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【ぼく勉】成幸 「キスと呼べない何か」

1以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/07(水) 21:10:57 ID:nfKWg1KI
………………昼休み 一ノ瀬学園 3-B教室

大森 「なぁなぁ、一学期に唯我がキスしただの何だのって話あったじゃん?」

成幸 「………………」

成幸 (……こいつほんっっっとロクでもねーことしか言わないな!!)

成幸 「……そういえばそんなこともあったな。どうでも良すぎて忘れてたが」

大森 「結局噂もなくなっちゃって、俺としては不完全燃焼というかなんというか」

成幸 「っていうかお前が廊下で大声上げて走り回ったせいで噂になったんだけどな!?」

大森 「でもキスはしたんだろ?」

成幸 「………………」

プイッ

成幸 「……黙秘権を行使する」

小林 (それもう自白してるようなもんだけどね、成ちゃん)

893以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/04(木) 18:01:56 ID:MOT0E4vs
成幸 (やっぱり今日、様子見がてらおでんをお裾分けに行こう。ついでに掃除もしてあげよう……)

成幸 (でも俺も来年には高校を卒業するわけだし、いつまでも先生のお世話をできるわけじゃない)

成幸 (先生には、最低限の自活ができるようにしておいてもらわないと……)

成幸 (最悪、栄養失調で死ぬことはないとしても、入院なんてことはありえるもんな……)

成幸 「………………」

グッ

成幸 (よし! 決めた! 俺が卒業するまでの間に、先生に家事のノウハウをたたき込むぞ!)

成幸 (俺がいなくなっても、家事で困らないように!!)

成幸 (とりあえず今日は掃除からだな! よーし!)

894以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/04(木) 18:02:46 ID:MOT0E4vs
………………現在

成幸 「……まぁ、わかっていましたけど、こうなりますよね」

グッチャアアアァアアアア……

真冬 「……きれいな方だと思っていたのだけれど」

成幸 (先生の場合は、まずこの常人とかけ離れた感覚を矯正する必要があるな)

成幸 (よし。ここは心を鬼にして……)

成幸 「先生。失礼かもしれませんが、ひとつ言わせてください」

真冬 「い、いきなり何かしら?」

成幸 「これできれいと思えるその感覚は、どうにかしたほうがいいと思います」

真冬 「し、辛辣……。もう少し歯に衣着せてほしいわ……」 シュン

成幸 (あっ……し、しまった。今日は厳しく行こうと思ってたけど、さすがに言いすぎか……?)

成幸 (……いや、でも、このままじゃ先生がダメダメな大人になってしまう)

成幸 (最悪、ゴミに埋もれて栄養失調でしんでしまうかもしれない!!)

成幸 (ここは心を鬼にしなければ……!!)

895以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/04(木) 18:03:38 ID:MOT0E4vs
成幸 「先生だって言って聞かない生徒には言葉を厳しくしたりするでしょう?」

真冬 「それはそうだけど……」

成幸 「ほら、先生。晩ご飯の前にまず掃除ですよ。今日は先生にもしっかりやってもらいますからね」

ガサゴソガサゴソ……

真冬 (なんだか、今日は唯我くんが刺々しい気がするわ)

ハッ

真冬 (こ、これはカレエゴ5巻で、結人がクリスに反抗するシーンに似てる……!)

真冬 (言葉もどこか刺々しい気がするし、このままでは……)

真冬 (良い子で優しい唯我くんが不良になってしまうかもしれない……)


―――― 成幸 『勉強なんかやってられっかよー! やめだやめだー!』

―――― 成幸 『酒と煙草もってこーい!』


真冬 (なんてこと……!!)

896以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/04(木) 18:06:05 ID:MOT0E4vs
真冬 (だっ、だめよ! 良い子の彼がそんな風になるなんて、考えたくもないわ!)

ハッ

真冬 (そういえば、カレエゴでも……)


―――― クリス 『結人君、きみはどうしていつもそう……』

―――― 結人 『うるせーな。あんたには関係ないだろ』


真冬 (そんな風にクリスに心を開こうとしなかった結人に対して……)


―――― クリス 『彼が何を考えているのか分からない。でも、放っておくわけにも……』

―――― クリス 『彼の抱える孤独、悩み……すべて知りたい……』

―――― クリス 『そっか……。私の方から心を開かない限り、彼の心の中なんて分かるはずもないんだわ』

―――― クリス 『なら、彼が私に心を開いてくれるまで……私は彼に、心を開いて声をかけ続けるだけよ』


真冬 (クリスは彼を気にかけ続けた……)

897以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/04(木) 18:07:08 ID:MOT0E4vs
真冬 (そして……)

―――― クリス 『ダメよ! ケガをしているじゃない!』

―――― 結人 『だから、うるせーって言ってんだよ! あんたには関係ないだろ!』

―――― クリス 『関係なくなんてないわ! 私はあなたの先生だもの!』

―――― 結人 『先生……』


真冬 (結人はクリスのことを信頼するようになったのだったわね……)

真冬 「………………」

真冬 (……私にもできるかしら)

真冬 (クリスのように、素直に、生徒のために、心を開いて……)

成幸 「……?」 (先生、ボーッとしてどうしたんだろ?)


―――― 『これできれいと思えるその感覚は、どうにかしたほうがいいと思います』


成幸 (ひょっとして、さっき言い過ぎちゃったせいかな……。謝らないと)

898以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/04(木) 18:07:48 ID:MOT0E4vs
成幸 「あの、先生」

真冬 (大丈夫。私は教師だもの。できるはずよ)

真冬 (彼に道を誤らせてしまったら、“あの人” に申し訳が立たないわ)

真冬 (素直に。変に強がらず。見栄を張らず。虚飾を排して)

真冬 (できるかどうかじゃないわ。やらなければならないのよ。唯我くんのために!)

成幸 「先生?」

真冬 「………………」

ニコッ

真冬 「……あら? どうしたの、唯我くん?」

成幸 「……!?」 ビクッ

成幸 (なっ……何が起きているんだ、一体……)

真冬 「ん?」 ニコニコニコ

成幸 (あの “氷の女王” 桐須先生が、未だかつて見たことのないような笑顔を浮かべている!?)

899以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/04(木) 18:09:08 ID:MOT0E4vs
成幸 「あ……えっと、あの……」

真冬 「ふふ、変な唯我くん。一体どうしたというの?」

スッ

成幸 (うおっ!? ち、近っ!?)

成幸 「な……ななな、なんでもありません! 掃除を始めましょう!」

真冬 「あっ……」

真冬 (やはり、そうすぐにはいかないわね……)

真冬 (焦ってはダメね。ゆっくり、少しずつ進めていくことにしましょう)

900以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/04(木) 18:09:56 ID:MOT0E4vs
………………

成幸 「ということで、今日は掃除の基礎をひとつひとつ教えていきます」

真冬 「まぁ、本当に?」 ニコニコ 「助かるわ。ありがとう」

成幸 「っ……」 (調子狂うなぁ……)

真冬 (やっぱり様子が変ね。非行の前兆かしら……) ハラハラ

成幸 「まず、水回りをきれいに保つのは基本です。食器をため込むのをやめてください」

成幸 「キッチンを使ったらすぐに食器を洗う癖をつけてください」

真冬 (キッチンを使ったらすぐ……!? なかなか大変なことを言ってくれるわね……)

真冬 (忙しいとついつい洗い物をためてしまうのだけれど……)

成幸 (心を鬼にして心を鬼にして……) ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

真冬 (……そんなことを言える状況ではないわね。これも唯我くんのためよ、真冬)

真冬 「わかったわ。これからはそうするって、約束するわ」 ニコッ

成幸 (っ……) ドキッ (聞き分けがいいのは助かるけど……)

真冬 「では、早速食器を洗ってしまうわね」

成幸 (拗ねたような顔もしないし、まるでまともな大人みたいだぞ!? 一体どうしたんだ!?)

901以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/04(木) 18:10:44 ID:MOT0E4vs
………………トイレ

成幸 「次はトイレです! ここも汚れがちですから、少なくとも一月に一回は掃除しましょう!」

真冬 「分かったわ。掃除の仕方も教えてくれると助かるのだけど……」

成幸 「わ、分かりました。今から一緒に掃除しましょう」

真冬 「ありがとう。本当に助かるわ」

成幸 (桐須先生が自分から掃除を教えてくれと言い出すとは……)

………………浴室

成幸 「あー、もう。せっかくきれいなおフロにまたピンクカビが……」

真冬 「ごめんなさい……。水が流れていればきれいになると思ってしまって……」

成幸 「流れがあるうちはいいですけどね、残った水に汚れがつくんですよ」

成幸 「おフロの後に、軽くスポンジで水気を取るだけできれいが長続きしますよ」

真冬 (ちょっと……いえ、かなり面倒だけど……これも、唯我くんのため……)

真冬 「……こっ、これからはそうするわ。約束します」 ニコッ

成幸 (素直すぎて怖い……!!)

