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【ぼく勉】成幸 「キスと呼べない何か」

1以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/07(水) 21:10:57 ID:nfKWg1KI
………………昼休み 一ノ瀬学園 3-B教室

大森 「なぁなぁ、一学期に唯我がキスしただの何だのって話あったじゃん?」

成幸 「………………」

成幸 (……こいつほんっっっとロクでもねーことしか言わないな!!)

成幸 「……そういえばそんなこともあったな。どうでも良すぎて忘れてたが」

大森 「結局噂もなくなっちゃって、俺としては不完全燃焼というかなんというか」

成幸 「っていうかお前が廊下で大声上げて走り回ったせいで噂になったんだけどな!?」

大森 「でもキスはしたんだろ?」

成幸 「………………」

プイッ

成幸 「……黙秘権を行使する」

小林 (それもう自白してるようなもんだけどね、成ちゃん)

657以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/21(木) 19:32:37 ID:ZDtxQMO6
やっぱり先輩がNo.1!!

658以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/21(木) 23:20:59 ID:.1QY/f6c
>>1です。投下します。


【ぼく勉】 紗和子 「あら、奇遇ね」

659以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/21(木) 23:21:38 ID:.1QY/f6c
………………放課後 一ノ瀬学園

理珠 「すみません、成幸さん。母が急用で店を開けなくてはならないそうなので、今日は帰ります」

文乃 「わたしも、荷物を受け取らなくちゃいけないから帰るね。ごめんね」

うるか 「あたしも、ママ……じゃなくて、お母さんからお遣いたのまれちってさ。ごめん」

成幸 「おお、そうなのか。じゃあまた明日だな」

文乃 「うん。ごめんね、成幸くん。また明日!」

うるか 「じゃーねー、成幸ー」

理珠 「さようなら、成幸さん。また明日」

トトトトトト……

成幸 「………………」

成幸 (んー、あの三人が帰ってしまったということは、俺ひとりか)

パァアアアアアア……!!!

成幸 (久々にひとりで伸び伸びと勉強できる!? やったー!)

660以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/21(木) 23:22:19 ID:.1QY/f6c
………………図書室

ザワザワザワ…………

成幸 「わぁ……」

成幸 (今日は混んでるなぁ。うーん、座れないことはないけど……)

成幸 (せっかくひとりなんだから、静かに勉強したいところだな)

成幸 (……ん、そういえば)


―――― 『あっ そういえば一箇所心当たりが!』


成幸 「………………」

成幸 (もし空いてそうだったら、あそこを借りてもいいかな?)

661以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/21(木) 23:23:03 ID:.1QY/f6c
………………生物室

成幸 「………………」

カリカリカリカリ……

成幸 (案の定、誰もいないから勉強にうってつけだ)

成幸 (家に帰ったら和樹と葉月がいるし、ここでがっつり勉強して帰るとしようかな)

標本 「………………」


―――― 『ねーねー知ってる? あのウワサ』

―――― 『放課後になるとね…… あそこの骨格標本がひとりでに生物室内を徘徊し始めるんだって……』


成幸 (……い、いやいやいや、大丈夫、大丈夫。あんなのはただの噂だ)


―――― 『あれ……変ね 電池が入ってないわ』


成幸 (あれは……うん、まぁ、説明はつかないけど……でも……――)

――――ガラッ

成幸 「ヒッ……!?」 ビクッ

662以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/21(木) 23:23:37 ID:.1QY/f6c
紗和子 「……? あら、唯我成幸じゃない。奇遇ね」

成幸 (な、なんだ。関城かよ……) ドキドキドキドキ……

紗和子 「どうかしたの? 床に座り込んだりして……」

成幸 「い、いや、何でもない。ちょっとこけちゃってさ……」

成幸 (言えない……驚いて椅子から転げ落ちたなんて……!)

紗和子 「まったく、そそっかしいわね。大丈夫?」 スッ

成幸 「あっ……」 ギュッ 「わ、悪い……」

紗和子 「図書室が混んでいたからここで勉強しようと思ってきたんだけど、あなたも同じ考えだったようね」

成幸 「ああ。ここは静かに勉強できるからな」

紗和子 「緒方理珠たちは?」

成幸 「今日は急な用事で帰ったよ。だからこそ余計に静かに勉強したかったんだけど……」

成幸 (この生物室が怖くて、逆に集中できてなかった……なんて言えないよな)

紗和子 「えっ……」 ガーン

紗和子 「あっ、じ、じゃあ、私もお邪魔よね? ごめんなさい。失礼するわ」

成幸 「!?」

663以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/21(木) 23:24:22 ID:.1QY/f6c
成幸 「ま、待ってくれ!」

ガシッ

紗和子 「ふぇっ……!?」

成幸 「い、行かないでくれ。お前が来てくれてすごく嬉しかったんだ。だから……」

成幸 (関城がいなくなったらまたこの生物室にひとりきりになってしまう!)

紗和子 「なっ……///」

紗和子 「う、嬉しかったって、あなたには緒方理珠が……」

成幸 「……? 緒方? 緒方は関係ないだろ」 (もう帰っちゃったし)

紗和子 「………………」

紗和子 「……そっ、そこまで言うなら、まぁ」

紗和子 「本当に私がいても邪魔じゃないのね?」

成幸 「邪魔なもんか。一緒に勉強しようぜ、関城」

紗和子 「……え、ええ」 カァアアアア……

標本 「………………」

664以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/21(木) 23:25:00 ID:.1QY/f6c
………………

紗和子 「………………」

成幸 「………………」

標本 「………………」

カリカリカリ……

成幸 (ひとりきりなら怖かったものも、ふたり以上になれば怖いも何もない)

成幸 (骨格標本だって、化学部の改造によって電動になっているらしいが、よくよく考えればただの模型だ)

成幸 (噂だって、電動になった骨格標本が動く様を目撃した生徒がいただけのことだろうし、)

成幸 (電池が入っていなくても動いたことに関してはまぁ、説明はつかないけど……)

成幸 (なんにせよ、関城がいてくれれば心強い。静かに勉強ができて何よりだ)

成幸 (……そして、さすがは化学部部長といったところだろうか)

成幸 「……ん? これって……」

紗和子 「……?」

成幸 「なぁ、関城。ここの結合ってこういう風に分解はできないのか?」

標本 「………………」

665以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/21(木) 23:25:50 ID:.1QY/f6c
紗和子 「? ……ああ、それだとイオン化ができないからそもそも分解されないわよ」

成幸 「? 教科書のイオン化の例と何が違うんだ?」

紗和子 「……ああ、それは高校レベルじゃやらないから分からないのも無理ないわね」

紗和子 「仕方ないわね。少し長くなるけど、説明する?」

成幸 「本当か? 助かるよ」

成幸 (関城は俺の分からないところを丁寧に説明してくれる)

成幸 (いつも教えている身としては、同級生に教わるのはなかなか新鮮だ)

成幸 (理系科目――特に化学に造詣が深い関城は、やや高度な疑問にもすぐに答えてくれる)

成幸 (本当に、関城が来てくれてよかった……)

ニコニコニコ

紗和子 「……? 何にやにやしてるのよ」

成幸 「へ? ああ、悪い」 クスッ 「表情に出てたか」

成幸 「いや、お前が来てくれて良かったなって思ってさ」

紗和子 「は……?///」

666以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/21(木) 23:26:20 ID:.1QY/f6c
紗和子 (なっ……なんなのかしら、さっきから……)


―――― 『「ま、待ってくれ!』

―――― 『い、行かないでくれ。お前が来てくれてすごく嬉しかったんだ……。だから……』

―――― 『いや、お前が来てくれて良かったなって思ってさ』


紗和子 (まったくもう、唯我成幸ってば。あなたには緒方理珠というステディがいるでしょうに……)

紗和子 (なんで、私が来たくらいでこんなに大喜びするのよ……)

紗和子 (そっ、それじゃまるでっ……)

カァアアアア……

紗和子 (あなたが私に気があるみたいじゃない……///)

成幸 「……?」

成幸 「関城、なんか顔赤いけど、大丈夫か?」

紗和子 「はっ……!? あ、赤くなってないけど!?」

成幸 「いや、めっちゃ赤いけど……」

標本 「………………」

667以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/21(木) 23:27:10 ID:.1QY/f6c
紗和子 「なってないって言ってるの! ほら、せっかくの勉強時間なんだから、勉強に集中するわよ!」

成幸 「……ああ、それもそうだな」


―――― うるか『成幸ー、勉強飽きちゃったよー。つかれたよー』

―――― 文乃 『………………』 Zzzz……

―――― 理珠 『全然分かりません。成幸さん、ここはどういうことですか?』


成幸 (あいつらもここ最近はここまでひどくはないけど……)

成幸 (……ああ、なんか、いつもとの落差がすごい)

成幸 (いつもだったら、こっちががんばれと励ます方なのに……)

成幸 (関城は俺のことを励ましてくれるんだな……)

成幸 「……あー、ほんと、お前が来てくれてよかったよ」 ホロリ

紗和子 「っ……/// ま、またヘンなこと言って……」

成幸 「? 変じゃないだろ?」

成幸 「なんだったら毎日お前と一緒に勉強したいくらいだぞ?」

紗和子 「あ……う……」 カァアアアア……

668以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/21(木) 23:27:44 ID:.1QY/f6c
紗和子 「………………」 プスプスプス……

成幸 「関城? なんか、顔が真っ赤になりつつあるぞ?」

紗和子 (あなたがヘンなこと言うからでしょーがー!)

