51:39 ID:aIojtFy2

クラピカ「…………」

センリツ「クラピカ……」

 気絶したウヴォーギンを前に、クラピカとセンリツが座っていた。
 見た目的には死んでいそうなウヴォーギンだったが、強化系の治癒力は侮れない。
 コミニュティへの引き渡しが完了するまで、万が一暴れ出したときにはまた、
 クラピカが止める、という約束をかわしていた。
 しかし暗い表情で了承するクラピカの心音が、
 ただならぬ雑音に包まれていることをセンリツは悟り、
 二人で見張りをすると言ったのだった。

センリツ「複雑ね」

クラピカ「……」 

センリツ「自分は復讐のために力を磨き上げた」

センリツ「でも、どこまで力を高めても、『敵わないんじゃないか』と思っていた」

162 ◆seQBwpiAy2:2019/09/17(火) 12:52:12 ID:aIojtFy2

センリツ「それが、いざ戦ってみると、あっけないほどに勝ってしまった」

クラピカ「……」

センリツ「……クラピカ」

 クラピカは答えなかった。そうだ、あっけないほどに勝ってしまった。
 目の前の男が、自分には到底及ばないことが分かってしまった。
 その瞬間、頬に自然と笑みが漏れた。
 それが、今のクラピカには信じられないことだった。
 その瞬間の記憶を何度も思い返すと、心にどす黒い何かが落ちた。

 雑音はより深いノイズへと昇華し、センリツの意識を集めた。

163 ◆seQBwpiAy2:2019/09/17(火) 12:52:43 ID:aIojtFy2

クラピカ「私は……」

センリツ「……」

クラピカ「これを……望んでいたはずだ」

センリツ「……それが本当かは」

センリツ「本当に望んでいたかは、アナタ自身が、……もうわかってる」

クラピカ「……」

センリツ「……でしょう?」

クラピカ「!!」

 クラピカはいてもたってもいられずに立ち上がった。
 椅子が倒れてガダッと音がした。
 センリツは落ち着いていた。
 クラピカはセンリツを見下ろした。

164 ◆seQBwpiAy2:2019/09/17(火) 12:53:17 ID:aIojtFy2

クラピカ「私は私の一族の無念を晴らすために復讐を誓った!!」

クラピカ「そのためなら何でもしようと……悪魔に魂も売ろうと覚悟していた!!」

クラピカ「……それが。それがこんな……っ!」

センリツ「……」

 センリツはクラピカにかける言葉が見つからなかった。
 代わりに、恐ろしい音を聞き取った。


センリツ「……! 誰か来るわ!!」

クラピカ「……コミニュティの人間だろう?」

 センリツは頭を振った。

センリツ「違う……! この足音は……!!」

165 ◆seQBwpiAy2:2019/09/17(火) 12:54:04 ID:aIojtFy2

クラピカ「!!」

 そこまで聞いて、クラピカは悟った。
 そしてウボォーの体を『凝』で探る。
 その太もも辺りから、光り輝く筋が見えた。

クラピカ「しまっ……!!」

 怒りに飲まれた自分を叱責した。
 こんな簡単なことに気付かないなんて……!


 扉が開いた。スーツ姿の男女がぞろぞろと部屋に乗り込んできた。


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