902以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/04(木) 18:11:39 ID:MOT0E4vs
………………リビング

成幸 「で、やっと部屋の掃除に入れるわけですが……」

グチャア……

成幸 「まず、掃除の基礎とかそういう話の前に、ゴミは定期的に出してください」

成幸 「うちの地区は週に二回は燃えるゴミの収集があるんですから、せめてどちらかだけでも出すようにしてください」

真冬 (ゴミ出し、ついつい面倒になってまた今度、また今度とため込んでしまうのだけど……)

真冬 (まったくもって唯我くんの言うとおりだわ。しっかりしないと……)

成幸 「それから、床に物を放置しないでください。それを徹底するだけで部屋は汚れませんよ」

真冬 (……床に物を放置しない!? そんな生活ができるの!?) ※できます

真冬 (うっ、でも……)

成幸 「………………」 ジーーーッ

真冬 「……わ、わかったわ。約束するわ。物はできるだけ床に置きません」

成幸 (できるだけ、っていうのが不安だけど……)

成幸 (素直に約束してくれてるんだから、信じてあげた方がいいよな)

903以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/04(木) 18:12:21 ID:MOT0E4vs
成幸 「それから、使った物はすぐに片付けるくせをつけましょう」

真冬 「わかったわ」

成幸 「週に一度は掃除機をかける癖をつけてください」

成幸 「そうすればホコリもたまらないし、物を片付ける癖もつきますから」

真冬 「……うっ、ぜ、善処するわ」

成幸 「……?」 (色々言いすぎたからかな。段々いつもの桐須先生っぽくなってきたな)

成幸 (よかった。一時は何が起きたのかってくらい別人だったけど)

成幸 (笑顔もいいけど、やっぱりいつもの桐須先生の方が落ち着くな) クスッ

真冬 「あっ……」 (唯我くん、やっと笑ってくれたわ)

真冬 (今日は妙に刺々しくて戸惑ったけど、『カレエゴ』 を参考にしたおかげで元の彼に戻ったみたいだわ)

成幸 「……さ、じゃあ、実際に片付けをやっていきましょう。今日は先生中心ですからね」

真冬 「わ、わかっているわ。しっかりとやってみせるわ」

904以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/04(木) 18:13:07 ID:MOT0E4vs
………………

成幸 「あらかた終わりましたね」

真冬 「ええ。いつも本当にありがとう。あなたのおかげで助かっているわ」

ニコッ

真冬 「今日あなたに教わったことをしっかりと実践していくように、がんばるわね」

成幸 「あ……は、はいっ」

成幸 (うぅ……。また笑顔だ……。今日の先生は妙に素直で、緊張するなぁ……)


―――― 『中には、ゴミ屋敷のような部屋でゴミに埋もれて栄養失調で亡くなるようなケースもあるようです』


成幸 (はっ! い、いかん! 緊張している場合じゃない! 厳しく、心を鬼にして……)

成幸 「で、でも、まだまだですからね! 先生は他の家事もダメダメなんですから!」

成幸 「掃除だけじゃなくて、家事全般、しっかりできるようになってもらいますからね!」

真冬 「………………」

成幸 「……あ」 ハッ (しまった。さすがに言いすぎだろうか……)

成幸 (これ、絶対怒られるやつだ……) ガタガタブルブル (とんでもなく失礼なことを言ってしまった)

905以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/04(木) 18:13:42 ID:MOT0E4vs
真冬 「………………」

真冬 (唯我くん、また刺々しい感じだわ……。やはりこれは、非行の兆候かしら……)

真冬 (唯我くんがどうして刺々しいのか、まったく分からないわ……) シュン


―――― 『なら、彼が私に心を開いてくれるまで……私は彼に、心を開いて声をかけ続けるだけよ』


真冬 (……そう。そうよね、クリス。私には、彼に心を開いて、接することしかできないわね)

成幸 「あ、あの、先生? す、すみません。さすがに言いすぎ……――」

真冬 「――……ごめんなさい。私、まだまだよね。いつも君に迷惑をかけてばかりだわ」

成幸 「!?」 (あ……あれだけ言ったのに!? 先生がむくれてもいない!?)

成幸 (それどころか、しおらしい顔をしている!?)

真冬 (素直に。本当に、思っていることを……)

真冬 「君がいなかったらどうしようもなかったことも、今まで何度もあったわね」

真冬 「虫が出たときとか、海でのこととか、美春のことだって……」

真冬 「今だって、こうやって私に掃除を教えてくれたし……」

真冬 「だから、本当に君には感謝しているのよ」

906以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/04(木) 18:14:32 ID:MOT0E4vs
成幸 (い、一体何が起きているんだ……)

真冬 (恥ずかしい、けど……)

真冬 (決して、嫌な気持ちではない……)

真冬 「……厚かましいお願いだとは思うけど、君がいいのなら、今後もよろしくお願いします」

真冬 「私に、色々と教えてくれると助かるわ」

真冬 (……そう。素直に。心の中で思っていることを、そのまま、)


真冬 「……これからも、ずっと。私のそばにいて、私が知らない色んなことを、教えて」


成幸 「っ……///」

成幸 「ず、ずっと、ですか……?」

成幸 (あっ……でも、そっか……)

成幸 (俺が、高校を卒業してもずっと先生のそばにいて、先生の代わりに家事をしてあげれば、全部解決じゃないか?)

ハッ

成幸 (い、いやいやいや……/// 何考えてるんだ、俺……)

907以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/04(木) 18:15:12 ID:MOT0E4vs
成幸 「だ、ダメですよ、先生。俺がずっと先生のそばにいられるわけじゃないんですから」

成幸 「先生が自分で家事を覚えないと……」

真冬 「ダメ……」 シュン 「そうよね。あなたは、私のそばにはいたくないわよね……」

真冬 「こんなダメダメな私なんかのそばには……」

成幸 (なんでそんな悲しそうな顔をするんだー!?)

成幸 「いや、そういう問題じゃなくて……っていうか、そもそも先生が嫌でしょう?」

成幸 「俺が、高校を卒業した後もずっと、先生の家にお邪魔することになるんですよ?」

真冬 「私は全然構わないわ。むしろ……それは、とても嬉しいと思うもの」

成幸 「っ……」

真冬 (素直に……素直に……)

真冬 「あなたみたいな素敵な男の子に助けてもらえるって、とても幸せなことだと思うの」

成幸 「あっ……/// い、いや、俺は……その……」

成幸 (な、なんだ? 今日の桐須先生はやっぱりヘンだぞ? で、でも……)

成幸 「……お、俺は……俺も……――――」

――――prrrrrr!!!!!

908以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/04(木) 18:15:57 ID:MOT0E4vs
成幸&真冬 「「!?」」 ビクッ

成幸 「あっ……で、電話……。すみません、出ます……」 ピッ

成幸 「もしもし? 水希? あ、ああ、もう帰るよ」

成幸 「ごめんごめん、ちょっと話し込んじゃってさ……。すぐ帰るよ」

成幸 「……ん、悪かったって。じゃ、切るな」 ピッ

成幸 「……すみません」

真冬 「……べつに」

成幸 「………………」 (……改めて冷静になると、)

真冬 「………………」 (なっ、何を……)


―――― 『あなたみたいな素敵な男の子に助けてもらえるって、とても幸せなことだと思うの』

―――― 『……お、俺は……俺も……――――』


真冬 (一体何を口走っていたのかしら私はーーーー!?)

成幸 (一体何を口走ろうとしていたんだ俺はーーーー!?)

909以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/04(木) 18:16:43 ID:MOT0E4vs
………………

成幸 「な、なるほど。俺が刺々しいからグレたのかと思って……」

成幸 「それで、優しくすれば元の俺に戻るのかと思った、と?」

真冬 「あなたは、私がゴミに埋もれて孤独死を遂げるのではないかと心配になり……」

真冬 「私に家事を習慣づけさせるために厳しく接した、と……」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

真冬 「へぇ……なるほどね……?」

成幸 (あ、完全にいつもの桐須先生だ)

成幸 「失礼なことを考えてしまったのは、本当にすみません。でも……」

成幸 「心配だったんです……」

真冬 「……はぁ。分かっているわよ、そんなこと」

真冬 「あなたが善意しか持ち合わせていないことなんて、ずっと前から知っていますからね」

真冬 「私の普段の生活が、あなたにそれを想起させるに足るだけのものだということでしょう?」

真冬 「それは私の責任だわ」

910以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/04(木) 18:17:31 ID:MOT0E4vs
真冬 「ごめんなさい、受験生に無為に時間を使わせてしまったわね」

真冬 「さっきの電話、ご家族からでしょう? もう遅いし、早く帰りなさい」

成幸 「そうですね。そうします。長々と居座ってしまってごめんなさい」

真冬 「私の部屋の掃除に付き合わせてしまったのだから、謝る必要はないわ。ありがとう」

成幸 「あっ……」 クスッ 「ふふ……」

真冬 「? 何か可笑しなことを言ったかしら?」

成幸 「あ、すみません。そうじゃなくて……」

成幸 「さっきの先生を思い出してしまって、つい……」

真冬 「っ……」 カァアアアア…… 「わ、忘れなさい。あんな姿……」

成幸 「でも、お世辞って分かってても嬉しかったですよ? 先生が褒めてくれて、俺はとても」

真冬 「……べつに、お世辞ではないわ。全部本心よ」

真冬 「普段なら絶対に言わないけれど、君に助けられているのは事実ですからね」

成幸 「えっ……」 ボフッ 「あっ……そ、そうですか……///」

真冬 「?」

911以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/04(木) 18:18:52 ID:MOT0E4vs
成幸 (全部、本心……? ってことは……)


―――― 『……厚かましいお願いだとは思うけど、君がいいのなら、今後もよろしくお願いします』

―――― 『……これからも、ずっと。私のそばにいて、私が知らない色んなことを、教えて』

―――― 『そうよね。あなたは、私のそばにはいたくないわよね……』

―――― 『私は全然構わないわ。むしろ……それは、とても嬉しいと思うもの』


成幸 (あれも、本心ってことか……?)

成幸 (“ずっと私のそばにいて” って言葉も……?)