紗和子 (まったく、この男は一体何を考えて……――)

――――ピタッ……

紗和子 「ふぇっ!?」 (手!? おでこ!? え!?)

成幸 「……んー、熱はなさそうだな」

紗和子 (あう……/// 唯我成幸の手、冷たくて、気持ちいい……)

ハッ

紗和子 (って私は何を考えてるの!? 唯我成幸は私の大親友、緒方理珠の想い人!)

紗和子 (そんな相手に、私は、何を……)

成幸 「本当に大丈夫か?」

紗和子 「……あっ、だ、大丈夫。大丈夫だから!」 プイッ

標本 「………………」

669以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/21(木) 23:33:29 ID:.1QY/f6c
成幸 「あっ……」

ハッ

成幸 「わ、悪い。急におでこに手を当てたりして……」

紗和子 「それは、まぁ……いいけど」

紗和子 「や、やっぱり私、ちょっと体調悪いみたいだわ」

紗和子 「今日はこれで帰るわね。あとはひとりで集中して勉強したらいいわ」

紗和子 (これ以上ここにいたらヘンになりそうだし……)

紗和子 「それじゃ、またね。唯我成幸――」

成幸 「――あっ、待ってくれ! 俺も一緒に帰るよ!」

紗和子 「ふぇっ!?」 アセアセ 「そ、そんな、いいわよ。あなたはここで勉強していったら……」

成幸 (ここでひとりになったらまた怖くてきっと集中できない! だったら家に帰った方がマシだ!)

成幸 (けど、それを関城に悟られるのはさすがに恥ずかしいし……)

成幸 「た……体調の悪そうなお前をひとりで帰すわけにはいかないだろ。送ってくよ」

紗和子 「えっ……」

標本 「………………」

670以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/21(木) 23:34:01 ID:.1QY/f6c
紗和子 「あっ……えっと、その……」 カァアアアア……

成幸 (さすがに苦しいか……?)

紗和子 「じ、じゃあ……お願いするわ……///」

成幸 「……?」

成幸 (なんでまた顔を赤くしてるんだ……?)

成幸 「ん、じゃあ行くか」

紗和子 「え、ええ……」

紗和子 (ち、違うから! 違うのよ、緒方理珠! これは、友達だから送っていってくれているだけで……)

紗和子 (決して、“そういうの” じゃないんだから!)

………………

標本 「………………」

ギギギギ……

標本 「………………」

ギシッ……ギシッ……

671以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/21(木) 23:34:34 ID:.1QY/f6c
………………帰路

紗和子 「………………」

ドキドキドキドキ……

紗和子 (ど、どうしたらいいのかしら。胸がすごいことになってるわ……)

チラッ

成幸 「……ふむふむ」

紗和子 (歩きながらも勉強……。本当にガリ勉ね)

紗和子 (でも、そんな横顔が……) カァアアアア…… (なぜか、いつもより精悍に見えるわ……)

成幸 「ん……? どうかしたか、関城?」

紗和子 「えっ? いえ、何もないわ……」

成幸 「……?」

紗和子 (……ああ、どうしたらいいのかしら。今、横にいる男の子は、大親友の想い人だというのに……)

紗和子 (なんでこんなに、ドキドキするの……)

………………

標本 「………………」 コソッ

672以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/21(木) 23:42:25 ID:.1QY/f6c
成幸 「おい、本当に顔真っ赤だぞ? 大丈夫か?」

紗和子 「………………」

紗和子 「……ダメ、かも」 ボソッ

成幸 「!? やっぱり体調が悪いのか。もっと早く言えよ」

紗和子 「ご、ごめんなさい……」

紗和子 (体調ではなく精神的なものなのだけど……でも、そんなこと言えないし……)

成幸 「荷物持つよ。教科書とか入ってて重いだろ」 スッ

紗和子 「あっ……」

成幸 「歩けるか? おんぶするか?」

紗和子 「さ、さすがにそこまでは大丈夫よ。歩けるわ」

成幸 (でも辛そうだな……ん?)

成幸 「公園があるな。ちょっと休んでくか? それとも早く帰った方が楽か?」

紗和子 「公園……?」

673以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/21(木) 23:43:14 ID:.1QY/f6c
紗和子 (公園といえば……)


―――― 『は 初デートはどこがいいかしら!?』

―――― 『なるべく金のかからない所が…… 公園とか』


紗和子 「っ……」

紗和子 「あっ……えっと……」

成幸 「ん?」

紗和子 「………………」

紗和子 「……ちょっと、寄っていくわ」

成幸 「ん、分かった。ベンチがあるから、そこで少し休もうか」 ニコッ

紗和子 (わ、私……)

紗和子 (自分で、公園に寄ることを選んで……これじゃ、まるで……)

紗和子 (唯我成幸と、公園デートしたがってるみたいじゃない……///)

………………

標本 「………………」 ジーーーーッ

674以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/21(木) 23:43:45 ID:.1QY/f6c
………………公園

成幸 「ほい、関城。自販機でコーヒーと紅茶買ってきたけど、どっちがいい?」

紗和子 「ん……じゃあ、コーヒーをいただくわ。ありがとう」

成幸 「どういたしまして」

紗和子 「………………」 ズズズ……

紗和子 (……ひょっとして、こうしてベンチの隣に座っていると)

紗和子 (傍から見たら、私たちは、恋人同士に見えたりするのかしら……)

紗和子 (なんて……)

紗和子 「………………」

紗和子 (……違う)

紗和子 (違う)

紗和子 (絶対に違う……!)

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

675以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/21(木) 23:44:18 ID:.1QY/f6c
紗和子 (こんなの、何かがおかしいわ)

紗和子 (今まで、私は、大親友のために色々とがんばってきた……)


―――― 『あら! そこにいるのは唯我成幸じゃない! 偶然ね!』

―――― 『ちょうどよかったわ 唯我成幸 緒方理珠の新しいペンケースを一緒に選んでやってくれないかしら』

―――― ((やはり…… せっかく好きな人と2人きりで出かけられるチャンスを 大親友の私が奪うわけにはいかないわよね))

―――― 『じゃッ!! 私はトイレに行ってくるから! 2人ともグッドラック!!!』


紗和子 (そんなこの私が……!)

紗和子 (この、化学部部長、関城紗和子が!!)

紗和子 (大親友にして大恩人、緒方理珠を裏切るようなことをするはずがない……!!!)

成幸 「関城? すごい顔してるけど、大丈夫か……?」

紗和子 (この男を、唐突に奪い取るようなマネをするはずがない!!)

676以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/21(木) 23:44:55 ID:.1QY/f6c
………………

標本 「………………」 ギシッ……

標本 「………………」 ギシギシギシッ……

標本 「………………」

ガシャッ……ガシャッ……ガシャッ……――――


    「――そこまでっスよ」


標本 「……!?」

蝶野 「美少女霊媒戦士、マジカルチョーノとミラクルイノポンが相手になるっスよ」

猪森 「いや、君は何もしないだろう、蝶野。というか、勝手に変な名前をつけないでくれ」

猪森 「……またあの骨格標本に変な霊が取り憑いたか。まったく、度し難いな」

蝶野 「どうも唯我成幸さん周りのラブコメの波動に引き寄せられてるみたいっスね」

蝶野 「前回同様、ラブコメ好きの霊が取り憑いてるみたいっスよ」

猪森 「……一体何なんだ、ラブコメの波動とか、ラブコメ好きの霊って」

蝶野 「ツッコんだら負けっスよ、いのぽん」

677以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/21(木) 23:45:33 ID:.1QY/f6c
………………

紗和子 「……唯我成幸」

成幸 「ん?」

紗和子 「私とあなたは、友達?」

成幸 「……? いきなりなんだよ」

紗和子 「答えて。お願い」

成幸 「……ん、まぁ、そりゃ……友達だろ?」

紗和子 「……うん」 クスッ 「嬉しいわ」

成幸 「? なんだそりゃ」

紗和子 (……うん。だって、そうよ)

紗和子 (それだけで十分だもの)

スゥ……

紗和子 (好きになんて、ならない。そもそも、好きになる要素なんて、ない)

紗和子 (だから私は、これでいい……)

678以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/21(木) 23:46:23 ID:.1QY/f6c
………………

標本 「……!?」

猪森 「どうやら、今回は関城さんと唯我くんのふたりに変な念をおくっていたようだが、」

猪森 「残念だったね。関城さんは、自分の精神力ひとつでお前のラブコメ念波を打ち破ったようだ」

猪森 「なんにせよ、人に迷惑をかけてはいけない。悪いけど、除霊させてもらうよ」

標本 「………………」 フルフル

猪森 「ん? なになに? ラブコメ念波なんて送ってない……?」

猪森 「“ちょっと素直になっちゃうビーム” を関城さんに撃ってただけ……?」

猪森 「………………」

猪森 「ていっ」 ぺしっ

オギャアアアアアアア………………

蝶野 (さすがはいのぽん。無視してそのままおフダをたたき込んだっス)

679以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/21(木) 23:47:06 ID:.1QY/f6c
猪森 「ふぅ。除霊完了だな」