成幸 (い、いやいや、そんなわけない。あれはさすがに、本心じゃないはずだ)

成幸 (……それに、俺も人のことは言えないよな。だって、)

真冬 「?」


―――― ((俺が、高校を卒業してもずっと先生のそばにいて、先生の代わりに家事をしてあげれば、全部解決じゃないか?))


成幸 (……それもアリかな、なんて思っているんだから)

おわり

912以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/04(木) 18:19:47 ID:MOT0E4vs
………………幕間1 「彼女は妹につき」

水希 「………………」 (お兄ちゃん、帰ってくるの遅いなぁ……)

ピキューン!!!!

水希 「はっ!? お兄ちゃんが大人の女性にプロポーズされた気がする!?」

葉月 「和樹」

和樹 「ほいさ」

913以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/04(木) 18:20:22 ID:MOT0E4vs
………………幕間2 「彼女はミーハーにつき」

池田 (川瀬先輩、『カレエゴ』 気に入ってくれたかな……)

池田 (まぁ、先輩も受験生で忙しいだろうし、まだ読んでないかな)

あゆ子 「あ、いたいた。池田ー!」

池田 「川瀬先輩……?」

あゆ子 「これ面白かったよ! 二巻貸してくれ! 頼む!」

池田 「もう読んだんですか!?」

池田 (……まぁ、川瀬先輩結構ミーハーなところあるからなぁ)

914以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/04(木) 18:20:59 ID:MOT0E4vs
………………幕間3 「彼は律儀につき」

成幸 (……いや、でもよくよく考えてみたら、)

うるか 「ん? どったの、成幸?」 ←勉強と部活の頑張りすぎでぶっ倒れた奴

理珠 「成幸さん?」 ←うどんばっかり食べていて将来生活習慣病になりそうな奴

文乃 (成幸くんまたろくでもないこと考えてるね) ←超料理下手で食べるの大好きな奴

成幸 「………………」

成幸 (……桐須先生に限らず、こいつら全員のマネジメントをする必要があるな)

おわり

915以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/04(木) 18:22:09 ID:MOT0E4vs
>>1です。読んでくださった方ありがとうございました。

要素を増やしすぎて話がとっちらかってしまった気がします。
ツギハギのあとが見えてしまうかもしれません。
申し訳ないことです。

また投下します。

916以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/04(木) 20:25:03 ID:G2BsidGg
おつです。
リクエストの話、ありがとうございました!。
先生からのプロポーズもありだな!

917以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/04(木) 20:41:30 ID:8RN6x6aE
乙です

918以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/05(金) 00:00:26 ID:kmfpT3V.
相変わらず早えわ

919以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/05(金) 12:58:53 ID:F2hru5As
>>824
このssすき

920以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/06(土) 01:48:46 ID:to7lUyVg
先生ぐうかわ

921以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/06(土) 15:11:06 ID:0O24lWYM
>>1です。投下します。


【ぼく勉】 あすみ 「キスは催眠術の後で」

922以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/06(土) 15:12:10 ID:0O24lWYM
………………

あすみ 「はー……」 ノビー

あすみ (今日は捗ったな……。我ながらがんばったぞ)

あすみ (この前の模試の結果もなかなかだし、最近調子いいぞ。にしし……)

あすみ (この調子で、国立医学部確実に合格してやるからな、見てろよ親父)

あすみ 「………………」

あすみ (……もし、もしも)

あすみ (合格できたら……いや、できなくても、)

あすみ (後輩に、なんかお礼してやらないとな)

あすみ (そんときは、もっと素直に、しっかりとお礼を言わないとな……)

グゥゥ……

あすみ 「ん……しかし腹減ったな」

あすみ 「……寒いし、なんか温かいモンでも食ってから帰るか」

923以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/06(土) 15:14:25 ID:0O24lWYM
………………緒方うどん

理珠 「……まったく、私には理解できないことです」

成幸 「いや、うん。まぁ、気持ちは分かるけどさ」

成幸 「そうやって意固地になってると、心情理解なんかできないぞ?」

理珠 「この物語はできなくていい気がします……」

理珠 「なぜこの少女は、意中の相手をからかって遊ぶのです?」

理珠 「その心情が理解できるのですか、成幸さんは」

成幸 「……うん。緒方の気持ちはわかるぞ? でも、そうじゃなくてだな……」

理珠 「恋愛とは、相手をからかって遊ぶのが主目的なのでしょうか……」

理珠 「好きなら好きとはっきり言うべきです。相手をからかっていたら、嫌われてしまうと思います」

成幸 (まずい。緒方の思考が受験勉強とはかけ離れたところに行きつつある……)

成幸 (どうしたものか……) ハァ

理珠 「……!?」

理珠 (成幸さんがため息を……!? まさかまた、何か、進路について悩み事が……?)

理珠 (こういうときはやはり……) スッ

924以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/06(土) 15:15:04 ID:0O24lWYM
成幸 「……おい、緒方。それは何だ?」

理珠 「? それ、とは何ですか?」

成幸 「五円玉を糸で吊したそれだよ」

理珠 「成幸さんは何も気にしなくていいんです。ただ、この五円玉を見つめていてもらえれば」 フンスフンス

成幸 「鼻息荒くソレを構えるな! やめろ! ぶらぶら揺らすんじゃない!」

理珠 「む……」

ブスゥ

理珠 「なぜ邪魔をするのですか。私は成幸さんのためを思ってしているというのに」

成幸 「俺のためを思ってなぜ俺に催眠術をかけようとするんだ!?」

ガラッ

あすみ 「こんちゃーす。緒方いるかー?」

あすみ 「……って、何してんだお前ら?」

成幸 「あ、先輩……」

925以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/06(土) 15:16:00 ID:0O24lWYM
………………

あすみ 「……はぁ? 催眠術だぁ?」 ズルズルズル……

成幸 「はい。実は以前、緒方の催眠術にかかってすごいことになりまして……」


―――― 『ええと…… 私が頭をなでると あなたはだんだん心地よくなって どんどん私に甘えたくなっていきます』

―――― 『よしよしよしよしよしよし いい子いい子です』 ぼたゅん

―――― 『今 ものすごく…… 成幸さんに甘えたい…… です』

―――― 『ひざまくらしてください』 『いい子いい子してください』 『あーんしてください』

―――― 『名前で呼んでください』


理珠 「はうっ……///」

成幸 「っ……///」

あすみ 「……あん? すごいことってなんだ?」

成幸 「い、いや、それは、その、大したことじゃ……」

あすみ 「ふーん。でも眉唾だなぁ。催眠術なんてそう簡単にかかるもんじゃねーぞ?」

理珠 「む……」 プクゥ 「疑われるとは心外です」

926以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/06(土) 15:18:03 ID:0O24lWYM
あすみ 「そう怒るなよ。こちとら医学部目指してがんばってるんだ」

あすみ 「医学界でも精神療法で催眠術を用いる場面はままあるが、テレビみたいな催眠術ってのはなぁ……」

理珠 「………………」 スッ

成幸 「緒方? おい、緒方? 五円玉を構えてどうするつもりだ!?」

理珠 「先輩。なら、試しにやってみますか?」

あすみ 「お、面白そうじゃん。アタシはそんなの絶対かかんねーからな」

理珠 「わかりました……。じゃあ、やらせてもらいます」

成幸 「いや、まずいですって先輩。本当に、絶対ろくでもないことに……」

あすみ 「何心配してんだ後輩。アタシが催眠術なんかにかかるように見えるかよ」

成幸 「……んー、まぁ確かに、先輩が催眠術にかかってる姿は想像できないですね」

あすみ 「だろ?」

成幸 (……ま、先輩のことだし。大丈夫だろう。俺は絶対あの五円玉を見ないようにしないと)

理珠 「では、始めます。小美浪先輩。五円玉をよく見つめてください」

あすみ 「はいはい、っと……」

927以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/06(土) 15:18:41 ID:0O24lWYM
理珠 (さて、どういう暗示をかけましょうかね。以前成幸さんには “甘える” という暗示をかけましたが……)


―――― 『なぜこの少女は、意中の相手をからかって遊ぶのです?』


理珠 (そういえば、小美浪先輩もよく成幸さんをからかって遊んでいますね)

理珠 (……小美浪先輩はややあまのじゃくですからね。“素直になる” という暗示はどうでしょうか)

理珠 「小美浪あすみさん」

あすみ 「はいよー」

理珠 「あなたは、この五円玉を見つめていると、だんだんとボーッと心地よい気分になっていきます」

あすみ 「ふんふん」

理珠 「そして、あなたはだんだんと、意識が遠のいていきます」

理珠 「次に目が覚めたとき、あなたはとても素直になっています」

あすみ 「……ふーん」

理珠 「心地よくなってきましたね。意識が浮かんでいきます。少しずつ、身体が浮かぶような気持ちで……」

あすみ 「………………」

………………

928以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/06(土) 15:19:36 ID:0O24lWYM
………………

あすみ 「………………」 ポーーーーー

成幸 「………………」

成幸 (……ほんとにかかっちゃったじゃないかー!)

理珠 「ふふふ、成功です。やはり私の催眠術の腕は確かなようですね!」

成幸 「言ってる場合か! どうするんだよ、これ!」

理珠 「安心してください。ちゃんと解き方も勉強してありますから」 ドヤッ

理珠 「……まぁ、その前に一度目覚めてもらわないといけないですね」

パン!!!