蝶野 「お疲れさまっス、いのぽん」

猪森 「ああ。蝶野も、付き合ってくれてありがとう」

蝶野 「……それにしても、関城さんもよくよく取り憑かれやすい人っスね」

猪森 「そういう体質なんだろう。まぁ、近くに私みたいな人間がいてよかったよ」

蝶野 「……そう言って、ミラクルイノポンは笑う」

蝶野 「人知れず、今日も美少女霊媒戦士の戦いは続くのである」

猪森 「一体何のナレーションなんだ……?」

猪森 (それにしても、“ちょっと素直になっちゃうビーム”か……)

猪森 (不謹慎な話ではあるが、)

クスッ

猪森 (うちのお姫様にも、撃ってくれればいいのにな)

680以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/21(木) 23:47:39 ID:.1QY/f6c
………………翌日

成幸 「あっ……」  紗和子 「あっ」 バッタリ

紗和子 「……お、おはよう、唯我成幸」

成幸 「ああ、おはよう。体調は大丈夫か?」

紗和子 「おかげさまでよくなったわ。昨日は手間をかけさせたわね」

紗和子 (……不思議だわ。昨日はあんなに騒がしかった心臓が、今はすっかり鳴りを潜めている)

紗和子 (まるで、昨日は何かの呪いでも受けていたんじゃないかというくらい不自然だったわ)

成幸 「なぁ、関城。また化学で教えてほしいことがあるんだけどさ、」

成幸 「また今度、ふたりで勉強とかできないかな?」

紗和子 「? 何でふたりなの? 緒方理珠たちも誘えばいいじゃない」

成幸 「いや、まぁ、そうなんだけどさ……」 コソッ 「お前とふたりの方が、勉強に集中できるからさ……」

紗和子 「っ……し、仕方ないわね……」

681以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/21(木) 23:48:21 ID:.1QY/f6c
紗和子 (ない。絶対ない)

カァアアアア……

紗和子 (昨日考えたとおり、絶対、ない)

紗和子 (この男を好きになったりなんて、そんなこと、絶対ない)

紗和子 (……ない、のに)


―――― 『お前とふたりの方が、勉強に集中できるからさ……』


紗和子 (何で、“嬉しい” なんて思ってるのよ、私……!!)

紗和子 (違うから! 絶対違うからね、緒方理珠!)

紗和子 (あなたの好きな人を奪い取ったりなんて、絶対しないから!)

おわり

682以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/21(木) 23:49:20 ID:.1QY/f6c
………………幕間 「肩こり」

猪森 「前回の霊は緒方さんと唯我くんのラブコメを見るために寄ってきて、」

猪森 「今回の霊は関城さんと唯我くんのラブコメを見るために寄ってきた……」

蝶野 「我々 『いばらの会』 としては、ぜひとも霊に古橋姫に取り憑いてもらいたいものっスね」

猪森 「滅多なことを言うなよ、蝶野。霊になんて憑かれないに越したことはないんだから」

猪森 「それに、古橋姫は多分霊に取り憑かれることはないよ」

猪森 「霊に取り憑かれると肩こりがするようになるんだ。そして、オカルトにおいて、因果と結果は相関関係にある」

猪森 「つまり、逆説的に言えば、“肩こりになりやすい人は霊に取り憑かれやすい”」

蝶野 「あっ……つまり……」

猪森 「ああ。肩がふにゃふにゃなくらい柔らかく健康的な古橋姫は、霊に取り憑かれにくい」

蝶野 「まさか胸のアドバンテージがこんなところでも表れるとは……はっ!?」

文乃 「………………」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

猪森 「ふ、古橋さん!? いつからそこに……?」

文乃 「……なんかしらないけどすごく失礼なことを言われた気がしたから、ふたりともとりあえずつねるね?」

おわり

683以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/21(木) 23:53:35 ID:.1QY/f6c
>>1です。読んでくださった方ありがとうございました。


問70の霊は、ひょっとしたら理珠さんと成幸くんのイチャラブを見た方のでは?
なんてことを考えていたら書けてしまった話ですが、色々と雑かもしれません。申し訳ないことです。



今さらな話ですが、本紙派の人はコミックス幕間を読めていないわけで、
わたしが今まで書いてきた話で何のこっちゃ分からない話があったかと思います。
申し訳ないことです。
これを機にコミックスも買っていただけたら嬉しいなと思います。

また投下します。

684以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/22(金) 00:07:53 ID:YXHdKQ4Y


685以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/22(金) 01:31:13 ID:7QnFaMJg
おつおつ

686以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/22(金) 12:36:46 ID:6cyf.K5I
かわいい

687以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/22(金) 15:32:26 ID:ORWQ2hEA
すまん、先輩くっそかわいい

688以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/22(金) 23:19:53 ID:W6HYjLRA
更新頻度多くて嬉しいですわ

689以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/23(土) 00:01:35 ID:seYST57A
>>1です。投下します。


【ぼく勉】 真冬 「自習監督の桐須です」 理珠 「…………」

690以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/23(土) 00:02:44 ID:seYST57A
………………3-D教室 共通科目授業

真冬 「と、いうことで、体調不良の先生に代わって自習の監督を私が務めます」

ドーーーン

真冬 「好きな教科の好きな勉強をして構わないと言われています」

真冬 「各自、自習だからといって手を抜かず、受験に向けてがんばりなさい。以上よ」

男子1 (よ、よりによって “氷の女王” 桐須先生かよ……)

女子1 (眠るどころかまどろむことも許されない雰囲気……)

男子2 (最悪だ……)

理珠 「………………」

理珠 (よりによって桐須先生ですか……)

理珠 (まぁ、自習監督なら関係ないですね。私は私の勉強をするだけです)

理珠 (それにしても……)

シーーーーーン

理珠 (……水を打ったような静けさ、とはまさにこのことではないでしょうか)

真冬 「………………」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

691以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/23(土) 00:03:26 ID:seYST57A
理珠 (桐須先生が教卓についているだけで、すごい効果です。これは集中できそうですね)

理珠 (ちょうどいいタイミングです。今日成幸さんに教えてもらう予定だった範囲を先に仕上げて……)

理珠 (成幸さんを驚かせてあげましょう!)

理珠 「………………」 ガリガリガリガリ……

理珠 (ふふ……) フンスフンス (成幸さん、きっと喜んでくれますね!)

真冬 (……ふむ。緒方さんが開いている参考書は現国かしら。熱心に勉強しているようね)

真冬 (まったく。唯我くんが希望を与えるから、ああやってがんばってしまうのよ)


―――― 『でも俺は…… 「できない」 ことに本気で立ち向かっている奴らを』

―――― 『「できないからやめろ」 なんて見捨てるくらいなら 胸張って一緒に後悔する道を選びます』

―――― 『先生が 「才能」 の味方なら 俺は 「できない」 奴の味方ですから』


真冬 (……まぁ、あそこまでの信念を持っているのなら私はもう何も言うべきではない)

真冬 (……否。そもそも、私には何も言う権利もないというべきね)

真冬 (私は、緒方さんと古橋さんの教育係を放棄したも同然の身なのだから……)

692以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/23(土) 00:04:01 ID:seYST57A
………………

真冬 「………………」

真冬 (……暇。自習監督をやるのはいいのだけれど、まったくもって暇だわ)

真冬 (仕事を持ってくるのも自習監督として適切とは思えないし、かといってボーッとしているのも無為だわ)

男子1 「……んー、ここってどうやって解くんだっけな……」

真冬 「……あら、わからないところでもあるのかしら?」

男子1 「あっ……き、桐須先生」 ビクッ 「そんな……大したことじゃ……」

真冬 「せっかくの自習時間だわ。分からないところは、自習監督に聞くのも手だと思うけれど」

男子1 「いや、でも、これ数学ですよ? 先生は世界史の先生じゃ……」

真冬 「当然。たとえどんな教科の内容であれ、高校レベルの問題が解けないはずないでしょう」

真冬 「……なるほど。連立合同式の証明ね。これは一工夫必要だけど、それさえ分かれば帰納法で証明できるわね」

真冬 「互いに素である条件に合致する場合、この連立合同式がどうなるのかを考えてみたらどうかしら」

真冬 「そうすれば、証明の道筋が立てられるはずよ」

男子1 「……あっ、なんかわかりそうな気がします! ちょっと考えてみます!」

真冬 「ええ。がんばって」

693以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/23(土) 00:04:34 ID:seYST57A
女子2 (す、すごい……)

女子1 (さすが氷の女王! 数学まで完ぺきなんて……!)

男子2 (お、俺も教わっちゃおうかな……)

男子2 「すみません、桐須先生! 俺も教えてもらいたいところが……」

女子1 「あ! その次あたし、お願いします!」

女子2 「その後で私に教えてください!」

真冬 「わかったわ。順番に回っていくから待っていなさい」

理珠 「………………」 (……まぁ、さすがといったところでしょうか)

理珠 (私には関係のないことです。私は私の勉強に集中するだけです)

理珠 (さっさとこの評論問題を解いてしまいましょう。ん……?)

 『〜近畿の一部地域では、翻車魚を御御御付けの具材として用いることがある。また〜』

理珠 「なっ……」

理珠 (なんですかこの漢字は……!?)

理珠 (ほんしゃぎょ……? みみみづけ……? これは一体……)

694以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/23(土) 00:05:34 ID:seYST57A
理珠 (漢字から推察するに、おそらく “ほんしゃぎょ” は魚の種類でしょう)

理珠 (そして、“みみみづけ” はなんらかの料理と考えられます)

理珠 (そこだけわかれば、別段この漢字の読み方が分からなくても、問題を解くことはでき――)


 『傍線部の漢字を答えなさい』

 『翻車魚           』

 『御御御付け         』


理珠 (――ないじゃないですかこれではーーー!!)

ガクッ

理珠 (……今は自習時間とはいえ授業中。しかも相手は桐須先生です)

理珠 (スマホを出したら怒られるでしょうし、この問題はもう諦めるしかないですね……)

理珠 「うぅ……」

695以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/23(土) 00:06:16 ID:seYST57A
………………

真冬 「――……と、いったところね。これでわかったかしら?」

女子2 「はい! ありがとうございます! よくわかりました!」

真冬 (ふぅ。まぁ、教卓で暇しているよりははるかにマシね)

真冬 (私に教えられる程度の内容で助かったわ)

真冬 「ん……?」

理珠 「うぅ……」

真冬 (緒方さん? さっきまでまじめに勉強していたのに、肩を落としているわね)

真冬 (ひょっとして何か分からない問題でもあったのかしら)

真冬 「………………」


―――― 『そんなことで本当に文系受験するつもり?』

―――― 『言われるまでもありません!』


真冬 (……どうせ私が行ったところで、彼女を不快にさせてしまうだけだわ)

真冬 (私は彼女の望む進路を否定して、教育係を投げ出した、いわば敵のようなものなのだから)

696以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/23(土) 00:06:58 ID:seYST57A
理珠 「………………」 ズーン

理珠 (情けないです……)

理珠 (漢字のひとつやふたつだけで、問題が進まなくなってしまうことが、本当に……)

理珠 (私は本当に文系受験なんてできるのでしょうか。勉強は進んでいるのでしょうか)

理珠 (一歩進んで、二歩下がっているような気がします……)

ズズズーン

真冬 「………………」

真冬 (……承前。然りとて、あれを放っておくこともできないかしらね)

真冬 「……緒方さん?」

理珠 「……!?」

理珠 (桐須先生……?)

理珠 「……何かご用ですか?」

真冬 「いえ、用というほどのものではないのだけれど、」

真冬 「もし勉強で困っているのなら、力になるわよ?」

理珠 「へ……?」

697以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/23(土) 00:07:38 ID:seYST57A
理珠 「あ……えっと……」

理珠 「この漢字の読み方が分からなくて……」

ハッ

理珠 (や、やってしまいました! 漢字程度で困っていることを知ったら、この先生のことです……!)


―――― 真冬 『あらあら、文系受験を目指されている緒方さん? こんな漢字も分からないの?』

―――― 真冬 『失笑。冗談も大概にした方がいいと思うわよ?』


理珠 (きっとこんな風に、こちらの心を抉りにくるに決まって……――)


真冬 「―――― “マンボウ” と “おみおつけ” よ」


理珠 「えっ……?」

真冬 「だから、“マンボウ” と “おみおつけ” よ。おみおつけはお味噌汁のことね」

698以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/23(土) 00:08:15 ID:seYST57A
理珠 「あっ……」 (メモをしておかなければ……) カリカリカリ……

真冬 「まぁ、これは初見ならば読めなくても仕方ないわね。雑学程度に覚えておくといいと思うわ」

真冬 「それにしても、この漢字の読みを答えさせるって、かなりいやらしい問題ね」

真冬 「……他に分からないことはある?」

理珠 「い、いえ、今のところはないです」

真冬 「そう。今後何か分からないことがあれば、気軽に言いなさい」

理珠 「は……はい。ありがとうございます」

理珠 (……なぜ、そんなことを言ってくれるのでしょうか)

理珠 (だって、桐須先生、あなたは……)


―――― 『笑止千万 あきらめなさい』


理珠 (そういう人だった、はずなのに……)

699以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/23(土) 00:09:02 ID:seYST57A
カサカサカサ……

女子1 「……?」 ハッ 「ご、ごきぶり!?」

真冬 「……!?」

女子2 「きゃー! ほんとにゴキブリいる!」

男子1 「うお、びっくりした!」

ザワザワザワ……

真冬 「し、静かに! 騒ぐようなことではないわ!」

真冬 (ど、どうしたらいいかしら。って、私がなんとかするしかないわよね……)

真冬 (私が、どうにか……)

カサカサカサカサカサカサ……

真冬 「ヒッ……」 (で、できるわけないわ!!)

女子1 「ちょっと男子! 誰かなんとかしてよ!」

男子1 「あー、俺無理だわ。虫とか苦手なんだよ」

男子2 「俺も。生き物コロすのはちょっと……」

女子2 「あーん、もう! ヘタレー!」

700以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/23(土) 00:09:37 ID:seYST57A
真冬 「………………」

キッ

真冬 (ここは、学校! 私は、教員! 情けないことを言っている場合ではないわね)

真冬 (いらないプリント類をまとめて丸めて……)

真冬 (これで、叩くだけ。それだけで終わるのよ、真冬)

真冬 「みっ……みんな、大丈夫よ。虫一匹くらい、私が退治するから」

理珠 (あれ、桐須先生、たしか……)


―――― 『少し……意外でした 先生……虫が苦手だったんですね』


理珠 (虫が苦手なはずですよね……?)

真冬 「大丈夫。大丈夫、だから……」 ガタガタブルブル

理珠 (……やっぱり。やせ我慢してるじゃないですか)

701以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/23(土) 00:10:20 ID:seYST57A
理珠 「………………」


―――― 『まぁ、これは初見ならば読めなくても仕方ないわね。雑学程度に覚えておくといいと思うわ』

―――― 『そう。今後何か分からないことがあれば、気軽に言いなさい』


理珠 (……仕方、ありませんね) クスッ

真冬 「………………」

カサカサカサカサカサカサ……

真冬 「ひっ……」 (怖い怖い怖い……でも、生徒の前で醜態を晒すわけには……――)

――――パシッ

真冬 「へ……?」

理珠 「すみません、先生。この丸めたプリント借ります」

理珠 「太郎さん一名ご来店です!」

バシッッッ!!!

理珠 「……ゴキブリ一匹程度、桐須先生の手を煩わせるまでもありません」

女子1&2 ((緒方さんカッコイイ……!!!))

702以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/23(土) 00:11:19 ID:seYST57A
理珠 「どなたか、ホウキとちりとりを持ってきてください」

男子1 「あ……じゃあ俺、持ってくるよ」

男子2 「あ、俺も行くよ」

真冬 「あ……では、私は職員室から消毒用のスプレーと拭くものを持ってくるわね」

理珠 「お願いします」

真冬 「………………」

トトトトト……

真冬 (……私のことなんて、好きではないでしょうに)



―――― 『すみません、先生。この丸めたプリント借ります』

―――― 『……ゴキブリ一匹程度、桐須先生の手を煩わせるまでもありません』


真冬 (まるで、私のことを庇うように、ゴキブリを退治して……)

真冬 (あまつさえ、私が虫が苦手だということを、周囲に悟られないように気遣っているようですらあった……)

703以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/23(土) 00:11:55 ID:seYST57A
真冬 (なぜ、そんなことをしてくれたの、緒方さん……)

真冬 (あなたは、私のことなんて、好きではないはずなのに)


―――― 『尋問のようなマネはすぐやめてください!』

―――― 『言われるまでもありません!』


真冬 (……それに、彼女にとっては、恐らく苦痛に感じるようなこともたくさん言ったわ)


―――― 『どうしたって人には 向き不向きはあるものよ 緒方さん』

―――― 『そんなことで本当に文系受験するつもり?』

―――― 『笑止千万 あきらめなさい』


真冬 (後悔はしていない。今だって、緒方さんには、できれば理系受験をしてもらいたいもの)

真冬 (でも……)

真冬 (……目標に向かって一生懸命がんばっている彼女に、また同じ事が言えるの?)

真冬 (私は……)

704以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/23(土) 00:12:27 ID:seYST57A
………………放課後

理珠 「ふふふ、どうですか? 成幸さん!」

成幸 「おー、まさかこの範囲を、ひとりで放課後までに終わらせてくるとはな」

成幸 「すごいぞ、緒方。えらいえらい」

ナデナデナデ

理珠 「はうっ……///」

理珠 「こっ、子ども扱いしないでください!」

成幸 「ああ、ごめんごめん。嬉しくってさ」

成幸 「難しい漢字やいやらしい問題も多かったのに、よく解けてるじゃないか。すごいぞ」

理珠 「ま、まぁ、私が本気を出せば、こんなものでしょうか」

クスッ

理珠 「……でも、本当は一箇所、桐須先生に教えてもらったところがあるのですが」

成幸 「えっ!? 桐須先生に!?」

理珠 「? そんなに驚くようなことですか?」

705以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/23(土) 00:13:01 ID:seYST57A
成幸 「いや、驚くことだろ……桐須先生も、一体どういう風の吹き回しだよ」

成幸 「そんなキャラじゃないだろうに……――」


真冬 「――――失礼。それは言いすぎではないかしら、唯我くん」


成幸 「のわっ……!?」

真冬 「………………」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

成幸 (き、急に出てきた……心臓が飛び出るかと思った……)

真冬 「緒方さん、まだ学校にいてくれてよかったわ。話があるの」

理珠 「私に話ですか……?」

成幸 「あっ……俺、席外した方がいいですか?」

真冬 「……いえ、唯我くんなら、いてもらって構わないわ」

真冬 「……緒方さん」

理珠 「? はい」

真冬 「……その……今日は、ありがとう」

理珠 「……?」

706以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/23(土) 00:13:35 ID:seYST57A
理珠 「お礼を言われるようなことは何もないと思うのですが……」

真冬 「自習の時間、ゴキ――虫が出たとき、私の代わりに虫を退治してくれたでしょう?」

理珠 「ああ……」

成幸 (そんなことがあったのか……。虫嫌いの桐須先生からしたら地獄だろうな……)

真冬 「そのお礼よ。本当に助かったから……」

理珠 「なんだ、そんなことですか」

理珠 「先生が虫が苦手というのは知っていますから、当然のことをしたまでです」

理珠 「お礼を言われるようなことではないと思います」

真冬 「……いえ、私は教師だわ。ならば、生徒に頼るようなことはしてはいけないはずよ」

真冬 「また、情けない姿を見せてしまったわね。でも、あなたのおかげで、他の生徒に醜態を晒さなくて済んだわ」

真冬 「……だから、ありがとう」

理珠 (情けない姿……?)