あすみ 「んっ……あれ、アタシ……」

成幸 「あ、先輩、どうですか? 気分は悪くないですか?」

あすみ 「こう、はい……?」

ギュッ

あすみ 「後輩だぁーっ♪」

成幸&理珠 「「!?」」

929以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/06(土) 15:20:31 ID:0O24lWYM
あすみ 「えへへっ、こうはいっ、こうはいっ」 ムギューーーッ

成幸 「先輩!? な、なんでくっつくんですか!?」

あすみ 「何でって、そんなの決まってるだろー?」

あすみ 「後輩にぃ、くっつきたいからだー!」 ムギュムギュムギュッ

成幸 「っ……///」 (せ、先輩の……色々なブブンが、めっちゃ当たって……///)

理珠 「むぅ……」 プクゥ 「……随分と嬉しそうですね、成幸さん?」

成幸 「何でお前が怒ってんだ!? いいから早く催眠を解いてくれよ!」

理珠 「あっ、そ、そうですね」 オホン 「では、小美浪先輩、こっちを向いてください」

あすみ 「やっ」 プイッ

理珠 「……いや、“やっ” ではなく……」

あすみ 「やっ!」 プイプイッ 「後輩をたぶらかすGカップは、やっ!」

理珠 「じ、Gカップって……! 私が胸だけみたいなこと言うのはやめてください!」

あすみ 「やーん、Gカップが怒った。こうはーい、怖いよー」 ムギュゥッ

成幸 (ほぼ抱きつかれてるような姿勢になってるぞ!?)

930以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/06(土) 15:21:34 ID:0O24lWYM
理珠 「むぅ……」

理珠 「いいから、こっちを向いてください! いい子ですから!」

あすみ 「アタシいい子じゃないしー」 プイッ

理珠 「ムキー!!」

理珠 「………………」

成幸 「……お、おい、緒方?」

理珠 「……先輩がこっちを向いてくれない限り、私にはどうすることもできません」

成幸 「へ?」

あすみ 「……えへへ、こうはーい♪」

理珠 「まぁ、催眠術は数時間で解けますから」 ムスッ

理珠 「先輩は、成幸さんが責任を持ってお家に届けてあげてください」 ムスムスッ

成幸 「ちょっと待て! 本当に何でお前が怒ってるんだ!?」

931以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/06(土) 15:22:23 ID:0O24lWYM
………………帰路

あすみ 「わーい、後輩のおんぶーっ♪ ラクチン〜!」

成幸 「わ、わかりましたから、あんまり騒がないでください、先輩」 フラフラフラ……

成幸 (いつもの先輩からは想像できない姿だ……)

あすみ 「えへー、ありがとなー、こうはいっ!」

ハムッ

成幸 「はうあっ!?」 ビクッ

成幸 「みっ、耳をはみはみしないでください……! あっ……ダメですって!」

あすみ 「お礼なのに……」 シューン

成幸 (こ、このままじゃ身が保たない……。早く家に送り届けないと……)

932以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/06(土) 15:23:10 ID:0O24lWYM
………………小美浪家

成幸 「ごめんくださーい! 小美浪さん、いらっしゃいますかー?」

シーーーン

成幸 「あれ……?」

成幸 「先輩、お父さんは……?」

あすみ 「親父? 親父は今日は往診なんだ」

成幸 「……ってことは、家にはいないんですか?」

あすみ 「ん! だからふたりっきりだぜ、成くん?」 ムギュッ

成幸 「……!? な、成くんって……」

あすみ 「えへへー、今考えたんだ! ほら、アタシたち恋人同士だろ?」

成幸 「えっ」

あすみ 「なのにいつまでも先輩後輩呼びは変だろ。だから、成くん」

成幸 「い、いやいやいや、恋人同士って、それはあくまでお父さんを誤魔化すためのフリで……」

あすみ 「………………」 ウルッ

成幸 「!?」

933以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/06(土) 15:24:01 ID:0O24lWYM
あすみ 「……成くんは、アタシが恋人じゃ、イヤってことか?」 ウルウルウル

成幸 「えっ!? いや、そういう問題じゃ……っていうか、何で泣きそうになってるんです!?」

成幸 (っていうか、これが素直な先輩って……) ボフッ (これじゃまるで、先輩が俺のこと好きみたいじゃないか……)

成幸 (いや、いやいや……いくらなんでもそれは自意識過剰すぎるな)

成幸 (先輩はきっと、俺への感謝の気持ちを “素直に” 表現してるだけだ。うん。絶対そうだ……)

あすみ 「だって……だってぇ……」 ブワッ 「成くんにフラれる〜〜〜〜!!!」

成幸 「わーー! 泣き出さないでください! ごめんなさい! 俺が悪かったですから!」

成幸 「嫌じゃないです! 先輩の恋人になれてすごく嬉しいですから!」

あすみ 「………………」 ピタッ 「……えへ〜」 ニコッ

成幸 (めっちゃすぐ泣き止んだ。このあたりはいつもの先輩と一緒だ……)

あすみ 「じゃあ、成くんは、アタシのことなんて呼んでくれるんだ?」

成幸 「え……!? えっと……あー……」

成幸 (……いつもの先輩に知られたらめちゃくちゃ怒られそうだけど)

成幸 (また泣かせるわけにもいかないし……)

934以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/06(土) 15:24:40 ID:0O24lWYM
成幸 「あっ……」 カァアアアア…… 「“あーちゃん” ……とか?」

あすみ 「………………」

成幸 (……し、しまった。気に入らなかったか?)

ニヘラ

あすみ 「……えへっ。すごくいい。ね、呼んでみてくれよ、成くん」

成幸 「あ、はい……。えっと……あーちゃん?」

あすみ 「うん。成くん。えへへ……」 ギュッ

成幸 「……っ///」 (うー、恥ずかしい、けど……)

あすみ 「?」

成幸 (やっぱり素直な先輩はめちゃくちゃ可愛い……)

ハッ

成幸 (って、何考えてんだ俺は! 催眠術にかかってる相手にそんな……)

あすみ 「ほら、成くん! アタシの部屋行って勉強しよ!」 ギュッ

成幸 「わっ、せ、先輩……じゃなくて、あーちゃん! 引っ張らないでくださいよー!」

935以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/06(土) 15:26:05 ID:0O24lWYM
………………あすみの部屋

あすみ 「………………」

成幸 「………………」

カリカリカリ……

成幸 (ほっ。幸い、部屋についた途端、勉強モードに入ってくれた)

成幸 (先輩は根がまじめだもんな。“勉強したい” って気持ちも素直のうちなんだろ)

あすみ 「ねー、成くん。一問解けた! 解けたよ!」

成幸 「あ、はい。よくできましたね」

ナデナデナデ

あすみ 「えへへー♪」

成幸 (……まぁ、問題を解くたびに色々と要求されるけど、これくらいで済むならいいよな)

あすみ 「次の問題解けたらひざまくらしてくれるか?」

成幸 「……いや、それじゃ勉強できないじゃないですか」

あすみ 「……だめ?」 ウルウルウル

成幸 (こうやって感情に揺さぶりをかけてくるあたりはいつもの先輩と一緒だ……)

936以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/06(土) 15:26:45 ID:0O24lWYM
成幸 「……じゃあ、一分だけですよ?」

あすみ 「! わかった!」

成幸 (……うん。まぁ、これくらいで済んで僥倖と言うべきだろう)

成幸 (緒方のときは最終的に永久機関ができあがったからな……)

成幸 (……いかんいかん。俺も勉強に集中しないと)

あすみ 「………………」

カリカリカリカリカリカリカリ……

あすみ 「……できた!」

あすみ 「えーい!」 ゴローン

成幸 「わっ……ととと……」

成幸 「もう、あーちゃん? いきなり寝転んでこないでくださいよ」

あすみ 「だって早く成くんに膝枕してもらいたかったんだもん!」

成幸 「まったく……。一分だけですからね?」

あすみ 「はーい」

937以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/06(土) 15:27:31 ID:0O24lWYM
成幸 「………………」

カリカリカリ……

あすみ 「………………」 (……真剣な顔して勉強してる成くん、かっこいいなぁ)

あすみ (こんないい人の恋人になれて、アタシは幸せ者だなぁ……)

あすみ (……もっと、成くんと距離を縮めたいな)

成幸 「……ん。そろそろ一分ですよ、先輩。勉強を再開してください」

あすみ 「……んー、もうちょっとー!」

成幸 「約束を破るのはダメですよ。ほら、起き上がってください」 スッ……

あすみ 「はうっ……!?」

成幸 「あっ……///」

成幸 「す、すみません。先輩を起こそうと思ったけど、近づきすぎました……」

あすみ (きっ……) ボフッ (キスされるかと思った……///)

あすみ (……ん、キス?)

あすみ (キス……かぁ)

938以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/06(土) 15:28:10 ID:0O24lWYM
成幸 「? あーちゃん?」

あすみ 「……ねえ、成くん。今から小テストやるから、終わったら採点お願いしてもいい?」

成幸 「もちろんです。がんばってくださいね、先輩」

あすみ 「………………」 ジーーーッ

成幸 「あっ……。あーちゃん……」

あすみ 「……うん!」 パァアアアアアア……!!