707以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/23(土) 00:14:08 ID:seYST57A
理珠 「………………」


―――― 『みっ……みんな、大丈夫よ。虫一匹くらい、私が退治するから』


理珠 「……情けなくなんて、ないと思いますよ?」

真冬 「え……?」

理珠 「だって先生は、私たちのために、苦手な虫をなんとかしようとがんばっていたんですよね?」

理珠 「それを情けないなんて思う人の方が情けないと思います」

真冬 「緒方さん……?」

理珠 「私は、苦手だと分かっていても、果敢に立ち向かった先生を、すごいと思いますよ?」

真冬 「っ……///」

真冬 「せ……生徒が教員を褒めるようなことを言うものではないわ」

理珠 「む……」 プクゥ (せっかく本心を言ってあげているのに、嫌味な人ですね!)

真冬 「………………」 プイッ 「でも……」

真冬 「……嬉しいわ。ありがとう」

708以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/23(土) 00:21:25 ID:seYST57A
真冬 (私は……)


―――― 『昔ね…… そんな限られた大切な時間を 一時の感情で無意味な道に費やして 二度と戻れなくなった女がいたの』

―――― 『馬鹿な女よね』

―――― 『故に結論 教育者は生徒の感情の如何に依らず 才ある道に導くことに徹するべきなのよ』


真冬 (それを間違いだとは思わない。それが正しいと信じている。けど……)


―――― 『先生が 「才能」 の味方なら 俺は 「できない」 奴の味方ですから』

―――― 『私は、苦手だと分かっていても、果敢に立ち向かった先生を、すごいと思いますよ?』


真冬 (……ああ、そうね。私はもう、きっと、)


―――― 『「できない」 自分を認め 向き合えること』

―――― 『……それが 君の長所でしょう?』


真冬 (「できない」 人の 「苦手」 を、応援したいと、思ってしまっているのね……)

709以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/23(土) 00:22:06 ID:seYST57A
真冬 「……緒方さん」

理珠 「?」

真冬 (立場上、私は決して、この子の進路を応援することはできない。それは、私の信念を揺るがすことになるから。だから……)

真冬 「……正直、私はあなたに今からでも進路選択を変更してほしいと思ってはいるけれど、」

真冬 「でも、その道しかないというのなら、がんばりなさい。応援はできないけれど、ね」

理珠 「へ……?」

真冬 「では、ふたりとも、さようなら。日が落ちるのも早くなってきたわ。勉強もほどほどにして、早めに帰りなさいね」

成幸 「あ、はい。さようなら、桐須先生」

真冬 (願わくは、あなたの進路に、幸多からんことを)

真冬 (私のように、後悔だらけの人生を、歩まないで済みますように)

710以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/23(土) 00:22:50 ID:seYST57A
………………

理珠 「一体全体、桐須先生は何が言いたかったのでしょうか?」

理珠 「わけが分かりません。応援していないと言いながら、がんばりなさいとも言う……」

理珠 「私には、本当にわけが分かりません……」

成幸 「……まぁ、仕方ないよ。あの人も色々と面倒くさい人だからさ」

成幸 「ま、せっかくがんばりなさいのお言葉もいただいたわけだし、さっさと図書室行って勉強始めようぜ」

成幸 「今日の分がもう終わってるってことは、明日の分に取りかかれるってことだからな」

理珠 「はい。そうですね」 フンス 「放課後もがんばります!」

成幸 「おお、気合い入ってるな。俺もがんばらないとな」

理珠 「………………」

理珠 「がんばりなさい、ですか……」

理珠 「言われなくたって、」

クスッ

理珠 「もちろん、がんばりますよ、桐須先生」

おわり

711以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/23(土) 00:23:34 ID:seYST57A
………………幕間1 「眠り姫」

真冬 「自習監督の桐須です。各自、受験に向けて自由に自習をしてください」

文乃 (わーい、自習だー! バリバリ勉強して、成幸くんを驚かせるぞー!)

………………十分後

文乃 (バリ……バリ……やって……おど、ろ……むにゃ……)

文乃 (あっ……ダメ、昨日夜遅くまで勉強したから、緊張感ないと、眠気に勝てな……むにゃむにゃ……)

文乃 「………………」

Zzzz……

真冬 「………………」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

真冬 「……本当にいい度胸ね、古橋さん?」

712以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/23(土) 00:24:34 ID:seYST57A
………………幕間2 「それは」

文乃 「……ってことで、桐須先生に昼休みにめっちゃ怒られたよ」 ズーン

文乃 「やっぱりわたし、桐須先生に嫌われてるのかなぁ……」

成幸 「ああ……」

うるか 「うん……」

理珠 「まぁ……」

成幸&うるか&理珠 「「「それは単純に古橋(文乃)(文乃っち)が悪い(です)よ」」」

文乃 「わーん! そんなの分かってるよー!」

文乃 「だからってそんな3人で追い打ちかけなくたっていいでしょー!」

おわり

713以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/23(土) 00:27:04 ID:seYST57A
>>1です。読んでくださった方ありがとうございました。

数えてみたらこれで49個目でした。
次で50個になります。


感想、本当に励みになります。ありがとうございます。嬉しいです。
ないとは思いますが、書いてほしい題材やキャラ、設定等ありましたらレスいただければ考えます。
もしあれば、レスしていただければ嬉しいです。


また投下します。

714以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/23(土) 00:46:39 ID:Ii.dLlQ6
おつんこっこ
キスをしないと出れない部屋の他の人バージョンとか
>>1の書きやすい人がいれば

715以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/23(土) 01:48:22 ID:Gc9tOhZM
更新速くて嬉しい。おつです!

酔ってないデレた桐須先生が読みたいです。

716以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/26(火) 11:19:20 ID:AlEcOYuU
おつおつ

717以下、名無しが深夜にお送りします:2019/03/02(土) 22:56:58 ID:BODDsAFI
>>1です。投下します。
>>714さんのお題です。
先に言っておきますが、また夢オチです。

【ぼく勉】 成幸 「キスしないと出られない部屋?」

718以下、名無しが深夜にお送りします:2019/03/02(土) 22:57:56 ID:BODDsAFI
………………

成幸 「なんてことだ」

成幸 「キスしないと出られない部屋に閉じ込められてしまったぞ……」

理珠 「キス……」

理珠 「………………」


―――― 『私は別にッ』

―――― 『緒方危な……ッ』


理珠 「はうっ……」 ボフッ

成幸 (まぁ……やっぱりそうなるよな。俺も恥ずかしいし……)

成幸 (っていうか、それ以前に、だ

文乃 「キス……///」  うるか 「き、キスかぁ……///」

真冬 「バカらしいわね。まったく……」  あすみ 「その割には顔赤いですよー? まふゆセンセ?」

成幸 (普通こういう部屋ってふたりで閉じ込められるものじゃないのか!?)

成幸 (何で俺含めて六人も放り込まれてるんだ!?)

719以下、名無しが深夜にお送りします:2019/03/02(土) 22:58:36 ID:BODDsAFI
………………

真冬 「まず状況を整理しましょう。現状、我々は6人はこの部屋に閉じ込められている」

真冬 「電気水道ガスなどのライフラインは正常。食料も当面は心配なさそうね」

真冬 「この部屋から出る唯一の方法は、きっ……キスをすること」

真冬 「理屈は知らないけれど、キスをすれば、この部屋の鍵が開けられるそうよ」

あすみ 「改めて説明されるとわけわかんない上にアホすぎるな……」

文乃 「まぁ、その通りなんですけど……」

うるか 「キス……キス……キス……」

理珠 「うぅ……」

文乃 「約二名そのアホな状況以上にアホっぽくなっちゃってるので……」

成幸 (……さすが天才たち。状況の飲み込みと処理が早い)

成幸 (俺は未だにこのわけのわからない部屋に戸惑っているんだけど……)

720以下、名無しが深夜にお送りします:2019/03/02(土) 22:59:27 ID:BODDsAFI
あすみ 「………………」

ニィ

あすみ 「ま、なんにせよいつまでもここにいるわけにもいかんだろ」

あすみ 「勉強道具はないし、お前たちは学校があるだろうし、センセも仕事がありますよね?」

真冬 「まぁ、その通りだけど、かといってどうすることも……」

あすみ 「はぁ? 先生、本気で言ってます?」

あすみ 「しちゃえばいいじゃないですか、キ・ス」

真冬 「!? は、ハレンチよ、小美浪さん! そんなことできるわけがないでしょう!」

あすみ 「ハレンチて……。先生、年頃の女の子じゃないんだから……」

あすみ 「なんだったら、アタシがしますよ? なぁ、後輩?」

成幸 「!? お、俺ですか!?」

あすみ 「そりゃ男はお前しかいないんだからしょーがねーだろ?」

成幸 「べっ、べつに、男女でしろとは指定されていないんですから……」

あすみ 「ほー。つまりお前は、アタシと女子誰かの百合百合しいキスを見たい、と?」

あすみ 「このスケベ♪」

721以下、名無しが深夜にお送りします:2019/03/02(土) 23:00:09 ID:BODDsAFI
成幸 「ち、違いますよ! そういうことじゃないです!」