あすみ 「ねえねえ成くん。もうひとつお願いがあるんだけど、」

成幸 「何です?」

あすみ 「この小テスト、満点取れたらゴホービちょうだい?」

成幸 「ご褒美? また膝枕ですか?」

あすみ 「ううん。今度は……その……、……ゥ、して、ほしい……」

成幸 「?」

あすみ 「……だから……チューして、ほしい」

成幸 「へ……?」

成幸 「……い、いやいやいや! それはさすがにまずいでしょう!?」

939以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/06(土) 15:29:04 ID:0O24lWYM
あすみ 「まずいって、どうして?」

成幸 「いや、だって、あーちゃんはいま、催眠術にかかって……」

あすみ 「催眠術にかかってると、チューしちゃいけないのか?」

成幸 「そ、そりゃそうですよ。前後不覚の女性に、そんなこと……」

あすみ 「……むぅ。そんなにアタシとチューするのイヤかよ」

成幸 「むくれてもダメですよ。さすがに、こればっかりは……」

あすみ 「……イヤなんだ」

成幸 「嫌とかそういう問題じゃなくて……」

あすみ 「成くんがイヤじゃないならいいだろ? アタシがしたいって言ってるんだぞ?」

成幸 「………………」

ハァ

成幸 「……分かりました。満点取れたらですからね」

あすみ 「!」 パァアアアアアア……!!! 「うん、がんばる!」

成幸 (……まぁ、大丈夫だろ。先輩がいまやってる問題集、かなり難しいやつだし)

940以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/06(土) 15:29:50 ID:0O24lWYM
………………

成幸 「……!?」 (ま、満点……!?)

あすみ 「よっしゃー! 全問正解!」

成幸 「す、すごい。先輩、着実に基礎が身についてるってことですよ!」

成幸 「国立医学部、かなり現実味を帯びてきたんじゃないですか!?」

あすみ 「えへへ。ありがとな、後輩」

あすみ 「……ってことで、ゴホービ、だよな?」

成幸 「あっ……」 (わ、忘れてた……)

成幸 「いや、えっと、その……」 テヘッ 「ご褒美って何でしたっけ?」

あすみ 「あん? それでごまかせると思ってるのか、お前は?」

成幸 「……ですよね」

成幸 「いや、でも、やっぱりキスは……」

あすみ 「………………」 プクゥ 「……やっぱり、アタシとキスすんのイヤなだけじゃねーか」

成幸 「そうは言ってないですけど……」

941以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/06(土) 15:30:26 ID:0O24lWYM
あすみ 「ならいいじゃねーか」

スッ……

成幸 「あ、あーちゃん……」

成幸 (目を閉じて、唇を尖らせて……これって……)

成幸 (俺のキスを、待ってるってこと、だよな……)

ドキドキドキドキ……

成幸 (キス……)

成幸 「………………」 グッ 「……先輩」

あすみ 「こう、はい……?」


成幸 「――……やっぱり、ダメです」


あすみ 「……っ」 プイッ 「そんなに、イヤかよ。アタシとキスするの……」

成幸 「違います。いま、先輩は催眠術にかかってるんです。だから、そんな先輩にキスをするのは、卑怯なんです」

成幸 「だから、ダメなんです。分かってください。先輩……いや、あーちゃん」

あすみ 「………………」

942以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/06(土) 15:30:59 ID:0O24lWYM
あすみ 「……なぁ、こうは――成くん?」

あすみ 「でも、さっき言ってたよな? 約束を破るのはダメだって」

成幸 「ん……」


―――― 『約束を破るのはダメですよ。ほら、起き上がってください』


成幸 「まぁ、確かに言いましたけど……」

成幸 「でも、やっぱり……」

あすみ 「……それに、さっきの言い回しだと、アタシの催眠術が解けたら、チューしてもいいってことだな?」

成幸 「へ? いや、そういうことじゃ……なくは、ないのかな?」

成幸 「で、でも、催眠術が解けたら、そもそも先輩はべつに俺とキスなんか……――」

――ギュッ……スッ……

成幸 「へ……――」


――――――チュッ……


成幸 「……!?」

943以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/06(土) 15:31:46 ID:0O24lWYM
あすみ 「………………」

成幸 「………………」

ッ……

あすみ 「……約束は、約束だからな。恨むなよ」

成幸 「……は? えっ? いや……えっ」

あすみ 「……お茶でもいれてくる」

トトトト……バタン

成幸 「………………」

カァアアアア……

成幸 「い、いま……き、キス……? 口に? えっ? ええっ!?」

成幸 (い、いやいやいやいやいやいやいや、お、おおおお落ち着け、俺)

成幸 (先輩は、催眠術にかかってたんだ。だから、べつに、他意はなくて、そんな大したことじゃ……)

成幸 「………………」

成幸 (……大したことじゃないわけあるかーーーー!!!)

成幸 (せ、先輩にどんな顔して会えばいいんだ? ど、どど、どうしたら……///)

944以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/06(土) 15:32:35 ID:0O24lWYM
………………ドアの外

あすみ 「………………」

スッ……

あすみ (……チューって、結構ドキドキするもんなんだな)

あすみ (唇が熱い……気がする)


―――― 『……それに、さっきの言い回しだと、アタシの催眠術が解けたら、チューしてもいいってことだな?』

―――― 『へ? いや、そういうことじゃ……なくは、ないのかな?』


あすみ 「……おまえが悪いんだぞ、後輩」

ドキドキドキドキ……

あすみ 「催眠術が解けているなら、キスしてもいいって、言ったのはお前なんだから」

おわり

945以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/06(土) 15:35:28 ID:0O24lWYM
………………幕間1 「あきらめた」

水希 「………………」

ピキューン!!!

水希 「お兄ちゃんがまた女とキスした気がする!!」

花枝 「………………」

和樹 「? 母ちゃん何か言わないの?」

花枝 「もうあきらめたわ」

946以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/06(土) 15:36:06 ID:0O24lWYM
………………幕間2 「また」

文乃 「また相談したいことがあるって……何かあったの?」

クスッ

文乃 (……なんて、どうせりっちゃんかうるかちゃんのことだろうけど)

成幸 「……うん。実は、これはあくまで友達の話なんだけど……」

文乃 「うんうん」

成幸 「その友達が、知り合いの女の先輩とキスしちゃってさ……」

文乃 「うんう――うん?」

成幸 「……どうしたらいいかな?」

文乃 「………………」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

成幸 「……? 古橋?」

文乃 (この男……)

文乃 (またゆきずりの女とフラグを……!!!)

おわり

947以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/06(土) 15:36:53 ID:0O24lWYM
>>1です。読んでくださった方、ありがとうございました。

このスレにあと一つくらい投下できると思います。
また投下します。

948以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/06(土) 19:04:08 ID:gGGRcViI
先輩の話甘いわ
それがいいんだけどな!!

949以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/06(土) 21:44:58 ID:0O24lWYM
>>1です。投下します。

【ぼく勉】 成幸 「結局あの後、緒方の家に泊まることになってさ」 文乃 「ちょっと待って」

950以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/06(土) 21:45:42 ID:0O24lWYM
………………問36後 夜 ラーメンうめえん

ズルズルズル……

うるか 「んーっ! やっぱりこの時間のラーメンは最高だね、文乃っち」

文乃 「ほんとだねぇ……」 ズルズルズル……

文乃 (うぅ……また太っちゃう……)

文乃 (でも美味しいよぅ……)

文乃 「あ、すみません。替え玉お願いします」

店員 「かしこまりましたー!」

文乃 (ああもう、太っちゃうなぁ……困るなぁ……)

うるか 「でも、リズりんほんとにダイジョーブだったの?」

文乃 「えっ……あ、う、うん。大丈夫。問題なかったよ」

951以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/06(土) 21:46:12 ID:0O24lWYM
うるか 「ふーん、そっか。“タスケテ” なんてメール送ってきたから心配しちゃったね」

文乃 「あはは……」


―――― [えっと唯我君…… これは一体全体どういうことなのか 説明してくれるかなこの野郎]

―――― [ち 違う! これはかくかくしかじかで……]

―――― [ホラー映画? ああ…… たしかにりっちゃん苦手だもんねぇ……]

―――― [………… ドサクサに紛れて変なこと……してないよね……?]

―――― [しっ してません!! 神に誓って!!]

―――― [……もう しょうがないなぁ…… これは貸しにしておくからね!]


文乃 (……まぁ、唯我くんのことだから全部本当のことだろうし、大丈夫だよね)

文乃 「そんなことより、夜はこれからだよ、うるかちゃん」 ズルズルズル……

うるか 「? 夜はこれから?」

文乃 「あ、すみません! チャーハン大盛り追加お願いします!」

店員 「かしこまりましたー!」

うるか 「ほへー、たくさん食べるねぇ、文乃っち。よーし、あたしも負けないよー!」

952以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/06(土) 21:46:54 ID:0O24lWYM
………………翌日 夏期講習 昼休み

文乃 「うぅ……」

ボロボロ

文乃 「今日の講習も散々だったよ。進むのが早いよぅ……」

成幸 「まぁ、しょうがない。寝なかっただけ偉いぞ、古橋」

成幸 「さて、じゃあ今日の範囲の復習からだな。お昼食べながらやるぞ」

文乃 「はーい……」

ジーーーッ

文乃 (……特に何も言ってこないから、わたしの方から聞くのもはばかられるけど)

文乃 (昨日は結局、あの後どうなったんだろう)

953以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/06(土) 21:47:33 ID:0O24lWYM
文乃 (りっちゃんのことだから一晩中怖かっただろうし、ヘタしたら唯我くんにずっとそばにいてもらったりして……)

クスッ

文乃 (……なんて、そんなわけないか。唯我くんは紳士だし、りっちゃんもその辺はわきまえてるもんね)

成幸 「あ、そういやさ、昨日の話だけど、」

文乃 「うん? あの後のこと?」

成幸 「うん。まったく、ひどい目にあったよ」



成幸 「結局あの後、緒方の家に泊まることになってさ」



文乃 「ちょっと待って」

954以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/06(土) 21:48:33 ID:0O24lWYM
成幸 「? どうかしたか?」

文乃 「いや、“どうかしたか?” じゃないよ!?」

文乃 「何 “コンビニ行ってきた” みたいな軽い感じでとんでもないこと言ってるの!?」

文乃 「泊まったの!? りっちゃん家に!?」

成幸 「いや、まぁ……泊まったって言っても一晩中起きてたし……」

成幸 「何も問題はないと思うけど」

文乃 「むしろ余計に問題が増えたんだけど!? ずっと起きてたの!?」

成幸 「なんで起きてたら問題なんだ?」

文乃 「むしろそれで問題ないと思っている方が疑問なんだけど!?」

955以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/06(土) 21:49:21 ID:0O24lWYM
成幸 「お、落ち着けよ。いきなりどうしたんだ、古橋」

成幸 「近いから。な? 少し離れようか」

文乃 「なんでわたしがなだめられてる感じを出すのかな!?」

文乃 (い、いけない。とんでもないことを言われたからつい取り乱してしまった)

文乃 (落ちつかないと。うん。落ち着いて……落ち着いて……)

成幸 「いや、それにしても、緒方って寝相悪いのな」

成幸 「抱きつかれたときはどうなるかと思ったよ。ははは」

文乃 「なんで笑ってられるのかなきみは!?」

文乃 「りっちゃんの部屋でりっちゃんに抱きつかれたの!?」

成幸 「あ、いや、ちょっと語弊があったか。抱きつかれたって言うと、あいつの名誉にかかわるもんな」

文乃 (ほっ……。言葉の綾だったみたいだ。よかったよかった……――)

成幸 「――正確に言うと、急に布団から飛び起きて腰に手を回されてのしかかられたって言うべきか?」

文乃 「わたしに聞かれても知らないし余計まずい感じになってることに気づかないのかなきみは!?」

文乃 (わたしとうるかちゃんが呑気にラーメン食べてる間にきみは一体何をやってたのかな!?)

956以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/06(土) 21:49:52 ID:0O24lWYM
文乃 「……ねぇ、唯我くん」

成幸 「?」

文乃 「聞いたよね、わたし。それに答えたよね、きみ」


―――― [………… ドサクサに紛れて変なこと……してないよね……?]

―――― [しっ してません!! 神に誓って!!]


成幸 「あ、ああ……。まぁ、言ったというか、アイコンタクトだったけど、まぁ……」

文乃 「あれはその後なら変なことしていいって意味じゃないからね?」

成幸 「当たり前だろ!? 変なことなんてしてねーよ!」

成幸 「ちょっと朝まで(親父さんと)激しい運動してただけだよ!」

文乃 「おいちょっと待てコラ唯我くん」

文乃 「はぁああああああああ!? ほんとに何やってたのきみたちは!?」

成幸 「うーん……いや、あれは運動というよりは戦いだったな……」

文乃 「やかましいよ! 余計生々しくしてどうするのかな!?」

957以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/06(土) 21:50:25 ID:0O24lWYM
………………帰り道

文乃 「りっちゃんを寝かしつけてたら驚異的な寝相の悪さでのしかかかられ、」

文乃 「折悪く帰宅したりっちゃんのお父さんに見つかって一晩中戦っていた、と……」

文乃 「……なんだ。そういうことだったのね」

成幸 「いや、だから最初からそう言ってただろ……」

文乃 (きみがまぎらわしい言い方をするから誤解が広がったんだけどね)

文乃 (……まぁいいや。早とちりして疑ってしまったわたしも悪いし)

ジトーーーッ

成幸 「な、なんだよ。その目は」

文乃 「……ほんとにりっちゃんに何もしてないんだよね?」

成幸 「してないよ!」

文乃 「ほんとに? 抱きつかれたときに唯我くんもこっそり腰に手を回したりしてない?」

成幸 「してないよ! するわけないだろそんなこと!」

文乃 「どさくさにまぎれてあの暴力的なおっぱいを揉んだりとかは?」

成幸 「お前は俺のことを何だと思ってるんだ!?」

958以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/06(土) 21:51:01 ID:0O24lWYM
文乃 「……ま、いいや。信じてあげる」

クスッ

文乃 「でも、寝相だったとしても、りっちゃんに抱きつかれて少しはドキッとしてたりして」

成幸 「そ、それは……」

プイッ

成幸 「仕方ないだろ。俺だって男だし、緒方は……ほら、客観的に言ってかわいいし……」


―――― ((普段は小動物みたいな奴だけど……))

―――― ((こうして改めて見るとやっぱり すげぇ美少女だな……))


文乃 (おや……? おやおや?)

文乃 (これは意外と、りっちゃんのことをちゃんと意識してるのかな?)

文乃 「へー」 ニヤニヤ 「つまりきみは、寝ているりっちゃんに欲情した、と?」

成幸 「他にもっと言い方ないかな古橋さん!!」

959以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/06(土) 21:51:45 ID:0O24lWYM
文乃 「………………」

ホッ

文乃 (ま、いいや。何もなかったのは本当のことみたいだし)

文乃 (結果的に、唯我くんがりっちゃんのことを意識するきっかけになってくれれば悪くもないし)

文乃 (……ただひとつ、明確に言えること)

文乃 「……ねぇ、唯我くん」

成幸 「ん?」

文乃 「りっちゃん家で一夜を明かしたこと、絶対に他の人に喋っちゃだめだからね」

成幸 「? まぁ、男子たちに話したらどう思われるか分かったもんじゃないし話すつもりはないけど」

成幸 「武元は? あいつになら笑い話として話せるかなー、なんて――」



文乃 「――バカなの?」



成幸 「辛辣すぎません!?」

960以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/06(土) 21:52:17 ID:0O24lWYM
文乃 (なんでそこでよりによって一番話しちゃいけない相手にならいいとか思っちゃうのかな!?)

文乃 (……まったくもう)

文乃 「いい? 誰にも話しちゃダメだからね? うるかちゃんにも!」

成幸 「そ、そういうもんか。俺にはまったくわからん……」

文乃 (……本当に、唯我くんは手がかかるなぁ)

文乃 (ま、念も押したし、大丈夫だよね。間違ってもうるかちゃんの耳にこのことが届くことはないだろう)

文乃 「………………」


―――― 『タスケテ』


文乃 (……あのメールを見て、唯我くんは誰より早くりっちゃんの家に駆けつけたんだよね)

文乃 (もしわたしが同じようなメールを出したら、唯我くんは……)

文乃 「……ねえ、唯我くん」

成幸 「ん?」

文乃 「もしわたしがりっちゃんと同じように困っていたら、わたしのことも助けてくれる?」

成幸 「えっ……?」

961以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/06(土) 21:52:47 ID:0O24lWYM
文乃 「………………」

ハッ

文乃 (わ、わたし一体何を聞いてるの!? なんでそんなこと、唯我くんに……) カァアアアア……

文乃 「ご、ごめん! 唯我くん! 変なこと聞いちゃったけど、忘れて――」

成幸 「――そんなの、当たり前だろ」

文乃 「へ……?」

成幸 「俺はお前たちの 『教育係』 だからな。当然、お前の家にも行くよ」

文乃 「そ、そっか……」 (唯我くん……)

文乃 (わたしのところにも、来てくれるんだ……)

成幸 「ま、夜に急に呼び出すのは、本当の緊急時に限ってほしいけどな」

文乃 「……だ、大丈夫だよ。わたしホラー映画怖くない人だし!」

成幸 「そういう問題かよ」 クスッ 「じゃ、俺こっちだから。また明日、古橋」

文乃 「……うん。また明日ね。唯我くん」

962以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/06(土) 21:53:35 ID:0O24lWYM
………………数ヶ月後 問89後 いつもの場所

文乃 「………………」

成幸 「………………」

カリカリカリ……

文乃 (……なつかしいこと思い出しちゃったな)

チラッ

文乃 (あのとき言ってくれた通りだね。成幸くん、君は、本当にわたしを助けてくれたんだ)

成幸 「ん……? どうかしたか、古橋?」

文乃 「へっ? う、ううん。なんでもない」

文乃 (……そう。なんでもない)

文乃 (なんでもないんだよ、成幸くん)

963以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/06(土) 21:54:12 ID:0O24lWYM
成幸 「……大丈夫か、古橋?」

成幸 「仲直りはしたみたいだけど、やっぱりまだお父さんと顔を合わせるのは怖いか?」

文乃 「……えっ?」

カァアアアア……

文乃 「あっ……そ、そうだね……」

成幸 「?」

文乃 (な、なんて不謹慎なのわたし!? 成幸くんはわたしのこと心配してくれてるのに……)

文乃 (わたし、全然べつのこと考えてた……)

文乃 「………………」 (そっか……)

文乃 (わたし、この人の隣にいると、辛かったこと全部、忘れちゃうんだ……)

964以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/06(土) 21:55:24 ID:0O24lWYM
成幸 「古橋……?」

文乃 「……ねえ、成幸くん。わたし、本当にきみがいてくれてよかった」

成幸 「へ……?」

文乃 「ううん。違うな。君が変わらず君でいてくれてよかった、って言うべきかな」

成幸 「えっと……? それは、どういう意味だ?」

文乃 「……ううん。なんでもない」 クスッ 「ごめんね、ヘンなこと言って」

文乃 「勉強、もどろ?」

成幸 「ん……ああ……」

文乃 (……君は、りっちゃんだから家に駆けつけたわけじゃない)

文乃 (そして、わたしだから家に泊めてくれているわけでもない)

文乃 (わかってる。だから、これは君の優しさに甘えているだけのこと)

965以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/06(土) 21:56:25 ID:0O24lWYM
文乃 (……ねぇ、成幸くん)

文乃 (君は約束通り、わたしを助けてくれた)

文乃 (でもね、わたし、わがままだ)

文乃 (りっちゃんと同じように助けてもらうだけじゃ、満足できないみたい)

成幸 「………………」


―――― 『起きてる』

―――― 『だから…… あとほんのちょっとだけ…… このままでもいい……?』


文乃 (成幸くん、ねえ、気づいてる? わたし、もう “起きてる” んだよ?)