文乃 「へぇ……。成幸くんそういう趣味なんだ」 ジトーーッ

理珠 「そういえば、私と関城さんが一緒にいるとき、ときどきいやらしい視線を感じます……」 ジトーーッ

うるか 「あたしがリズりんのおっぱい揉んでるときも顔を真っ赤にしてたよね」 ジトーーッ

真冬 「ふっ、不潔! 唯我くん、あなたは女子をどういう目で見ているの!」

成幸 「だから違いますってば!」

あすみ 「こんな後輩の前で女子同士キスなんかしようもんならどうなるか分かりませんよ?」

あすみ 「後輩の夜のお供にされちゃうかもしれないですね、センセ?」

真冬 「夜のお供? 一体それは何の話かしら?」

理珠 「?」  うるか 「???」

文乃 「せっ、先輩、何言ってるんですか! もうっ……///」

あすみ (マジかよ。古橋以外全員訳分からない顔をしてるぞ。先生まで……)

成幸 「?」

あすみ 「ってお前もかよ!」

722以下、名無しが深夜にお送りします:2019/03/02(土) 23:00:40 ID:BODDsAFI
あすみ 「……オホン。何にせよ、後輩の前で女子同士のチューは御法度ということで、」

成幸 「すごく釈然としませんけどもうそれでいいです」

あすみ 「しっ、仕方ねーから、アタシがキスしてやるよ。光栄に思えよ?」

うるか&理珠&文乃 「「「!?」」」

成幸 「へ……!? ほ、本気ですか先輩!?」

あすみ 「仕方ねーからだって言ってるだろ。べつに、アタシだってしたいわけじゃないけどさ……///」

あすみ 「ほら、後輩、こいよ」

成幸 (誘い方がめっちゃ男らしい……)

成幸 「え、えっと……」

真冬 「待ちなさい。それは不純異性交遊に当たるわ。教師として許可できません」

真冬 「キスとは、とても神聖なことのはずよ。強制されてするものではないわ」

あすみ 「っ……」

成幸 (考え方意外と乙女なんですね、先生……)

723以下、名無しが深夜にお送りします:2019/03/02(土) 23:01:30 ID:BODDsAFI
理珠 「そ、その通りです! 以前、成幸さんも言っていました!」


―――― 『キスというのは女子にとって…… いや男子にとっても神聖なものでなくてはならんのだ!!』


成幸 「!?」

うるか 「へぇ〜……」 ジトーッ

文乃 「成幸くん、りっちゃんにキスの講釈を垂れるなんて、すごいね」 ジトーッ

うるか 「そういえば、一学期に誰かとキスしたんだもんねー」 ジーーーーッ

文乃 「一体誰とキスしたんだかねー」 ジーーーーッ

成幸 (なぜ俺が針のむしろに……!?)

理珠 「……!?」 ビクッ

真冬 (……やはり、事故とはいえ、唯我くんと接吻をしてしまった緒方さんは辛そうだわ)

真冬 (教育者として、そんな緒方さんにこれ以上キスの話を聞かせるわけにはいかない。早急に手を打たなければ……)

真冬 (……致し方ないわね)

724以下、名無しが深夜にお送りします:2019/03/02(土) 23:02:22 ID:BODDsAFI
真冬 「……生徒に変な役目を与えるわけにはいきません」

成幸 「せ、先生……!」 パァアアアアアア……!!!

成幸 (さすがは桐須先生だ。キスなんてバカげた解決方法に頼らない手を考えてくれたんだ……)

真冬 「唯我くんには申し訳ないことをしてしまうけれど、私が唯我くんとキスをします」

成幸 「今の話の流れで何でそうなるんですか!?」

あすみ 「へぇー?」 ニヤリ

あすみ 「アタシはもう生徒じゃないんだから気にする必要ないんじゃないですか?」

真冬 「……? 何が言いたいのかしら、小美浪さん?」

あすみ 「ひょっとして先生、後輩とキスしたいだけなんじゃないですかー?」

真冬 「なっ……」 カァアアアア…… 「憤慨! なんてことを言うの、小美浪さん!」

あすみ 「そんな顔を真っ赤にして、ますます怪しいなー?」

真冬 「こっ……小美浪さんっ!」

725以下、名無しが深夜にお送りします:2019/03/02(土) 23:03:13 ID:BODDsAFI
成幸 (ああもう、また先輩、先生のことからかって遊んでるよ……)

成幸 (先生も乗せられやすいんだから……)

チョンチョン

成幸 「ん……? うるか?」

うるか 「ねぇねぇ、成幸。早くこんな部屋出て、勉強したいよね?」

成幸 「まぁ……そりゃそうだけど……」

うるか 「……ん、じゃあ……」 カァアアアア…… 「さっさと、出なきゃだよね」

成幸 「あ、ああ、そう、だな……? いや、ちょっと……」

成幸 (何でどんどん距離を詰めてくるんだうるか!?)

うるか 「動かないでよ、成幸。あたしだって恥ずかしいんだからさ……」

成幸 「いや、待て、うるか、お前、まさか……わっ」

ドテッ

成幸 「いててて……っ!?」

うるか 「えへへ……もう逃げられないよ、成幸っ」

726以下、名無しが深夜にお送りします:2019/03/02(土) 23:03:51 ID:BODDsAFI
成幸 (ま、まずい! このままじゃ、うるかにキスを……)

成幸 (うるかと、キス……)


―――― 『だからずっと…… ちゃんと見ててねっ!!!』


成幸 「っ……///」

うるか (えへへ……成幸と、キス……キス……)

グイッ

うるか 「ふぐっ……」

文乃 「ストップだよ、うるかちゃん。どうどう」

うるか 「文乃っち! 何するのさー!」

文乃 「……ねぇ、うるかちゃん、気づいてる?」

文乃 「倒れた成幸くんに覆い被さってるうるかちゃん、控えめに言って痴女さんみたいだよ?」

うるか 「ふぇっ……!?」 ハッ 「ち、違うよ!? あたし、その……」

うるか (あたし、一体何やってんのー!?)

727以下、名無しが深夜にお送りします:2019/03/02(土) 23:06:07 ID:BODDsAFI
成幸 「ふぅ、助かった……」

文乃 「大丈夫、成幸くん?」

成幸 「ありがとな、古橋。うるかの奴、一体どうしたんだか……」

文乃 (うん。それで気づかないあたり君は本当に君だよね、成幸くん)

文乃 「………………」 チラッ

理珠 「はうぅ……///」

あすみ 「先生、どんだけ後輩とキスしたいんですかー?」

真冬 「だ、だから違うと言っているでしょう!」

うるか 「うぅ……あたしってば、なんて大胆なことを……///」

文乃 (……みんな、なんかすごいことになってるなぁ)

文乃 (……ひょっとしてひょっとすると、これは)

文乃 「……チャンス、かな」 ボソッ

728以下、名無しが深夜にお送りします:2019/03/02(土) 23:06:39 ID:BODDsAFI
成幸 「ん? なんか言ったか、古橋?」

文乃 「……ううん。なんでもないよ」

文乃 (そう、そうだよ)

文乃 (うるかちゃんとりっちゃんは言わずもがな成幸くんのことが大好きだし、)

文乃 (小美浪先輩は成幸くんと恋人のフリをしてるらしいし、)

文乃 (桐須先生は定期的に成幸くんを家に招いているらしいし……)

文乃 (……うんうん。そういう人たちに、キスを義務的にさせるなんて、やっぱりダメだよね)

文乃 (その点わたしは、成幸くんのことを弟としか思っていないから問題ないし)

文乃 (ここは、わたしがキスをするべきかな!)

文乃 「………………」

文乃 (べつに、わたしが成幸くんとキスをしたいわけじゃないからね!)

729以下、名無しが深夜にお送りします:2019/03/02(土) 23:07:19 ID:BODDsAFI
文乃 「ねぇ、成幸くん」

成幸 「ん?」

文乃 「わたしは君のお姉ちゃんです」

成幸 「……は?」

文乃 「わたしは君のお姉ちゃんです」

成幸 「いや、えっと……」

文乃 「……わたしは君のお姉ちゃんです」

成幸 「は、はい。文乃姉ちゃん……」

文乃 「よろしい。わたしは君のお姉ちゃんなので、何の問題もありません」

成幸 「いや、あの……えっと、何の話?」

文乃 「だから……っ」

文乃 「わたしと君は姉弟だから、キスをしても何の問題もないって言ってるの」

成幸 「お前まで何とち狂ったこと言ってんだ!?」

730以下、名無しが深夜にお送りします:2019/03/02(土) 23:07:56 ID:BODDsAFI
理珠 「む? 何をしているのですか、文乃」

うるか 「!? 文乃っち、ひょっとして成幸とキスしようとしてる!?」

文乃 「へっ!? いやいやいや、そんなことしてないよ!?」

真冬 「ダメよ、古橋さん! そんなそんな役目、あなたにさせるわけにはいかないわ!」

あすみ 「そんなこと言って後輩とキスしたいだけのくせにー」

真冬 「なっ……! だ、だからそうではないと言っているでしょう!」

ワーワーギャーギャー

成幸 (あ……阿鼻叫喚だ……。止めないと)

成幸 「みんな、ちょっと落ち着いて……」

ドン!!!