文乃 (だから、わたし……)

文乃 (君を……)

ギュッ……

文乃 (君を、好きになっても、いいのかな……)

おわり

966以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/06(土) 21:57:17 ID:0O24lWYM
………………幕間 「死屍累々」

うるか 「よー、リズりん。今日も勉強がんばろーねー!」

理珠 「はい。今日もしっかりと励みましょう」

うるか 「……ん?」

鹿島&猪森&蝶野 「「「………………」」」 ピクピクピク……

うるか 「!? A組のみんな!? どうしたの!?」

鹿島 「あ……た、武元さん〜……」

鹿島 「我々は〜、もうだめです〜……」

猪森 「と、文x成の尊みが強すぎて……」 ゴフッ

蝶野 「我が人生に一片の悔いなし……」 ガクッ

おわり

967以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/06(土) 21:59:21 ID:0O24lWYM
>>1です。読んでくださった方ありがとうございました。

時系列が途中で飛ぶのはあまり好ましくないかもしれません。
申し訳ないことです。

968以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/06(土) 22:05:03 ID:0O24lWYM
>>1です。
連投失礼します。


もう一つ投下できるかなーと書いていたのですが、このスレに収まらない気がするのでやめておきます。
このスレにはもうSSは投下しません。長らくお付き合いありがとうございました。
アニメが始まる直前ではありますが、2つめのスレも無事埋められて良かったなと思います。

感想をくれた方、乙をくれた方、本当にありがとうございました。
最初のスレと比べて、書きたいものがどんどんマニアックになっていく上に、
わたし独自の解釈も増えていき、大層読みにくかったと思います。申し訳ないことです。


厚かましいお願いではありますが、読んでいただいた方、
最後に感想などを残していただければすごく嬉しいです。
一番面白かったSSなど教えていただければ、今後の参考にさせていただきます。


次のスレを立てるかどうかは分かりません。
もし立てるとすれば、前回今回と同様、完成したSSのタイトルをスレタイにすると思います。
そのときは、また読みに来ていただけると嬉しいです。

969以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/06(土) 22:19:54 ID:z6KGdkt.
乙です

真冬 「それがあなたの長所でしょう?」
真冬 「彼は教え子につき」

かな。真冬先生最高です

970以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/07(日) 03:01:36 ID:zDD9eezY
おつんこここ

このスレだと
【ぼく勉】 成幸 「クリスマス、うちに来ないか?」
が印象深い
時間軸超えてるとか知ったことではないわ!

971以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/07(日) 03:24:48 ID:joDA48Cc
おつでした
毎日更新楽しみしてました!次スレも期待してます!
難しいけど、成幸 「キスと呼べない何か」が一番好き

972以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/07(日) 15:05:35 ID:OwNsG45g
おつ
アニメ思ったより出来良いな

973以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/08(月) 23:42:36 ID:BbthHg3s
2スレも乙
タイトル覚えてないが文系ちゃんとプラネタリウム見に行く話が記憶に残ってる

974以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/09(火) 18:21:06 ID:FxYd1ccA
おつつ

個人的には1スレ目にあったこれ
【ぼく勉】桐須先生 「不可解。どうしたというの、唯我くん」

原作とごっちゃになった(いい意味で)
しばらく経って読み返すまでこの話は原作の話だと勘違いしてたレベル

975以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/16(火) 02:14:50 ID:iXFEFCac
いま、【ぼく勉】文乃 「なんてベタな……」まで読んだ
どれも面白い

976以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 22:41:32 ID:UawLMgbI
たくさんの感想、ありがとうございます。
励みになります。参考にもなります。
さて、投下しないと言っておきながら、
スレにあそびがあるのももったいないので、短く書き上がったものを投下します。
大してみじかくなっていないので、ギリギリですが。
全キャラの“今週末シリーズ”は新しいスレの方に投下しますので、
今回はシーズンネタを投下します。
ギリギリになってしまいましたが、母の日です。


【ぼく勉】 文乃 「そっか。今週末は母の日だね」

977以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 22:42:08 ID:UawLMgbI
文乃 (だからこんなに街中赤いカーネーションだらけなんだね)

「パパ! これあげたらお母さん喜ぶかなー!」

「きっと大喜びだよ。一緒にプレゼントしようね」

「うん!」

文乃 (ふふ。お父さんと娘さんかな。何をプレゼントするんだろ)

文乃 (微笑ましいなぁ……)


―――― 『だから文乃もね もし今後何かカベにぶつかったとしても それでいいの』

―――― 『「できない子」代表のお母さんが許す!』

―――― 『好きなことを全力で 好きにやりなさい』


文乃 (……うん。大丈夫。悲しいとか、辛いとかは、ない)

文乃 (お母さんの言葉は、わたしの中で生きている)

文乃 (そのお母さんの言葉で、わたしはやりたいことを目指して、今もがんばっている)

文乃 (だから、大丈夫) グッ (さびしくなんか、ない)

文乃 「……ん?」

978以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 22:42:43 ID:UawLMgbI
………………

成幸 「………………」

成幸 「うーーーーーーん……どうしたもんかな……」

成幸 「これは……いやいや、高すぎるな。絶対嫌がるよな……」

成幸 「これか……? いやしかし、あまり家事を連想させるものを贈るのはよくないし……」

成幸 「これか? いや、でも前新しいの買ってたし……」

成幸 「……うーむ。どうしたもんか……――」


文乃 「――成幸くん? こんなところで何やってるの?」


成幸 「のわっ!? ふ、古橋!?」

文乃 「やっ。一週間ぶりくらいかな。元気にしてたようで何より何より」

成幸 「そりゃ当たり前だろ。体調崩してたらこんなとこうろついてないよ」

文乃 「はは、それもそうだね」

文乃 「……で? 今日は一体どうしたの?」

成幸 「う゛ぇっ!? あ、いや……」

979以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 22:43:25 ID:UawLMgbI
成幸 「た……大したことじゃ、ないんだけど……」

文乃 「へぇ〜?」 ニンマリ 「母の日のプレゼント選び、そんなに大したことじゃないかなぁ?」

成幸 「なっ……ば、バレてたのかよ……」

文乃 「そりゃ、母の日ギフトのコーナーで右往左往してれば誰だって分かるって」

文乃 「……まったく、君は高校を卒業しても相変わらず優しいね」

文乃 「わたしが傷つかないように、母の日のプレゼント選びしてたって言わなかったんでしょ?」

成幸 「い、いや、そんな……」 カァアアアア…… 「……ことは、なくは、ないけど」

文乃 「ふふ。だと思った。ほんと……」

文乃 (……ほんと、優しいんだから)

文乃 (まぁ、そういうところが……ゴニョゴニョ……なんだけどさ……///)

成幸 「……? どうした? 顔赤いぞ?」

文乃 「な、なんでもないよ」

オホン

文乃 「ところで、悩める若人に、この古橋文乃が力を貸してしんぜようか?」

成幸 「へ?」

980以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 22:43:56 ID:UawLMgbI
文乃 「だから、」 ニコッ 「プレゼント選び、付き合ってあげよっか? って言ってるの」

成幸 「本当か!? 助かるよ!」

文乃 「ふふん。まぁ、わたしは君のお姉ちゃんでもあるからね。それくらいお安いご用だよ」

成幸 「さすが、頼りになるよ。文乃姉ちゃん」

文乃 「……とはいえ、成幸くんが贈りたいものを贈るのが、一番いいと思うけどね」

成幸 「お、おいおい、身もふたもないこと言い出すなよ」

成幸 「……っていうか、欲しいもの聞いたとき、母さんにも同じようなこと言われたぞ」

成幸 「だからプレゼントを決められなくて困ってるんだよ……」

文乃 「ああ、なるほど……」

文乃 「ちなみに、水希ちゃんたちは何をあげるの?」

成幸 「ああ、水希はご馳走用意するって言ってたな。はりきって下ごしらえしてるぞ」

文乃 「も、もうお料理を始めてるんだ……。すごいね」

成幸 「葉月と和樹は、絵をプレゼントするって。大作を鋭意製作中だよ」

文乃 「いいねぇ。微笑ましいねぇ」

981以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 22:44:42 ID:UawLMgbI
成幸 「……で、俺は何も決まらず悩んでるんだけど、」

成幸 「俺、進路を決めるとき母さんに迷惑かけたし、貯金も使わせてもらったし……」

成幸 「母さんのおかげでここまで大きくなれた。母さんのおかげで希望の進路を目指せる」

成幸 「バイト代も結構貯まったしさ、今まで俺を育ててくれた母さんに、いいプレゼントをあげたくてさ」

文乃 「成幸くん……」

成幸 「……でもそうやって気負うとまた迷うんだよ」

文乃 「………………」

文乃 「……ふふ、腕が鳴るよ」

成幸 「古橋……?」

文乃 「成幸くんのお母さんへの想い、心に響いたよ!」

文乃 「よーし、文乃お姉ちゃんが、はりきってお手伝いするよ!」

成幸 「……おう。ありがとな、古橋。よろしく頼むよ」

文乃 「うん! がんばって最高のプレゼントを見つけようね!」

982以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 22:45:15 ID:UawLMgbI
………………

文乃 「装飾品とかどうかな? ブローチとか」

成幸 「俺もそういうの考えたんだけどさ……」

成幸 「ほら、結構値段が張るだろ?」

文乃 「? うん」

成幸 「俺はいいんだけど、母さんが絶対嫌がるんだよ」

成幸 「“そんな大金私のために使うくらいなら貯金しろー!” ってさ」

文乃 「ああ……」 (成幸くんのお母さん、たしかに言いそう……)

文乃 「じゃあ、普段の家事で使うようなものは? かわいいミトンとか菜箸とか……」

成幸 「うん。それも考えたんだけど、昨日テレビでやっててさ……」

成幸 「“家事を連想させるものを贈るのは、もっと家事をしろ、と受け止められる場合があります” って」

文乃 「ああ……」 (余計なことを言うテレビ番組だなぁ……)

文乃 「じゃあこっちはどうかな。かわいい文房具とか……」

成幸 「文房具、この前一式新しいの買ってたんだよな……」

文乃 「ああ……」

983以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 22:45:49 ID:UawLMgbI
………………

文乃 「じゃあ、基本に立ち返ってカーネーションとかは?」

成幸 「“生花は手間がかかるため嫌がられることがあります” ってテレビで……」

………………

文乃 「じゃあ布とか買って手作りで何か作ったらどうかな」

成幸 「うーん、普段から服とか作りすぎて、そもそも俺の手作り品が結構家に溢れてるからな……」

………………

文乃 「お高めのスイーツとかどう?」

成幸 「水希が洋菓子店顔負けのケーキも作るって息巻いてるから、悪いし……」

………………

文乃 「商品券!」

成幸 「うちの母親のことだから、商品券とか現金くれるくらいなら何もくれるな貯金しろ、って言うと思う……」

………………

………………………………

………………………………………………

984以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 22:46:29 ID:UawLMgbI
………………

文乃 「………………」

成幸 「………………」

グッタリ……

成幸 「……なんかすまん。俺のワガママに付き合わせてるみたいだな」

文乃 「う、ううん。わたしが自分から言い出したことだから、大丈夫だよ……」

文乃 (……うーん、これは想像以上だよ。NG要素が多すぎる……)

文乃 (成幸くんが気にしすぎとも思うけど、でも……)

成幸 「うーん、母さんに何をプレゼントしたら、一番いいか……」 ブツブツ……

文乃 (成幸くんは本当に、心の底からお母さんに感謝してて、だからこそ喜んでもらいたいんだよね……)

成幸 「ちなみに、参考までに聞きたいんだけど、」

文乃 「うん?」

成幸 「……もし古橋がお母さんになったとして、母の日のプレゼントに何をもらったら嬉しいと思う?」

文乃 「えー……想像もつかないけど……」

985以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 22:47:20 ID:UawLMgbI
文乃 (わたしがお母さんで、もらって嬉しいプレゼント、かぁ……)

文乃 「………………」

文乃 「……あくまで、今の想像だけどさ、」

文乃 「わたしは、手作りのものをもらったら、すごく嬉しいと思うよ」

文乃 「だから成幸くんの服飾テクニックとか、すごくいいと思うんだけど……」

成幸 「……んー、母さんの部屋着とか、俺が作ったのも結構あるからなぁ」

文乃 「成幸くんの家はそうだよね……」

成幸 「悪いな、変なこと聞いて」

文乃 「ううん。参考にならなくてごめんね」

文乃 (なんかいいものないかなぁ……)

キョロキョロキョロ

文乃 「……ん?」 ハッ 「わっ……わわっ……」

トトトトト……

成幸 「? 古橋?」

986以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 22:48:04 ID:UawLMgbI
文乃 「こっ、このぬいぐるみ……かわいい……」

パァアアアアアア……!!!

文乃 「さ、触り心地も気持ちいい……」

文乃 「ふおお……」

成幸 「………………」

成幸 「あ、えっと……古橋、さん……?」

文乃 「……!?」 ハッ 「ご、ごめん、成幸くん。あんまりにも好みの顔のぬいぐるみがあったから、つい」

文乃 「真剣にプレゼント選びをしてるのに、ごめんね……」

成幸 「いや、いいよ。お前も買い物とかあったらしていいからな?」

文乃 「ううん。大丈夫。ありがと」

文乃 「さ、もうひと頑張り、いってみよー!」

成幸 「おう!」

987以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 22:48:38 ID:UawLMgbI
………………

成幸 「……ありがとな、古橋。おかげでちゃんと考えて選べたよ」

文乃 「どういたしまして。お母さん、喜んでくれるといいね」

成幸 「おう。本当にありがとな」

文乃 (結局、あれから、悩んで悩んで悩んだ末、無難にハンカチをプレゼントすることになった)

文乃 (たくさんあって困るものではないし、オシャレで上等なものが見つかったというのもある)

成幸 「散々悩んで振り回して悪かったな。その割にはハンカチって、何の意外性もないし……」

文乃 「ううん。そんなのいいんだよ」

文乃 「それにわたしも楽しかったよ。自分がプレゼント選んでるみたいで」

文乃 「わたしのお母さんはもういないから、ひとりじゃこんなことできないしね」

成幸 「ん……」

文乃 「あっ、ごめんね。変なこと言って。忘れて忘れて」

文乃 「とにかく、ちゃんと選べて何よりだよ」

成幸 「……おう」

988以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 22:49:42 ID:UawLMgbI
成幸 「あっ、ヤバい。もうこんな時間か」

成幸 「すまん、古橋。この後バイトの予定なんだ」

成幸 「散々振り回したお詫び、今度必ずするから。また連絡するな」

文乃 「そんなの気にしなくていいってば」

文乃 「バイトがんばってね。いってらっしゃい」

成幸 「ああ、ありがとう。でもお礼はさせてくれ」

成幸 「またな、古橋」

文乃 「うん。じゃあね、成幸くん」

ニコッ

文乃 「また今度」

文乃 「………………」

文乃 「……わたしも、」

文乃 「カーネーションでも一本、買って帰ろうかな」

989以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 22:50:22 ID:UawLMgbI
………………母の日

文乃 「………………」

文乃 (……成幸くん、ちゃんとプレゼント渡せたかな)

クスッ

文乃 (なんて、子どもじゃないんだから大丈夫に決まってるよね)

文乃 (ふふ。本当に “弟” みたいなところあるからなぁ、成幸くんって)

文乃 (いけないいけない。いつまでも姉弟ごっこなんてしていられないよね)

ピンポーン

文乃 「……? インターフォン、誰だろ……」

トトトトト……

文乃 「……へ?」

 『あ、どうも、こんにちは。唯我と申します……』

文乃 「成幸くん……?」

990以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 22:51:20 ID:UawLMgbI
………………

文乃 「ど、どうしたの、成幸くん。突然家に来るなんてびっくりしたよ」

成幸 「いや、悪い。連絡しようかとも思ったんだが……」

成幸 「……あのさ、これ」 スッ 「良かったら、もらってくれないか?」

文乃 「へ?」

キョトン

文乃 「ラッピング……? ぷ、プレゼント!? 何で!?」

成幸 「いや、えっと……この前のお礼、というか、なんというか……」

文乃 「……ああ、母の日のプレゼント選びのお礼?」

成幸 「まぁ、そうなるのかな……」

成幸 「ただ、それプラス、なんというか、その……」

文乃 「?」

成幸 「……お前にはいつも色んな相談に乗ってもらったりとか、お世話になってるし、」

成幸 「母の日のプレゼント的な意味合いも、あるんだけど……」

文乃 「へぇ?」 ジトーーーッ 「わたし、きみを産んだ憶えはないんだけど……」

991以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 22:51:54 ID:UawLMgbI
成幸 「い、いや、悪い。そういうことじゃなくて、えっと……」

ハッ

成幸 「ほ、ほら! 母の日、お父さんがお母さんにプレゼント贈ったりってあるだろ」

文乃 「……まぁ、たしかに。旦那さんが奥さんにプレゼント、とかよく聞くね」

成幸 「そうそう。だから、まったく変な意味はなくて、」


成幸 「夫から妻に贈る母の日ギフトみたいなものだと思ってくれ!」


文乃 「………………」

文乃 「へ……?」

成幸 「あっ……」

成幸 「……い、いや、それもまた、ちょっと、語弊があるな……///」

文乃 「そ、そうだね……///」

文乃 「……じ、じゃあ、とにかく、いただくね。ありがとう」

文乃 「開けても、いい?」

成幸 「お、おう」

992以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 22:52:27 ID:UawLMgbI
ガサゴソガサガサ……

文乃 「これって……」


―――― 『こっ、このぬいぐるみ……かわいい……』


文乃 「あ……あのときのぬいぐるみ……?」

文乃 「でも、あれ? なんか違うような……?」

成幸 「ん、さすがにバレるか」

成幸 「それ、俺が作ったんだ。あのぬいぐるみを思い出しながら作ったんだけど、やっぱり変か」

文乃 「……!? これ手作りなの!? 全然見えないよ!?」

成幸 「ぬいぐるみ用の生地とか買ってみたからな。縫い方とかも勉強したし」

成幸 「……本物を買おうかなとも思ったんだけどさ、」


―――― 『わたしは、手作りのものをもらったら、すごく嬉しいと思うよ』

―――― 『だから成幸くんの服飾テクニックとか、すごくいいと思うんだけど……』


成幸 「あのとき、ああ言ってくれたのがすごく嬉しくてさ……」




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