成幸 「わっ……!?」 (誰かの手が当たって、バランスが……!)

731以下、名無しが深夜にお送りします:2019/03/02(土) 23:08:45 ID:BODDsAFI
コケッ

成幸 「うおっ……!?」 (やば! 倒れ……!)

文乃 「!? 成幸くん、危ない!」

理珠 「成幸さん!」

うるか 「成幸!」

真冬 「唯我くん、手を……!」

あすみ 「後輩!」

ドタドタドタッ……!!!

成幸 「……!?」

チュッ……

?? 「あっ……」

?? 「今、くちびる、当たって……」

成幸 (い……今のって、キス……?)

……………………………………

…………………

732以下、名無しが深夜にお送りします:2019/03/02(土) 23:09:19 ID:BODDsAFI
………………唯我家

成幸 「……ん……あっ……」

成幸 「……き……キス!?」

ガバッ

成幸 「………………」

成幸 「……夢、か」

成幸 「夢……」


―――― 『今、くちびる、当たって……』


成幸 「っ……」 カァアアアア……

成幸 「いや、でも、夢だし。うんうん。夢だから、べつに……」

成幸 「………………」

成幸 (……いやキスする夢を見るってヤバいだろ常識的に考えて!!)

成幸 (っていうか 『キスしないと出られない部屋』 !? バカなのか俺は!?)

733以下、名無しが深夜にお送りします:2019/03/02(土) 23:09:56 ID:BODDsAFI
成幸 (……いや、いやいや、それより)


―――― 『後夜祭で打ち上げられる一発目の花火』

―――― 『そいつが上がった瞬間に触れ合っていた男女は 必ず結ばれるんだってさ……』


―――― 『あ……ありが……』


成幸 (あのときと、同じ相手……)

ドキドキドキドキ……

成幸 (俺は……)

成幸 (ひょっとして、あのときのことを意識してるのか……?)

成幸 「………………」

成幸 (“必ず結ばれる” か……)

成幸 (……いやいやいや)

成幸 (何を考えてるんだろうな、俺は。恥ずかしい)

734以下、名無しが深夜にお送りします:2019/03/02(土) 23:10:28 ID:BODDsAFI
………………???

?? (っ、何で、あんな夢……)

?? (『キスしないと出られない部屋』 なんて、何を考えて、そんな……)

?? 「………………」


―――― チュッ……


「っ……///」

ソッ……

?? (残ってる、この、くちびるに……)

?? (彼とのキスの、感触が……)

?? 「……えへへっ」

おわり

735以下、名無しが深夜にお送りします:2019/03/02(土) 23:13:28 ID:BODDsAFI
>>1です。読んでくださった方ありがとうございました。

>>714さんが期待したようなのかは分かりませんが、お題ありがとうございました。
>>715さんのもすぐに書けると思います。

また投下します。

736以下、名無しが深夜にお送りします:2019/03/03(日) 00:25:20 ID:jWKUPpx6
おつつつ

737以下、名無しが深夜にお送りします:2019/03/03(日) 01:51:41 ID:EzaVMotg
控えめに言って最高だわ

738以下、名無しが深夜にお送りします:2019/03/03(日) 09:29:02 ID:hPSwbrG6
からかう先輩もからかわれる先生もかわいい

739以下、名無しが深夜にお送りします:2019/03/03(日) 14:28:06 ID:3OoVCj/I
おつ

740以下、名無しが深夜にお送りします:2019/03/04(月) 00:12:17 ID:./mOxEco
>>1です。投下します。

【ぼく勉】 成幸 「あの日、この境内で」

741以下、名無しが深夜にお送りします:2019/03/04(月) 00:12:58 ID:./mOxEco
………………夕方 図書館

成幸 「………………」

あすみ 「………………」

カリカリカリ……

成幸 「んっ……。もうこんな時間か」

成幸 「先輩、そろそろ帰りませんか? 日が暮れちゃいますよ」

あすみ 「ん? ああ、いつの間にか夕焼けだな。時間経つのはえーなー」

成幸 「それだけ集中できてるってことですね。いいことです」

あすみ 「あんまり問題が解けてないのがアレだけどな。はぁ……」

成幸 「焦っても仕方ないですよ。ちゃんと理科系科目の苦手潰しは進んでるんですから」

あすみ 「……ま、そうだな。今日もありがとよ、センセ」

あすみ 「じゃ、まぁ、帰るとするか」

成幸 「はい! 暗くなるといけないですから、送っていきますよ、先輩」

あすみ 「ん……」 プイッ 「じゃあ、ま、お願いするわ」

742以下、名無しが深夜にお送りします:2019/03/04(月) 00:13:54 ID:./mOxEco
………………帰路

成幸 「……なので、その値は無視できます。測定結果に影響を与えない微量ですから」

あすみ 「んあー、そうか。いちいち有効数字で考えないといけないか……」

成幸 「加算と乗算ではそのあたりも意味合いが変わってきますから、」

成幸 「常識の範囲内で、その数字が計算に必要かどうかを判断するといいと思いますよ」

あすみ 「ん、頭に留めとくわ」

あすみ 「ん……?」

成幸 「あ、神社……ここって……」

あすみ 「?」

成幸 「……この神社、なつかしいな。」

あすみ 「なつかしい? この辺、昔来たことあるのか?」

成幸 「……まぁ、そうですね。最近はあまり寄ることもなかったですけど」

743以下、名無しが深夜にお送りします:2019/03/04(月) 00:15:46 ID:./mOxEco
あすみ 「ふーん、そっか。偶然だな。アタシも昔はよくここに来てたよ」

成幸 「先輩もですか?」

あすみ 「うちから一番近い神社だからな。それに、思い出の場所でもあるから……」

成幸 「思い出……?」

あすみ 「あ、いや、なんでもねーよ。そんな大した話じゃねーし」

成幸 「そうですか。いや、実は俺もこの神社には思い出……というよりは、思い入れがあるんですよ」

あすみ 「……? 後輩?」

成幸 「……すみません、先輩。少し寄っていってもいいですか?」

成幸 「久しぶりにお参りをしていきたいんです」

あすみ 「……ん、わかった。ついでだ。アタシもお参りしてくとすっかな」

744以下、名無しが深夜にお送りします:2019/03/04(月) 00:17:46 ID:./mOxEco
………………神社

チャリンチャリン……パンパン

成幸 「………………」

あすみ 「………………」

チラッ

あすみ (……熱心な顔してまぁ。何をお願いしてるんだか)

あすみ (まぁ、受験生なんだから、当然志望校への合格とかだろうけどな)

成幸 「………………」

パチッ

成幸 「……お待たせしました、先輩」

あすみ 「いやいや、べつに待っちゃいねーよ。何をお願いしてたんだ?」

成幸 「お願いはしてないです。ただ、ありがとうございました、って」

あすみ 「?」

成幸 「あ、いや……」 アセアセ 「すみません、わけ分かんないですよね」

成幸 「大したことじゃないんです。忘れてください」

745以下、名無しが深夜にお送りします:2019/03/04(月) 00:18:21 ID:./mOxEco
あすみ 「意味深なことばっか言いやがって。気になるだろ」

あすみ 「……お前がいいなら、教えてくれよ。この神社にどんな思い入れがあるんだ?」

成幸 「あ、えっと……」

成幸 「……ほんとに、大した話じゃないですよ? それに、楽しくもない話だし……」

あすみ 「アタシが気になるから聞いてんだ。もしお前がいいってんなら、」

あすみ 「受験勉強の息抜きだ。ここで少し話してくれよ。お前の昔の話をさ」

ニィ

あすみ 「やっぱりカノジョとしては、気になるだろ? カレシの昔の話なんて」

成幸 「もう、先輩は……」

ハァ

成幸 「……分かりました。じゃあ、話します。あれは、もう五年以上前のことかな」

成幸 「中学に上がってすぐくらいの連休に、高熱を出したんです」

………………………………

………………

746以下、名無しが深夜にお送りします:2019/03/04(月) 00:18:56 ID:./mOxEco
………………五年前 春 深夜

水希 「お兄ちゃん! お兄ちゃん!」

成幸 「あ……ああ、水希……ゴホッ、ゴホッ……」

成幸 「うつるといけないから、離れてなさい……ゴホッ……」

水希 「お母さん! お兄ちゃんすごく辛そうだよ! 熱も全然下がらないし……」

水希 「40度越えてるんだよ!」

花枝 「分かってるわよ。でも、救急車は全部出払っているって言うし、かかりつけのお医者さんもお留守だし……」

花枝 「救急センターの人も、近隣で開いてる病院はないって言うし……」

成幸 「ゲホッ……ゴホッ……」 ゼェゼェゼェ…… 「ごめん、母さん……」

成幸 「父さんがいない、から……俺が、しっかりしてなきゃいけない、のに……」

花枝 「っ……」

花枝 (……そう。あの人はもういない。子どもを守れるのは、私だけ)

花枝 「……水希」

水希 「? 何?」

747以下、名無しが深夜にお送りします:2019/03/04(月) 00:19:30 ID:./mOxEco
花枝 「もう五年生よね? ひとりでお留守番できる?」

花枝 「ひとりでお兄ちゃんのこと看ていてあげられる?」

水希 「え……? それは、大丈夫だけど……お母さんは?」

花枝 「私は……」

スッ……スッ……」

葉月&和樹 「「………………」」 Zzzz……

花枝 「葉月と和樹を連れて、人がいる病院を探してみるわ」

花枝 「閉院していても、人がいれば開けてくれるかもしれないから」

水希 「お母さん……」

花枝 「大丈夫よ、水希。つらい思いをさせてごめんなさいね。お兄ちゃんのことよろしくね」

水希 「………………」 コクッ 「うん! 大丈夫! お兄ちゃんのことちゃんと看てるから!」

水希 「お母さん、気をつけてね。何かあったらすぐ戻ってきてね」

花枝 「ええ。それじゃ、いってくるわ。戸締まりをしっかりね」

748以下、名無しが深夜にお送りします:2019/03/04(月) 00:20:05 ID:./mOxEco
………………

ドンドンドン

花枝 「……すみません! どなたかいらっしゃいませんか!」

シーン

花枝 「っ……」

花枝 (……これで五軒目。連休中だからでしょうけど、どこもお留守だわ)

花枝 (まだまだ。何軒回ってでも、お医者さんを探さなくちゃ……)

花枝 (水希が待ってる。成幸がつらい思いをしている。それなら、私がへばってる場合じゃない……)

葉月&和樹 「「………………」」 Zzzz……

花枝 「……ふふ、あんたたちは良い子ね、葉月、和樹」

花枝 「あんたたちが寝てくれているだけで助かるわ。ありがとう」

749以下、名無しが深夜にお送りします:2019/03/04(月) 00:20:46 ID:./mOxEco
………………数時間後

花枝 「………………」

ゼェ、ゼェ、ゼェ……

花枝 (小さな、個人経営の病院……)

花枝 (灯りは、ついていない……)

花枝 (お願い。誰か、いて……)

ドンドンドン

花枝 「夜分にすみません! どなたかいらっしゃいませんか!」

花枝 「………………」

花枝 「っ……」 グスッ 「っ……ふぐっ……うっ……」

花枝 (……どうしよう。どうしたらいいの?)

トボトボトボ……

花枝 (もし、成幸にもしものことがあったら、私は……)

花枝 (とにかく、一度家に戻って、なんとか……――)

――――――カランカラン……

750以下、名無しが深夜にお送りします:2019/03/04(月) 00:21:28 ID:./mOxEco
花枝 「へ……?」

花枝 「神社……?」 (いつの間に、こんなところに……?)

花枝 (神社、か……)

花枝 「………………」

パンパン!!!

花枝 「……お願いします! 神様! 助けてください!」

花枝 「お願いします! お願い! お願い……」

花枝 「……お願い、だから……――」



   「――……どうかしたかね?」



花枝 「へ……?」

?? 「こんな夜更けに抱っこひもひとつで小さなお子さんと一緒に歩き回っているとは……」

?? 「何か事情がおありのようだ。私は医者だ。もし力を貸せることがあれば、何なりと言ってほしい」

花枝 「あっ……あの! た……助けてください!」

751以下、名無しが深夜にお送りします:2019/03/04(月) 00:22:42 ID:./mOxEco
………………現在

成幸 「……とまぁ、そんな風に、この神社でお医者さんと出会ったんだそうです」

成幸 「それ以来、母さんに連れられて、この神社にお参りすること何度かあったんですよ」

あすみ 「………………」

あすみ 「……えっ、いや、まさか、いや、いやいや……」

成幸 「? 先輩?」

あすみ 「へっ!? あ、すまん。なんでもない……」

あすみ 「にしても、ドラマみたいなことがあるもんだな」

成幸 「俺も母さんから話を聞いただけだからどこまでほんとか分かりませんけどね」

成幸 「まぁ、この神社でそのお医者さんと出会ったのは本当にただの偶然でしょうけど、」

成幸 「でも、母さんにしてみたら、この神社の神様がそのお医者さんと巡り合わせてくれたと思うでしょうね」

あすみ 「……まぁ、だろうな」

あすみ (……五年前の春。アタシも、そんな話を聞いた事がある)

あすみ (他でもない、アタシの親父から。ここで、急患と出会ったと)

752以下、名無しが深夜にお送りします:2019/03/04(月) 00:23:25 ID:./mOxEco
………………五年前

あすみ 「……ったく、親父帰ってくるのおせーなー」

あすみ 「飯作っとけって言ったなら、せめて時間通りに帰ってこいっての」

ドタバタドタバタ……

あすみ 「ん、帰ってきたか。おい、おせーぞ、親父――」

小美浪父 「あすみ、急患だ。悪いが、診療所を開けてくれ。それから入院用のベッドの準備も頼む」

あすみ 「はぁ!? この時間からか!?」

あすみ 「っていうかあんた、今時間外の往診行ってきたばっかだろうが!」

小美浪父 「急患を見つけてしまったのだから仕方ないだろう。いいから早くしろ」

小美浪父 「重度の肺炎だ。命に関わる可能性もある」

小美浪父 「奥さん、とりあえずこの毛布の上に寝かせてあげてください」

花枝 「は、はい」

成幸 「……ゴホッ……ゲホッ……」

753以下、名無しが深夜にお送りします:2019/03/04(月) 00:23:59 ID:./mOxEco
あすみ 「っ……」 (本当に辛そうだ。ありゃ高熱が出てるな)

あすみ (その上呼吸も満足にできないんじゃきついだろうな)

あすみ (……ったく。お節介な親父だな)

あすみ 「親父、院内処方用の新しい抗生物質、まだ倉庫から出してねーから後で持ってくる」

あすみ 「解熱剤はいつものとこに入ってる」

小美浪父 「む、分かった」

あすみ 「あと、ストレッチャーと点滴カートも用意するけど、他なんかいるか?」

小美浪父 「今はそれだけでいい。もう寝る時間だというのに、いつもすまんな、あすみ」

あすみ 「ほんとにいつものことだから気にしなくていいよ。小遣いさえ弾んでくれればな」

タタタタタ……

あすみ (……ま、文句垂れつつも親父の手伝いしちまうアタシも、相当アレだけどな)

754以下、名無しが深夜にお送りします:2019/03/04(月) 00:24:54 ID:./mOxEco
………………

あすみ 「……ふー」 (……さすがにこの時間にドタバタ走り回ると疲れるな)

小美浪父 「奥さん、もう大丈夫ですよ。熱が下がり始めています」

小美浪父 「抗生物質も点滴で投与しましたから、すぐによくなりますよ」

花江 「あっ……ありがとうございます!」

成幸 「………………」 Zzzz……

花江 「よかった……」 ポロポロポロ 「本当に、よかった……っ」

花江 「なんてお礼を言ったらいいか……」

小美浪父 「そんなことは気にしなくていい。奥さんも夜の街を走り回って疲れだろう」

小美浪父 「患者の容態は安定しているから、大丈夫。心配でも隣のベッドで休んでいなさい」

花江 「すみません……。あ、でも、娘たちが……」

あすみ 「ああ、一緒についてきた女の子と双子ちゃんたちですか?」

あすみ 「それならアタシが見ときますし、隣の部屋で寝かせますよ」

小美浪父 「ああ、すまんな。頼むぞ、あすみ」

755以下、名無しが深夜にお送りします:2019/03/04(月) 00:25:43 ID:./mOxEco
………………廊下

水希 「………………」

あすみ 「よっ」

水希 「……!? び、病院の方!」 ガバッ 「あの、お兄ちゃんは!?」

あすみ 「ん、もう大丈夫だよ。解熱剤で熱も下がり始めたし、抗生物質も打った。問題ないよ」

あすみ 「でも、肺炎のウイルスは子どもにうつりやすいから、今は病室に入らない方がいい」

水希 「……はい」

あすみ 「ん。心配だろうけど、我慢できて偉いな。よしよし」 ナデナデ

葉月&和樹 「「………………」」 Zzzz……

あすみ 「……この子たちも良い子たちだな。あれだけ騒いでるのに眠りっぱなしだ」

水希 「……はい。本当に。助かってます」

あすみ 「お前も疲れただろ? 隣の部屋のベッド用意しておいたから、寝ろよ」

あすみ 「そのおチビちゃんたちはアタシが見てるからさ」

756以下、名無しが深夜にお送りします:2019/03/04(月) 00:26:16 ID:./mOxEco
水希 「………………」

水希 「……いえ、帰ります」

あすみ 「お、おいおい。もう深夜だぞ? さすがにお前たちだけで帰せねーよ」

水希 「……だって、」

水希 「お兄ちゃんの治療費だって出せるか、わからないのに……」

水希 「その上、入院費用とか、わたしたちの宿泊費用なんて……」

水希 「……そんなの、払えるわけないもん」 グスッ

あすみ 「……あー、なるほど」

あすみ 「あんまり裕福じゃないのか、家?」

水希 「……お父さん、死んじゃった、から……」

あすみ 「そっか……。大変なんだな」

あすみ 「……でも、大丈夫。その点は心配いらねーよ」

あすみ 「大変遺憾なことに、うちの親父は、経営のセンスがゼロだからさ」

水希 「……?」




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